説明

ワクチン

本発明は、ヒトパピローマウイルスにより引き起こされる感染を治療するための方法およびワクチンに関する。HPV16およびHPV18のウイルス様粒子で免疫化することにより他のHPV型に対する交差防御が提供されることを確認した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
パピローマウイルスは、きわめて種特異的な小型のDNA腫瘍ウイルスである。これまでに、100を超える異なるヒトパピローマウイルス(HPV)遺伝子型が報告されている。HPVは、一般的には、皮膚に特異的であるか(たとえば、HPV-1およびHPV-2)または粘膜表面に特異的であるか(たとえば、HPV-6およびHPV-11)のいずれかであり、通常は、数ヶ月間または数年間にわたり持続する良性の腫瘍(疣贅)を引き起こす。そのような良性の腫瘍は、関係する個体に苦痛を与えることはあるが、若干の例外を除いて、命にかかわることはほとんどない。
【0003】
いくつかのHPVは、癌にも関連しており、癌原性HPV型として知られる。HPVとヒト癌との間の最も強い正の相関は、HPV-16およびHPV-18と子宮頸癌との間に存在する相関である。子宮頸癌は、発展途上国において最も多く見受けられる悪性疾患であり、毎年、世界中で約500,000例の新規症例が発生している。
【0004】
癌を引き起こす可能性のある他のHPV型は、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、66、および68型である(「癌原性HPV型」と呼ばれる)。16型および18型は、子宮頸癌との相関が最も高い型である。31型および45型は、癌にかかる危険性との相関が次に最も高い型である(Munoz N, Bosch FX, de Sanjose S et al. International Agency for Research on Cancer Multicenter Cervical Cancer Study Group. N Engl J Med 2003; 348: 518-27.)。
【0005】
HPVウイルス様粒子(VLP)は、HPVを治療できる可能性のあるワクチンとして提案されている。動物試験の結果、VLPは、他のHPV型の感染に対して交差防御を示さないことが明らかにされている。たとえば、Suzich, J. A., et al, Proc Natl Acad Sci, 92: 11553-11557, 1995, and Breitburd, Seminars in Cancer Biology, vol 9, 1999, pp 431 - 445を参照されたい。
【0006】
WO2004/056389には、HPV16,18VLPワクチンは、16型および18型以外のHPV型による感染に対して交差防御を提供しうると開示されている。統計学的に有意な防御は、特定のグループのHPV型に対して観察された。しかしながら、グループ内の個々の型に対する交差防御のレベルは、開示されなかった。
複数のHPV型を防御するワクチンの必要性は、依然として存在する。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
本発明は、多価HPVワクチンに関する。該ワクチンは、少なくとも3つの異なる癌原性HPV型(それらの型は、HPV16とHPV18とを含む)に由来するL1タンパク質またはその免疫原性断片を含む。ただし、該ワクチンは、HPV31、HPV45、HPV52、またはそれらの任意の組合せよりなるリストから選択されるHPV型に由来するL1タンパク質およびその免疫原性断片のいずれをも含まない。
【0008】
本発明はさらに、HPV31、HPV45、およびHPV52よりなる群に属する1種以上による感染および/または疾患を予防するための医薬の製造における、HPV16およびHPV18に由来するL1タンパク質またはその免疫原性断片を含む組成物の使用に関する。
【0009】
本発明はさらに、個体における細胞学的異常の予防および/または細胞学的異常の発生頻度の低減および/またはCIN病変(ASCUS、CIN1、CIN2、CIN、子宮頸癌)の予防のための医薬の製造における、HPV16およびHPV18に由来するL1タンパク質またはその免疫原性断片を含む組成物の使用に関する。ただし、該異常または該病変は、HPV16およびHPV18のいずれでもない少なくとも1種のHPV型により引き起こされ、好適には、HPV31型もしくは45型もしくは52型またはそれらの組合せにより引き起こされる。
【0010】
本発明はさらに、HPVの感染および/または疾患の予防および/または治療の方法に関する。該方法は、それを必要とする個体に、少なくとも3つの異なる癌原性HPV型(それらの型は、HPV16とHPV18とを含む)に由来するL1タンパク質またはその免疫原性断片を含む有効量の組成物を送達することを含む。ただし、該ワクチンは、HPV31、HPV45、HPV52、またはそれらの任意の組合せよりなるリストから選択されるHPV型に由来するL1タンパク質およびその免疫原性断片のいずれをも含まない。
【0011】
本発明はさらに、HPVの感染および/または疾患の予防および/または治療のための医薬の製造における多価組成物の使用に関する。該多価組成物は、少なくとも3つの異なる癌原性HPV型(それらの型は、HPV16とHPV18とを含む)に由来するL1タンパク質またはその免疫原性断片を含む。ただし、該ワクチンは、HPV31、HPV45、HPV52、またはそれらの任意の組合せよりなるリストから選択されるHPV型に由来するL1タンパク質およびその免疫原性断片のいずれをも含まず、かつ該医薬は、除外されたHPV型により引き起こされる感染および/または疾患に対する防御を提供する。
【0012】
本発明はまた、ワクチンの製造方法に関する。該方法は、少なくとも3つの異なる癌原性HPV型(それらの型は、HPV16型およびHPV18型を含む)に由来するL1タンパク質またはその免疫原性断片を組み合わせることを含む。ただし、該ワクチンは、HPV31、HPV45、HPV52、またはそれらの任意の組合せよりなるリストから選択されるHPV型に由来するL1タンパク質およびその免疫原性断片のいずれをも含まない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
詳細な説明
特定のグループのHPV型に関して評価したときの偶発性感染および持続性感染の両方に対してHPV16およびHPV18により与えられる交差防御の一般的存在については、WO2004/056389に開示されている。
【0014】
我々は、驚くべきことに、特定の(非HPV16、非HPV18)HPV型に対する交差防御(その型に対するHPV16・HPV18ワクチンの効力により評価される)が特定の他の(非HPV16、非HPV18)HPV型に対する交差防御よりも高いことを見いだした。交差防御は、異なるHPV型により引き起こされる感染(偶発性もしくは持続性)および/または疾患に対して1種のHPV型を含有するワクチンにより与えられる防御とみなせる。交差防御は、ワクチンの効力(V.E.)を考慮することにより評価可能である。ただし、V.E.とは、所与の型を対象としてプラセボ群と比較したときのワクチンによる感染または疾患の防御の改良%のことである。
【0015】
感染は、偶発性もしくは持続性の感染でありうる。疾患は、HPV感染に関連付けられる異常な細胞学的所見、ASCUS、CIN1、CIN2、CIN3、または子宮頸癌でありうる。感染は、たとえば、PCRにより評価可能である。疾患は、たとえば、組織学的検査またはp16のようなバイオマーカーの分析により評価可能である。
【0016】
そのような知見は、ワクチンのデザインが可能であることを示唆する。たとえば、HPV16およびHPV18のL1を含有するワクチンによりHPV31、HPV45、およびHPV52のような特定の他のHPV型に対して与えられる交差防御のレベルから判断して、HPV16およびHPV18を含むワクチンからこれらのHPV型に由来するL1成分を除外しても、依然としてそれらの除外された型に関連付けられる偶発性および/または持続性の感染および/または疾患に対するなんらかの防御を提供するワクチンの提供が可能である。
【0017】
子宮頸癌の発生頻度に関して、HPV16型(子宮頸癌の53.5%に見いだされる)、18型(子宮頸癌の17.2%に見いだされる)の次に最も有意なのは、45型(6.7%)および31型(2.9%)である(Munoz et al. supra)。HPV33(2.6%)がその次であり、HPV52(2.3%)がそれに続く。したがって、子宮頸癌に対して少なくともHPVの3つの型を含有する多価HPVワクチンをデザインする場合、当業者であれば、一般的には、統計的観点から16型および18型の次に31型および45型を組み込むであろう。
【0018】
物理的、化学的、調節的な制約、または他の制約などによりワクチン中の全抗原量が制限される可能性があると予想される場合、特定のHPV型に由来する抗原を除外できれば、潜在的に、他のHPV型に由来するL1タンパク質または実際には他のウイルスもしくは病原体に由来する抗原をワクチンに組み込むことが可能である。
【0019】
具体的には、他のHPV型としては、HPV31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、66、および68のような癌原性HPV型が挙げられる。
【0020】
本発明は、多価HPVワクチンに関する。該ワクチンは、少なくとも3つの異なる癌原性HPV型(それらの型は、HPV16とHPV18とを含む)に由来するL1タンパク質またはその免疫原性断片を含む。ただし、該ワクチンは、HPV31、HPV45、HPV52、またはそれらの任意の組合せよりなるリストから選択されるHPV型に由来するL1タンパク質およびその免疫原性断片のいずれをも含まない。
