三次元の検体内の細胞を選択的に標的化する方法およびデバイス
【課題】生物学的組織に見いだされる複合集団内の特定の細胞を迅速かつ効率的に同定および標的化する装置および方法を提供することが本発明の課題である。
【解決手段】上記課題は、検体(600)中の所定の粒子に電磁的に影響を及ぼす装置を提供することによって解決された。具体的には、本発明の装置は、該検体を支持し得る試料台(500)、少なくとも1つのカメラ(450A)を含む検出器であって、該検出器は該検体(600)内の所定の粒子を解像し得る、検出器、該所定の粒子を三次元にて位置決めする手段、該検体内の焦点体積に電磁放射の焦点を合わせる手段、および該試料台および電磁放射焦点調節手段の相対的な位置を調節する手段であって、それにより該焦点体積内の該所定の粒子の位置決めを行う、手段を含む。
【解決手段】上記課題は、検体(600)中の所定の粒子に電磁的に影響を及ぼす装置を提供することによって解決された。具体的には、本発明の装置は、該検体を支持し得る試料台(500)、少なくとも1つのカメラ(450A)を含む検出器であって、該検出器は該検体(600)内の所定の粒子を解像し得る、検出器、該所定の粒子を三次元にて位置決めする手段、該検体内の焦点体積に電磁放射の焦点を合わせる手段、および該試料台および電磁放射焦点調節手段の相対的な位置を調節する手段であって、それにより該焦点体積内の該所定の粒子の位置決めを行う、手段を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、混合物中の粒子を選択的に同定し、かつ個別に操作する方法およびデバイスに、そしてより詳細には、望ましくない標的細胞をエネルギービームを用いて組織から選択的に除去する方法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
標的細胞を組織から除去する以前の方法は、標的細胞を組織から効果的に分離する能力、または標的細胞に特異的に送達される毒性の化学薬剤の利用可能性に基づいて開発されてきた。標的細胞をそれらの生来の組織から除去するのに十分厳しく、かつ組織に維持されることが望まれる他の細胞に損傷を与えないほどに十分穏やかであるという提供条件内に当たるように釣り合いをとることが難しいので、標的細胞の効果的分離は達成しがたい。さらに、分離法の多くは、組織の大規模な破壊を必要とし、それにより残存細胞による生存組織の再構成を妨げるか、または困難にしている。組織中に存在したままの標的細胞に毒性薬剤が送達され得るものの、周囲の組織への巻き添え損傷を防ぐために必要とされる特異性の度合いは、しばしば達成しがたい。
【0003】
それ故、生物学的組織に見いだされる複合集団内の特定の細胞を迅速かつ効率的に同定および標的化する装置および方法が必要とされている。本発明は、この要求を満たし、かつ関連する利点もまた提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の概要)
本発明は、検体中の所定の粒子に電磁的に影響を及ぼす装置を提供する。本装置は、以下:(a)上記検体を支持し得る試料台と、(b)少なくとも1つのカメラを含む検出器であって、上記検出器は上記検体内の所定の粒子を解像し得る、検出器と、(c)上記所定の粒子を三次元において位置決めする手段と、(d)上記検体内の焦点体積に電磁放射の焦点を合わせる手段と、(e)上記試料台および電磁放射焦点合わせ手段の相対的な位置を調節する手段であって、それにより上記焦点体積内の上記所定の粒子の位置決めを行う、調節する手段、とを含む。
【0005】
本発明は、検体中の所定の粒子に電磁的に影響を及ぼす方法をさらに提供する。本方法は、以下の工程:(a)上記検体の複数の同一でない二次元断面表示を得る工程であって、上記所定の粒子は上記断面表示の少なくとも1つにおいて識別可能である、工程と、(b)上記複数の断面二次元表示を組み合わせて、上記検体の三次元表示を作成する、工程と、(c)上記三次元表示に基づいて、上記所定の粒子を三次元において位置決めする工程と、(d)焦点体積に対して電磁放射の焦点を合わせる工程であって、上記焦点体積は上記所定の粒子を含有する検体の一部分と交差し、上記焦点体積内の放射は実質的に上記焦点体積内の上記検体の一部分にのみ影響を及ぼし、上記焦点体積内の上記検体の一部分は実質的に影響を受けない検体のエンベロープにより取り囲まれている、工程、とを包含する。
