説明

ワンピース衣服

ワンピース衣服は、少なくとも一つの閉止デバイスが側面をめぐって延び、該少なくとも一つの閉止デバイスは衣服右手サイドと衣服左手サイドに沿って側方へ、少なくとも終端部が衣服の前面部に位置するように延びる。この少なくとも一つの側方閉止デバイスによって、衣服の着用者はこのワンピース衣服を脱ぐことなくトイレを使用できるように衣服のシート領域を開くことができる。本発明は特に2つのジップファスナーを有し、それらがそれぞれ衣服のまわりで側方に延び第一及び第二のジップファスナーの終端部が前面部に配置されているワンピース衣服に関する。第一及び第二のジップファスナーの始端部は互いに対向して背面部に配置されてシート領域を開くことを可能にするようになっている。ワンピース衣服は、特に弾性材料のスポーツ衣服として、例えばサイクリング用のビブパンツとして適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つの閉止デバイスが側面に延びているワンピース衣服に関する。この少なくとも一つの側方閉止デバイスによって、この衣服の着用者は、このワンピース衣服を脱ぐことなくトイレを使用できるような仕方で衣服のシート領域を開くことができる。本発明は、特に、2つのジップファスナーがそれぞれ衣服の側面をめぐって延び、その結果シート領域を開くことができるようになっているワンピース衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種のスポーツ活動に関連する特殊な衣服が近年ますますポピュラーになってきている。なかでも、サイクリングの特別な要求に適合する特殊なデザインがスポーツ・サイクリストのために開発されている。特にサイクリング用のワンピース・スーツ、例えばワンピースのビブ(bib)パンツ、には今日までずっとサイクリストからの需要が高い。天候やその他の条件によっては、さらに別の衣服、例えばTシャツ又はジャケットを通常ワンピースのビブパンツの上から着用する。この場合、特に女性の着用者の場合、トイレを使用するためにまずすべての衣服を脱がなければならないという問題がある。これは時間も手間もかかる。特に着用者が発汗していて着衣が湿っている場合はなおさらである。ワンピースのスキースーツでも事情は同様である。トイレを使用するたびにはスキースーツを少なくとも一部脱がなければならない。
【0003】
特許文献1は、シート領域を開くことができるジャンプスーツを記載している。このジャンプスーツはシート領域に別のシート部を有する。シート部は弾力的なウエストバンドとサイドエッジを有する。サイドエッジは、折り畳み可能な中間ピースによってジャンプスーツと接合される。シート部は、例えばウエストバンドの端にあるボタンによってジャンプスーツに固定される。
【0004】
これらのボタンはジャンプスーツの対応するボタンホールに留められる。この状態で中間ピースはそれぞれ畳まれてポケットを形成する。ボタンによって固定されないとき、シート部は離れて、臀部を越えて脚まで引き下げることができる。この場合、ジャンプスーツとシート部の間の中間ピースの長さがシート領域を開くことができる範囲を決定する。このデザインは、ぴったりとフィットするサイクリング・ウエアには望ましくない。背中の弾性的なウエストバンド、わきのボタン、そして折り畳まれるポケットが、着用して快適でないからである。さらに、別になっているシート部を臀部を越えて十分に引くには中間ピースを大きな寸法に作らなければならない。
【0005】
特許文献2は、トイレの使用を容易にするように股の部分にジップファスナーを有するワンピースのサイクリング・パンツを記載している。この特許出願は股の部分におけるジップファスナーの存在を快適にする工夫をしているが、それでもこの位置に摩擦を生む物質及び/又はアイテムを設けることは望ましいことではない。さらに、股部分におけるジップファスナーは十分に大きく作ることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,163,182号
【特許文献2】国際公開公報第2009/021621号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、トイレを使用するのに十分な程度にシート領域を容易に開くことができるワンピース衣服を提供することである。
【0008】
さらに、本発明の目的は、サイクリング用のビブパンツのようなワンピース衣服であって、弾性材料から成り、トイレを使用するのに十分な程度にシート領域を容易に開くことができるワンピース衣服を提供することである。
【0009】
