説明

ワークの重積手段

【課題】ワークを工程中において、ずれないように重積して、ワークの損傷を防止し、不良品の発生を抑制するようにした、重積補助具を提供する。
【解決手段】ワークWの製造工程において、複数のワークWのそれぞれに係合して、ワークW本体と共に互いに重ね合わせることで、各ワークWをずれなく重積する、重積補助具10であって、この重積補助具10は、少なくとも重積上下面に互いに磁力により吸引し合うように配設した、磁気部材11を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワークを製造工程において、ずれないように重積して、互いのワーク同士がぶつからないようにして損傷を防止し、不良品の発生を抑制するようにした、ワークの重積手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ワークの搬送や、保管時において、ワークを複数、積み重ねると、搬送時において、振動によりワーク同士が摺り合って損傷することがあり、このような摺り傷防止を目的として、重ねあうワークの上下端に重積補助具を介在させ、間隔を保持して固定、載置するようにするのが通常である。
かかる重積補助具としては種々提案されているが、例えば特許文献1では、ワークが板ガラスの場合、重積補助具頭部の前後幅をガラス厚みより大とし、重積補助具仕切部片における上部側より下部側を厚くした重積補助具を開示している。
【0003】
【特許文献1】実公昭61−3823号公報
【0004】
一方、図5に示すように、ワークWが、所定の部品により組み立てた構造物(例えば自動車用ラジエータ)の場合、製造工程において、洩れ検査などの検査工程が介在されるが、この場合、ラジエータのコア部1は、外枠部材2で囲った一面に、エンジンで高温化した冷却水を通流させる複数の小径のパイプ3を張り巡らせ、パイプ3外周に熱放散性を高めるためのフィン4が配設されるという、複雑且つ、デリケートな構造となっている。
このような構造のワークWでは、パイプ3などからの液洩れが皆無であることは当然であり、従って検査工程(洩れ検査)が必須のものとなっている。この洩れ検査としては、パイプ3内に検査流体(例えばヘリウムガスHe)を注入して行われる。そのために、ラジエータのコア部1を構成する小径パイプ3に連なる入口3in,出口3outに、充填された検査流体を封止するための止栓5を設けている。
そして、この状態のワークWを複数段、積み重ね、検査工程に移送するようにしてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ワークWを積み重ねる際に、それぞれのワークW同士の接触面が充分でないことや、平らではないことから、検査工程時ずれてくることがあり(図6参照)、互いのワークWの外枠部材2や、止栓5によって、コア部1におけるパイプ3やフィン4が押し潰されたりする、損傷(打痕)が生じることがあり、見た目にも悪く、漏れが発生したりする。
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであって、ワークの搬送、保管等に際しワークをずれないように重積して、ワーク中心部位に打痕などの損傷を受けることのない、ワークの重積手段を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を改善するために、請求項1に記載の発明は、ワーク(W)の製造工程において、複数のワーク(W)のそれぞれに係合して、ワーク(W)本体と共に互いに重ね合わせることで、各ワーク(W)をずれなく重積する、重積補助具(10)を備え、互いに上下に重積する重積上下面を有し、これら重積上下面に互いに磁力により吸引し合うように配設した、磁気部材(11)を具備することを特徴とする。
ワーク(W)を重積する際、ワーク(W)それぞれに係合した重積補助具(10)が、重積上下面に設けた磁気部材(11)により互いに引き合い、ずれなくワーク(W)同士を重積することができる。従って、ワーク(W)が隣接するワーク(W)やワーク(W)の重積補助具(10)によって、損傷を受けるようなことはない。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、ワーク(W)の製造工程において、複数のワーク(W)のそれぞれに係合して、ワーク本体と共に互いに重ね合わせることで、各ワーク(W)をずれなく重積する、重積補助具(10)を備え、互いに上下に重積する重積上下面を有し、これら重積上下面に互いに着脱可能に係着する係着部材(12)を具備することを特徴とする。
ワーク(W)を重積する際、ワーク(W)それぞれに係合した重積補助具(10)が、重積上下面に設けた係着部材(12)により互いに係着し、ずれなくワーク(W)同士を重積することができる。従って、ワーク(W)が隣接するワーク(W)やワーク(W)の重積補助具(10)によって、損傷を受けるようなことはない。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、ワーク(W)は、外枠部材(2)で囲まれたフィン(4)を有する冷却パイプ(3)を配設したラジエータにおけるコア部(1)であり、外枠部材(2)に重積補助具(10)を着脱可能に装着する構成としたことを特徴とする。
