説明

一様電場の誘導方法

本発明は、電場を体に送達するための方法および装置を提供し、偏光磁場を、体に、該体内の所望の標的に向ける第1の方向で送達する工程、および該所望の標的にわたって電場を誘導するように、該磁場の送達方向を、該所望の標的に向ける第2の方向に変更する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、磁場の使用、より詳しくは、治療目的で一様に電場を誘導するために磁場を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁場(EMF)への曝露は、多くの病状の治療においてますます有用なツールになっている。例えば、時間的に変化する磁場への曝露は、骨および創傷の治癒を加速する認可された方法である。例えば、EMFは、心臓発作時に心臓への損傷を抑えるため、ならびに腫瘍の破壊のための化学療法およびX線療法中に骨髄を保護するために用いられ得る。
【0003】
EMFが細胞に印加される場合、細胞に機能する電場は、EMFが細胞に作用するための主要なメカニズムである。主目的として、低周波の、時間的に変化する磁場の使用は、治療される組織にわたって電場を出現させる最も簡便で制御可能な方法である。時間的に変化する磁場は、体の外側に(例えば、1つのコイル対および時間的に変化する電流源で)形成され得る。この場が体に入ると、それは、時間的に変化する電場を(ファラデーの法則によって)誘導する。体の磁気特性は非常に一様であるため、体内に一様磁場を形成することは極めて容易である。しかしながら、体の電気伝導度は、器官毎に(例えば、肺から心臓)および1つの器官内(例えば、心筋から心臓血液)で非常に異なり得るため、誘導電場は非常に非一様である。
【0004】
この一様性の欠如は、時間的に変化する磁場の治療的印加の重大な制限を意味する。この制限の良い例が、虚血事象(例えば、心臓発作)の後の心臓への損傷を抑えるための磁場の使用である。30分間以上にわたる磁場の印加は、心筋の細胞において熱ショックタンパク質(hsp)の活性化を誘導する。これらのhspは、血流の途絶(虚血)によって細胞ストレスが生じている間、心臓を細胞死(壊死)から保護するために機能する。この技術に存在する問題は、誘導電場が非常に大きく異なるので、心臓の多くの領域では、誘導電場の大きさは細胞がhspを産生するのに十分ではないことである。例えば、肺は、心臓に隣接する高抵抗領域である。結果として、誘導電場が肺と心臓の両方を通過する場合、磁場のほとんどは肺にわたって出現し、心臓にはごくわずかしか出現しない。誘導電場が肺を横切らない方向で印加されたとしても、血液は心筋と比較して非常に低い伝導度を有するため、心臓には大きな電場を受けない領域がある。
【0005】
器官のどの領域が大きな電場を受けないかは、印加された磁場の方向、およびしたがって誘導されたEMFの方向に、大きく依存する。提案される1つの解決方法は、単にx、yおよびz方向で同時に場を印加することであり得る。しかしながら、これらの場のベクトルの和は単に一方向の新しい磁場でしかないため、これはうまくいかない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、一様電場の誘導方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の広い局面によれば、電場を体に送達する方法を提供し、該方法は、偏光磁場を、体に、該体内の所望の標的に向ける第1の方向で送達する工程;および、該所望の標的にわたって電場を誘導するように、該磁場の送達方向を、該所望の標的に向ける第2の方向に変更する工程を含む。
【0008】
本発明の第2の広い局面によれば、電場を体に送達する方法を提供し、該方法は、第1の磁場を、第1のコイルから、体に、該体内の所望の標的に向ける第1の配向で送達する工程;および、該所望の標的にわたって電場を誘導するように、第2の磁場を、第2のコイルから、該体内の該所望の標的に向ける第2の配向で送達する工程を含み、常に1つの磁場のみが該体に送達される。
【0009】
本発明の第3の広い局面によれば、電場を体に送達する方法を提供し、該方法は、第1の磁場を、第1のコイルから、体に、該体内の所望の標的に向ける第1の配向で送達する工程;第2の磁場を、第2のコイルから、該体内の所望の標的に向ける第2の配向で送達する工程:および、該所望の標的にわたって電場を誘導するように、第3の磁場を、第3のコイルから、該体内の該所望の標的に向ける第3の配向で送達する工程を含む。
【0010】
本発明の第4の広い局面によれば、電場を体に送達するための装置を提供し、該装置は、第1の磁場を、第1のコイルから、体に、該体内の所望の標的に向ける第1の配向で送達するための手段;該所望の標的にわたって電場を誘導するように、第2の磁場を、第2のコイルから該体内の該所望の標的に向ける第2の配向で送達するための手段;および、該第1のコイルおよび該第2のコイルの間で電流を交互に流すための手段を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】2つのコイル対が相互に直角に配向される、本発明の一実施態様によるコイル配置の概略図である。
