説明

ワッシャーレス360°型歯ブラシ及び、その製造方法。

【課題】 従来の360°型歯ブラシにおいては、ワッシャー使用のため組立て作業に時間を要することや、コスト面に問題があり価格低下につながらなかった。又、丸ブラシ素子側面に凸部を設ける方法においては、ブラシ間に適正な空間を保つことができず、ブラッシング後の乾燥が遅れ衛生的にも問題がありこれを課題とした。
【解決手段】 伸縮自在な物性を有し外周部に凹凸を設け中央付近に貫通小孔を有する軟質台2を製造し、その凹部に丸ブラシ素子を適正枚数挿入後、歯ブラシハンドル3先端部に設けたブラシ挿入軸3aを軟質台小孔2bに挿入、軟質台2を外周方向に拡大後先端部を軟化カシメ固定し360°型歯ブラシとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は家庭で使用される360°型歯ブラシ及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在市販されている360°型歯ブラシのブラシ構造は下記に示す二通りが代表的なものである。第一のブラシ組立て構造は環状に開く極薄ブラシ中央熔着部センターに位置する小孔を、歯ブラシハンドル一方端軸延長方向に位置する小軸に適正枚数例えば2枚通し、次にブラシ間に空間を保持する目的から樹脂性ドーナッツ形状のワッシャーと呼ばれる部品中央に位置する小孔を小軸に通しこの工程を数回繰り返し適正寸法のブラシ組立て後、小軸先端部を熱により軟化カシメることで360°型歯ブラシを製造している。
【0003】
もう一つの方法は、環状に開く極薄ブラシ中央熔着部側面全周及び一部に凸部を設ける方法で、このブラシ中央部に位置する小孔を歯ブラシハンドル一方端軸延長方向に位置する小軸に適正枚数(約二枚重ねにおいて17枚)挿入組立て後、小軸先端部を熱により軟化カシメるものである。
【特許文献】 特許第3646118号
【特許文献】 特許第4000355号
【発明の開示】