【0006】
さらに、検体中の所定の粒子に電磁的に影響を及ぼす方法が提供される。本方法は、以下の工程:(a)検体中の複数の焦点平面領域に複数の検出器の焦点を合わせる工程と、(b)それぞれが上記焦点平面領域の1つに対応する複数の二次元断面表示を得る工程であって、所定の粒子は上記二次元断面表示の少なくとも1つにおいて識別され得る、工程と、(c)上記複数の二次元断面表示をコンピューターメモリに記憶させる工程と、(d)上記複数の二次元断面表示を組み合わせて、それにより上記検体の少なくとも一部分の三次元表示を作成する、工程と、(e)上記検体の少なくとも一部分の三次元表示に基づいて、上記検体中の所定の粒子を位置決めする工程と、(f)焦点体積に対して電磁放射の焦点を合わせる工程であって、上記焦点体積は上記所定の粒子を含有する上記検体の一部分と交差し、上記焦点体積内の放射は実質的に上記焦点体積中の上記検体の一部分にのみ影響を及ぼし、上記焦点体積中の上記検体の一部分は実質的に影響を受けない検体のエンベロープにより取り囲まれている、工程、とを包含する。
【0007】
本発明はまた、検体中の所定の粒子に電磁的に影響を及ぼす方法を提供する。本方法は、以下の工程:(a)異なるZレベルで、上記検体の複数の二次元断面表示を得る工程であって、上記所定の粒子は上記断面表示の少なくとも1つにおいて識別可能である、工程と、(b)上記複数の二次元断面表示から二次元断面表示を選択する工程であって、上記所定の粒子に焦点が合わされている、工程と、(c)上記選択された二次元断面表示における上記粒子のXおよびY座標ならびに上記選択された二次元断面表示のZレベルに関して、上記検体の所定の粒子を位置決めする工程と、(d)焦点体積に対して電磁放射の焦点を合わせる工程であって、上記焦点体積は上記所定の粒子を含有する上記検体の一部分と交差し、ここで上記焦点体積内の放射は実質的に上記焦点体積中の上記検体の一部分にのみ影響を及ぼし、上記焦点体積中の上記検体の一部分は実質的に影響を受けない検体のエンベロープにより取り囲まれている、工程、とを包含する。
【0008】
従って、本発明は、以下を提供する:
(項目1) 検体中の所定の粒子に電磁的に影響を及ぼす装置であって、
以下:
(a)該検体を支持し得る試料台と、
(b)少なくとも1つのカメラを含む検出器であって、該検出器は該検体内の所定の粒子を解像し得る、検出器と、
(c)該所定の粒子を三次元にて位置決めする手段と、
(d)該検体内の焦点体積に電磁放射の焦点を合わせる手段と、
(e)該試料台および電磁放射焦点調節手段の相対的な位置を調節する手段であって、それにより該焦点体積内の該所定の粒子の位置決めを行う、手段、
とを含む装置。
(項目2) 前記検出器は、複数の同一でない二次元画像を得る能力があり、所定の粒子は該二次元画像の少なくとも1つにおいて識別可能である、請求項1に記載の装置。
(項目3) 前記装置は、1分あたり、前記検体中の少なくとも10の別個の焦点体積中の粒子に電磁的に影響を及ぼし得る、項目1に記載の装置。
(項目4) 前記装置は、1分あたり、前記検体中の少なくとも500,000の別個の焦点体積中の粒子に電磁的に影響を及ぼし得る、項目1に記載の装置。
(項目5) 前記検出器は、方向の異なる視界から該検体を画像化し得る複数のカメラを含む、項目1に記載の装置。
(項目6) 前記検出器は、電荷結合素子カメラを含む、項目1に記載の装置。
(項目7) 前記方向の異なる視界は、45°未満の角度で離れている、項目5に記載の装置。
(項目8) 前記検出器は複数のカメラを含み、各カメラは異なる焦点平面領域を視界とし、該視界とされる焦点平面領域それぞれは前記検体の異なる断面画像を作成する、項目1に記載の装置。
(項目9) 前記被写界深度は、100μm未満である、項目8に記載の装置。