【図2】2つのコイル対が相互に直角に配向される、本発明の一実施態様によるコイル配置の概略図である。
【図3】3つのコイル対を用いる、本発明の一実施態様によるコイル配置の概略図である。
【図4】EMF誘導効果の異なるモデル(低酸素保護(円)および酵素活性の変化(四角)を含む)についての、オン/オフ間隔および最大応答の割合(%)のグラフである。
【図5】垂直および水平の直線のEMF曝露偏光を用いた、心臓発作後損傷に対するEMFの効果を示す表である。
【図6】垂直円、水平円、ならびに垂直および水平交互の直線のEMF曝露偏光を用いた、心臓発作後損傷に対するEMFの効果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を、添付の図面とともに説明する。
【0013】
(詳細な説明)
発明について記載する前に、いくつかの用語を定義することが好都合である。本明細書を通して以下の定義が用いられることが理解される。
【0014】
(定義)
用語の定義が、その用語が一般的に用いられる意味から外れる場合には、特に示さない限り、出願人は以下に規定された定義を利用することを意図する。
【0015】
本発明の目的のために、用語「直線偏光磁場」とは、時間的に変化するが、その方向は常に所定の固定線に沿って向けられる磁場をいう。
【0016】
本発明の目的のために、用語「円偏光磁場」とは、場のベクトルが固定軸の周囲を回転し、円になって回るように出現する磁場をいう。
【0017】
本発明の目的のために、用語「直線垂直場」とは、場のベクトルが垂直方向に配向される直線偏光場をいう。
【0018】
本発明の目的のために、用語「直線水平場」とは、場のベクトルが水平方向に配向される直線偏光場をいう。
【0019】
本発明の目的のために、用語「円垂直場」とは、場のベクトルがその垂直軸の周囲を回転する円偏光場をいう。
【0020】
本発明の目的のために、用語「円水平場」とは、場のベクトルがその水平軸の周囲を回転する円偏光場をいう。
【0021】
本発明の目的のために、用語「一様電場」とは、治療されるすべての組織において本質的に不変である誘導電場をいう。
【0022】
本発明の目的のために、用語「配向」とは、磁場の配向などの特定された要素の配置、構成、方向などをいう。
【0023】
(説明)
本発明は、電場を体に送達するための方法および装置を提供し、それらは、第1の磁場を、第1のコイルから、体に、体内の所望の標的に向ける第1の配向で送達し、そして第2の磁場を、第2のコイルから、体内の所望の標的に向ける第2の配向で送達し、所望の標的にわたって電場を誘導することによるものであって、常に1つの磁場のみが体に送達されるものである。本発明は、誘導電場の一様性の増加を提供する。増加した一様性は有用である。なぜなら、誘導電場が一様でない場合、その値は(治療される組織の一部の領域において)有用な生物学的効果を誘導するのに必要な閾値以下になり得、そのため治療が部分的にしか効果的でないからである。
【0024】
一定の条件下では、治療中に磁場方向の方向が時間的に変化する場合に、磁場治療(その持続時間は、例えば、約30分間から約60分間であり得る)の有効性が著しく強化され得る。
【0025】
直線偏光磁場は、1つの方向(例えば、垂直)からその直角の方向(例えば、水平)まで往復して交互に切り替わるものが用いられ得る。本発明の他の実施態様では、場の送達方向は、場の元の方向に対して、約90度+/−30度切り替えられ得る。
【0026】
本発明のいくつかの実施態様では、曝露のタイミングは、効果的な治療の重要な要素である。本発明のいくつかの実施態様では、送達方向を新しい方向に切り替える前に、磁場を任意の一定方向に少なくとも5秒間とどめる。磁場の送達方向の変化によって、所望の標的にわたって電場を誘導し得る。本発明のいくつかの実施態様では、送達方向を切り替える前の任意の方向での曝露の最短時間は、10秒よりも長い。本発明のいくつかの実施態様では、送達方向を切り替える前の任意の方向での曝露の最長時間は、300秒以上である。したがって、任意の一方向での曝露の適切な持続時間は、約5秒から約300秒以上であり得、好ましくは約10秒から約30秒までである。曝露の時間枠は、治療される組織または細胞、曝露の周波数に応じて、および治療間の時間の長さに応じて、改変され得る。
【0027】
本発明の使用のための磁場は、例えば、2つのコイル対で発生し得る。2つのコイル対は、相互に直角に配向され、AC電流が1つの対に、および次いでその直角の対に、交互に流れる。そのような配置は、2つの直角方向(すなわち、一方の磁場の平面配向が他方の磁場の平面配向に対して実質的に直角である)に、場を提供する。図1および2は、2つのコイル対が相互に直角に配向されている、本発明の実施態様によるコイル配置の概略図を提供する。