【0021】
本発明の一態様において、ワクチンは、HPV31に由来するL1タンパク質およびその免疫原性断片のいずれをも含有しない。
【0022】
本発明の一態様において、ワクチンは、HPV31による偶発性および/または持続性のHPV感染に対する防御を提供しうる。
【0023】
本発明の一態様において、本発明に係るワクチンは、HPV45に由来するL1タンパク質およびその免疫原性断片のいずれをも含有しない。
【0024】
本発明の一態様において、ワクチンは、HPV45による偶発性および/または持続性のHPV感染に対する防御を提供しうる。
【0025】
本発明の一態様において、ワクチンは、HPV52に由来するL1タンパク質およびその免疫原性断片のいずれをも含有しない。
【0026】
本発明の一態様において、ワクチンは、HPV52による偶発性および/または持続性のHPV感染に対する防御を提供しうる。
【0027】
本発明の一態様において、本発明に係るワクチンは、HPV31およびHPV45に由来するL1タンパク質およびその免疫原性断片のいずれをも含有しない。
【0028】
本発明の一態様において、ワクチンは、HPV31およびHPV45の両方による偶発性および/または持続性のHPV感染に対する防御を提供しうる。
【0029】
本発明の一態様において、ワクチンは、HPV31およびHPV52に由来するL1タンパク質およびその免疫原性断片のいずれをも含有しない。
【0030】
本発明の一態様において、ワクチンは、HPV31およびHPV52の両方による偶発性および/または持続性のHPV感染に対する防御を提供しうる。
【0031】
本発明の一態様において、本発明に係るワクチンは、HPV45およびHPV52に由来するL1タンパク質およびその免疫原性断片のいずれをも含有しない。
【0032】
本発明の一態様において、ワクチンは、HPV52およびHPV45の両方による偶発性および/または持続性のHPV感染に対する防御を提供しうる。
【0033】
本発明の一態様において、ワクチンは、HPV31およびHPV45およびHPV52による偶発性および/または持続性のHPV感染に対する防御を提供しうる。
【0034】
好適には、ワクチンは、持続性感染に対する防御を行いうる。
好適には、ワクチンは、偶発性感染に対する防御を行いうる。
偶発性および持続性の子宮頸部感染は、実施例1に定義される。
【0035】
我々はまた、HPV16 L1タンパク質とHPV18 L1タンパク質とを含むワクチン(たとえば、実施例1に記載されるようなワクチン)が、HPV52のような特定の他の癌原性HPV型により引き起こされる細胞学的異常に対する防御を提供し、かつHPVハイリスク型(31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、66、および68型として定義される)のグループにより引き起こされるそのような異常に対して有意に防御性であることを確認した。細胞学的異常は、好適には、周知のパップスメア法により検出される。
【0036】
したがって、本発明はさらに、個体において他の(非HPV16、非HPV18)HPV型、好適には癌原性HPV型により引き起こされる細胞学的異常の予防または細胞学的異常の発生頻度の低減のための組成物の調製における、ならびにHPV16およびHPV18のいずれでもないHPV型による感染に関連付けられる組織学的に確認されるCIN病変(CIN1、CIN2、CIN3)および子宮頸癌の予防における、HPV16に由来するL1タンパク質またはその免疫原性断片とHPV18に由来するL1タンパク質またはその免疫原性断片との組合せの使用に関する。該使用はさらに、ワクチン中のHPV型であるHPV16およびHPV18により引き起こされるそのような事象の予防または低減をも対象とする。
【0037】
好適には、細胞学的異常の予防、細胞学的異常の発生頻度の低減、または組織学的に確認されるCIN病変の予防は、組合せに含まれない型、好適には、HPV31、HPV45、およびHPV52よりなるリストから選択される型により引き起こされる異常もしくは病変に対する予防であるか、または31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、66、および68型のグループにより引き起こされる異常もしくは病変に対する予防である。該使用はさらに、ワクチン中のHPV型であるHPV16およびHPV18により引き起こされるそのような事象の予防または低減をも対象とする。
【0038】
好適には、以上のように使用するためのHPV16とHPV18とを含む組成物は、本発明に係る多価HPVワクチンである。該ワクチンは、少なくとも3つの異なる癌原性HPV型(それらの型は、HPV16とHPV18とを含む)に由来するL1タンパク質またはその免疫原性断片を含む。ただし、該ワクチンは、HPV31、HPV45、HPV52、またはそれらの任意の組合せよりなるリストから選択されるHPV型に由来するL1タンパク質およびその免疫原性断片のいずれをも含まない。
【0039】
本発明に係るワクチンは、HPV16、HPV18、および少なくとも1種の他の癌原性HPV型に由来するL1または免疫原性断片を含む。癌原性HPV型とは、子宮頸癌にかかる危険性に関連付けられる型のことであり、HPV16およびHPV18に加えて本発明に係るワクチンに含まれうる癌原性型としては、HPV31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、66、および68が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ただし、ワクチンは、HPV31、45、および52のすべてを含んでいるわけではない。
【0040】
本発明に係るワクチンは、好適には、HPV33 L1タンパク質またはその免疫原性断片を含む。
【0041】
本発明に係るワクチンは、好適には、HPV58 L1タンパク質またはその免疫原性断片を含む。
【0042】
本発明に係るワクチンは、好適には、HPV59 L1タンパク質またはその免疫原性断片を含む。
【0043】
本発明に係るワクチンは、好適には、HPV16 L1タンパク質またはその免疫原性断片と、HPV18 L1タンパク質またはその免疫原性断片と、HPV33 L1タンパク質またはその免疫原性断片と、HPV58 L1タンパク質またはその免疫原性断片とを含む。
【0044】
皮膚型(具体的には、HPV5およびHPV8)や陰部疣贅に関連付けられる型(たとえば、HPV6およびHPV11)のような追加のHPV型に由来するL1タンパク質またはL1タンパク質断片を本発明に係るワクチンに組み込むことが可能である。6型および11型は、本明細書中では癌原性型であるとはみなされない。
【0045】
本発明の一態様において、ワクチンは、HPV初期抗原、たとえば、HPV E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7、またはE8よりなるリストから選択される抗原を含んでいてもよい。他の態様において、ワクチンは、HPV初期抗原、たとえば、HPV E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7、またはE8よりなるリストから選択される抗原を欠如してもよい。
【0046】
一態様において、本発明に係るワクチンは三価である(3つの異なる癌原性HPV型に由来するHPV L1またはその断片を含有する)。さらなる態様において、ワクチンは四価である。さらなる態様において、ワクチンは五価である。さらなる態様において、ワクチンは七価である。さらなる態様において、ワクチンは七価である。さらなる態様において、ワクチンは八価である。より高次の価数もまた、本発明に利用可能であると考えられる。さらなる態様において、ワクチンは、癌原性HPV型に関して、少なくとも四価、五価、七価、七価、または八価である。
【0047】
好ましくは、ワクチン内のHPV成分の組合せは、いずれの1種のHPV成分の免疫原性に対しても有意な影響を及ぼさない。具体的には、本発明に係る混合ワクチンがワクチン中に提供される各HPV遺伝子型により引き起こされる感染または疾患に対する有効な防御を提供できるように、本発明に係る組合せ中のHPV抗原間に生物学的に関連する干渉は存在しないことが好ましい。好適には、組合せ中の所与のHPV型に対する免疫応答は、個別に測定したときのそれと同一のHPV型の免疫応答の少なくとも50%、好ましくは100%または実質的に100%である。HPV16およびHPV18に対する応答に関して、本発明に係る混合ワクチンは、好ましくは、混合HPV16/HPV18ワクチンにより提供される免疫応答の少なくとも50%の免疫応答を刺激する。好適には、本発明に係るワクチンにより生成される免疫応答は、各HPV型の防御効果が依然として観察されるレベルにある。免疫応答は、好適には、たとえば、前臨床実験または人体実験のいずれかにおいて抗体応答による測定されうる。抗体応答の測定については、当技術分野で周知であり、(たとえば)WO03/077942に開示されている。
【0048】
我々は、HPV16 L1L1タンパク質とHPV18 L1タンパク質とを含むワクチン(たとえば、実施例1を参照されたい)が、特定のHPV型により引き起こされる感染または疾患に対する交差防御を提供することを確認した。新規な組成物を提供するだけでなく、この情報により、新たな用途を開発することが可能である。
【0049】
特に、本発明は、HPV31による感染の予防のための医薬の製造における、HPV16 L1タンパク質またはその免疫原性断片とHPV18 L1タンパク質またはその免疫原性断片とを含む組成物の使用に関する。
【0050】
本発明はさらに、HPV45による感染の予防のための医薬の製造における、HPV16 L1タンパク質またはその免疫原性断片とHPV18 L1タンパク質またはその免疫原性断片とを含む組成物の使用に関する。
【0051】
本発明はさらに、HPV52による感染の予防のための医薬の製造における、HPV16 L1タンパク質またはその免疫原性断片とHPV18 L1タンパク質またはその免疫原性断片とを含む組成物の使用に関する。
【0052】
一態様において、本発明は、HPV31もしくはHPV52またはそれらの任意の組合せにより引き起こされる感染および/または疾患の予防のための医薬の調製における、HPV16 L1タンパク質またはその免疫原性断片を含むワクチンの使用に関する。
【0053】
一態様において、本発明は、HPV45により引き起こされる感染および/または疾患の予防のための医薬の調製における、HPV18 L1タンパク質またはその免疫原性断片を含むワクチンの使用に関する。
【0054】
該使用に供される組成物は、交差防御が提供されるHPV型に由来する抗原性成分を欠如しうる。他の選択肢として、該使用に供される組成物は、そのような抗原性成分、たとえば、交差防御される該型に由来するL1タンパク質またはその断片を含みうる。後者の場合、HPV16 L1タンパク質またはその免疫原性断片とHPV18 L1タンパク質またはその免疫原性断片とを含む組成物の使用は、交差防御(たとえば、HPV31、HPV45、およびHPV52に対する防御)と同種防御(たとえば、HPV16およびHPV18に対する防御)との両方を提供する。
【0055】
一態様において、組成物は、HPV16、HPV18、および少なくとも1種の他の癌原性HPV型に由来するL1タンパク質またはその免疫原性断片を含む多価組成物である。ただし、HPV31、HPV45、およびHPV52よりなる群から選択される1種以上のHPV型に由来するL1タンパク質またはその免疫原性断片は、ワクチンから除外され、かつワクチンは、除外されたHPV型により引き起こされる感染に対する防御を提供する。
【0056】
本発明に係るワクチンまたは組成物がL1の免疫原性断片を含む場合、HPV L1の好適な免疫原性断片としては、L1のトランケート突然変異体、欠失突然変異体、置換突然変異体、または挿入突然変異体が挙げられる。そのような免疫原性断片は、好適には、免疫応答を惹起しうるものであり(必要であれば、アジュバント化されたとき)、該免疫応答は、L1タンパク質の誘導に用いられたHPV型に由来するL1タンパク質(たとえば、ウイルス様粒子)を認識しうるものである。
【0057】
HPV16の好適な免疫原性断片は、HPV31およびHPV52のうちの少なくとも一方に対する交差防御が可能であり、本発明の一態様において、両方に対する交差防御が可能である。
【0058】
HPV18の好適な免疫原性断片は、HPV45に対する交差防御が可能である。
【0059】
HPV16および/またはHPV18の免疫原性断片により取得可能な交差防御は、たとえば実施例1に概説されているように、ヒトにおける試験により評価可能である。
【0060】
同様に、本発明に係るさまざまなワクチンは、ワクチンが免疫原性であることを確認すべく、標準的方法を用いて(たとえば、実施例1の場合のように)または標準的前臨床モデルで検査可能である。
【0061】
好適な免疫原性L1断片としては、トランケート型L1タンパク質が挙げられる。一態様において、トランケートは、核局在化シグナルを除去する。他の態様において、トランケートは、C末端トランケートである。さらなる態様において、C末端トランケートは、50個未満のアミノ酸、たとえば40個未満のアミノ酸を除去する。L1がHPV16に由来する場合、他の態様において、C末端トランケートは、HPV16 L1に由来する34個のアミノ酸を除去する。L1がHPV18に由来する場合、さらなる態様において、C末端トランケートは、HPV18 L1に由来する35個のアミノ酸を除去する。トランケート型L1タンパク質については、US 6,060,324、US 6,361,778、およびUS 6,599,508(参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載されている。
【0062】
一態様において、HPV16のアミノ酸配列は、以下の配列である:(配列番号1)
MSLWLPSEATVYLPPVPVSKVVSTDEYVARTNIYYHAGTSRLLAVGHPYFPIKKPNNNKI 60
LVPKVSGLQYRVFRIHLPDPNKFGFPDTSFYNPDTQRLVWACVGVEVGRGQPLGVGISGH 120
PLLNKLDDTENASAYAANAGVDNRECISMDYKQTQLCLIGCKPPIGEHWGKGSPCTNVAV 180
NPGDCPPLELINTVIQDGDMVDTGFGAMDFTTLQANKSEVPLDICTSICKYPDYIKMVSE 240
PYGDSLFFYLRREQMFVRHLFNRAGAVGENVPDDLYIKGSGSTANLASSNYFPTPSGSMV 300
TSDAQIFNKPYWLQRAQGHNNGICWGNQLFVTVVDTTRSTNMSLCAAISTSETTYKNTNF 360
KEYLRHGEEYDLQFIFQLCKITLTADVMTYIHSMNSTILEDWNFGLQPPPGGTLEDTYRF 420
VTSQAIACQKHTPPAPKEDPLKKYTFWEVNLKEKFSADLDQFPLGRKFLLQ 471
【0063】
他の態様において、本発明は、以上のアミノ配列を有するHPV16 L1のみで構成されたウイルス様粒子と、そのようなVLPを含有する組成物とに関する。
【0064】
HPV16の配列はまた、WO9405792またはUS6649167に開示されている配列、たとえば、好適にはトランケート型配列であってもよい。好適なトランケート型は、配列比較により評価したときに、以上に示された位置と等価な位置でトランケートされる。
【0065】
一態様において、HPV18のアミノ酸配列は、以下の配列である:(配列番号2)
MALWRPSDNTVYLPPPSVARVVNTDDYVTRTSIFYHAGSSRLLTVGNPYFRVPAGGGNKQ 60
DIPKVSAYQYRVFRVQLPDPNKFGLPDNSIYNPETQRLVWACVGVEIGRGQPLGVGLSGH 120
PFYNKLDDTESSHAATSNVSEDVRDNVSVDYKQTQLCILGCAPAIGEHWAKGTACKSRPL 180
SQGDCPPLELKNTVLEDGDMVDTGYGAMDFSTLQDTKCEVPLDICQSICKYPDYLQMSAD 240
PYGDSMFFCLRREQLFARHFWNRAGTMGDTVPPSLYIKGTGMRASPGSCVYSPSPSGSIV 300
TSDSQLFNKPYWLHKAQGHNNGVCWHNQLFVTVVDTTRSTNLTICASTQSPVPGQYDATK 360
FKQYSRHVEEYDLQFIFQLCTITLTADVMSYIHSMNSSILEDWNFGVPPPPTTSLVDTYR 420
FVQSVAITCQKDAAPAENKDPYDKLKFWNVDLKEKFSLDLDQYPLGRKFLVQ 472
【0066】
他の態様において、本発明は、以上のアミノ配列を有するHPV18 L1のみで構成されたウイルス様粒子と、そのようなVLPを含有する組成物とに関する。
【0067】
他の選択肢のHPV18の配列については、WO9629413に開示されており、好適には、トランケート型でありうる。好適なトランケート型は、配列比較により評価したときに以上に示された位置と等価な位置でトランケートされる。
【0068】
他のHPV16およびHPV18の配列は、当技術分野で周知であり、本発明で使用するのに好適でありうる。
【0069】
HPV31、HPV45、およびHPV52の好適なトランケートを行うことも可能であり、好適には、配列アライメントにより評価したときに以上に記載されたC末端部分と等価なL1タンパク質のC末端部分が除去される。
【0070】
トランケート型L1タンパク質については、たとえば、WO9611272およびUS6066324(参照により本明細書に組み入れられるものとする)に開示されている。
【0071】
本発明に係るL1タンパク質または断片は、場合により、L1タンパク質とL2または初期タンパク質との融合体のような融合タンパク質の形態をとりうる。
【0072】
HPV L1タンパク質は、好適には、カプソマーまたはウイルス様粒子(VLP)の形態をとる。一態様において、HPV VLPを本発明に使用することが可能である。HPV VLPとVLPの製造方法とについては、当技術分野で周知である。VLPは、典型的には、L1と場合によりウイルスのL2構造タンパク質とから構築される。たとえば、WO9420137、US5985610、W09611272、US6599508B1、US6361778B1、EP 595935を参照されたい。交差防御を提供する任意の好適なHPV VLP、たとえば、L1 VLPまたはL1+L2 VLPを本発明に使用することが可能である。
好適には、VLPは、L1のみのVLPである。
【0073】
本発明の一態様において、ワクチンはHPV16 L1およびHPV18 L1のみのVLPを含み、好適には、HPV31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、66、および68から選択されるL1 VLPとの組み合わせである。ただし、ワクチンは、HPV31、45、および52のすべてに由来するVLPを含んでいるわけではない。
【0074】
VLPの形成は、電子顕微鏡観察や動的レーザー光散乱などのような標準的方法により評価可能である。
【0075】