(項目10) 前記異なる断面画像は、前記検体の異なる断面に前記カメラの焦点を合わせることにより作成される、項目8に記載の装置。
(項目11) 隣接する焦点平面領域の中央平面間の距離は、概ね前記カメラの視界とされる被写界深度である、項目10に記載の装置。
(項目12) 前記焦点平面領域は、Zレベルで実質的に重複しない、請求項8に記載の装置。
(項目13) 前記カメラは、実質的に互いに平行である視界の方向を有する、項目8に記載の装置。
(項目14) 前記検出器は、浅い焦点平面領域を視界とするカメラを含み、該焦点平面領域は、前記検体の異なる断面に再度焦点を合わせられ得る、請求項1に記載の装置。
(項目15) 前記焦点平面領域は、異なる時点で前記検体の異なる断面に再度焦点を合わせられる、項目14に記載の装置。
(項目16) 再焦点合わせは、少なくとも1Hzの速度で行われる、請求項15に記載の装置。
(項目17) 前記再焦点合わせは、自動化されている、項目14に記載の装置。
(項目18) 前記検出器は、浅い被写界深度を視界とするカメラを含み、前記検出器は、前記検体の異なる断面画像を得るために自動的に再度焦点を合わせられ得る、項目1に記載の装置。
(項目19) 前記自動再焦点合わせは、前記カメラの移動を含む、請求項18に記載の装置。
(項目20) 前記カメラは、レンズを通して浅い被写界深度を視界とし、前記自動再焦点合わせは、該レンズの移動を含む、項目18に記載の装置。
(項目21) 前記カメラは、ミラーにより反射される浅い被写界深度を視界とし、前記自動再焦点合わせは、該ミラーの移動を含む、項目18に記載の装置。
(項目22) 前記自動再焦点合わせは、前記検体の移動を含む、項目18に記載の装置。
(項目23) 前記粒子を位置決めする手段は、1つまたは複数の二次元表示を処理して三次元表示を作成するデバイスを含む、項目1に記載の装置。
(項目24) 前記粒子を位置決めする手段は、少なくとも1つの所定の粒子の位置座標を記憶し得るコンピューターメモリを含む、項目1に記載の装置。
(項目25) 前記調節する手段は、電磁放射焦点調節手段に機能的に接続された自動位置決めデバイスを含む、項目1に記載の装置。
(項目26) 前記粒子を位置決めする手段は、前記自動位置決めデバイスと通信可能である、項目25に記載の方法。
(項目27) 前記調節する手段は、前記試料台に機能的に接続された自動位置決めデバイスを含む、項目1に記載の装置。
(項目28) 前記粒子を位置決めする手段は、前記自動位置決めデバイスと通信可能である、項目27に記載の方法。
(項目29) 前記調節する手段は、前記電磁放射焦点調節手段および試料台に機能的に接続された自動位置決めデバイスを含む、項目1に記載の装置。
(項目30) 前記粒子を位置決めする手段は、前記自動位置決めデバイスと通信可能である、項目29に記載の方法。
(項目31) 前記電磁放射焦点調節手段に向けられた電磁放射源をさらに含む、項目1に記載の装置。
(項目32) 前記電磁放射源は、少なくとも1つのレーザーである、請求項31に記載の装置。
(項目33) 前記放射は、集束している、項目32に記載の装置。
(項目34) 前記少なくとも1つのレーザーは、100ナノメートル〜30マイクロメートルの波長を発する、項目31に記載の装置。
(項目35) 前記源は、複数のレーザーを含む、項目31に記載の装置。
(項目36) 前記レーザーからの放射ビームは、前記焦点体積において交差する、項目35に記載の装置。
(項目37) 前記レーザーは、異なる波長の放射線を発する、項目35に記載の装置。
(項目38) 前記焦点体積が細胞を死滅させるのに十分なエネルギーを含み得る、項目31に記載の装置。
(項目39) 前記焦点体積が細胞をオプトインジェクトするのに十分なエネルギーを含み得る、項目31に記載の装置。
(項目40) 前記焦点体積が細胞構成成分を不活性化するのに十分なエネルギーを含み得る、項目31に記載の装置。
(項目41) 前記焦点体積が感光性剤を活性化するのに十分なエネルギーを含み得る、項目31に記載の装置。
(項目42) 前記感光性剤は、ケージ化化合物、光力学的治療剤、またはフルオロフォアである、項目41に記載の装置。