ワーク(W)を積み上げる際、重積補助具(10)によってずれなくワーク(W)を導くことができるので、外枠部材(2)で囲まれたフィン(4)や、冷却パイプ(3)に重積保持具(10)が当たって、つぶれなどの傷がつくことを回避することができる。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、重積補助具(10)は、外枠部材(2)に設けた冷却パイプ(3)の出入口を閉止して、冷却パイプ(3)内に充填した洩れ検査用流体を封止する止栓部(13)と、止栓部(13)に固定すると共に、止栓部(13)の軸方向に延在して重積上下面をなすブロック部(14)とを具備し、ブロック部(14)に、磁気部材(11)を配設したことを特徴とする。
止栓部(13)のブロック部(14)における磁気部材(11)によってワーク(W)の重積を安定したものとすることができ、検査工程に投入する作業において、検査用流体の封止作業と共に、重積作業を行うことができる。
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、ブロック部(14)における重積上下面に、異極の磁気部材(11)を互いに対向するように配置してなることを特徴とする。
ワーク(W)を積み重ねる際、ブロック部(14)同士は、互いに引き合ってずれることなく簡単にワーク(W)を積み上げることができる。
【0011】
また、請求項6に記載の発明は、係着部材(12)は、面ファスナであることを特徴とする。
ワーク(W)を積み重ねる際、面ファスナで簡単に重積補助具(10)を結合させることができ、検査中、ワーク(W)がずれることはない。
【0012】
さらに、請求項7に記載の発明は、係着部材(12)は、スナップファスナであることを特徴とする。
ワーク(W)を積み重ねる際、スナップファスナで簡単に重積補助具(10)を結合させることができ、検査中、ワーク(W)はずれることがない。
【0013】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に、本発明にかかるワークの重積手段として用いられる重積補助具10を、ワークWとしてのラジエータのコア部1に装着したところを示す。なお、ラジエータのコア部1は、図4で示されたラジエータのコア部1と同構成のものであり、ここでは、その詳細な説明は省略する。
【0015】
重積補助具10は、ラジエータのコア部1の製造工程において、洩れ検査工程において用いられるもので、検査流体であるヘリウムガスHeを、コア部1における外枠部材2で囲った一面内に張り巡らせた小径のパイプ3内に充填し、パイプ3に連なる入口3in,出口3outに嵌合して、ヘリウムガスHeを封止するための止栓部13を備えている。
また重積補助具10は、止栓部13に一体的に固定すると共に、軸方向に延在して重積上下面をなすブロック部14を具備している。そして、このブロック部14の重積上下面には、詳細は後述するが、磁気部材11を配設している。
さらに、重積補助具10には、ブロック部14の中間両側部に、ロック用の一対の係止片15,15を、止栓部13の外周部に対し、先端側を例えば弾性的に当接する一方、この弾性力下に変位可能に軸止めしている。
【0016】
止栓部13は、中間位置、外周部にパイプ3の入口3in,出口3outに挿入して入口3in,出口3outを密閉するように作用するOリング16を介在している。
【0017】
さらにブロック部14は、詳細は図示しないが、外形略台形状のブロック部材から構成されていて、重積上下面には、一対の係止片15,15の軸止め箇所の両側に、磁気部材11を、4箇所、配設している。
すなわち、磁気部材11は、適宜な磁気素材の所定の磁力を有するもので、微小な円筒形状のものである。
またこれら磁気部材11は、ワークWを積層した際に、それぞれのワークWがずれることなく保持できる程度の磁力を有している。この場合、相隣り合う磁気部材11は、異極となるように、また対角線上に相対する磁気部材11は、同極となる配列がなされている。
そして、この重積補助具10と重なり合わせる重積補助具10のブロック部14における磁気部材11の配列は、反対の極性となる配列としている。
【0018】
本発明において用いられる重積補助具10は、以上のように構成されるので、ワーク(W)である、ラジエータのコア部1の製造工程において、必須である洩れ検査を説明すると共に、その際の手順について説明する。
ラジエータのコア部1の一連の製造工程としては、例えば、(1)組立工程、(2)フラックス塗布、(3)パイプ組付け、(4)一体ろう付け炉、(5)ヘリウムHe洩れ検査機、(6)パッキン貼付け機、を経て完成品に至る。
ここで、必須である洩れ検査として、(5)ヘリウムHe洩れ検査機において実行される。
【0019】
(5)ヘリウムHe洩れ検査機において実行される洩れ検査では、検査すべきラジエータのコア部1における小径パイプ3に連なる入口3in,出口3outから、小径パイプ3内にヘリウムガスを充填する。
次いで、それら小径パイプ3に連なる入口3in,出口3outに、重積補助具10を取り付ける。
次に、重積補助具10を取り付けたワークであるコア部1を、重ねあわせ、この状態で、洩れ検査装置(図示省略)に送り込んで、所定の洩れ検査を行う。
洩れ検査が済むとコア部1を取出して、コア部1から、重積補助具10を取外し、次の工程である、(6)パッキン貼付け機に送り込む。
【0020】
ここで、重積補助具10をパイプ3に連なる入口3in,出口3outに取り付ける手順について説明する。
