説明

ワークの水切り装置

【課題】ワークの表面に付着された水滴を完全に除去し、特に、ワーク表面に付着した水滴を飛散して再びワークに付着することを防止するとともに、ミストを除去するため、ミストによる汚染が防止され、かつ操業中の騒音をも防止する技術を提供する。
【解決手段】ワーク1の保持されたエアブローボックス2と、ワーク1に気流を噴射する噴射管3と、ファン4の内臓されたファンボックス5と、ダクト6と、ミスト除去装置7とからなり、ファン4を回転稼動することによりワーク1に噴射された気流を気流中のミストを除去しながらエアブローボックス2からファンボックス5、次いでダクト6を経てエアブローボックス2に環流させる。このとき、気流の還流通路断面積をワーク断面積の2倍以下に定めることにより、還流通路断面積を小さくし、気流還流速度を大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車部品等、鋳造によって成型された機械加工物(ワーク)を水洗い、水切りの後、ワークに残留付着している水滴を完全に除去するワークの水切り装置に係り、特に、ワーク表面に付着した水滴を飛散して再びワークに付着することを防止するとともに、ミストを除去してミストによる汚染を防止し、かつ操業中の騒音をも防止するワークの水切り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車部品等、各種機械部品の多くは工作機械により加工され、その後、汚れを落とすために水洗に付される。
【0003】
洗浄されたワークの水切り技術として、従来、圧縮空気吹付けによるエアブローでワークの表面や穴部内の残留液を除去する技術が採用されている。
【0004】
しかし、このエアブロー方式では、吹き飛ばされた微細な水滴が再度ワークに付着してしまう。あるいは、ワーク表面のエアブロー直撃部の水は吹き飛ばされて逃げるが、この水は除去されたものではなく、ワーク外周部に付着したままである。さらに、ミストによる汚染が大きいとともに、操業中の騒音が大きいという欠点を有する。
【0005】
さらに、図1に示されるように、水切りすべきワーク1の保持されたエアブローボックス2と、このエアブローボックス2に装着され、ワーク1に気流を噴射する噴射管3と、エアブローボックス2に連結され、ファン4の内臓されたファンボックス5と、ファンボックス5からエアブローボックス2に連なるダクト6と、ファンボックス5の下方に装備されたミスト除去装置7とを備え、ファン4を回転稼動することによりワーク1に噴射された気流を、気流中のミストを除去しながらエアブローボックス2からファンボックス5、次いでダクト6を経てエアブローボックス2に還流させるワーク1の水切り装置が出願人によって出願されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−270847号公報
【特許文献2】特開2010−115697号公報
【0007】
しかし、この水切り装置はワーク表面のエアブロー直撃部の水は吹き飛ばされて逃げるが、気流の還流通路断面積とワークの断面積の関係を吟味したものではなく、今なお、水切りが不完全であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の解決しようとする課題はワーク表面あるいは穴部等の残留水滴を完全に除去するとともに、ミストによって汚染されることがなく、かつ、操業中の騒音を防止し、従来の公知技術に存する欠点を改良したワークの水切り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明のワークの水切り装置によれば、水切りすべきワークの保持されたエアブローボックスと、前記エアブローボックスに装着され、前記ワークに気流を噴射する噴射管と、前記エアブローボックスに連結され、ファンの内臓されたファンボックスと、前記ファンボックスから前記エアブローボックスに連なるダクトと、前記ファンボックスの下方に装備されたミスト除去装置とからなり、前記ファンを回転稼動することにより、前記ワークに噴射された気流を気流中のミストを除去しながらエアブローボックスからファンボックス、次いでダクトを経てエアブローボックスに環流させ、前記気流の還流通路断面積をワーク断面積の2倍以下に定めて還流通路断面積を小さくし、これにより気流の還流速度を大きくすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は水切りすべきワークの保持されたエアブローボックスと、前記エアブローボックスに装着され、前記ワークに気流を噴射する噴射管と、前記エアブローボックスに連結され、ファンの内臓されたファンボックスと、前記ファンボックスから前記エアブローボックスに連なるダクトと、前記ファンボックスの下方に装備されたミスト除去装置とから構成され、前記ファンを回転稼動することにより、前記ワークに噴射された気流を気流中のミストを除去しながらエアブローボックスからファンボックス、次いでダクトを経てエアブローボックスに環流させ、ワーク表面あるいは穴部に残留された残留液を完全に除去し、この環流により飛散された残留液が再度ワーク表面に付着することを防止するとともに、ミストによる汚染を防止し、かつ、操業中の騒音をも低く押える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明にかかるワークの水切り装置の一具体例の側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を添付図面を用いて詳述する。
【0013】
図1は本発明の一具体例の側面図、図2は平面図である。
【0014】
本発明は図1および図2に示されるように、機械工作物(ワーク)1の表面または穴部等の洗浄残留液を完全に除去するワークの水切り装置Aであって、水切りすべきワーク1を保持するエアブローボックス2と、エアブローボックス2に装着され、ワーク1に気流(空気)を噴射する噴射管3と、エアブローボックス2に連結され、ファン4の内臓されたファンボックス5と、ファンボックス5からエアブローボックス2に連なるダクト6と、ファンボックス5の下方に装備され、気流中のミストを除去するミスト除去装置7とから主として構成される。
【0015】
本発明の特徴は気流の還流通路断面積をワーク断面積の2倍以下に定めて還流通路断面積を小さく、これにより気流の還流速度を大きくすることに存する。
【0016】
本発明はファン4を回転稼動することにより、ワーク1に噴射された気流を、ミスト除去装置7で気流中のミストを除去しながら、エアブローボックス2からファンボックス5、次いでダクト6を経てエアブローボックス2に還流させる。
【0017】
エアブローボックス2は図示しない移載装置によりワーク1をエアブローボックス2内に投入し、ワーク1をクランプ治具8でクランプの後、図示しないワーク投入口をシャッターで閉じる。
【0018】
クランプ治具8によってクランプされたワーク1は図2に示される治具回転機構9によって旋回され、ワーク1が水切りされる。治具回転機構9はサーボモータ10をNC制御して最適の姿勢でクランプ治具8を回転する。11は減速機である。
【0019】
同時に図1に示されるファン4を運転し、噴射管3から圧縮された気流をワーク1から滴下された水滴12の落下方向と同方向(矢印方向)の気流とする。ファン4を稼動することにより空気の流れ13はエアブローボックス2の上方から矢印方向にエアブローボックス2を通過する。水滴12を下方に落下し、ワーク1はクランプ冶具8の回転中心軸14を中心にして回転され、ワーク1の水滴は滴下水滴12として下方に落下する。15は排気である。
【0020】
このようにしてワーク1から滴下された水滴は空気の流れ13に従って落下し、再度ワーク1の表面に付着されることはない。すなわち、気流は矢印方向に還流され、噴射で飛散した水滴12は再びワークに付着することはない。
【0021】
さらに、本発明水切り装置はミスト除去装置7を備え、これにより気流中のミストが除去された後に排気され、工場内をミストによって汚染されることはない。このミスト除去装置7として例えば昭和電機(株)製「ミストレーサ」が用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
以上のとおり、本発明の水切り装置Aのワーク1はエアブローボックス2中で回転しながら噴射管3からの空気によって水切りされ、ワークに付着した水が滴下水滴12として滴下するとともに、ファン4を回転稼動することにより気流は矢印方向の空気の流れ13として、エアブローボックスからファンボックス、次いでダクトを経てエアブローボックスに還流され、再度ワーク1の表面に付着するようなことはない。また、ミスト除去装置7を備えることにより、ミストを除去した後に排気されるため、ミストによる工場内汚染が防止される。さらに、ダクト6によってファンボックスとエアブローボックスをつないで気流を還流するようにしたから、騒音が防止される。したがって、本発明の水切り装置Aは洗浄技術分野において、利用性が高い。
【符号の説明】
【0023】
A 水切り装置
1 ワーク
2 エアブローボックス
3 噴射管
4 ファン
5 ファンボックス
6 ダクト
7 ミスト除去装置
8 クランプ冶具
9 冶具回転機構
10 サーボモータ
11 減速機
12 水滴
13 空気の流れ
14 回転中心軸








【特許請求の範囲】
【請求項1】
水切りすべきワークの保持されたエアブローボックスと、前記エアブローボックスに装着され、前記ワークに気流を噴射する噴射管と、前記エアブローボックスに連結され、ファンの内臓されたファンボックスと、前記ファンボックスから前記エアブローボックスに連なるダクトと、前記ファンボックスの下方に装備されたミスト除去装置とからなり、前記ファンを回転稼動することにより前記ワークに噴射された気流を気流中のミストを除去しながらエアブローボックスからファンボックス、次いでダクトを経てエアブローボックスに環流させることを特徴とし、前記気流の還流通路断面積をワーク断面積の2倍以下に定めて還流通路断面積を小さくし、これにより気流の還流速度を大きくすることを特徴とするワークの水切り装置。
【請求項2】
前記気流はワーク水切り装置の外部からの圧縮空気流である請求項1のワークの水切り装置。
【請求項3】
水切りすべきワークはクランプ治具によってクランプされる請求項1のワークの水切り装置。
【請求項4】
クランプ冶具は治具回転機構によって回転され、ワークに付着された水滴を滴下する請求項3のワークの水切り装置。































【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−46809(P2012−46809A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191997(P2010−191997)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000145149)株式会社滋賀山下 (25)
【Fターム(参考)】