【0028】
本発明の1つの目標は、一様誘導電場を得ることである。したがって、本発明の一実施態様によれば、適度に一様な磁場で開始されることが好ましい。単一のコイルを流れる電流が本発明で用いられ得るが、そのような配置は比較的非一様な磁場を形成し、その結果、上述の問題のいくつかを導入する。相互に直角である平面に位置するコイル対は、それらの2つのコイルの場がコイル間の領域で加算されるように電流がそれらを流れる場合に、よりずっと一様な磁場を生じる。
【0029】
本発明の他の配置では、2つのコイル対が相互に直角に配置され、そして一方の対のAC電流が他方のコイル対と90度位相がずれることで、円偏光磁場が形成される。本発明の実施態様によれば、電流は、90度以外の位相ずれ(例えば、90度+/−30度)でもあり得る。電流が位相ずれであるが90度の位相ずれではない場合、結果として得られる場は、円偏光場(90度の位相ずれの電流の要素によって生じる)および直線偏光磁場(相互に同相である電流の要素によって生じる)で構成されると考えられ得る。これは、一般に、90度の位相ずれ条件ほどは効果的でない。しかしながら、そのような配置は、本発明の範囲に含まれる。したがって、例えば、垂直方向から水平方向に継続的に回転する磁場が形成される。そのような配置は、2つの直角方向に場を提供する。
【0030】
本発明の他の実施態様は円偏光磁場を提供し、この円場は、時間的にその直角の方向に切り替えられる方向を伴う平面を有する。これは、相互に直角に配向される3つのコイル対によって達成され得る。そのような配置は図3に見られ得る。これらのコイルを、それぞれ、コイル対302、コイル対304およびコイル対306と称し得る。本発明の典型的な実施態様では、まず、コイル対302および304にAC電流が流れる。これらのコイルの電流は、90度の位相ずれであり得る。一定期間(例えば、少なくとも約5秒であり、好ましくは約10秒よりも長く、しかし通常は約300秒を超えない)の後、90度位相のずれた電流ありまたはなしで、コイル対302およびコイル対306が励起されるように、電流が切り替えられる。本発明の一実施態様では、コイル対304およびコイル対306もまた、90度の位相ずれである。そのような配置は、3つの直角方向に場を提供する。
【0031】
本発明の実施態様で用いられる磁場は、約10Hzから5GHzまでの周波数の範囲となるような場を含む。所定の実施態様で用いられる磁場のタイプは、設備費および印加の容易さによって決定され得る。本発明の実施態様によれば、印加磁場の周波数は、少なくとも約20Hzである。本発明の他の実施態様では、印加磁場の周波数は、約20Hzから約60Hz、またはそれ以上であり得る。コイルの電流は、60Hzで約10マイクロボルト/メートルを超える電場を誘導するのに十分な磁場を、治療される組織に形成するのに、十分な大きさでなければならない。60Hzを上回る周波数では、磁場は、60Hzの条件について上で計算されたものとなお同じであり得る。60Hzを下回る周波数では、磁場は、周波数の減少に反比例して増加する。したがって、例えば、20Hzでは、磁場は、60Hzで必要とされるよりも3倍大きい。
【0032】
本発明での使用のために、ヘルムホルツコイルなどを含む任意の適切な磁場発生コイルが用いられ得る。図1、2および3に、コイル配置の概略図を示すが、本発明の適用をそのような配置に限定すると解釈すべきではない。本発明のコイルは、現在公知の、または後に開発される、種々の形状および配置であり得る。
【0033】
本発明の実施態様は、非熱的EMF(すなわち、組織温度の上昇を生じない場)を用い得る。非熱的EMFは、場のパラメータ(例えば、振幅、周波数、および波形)を少なくとも数秒の期間または間隔の間、不変とした場合に、hsp濃度の改変などの所望の生物学的効果を形成し得る。約0.1秒から約1〜2秒までの範囲のオン−オフサイクルを有する非熱的EMFを組織に印加しても、生物学的効果を有さない。1つの実施態様では、10秒よりも長いオン−オフサイクルを有する非熱的EMFを組織に印加し、所望の生物学的効果を生じる。
【0034】
本発明は、特定の適用に応じて、単回治療、あるいは1日、1週、または数週または数ヶ月にわたる複数回の治療を含む、種々の治療プロトコルで用いられ得る。単回治療は、特定の適用に応じて、数秒間、数分間または数時間にわたって提供され得る。
【0035】
本発明によるEMF曝露は、治療または緩和治療を標的としそして強化するために用いられ得る。治療または緩和治療としては、疾患の治療および予防のために適用される物理的、化学的、放射性または遺伝子治療が挙げられるが、これらに限定されない。本発明は、癌、関節炎、乾癬、糖尿病、自己免疫疾患、心臓発作などを含む症状に対して、体の種々の器官を治療する場合に、磁場治療の有効性を向上させる。