VLPは、全長L1タンパク質を含みうる。一態様において、VLPの形成に使用されるL1タンパク質は、以上に記載したようなトランケート型L1タンパク質である。
【0076】
VLPは、酵母細胞や昆虫細胞(たとえばバキュロウイルス細胞)のような任意の好適な細胞基材中で作製可能であり、VLPの調製方法は、当技術分野で周知である(たとえば、WO9913056、US 6416945B1、US 6261765B1、およびUS6245568、およびそれらに記載の参考文献(参照によりその全内容が本明細書に組み入れられるものとする))。
【0077】
VLPは、好適には、脱集合・再集合法により作製される。該方法は、より安定かつ/または均一なパピローマウイルスVLPを提供しうる。たとえば、McCarthy et al, 1998 "Quantitative Disassembly and Reassembly of Human Papillomavirus Type 11 Virus like Particles in Vitro" J. Virology 72(1):33-41には、VLPの均一調製物を得るべく昆虫細胞から精製された組換えL1 HPV11 VLPの脱集合および再集合が記載されている。WO9913056およびUS6245568にも、HPV VLPを作製するための脱集合/再集合法が記載されている。
【0078】
一態様において、HPV VLPは、WO9913056またはUS6245568に記載されるように作製される。
【0079】
本発明に係るHPV L1は、アジュバントまたは免疫刺激剤、たとえば、限定されるものではないが、任意の起源の解毒型リピドAおよびリピドAの非毒性誘導体、サポニン、ならびにTH1型応答を刺激しうる他の試薬と組み合わせることが可能である。
【0080】
腸内細菌性リポポリサッカライド(LPS)が免疫系の強力な刺激剤であることはかなり前から知られているが、それをアジュバントに使用することは、その毒性作用が原因で制限されてきた。還元性末端グルコサミンからコア炭水化物基およびリン酸を除去することにより生成されるLPSの非毒性誘導体モノホスホリルリピドA(MPL)は、Ribiら(1986, Immunology and Immunopharmacology of bacterial endotoxins, Plenum Publ. Corp., NY, p407-419)により報告されており、以下の構造を有する:
【化1】

【0081】
MPLのさらなる解毒体は、ジサッカライド主鎖の3位からアシル鎖を除去することにより得られ、3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)と呼ばれる。それは、GB 2122204Bに教示されている方法により精製および調製が可能であり、この参考文献には、ジホスホリルリピドAおよびその3-O-脱アシル化体の調製についても開示されている。
【0082】
3D-MPLの好適な形態は、直径0.2μm未満の小粒子サイズを有するエマルジョンの形態であり、その製造方法については、WO 94/21292に開示されている。モノホスホリルリピドAと界面活性剤とを含む水性製剤については、WO9843670A2に記載されている。
【0083】
本発明に係る組成物中に製剤化される細菌リポポリサッカライド由来アジュバントは、細菌源から精製され処理されたものでありうるか、または他の選択肢として合成されたものでありうる。たとえば、精製モノホスホリルリピドAについては、Ribi et al 1986(supra)に記載されており、サルモネラ属の種(Salmonella sp.)に由来する3-O-脱アシル化モノホスホリル(またはジホスホリル)リピドAについては、GB 2220211およびUS 4912094に記載されている。他の精製リポポリサッカライドおよび合成リポポリサッカライドについても、報告されている(Hilgers et al., 1986, Int.Arch.Allergy.Immunol. , 79(4):392-6; Hilgers et al., 1987, Immunology, 60(1):141-6;およびEP 0 549 074 B1)。一態様において、細菌リポポリサッカライドアジュバントは、3D-MPLである。
【0084】
したがって、本発明に使用しうるLPS誘導体は、LPSまたはMPLまたは3D-MPLに構造が類似している免疫刺激剤である。本発明の他の態様において、LPS誘導体は、上記のMPL構造の一部であるアシル化モノサッカライドでありうる。
【0085】
サポニンについては、Lacaille-Dubois, M and Wagner H. (1996. A review of the biological and pharmacological activities of saponins. Phytomedicine vol 2 pp 363-386)に教示されている。サポニンは、植物界および海洋動物界に広く分布するステロイドグリコシドまたはトリテルペングリコシドである。サポニンは、コロイド水溶液(振盪させると泡立つ)を形成することおよびコレステロールを沈殿させることで有名である。サポニンが細胞膜の近傍に存在する場合、サポニンは、膜中に細孔状構造を形成して膜の破壊を引き起こす。赤血球の溶血は、この現象の一例であり、特定のサポニン(すべてというわけではない)の性質である。
【0086】
サポニンは、全身投与に供されるワクチン中のアジュバントとして知られる。個々のサポニンのアジュバント活性および溶血活性については、当技術分野で広範に研究されてきた(Lacaille-Dubois and Wagner, supra)。たとえば、キルA(Quil A)(南米の木キラヤ・サポナリア・モリナ(Quillaja saponaria Molina)の樹皮から誘導される)およびその一部分については、US 5,057,540および"Saponins as vaccine adjuvants", Kensil, C. R., Crit Rev Ther Drug Carrier Syst, 1996, 12 (1-2):1-55;およびEP 0 362 279 B1に記載されている。キルA(Quil A)の一部分を含む微粒子状構造(免疫刺激性複合体(ISCOMS)と称される)は、溶血性であり、ワクチンの製造に使用されてきた(Morein, B., EP 0 109 942 B1; WO 96/11711; WO 96/33739)。溶血性サポニンQS21およびQS17(キルA(Quil A)のHPLC精製された一部分)は、強力な全身性アジュバントとして報告されており、その製造方法は、米国特許第5,057,540号およびEP 0 362 279 B1に開示されている。全身性ワクチン試験に使用されてきた他のサポニンとしては、他の植物種、たとえば、ジプソフィラ(Gypsophila)およびサポナリア(Saponaria)から誘導されるものが挙げられる(Bomford et al., Vaccine, 10(9):572-577, 1992)。
【0087】
増強された系は、非毒性リピドA誘導体とサポニン誘導体との組合せ、具体的には、WO 94/00153に開示されているようなQS21と3D-MPLとの組合せまたはWO 96/33739に開示されているようにQS21をコレステロールでクエンチングしてなるより低い反応原性の組成物を含む。
【0088】
水中油型エマルジョン中にQS21と3D-MPLとを含む特に強力なアジュバント製剤がWO 95/17210に記載されており、このアジュバントの使用は、本発明の態様を構成する。
【0089】
したがって、本発明の一実施形態では、解毒型リピドAまたはリピドAの非毒性誘導体でアジュバント化されたワクチン、より好適には、モノホスホリルリピドAまたはその誘導体でアジュバント化されたワクチンを提供する。
【0090】
一態様において、ワクチンは、サポニン(たとえばQS21)をさらに含む。
【0091】
一態様において、ワクチン製剤は、水中油型エマルジョンを含む。本発明はまた、3D-MPLのような製薬上許容される賦形剤と一緒に本発明に係るL1ペプチドを混合することを含むワクチン製剤の製造方法を提供する。
【0092】
本発明に係るワクチン製剤中に存在するように組み込みうる追加の成分としては、非イオン性界面活性剤、たとえば、本明細書に記載のオクトキシノールおよびポリオキシエチレンエステル、具体的には、t-オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(トリトンX-100(Triton X-100))およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(トゥイーン80(Tween 80));ならびに本明細書に記載の胆汁酸塩またはコール酸誘導体、具体的には、ナトリウムデオキシコレートまたはタウロデオキシコレートが挙げられる。したがって、本発明の一態様において、製剤は、3D-MPLとトリトンX-100(Triton X-100)とトゥイーン80(Tween 80)とナトリウムデオキシコレートと(これらは、好適なワクチンを提供すべくL2抗原調製物と組み合わせうる)を含む。
【0093】
本発明の一実施形態では、ワクチンは、コレステロールとサポニンとLPS誘導体とを含む小胞アジュバント製剤を含む。これに関連して、アジュバント製剤は、好適には、脂質二重層を有してコレステロールを含むユニラメラ小胞、好適には、ジオレオイルホスファチジルコリンを含むユニラメラ小胞を含んでなる。ただし、サポニンおよびLPS誘導体が、脂質二重層と一体化されているか、またはその内部に埋み込まれている。一態様において、このアジュバント製剤は、サポニンとしてQS21とLPS誘導体として3D-MPLとを含み、QS21:コレステロールの比は、1:1〜1:100重量/重量であり、一態様において、1:5重量/重量の比である。そのようなアジュバント製剤については、EP 0 822 831 B(その開示内容は、参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載されている。