特に、本発明の目的は、サイクリング用のビブパンツのようなワンピース衣服であって、ビブパンツの上の別の衣服を脱ぐことなくトイレを使用するのに十分な程度にシート領域を容易に開くことができるワンピース衣服を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、独立な特許請求項1の特徴によって達成される。第一の実施形態は従属請求項2から14までの特徴によって記載される。別の実施形態は、従属請求項15から21までに記載される。
【0011】
本発明の目的は、着用者の体の上部と下部を覆い、前面部と背面部及びシート領域を有するワンピース衣服によって達成される。この衣服は衣服右手サイドと衣服左手サイドとウエスト部を有する。また、衣服は少なくとも一つの閉止デバイスを有し、それには終端部と始端部があり、少なくとも一つの閉止デバイスは側方に衣服右手サイドと衣服左手サイドに沿って配置され、シート領域を開くことができるように少なくとも終端部は衣服の前面部に配置されている。
【0012】
衣服の前面部は、着用者の肩とネックライン領域から下で体を覆う部分を意味すると理解される。衣服の背面部は着用者の背中とそこから下の体部分を覆う部分を意味すると理解される。この場合、シート領域は背面部の一部であり、臀部又はシートを覆う衣服部分を指す。さらに、衣服の上部と下部は区別され、上部はウエストの上で体を覆い、下部はウエストの下で体を覆う。衣服の衣服右手サイドと衣服左手サイドに沿って側方で延びる少なくとも一つの閉止デバイスは、衣服を背面部で開くことを可能にする。この場合、シート領域は上方背面部から分離されて臀部が露出する。これに関連して、衣服の上部がスリップせず、その上の衣服を脱がなくてもよいという利点がある。少なくとも一つの閉止デバイスの終端部を前面部に配置することで、終端部によって閉止デバイスが無制限に開くことができないために、閉止デバイスを開いたときにワンピース衣服が2つの別々の部分に分離することがないという利点がある。
【0013】
閉止デバイスは、歯つき又は封止リップつきジップファスナー、ボタン又はスタッドファスナー(ホック又はボタンとボタンホール)、ベルクロ(Velcro)、又は2つの部分を接合するその他の公知の閉止メカニズムであってよい。本発明の目的には、閉止デバイスは、例えばジップファスナーのように中断されていないと言う意味で連続的であることが好ましい。公知の閉止デバイスは弾力的でない。
該少なくとも一つの閉止デバイスは終端部と始端部を有する。始端部は閉止デバイスの開放が始まる(又は閉止動作が終わる)箇所を意味すると理解される。ジップファスナーの場合、始端部はジップファスナーのスライダーがジップファスナーの歯又は封止リップを開き始める箇所である。ある実施形態では、始端部はオープンデザインになっている、すなわち2つのジップファスナーのストリンガー(stringer)は端で接合せずに離れている。別の実施形態では、始端部はクローズドデザインになっている、すなわち2つのジップファスナーのストリンガーは端で一緒になっていて分離できないユニットである。ジップファスナーのスライダーはジップファスナーのストリンガーの歯又は封止リップから外へ出ることができない。
終端部は閉止デバイスの開放が終わる(又は閉止動作が始まる)箇所を意味すると理解される。終端部は、特に、閉止デバイスの開放を制限する閉じた終端であり、それによって衣服はワンピースになる。ジップファスナーの場合、終端部はジップファスナーのスライダーによって2つの別々のジップファスナー・ストリンガーに分離することができない閉じた終端部として構成される。例えば、2つのジップファスナー・ストリンガーが終端で一緒になって分離できない端を形成する。その結果、ジップファスナーのスライダーを引いて開く動き、すなわちジップファスナーの開放、は閉じた終端部でストップする。同時に、ジップファスナーの歯又は封止リップの閉止は、ジップファスナーのスライダーが始端部の方へ動かされるとただちに始まる。
【0014】
ある実施形態では、少なくとも一つの閉止デバイスの終端部と始端部は前面部にあり、閉止部分が始端部から終端部の方へ開くと、シート領域が衣服右手サイドと衣服左手サイドで側方に、そして背面部で下方に開き、その結果臀部を越えて引っ張ることができる。この場合、衣服の上部は着用位置のままで変化せず、その上に着けた別の衣服は着けたままに保たれる。この実施形態では、始端部と終端部はクローズドデザインでありワンピースでフィットした形を保証する。
【0015】
閉止デバイスは、好ましくはウエスト領域をまわって延びるジップファスナーであり、閉止デバイスが閉じた状態の始端部にジップファスナーのスライダーがある。終端部の方へのスライダーの動きでジップファスナーの歯が開く。
