説明

ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物の、急性脳血管疾患の治療用医薬の製造における使用

本発明は、ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物の、急性脳血管疾患の治療用医薬製造のための使用を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急性脳血管疾患の治療に係る。特に、本発明は、ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物の、急性脳血管疾患の治療用医薬の製造における使用に係る。
【背景技術】
【0002】
急性脳血管疾患の一つである発作は、世界的な住人における第三の主要な死因であり、また様々な疾患の中でも最高の能力障害率を生じる。最近の疫学上の参考文献によって示されたように、中国における脳血管疾患の発病率は、約0.12%〜0.18%なる範囲にあり、これは、住人の第二の死亡原因となっている。毎年、1,200,000〜1,500,000もの人々が、新たに脳血管疾患を発症しており、また800,000〜1,000,000人の患者が死亡し、更に生存者の約75%が能力障害状態に陥っており、また5年以内の再発率は41%にも達した。該脳血管疾患は、中高年層の生活の質に重大な影響を及ぼし、患者の家族および社会に多大な負担をもたらす恐れがある。この疾患は、更に若年層においてさえ増大する傾向がある。
該脳血管疾患は、主として2つの型、即ち出血性および虚血性脳血管疾患に分類され、後者が60-70%を占めており、これが最も一般的な型の脳血管疾患である。虚血性脳血管疾患の病態生理学的メカニズムを研究し、またニューロン保護剤として機能する薬物を探索することが重要である。
【0003】
脳虚血の病態生理学的メカニズムの研究は、1980年代以来神経科学の分野において最も注目されている研究の一つであり、またこれまでに、エネルギー代謝、酸中毒、過剰酸化傷害、刺激性アミノ酸誘発性毒物傷害およびカルシウム過負荷等に係る、脳虚血に関する理論が提案されており、中でも最後の2つが、虚血性ニューロン障害および死亡において重大な役割を演じている。虚血性脳血管疾患の病態生理学の基礎によれば、脳虚血を臨床的に治療するのに一般的に使用されている薬物は、主としてカルシウムイオンアンタゴニスト(ニモジピン)、酸素ラジカル捕獲剤(VitE、SOD)、神経栄養因子(神経成長因子、神経栄養因子)、刺激性アミノ酸アンタゴニスト、酸化防止剤および遅発型ニューロン障害を改善する薬物を含む。これらの薬物は、不確実な治療効果または低い選択性と共に、あるいは重篤な副作用を伴う、様々な作用メカニズムによって機能し、またその結果として、依然として上記の臨床上の要求を満たすことはできない。脳の循環、代謝および諸機能を改善するために使用できる、多くの市販の薬物、例えばピラセタム、フルナリジン、カラン、ギンナン抽出物がある。これらは、全て幾つかの特徴を持つが、その脳血管疾患に及ぼす治療効果は不確実なものである。虚血性脳血管疾患を治療するための新規薬物の研究および開発は、薬学および薬理学の分野における重要な仕事である。
【0004】
本明細書において使用するような、「ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物」とは、中国特許第ZL98103220.6号に記載されているような、ワクシニアウイルスにより炎症を起こしたウサギの皮膚から抽出された、活性物質を意味する。該中国特許の内容全体を、参考としてここに組入れる。このようなワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物は、アナルジェシン(analgecine)なる商品名の下に市販品として入手でき、これはファンワールドファーマシューティカル社(Vanworld Pharmaceutical)(ルガオ(Rugao)) Co. Ltd)により製造されている。アナルジェシンの薬理的効果は、以下に列挙するものを含む:(1) 鎮痛効果、これは反復的な低温ストレスによって複雑に誘発される痛覚過敏症に及ぼされる明確な鎮痛効果を含み、この効果は、中枢神経系の下行性阻害系を活性化することによって達成される;(2) 寒気の知覚および異常な知覚に及ぼす効果:これは、インビボおよびインビトロ実験によって、このような薬剤が、視床下部のニューロン散在活性を変更する効果を持つことが示され、このことは、該薬剤が、神経痛および異常な知覚に関する原因と考えられる、異常な知覚ニューロン散在活性を修復および調節する効果を持つことを示唆している;(3) 末梢血液循環の改善効果;(4) 自律神経の調節に及ぼす効果:インビボおよびインビトロ実験によって、該薬剤が、中枢自律神経の活性を調節することによって、自律神経系の調節異常の症状を改善し得ることが示唆されている;(5) 抗-アレルギー反応に及ぼす効果:動物実験によって、該薬剤が、タイプI抗-アレルギー反応に対して作用することが示唆されており、これは、副交感神経の刺激に起因する気道分泌過多に対して阻害作用を持ち、また鼻粘膜レセプタMの密度の上向き調節に及ぼす阻害作用を持つ;(6) 鎮静効果:動物実験によって、該薬剤が、様々な外的刺激によって引起される情動的興奮状態に対して、鎮静効果を持つことが示唆されている。
【0005】
更に、ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物は、以下の特許出願においても論じられている:1999年11月12日付で出願された、中国特許出願第99123485.5号、1996年12月19日付で出願された、中国特許出願第96123286.2号、および1998年1月7日付で出願された、中国特許出願第98103914.6号。