【0094】
好適には、本発明に係るワクチンは、アルミニウムと組み合わせて使用され、好適には、アルミニウムアジュバント上に吸着または部分吸着される。好適には、アジュバントは、3D MPLと組み合わせて存在させうるアルミニウム塩(たとえばリン酸アルミニウム)および3D MPLである。水酸化アルミニウム(場合により3D MPLと組み合わされる)もまた、好適である。
【0095】
本発明の他の態様において、ワクチンは、HPV VLPとアルミニウム塩との組合せまたはHPV VLPとアルミニウム塩+3D MPLとの組合せを含む。水酸化アルミニウムは、アルミニウム塩として好適である。
ワクチンは、安定化剤としてアルミニウムまたはアルミニウム化合物をも含みうる。
【0096】
他の態様において、アジュバントは、水中油型エマルジョンアジュバントと3D MPLとの組合せでありうる。一態様において、水中油型エマルジョンは、代謝性油とステロールと乳化剤とを含む。
【0097】
本発明に係るワクチンは、経口送達(たとえばWO9961052 A2を参照されたい)、局所送達、皮下送達、経粘膜送達(典型的には膣内送達)、静脈内送達、筋肉内送達、鼻腔内送達、舌下送達、皮内送達、および坐剤を介する送達のようなさまざまな経路のいずれかにより提供可能である。
【0098】
場合により、ワクチンを他のHPV抗原または非HPV抗原と一緒に製剤化したりまたは共投与したりすることも可能である。好適には、この非HPV抗原は、性感染性疾患などのような他の疾患、たとえば、単純ヘルペスウイルス症、EBV症、クラミジア症、およびHIV症に対する防御を提供しうる。ワクチンは、HSVに由来するgDまたはそのトランケート型を含むことが特に好ましい。このようにすれば、ワクチンは、HPVおよびHSVの両方に対する防御を提供する。
【0099】
ワクチン成分の用量は、個体の病状、性別、年齢、および体重、ならびにワクチンの投与経路およびHPVによって異なるであろう。量はまた、VLP型の数によっても異なるであろう。好適には、送達されるのは、免疫学的防御応答を生成するのに好適な量のワクチンである。好適には、各ワクチン用量は、1〜100μgの各VLP、一態様において5〜80μgの各VLP、他の態様において5-30μgの各VLP、さらなる態様において5〜20μgの各VLP、このほかのさらなる態様において5μg、6μg、10μg、15μg、または20μgの各VLPを含む。
【0100】
一態様において、ワクチンは、HPV L1タンパク質成分(好ましくはウイルス様粒子として)をさまざまな量で含みうる。一態様において、HPV16 VLPおよびHPV18 VLPは、HPV33やHPV58のような他の癌原性型よりも高用量で提供されうる。一態様において、ヒトに使用するために、HPV16 L1およびHPV18 L1のみのVLPが単位用量あたり20μgで提供される。ヒトに使用するために、他のHPV VLPをより低用量(たとえば単位用量あたり15または10μg)で使用しうる。
【0101】
本発明に係るすべてのワクチンに関して、一態様において、ワクチンは、10〜15歳(たとえば10〜13歳)の青年期の少女へのワクチン接種に使用される。しかしながら、15歳よりも年上の少女および成人の女性にも、ワクチン接種を行いうる。ワクチンはまた、異常なパップスメアを示す女性もしくはHPVにより引き起こされる病変の除去を伴う手術後の女性またはHPV癌型に関して血清陰性もしくはDNA陰性の者に投与しうる。
本発明に係るワクチンは、男性に使用可能である。
【0102】
一態様において、ワクチンは、2回投与レジームまたは3回投与レジームで、たとえば、それぞれ、0ヶ月、1ヶ月レジーム、または0ヶ月、1ヶ月、6ヶ月レジームで送達される。好適には、ワクチン接種レジームは、5〜10年後(たとえば10年後)のブースター注射を含む。
【0103】
一態様において、ワクチンは、液状ワクチン製剤であるが、ワクチンを凍結乾燥させて投与前に再構成することが可能である。
【0104】
特許出願および登録特許を含めて本出願中のすべての参考文献の教示は、参照により本明細書に完全に組み入れられるものとする。
【0105】
本発明に係るワクチンは、以上に明記されるような特定のHPV成分を含む。本発明のさらなる態様において、ワクチンは、該成分より本質的になるかまたは該成分よりなる。
【0106】
本発明で使用される「ワクチン」という用語は、場合により好適に製剤化またはアジュバント化されたときに、ヒトなどの個体における免疫応答を惹起しうる免疫原性成分を含む組成物を意味する。ワクチンは、好適には、1種以上のHPV型により引き起こされる偶発性感染もしくは持続性感染または細胞学的異常、たとえば、ASCUS、CINI、CIN2、CIN3、または子宮頸癌に対する防御免疫応答を引き起こす。
【実施例】
【0107】
次に、本発明を例示する役割を果たす以下の実施例に関連させて、本発明について説明する。
【0108】
実施例1
実施された実験の正確な詳細については、Harper et al, the Lancet. 2004 Nov 13;364(9447):1757-65(参照により本明細書に組み入れられるものとする)に提供されている。
【0109】
要約すると、HPV16 L1 VLPとHPV18 L1 VLPとの混合物で年齢15〜25歳の健常女性を免疫化した。登録された女性は、1)HPV-16およびHPV-18に関して血清陰性であり、2)子宮頸部へのハイリスクHPV感染に関して陰性であり(HPV PCRにより検出)、3)生涯の性交渉相手は6名以下であり、かつ4)正常なパップスメアを有していた。
【0110】
混合物は、0.5ml用量あたり20μgのHPV-16 L1 VLPと20μgのHPV-18 L1 VLPとを含みかつ500μgの水酸化アルミニウムと50μgの3D MPLとでアジュバント化されたものであった。プラセボ群には、500μgの水酸化アルミニウムだけを注射した。
【0111】
特定の癌HPV型に対するワクチンの効力(V.E.)を評価した。ただし、V.E.とは、プラセボ群と比較したときのワクチンによる感染または疾患の防御の改良%のことである。
【0112】
ワクチン被接種者および対照群において種々の癌原性型に特異的な核酸の存在を検出することにより、交差防御を評価した。WO 99/14377およびKleter et al, [Journal of Clinical Microbiology (1999), 37 (8): 2508-2517]に記載のLiPA系を用いて、WO03014402およびそれに引用された参考文献に記載の方法(特に、HPV DNAの非特異的増幅およびそれに続くDNA型の検出に関して)により、検出を行った(それらの全内容が参照により本明細書に明示的に組み入れられるものとする)。
【0113】
しかしながら、サンプル中のHPV DNAを検出するために、対象の各HPV型に特異的なプライマーを用いる型特異的PCRのような任意の好適な方法を使用することが可能である。好適なプライマーは、当業者に公知であるか、または癌原性HPV型の配列が既知であれば容易に構築可能である。
【0114】
完璧を期すために、Lancetの論文の方法の節を以下に詳細に再現する(「初期解析および結果(Initial analysis and results)」と題する節まで続ける)。
【0115】
この試験の主目的は、ELISAでHPV-16/18に関して血清陰性でありかつPCRでHPV-16/18 DNAに関して陰性であることが最初に示された参加者において、6〜18ヶ月目の間で、HPV-16、HPV-18、またはその両方(HPV-16/18)の感染の予防に関してワクチンの効力を評価することであった。副目的は、6〜18ヶ月目の間および6〜27ヶ月目の間で、HPV-16/18の持続性感染の予防におけるワクチンの効力を評価することと、HPV-16/18の感染に関連付けられる細胞学的に確認される低悪性度の扁平上皮内病変(LSIL)、高悪性度の扁平上皮内病変(HSIL)、および組織学的に確認されるLSIL(CIN1)、HSIL(CIN2もしくはCIN3)の扁平上皮細胞癌または腺癌の予防におけるワクチンの効力を評価することと、を含んでいた。HPV-16/18の感染に関連付けられる意義不明異型扁平上皮細胞(ASCUS)の細胞学的所見の予防を事後に転帰分析に追加した。
【0116】
我々は、病変組織においてPCRにより検出されたHPV-16/18 DNAに関連付けられる組織病理学的エンドポイントCIN1およびCIN2の診査分析をも行った。他の目的は、ワクチンの免疫原性、安全性、および耐容性を評価することを含んでいた。2000年7月〜12月に実施されたHPV横断疫学試験において、北米(カナダおよび米国)ならびにブラジルの研究者らは、広告または以前の参加者を介して、この効力試験のための女性を募集した。32ヶ所の研究施設のそれぞれで、施設内治験審査委員会は、プロトコル、同意書、および修正事項を承認した。女性らは、試験への参加およびコルポスコピーに関して各自の承諾書にサインした。18歳未満の者については、親の同意および参加者の同意が義務付けられた。
【0117】
2つの試験段階、すなわち、ワクチン接種および18ヶ月目に終了した追跡調査のための初期段階と27ヶ月目に終了した盲検化追跡調査の延長段階とが存在した。
【0118】
初期段階(0ヶ月目〜18ヶ月目)に適格な女性は、年齢15〜25歳の健常女性を含む。彼女らは、性交渉相手は6名以下で、異常なパップ検査結果ならびに子宮頸部の剥離治療および切除治療のいずれの病歴をも有しておらず、かつ外部コンジローマの治療中でなく、しかも、ELISAでHPV-16およびHPV-18の抗体に関して細胞学的に陰性および血清陰性であり、かつ14のハイリスクHPV型(16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、66、および68型)に関して試験登録前90日以内においてPCRでHPV-DNA陰性であった。
【0119】
最初の試験の初期段階を終了しかつ登録後に子宮頸部の剥離治療および切除治療ならびに子宮摘出のいずれをも受けていない女性を、試験の延長段階(18ヶ月目〜27ヶ月目)に適格とした。
【0120】
手順
各用量の二価HPV-16/18ウイルス様粒子ワクチン(GlaxoSmithKline Biologicals, Rixensart, Belgium)は、20μgのHPV-16 L1ウイルス様粒子と20μgのHPV-18 L1ウイルス様粒子とを含んでいた。各型のウイルス様粒子は、一回用量バイアル中に提供された500μgの水酸化アルミニウムと50μgの3-脱アシル化モノホスホリルリピドA(MPL, Corixa, Montana, USA)とを含有するAS04アジュバントと共にスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)Sf-9とトリコプルシア・ニ(Trichoplusia ni)Hi-5とよりなる細胞基材を用いて生成された。プラセボは、単位用量あたり500μgの水酸化アルミニウムを含有し、その外観は、HPV-16/18ワクチンと同一であった。すべての試験参加者は、0ヶ月、1ヶ月、および6ヶ月で0.5mL用量のワクチンまたはプラセボを摂取した。医療提供者は、スクリーニング時、6ヶ月目、12ヶ月目、および18ヶ月目に、細胞診断およびHPV DNA検査のために子宮頸部用のブラシおよびスパチュラを用いて子宮頸部検体を取得した(PreservCyt(Cytyc Corporation, Boxborough, MA, USA)中で洗浄した)。0ヶ月目および6ヶ月目ならびにその後3ヶ月ごとに、女性は、HPV DNA検査のために2つのスワブを逐次的に用いて各自で頸膣部サンプルを取得した(PreservCyt中に配置した)。[DM Harper, WW Noll, DR Belloni and BF. Cole, Randomized clinical trial of PCR-determined human papillomavirus detection methods: self-sampling versus clinician-directed-biologic concordance and women's preferences. Am J Obstet Gynecol 186 (2002), pp. 365-373]。中央研究所(Quest Diagnostics, Teterboro, NJ, USA)は、1991年ベセスダ(Bethesda)分類体系を用いて細胞診断結果を報告した(ThinPrep, Cytyc Corporation)。プロトコルガイドラインでは、ASCUSに関する1つの報告あるいは意義不明異型腺細胞、LSILもしくはHSIL、扁平上皮癌、上皮内腺癌、または腺癌に関する2つの報告を考慮して、コルポスコピーが推奨された。また、このガイドラインでは、任意の疑われる病変に関して生検が推奨された。中央組織学研究所は、臨床管理のためにホルマリン固定組織検体の初期診断を行った。一群の3名の病理学者は、CIN系を用いてHPV-16およびHPV-18に関連する病変に関して後続コンセンサス診断を行った。このコンセンサス診断は、病変HPV DNAのPCR検出のために顕微解剖時に採取された切片の検査をも含んでいた。細胞診断検体から単離されたHPV DNA(MagNaPure Total Nucleic Acid system, Roche Diagnostics, Almere, Netherlands)および子宮頸部生検検体から単離されたHPV DNA(プロテイナーゼK抽出)を、L1遺伝子の65bp領域を増幅するSPF10広域プライマーを用いて、精製全DNAのアリコートから増幅した。[B Kleter, LJ van Doorn, J ter Schegget et al., Novel short-fragment PCR assay for highly sensitive broad-spectrum detection of anogenital human papillomaviruses. Am J Pathol 153 (1998), pp. 1731-1739: LJ van Doorn, W Quint, B Kleter et al., Genotyping of human papillomavirus in liquid cytology cervical specimens by the PGMY line blot assay and the SPF(10) line probe assay. J Clin Microbiol 40 (2002), pp. 979-983 and WG Quint, G Scholte, LJ van Doorn, B Kleter, PH Smits and J. Lindeman, Comparative analysis of human papillomavirus infections in cervical scrapes and biopsy specimens by general SPF(10) PCR and HPV genotyping. J Pathol 194 (2001), pp. 51-58]。増幅産物をDNA酵素免疫アッセイにより検出した。ラインプローブアッセイ(LiPA Kit HPV INNO LiPA HPV遺伝子型決定アッセイ, SPF-10系 バージョン1, Innogenetics, Gent, Belgium, 製造元 Labo Bio-medical Products, Rijswijk, Netherlands)により、25のHPV遺伝子型(6、11、16、18、31、33、34、35、39、40、42、43、44、45、51、52、53、56、58、59、66、68、70、および74型)を検出した。[B Kleter, LJ van Doorn, L Schrauwen et al., Development and clinical evaluation of a highly sensitive PCR-reverse hybridization line probe assay for detection and identification of anogenital human papillomavirus. J Clin Microbiol 37 (1999), pp. 2508-2517]。DNA酵素免疫アッセイで陽性の検体をすべて、型特異的HPV-16・HPV-18 PCRにより検査した。HPV-16型特異的PCRプライマーによりE6/E7遺伝子の92bpセグメントを増幅し、HPV-18型特異的PCRプライマーによりL1遺伝子の126bpセグメントを増幅した。[MF Baay, WG Quint, J Koudstaal et al., Comprehensive study of several general and type-specific primer pairs for detection of human pap
illomavirus DNA by PCR in paraffin-embedded cervical carcinomas. J Clin Microbiol 34 (1996), pp. 745-747]。
【0121】
我々は、HPV-16/18を有する偶発性子宮頸部感染を、試験期間中にHPV-16またはHPV-18に関して少なくとも1つの陽性PCR結果を示すものとして定義し、HPV-16/18を有する持続性感染を、少なくとも6ヶ月間の期間をおいて同一のウイルス遺伝子型に関して少なくとも2つの陽性HPV-DNA PCRアッセイ結果を示すものとして定義した。[H Richardson, G Kelsall, P Tellier et al., The natural history of type-specific human papillomavirus infections in female university students. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 12 (2003), pp. 485-490 and AB Moscicki, JH Ellenberg, S Farhat and J. Xu, Persistence of human papillomavirus infection in HIV-infected and -uninfected adolescent girls: risk factors and differences, by phylogenetic type. J Infect Dis 190 (2004), pp. 37-45]。試験期間中、研究者にHPV-DNA検査結果がわからないようにして、臨床管理の目的のためにのみ細胞学的診断結果および組織学的診断結果を明示した。分析は、子宮頸部検体および子宮頸部検体と各自で取得した頸膣部検体との組み合わせに関するHPV-16/18 DNA結果を含んでいた。
【0122】