【0036】
EMFの印加は、ストレスタンパク質の生産をもたらす細胞シグナリング経路を活性化する。これらのストレスタンパク質は、有害な刺激から細胞を保護する。しかしながら、長期にわたるまたは反復的な刺激は、細胞がこのストレス応答を減少させるかまたは下方制御する要因となる。これは、EMF曝露後、細胞を高感受性のままにする。そのため、これらの細胞に損傷を与えるために適用される任意の治療剤が、より効果的となる。したがって、本発明は、EMFの使用および一時的な不変の要件をEMFの生物学的効果を集中させる能力と関連付ける組み合わせ方法で用いられ得る。このような方法は、印加されたEMF曝露のパラメータに応じて、組織の体積を選択的に保護するかまたは脱保護する能力を有する。本発明の実施態様はさらに、選択されたEMF曝露の効果を集中させるために、組織の特定体積を標的化し得る。
【0037】
癌については、本発明はまた、抗癌剤または化学療法薬剤と組み合わせて、あるいは放射線治療と組み合わせて用いられ得る。本発明の実施態様による長期のEMF曝露の腫瘍細胞への適用は、腫瘍細胞を、タキソールなどの有毒化学物質を用いるその後の治療に対してより高感受性にし得る。1つの実施態様では、細胞は、タキソールの投与の前にEMFに曝露され、それが、タキソールの毒性効果の非常に著しい増加につながる。例えば、タキソールの注射前に連続48時間、そして注射後に連続48時間、EMFに曝露させたニワトリ胚は、タキソールの毒性効果の増加を示した。
【0038】
癌治療以外の理由で組織または生物学的細胞の選択された体積を破壊しまたは改変することを目的とした有害な刺激を用いた他の医療措置に、実施態様が適用できることは、本明細書を読んだ当業者にとって明らかである。このいくつかの例は、良性腫瘍、ケロイド、動脈−静脈奇形、良性前立腺肥大、脾腫などである。さらに、実施態様の補助的な適用は、治癒を目的とする治療のためであるだけでなく、緩和的に助けるものでもあり得、例えば、腫瘍の塊または成長を縮小させるために用いられる電離放射線と共に、腫瘍の塊によって生じる症状を一時的に緩和する。
【0039】
さらに、時間的に変化する磁場が、低酸素、UV光、X線ストレスまたは他の不利なストレスに対して保護するための予防法として用いられる場合、本発明は、時間的に変化する磁場をより効果的にする。しかしながら、誘導される保護は、用いられるEMFの線量に非常に依存する。短期的な場曝露(20分から数時間の範囲にわたる)は、ストレスに対して保護的であり、また、腫れおよび炎症につながるサイトカイン発現を減少させ得る。長期的な事前曝露(12時間よりも長い)は、細胞、組織および器官を、その後のストレスからの損傷に対してより高感受性にし得る。保護または感受性増加の程度は、曝露時間の長さおよび印加されるEMFの強さに依存する。
【0040】
以下のデータは、本発明の効果を示す。ラット心臓における誘導電場が模擬心臓発作に対して保護する能力を調査する研究を行った。この研究では、磁場を、2方向のうち1方向のみ(ラットに対して、垂直または水平の直線)で印加した。図5の表1に示したデータに見られ得るように、壊死した心臓組織において、統計的に有意な減少は観察されなかった。これは、心筋の大部分が、生物学的効果(この場合、虚血保護)を誘導し得る電場に曝露されていなかったためであった。
【0041】
しかしながら、さらなる研究では、曝露の間、磁場の1平面より多くの印加が用いられるように、印加磁場の方向を時間的に変化させることによって、心筋組織のサルベージが3倍改善されたことが見出された。この第2の研究では、ラットを、円偏光場(垂直または水平の平面で)、または印加磁場の方向が30秒ごとに垂直から水平に切り替わる場のいずれかに曝露させた。これらの実験では、図6の表2に示すように、壊死した組織において、図5の表1の約5%の減少と比較して約15%の減少が観察された。
【0042】
図5の表1および図6の表2にまとめられるように、直線の一方向EMF(垂直または水平)はすべて、模擬心臓発作後に梗塞面積を減少させる効果がごくわずかであった。これは、これらの一方向曝露によって誘導される電場の非一様な性質によって予想されるものである。しかしながら、図6の表2にまとめられるように、試験した他のEMF曝露(垂直円、水平円または交互)は、心臓損傷減少に著しい改善をもたらした。これらの調査結果は、多方向からのEMF曝露が、より一様な電場を誘導することができ、そしてその結果、組織に著しい生物学的効果をもたらし得るという見解を支持する。
【0043】