【発明者が解決しようとする課題】
【0004】
前記二方法においては下記に示すような課題があった。
【0005】
環状に開く極薄ブラシ(以下、丸ブラシ素子と示す)とワッシャーを交互にハンドル一方端軸延長方向に位置する小軸に挿入する方法においては部品点数が30点以上となり、組立て作業に時間を要することと、部品コスト高となり販売価格を下げることが難しいのが現状と言える。又、部品点数が多いため検査工程にも時間を要することと同時に品質にも問題があった。
【0006】
丸ブラシ熔着部側面全周及び一部に凸部を設け、ハンドル一方端軸延長方向に位置する小軸に挿入する方法においてはブラシ構造上の問題(ブラシ熔着軟化容積不足)から、ブラシ間に適当な空間が保持できずブラシ密度が高くなることに大きな問題があった。この状態のブラシ部ではブラッシング後充分に乾燥ができず衛生的に問題があった。その他にも数回の使用においてブラシが小量倒れてもブラシ表面が布状となり、歯間に届かないばかりか歯垢除去効率も低下することとなった。
【0007】
これらの課題を解決するために下記に示す方法を提案した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
まず第一の方法として、円筒形状であり側面外周に凹凸部を有し中央部に貫通小孔を設けた軟質台2を製造する。この軟質台2の材質は例えばシリコンゴム、アメゴム等水に強く伸縮性を有するものとする。次に、丸ブラシ素子1を軟質台2凹部に適正枚数挿入後、ハンドル3一方端面延長方向に位置するハンドル挿入軸3aを軟質台小孔2bに挿入、軟質台2を側面外周方向に拡大させ丸ブラシ素子1を正確な位置に固定後、ハンドル挿入軸3a先端部を熱を利用しカシメ固定し360°型歯ブラシとした。
【0009】
次の方法は、前記軟質台2の構造を歯ブラシハンドル挿入軸3a部分に例えば成形により製造する。このハンドルを段付きハンドル4と示した。段付きハンドル凹部4bに丸ブラシ素子1を適正枚数挿入後、段付きハンドル中央小孔4c内に外径寸法の大きい金属性熱棒5を加熱挿入することによりハンドル樹脂材を側面外周方向に拡大させ丸ブラシ素子1を正確な位置に固定後、段付きハンドル凸部4a先端部を熱を利用しカシメ固定し360°型歯ブラシとした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によりワッシャーが不必要になり、組立て作業に要する時間が大きく減少した。又、それに伴ない販売価格を大きく下げることが可能となった。
【0011】
衛生面においても、部品間の継目空間が減少することと、ブラシ間に適正寸法の空間が生まれることでブラッシング後、乾燥が速く進むことで雑菌の増殖を抑えることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、発明を実施するための最良の形態を図をもって説明する。図1で軟質台2と丸ブラシ素子1の断面を示した。軟質台2は伸縮自在な材料で製造され長手方向外周面に凸部2aと凹部2cが交互に位置し、中央部に軟質台小孔2bを有している。この軟質台2の凹部2cに丸ブラシ素子中央部の小孔1bを挿入する。この場合、ブラシ厚みと凹部2cの寸法により1〜5枚位の挿入が1ブロックとなる。全ての凹部2cに丸ブラシ素子1を挿入後ハンドル3一方端軸延長方向に位置するブラシ挿入軸3a部を挿入し軟質台2を外周方向に拡大することで丸ブラシ素子1を適正空間を正確に保ちながら固定する。ブラシが下方向に落ちることを防ぐ目的からハンドルブラシ台3bをブラシ下方向端面に設けた。
【0013】
前記軟質台2の適正寸法は丸ブラシ素子1の中央部に位置する小孔1bの寸法を直径3.6ミリメートルとした場合下記の通りとなる。まず、軟質台2の凸部2a外径は直径3.6ミリメートルより0.1〜0.2ミリメートル小さいものとする。これは丸ブラシ素子挿入を容易にする目的からである。凹部2c外径は直径3ミリメートル位とし、軟質台小孔2bは直径1.5〜1.8ミリメートル位とする。この軟質台小孔2b内に直径2.3〜2.5ミリメートル位のブラシ挿入軸3aを挿入し軟質台2を外周方向に拡大することで前記したように空間を有するブラシ部を構成する。この場合重要なことは、軟質台2の凹部2c直径が丸ブラシ素子1の中央部に位置する小孔1bより多少大きいか同径になる必要がある。実験により前記寸法となったが、軟質台2の材料等によっても異なる。又、拡大率は容積率の関係により80パーセント程度と考えられる。図2において丸ブラシ素子1の構造を示し、熔着部1aにより成形され中央付近に小孔1bを有する。又、図3において前記説明の完成断面図を示した。
【0014】
次に、軟質台2を使用しない方法を説明する。図4で示すように段付きハンドル4一方端軸延長方向に位置するブラシ挿入軸部に、段付きハンドル凸部4aと段付きハンドル凹部4bを設け軸中央付近に段付きハンドル中央小孔4cを開ける。この凹凸部に前記同様適正量の丸ブラシ素子1を挿入し最終工程として、予め160℃〜180℃(樹脂材料の場合)に熱した段付きハンドル中央小孔4cより直径の大きい熱棒5を挿入、ハンドル凹凸部を外周方向に拡大することにより固定する。
【0015】
段付きハンドル固定方法の適正な各部寸法は下記の通りである。段付きハンドル凸部は丸ブラシ素子1の小孔1bを前記同様直径3.6ミリメートルとした場合、凸部は直径3.6ミリメートルより0.1〜0.2ミリメートル小さくし、凹部は3ミリメートル位とした。段付きハンドル中央小孔4cは直径1.4ミリメートルとし挿入熱棒5の直径は2.3ミリメートルとした。この方法は樹脂材の軟化を利用しブラシを固定し360°型歯ブラシを製造するものである。最終工程である先端部分カシメにおいても、直径2ミリメートル迄の小孔は完全に今までのカシメ寸法において消滅する。それ以上の場合はカシメ寸法を従来の2.5〜3ミリメートル位から3.5ミリメートル位に増加することで問題ない。又、軸の強度に関しても従来市販品とテスト結果大差はなく、正確なブラッシングにおいては問題ない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】 丸ブラシ素子及び、軟質台の構造を示す拡大断面図。
【図2】 丸ブラシ素子単体の拡大断面図。
【図3】 丸ブラシ素子を軟質台に固定後歯ブラシハンドルに挿入した全体構造を示す拡大断面図。
【図4】 丸ブラシ素子を段付きハンドル挿入部に挿入後、熱棒によって固定することを示した拡大正面図。
【符号の説明】
【0017】
1. 丸ブラシ素子
1a. 熔着部
1b. 小孔
2. 軟質台
2a. 凸部
2b. 軟質台小孔
2c. 凹部
3. ハンドル
3a. ブラシ挿入軸
3b. ブラシ台
4. 段付きハンドル
4a. 段付きハンドル凸部
4b. 段付きハンドル凹部
4c. 段付きハンドル中央小孔
5. 熱棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮自在な物性を有し、中心部長手方向に貫通小孔を設け外周面に規則性をもって並ぶ凹凸部を有するパイプ形状のブラシ固定台部に、熔着層中心部に小孔を有し環状に開く極薄丸ブラシ素子を挿入、各凹部に適正枚数づつ止め置き歯ブラシハンドル一方端にブラシ固定台部貫通小孔直径より大きい外径を有する軸を挿入、ブラシ固定台部を外周方向に拡大させることにより丸ブラシ素子を規則性をもって固定することを特徴とする360°型歯ブラシ。
【請求項2】
歯ブラシハンドル一方端ブラシ挿入軸外周方向に規則性をもって並ぶ凹凸部を有し、ブラシ挿入軸中央部に小孔を設けたブラシ挿入軸各凹部に適正枚数づつの熔着層中心部に小孔を有し環状に開く極薄丸ブラシ素子を止め置き、ブラシ挿入軸中央部小孔にその穴径より大きい外径を有する熱棒を挿入、ブラシ挿入部外径を熱により軟化拡大させ丸ブラシ素子を規則性をもって固定することを特徴とする360°型歯ブラシ。
【請求項3】
請求項1乃至2の360°型歯ブラシであって、歯ブラシ本体後部に振動発生装置及びエネルギー供給部を有し、振動により口腔内清掃を行うことを特徴とする360°型電動歯ブラシ。
【請求項4】
請求項1乃至2の360°型歯ブラシであって、歯ブラシハンドル後部よりホース等で結合されたタンク部より液体例えば水を供給、ブラシ部内より小量の液体例えば水を注水し口腔内清掃を行う360°型注水歯ブラシ。
【請求項5】
請求項4の360°型歯ブラシであって、注水と同時に振動によって口腔内清掃を行う360°型電動注水歯ブラシ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate