説明

ワークの固定治具及び固定装置

【課題】本発明は、構造が簡単でありながらワークの固定安定性が高く、ワークの脱着が容易なワークの固定治具及び固定装置の提供を目的とする。
【解決手段】ワークに有する凹部又は穴部に挿入することでワークを装着するワーク装着部と、当該ワーク装着部から突没するロックピンと、当該ロックピンを後部から突没操作するクランプシャフトを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は機械加工するワークを固定するための治具及び装置に関し、特にショットブラスト機にワークを投入するのに使用すると効果的である。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム合金のダイカスト鋳造品にあっては高圧にて溶湯を鋳込むために鋳バリが発生しやすい。
この鋳バリを取り除く方法の1つにショットブラスト処理がある。
ショットブラスト処理は、鋳造製品(以下ワークと称する。)の鋳バリ部分にめがけて亜鉛玉やSUS玉等のショット玉を噴射し、バリを取り除く工法である。
従って、ショットノズルから噴射されたショット玉がねらいの製品位置に当たるようにするにはワークをしっかり固定してやる必要がある。
しかし、ワークの固定作業に時間がかかるようでは、工数アップとなり生産コスト高の要因になる。
例えば特許文献1には上下一対のクランプ部材にてワークをクランプする技術を開示するが、装置が複雑でありクランプにアクチュエータが必要となっている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−77542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、構造が簡単でありながらワークの固定安定性が高く、ワークの脱着が容易なワークの固定治具及び固定装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るワークの固定治具は、ワークに有する凹部又は穴部に挿入することでワークを装着するワーク装着部と、当該ワーク装着部から突没するロックピンと、当該ロックピンを後部から突没操作するクランプシャフトを備えたことを特徴とする。
ここで、ワークに有する凹部又は穴部とは、ワークを治具に固定するのに用いる部分を意味し、凹部形状や穴部形状に特に限定がなく、治具のワーク装着部に装着し、凹部又は穴部の側壁にロックピンの先端が当たるものであればよい。
よって、通常はワークの凹部及び穴部の大きさ及び形状を考慮して治具の装着部を設計することになる。
【0006】
また、治具の構造例としてはワーク装着部は、ロックピンのガイド孔と当該ロックピンのガイド孔の後部で直交する方向にクランプシャフトガイド孔とを有し、ロックピンはガイド孔に沿って先端部が没入する方向にばね付勢されており、クランプシャフトが前進するとロックピンの後部を押圧することでロックピンが突出しワークを固定でき、クランプシャフトが後退するとロックピンがばね付勢力により没入しワークの固定を解除するものであることが好ましい。
ここでクランプシャフトが前進、後退するとはワーク装着部との相対的位置関係をいい、クランプシャフトが固定されていて、ワーク装着部を有する治具本体部が前進、後退あるいは上昇、下降するものであってよい。
【0007】
本発明に係るワークの固定装置において、請求項1又は2記載のワークの固定治具は、移動テーブルから立設したクランプシャフトに、クランプシャフトガイド孔を用いて取り付けてあるとともにクランプシャフトガイド孔と直交する方向につば部を有し、固定治具の移動経路途中に当該つば部を、下降方向に押圧するロックガイドと上昇方向に押圧するアンロックガイドとを有していることを特徴とする。
ここで、移動テーブルとは治具に固定したワークを移送するためのテーブルをいい、ターンテーブルのみならずコンベア式移動も含まれる。
また、クランプシャフトをテールから立設した場合にクランプシャフトガイド孔に沿ってワーク装着部を有する治具本体がロックガイドに沿って下降し、アンロックガイドに沿って上昇することになる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るワークの固定治具においては、クランプシャフトを治具本体のクランプシャフトガイド孔に沿って、ワーク装着部と相対的に前進させるとロックピンがワーク装着部から突出し、ワークの固定ができ、逆にクランプシャフトを相対的に後退させるとロックピンがばね付勢によりワーク装着部から没入するので、例えばクランプシャフトを立設固定した場合に治具本体を上下動させるだけで簡単にワークのロック及びアンロックができる。
また、本発明に係るワークの固定装置であっては、移動テーブルからクランプシャフトを立設し、これに治具本体のクランプシャフトガイド孔を用いて取り付け、移動テーブルの移動により固定治具が移動する途中につば部を下方に押圧するロックガイドを設けるだけで、ワークの固定ができ、逆に固定治具の移動する途中につば部を上方に押圧するアンロックガイドを設けるだけでワークのアンロックができるのでテーブルの移動駆動部の他には駆動部が不要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係るワークの固定治具及び固定装置の例を以下図面に基づいて説明する。
図1は、ワーク1を治具本体10に装着し、固定する流れを示し、図2は、ワークが固定された治具本体10からワークの固定を解除する流れを示す。
治具本体10は外形が略円柱状のワーク装着部11とつば部14を有している。
ワーク装着部11にはワーク1の中央に有している穴部2を用いて、このワーク1を取り付ける。
本実施例ではワーク1の形状が略円盤状で中央に穴部2を有している例を示したが、治具に装着するための凹部や穴部がワークにあればワークの形状は限定されない。
【0010】
治具本体10は、図1(a)にて垂直方向に設けたクランプシャフトガイド孔13にクランプシャフト30を配置し、クランプシャフトガイド孔13と直交する方向にロックピンガイド孔12を設けてある。