我々は、免疫原性の評価のために、0、1、6、7、12、および18ヶ月目に試験参加者から血清を採取した。HPV-16およびHPV-18のウイルス様粒子に対する抗体に関する血清学的検査は、ELISAによるものであった。組換えHPV-16またはHPV-18ウイルス様粒子を抗体検出用のコーティング抗原として使用した(webappendix http://image.thelancet.com/extras/04art10103webappendix.pdfを参照されたい)。HPV-16に関しては8ELISA単位/mLおよびHPV-18に関しては7ELISA単位/mLで確定されたアッセイカットオフ力価以上の力価として血清陽性を定義した。以上の疫学試験においてHPV-16またはHPV-18に関してELISAで血清陽性であることが判明した女性から得られた血液サンプルを用いて、典型的な自然力価を決定した。
【0123】
女性は、ワクチン接種後の最初の7日間で起こした症状を三段階スケールの症状の強さで日記型カードに記録した。このほか、彼女らは、ワクチン接種後の最初の30日間以内のすべての有害事象を問診により試験員に報告した。試験期間全体を通して重篤な有害事象および妊娠に関する情報を収集した。
【0124】
統計的手法
12ヶ月間にわたるHPV-16型感染およびHPV-18型感染の両方の累積発生率を6%と仮定して、我々は、一治療群あたり500名の女性にすればゼロを超えるワクチンの効力の95%CIの下限を評価するのに80%の検出力が提供されるであろうと推定した。我々は、18ヶ月間にわたり保持率を80%と仮定した。今後の試験計画の目的だけのために、効力、安全性、および免疫原性に関する中間解析を行った。オブライエン・フレミング(O'Brien and Fleming)法を用いて、中間解析を行った後の最終解析用の値を調整した(全体的α=0.05;両側検定)。[PC O'Brien and TR. Fleming, A multiple testing procedure for clinical trials. Biometrics 35 (1979), pp. 549-556]。
【0125】
インターネットのランダム化システムを用いて、有効性の実証されたアルゴリズムに基づく層別ブロックランダム化を集中的に使用した。層別化は、年齢(15〜17歳、18〜21歳、および22〜25歳)ならびに地域(北米およびブラジル)に基づくものであった。試験員によりコンピューター化ランダム化システムに入力された特定の参加者情報に基づいてランダムに選択された数値を各ワクチン用量に割り当てた。研究者および長期追跡試験に参加する女性には治療の割当てがわからないようにしておく。
【0126】
治療意図コホートおよびプロトコル準拠コホートを図に示す。解析から除外された理由を順位に従って列挙する。2つ以上の除外基準を満たした女性は、最も高い順位付け基準に従って1回だけカウントされた。我々は、治療意図に基づく解析およびプロトコルに基づく解析にかけられた参加者の集団をコホートと呼ぶが、プロトコルに基づく解析に組み込まれる被験者を限定するために使用した情報は、追跡調査後になって初めてわかるものであった。我々は、効力に関してプロトコルに基づく解析および治療意図に基づく解析の両方を行った。プロトコルに基づく18ヶ月解析におけるワクチンの効力の計算は、ワクチン接種群対プラセボ群でHPV-16/18感染を有する参加者の割合に基づくものであった。1からこれらの2つの割合の比を引き算した値としてワクチンの効力を定義し、95%CIを効力の推定値の精度の尺度とした。両側のフィッシャー(Fisher)の直接確率検定を用いてp値を計算した。転帰を有する症例数を危険にさらされている参加者の数で割り算された値として、対応する比率を表した。プロトコル準拠18ヶ月コホートは、予定された3回のワクチン投与を受けかつ図に記載されるようなプロトコルに適合した登録女性を含んでいた。
【0127】
治療意図に基づく27ヶ月解析およびプロトコルに基づく27ヶ月解析におけるワクチンの効力の計算は、ワクチン接種群対プラセボ群でHPV-16/18感染を有する症例の時間対発生率を用いたコックス(Cox)比例ハザードモデルに基づくものであった。これにより、各群における累積人数−時間データの照査が可能である。1からハザード比を引き算してワクチンの効力を計算し、ログランク検定を用いてp値を計算した。症例数を合計人数−時間データで割り算した値として、対応する比率を表した。少なくとも1回のワクチン投与またはプラセボ投与を受け、0ヶ月目にハイリスクHPV-DNAに関して陰性であり、かつ転帰測定に利用可能ななんらかのデータを有する登録女性をすべて、治療意図コホートに含めた。
【0128】
プロトコル準拠27ヶ月コホートは、プロトコル準拠18ヶ月コホートから得られた転帰結果と、延長段階(18ヶ月〜27ヶ月)で生じた結果と、を含んでいた。
【0129】
フィッシャー(Fisher)の直接確率検定比較を用いて、安全性解析に対するp値の計算を行った。安全性解析のためのコホートは、少なくとも1回のワクチン投与またはプラセボ投与を受けかつ指定の最低プロトコル要件(以下のプロトコルを参照されたい)に適合するすべての登録女性を含んでいた。
【化2】

【0130】
0、7、および18ヶ月目の血清診断結果を有し、スケジュールに従って3回の試験ワクチン投与またはプラセボ投与をすべて受け、血液サンプリングスケジュールに適合し、かつ試験期間中にHPV-16/18-DNAに関して陽性にならなかった女性を含むプロトコル準拠安全性コホートの一部で、免疫原性を評価した。フィッシャー(Fisher)の直接確率検定を用いて、ワクチン群の血清陽性率とプラセボ群の血清陽性率とを比較した(p<0.001のときに有意であると判断した)。ANOVAおよびクラスカル・ワリス(Kruskal-Wallis)検定を用いて、幾何平均力価を比較した。
【0131】
SASバージョン8.2(SAS Institute, Cary, North Carolina)を用いて、ブロックランダム化および統計解析を行った。
【0132】
初期解析および結果
交差防御に関する初期解析の結果は、特許出願WO2004/056389(参照によりその全内容が本明細書に組み入れられるものとする)に提示されている。
【0133】
「ITT」(少なくとも1回のワクチン投与を受けたすべての個体に相当する治療意図コホート)を用いて、初期解析を行った。このデータを表Aに示す。
【0134】
表BおよびCに提示された結果は、すべての試験基準に適合した患者の「ATP」(According To Protocol)群に関連する。表Bは、コホートの少なくとも50%が最初のワクチン接種の18ヶ月後である時点ですべての患者から得られたデータを用いた中間解析である。表Cは、最終結果を与えており、データはすべて、最初のワクチン接種(0ヶ月目)の18ヶ月後に被験者から得られたものである。ATP群では、患者はすべて、0、1、および6ヶ月で3回のワクチンを受け、6ヶ月で血清陰性であった。
【0135】
表Aに提示されたデータにより実証されるように、HPV16 VLPとHPV18 VLPとの混合物で免疫化することにより、他のHPV型に対する明らかな交差防御が提供された。この時点では、サンプルサイズが小さすぎて、厳密な統計解析を行うことができないが、データは、好ましい傾向を示し、HPV16 VLPとHPV18 VLPとによる免疫化が他のHPV型による感染に対して効力を示すことを示唆する。
このことは、試験の進行に伴って確認された。
【0136】
表Bは、HPV16およびHPV18がハイリスク癌型31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、66、および68のグループに対する統計学的に有意な交差防御を提供することを実証する。
【0137】
表Cは、HPV-18関連型(これは非常に強力な傾向を示す)を除いて、HPV31、35、58のグループ;HPV31、33、35、52、58のグループ;および評価した12のハイリスク(非HPV-16/18)型のグループに対する統計学的に有意な交差防御が存在することを実証する。
【0138】
特定の型に対する特異的な交差防御に関して、さらなる解析を行った。
12のハイリスク癌型31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、66、および68と、HPV-16系統発生的関連型(31、35、および58のグループ;31、33、35、52、および58のグループ)と、HPV-18系統発生的関連型(45および59)と、に関連付けられる感染および疾患に対して、ワクチンの効力を評価した。
【0139】
すべての試験基準に適合した患者の「ATP」(According To Protocol)群を用いて、解析を行った。ATP群では、患者はすべて、0、1、および6ヶ月で3回のワクチンを受け、6ヶ月で血清陰性であった。
【0140】
表Dに提示されたデータにより実証されるように、HPV16 VLPとHPV18 VLPとの混合物で免疫化することにより、対照と比較してHPV31型、52型、および45型の偶発性感染に対する統計学的に有意な交差防御が提供された。
【0141】
偶発性感染に対する統計学的に有意な交差防御は、すべてのHPV16関連型(HPV-31、33、35、52、および58)のグループ、ならびに16および18を除くすべてのハイリスク型(HPV31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、66、および68)のグループに対しても観察された。
【0142】
また、持続性感染に対する統計学的に有意な交差防御は、31型および52型に対して観察され、すべてのHPV16関連型のグループに対しても観察された(表Eを参照されたい)。
【0143】