しかし、アナルジェシンの脳虚血傷害に及ぼす保護効果は、未だ報告されていない。本発明では、このような効果を検討し、またアナルジェシンが、実験動物モデルにおける、脳虚血に対して有益な効果を示すことを見出した。
【発明の概要】
【0006】
一局面において、本発明は、哺乳動物における急性脳血管疾患の治療法を提供するものであり、該方法は、該対象にその必要により、上記のワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物を投与することを含む。
もう一つの局面において、本発明は、哺乳動物における急性脳血管疾患の治療用の、医薬を製造するための、ワクシニアウイルスによって炎症を起こしたウサギ皮膚由来の該抽出物の使用に係る。
一態様によれば、本明細書において記載される該急性虚血性脳血管疾患は、急性虚血性脳血管疾患である。
脳血管疾患は、局所的な脳への異常な血液供給によって引起される、神経機能の損傷である。殆どの国々において、あらゆる死の上位3つの原因に入る脳血管疾患は、成人における脳の損傷をもたらす恐れがある。脳血管疾患は、中年及び高齢の人々の健康を危うくする主な原因の一つであり、また殆どの国々における中年及び高齢の人々の死亡または廃疾の主要な原因である。一般に塞栓症または血栓症として知られている、主として脳血管の閉塞に起因する虚血性脳血管疾患およびその病態生理学的変化は、極めて複雑である。一態様において、ここに記載する該急性虚血性脳血管疾患は、脳塞栓症、一過性脳虚血発作、脳血栓症、脳動脈硬化症、脳動脈炎、脳動脈の盗血症候群、頭蓋静脈洞、および静脈血栓を含むが、これらに限定されない。
【0007】
虚血性脳血管疾患は、塞栓症による、動脈血供給の幾つかの領域における、血流の一過性のまたは永続的な減少によって引起され、またその病理的な過程は、複雑な一時的および空間的なカスケード反応と関連している。脳の虚血の病態生理学的メカニズムは、近年において広範に検討されている。しかし、この疾患の直接的な原因は、各動脈が、脳内において、その血液供給の基本的な領域を持っており、また該動脈の閉塞が、該各領域における脳組織の軟化に導き、対応する臨床的な症候群をもたらし、そこでは、中大脳動脈閉塞によって引起される神経学的徴候学的損傷(例えば、反対側の手足の半身不随)が、最も一般的である。更に、発作の最初の発症に係る臨床例において、該中大脳動脈閉塞の割合は高く、従って中大脳動脈閉塞(MCAO)の動物モデルによりシミュレートされたその病理過程は、臨床的な発作のそれと著しい類似性を有している。
ベダーソン(Bederson)の評価およびスロープテストの結果は、神経学的徴候学的損傷の徴候、例えば反対側の手足の虚弱化および麻痺が、ラットにおける脳組織の虚血後に引起されることを示した。本発明者等は、アナルジェシンが、動物のこれら神経学的な症状を顕著に改善し得ることを見出した。従って、一態様においては、アナルジェシンを、脳血管疾患の治療のために使用して、神経機能を改善することができる。
【0008】
脳梗塞病巣の領域は、虚血の程度と関連し、反対側脳組織のTTC染色は白色を示し、また液化する病巣は、片側の中脳動脈の塞栓形成後、24時間に渡り観測できた。統計的分析の結果は、溶媒投与群と比較して、擬似薬投与群における脳梗塞の体積における、統計的に有意な差が見られ、また中間的用量のアナルジェシン投与群における脳梗塞の体積は、損傷を受けた群の該体積と比較して、有意に減少した。従って、一態様においては、アナルジェシンを、脳血管疾患の治療のために使用して、脳梗塞領域を低減させる。
脳は、最小のエネルギーおよび酸素の蓄積を伴う代謝自体のために、最も活性な器官である。脳組織の酸素消費量は、休息状態における身体全体の酸素消費量の20%を占めた。ニューロンは、大脳皮質または脳全体において酸素を消費する主要な部分を構成し、また虚血および低酸素症傷害に対して極めて敏感である。新鮮な酸素源が存在しない場合、該組織は、その高エネルギーリン酸塩化合物の蓄積分のみを使用することができ、更に代謝により、蓄積されているグルコースおよびグリコーゲンをMDAとすることによって、エネルギーを得ることができる。該脳組織の虚血および/または低酸素症は、エネルギーの枯渇に導き、エネルギーポンプ機能障害、神経細胞におけるカルシウムイオンの過負荷、有害な酸素ラジカルの増大、細胞の酸中毒を含む一連の連鎖反応を結果し、また細胞膜の構造およびその保全性が損傷を受け、その結果、該膜の透過性が増大し、細胞毒性浮腫の程度が拡大され、また幾分かの細胞内酵素が、血液中に大量に放出される。これら結果は、虚血後に、脳組織中の乳酸およびMDAの濃度が著しく高められ、一方で脳組織中の乳酸の濃度は、アナルジェシンの介入により大幅に減じられることを示した。従って、一態様においては、アナルジェシンを、脳血管疾患の治療のために使用して、脳組織中の乳酸の濃度を低下させる。
【0009】
SODは重要な酸化防止性酵素であり、該酵素は、遊離基反応を効果的に阻害し、また高いSOD活性は強力な酸化防止能力を表す。ラットにおける脳組織の該SOD活性は、大幅に低下し、従って遊離基排除能力は、脳虚血傷害後に減少した。これらの結果は、該SOD活性を、アナルジェシンの介入によって増強することができることを示した。このことは、該アナルジェシンが、脳組織の酸化防止能力を高めることから、ニューロンの保護においてある役割を演じている可能性があることを示している。従って、一態様においては、アナルジェシンを、脳血管疾患の治療において使用して、該SOD活性を高める。
もう一つの局面において、本発明者は、アナルジェシンが、神経細胞の損傷に対して保護作用を持つことができることを見出した。
H2O2は、脳虚血、外傷、脳の老化、アルツハイマー病等の神経系の諸疾患の発症に関与する、重要な反応性酸素成分である。これは、膜脂質を過剰酸化し、細胞膜の流動性を低下し、細胞内タンパク質の成分および活性を変更し、クロマチンを濃厚化し、かつDNAを破壊し、しかも最終的に細胞死をもたらす。従って、一態様においては、アナルジェシンを使用して、PC12細胞のH2O2-誘発性傷害を改善する。
【0010】
刺激性アミノ酸、例えばグルタミン酸は、ニューロンの死滅を伴う恐れのある、様々な慢性または急性神経障害においてある重要な役割を演じた。グルタミン酸は、用量依存様式で、神経細胞系および一次神経細胞を損傷する可能性がある。これは、高い細胞内カルシウムイオンおよび遮断されたシスチンの取込みによるものであり、またこれは、細胞内で減少したグルタチオン(GSH)の喪失、高い酸素ラジカル濃度および神経細胞の死滅を誘発する。従って、H2O2またはグルタミン酸-誘発性神経細胞傷害モデルを、ニューロン保護剤のスクリーニングモデルとして使用することを可能とする。そこで、一態様においては、アナルジェシンは、PC12細胞のグルタミン酸-誘発性損傷を改善し、脳血管の内皮細胞におけるICAM-1の発現または排出を阻害し、および/またはT-およびB-リンパ球の形質転換を阻害するために有用である。
T-リンパ球は、高い細胞体積、強壮な代謝能力、高いタンパク質および核酸合成能力を示し、またインビトロでの培養中の、特異的抗原または非-特異的マイトジェンによる刺激後に、リンパ芽球の分裂を行うことができる。該リンパ球の形質転換速度のレベルは、各個体における細胞の免疫学的機能を反映する。従って、リンパ球の形質転換に関するテストが、各個体における細胞の免疫学的機能の指標の一つを決定するために、また免疫調節薬のスクリーニングのために、広く利用されている。実験的研究により、アナルジェシンが、リンパ球の形質転換に対して幾つかの阻害作用を持つことが見出された。従って、一態様において、アナルジェシンは、T-およびB-リンパ球の形質転換を阻害するのに有用である。
【0011】
内皮細胞からなる内皮で構成されている、血管の内側膜は、血管のホメオスタシスを維持する上で重要な役割を演じている。内皮細胞の機能は、該細胞が血液と直接接触しているので、血液中の成分により、確実に影響される可能性がある。該内皮細胞は、病理的な状態、例えば低酸素症、慢性および急性炎症、虚血性傷害等の下において活性化され、またその結果として、幾つかの接着性分子:ICAM-1(分子間接着性分子-1)、VCAM-1(血管細胞接着性分子-1)、E-セレクチンおよびP-セレクチンを発現する。接着性分子は、血管の内皮および血管の病理的過程において重要な役割を演じており、ここでは、ICAM-1が、白血球の内皮に対する密な接着において、主要な役割を演じている。従って、一態様においては、アナルジェシンが、脳血管における内皮細胞のICAM-1の発現または排出を阻害する上で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、永続的なMCAOの48時間後における、脳梗塞の体積に及ぼす、アナルジェシンの効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
特に述べない限り、本明細書において使用するあらゆる科学用語は、当業者により普通に理解されているような意味を持つものとする。例示的な方法並びに材料は、以下に示す通りであるが、その等価なものを使用することも可能である。本明細書において述べるあらゆる刊行物およびその他の参考文献は、その内容全体を、参考としてここに組入れるものとする。
【実施例】
【0014】
本発明を、以下に記載する実施例を参照しつつ、更に詳しく説明するが、以下の実施例は、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
実施例1:ラットにおける急性脳虚血(MCAO)に及ぼす、アナルジェシンの保護効果
実験材料
1. 薬物および試薬:
10U/mLアナルジェシン注射、25mL/ウイルス(ファンワールドファーマシューティカル社(Vanworld Pharmaceutical)(ルガオ(Rugao)) Co. Ltd)により提供されたもの);2,3,5-トリフェニルテトラゾリウムクロリド(TTC)、シグマ(Sigma)社(米国)により製造されたもの;MDA、SODおよびラクテートデヒドロゲナーゼキット、ナンジンバイオエンジニアリングインスティチュート(Nanjing Bioengineering Institute)により製造されたもの。
2. テスト動物およびグループ分け:
体重280-300gの、雄ウィスタ(Wistar)ラットは、ベイジングバイタルリバーエクスペリメンタルアニマルセンター(Beijing Vitalriver Experimental Animal Center)ライセンス(License):SCXK京 2007-0004)によって提供されたもの。これら動物は、外科手術前後に、23-25℃なる室温の下で、公知の方法で収容し、飼料および水は、随意に供給した。
【0015】
これらラットを、ランダムに6つのグループに分けた:即ち、擬似薬投与群、傷害モデル群(ビヒクルコントロール)、アナルジェシン投与(10U/kg、20U/kg、40U/kg)群、およびエダラボン投与(3mg/kg)群に分割した。該薬物は、外科手術後2時間から開始して、該動物に5回に渡り(2時間、6時間、20時間、24時間および47時間)投与した。これら動物を、外科手術の48時間後に屠殺し、次いで各テストを行った。
実験方法
1: 中大脳動脈閉塞のラットモデルの調製:
ジーロンガ(Zea Longa)等[5-6]により確立された、ラット中大脳動脈に関する糸での結サツによる、閉塞法に対する脳虚血モデルを調製するのに、糸挿入法を使用した。
1.1: ナイロン製糸プラグの調製:
75%(v/v)のエタノールで洗浄した、糸の出発点および該出発点から18.5mm離れた位置にマークを形成し、次いで使用するまで、1:2500にてヘパリン処理した塩水中に入れておいた。
1.2: 外科手術前の麻酔:
ラットを、400mg/kgにて、10%抱水クロラール溶液で腹腔内注射した。
【0016】
1.3: 外科手術工程:
(1) 外科用視野の調製
ラットをその背面位置に固定し、その首部の丁度真ん中の皮膚の切開を行った。該動物の左総頸動脈(CCA)を、組織の層を大まかに切開した後に露出させた。
(2) 総頸動脈の分離:
内頸動脈(ICA)を、外頸動脈から二股に分かれる点の最終部分まで、迷走神経および気管の損傷を回避するように、注意して分離し、また糸を後の使用のために配置した。同側の外頸動脈を分離し、ECAの分岐の開始点から約0.8cmの位置において結サツを行った。
(3) 中脳動脈の結サツ:
CCAの近位端部において把持するために、ブルドッグクランプを使用し、ECAの結サツ部と二股に分かれる点との間で、径約2mmの「V」字型切開を行った。該ブルドッグクランプを外す前に、上記ナイロン糸を、該切開部からCCA内に徐々に挿入し、また次いで内頸動脈と外頸動脈との間の該二股に分かれる点を介して、該内頸動脈に通した。該ナイロン糸を、幾分かの抵抗力が現れるまで、約18.5±0.5mmなる深さで、頭蓋内方向にICA部分に向けて徐々に押込み、次いで該ナイロン糸の他端部を、より細い前大脳動脈に達するように、外MCAの始点に通した。左中大脳動脈における血流の遮断は、この瞬間において達成され、次いで該ICAを縫合して、該ナイロン糸を確保し、かつ出血を回避し、次いで該皮膚外部に維持された該ナイロン糸の端部1cmを維持しつつ、層状に縫合した。外科手術および血管分離操作前の麻酔は、擬似薬投与群においては、結サツおよび該糸の導入なしに行った。室温は、該外科手術工程全体を通して、24-25℃に維持した。
【0017】
2. ニューロエソロジーテスト
2.1 ベダーソンの評価:
これらの動物を屠殺する前に、該動物を、ベダーソン(Bederson[7])およびベルビエフ(Belvyev[8])等により記載された方法に従って、ニューロエソロジー的に観察した。この方法は、ラットの尻尾を、地上から約1 chi引張挙げて、両前肢の状態を観察し;該ラットを平坦な地上に置き、またその両肩を押して、その両側間の抵抗におけるあらゆる差異の有無を観察し;該ラットを地上に置いて、その歩行状況を観察した。各動物に評価点を与えた。全ての動物は、症状の重篤度に基いて、全体で10評価点を持つ、3階級にランク付けした。より高い評価点は、標準挙動評価に従って、より重篤な挙動障害を表す。
上記特別な評価方法は、以下の通りである:
【0018】
【表1】

【0019】
3. 脳梗塞体積の測定
該ラットを、等級付けした後、断頭した。その脳組織を取出し、-20℃にて10分間冷凍装置に入れ、次いで室温にて維持した。嗅球、小脳および下部脳幹を取出した後、4回の冠状切開を行って、図1に示すように、2mmの間隔で、5つの連続する脳冠の切片を作製した。該第一の切開は、前脳の極と視神経交叉との間の接続ラインの中央部において行い;該第二の切開は、視神経交叉部において行い;該第三の切開は、ロート状の茎状部位において行い;また第四の切開は、ロート状の茎状部と尾状核との間にて行った。次いで、該脳の切片を、即座に、暗所にて、37℃にて30分間、5mLのTTC溶液(1.5mLの4%TTC溶液+3.4mLの蒸留水+0.1mLの1M/L K2HPO4溶液を含む)に浸漬させた。これら切片を、7-8分毎に1回の割で、ひっくり返した。正常な脳組織は、染色後にバラ色を呈し、一方で梗塞を生じた組織は、白色であり、しかもはっきりとした境界をなしていた。各群の脳切片を、順番通りに配列し、その像を撮影し、保存した。該画像を処理しかつ統計的に分析するために、画像解析装置のソフトウエアを使用した。該脳梗塞の体積は、各動物の各脳の切片の面積と、各切片の厚みである2mmとの積の和として測定した。梗塞部分の体積は、脳浮腫により発生する誤差を排除するために、半球の体積に対する割合(%)として表示した:
脳梗塞体積(%)=(外科手術時の反対側の半球の体積、即ち梗塞の無い外科手術時の反対側の半球の体積)/(外科手術時の反対側の半球の体積)×100%
【0020】
4. 脳組織における生化学的指標の決定
4.1 脳組織ホモジネートの調製:
該ラットを断頭した後、脳を取出した。その左半球を、右半球から分離し、1mmの前頭極および1mmの後頭極を取出した。該脳組織を、体積比1:10にて、低温均質化バッファー(50mM/Lのトリス(Tris)-HCl、150mM/LのNaCl、5mM/LのCaCl、0.1mM/LのPMSF、pH 7.4)中に入れ、次いで小片に切刻み、4℃にて均質化した。該タンパク質の濃度は、ブラッドフォード(Bradford)の方法[10]により測定した。
4.2 該ラットの脳組織におけるラクテートデヒドロゲナーゼの測定
(1) 実験的な原理:
基質としての乳酸は、pH 10において酸化された補酵素Iの存在下で、ラクテートデヒドロゲナーゼの触媒作用によりピルビン酸に転化され、次いで得られたピルビン酸は、2,4-ジニトロフェニルヒドラジンと反応して、褐色がかったジニトロフェニルヒドラゾンピルベートを与えることができた。ピルビン酸の含有率は、比色法によるアッセイによって測定することができ、これからラクテートデヒドロゲナーゼの活性を導くことができる。
【0021】
(2) テスト法
ラクテートデヒドロゲナーゼの活性は、その測定用キットにおける指示に従って測定した。10μLのホモジネートおよび10μLの5g・L-1補酵素Iを、緩衝処理された培地溶液に添加し、37℃にて15分間インキュベートし、次いで50μlの0.2g・L-1 2,4-ジニトロフェニルヒドラジンを添加し、37℃にて15分間インキュベートし、150μlの0.4M/L NaOHを添加、混合し、次に検量線の作成後、440nmにおける吸光度を読取った。該標準曲線は、ピルビン酸ナトリウム標準物質と共にプロットした。
4.3 ラットの脳組織におけるスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の活性の測定
(1) 実験的な原理
キサンチンおよびキサンチンオキシダーゼ反応系により生成されるスーパーオキシドアニオンラジカルは、ヒドロキシルアミンを酸化してニトリットを生成するが、該ニトリットは、発色剤によって紫がかった赤色を発現するであろう。該サンプル中の該SODは、特異的にスーパーオキシドアニオンラジカルを阻害し、結果として該生成されたニトリットは還元されるであろう。
【0022】
(2) テスト法
均質化を、上記のようにして行った。該SODの活性は、該ホモジネートを十分に混和した後に、該活性測定用のキットにおける指示に従って測定した。ニトリット1単位は、SODの50%阻害が、1mLの反応溶液中の該組織のタンパク質各1mgに対して達成された際の値に相当する。
5. 統計的分析
これらの結果を平均値±SDとして表す。各テスト動物群間のデータの比較は、t-テストによって行った。
【0023】
アッセイの結果
1. ラットにおける急性脳虚血の神経学的徴候学に及ぼすアナルジェシンの効果
麻酔されたラットはその意識を回復し、脳虚血後に、左下肢の強度不足、直立歩行の際の左側へのそれ、左側への転回および更には歩行不能に代表される、様々な程度の焦点神経機能障害を発現し、また意識障害さえも示し、尻尾を引張上げた際に、左前肢の湾曲、収縮並びに後肢の伸びおよび右側への回転を示した。モデル群における動物は、脳虚血後に、神経機能に関する評点の有意な増加(P<0.01)を伴って、神経損傷の明確な症状を示したが、40U/kgのアナルジェシンは、該神経機能の症状を有意に(P<0.05)改善し、一方で10、20U/kgのアナルジェシン投与群は、如何なる有意な改善効果も示さなかった。上記エダラボン投与群とモデル群との間に、有意な差は見られなかった。これらの結果を、以下の表1に示す。
【0024】
【表2】

これら表中の値は、平均値±S.E.M.として表示されている。各群のテスト動物数は、6〜8匹であった。
#:擬似薬投与群に比して、P<0.05。
*:モデル群に比して、P<0.05。
【0025】
2. ラットにおける急性脳虚血に起因する脳梗塞の体積に及ぼすアナルジェシンの効果
正常な脳組織は、染色後に、完全にバラ色を呈し、一方で梗塞組織は、白色を呈し、また明確な境界をなした。擬似薬投与群を除き、他の群におけるラットの全大脳皮質は、明らかな梗塞的病巣を示した。また、その線条体さえも影響を受ける。エダラボン投与群および中-用量のアナルジェシン投与群における脳梗塞領域は、有意に減少した。これらの結果を図1に示す。
3. ラットの急性虚血脳組織における乳酸の濃度に及ぼす、アナルジェシンの効果
ラット脳組織中の乳酸の濃度は、擬似薬投与群に比して、有意な差(P<0.01)を持って、虚血傷害後に、0.98±0.09mM/gタンパクまで増大した。40U/kgアナルジェシン投与群における乳酸の濃度は、モデル群と比較して、統計的有意性(P<0.05)を持って、0.70±0.07mM/gタンパクまで有意に増大した。エダラボン投与群における乳酸の濃度は、モデル群と比較して、統計的有意性(P<0.05)を持って、0.64±0.08mM/gタンパクまで有意に増大した。これらの結果を以下の表2に示す。
【0026】
【表3】

表中の値は、平均値±S.E.M.として表示。テスト動物数:4〜6動物/群。
##:擬似薬投与群に比してP<0.01。
*:モデル群に比してP<0.05。
【0027】
4. ラット脳組織におけるスーパーオキシドジスムターゼ活性に及ぼすアナルジェシンの効果
ラット脳組織におけるSODの濃度は、虚血傷害を被った後、擬似薬投与群と比較して有意な差(P<0.01)を持って、165.84±13.14nM/gタンパクまで低下した。20u/kgおよび40u/kgのアナルジェシン投与群においては、モデル群と比較して、該濃度は有意に増大した(P<0.05)。エダラボン投与群におけるSODの濃度は、モデル群と比較して、有意に増大した(P<0.01)。これらの結果を以下の表3に示す。
【0028】
【表4】

表中の値は、平均値±S.E.M.として表示。テスト動物数:4〜6動物/群。
#:擬似薬投与群に比してP<0.05。
*:モデル群に比してP<0.05。
【0029】
実施例2:H2O2-誘発性PC12細胞障害に及ぼすアナルジェシンの効果
実験材料
1. 薬物および試薬:
PC12細胞は、インスティチュートオブベーシックメディカルサイエンスズオブチャイニーズアカデミーオブメディカルサイエンスズ(Institute of Basic Medical Sciences of Chinese Academy of Medical Sciences)から購入した。3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)、トリプサーゼ(trypsase)、ポリリジン、標準牛胎児血清(FBS)、1640培地、LDHキット(これらは、上記と同様に入手可能)。全ての他の公知の試薬は、中国国内において市販品として入手できる、分析的に純粋な試薬である。
2. 計測器:
超清浄ベンチ;フルオスター(Fluostar)マイクロプレートリーダー(BMG、ドイツ国);細胞インキュベータ(サンヨウ(Sanyo)、日本国);冷蔵遠心機DL-4000B(シャンハイアンチングサイエンティフィックインスツルメントファクトリー(Shanghai Anting Scientific Instrument Factory));および顕微鏡IX71(オリンパス(OLYMPUS))。
【0030】
実験法
1. PC12細胞の培養:
インスティチュートオブベーシックメディカルサイエンスズオブチャイニーズアカデミーオブメディカルサイエンスズにより提供されたPC12細胞を、恒温インキュベータ内で、37℃、5%CO2なる条件下で、完全1640培地(10%のウマ血清、5%牛胎児血清、10U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシンを含む)中で培養し、該培地を2-3日毎に交換した[6]
2. 細胞の処理:
正常なコントロール群:PC12細胞を、血清含有DMEM培地で正規に培養した。H2O2モデル群:PC12細胞の培養物が単層まで密集成長した後に、該元の培地を除去し、200μM/Lなる最終的濃度にてH2O2を含む、血清を含まない培地を添加し、該培養物を、37℃、5%CO2なる条件下で、24時間に渡り恒温インキュベータ内でインキュベートした。サンプル処理群:該PC12細胞培養物が、単層まで密集成長した後に、該元の培地を除去し、サンプルを添加して、1時間に渡り予備処理し、引続き200μM/Lなる最終的濃度にてH2O2で処理し、次いで該培養物を、血清を含まない条件下で24時間に渡りインキュベートした。
【0031】
3. 細胞の生存能力に関するアッセイ
各ウエルに、最終濃度0.5mg/mLとなるように、100μLのMTT溶液を添加し、この培養物を、更に37℃、5%CO2なる条件下で、4時間に渡りインキュベートし、次いでその上澄を捨てた。100μLのDMSOを各ウエルに添加し、振とうし、次いで吸光度のOD値を540nmにて測定した。細胞の生存能力= Aテストウエル/A正常なコントロールウエル*100%。
アッセイの結果
PC12細胞の生存能力は、71.94±3.54%に低下したが、これは、過酸化水素による傷害を受けた後の、正常なコントロール群と比較して、有意な差を示した(P<0.01)。また、0.25、0.5、1U/mLなるアナルジェシン投与群における該生存能力は、モデル群と比較して、有意に増大した(P<0.05)。
【0032】
【表5】

表において各値は、平均値±SDとして表示されている。各群に対して、n=3である。
正常な群に比して、#:P<0.05、##:P<0.01。
モデル群と比較して、*:P<0.05、**:P<0.01。
【0033】
実施例3:グルタミン酸による傷害を受けた神経細胞に及ぼす、アナルジェシンの保護効果
実験物質
1. 薬物および試薬:
PC12細胞は、インスティチュートオブベーシックメディカルサイエンスズオブチャイニーズアカデミーオブメディカルサイエンスズから購入した;3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)、トリプサーゼ(trypsase)、ポリリジンは、シグマ(Sigma)社から購入した。標準牛胎児血清(FBS)、1640培地は、ギブコ(Gibco)社から購入した。全ての他の公知の試薬は、中国国内において市販品として入手できる、分析的に純粋な試薬である。
2. 計測器:
超清浄ベンチ;フルオスター(Fluostar)マイクロプレートリーダー(BMG、ドイツ国);細胞インキュベータ(サンヨウ(Sanyo)、日本国);冷蔵遠心機DL-4000B(シャンハイアンチングサイエンティフィックインスツルメントファクトリー(Shanghai Anting Scientific Instrument Factory));および顕微鏡IX71(オリンパス(OLYMPUS))。
【0034】
実験法
1. PC12細胞の培養:
PC12細胞を、恒温インキュベータ内で、37℃、5%CO2なる条件下で、完全1640培地(10%のウマ血清、5%牛胎児血清、10U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシンを含む)中で培養し、該培地を2-3日毎に交換した。
2. 細胞の処理:
PC12細胞の培養物が単層まで密集成長した後に、該元の培地を除去し、1mMのL-グルタミン酸を含む、Mg2+を含まない-イーグルズ(Earle's)溶液(142.6mM/LのNaCl、5.4mM/LのKCl、1.8mM/LのCaCl2、1.0mM/LのNaH2PO4、2.38mM/LのHEPERS、5.6mM/Lのグルコース、pH 7.4、0.5μMのL-gly)を添加した。15分後に、該溶液を、血清を含まない1640培地で置換えた。測定は24時間後に行った。投与群における該溶液を、薬物を含有し、血清を含まない1640培地で置換え、該細胞を24時間に渡り培養した後に、測定を行った。
【0035】
3. 細胞生存能力のアッセイ
各ウエルに、最終濃度0.5mg/mLとなるように、100μLのMTT溶液を添加し、この培養物を、更に37℃、5%CO2なる条件下で、4時間に渡りインキュベートした。次いで、その上澄を捨てた。100μLのDMSOを、各ウエルに添加し、振とうし、次いで吸光度のOD値を540nmにて測定した。細胞生存能力=Aテストウエル/A正常なコントロールウエル*100%。
アッセイの結果
以下の表5は、グルタミン酸により傷害を受けたPC12細胞に及ぼすアナルジェシンの保護効果に関する結果を示す。
PC12細胞の生存能力は、グルタミン酸により傷害を受けた後、74.76±4.86%に低下したが、これは、正常なコントロール群と比較して、有意な差を示した(P<0.01)。また、0.25、0.5、1U/mLなるアナルジェシン投与群における該生存能力は、モデル群と比較して、有意に増大した(P<0.01)。
【0036】
【表6】

表中の値は、平均値±SDとして表示した。各群に対するテスト動物数:n=4。
#:P<0.05;##:P<0.01(正常な群と比較して)。
*:P<0.05;**:P<0.01(モデル群と比較して)。
【0037】
実施例4:脳血管の内皮細胞におけるLPSにより誘発されたICAM-1の発現または排出に及ぼすアナルジェシンの効果
実験物質
1. 薬物および試薬:
ICAM-1 ELISAアッセイキットは、ウーハンボスターバイオ-エンジニアリング社(Wuhan Boster Bio-engineering Ltd. Co.)から購入した。内皮細胞成長因子は、ロッシュ(Roche)社により提供された。牛胎児血清はギブコ(Gibco)社の製品であった。3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)、トリプサーゼ(trypsase)、ポリリジンおよびリポポリサッカライド(LPS)は、シグマ(Sigma)社から購入した。標準牛胎児血清(FBS)、1640培地は、ギブコ(Gibco)社から購入した。