ロックピンガイド孔12には、ロックピン20を配設してある。
ロックピン20は、先端部22がワーク装着部11から突没するようになっていて、後端部23はクランプシャフトガイド孔13に突出している。
また、ロックピン20はスプリング21によりロックピンの先端部22が没入する方向にばね付勢されている。
図1に示した実施例ではワーク装着部11に左右一対のロックピン20を配設した例になっているが、少なくとも1つのロックピンを有していればよく、放射状に3つ以上のロックピンを有していてもよい。
【0011】
図1(a)に示した状態は治具本体10が上昇位置にあり、クランプシャフト30は相対的にクランプシャフトの先端部31がクランプシャフトガイド孔13に沿って後退した位置になっている。
この状態では、ロックピン20の先端部22がワーク装着部11の外周面から内側に没入した状態になっていて、ワーク1の穴部2の内側に側壁との間に隙間を有し、ワーク11の着脱が可能である。
【0012】
本実施例において、クランプシャフト30は図示を省略したターンテーブル上に立設されていて、ターンテーブルの回転により、クランプシャフト30がvの方向に回転移動すると、その移動経路途中に設けた下面がテーパ部41になっているロックガイド40につば部14の上面が当接するようになっている。
治具本体のつば部14の上面がロックガイド40のテーパ部41に沿って移動すると、テーパ部41が前進方向に前方が下方向に下がった形状になっていて、治具本体のつば部14にfの押し下げ力が働き、治具本体10が下降する。
これにより図1(c)に示すように相対的にクランプシャフト30が前進した状態になる。
クランプシャフト30の先端部31は半球状、円錐状あるいはテーパ状になっていて、ロックピン20の後端部23を押圧する。
クランプシャフト30が前進するとロックピンの先端部22がワーク装着部11の外周面から外に突出し、ワーク1の穴部側壁に当接し、ワーク11が治具本体10に固定(ロック)される。
この状態ではロックピンの後端部23がクランプシャフトの円柱部の側面32に当接した状態になっている。
【0013】
次に、図2に基づいて、ワークのアンロックの流れを説明する。
図2(a)は、治具本体10にワーク1がロックされた状態を示し、図2(b)に示すようにターンテーブルが回転し、vの方向に移動すると、その途中にアンロックガイド50が設けてある。
アンロックガイド50は上面の前進方向の前方が上方に位置するテーパ状になっていて、今度はテーパ部51につば部14の下側が当接する。
これにより、つば部14に上昇方向の押圧力fが働き、治具本体は上昇し、図2(c)のような状態になる。
これにより、クランプシャフト30は相対的に後退した位置になり、ばね付勢されていたロックピン20も後退し、ワーク1の固定が解除された状態になる。
【0014】
図3は、本発明に係るワークの固定装置をショットブラスト機に展開した例を示す。
図3は、ショットブラスト機のターンテーブルの回転を模式的に示したもので、ポジションP1にてワーク1を治具本体10に取り付け、ロックガイド40にて自動ロックされ、ポジションP2,P3でエアブロー等の予備処理をし、ポジションP4,P5でショット玉が噴射され、ポジションP6,P7でエアブロー等の後処理がなされ、アンロックガイド50にてワークの固定が解除されるようになっている。
【0015】
本実施例では、ターンテーブルの回転移動途中にロックガイド40とアンロックガイド50を設けた例を示したが、クランプシャフト30が上昇及び下降する機構でもよく、また手で治具本体10を上昇、下降させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】治具本体にワークを固定する流れを示す。
【図2】治具本体に固定されたワークの固定を解除する流れを示す。
【図3】ショットブラスト機の模式図を示す。
【符号の説明】
【0017】
1 ワーク
10 治具本体
11 ワーク装着部
12 ロックピンガイド孔
13 クランプシャフトガイド孔
14 つば部
20 ロックピン
21 スプリング
30 クランプシャフト
40 ロックガイド
50 アンロックガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに有する凹部又は穴部に挿入することでワークを装着するワーク装着部と、当該ワーク装着部から突没するロックピンと、当該ロックピンを後部から突没操作するクランプシャフトを備えたことを特徴とするワークの固定治具。
【請求項2】
ワーク装着部は、ロックピンのガイド孔と当該ロックピンのガイド孔の後部で直交する方向にクランプシャフトガイド孔とを有し、
ロックピンはガイド孔に沿って先端部が没入する方向にばね付勢されており、
クランプシャフトが前進するとロックピンの後部を押圧することでロックピンが突出しワークを固定でき、
クランプシャフトが後退するとロックピンがばね付勢力により没入しワークの固定を解除するものであることを特徴とする請求項1記載のワークの固定治具。
【請求項3】
請求項1又は2記載のワークの固定治具は、移動テーブルから立設したクランプシャフトに、クランプシャフトガイド孔を用いて取り付けてあるとともにクランプシャフトガイド孔と直交する方向につば部を有し、固定治具の移動経路途中に当該つば部を、下降方向に押圧するロックガイドと上昇方向に押圧するアンロックガイドとを有していることを特徴とするワークの固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−262272(P2009−262272A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114496(P2008−114496)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000100791)アイシン軽金属株式会社 (137)