本発明の一実施態様によれば、多方向からの磁場曝露アプローチは、その有効性を高めるために特定のタイミングプロトコルと組み合わせられ得る。曝露の特定のタイムスケールによって、より強固な生物学的効果が誘導される。ある最小の期間(例えば、約10秒よりも長く)磁場曝露が一時的に不変であれば、完全な生物学的効果が達成され得ることは、既に記載した。図4は、EMF誘導効果のいくつかの異なるモデル(低酸素保護(円)および酵素活性の変化(四角)を含む)について、この現象を示す。図4に見られ得るように、本発明の一実施態様によれば、約10秒の最小のオン/オフ時間間隔で、最大の誘導される生物学的効果が達成される。したがって、本発明の一実施態様では、場の方向は、約10秒よりも短いタイムスケールでは切り替えられない。しかしながら、他の実施態様では、タイムスケールは、場方向の切り替えの間隔が10秒よりも長くても短くてもよい。
【0044】
さらに、すべての1軸曝露が組織で不均質な誘導電場を形成するのに対し、ほとんどの多軸曝露も同様にこれを行う。これは、組織が多方向場に同時に曝露される場合、実際の印加される場は、それらの異なる方向に印加される場すべての和であり、1方向の磁場曝露ベクトルとなるためである。この状況を避けるために、多方向曝露は、同時以外で印加され得る。これを達成する1つの方法は、その方向が継続的に変化する円偏光磁場(例えば、上記表2に示す垂直または水平円)を用いることである。しかしながら、この方法は、閾値下の誘導電場の領域がなお存在し得るため、定量が比較的難しい誘導電場を生じ、組織で電場を誘導するのに常に最も効果的な手段ではない。そのかわり、本発明の一実施態様によれば、その方向/配向が、第2の曝露平面に一定の時間間隔で変化する(表2に示す交互直線のデータによって証明されるように)、印加磁場(直線または円)の使用が提供される。ある最小の期間(例えば、約10秒よりも長く)磁場曝露が一時的に不変であれば、完全な生物学的効果が達成され得る。
【0045】
本発明は、添付の図面に言及してそのいくつかの実施態様と併せて十分に記載されているが、様々な変更および改変が当業者にとって明らかであることが理解される。そのような変更および改変は、そこから逸脱しない限りは、添付の請求の範囲に定義される、本発明の範囲内に含まれることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電場を体に送達する方法であって、該方法が、
偏光磁場を、体に、該体内の所望の標的に向ける第1の方向で送達する工程;および、
該所望の標的にわたって電場を誘導するように、該磁場の送達方向を、該所望の標的に向ける第2の方向に変更する工程、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の方向の前記磁場の平面配向が、前記第2の方向の該磁場の平面配向に直角である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記磁場が、前記送達方向が前記第2の方向に変更される前に、前記第1の方向で少なくとも5秒間送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記磁場が、前記送達方向が前記第2の方向に変更される前に、前記第1の方向で少なくとも10秒間送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記磁場が、前記送達方向が前記第2の方向に変更される前に、前記第1の方向で少なくとも30秒間送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記磁場が、前記送達方向が前記第2の方向に変更される前に、前記第1の方向で300秒間以下送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記磁場が、前記体に約30分間から約60分間送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記標的が、癌細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記標的が、心臓組織を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記磁場が、直線偏光である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記磁場が、円偏光である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記磁場が、AC電流が少なくとも1つのコイル対を流れることで形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記磁場が、少なくとも2つのコイル対で形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも2つのコイル対が、少なくとも2つの異なる方向に磁場を送達するように配置される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
AC電流が前記少なくとも2つのコイル対を交互に流れる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
1つのコイル対の前記AC電流が、少なくとも1つの他のコイル対の該AC電流と約90度の位相ずれである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
1つのコイル対の前記AC電流が、少なくとも1つの他のコイル対の該AC電流と約60度から約120度までの位相ずれである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記送達された磁場が、約20Hz以上の周波数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記送達された磁場が、約20Hzから約60Hzまでの周波数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
電場を体に送達する方法であって、該方法が、
第1の磁場を、第1のコイルから、体に、該体内の所望の標的に向ける第1の配向で送達する工程;および、
該所望の標的にわたって電場を誘導するように、第2の磁場を、第2のコイルから、該体内の該所望の標的に向ける第2の配向で送達する工程を含み、常に1つの磁場のみが該体に送達される、
方法。
【請求項21】
第1の配向の前記第1の磁場および第2の配向の前記第2の磁場のうち少なくとも1つが、直線偏光磁場を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
第1の配向の前記第1の磁場および第2の配向の前記第2の磁場のうち少なくとも1つが、円偏光磁場を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記第1のコイルおよび前記第2のコイルのうち少なくとも1つが、コイル対を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の配向が、前記第2の配向に直角である、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
第3の磁場を、第3のコイルから、第3の配向で送達する工程をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の配向、前記第2の配向および前記第3の配向が、他のコイルの配向に相互に直角である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の磁場が、前記送達配向が前記第2の磁場の前記第2の配向に変更される前に、前記第1の配向で少なくとも5秒間送達される、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の磁場が、前記送達配向が前記第2の磁場の前記第2の配向に変更される前に、前記第1の配向で少なくとも10秒間送達される、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
前記第1の磁場が、前記送達配向が前記第2の磁場の前記第2の配向に変更される前に、前記第1の配向で少なくとも30秒間送達される、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
前記第1の磁場が、前記送達配向が前記第2の磁場の前記第2の配向に変更される前に、前記第1の配向で300秒間以下送達される、請求項20に記載の方法。
【請求項31】
前記磁場が、前記体に合計約30分間から約60分間送達される、請求項20に記載の方法。
【請求項32】
前記標的が、癌細胞を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項33】
前記標的が、心臓組織を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項34】
AC電流が、前記第1のコイルと前記第2のコイルとを交互に流れる、請求項20に記載の方法。
【請求項35】
前記第1のコイルを流れる前記AC電流が、前記第2のコイルを流れる該AC電流と約90度の位相ずれである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記第1のコイルを流れる前記AC電流が、前記第2のコイルを流れる該AC電流と約60度から約120度までの位相ずれである、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
電場を体に送達する方法であって、該方法が、
第1の磁場を、第1のコイルから、体に、該体内の所望の標的に向ける第1の配向で送達する工程;
第2の磁場を、第2のコイルから、該体内の該所望の標的に向ける第2の配向で送達する工程:および、