2. 計測器:
超清浄ベンチ;フルオスター(Fluostar)マイクロプレートリーダー(BMG、ドイツ国);細胞培養インキュベータ(サンヨウ(Sanyo)、日本国);冷蔵遠心機DL-4000B(シャンハイアンチングサイエンティフィックインスツルメントファクトリー);顕微鏡IX71(オリンパス(OLYMPUS))およびゼニス200st UV-ビス(Zenyth200st UV-Vis)分光光度計(アントス社(Anthos Co.)、オーストリア)。
【0038】
実験法
1. ラット脳血管の内皮細胞の培養:
1-5日齢の新生ウイスター(Wistar)ラットを、断頭処置した。その皮質細胞を収穫し、均質化し、濾過した後、フィルタースクリーン上の微細血管の断片を捕集した。これらの断片を、0.10/00のコラーゲナーゼタイプIIにより消化させ、次いで遠心処理に掛けた。15%の牛胎児血清を含むM199培地を、該析出物に添加し、これをインキュベータ内で37℃にて、5%CO2の下で培養した。これらの細胞を、継代用の0.25%トリプシナーゼによって消化させた。VIIIF:Ag免疫細胞化学的アッセイを、95%を越える純度を持つ血管内皮細胞について行った。該微細血管内皮細胞の継代3を、このアッセイにおいて使用する。
2. ELISAアッセイによる内皮細胞の、ICAM-1排出量の測定:
脳血管のこれら内皮細胞を、96-ウエルプレート内で培養した。該内皮細胞が単層へと密集成長するまで、24時間に渡り刺激すべく、LPS(10μg/mL)を該ウエルに添加し、次いで得られた細胞上澄中のICAM-1を測定した。各サンプルに関するICAM-1の濃度は、標準曲線から導いた。
アッセイの結果
リポサッカライド(LPS)傷害後、該脳血管における内皮細胞により発現され、または排出されたICAM-1は、正常なコントロールと比較して有意な差(P<0.01)を示し;0.25、0.5および1U/mLのアナルジェシン投与群におけるICAM-1は、モデル群と比較して有意に増大した(P<0.01)。
【0039】
【表7】

表中の値は、平均値±SDとして表示した。各群に対するテスト動物数:n=4。
#:P<0.05;##:P<0.01(正常な群と比較して)。
*:P<0.05;**:P<0.01(モデル群と比較して)。
【0040】
実施例5:リンパ球の形質転換に及ぼすアナルジェシンの効果
実験材料
1. 薬物および試薬:
1640培地(10%の牛血清、二-抗原、グルタミンを含有)、二重蒸留水、塩水、ConAおよびPMAは、全てシグマ(Sigma)社から購入した。
2. 動物:
Balb/cマウスを、インスティチュートオブズーロジーオブチャイニーズアカデミーオブメディカルサイエンスズ(Institute of Zoology of Chinese Academy of Medical Sciences)から購入した。
3. 計測器:
超清浄ベンチ;フルオスター(Fluostar)マイクロプレートリーダー(BMG、ドイツ国);細胞培養インキュベータ(サンヨウ(Sanyo)、日本国);冷蔵遠心機DL-4000B(シャンハイアンチングサイエンティフィックインスツルメントファクトリー);顕微鏡IX71(オリンパス(OLYMPUS))およびゼニス200st UV-ビス(Zenyth200st UV-Vis)分光光度計(アントス社(Anthos Co.)、オーストリア)。
【0041】
実験法
1. Balb/Cマウスの脾臓を、無菌条件下で、公知の方法に従って集め、乳棒で穏やかに粉砕し、次いで200メッシュの鋼製篩に通し、更に1640培地で一度洗浄し、2000rpm×5分間遠心分離処理した。
2. 該細胞のペレットを、二重蒸留水および塩水で洗浄し、赤血球を崩壊させ、遠心分離処理し、得られた上澄を捨てた。細胞濃度を、1640培地で2×106/mLに調節し、次いで100μL/ウエルにて96-ウエル中に入れ、一方でConA(5μg/mLなる最終濃度)またはPMA(5μg/mLなる最終濃度)を90μL/ウエルにて添加した。該サンプルおよびシクロスポリンA(50nMなる最終濃度、正のコントロール)を、10μL/ウエルにて添加した。また、所定のウエルを、ブランクコントロールウエル(誘導物質および該薬物を含まない)または負のコントロールウエル(誘導物質を含むが、該薬物は含まず)をも樹立し、次いで37℃、5%CO2なる条件下で72時間培養した。
3. 該上澄を捨て、100μLのMTT(最終濃度0.04%)を、該培養の終了4時間前に添加した。培養終了時点において、540nmにてODを測定した。
4. リンパ球の形質転換に及ぼすサンプルの効果を、百分率として表した。ここで、正の数値は、リンパ球形質転換の改善を表し、また負の数値は、リンパ球形質転換の阻害を表す。リンパ球形質転換(%)=[(サンプルウエルのOD値)-(負のコントロールウエルのOD値)]/[(負のコントロールウエルのOD値)-(ブランクコントロールウエルのOD値)]×100%。
アッセイの結果
以下の表7に示す結果は、アナルジェシンが、リンパ球形質転換に対して、確かな阻害効果を持つことを示した。
【0042】
【表8】

【0043】
〔参考文献〕
以下に列挙する参考文献は、その内容全体を本発明の参考として、ここに組入れられるものであるが、このような参考文献を、本発明の評価のための公知文献として利用できることを承認したものと理解すべきでは決してない。
1.Koroshetz WJ, and Moskwotz MA.「ヒトの発作に対する芽生えつつある治療(Emerging treatments for stroke in human)」. Trends Pharmacol Sci. 1996, 17(6): 227-233.