統計学的に有意な交差防御は、HPV52に関連付けられる細胞学的異常に対して観察され、すべてのHPV16関連型(HPV-31、33、35、52、および58)のグループならびに16および18を除くすべてのハイリスク型(31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、66、および68)のグループに関連付けられる細胞学的異常に対しても観察された(表F)。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
HPV16、HPV18、および少なくとも1種の他の癌原性HPV型に由来するL1タンパク質またはその免疫原性断片を含む多価HPVワクチンであって、HPV31、HPV45、およびHPV52よりなる群から選択される1種以上のHPV型に由来するL1タンパク質またはその免疫原性断片がワクチンから除外されており、かつワクチンが、除外されたHPV型により引き起こされる感染に対する防御を提供するものである、上記ワクチン。
【請求項2】
HPV31に由来するL1タンパク質またはその免疫原性断片がワクチンから除外されている、請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
HPV45に由来するL1タンパク質またはその免疫原性断片がワクチンから除外されている、請求項1に記載のワクチン。
【請求項4】
HPV52に由来するL1タンパク質またはその免疫原性断片がワクチンから除外されている、請求項1に記載のワクチン。
【請求項5】
HPV31およびHPV45に由来するL1タンパク質またはその免疫原性断片がワクチンから除外されている、請求項1に記載のワクチン。
【請求項6】
HPV31およびHPV52に由来するL1タンパク質またはその免疫原性断片がワクチンから除外されている、請求項1に記載のワクチン。
【請求項7】
HPV45およびHPV52に由来するL1タンパク質またはその免疫原性断片がワクチンから除外されている、請求項1に記載のワクチン。
【請求項8】
HPV31およびHPV45およびHPV52に由来するL1タンパク質またはその免疫原性断片がワクチンから除外されている、請求項1に記載のワクチン。
【請求項9】
ワクチンが偶発性感染を防御するものである、請求項1に記載のワクチン。
【請求項10】
ワクチンが持続性感染を防御するものである、請求項1に記載のワクチン。
【請求項11】
前記他の癌原性HPV型がHPV33である、請求項1に記載のワクチン。
【請求項12】
前記他の癌原性HPV型がHPV58である、請求項1に記載のワクチン。
【請求項13】
前記他の癌原性HPV型がHPV59である、請求項1に記載のワクチン。
【請求項14】
HPV16 L1タンパク質またはその免疫原性断片と、HPV18 L1タンパク質またはその免疫原性断片と、HPV33 L1タンパク質またはその免疫原性断片と、HPV58 L1タンパク質またはその免疫原性断片とを含む、請求項1に記載のワクチン。
【請求項15】
前記L1タンパク質またはその断片のうちの少なくとも1種がウイルス様粒子の形態である、請求項1に記載のワクチン。
【請求項16】
前記L1タンパク質のうちの少なくとも1種がトランケート型L1タンパク質である、請求項1に記載のワクチン。
【請求項17】
前記少なくとも1種のL1タンパク質がC末端トランケート型L1タンパク質である、請求項16に記載のワクチン。
【請求項18】
アジュバントをさらに含む、請求項1に記載のワクチン。
【請求項19】
前記アジュバントがアルミニウム塩である、請求項18に記載のワクチン。
【請求項20】
前記アジュバントが水酸化アルミニウムである、請求項19に記載のワクチン。
【請求項21】
前記アジュバントが3D MPLである、請求項18に記載のワクチン。
【請求項22】
前記アジュバントが3D MPLおよび水酸化アルミニウムである、請求項18に記載のワクチン。
【請求項23】
前記アジュバントが水中油型エマルジョンである、請求項18に記載のワクチン。
【請求項24】
前記アジュバントがアルミニウム塩をさらに含む、請求項23に記載のワクチン。
【請求項25】
HPV16、HPV18、ならびにHPV31、HPV45、およびHPV52よりなる群から選択される少なくとも1種の他のHPV型により引き起こされる患者への感染を防御する方法であって、請求項1に記載のワクチンを投与することが含まれ、該ワクチンが、除外されたHPV型により引き起こされる感染に対する防御を提供するものである、上記方法。
【請求項26】
前記除外されたHPV型がHPV31である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記除外されたHPV型がHPV45である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記除外されたHPV型がHPV52である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
HPV16、HPV18、ならびにHPV31、HPV45、およびHPV52よりなる群から選択される少なくとも1種の他のHPV型により引き起こされる患者における細胞学的異常を予防するかまたはその発生頻度を低減させる方法であって、請求項1に記載のワクチンを投与することが含まれ、該ワクチンが、除外されたHPV型により引き起こされる細胞学的異常を予防するかまたはその発生頻度を低減させるものである、上記方法。
【請求項30】
前記除外されたHPV型がHPV52である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記除外されたHPV型がHPV45である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記除外されたHPV型がHPV31である、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
HPV16、HPV18、ならびにHPV31、HPV45、およびHPV52よりなる群から選択される少なくとも1種の他のHPV型により引き起こされる組織学的に確認されるCIN病変の生成を予防する方法であって、請求項1に記載のワクチンを投与することが含まれ、該ワクチンが、除外されたHPV型により引き起こされる組織学的に確認されるCIN病変の生成を予防するものである、上記方法。
【請求項34】
前記除外されたHPV型がHPV52である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記除外されたHPV型がHPV45である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記除外されたHPV型がHPV31である、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
癌原性HPV型により引き起こされる患者における細胞学的異常を予防するかまたはその発生頻度を低減させる方法であって、請求項1に記載のワクチンを投与することが含まれる、上記方法。
【請求項38】
癌原性HPV型により引き起こされる患者における組織学的に確認されるCIN病変の生成を予防する方法であって、請求項1に記載のワクチンを投与することが含まれる、上記方法。
【請求項39】
請求項1に記載のワクチンを製造する方法であって、HPV16、HPV18、および少なくとも1種の他の癌原性HPV型に由来するL1タンパク質またはその免疫原性断片を組み合わせることが含まれ、該ワクチンが、HPV31、HPV45、およびHPV52よりなる群から選択される1種以上のHPV型に由来するL1タンパク質およびその免疫原性断片のいずれをも含まない、上記方法。
【請求項40】
HPV31、HPV45、またはHPV52のうちの1種以上により引き起こされる感染および/または疾患の予防のための医薬の調製における、HPV16 L1およびHPV18 L1タンパク質またはそれらの免疫原性断片とを含む組成物の使用。
【請求項41】
HPV31もしくはHPV52またはそれらの組合せにより引き起こされる感染および/または疾患の予防のための医薬の調製における、HPV16 L1タンパク質またはその免疫原性断片を含むワクチンの使用。
【請求項42】
HPV45により引き起こされる感染および/または疾患の予防のための医薬の調製における、HPV18 L1タンパク質またはその免疫原性断片を含むワクチン組成物の使用。
【請求項43】
HPV16およびHPV18以外の型により引き起こされる個体における細胞学的異常の予防または細胞学的異常の発生頻度の低減のための医薬の製造における、請求項40に記載のワクチンの使用。
【請求項44】
HPV16およびHPV18以外の型により引き起こされる組織学的に確認されるCIN病変(CIN1、CIN2、CIN3)の予防のための医薬の製造における、請求項40に記載のワクチンまたは組合せの使用。
【請求項45】
前記組成物が、HPV16、HPV18、および少なくとも1種の他の癌原性HPV型に由来するL1タンパク質またはその免疫原性断片を含み、HPV31、HPV45、およびHPV52よりなる群から選択される1種以上のHPV型に由来するL1タンパク質またはその免疫原性断片が前記ワクチンから除外されており、かつ前記ワクチンが、除外されたHPV型により引き起こされる感染および/または疾患に対する防御を提供する、請求項40〜44のいずれかに記載の使用。

【公表番号】特表2008−539182(P2008−539182A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−508138(P2008−508138)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【国際出願番号】PCT/EP2006/003809
【国際公開番号】WO2006/114273
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】