該所望の標的にわたって電場を誘導するように、第3の磁場を、第3のコイルから、該体内の該所望の標的に向ける第3の配向で送達する工程、
を含む、方法。
【請求項38】
第1の配向の前記第1の磁場、第2の配向の前記第2の磁場および第3の配向の前記第3の磁場のうち少なくとも1つが、直線偏光磁場を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
第1の配向の前記第1の磁場、第2の配向の前記第2の磁場および第3の配向の前記第3の磁場のうち少なくとも1つが、円偏光磁場を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記第1のコイル、前記第2のコイルおよび前記第3のコイルのうち少なくとも1つが、コイル対を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記第1の配向、前記第2の配向および前記第3の配向が、他のコイルの配向に相互に直角である、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記第1の磁場、前記第2の磁場および前記第3の磁場のうち少なくとも1つが、前記送達配向が異なる配向に変更される前に、少なくとも5秒間送達される、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
前記第1の磁場、前記第2の磁場および前記第3の磁場のうち少なくとも1つが、前記送達配向が異なる配向に変更される前に、少なくとも10秒間送達される、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
前記第1の磁場、前記第2の磁場および前記第3の磁場のうち少なくとも1つが、前記送達配向が異なる配向に変更される前に、少なくとも30秒間送達される、請求項37に記載の方法。
【請求項45】
前記第1の磁場、前記第2の磁場および前記第3の磁場のうち少なくとも1つが、前記送達配向が異なる配向に変更される前に、300秒間以下送達される、請求項37に記載の方法。
【請求項46】
前記第1の磁場、前記第2の磁場および前記第3の磁場のうち2つが、同時に送達される、請求項37に記載の方法。
【請求項47】
前記磁場が、前記体に合計約30分間から約60分間送達される、請求項37に記載の方法。
【請求項48】
前記標的が、癌細胞を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項49】
前記標的が、心臓組織を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項50】
前記第1のコイル、前記第2のコイルおよび前記第3のコイルのうち少なくとも1つを流れるAC電流が、該第1のコイル、該第2のコイルおよび該第3のコイルのうち他の少なくとも1つを流れる該AC電流と約90度の位相ずれである、請求項37に記載の方法。
【請求項51】
前記第1のコイル、前記第2のコイルおよび前記第3のコイルのうち少なくとも1つを流れるAC電流が、該第1のコイル、該第2のコイルおよび該第3のコイルのうち他の少なくとも1つを流れる該AC電流と約60度から約120度までの位相ずれである、請求項37に記載の方法。
【請求項52】
電場を体に送達するための装置であって、該装置が、
第1の磁場を、第1のコイルから、体に、該体内の所望の標的に向ける第1の配向で送達するための手段;
該所望の標的にわたって電場を誘導するように、第2の磁場を、第2のコイルから、該体内の該所望の標的に向ける第2の配向で送達するための手段:および、
該第1のコイルおよび該第2のコイルの間で電流を交互に流すための手段、
を含む、装置。
【請求項53】
前記第1のコイルおよび前記第2のコイルの少なくとも1つが、コイル対を含む、請求項52に記載の装置。
【請求項54】
第3の磁場を、第3のコイルから、第3の配向で送達するための手段をさらに含む、請求項52に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2010−510862(P2010−510862A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539219(P2009−539219)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/045491
【国際公開番号】WO2008/066509
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(399128150)ザ・キャソリック・ユニバーシティ・オブ・アメリカ (4)
【氏名又は名称原語表記】THE CATHOLIC UNIVERSITY OF AMERICA
【Fターム(参考)】