【0016】
この実施形態の別の変形では、衣服は少なくとも一つのストレッチング・ゾーンを含む弾性コンポーネントを有する。弾性コンポーネントは弾性材料を含むものであってよい。特にサイクリング用パンツの場合、衣服は少なくとも一部又は全部が弾性材料から作られる。弾性材料によって、サイクリング用パンツをぴったりとフィットして納まるように着けることが可能になる。引き伸ばすことができ、それに応じて戻る性質もあって引き伸ばした後で弾性材料が元の状態をとることができるすべての材料、特に織物、が使用される弾性材料として考慮される。これに関して、織物自身が弾性を、例えばその編みの性質によって有することもある。他方、織物にエラスタン(elastane)(ストレッチ可能な合成繊維)を加えて弾性を有するようにすることもある。この場合、エラスタンは織物を構成する少なくとも一つの他のタイプの繊維と混合される。この場合弾性のある織物は少なくとも1%のエラスタンを含まなければならない。ある実施形態ではエラスタン含有量は3%から5%の間であり、別の実施形態ではエラスタン含有量は20%を超えて、例えば22%である。ある選ばれた実施形態では、78%のポリアミドと22%のエラスタンから成るニットウエアが弾性材料として用いられる。
【0017】
理想的にはストレッチング・ゾーンが前面部にあるのがよい。ストレッチング・ゾーンは背面部にあっても、前面部と背面部にあってもよい。ストレッチング・ゾーンは、弾性材料のコンポーネントと通常は非弾性的な、ジップファスナーなどの少なくとも一つの閉止デバイスとの間の応力を補償して、この衣服を適切にぴったりとフィットしてしわにならないように着け続けることができるようにする。ある実施形態では、ストレッチング・ゾーンは閉止デバイスの終端部と始端部の間に配置されて、好ましくは弾性材料における開口という形又は特定のストレッチ可能な材料という形をとる。
【0018】
本発明の目的を達成するための別の実施形態では、ワンピース衣服は第一の閉止デバイスと第二の閉止デバイスを有する。第一の閉止デバイスは衣服の前面部と背面部の間の衣服左手サイドのまわりで側方に配置される。第二の閉止デバイスは衣服の前面部と背面部の間の衣服右手サイドのまわりで側方に配置される。第一及び第二の閉止デバイスの終端部は前面部に配置される。第一及び第二の閉止デバイスの始端部はシート領域を開くことができるように背面部に互いに向き合って配置される。第一及び第二の閉止デバイスは好ましくはジップファスナーとして形成される。
閉止デバイスは衣服の衣服右手サイドと衣服左手サイドのまわりで、背面部からスタートして前面部の方向にそれぞれ開くことができる。前面部にある終端部がそれぞれの閉止デバイスの開放をストップさせる。終端部は閉止デバイスの開放が衣服を上部と下部に完全に分離する可能性を防ぐ。完全に分離せずにシート領域だけが背面部と両サイドで開き、その結果背面の上部から分離する。このようにしてシート領域を臀部を越えて引くことができる。背面の上部は元の位置にとどまる。
特に、第一及び第二の閉止デバイスはウエスト領域に配置される。本実施形態が提供する衣服も同様に少なくとも一つの弾性的なコンポーネントと少なくとも一つのストレッチング・ゾーンを有し、ストレッチング・ゾーンは前面部及び/又は背面部に配置される。特に、ストレッチング・ゾーンは同様にウエスト領域に配置される。有利な形として、この少なくとも一つのストレッチング・ゾーンは第一及び第二の閉止デバイスの終端部の間又は第一及び第二の閉止デバイスの始端部の間に配置される。その結果、非弾性的な閉止デバイスの終端部の間又は始端部の間にストレッチ可能な領域が生み出される。
第一のストレッチング・ゾーンを前面部に設け、第二のストレッチング・ゾーンを背面部に設けることが特に有利である。この場合、第一のストレッチング・ゾーンは前面部に第一の開口を有し、第二のストレッチング・ゾーンは背面部に第二の開口を有することができる。これによって弾性材料に厄介なしわや凸凹が生じないことが保証される。
この実施形態の別の変形では、第一及び第二のジップファスナーの終端部が第一のストレッチング・ゾーンに割り当てられ、第一及び第二のジップファスナーの始端部が第二のストレッチング・ゾーンに割り当てられる。
【0019】
次に、本発明の実施形態について添付図面を参照してさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明によって作られたワンピース衣服の第一の典型的な実施形態を示す側面斜視図であり、閉止デバイスが閉じている状態、したがってシート領域が閉じている状態で示す。
【図2】図2は、図1に示された第一の典型的な実施形態を、閉止デバイスが開いている状態で、したがってシート領域が開いている状態で示す側面斜視図である。
【図3】図3は、本発明によって作られた第一の典型的な実施形態に係わるワンピース衣服の背面部を示す概略図であり、閉止デバイスが閉じられ、閉止デバイスのそれぞれの始端部の間にストレッチング・ゾーンを有する。
【図4】図4は、図3に示されるような本発明によって作られたワンピース衣服の衣服左手サイドを示す概略図であり、閉止デバイスが両サイドをめぐって延びている。
【図5】図5は、図3に示されるような本発明によって作られたワンピース衣服の前面部を示す概略図であり、閉止デバイスが閉じられ、閉止デバイスのそれぞれの終端部の間にストレッチング・ゾーンを有する。
【図6】図6は、本発明によって作られた第二の実施形態に係わるワンピース衣服の前面部を示す概略図であり、閉止デバイスがウエスト領域をめぐって延び、閉止デバイスの始端部と終端部の間にストレッチング・ゾーンを有する。
【図7】図7は、図6に示される本発明によって作られたワンピース衣服の背面部を示す概略図であり、閉じられた閉止デバイスがウエスト領域をめぐって延びている。
【図8】図8は、サイクリング用ビブパンツの形の本発明によるワンピース衣服を着けた着用者を示す概略図であり、ビブパンツのシート領域が臀部を越えて引かれている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
いろいろな形で示される実施形態において、同様のパーツは同じ参照数字で表されている。記載されている位置の記述、例えば上方、下方、側方、などはそれぞれの時点で記載され図示されている図にも関するものであり、位置に変更がある場合は新しい位置にも同様に移される。例示され記載された典型的な実施形態における個々の特徴及び特徴の組合せはそれ自身が独立な、進歩的な、又は本発明に係わるソリューションを表す。
【0022】
図1と2は本発明に係わるワンピース衣服を基本的な機能を有する形で示す。
【0023】
図1は、特許請求項1から15までの特徴を有するワンピース衣服の第一の実施形態を示す。衣服10は、特にスポーツ・サイクリングに適したワンピース・ビブパンツである。ワンピース・ビブパンツの場合、主としてストラップの形である上部とパンツの形の下部が分離できないように互いに接合されている。パンツは長いパンツレッグを有しても、短いパンツレッグを有してもよい。上部は、ストラップでなく上体を覆う着衣、例えばTシャツ又は短い又は長いスリーブのジャージーであってもよい。
【0024】
ウエスト領域20は、着用者の胴回りが最も狭い領域であるウエストにある衣服部分である。衣料産業ではウエストは通常ウエストラインが目立つように作られる(図3から7までを見よ)。ウエスト領域20はウエストラインの上と下の領域である、通常それは着用者のヒップの上、そしてチェストの下の領域である。
【0025】
ビブパンツとして示された衣服10は、また、前面部12と背面部14及びシート領域16,並びに上部11と下部13を有する。この典型的な実施形態では、上部11は前面部12に2つのストラップ部を有し、それらはウエスト領域で始まり、ショルダー領域を越えて背面部14に達する。背面部14は、切れ目なく背中を覆う着衣部分として形成されている。下部13は短いパンツレッグを有する。
ビブパンツ10は少なくとも一部分が弾性材料で作られ、着用者のヒフにビブパンツ10がぴったりフィットするようになっている。ビブパンツの全体が弾性材料から作られている場合、それはストレッチ・パンツとも呼ばれ、例えば着用者の体寸法を超えて引き伸ばすこともできる。
引き伸ばすことができ、それに応じて回復する性質もあって引き伸ばした後でも元の状態に戻ることができるすべての材料、特に織物、が使用できる弾性材料として考慮される。この点で、織物自身が、例えば対応する編みの性質によって弾性を有することもある。他方、織物にエラスタン(引き伸ばすことができる合成繊維)を添加することによって弾性が得られることもある。この場合、エラスタンは織物を構成する少なくとも一つの別の繊維と混合される。弾性織物は少なくとも1%のエラスタンを含む。ある実施形態では、エラスタン含有量は3%から5%までの間である。別の実施形態では、エラスタン含有量は20%超、例えば22%である。典型的な本実施形態では、ビブパンツは主に78%ポリアミドと22%エラスタンから成る弾性織物から製造される。
別の典型的な実施形態ではビブパンツは一部が弾性材料、一部が非弾性材料から製造される。
【0026】
ビブパンツ10は、衣服右手サイド17と衣服左手サイド18を有する。
衣服右手サイド17は、ビブパンツ10を着用したときに着用者の右腕が位置するビブパンツ10の側面である。したがって衣服右手サイド17は着用者の体の右半分の部分を覆う。
衣服左手サイド18は、ビブパンツ10を着用したときに着用者の左腕が位置するビブパンツ10の側面である。したがって衣服左手サイド18は着用者の体の左半分の部分を覆う。
【0027】
図1に示された実施形態は、また、2つの閉止デバイス26,28を有し、第二の閉止デバイス28の始端部25Bだけが見られる。第一の閉止デバイス26は衣服左手サイド18のまわりで前面部12と背面部14の間を側方に延びている。第二の閉止デバイス28(図1では見えない)は衣服右手サイド17のまわりで前面部12と背面部14の間を側方に延びている。第一の閉止デバイス26は始端部25Aと終端部23A(図1では見えない)を有する、第二の閉止デバイス28は始端部25Bと終端部23B(図1では見えない)を有する。
【0028】
本発明でいう閉止デバイスとは、あるものの2つの対向する側を接合するために知られているすべてのシステムを指すと理解すべきである。それは例えば、ジップファスナー、歯の代わりに封止リップを有するジップファスナー(2つの封止リップの圧着)、ボタン又はスタッド、例えばホック、及びVelcroファスナー、などを含む。
例えば、YKKドイツGmbH、マインハウゼン、ドイツ、又はmas s.r.l.社、パラッゾロ、イタリー、から市販されているジップファスナーなどを使用することができる。ある実施形態では、ジップファスナーは幅が4.2 mm(YKKからの#3ジップファスナー、又はman s.r.l.からのN4ジップファスナーに相当する)である。すべての入手できる幅のジップファスナーが使用できる。
【0029】
閉止デバイスの終端部とは、例えば、ジップファスナーの終端部を指すと理解すべきである。本発明のある実施形態では、終端部は閉じた構成になっていて、ジップファスナーのスライダーによって2つの別々のジップファスナー・ストリンガーに分離できないようになっていなければならない。例えば、2つのジップファスナー・ストリンガーは終端部で一緒になって分離できない端を形成する。その結果、ジップファスナー・スライダーを引いて開く動き、すなわちジップファスナーの開放、は終端部でストップする。同時に、ジップファスナーの歯又は封止リップの閉止は終端部でジップファスナー・スライダーが始端部の方向に動かされるとすぐに始まる。ボタンやスタッドの場合、前面部のボタン又はスタッド・ストリップの端が終端部を形成する。
閉止デバイスの始端部は、例えば、ジップファスナーの始端部を指すと理解すべきである。本発明によれば、始端部は、ジップファスナー・スライダーがジップファスナーの歯又は封止リップを開き始めるジップファスナーの箇所である。ボタン又はスタッドの場合、背面部のボタン又はスタッド・ストリップの端が始端部を形成する。ある実施形態では、始端部が閉じた構成である、すなわち2つのジップファスナー・ストリンガーがその端で一緒になって分離できないユニットを形成する。ジップファスナー・スライダーはジップファスナー・ストリンガーの歯又は封止リップからスライドして外れることができない。
【0030】
本発明によると、第一及び第二の閉止デバイス26,28の始端部25A、25Bは背面部にあり、第一及び第二の閉止デバイス26,28の終端部23A、23Bはビブパンツ10の前面部にある。この配置は、第一及び第二の閉止デバイス26,28を開くことによってシート領域16が背面部14から始めて開かれ、上方の背面部14から分離されるという効果を達成する。このようにして下方部分13は背面部14の領域で、そして部分的に衣服右手サイド及び衣服左手サイド17,18でも、上部12から脱離する。下部13におけるシート領域16はその結果自由に動けるようになり、上部11はその位置を維持する(ヒンジの原理)。前面部12における終端部23A、23Bは下部13が上部11から完全に離れることを防ぐ。着用者はシート領域16を下へ臀部を越えて引くことができ、上部11とその上に着けている別の衣服を脱ぐことなく何も問題なくトイレに行くことができる。
【0031】
図2は、図1に示されたビブパンツ10を開かれた状態で示す。2つの閉止デバイス26,28は、背面部14からスライダーが前面部12の終端部23A、23B(図2では見えない)で静止するまで開かれる。このようにしてシート領域16は下へ自由に動くことができ着用者の臀部を越えて引くことができる。シート領域16は下部13の背面部14で蝶番のように所望する位置に動かすことができ、上部11はその位置を変えない。これは特に、上部11の上に着用された別の衣服を脱がずに、例えばトイレに行くこともできるという利点がある。
【0032】
図3には、ワンピース衣服10の背面部14が示されている。背面部14のシート領域16を含む下部13は実質的に短いレッグ・パンツである。上部11の背面部14は着用者の背中をほぼ完全に覆っている。ウエスト領域20で、示されたウエストライン19の下に2つの閉止デバイス26,28が延びている。第一の閉止デバイス26は衣服左手サイド18に沿って背面部14に延びている。第二の閉止デバイス28は衣服右手サイド17に沿って背面部14に延びている。第一の閉止デバイス26の始端部25Aと第二の閉止デバイス28の始端部25Bは、背面部14のシート領域16の上にあって互いに対向している。始端部25A、25Bはオープンデザインになっている。この場合、始端部25A、25Bはすぐ隣接して配置され、例えば互いに直接接触している。別の実施形態では、図3にも示されているように、始端部25A、25Bは互いにある距離をおいて配置される。この距離はストレッチング・ゾーン24を規定し、これはビブパンツ10の弾性材料と非弾性閉止デバイス26,28の間の応力を補償する役目がある。対応するストレッチング・ゾーンがない場合、非弾性閉止デバイスと弾性材料の間の隣接領域にしわが発生する可能性がある。ストレッチング・ゾーン24はそのようなしわを防止し、ビブパンツがきつくぴったりフィットするようにする。ストレッチング・ゾーン24は、図示されているように、弾性材料の開口によって形成することができる。2つの閉止デバイス26,28の始端部25A、25Bは、したがって、この開口/ストレッチング・ゾーン内に配置される。
別の実施形態では、ストレッチング・ゾーンは引き伸ばすことができる材料で形成される。
【0033】
好ましくは、2つの閉止デバイス26,28は2つのジップファスナーによって構成される。それぞれのジップファスナー26,28の終端部23A、23B(図3では見えない)は閉じており互いに分離できないように接合されたジップファスナー・ストリンガーによって形成されている。各ジップファスナー26、28の開いた始端部25A、25Bにはジップファスナーを開閉するためのジップファスナー・スライダーがある。
【0034】
図4は、図3に示された本発明によるビブパンツ10を示す側面図であり、特に衣服左手サイド18を示している。第一の閉止デバイス26は衣服左手サイド18に沿って前面部12から背面部14へ延びている。図4は、閉止デバイス26がウエスト領域20内において前面部12でウエストライン19の上から背面部14でウエストライン19の下へ延びる実施形態を示している。この配置は2つの閉止デバイス26,28を手で開いたり閉じたりすることを容易にする。別の実施形態では、閉止デバイスが反対の方向に延びている、詳しくいうと、前面部12でウエストライン19の下から背面部14でウエストライン19の上の領域に延びている。他の実施形態では、閉止デバイスは実質的にウエストライン19に沿って延びている。
【0035】
図5は、図3に示された本発明によるワンピース衣服10の前面部12を示す。前面部12は2つのストラップ15によって占められ、それが背面部14から上体に沿って延び、ウエスト領域20においてパンツレッグで終わっている。2つのストラップ15は衣服10の前面部12で開口を画定し、それがウエスト領域20でもう一つのストレッチング・ゾーン22としての機能を帯びる。第一及び第二の閉止デバイス26,28の終端部23Aと23Bはこの開口のエッジにおいて互いにある距離をおいて位置している。2つの閉止デバイス26,28が開放されるとき、開放は閉じた終端部23Aと23Bでストップし、終端部23Aと23Bが衣服10の上部11と下部13が完全に分離することを防ぐ。したがって、図示の実施形態では、閉止デバイス26,28はそれぞれ第一のストレッチング・ゾーン22と第二のストレッチング・ゾーン24の間に配置される、詳しく言うと、好ましくは終端部23Aと23Bが第一のストレッチング・ゾーン22に割り当てられ、始端部25Aと25Bが第二のストレッチング・ゾーン24に割り当てられるという形で配置される。
【0036】
図6と図7は、本発明による特許請求項1に記載のワンピース衣服10の特許請求項16から20までを合わせた第二の実施形態を示す。第一の実施形態との違いとして、第二の実施形態のワンピース衣服10は、ウエスト領域20をめぐって延びる閉止デバイス21を有し、前記デバイスの少なくとも終端部23は前面部12に配置されている。
【0037】
図6は、衣服10の前面部12を示す。前面部12は2つのストラップ15を有し、それらは背面部14から前面部12の上部11に沿って延び、ウエスト領域20を通りパンツレッグで終わる。2つのストラップ15は前面部12で開口を画定し、それはウエスト領域20でストレッチング・ゾーン22の機能を帯びる。ジップファスナーの形の閉止デバイス21が前面部12から側方へ衣服左手サイド18に沿って延び、背面部14を横断して衣服右手サイド17に沿って側方に延び再び前面部12に至る。したがって、閉止デバイス21はウエスト領域20で衣服10をめぐり、始端部25と終端部23がそれぞれ前面部12に配置される。この場合、始端部25と終端部23はウエストライン19の上に位置する、始端部25と終端部23の間に延びるジップファスナーは実質的にウエストライン19の下に位置する(図7を見よ)。この配置はジップファスナーを手で開いたり閉じたりすることを容易にする。
図示された実施形態では、始端部25と終端部23はストレッチング・ゾーン22によって互いからある距離を置いて配置されている。始端部25と終端部23は、ある距離をおいて、又は距離をおかずに対向するように配置することも可能である。閉止デバイス21を開くと、シート領域16(図6では見えない)が背面部上方から下へ畳まれるが、上部11は位置を変えない。シート領域16はその後容易に臀部を越えて引くことができる。
【0038】
図7には、図6に示された衣服10の背面部14が示されている。背面部14には、シート領域16が属しており、それは主に衣服10の下部13にある。閉止デバイス21は衣服左手サイド18から衣服右手サイド17へ切れ目なく延びている。
【0039】
図8は、本発明によるワンピース衣服10を実際の応用で示している。着用者30は第一及び第二の閉止デバイス26,28を開いており、背面部14のシート領域16を下へ臀部を越えて引くことができる。上部11は元の位置にとどまっている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者(30)の体の上部と下部を覆うワンピース衣服(10)であって、
a)前面部(12)及びシート領域(16)を含む背面部(14)、
b)衣服右手サイド(17)と衣服左手サイド(18)、
c)ウエスト領域(20)、
d)少なくとも一つの閉止デバイス(21)及びその終端部(23)と始端部(25)、を有し、
e)該少なくとも一つの閉止デバイスは該衣服右手サイド(17)と該衣服左手サイド(18)に沿って側方へ、少なくとも該終端部(23)が該前面部(12)に配置されて該シート領域(16)の開放を可能にするように、配置されることを特徴とするワンピース衣服(10)。
【請求項2】
該少なくとも一つの閉止デバイスは、
a)該衣服左手サイド(18)のまわりで該前面部(12)と該背面部(14)の間で側方へ配置された第一の閉止デバイス(26)、
b)該衣服右手サイド(17)のまわりで該前面部(12)と該背面部(14)の間で側方へ配置された第二の閉止デバイス(28)、を有し、
c)該シート領域(16)の開放を可能にするように該第一の閉止デバイス(26)と該第二の閉止デバイス(28)の終端部(23A,23B)は該前面部(12)に配置され、該第一の閉止デバイス(26)と該第二の閉止デバイス(28)の始端部(25A,25B)は互いに対向して該背面部(14)に配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の衣服(10)。
【請求項3】
該第一の閉止デバイス(26)と該第二の閉止デバイス(28)が該ウエスト領域(20)に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の衣服(10)。
【請求項4】
該衣服(10)は該前面部(12)及び/又は該背面部(14)に少なくとも一つの弾性コンポーネント及び少なくとも一つのストレッチング・ゾーン(22,24)を有することを特徴とする請求項2に記載の衣服(10)。
【請求項5】
該少なくとも一つのストレッチング・ゾーン(22,24)は該ウエスト領域(20)に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の衣服(10)。
【請求項6】
該少なくとも一つのストレッチング・ゾーン(22,24)は該第一及び第二の閉止デバイス(26,28)の終端部(23A,23B)の間、又は該第一及び第二の閉止デバイス(26,28)の始端部(25A,25B)の間に配置されて、該終端部(23A,23B)の間又は該始端部(25A,25B)の間で引き伸ばすことができる領域を形成することを特徴とする請求項4及び5に記載の衣服(10)。
【請求項7】
該少なくとも一つのストレッチング・ゾーン(22,24)は該少なくとも一つの弾性コンポーネントにおいて開口を有することを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の衣服(10)。
【請求項8】
該少なくとも一つのストレッチング・ゾーン(22,24)は引き伸ばすことができるコンポーネントを有することを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の衣服(10)。
【請求項9】
該前面部(12)に第一のストレッチング・ゾーン(22)を有し、該背面部(14)に第二のストレッチング・ゾーン(24)を有することを特徴とする請求項4に記載の衣服(10)。
【請求項10】
該第一のストレッチング・ゾーン(22)は該前面部(12)に第一の開口(32)を有することを特徴とする請求項9に記載の衣服(10)。
【請求項11】
該第二のストレッチング・ゾーン(24)は該背面部(14)に第二の開口(34)を有することを特徴とする請求項9に記載の衣服(10)。
【請求項12】
該第一の閉止デバイス(26)は該第一のストレッチング・ゾーン(22)と該第二のストレッチング・ゾーン(24)の間に配置され、該第二の閉止デバイス(28)は該第一のストレッチング・ゾーン(22)と該第二のストレッチング・ゾーン(24)の間に配置されることを特徴とする請求項9に記載の衣服(10)。
【請求項13】
該第一及び第二の閉止デバイス(26,28)は連続的であり、歯を有するジップファスナー又は封止リップを有するジップファスナーを有することを特徴とする請求項2に記載の衣服(10)。
【請求項14】
該第一の閉止デバイス(26)は第一のジップファスナーを有し、該第二の閉止デバイス(28)は第二のジップファスナーを有し、該第一及び第二のジップファスナーは該ウエスト領域(20)に配置されることを特徴とする請求項13に記載の衣服(10)。
【請求項15】
該第一及び第二のジップファスナーの終端部(23A,23B)が第一のストレッチング・ゾーン(24)に割り当てられ、該第一及び第二のジップファスナーの始端部(25A,25B)が第二のストレッチング・ゾーン(24)に割り当てられることを特徴とする請求項9〜14に記載の衣服(10)。
【請求項16】
該終端部(23)と該始端部(25)が該前面部(12)に配置されることを特徴とする請求項1に記載の衣服(10)。
【請求項17】
該少なくとも一つの閉止デバイス(21)は該ウエスト領域(20)に配置されることを特徴とする請求項1に記載の衣服(10)。
【請求項18】
該少なくとも一つの閉止デバイス(21)はジップファスナーを含むことを特徴とする請求項1に記載の衣服(10)。
【請求項19】
該衣服(10)は少なくとも一つの弾性コンポーネントと少なくとも一つのストレッチング・ゾーン(22)を有することを特徴とする請求項1及び請求項16〜18に記載の衣服(10)。
【請求項20】
該少なくとも一つのストレッチング・ゾーン(22)は該少なくとも一つの弾性コンポーネントに開口を有することを特徴とする請求項19に記載の衣服(10)。
【請求項21】
該少なくとも一つのストレッチング・ゾーン(22)は該閉止デバイス(21)の終端部(23)と始端部(25)の間に配置されることを特徴とする請求項19及び20に記載の衣服(10)。
【請求項22】
サイクリング用ビブパンツから成る請求項1〜21のいずれか1項に記載の衣服(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−526204(P2012−526204A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508952(P2012−508952)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002789
【国際公開番号】WO2010/127859
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VELCRO
【出願人】(391018178)ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエーツ,ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (40)
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
【Fターム(参考)】