説明

一文字幕および袖幕の収納構造

【課題】 一文字幕や袖幕を一体化して床部分以外の場所、たとえば上方に容易に収納することができる一文字幕および袖幕の収納構造を提供する。
【解決手段】 使用時に舞台の最前列に配置される一文字幕16と、この一文字幕16の後方に配置される袖幕17とを不使用時に舞台の上方に吊り上げる一文字幕16および袖幕17の収納構造であって、舞台の上方から繰り出しまたは巻取り可能に吊り下げられて下端にバトン連結具19を保持する牽引索20と、この牽引索20の上記バトン連結具19の上方に固定されると共に舞台の最前列側に向かって突出した取付部21aを有する取付部材21と、この取付部21aに上端を取付けた一文字幕16と、バトン連結具19に上端を取付けた袖幕17と、一方を取付部材21に固定し、他方をバトン連結具19に固定することで、不使用時に、一文字幕16および袖幕17を夫々折畳んだ状態で一体的に収納する袋部材22とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一文字幕および袖幕の収納構造に関し、特に、不使用時の一文字幕および袖幕を舞台の上方に吊り上げて収納する収納構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
劇場等の舞台で使用される一文字幕および袖幕を含む一般的な幕類の収納構造としては、たとえば、特許文献1に開示のものがあり、この特許文献1に開示の収納構造は、図5に示すように、舞台1の上方の天井には電動ジャッキ5(4箇所)が固定され、該電動ジャッキ5の回転ネジ部材5aに幕を吊り下げるフレーム6が取り付けられ、ネジ部材5aが回転することでこのフレーム6が昇降するようになっている。
【0003】
一方、舞台1の幕は、前方から順に一文字幕7,左右の袖幕8,緞帳9,中幕10およびバック幕11から構成されており、上記の一文字幕7の上端は、天井に直接取り付けられ、上下方向の中間位置において水平にフレーム6の前端に取り付けられ、床2が上昇したときには、その箇所に折り返しAができている。
【0004】
それに対して、袖幕8、緞帳9,中幕10及びバック幕11は、いずれも両開きの幕であり、それぞれフレーム6の下面に設けられたレールに走行自在に吊り下げられており、図6は、フレーム6の平面視構造と、各幕の吊り下げ位置を示す(図6の矢印7乃至11は、それぞれ一文字幕7,袖幕8,緞帳9,中幕10及びバック幕11の吊り下げ位置を示す)。
【0005】
また、袖幕8,緞帳9及び中幕10のレールは、湾曲して両サイド後方に延びているので、袖幕8,緞帳9及び中幕10を必要に応じて上記レールに沿って走らせ(矢印で示す)、両サイド後方の仮想線で囲った収納場所12に集めることができ、さらに、必要に応じてバック幕11も両サイドに収納しても良く、さらには、袖幕8,緞帳9及び中幕10の全てを一方の収納場所12に集めるようにしてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9‐203228公報(明細書中の段落0007,同0008,図1,図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように構成された幕類の収納構造においては、特に問題がある訳ではないが、以下に示す課題が発生する場合がある。
【0008】
すなわち、上記舞台1が劇場等の多目的ホールに設けられる場合には、上記した幕類、たとえば、一文字幕7や袖幕8を上記多目的ホールの床2部分以外の場所に収納することができれば、上記ホール自体を他の目的に使用し易くなる。
【0009】
そこで、上記多目的ホールでは、これらの幕類を、床2部分以外の場所に収納できる構造を採用したいと言う要望がある。
【0010】
ところが、上記した構成では、一文字幕7は、電動ジャッキ5を作動させることで、ある程度、上方へ収納させることができるが、上記袖幕8は、緞帳9および中幕10とともに上記レールに沿った床2部分の両サイドにしか収納させることができない。
【0011】
にもかかわらず、上記要望を解決できる提案がなされていないのが現状で、この発明の目的は、上記一文字幕や袖幕を一体化して床部分以外の場所、たとえば舞台の上方に容易に収納することができる一文字幕および袖幕の収納構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、この発明は、使用時に舞台の最前列に配置される一文字幕と、この一文字幕の後方に配置される袖幕とを、不使用時に舞台の上方に吊り上げる一文字幕および袖幕の収納構造であって、舞台の上方から繰り出しまたは巻取り可能に吊り下げられて下端にバトン連結具を保持する牽引索と、この牽引索の上記のバトン連結具の上方に固定されると共に上記の舞台の最前列側に向かって突出した取付部を有する取付部材と、この取付部に上端を取り付けた上記の一文字幕と、上記のバトン連結具に上端を取り付けた袖幕と、一方を上記の取付部材に固定すると共に他方を上記のバトン連結具に固定することで不使用時に一文字幕および袖幕を夫々折畳んだ状態で一体的に収納する袋部材とからなるとする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、不使用時に袋部材の一方を上記取付部材に固定し、他方を上記バトン連結具に固定することで、一文字幕および袖幕を折畳んだ状態で一体的に上記袋部材内に収納できるので、この状態で牽引索を巻き取れば、これら一文字幕および袖幕を容易に舞台の上方へ収納することができる。