作業者は、重積補助具10の一対の係止片15,15を掴み、止栓部13をパイプ3の入口3in,出口3outに挿入して入口3in,出口3outを密閉するようにする(図2参照)。手を係止片15,15から離すと、係止片15,15が入口3in,出口3outを構成する外縁部に係合して、脱落することなく、重積補助具10をコア部1に固定することができる。
【0021】
そして、重積補助具10を固定した複数のコア部1(ここでは2つ)を、それぞれのコア部1に固定した重積補助具10が互いに重なるように、重ね合わせる。
すると、互いに重なる重積補助具10におけるブロック部14における磁気部材11の配列は、反対の極性となる配列としているので、双方のコア部1に固定した重積補助具10が互いに引き合い、ずれることなく、重ね合わせることができる(図3参照)。
このため、デリケートな構造であるコア部1のパイプ3、フィン4に、相対するコア部1の重積補助具10や、外枠部材2が当たって打痕などの損傷を生ずるようなことはない。
【0022】
このようにして、何ら、作業者は、コア部1の重ね合わせの際に、これまでのような神経を尖らせる必要はなく、打痕などが発生することもなく、簡単確実に検査作業を遂行することができる。
従って、作業者の不注意による、不良品の発生を極力防止することができ、無駄のない、歩留り向上に寄与することができる。
【0023】
以上、本発明にかかる重積補助具10について、ワークとして、ラジエータのコア部を例に挙げ、説明したが、本発明の重積補助具10を用いた手法は、他のワークに対しても有効であることは勿論である。
また、重積補助具10における、吸引手段としての磁気部材11の他に、係着部材12も可能である(図4参照)。係着部材12としては、図示は省略するが、例えば、周知の面ファスナ、スナップファスナなども考えられる。その他、互いに着脱可能な構成の手段であれば、本発明の重積補助具10に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明にかかるワークの重積手段として用いられる重積補助具と、この重積補助具を装着したラジエータのコア部の一例を示す、概略的説明図である。
【図2】図1に示す重積補助具をラジエータのコア部に装着する際の、要部斜視説明図である。
【図3】図1に示す重積補助具を用いてコア部を重積した状態を示す、斜視説明図である。
【図4】本発明にかかるワークの重積手段として用いられる重積補助具の別例を示す、模式図である。
【図5】従来の重積補助具を用いたラジエータのコア部の一例を示す、概略的説明図である。
【図6】従来の重積補助具を用いてコア部を重積した場合、発生する重積ずれの状態を示す、斜視説明図である。
【符号の説明】
【0025】
10 重積補助具
11 磁気部材
12 係着部材
13 止栓部
14 ブロック部
15 係止片
16 Oリング
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク(W)の製造工程において、複数のワーク(W)のそれぞれに係合して、ワーク(W)本体と共に互いに重ね合わせることで、各ワーク(W)をずれなく重積する、重積補助具(10)を備え、互いに上下に重積する重積上下面を有し、これら重積上下面に互いに磁力により吸引し合うように配設した、磁気部材(11)を具備することを特徴とするワークの重積手段。
【請求項2】
ワーク(W)の製造工程において、複数のワーク(W)のそれぞれに係合して、ワーク本体と共に互いに重ね合わせることで、各ワーク(W)をずれなく重積する、重積補助具(10)を備え、互いに上下に重積する重積上下面を有し、これら重積上下面に互いに着脱可能に係着する係着部材(12)を具備することを特徴とするワークの重積手段。
【請求項3】
前記ワーク(W)は、外枠部材(2)で囲まれたフィン(4)を有する冷却パイプ(3)を配設したラジエータにおけるコア部(1)であり、前記外枠部材(2)に前記重積補助具(10)を着脱可能に装着する構成としたことを特徴とする請求項1または2記載のうち、いずれか1つに記載のワークの重積手段。
【請求項4】
前記重積補助具(10)は、前記外枠部材(2)に設けた前記冷却パイプ(3)の出入口を閉止して、前記冷却パイプ(3)内に充填した洩れ検査用流体を封止する止栓部(13)と、
止栓部(13)に固定すると共に、止栓部(13)の軸方向に延在して重積上下面をなすブロック部(14)と、
を具備し、
前記ブロック部(14)に、前記磁気部材(11)を配設したことを特徴とする請求項1または3記載のうちいずれか1に記載のワークの重積手段。
【請求項5】
前記ブロック部(14)における重積上下面に、異極の磁気部材(11)を互いに対向するように配置してなることを特徴とする請求項4に記載のワークの重積手段。
【請求項6】
前記係着部材(12)は、面ファスナであることを特徴とする請求項2記載のワークの重積手段。
【請求項7】
前記係着部材(12)は、スナップファスナであることを特徴とする請求項2記載のワークの重積手段。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−222320(P2008−222320A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58636(P2007−58636)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)