2.Higashida RT, Furlan AJ, Roberts H, Tomsick T, Connors B, Barr J, Dillon W, Warach S, Broderick J, Tilley B, Sacks D.「急性虚血性発作に対する、動脈内脳血栓溶解に係る試験的デザインおよび報告の基準(Trial design and reporting standards for intra- arterial cerebral thrombolysis for acute ischemic stroke)」. Stroke. 2003, 34: 109-137.
3.Feng YP.「虚血性発作の病態生理学および薬物介入の現状(Pathophysiology of ischemic stroke and status of drug intervention)」. Acta Pharm Sin. 1999, 34: 72-78.
4.Fisher M, Bogosky J.「急性虚血性発作のための効果的治療に向けての更なる評価(Further evaluation toward effective therapy for acute ischemic stroke)」. JAMA. 1998, 279: 1298-1303.
5.Longa EZ, Weinstein PR, Carlson S, Cummins R.「ラットにおける頭蓋骨局部切除なしの、可逆的中大脳動脈閉塞(Reversible middle cerebral artery occlusion without craniectomy in rats)」. Stroke. 1989, 20: 84-91.
6.Maier CM, Ahern K, Cheng ML等,「一過性脳虚血の病巣モデルにおける、中度の低体温法の最適深度および期間:神経学的な結果、梗塞部のサイズ、アポトーシス、および炎症に及ぼす効果(Optimal depth and duration of mild hypothermia in a focal model of transient cerebral ischemia: effects on neurologic outcome, infarct size, apoptosis, and inflammation)」. Stroke. 1998, 29: 2171-2180.
7.Bederson JB, Pitts LH, Tsuji M等, 「ラットの中大脳動脈梗塞:神経学的検査のモデルおよび発展に関する評価(Rat middle cerebral artery occlusion: evaluation of the model and development of a neurologic examination)」. Stroke. 1986, 17:472-476.
8.Belayev L, Alonso OF, Busto R, Zhao W, Ginsberg MD.「管腔内縫合による、ラットにおける中大脳動脈閉塞:改善されたモデルの神経学的および病理学的評価(Middle cerebral artery occlusion in the rat by intraluminal suture: Neurological and pathological evaluation of an improved model)」. Stroke. 1996, 27: 1616-1622.
9.Bederson JB, Pitts LH, Germano SM.「ラットにおける実験的脳梗塞の検出および定量のための染色剤としての2,3,5-トリフェニルテトラゾリウムクロリドの評価(Evaluation of 2,3,5-triphenyltetrazolium chloride as a stain for detection and quantification of experimental cerebral infarction in rats)」. Stroke. 1986, 17:1304-1309.
10.Bradford, MM.「タンパク質-染料結合原理を利用する、μg量のタンパク質定量のための迅速かつ高感度法(A rapid and sensitive method for the quantition of microgram quantities of protein utilizing the principle of protein-dye binding)」. Anal. Biochem. 1976, 72: 248-252.
11.Okawa M, Kinjo J, Nohara T;「幾つかの薬用植物から得たフラボノイドのDPPH(1, 1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル)ラジカル捕獲活性(DPPH (1, 1-diphenyl-2-picrylhydrazyl) radical scavenging activity of flavonoids obtained from some medicinal plants)」. Biol Pharm Bull. 2001; 24(10):1202-5.
12.Leizhimeing, Xuebin, Zhaoxilong等,「721分光光度計を用いた、MTT着色反応アッセイによる、リンパ球増殖の測定(Determination of the proliferation of lymphocyte by MTT color reaction assay using 721 spectrophotometer )」, Current Immunology , 1990; 10(3): 172.
13.Emerich DF, Dean RL, Bartes RT等,「脳虚血に伴う白血球の役割:梗塞をもたらす、病理状の変量または局外変量(The role of leukocytes following cerebral ischemia: pathogenic variable or bystander reaction to emerging infarct)」. Exp Neurol, 2002, 173:168.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワクシニアウイルスにより炎症を起こしたウサギ皮膚由来の抽出物の、哺乳動物における急性脳血管疾患の治療用医薬の製造における使用。
【請求項2】
前記急性脳血管疾患が、急性虚血性脳血管疾患である、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記急性虚血性脳血管疾患が、脳塞栓症、一過性脳虚血発作、脳血栓症、脳動脈硬化症、脳動脈炎、脳動脈の盗血症候群、頭蓋静脈洞および静脈血栓症からなる群から選択される、請求項2記載の使用。
【請求項4】
前記疾患を、神経機能の改善、脳梗塞領域の低減、脳組織中の乳酸濃度の低減および/またはSOD活性の増大を通して、前記医薬により治療する、請求項1記載の使用。
【請求項5】
前記疾患を、神経細胞の保護を通して、前記医薬によって治療する、請求項1記載の使用。
【請求項6】
前記医薬が、PC12細胞のH2O2-誘発性傷害を改善し、PC12細胞のグルタミン酸-誘発性傷害を改善し、脳血管中の内皮細胞によるICAM-1の発現または排出を阻害し、および/またはT-およびB-リンパ球の形質転換を阻害する、請求項5記載の使用。
【請求項7】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1〜6の何れか1項に記載の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2012−508192(P2012−508192A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534986(P2011−534986)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【国際出願番号】PCT/CN2009/001181
【国際公開番号】WO2010/054531
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(511113383)バンワールド ファーマシューティカル(ルガオ) カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】