【0014】
したがって、この収納構造を多目的ホール等に使用すれば、床部分を有効利用することができるので、舞台以外の他の目的に大変使用し易い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明を具体化した実施の形態を示し、一文字幕と袖幕とが袋部材によって一体的に収納されている不使用状態を示す側面図である。
【図2】図1において、一文字幕と袖幕との使用状態を示す側面図である。
【図3】図1における一文字幕と袖幕との使用状態を模式的に示す正面図である。
【図4】袋部材を示す正面図である。
【図5】従来技術の舞台を示す一部切欠斜視図である。
【図6】図5において、幕を吊り下げるフレームの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明による一文字幕および袖幕の収納構造は、図示するところにあって、多目的ホールの舞台に使用する一文字幕および袖幕の収納構造に具体化されてなる。
【0017】
すなわち、図示する一文字幕および袖幕の収納構造は、使用時に舞台の最前列に配置される一文字幕(図中に符号16で示す)と、この一文字幕の後方に配置される袖幕(図中に符号17で示す)とを不使用時に舞台の上方に吊り上げる。
【0018】
そして、この収納構造は、図1に示すように、舞台の上方から繰り出しまたは巻取り可能に吊り下げられて下端にバトン連結具19を保持する牽引索20と、この牽引索20のバトン連結具19の上方に固定されると共に舞台の最前列側に向かって突出した取付部を有する取付部材21と、この取付部に上端を取り付けた一文字幕16と、上記のバトン連結具19に上端を取り付けた袖幕17と、一方を上記取付部材21に固定すると共に他方をバトン連結具19に固定することで不使用時に一文字幕16および袖幕17を夫々折畳んだ状態で一体的に収納する袋部材22とを有してなる。
【0019】
以下に、さらに詳述すると、取付部材21は、側面略台形状に形成されると共に、その下底部21bにおいて、牽引索20に対してボルト23およびナット24止めによって固定されている。
【0020】
また、取付部材21の取付部としての上底部21aには一文字側バトン26がU字状の固定具25によって固定されると共に、この一文字側バトン26に一文字幕16の上端が図示しない固定手段によって固定されている。
【0021】
バトン連結具19は、牽引索20の下端が連結された連結部19aと、この連結部19aの下部に固定されて袖側バトン30を挟持する挟持部19bと、この挟持部19bの下部に一体的に設けられたブラケット27と、このブラケット27に取付けられるとともに、内部に袖幕17の上端を固定したランナー28が配置されたレール部材29とから構成されている。
【0022】
挟持部19bは、ネジ部19cを回動操作することで上下方向へ作動する挟持片19dを備え、この挟持片19dと、この挟持部19bの上部下面とで袖側バトン30を挟持固定するようになっている。
【0023】
レール部材29は、下方が開放された四角枠状に形成されるとともに、下端を内側に向かって折曲形成することで左右一対のレール部29aが形成されている。
【0024】
ランナー28は、レール部29aの上面側となるレール面上を回動する回動輪28aを両側に備えた本体28bと、この本体28bの下部から下方に向かって延設されるとともに、先端に取付リング28cを備えた延設部28dとから構成され、取付リング28cを介して袖幕17の上端が図示しない固定手段によって固定されている。
【0025】
なお、一文字幕16は、その下端に裾パイプ16aが袋仕立てによって固定されており、袖幕17の下端には図示しない袖チェーンが取り外し可能に取付けられている。
【0026】
袋部材22は、図4に示すように、長方形状をなす布材であって、一方および他方となる布材の端部(図4における上下部を言う)にはちち紐31が所定間隔をおいて複数設けられている。
【0027】
したがって、一方のちち紐31を取付部材21の上底部21aに固定し、他方のちち紐31をバトン連結具19に固定することで袋形状とすることができるので、一文字幕16および袖幕17の不使用時には、図1に示すように、この中に一文字幕16および袖幕17を折畳んだ状態で配置することで、一体的に収納できるようになっている(ただし、図1にはちち紐31は図示されていない)。
【0028】
上記のように構成されたこの実施形態における作用を説明すると、図2に示すような使用状態の一文字幕16および袖幕17を、不使用状態として収納するには、図示しない駆動手段によって牽引索20を繰り出し、一文字幕16および袖幕17を舞台の床面上に下降させるとともに、この下降位置となる床面上には袋部材22を予め載置しておく。
【0029】
次いで、この袋部材22の上面に載置された一文字幕16および袖幕17を図1に示すように折畳むと共に、袋部材22の一方を取付部材21に固定し、他方をバトン連結具に19固定する。
【0030】
こうすれば、袋部材22が内部に一文字幕16および袖幕17を一体的に収納した状態の袋形状となるので、このまま、牽引索20を巻き取れば、これら一文字幕16および袖幕17が舞台の上方へ収納される。
【0031】
以上、詳述したように、この実施形態によれば、不使用時に袋部材22の一方を取付部材32に固定し、他方をバトン連結具19に固定することで、一文字幕16および袖幕17を折畳んだ状態で一体的に袋部材22内に収納できるので、この状態で牽引索20を巻き取れば、これら一文字幕16および袖幕17を容易に舞台の上方へ収納することができる。
【0032】
したがって、この収納構造を多目的ホール等に使用すれば、床部分を有効利用することができるので、舞台以外の他の目的に大変使用し易い。
【0033】
また、袋部材22の一方および他方に設けたちち紐31を、取付部材21およびバトン連結具19に固定するだけの簡単な作業で一文字幕16および袖幕17を一体的に収納できるので、大変作業効率が良い。
【0034】
なお、この実施形態では、袋部材22の取付部材21およびバトン連結具19に対する取付構造としてちち紐31を用いたが、この構造に限定されるものではなく、フック等の任意の固定構造を採用することができる。
【0035】
また、袋部材22は、不使用時にのみ取付部材21およびバトン連結具19に固定したが、たとえば、袋部材22の幅が一文字幕16の長さよりも短い場合には、一文字幕16の裏側となる取付部材21に袋部材22の一方側のみを固定しておいても良く、こうすれば、使用時に袋部材22を別の場所に収納しておく必要がないので、作業効率が良い。
【産業上の利用可能性】
【0036】
多目的ホールの舞台に使用する一文字幕および袖幕の収納構造への具現化に向く。
【符号の説明】
【0037】
16 一文字幕
17 袖幕
19 バトン連結具
19a 連結部
19b 挟持部
20 牽引索
21 取付部材
21a 上底部(取付部)
22 袋部材
26 一文字側バトン
27 ブラケット
28 ランナー角部
29 レール部材
30 袖側バトン
31 ちち紐

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時に舞台の最前列に配置される一文字幕と、この一文字幕の後方に配置される袖幕とを不使用時に舞台の上方に吊り上げる一文字幕および袖幕の収納構造であって、舞台の上方から繰り出しまたは巻取り可能に吊り下げられて下端にバトン連結具を保持する牽引索と、この牽引索の上記のバトン連結具の上方に固定されると共に舞台側に向かって突出した取付部を有する取付部材と、この取付部材に上端を取り付けた上記の一文字幕と、上記のバトン連結具に上端を取り付けた上記の袖幕と、一方を上記の取付部材に固定すると共に他方を上記のバトン連結具に固定することで不使用時に一文字幕および袖幕を夫々折畳んだ状態で一体的に収納する袋部材とからなることを特徴とする一文字幕および袖幕の収納構造。
【請求項2】
上記のバトン連結具が上記の牽引索の下端が連結された連結部と、この連結部の下部に固定された袖側バトンを挟持する挟持部と、この挟持部の下部に設けられたブラケットと、このブラケットに取り付けられると共に内部に上記の袖幕の上端を固定したランナーが配置されたレール部材とからなる請求項1に記載の一文字幕および袖幕の収納構造。
【請求項3】
上記の取付部材が側面略台形状に形成されると共に舞台側となる上底部に一文字側バトンが取付けられており、この一文字側バトンに上記の一文字幕の上端が固定されていなる請求項1に記載の一文字幕および袖幕の収納構造。
【請求項4】
上記の袋部材が長方形状をなす布材であって、上記の一方および他方となる布材の端部にはちち紐が所定間隔をおいて複数設けられてなる請求項1に記載の一文字幕および袖幕の収納構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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