(項目43) 前記検体を照射するために置かれた照射デバイスをさらに含む、項目1に記載の装置。
(項目44) 前記照射デバイスは、ランプを含む、項目43に記載の装置。
(項目45) 前記照射デバイスは、レーザーを含む、項目43に記載の装置。
(項目46) 前記照射デバイスは、発光ダイオードを含む、項目43に記載の装置。
(項目47) 検体中の所定の粒子に電磁的に影響を及ぼす方法であって、以下の工程
(a)該検体の複数の同一でない二次元断面表示を得る工程であって、該所定の粒子は該断面表示の少なくとも1つにおいて識別可能である、工程と、
(b)該複数の断面二次元表示を組み合わせて、該検体の三次元表示を作成する工程と、
(c)該三次元表示に基づいて、該所定の粒子を三次元にて位置決めする工程と、
(d)焦点体積に対して電磁放射の焦点を合わせる工程であって、該焦点体積は該所定の粒子を含有する該検体の一部分と交差し、該焦点体積内の放射は実質的に該焦点体積内の該検体の一部分にのみ影響を及ぼし、該焦点体積内の該検体の一部分は実質的に影響を受けない検体のエンベロープにより取り囲まれている、工程、
とを含む方法。
(項目48) 前記検体は、多層の粒子である、項目47に記載の方法。
(項目49) 前記検体は、生物検体である、項目47に記載の方法。
(項目50) 前記粒子は、細胞である、項目49に記載の方法。
(項目51) 前記電磁的影響は、死亡である、項目50に記載の方法。
(項目52) 前記電磁的影響は、オプトインジェクションである、請求項50に記載の方法。
(項目53) 前記電磁的影響は、遺伝子発現の変更である、項目50に記載の方法。
(項目54) 前記電磁的影響は、蛍光である、項目50に記載の方法。
(項目55) 前記電磁的影響は、イオンのアンケージングである、請求項50に記載の方法。
(項目56) 前記所定の粒子は、選択マーカーの存在により識別可能である、項目47に記載の方法。
(項目57) 前記選択マーカーは、前記粒子に対して非破壊的である、項目56に記載の方法。
(項目58) 前記選択マーカーは、色素を含む、項目56に記載の方法。
(項目59) 前記選択マーカーは、抗体を含む、項目56に記載の方法。
(項目60) 前記所定の粒子は、複数の選択マーカーにより識別可能である、項目47に記載の方法。
(項目61) 前記マーカーは、腫瘍細胞について選択性である、項目56に記載の方法。
(項目62) 前記所定の粒子は、選択マーカーの非存在により識別可能である、項目47に記載の方法。
(項目63) 前記検体の位置は、前記所定の粒子を含有する前記検体の一部分が前記焦点体積と交差するように変更される、項目47に記載の方法。
(項目64) 前記焦点体積の位置は、前記所定の粒子を含有する前記検体の一部分が前記焦点体積と交差するように変更される、項目47に記載の方法。
(項目65) 1分あたり、位置決めされた粒子を含有する前記検体の少なくとも10の別個の部分が、電磁的に影響を及ぼされる、項目47に記載の方法。
(項目66) 1分あたり、位置決めされた粒子を含有する前記検体の少なくとも500,000の別個の部分が、電磁的に影響を及ぼされる、項目47に記載の方法。
(項目67) 前記複数の表示は複数のカメラを用いて獲得され、各カメラは異なる焦点平面領域を視界とし、視界とされる焦点平面領域それぞれは前記検体の異なる断面画像を作成する、項目47に記載の方法。
(項目68) 前記被写界深度は、100μm未満である、項目67に記載の方法。
(項目69) 前記異なる断面表示は、前記検体中の異なる焦点平面領域にカメラの視界を焦点合わせることにより作成される、項目67に記載の方法。
(項目70) 隣接する調節焦点平面領域の中央平面間の距離は、概ね前記カメラの視界とされる被写界深度である、項目69に記載の装置。
(項目71) 前記断面表示は、実質的に重複しない、項目67に記載の方法。
(項目72) 前記カメラの視界の向きは、実質的に互いに平行である、項目67に記載の方法。
(項目73) 前記複数の表示は、浅い被写界深度を視界とするカメラを用いて獲得され、前記焦点平面領域は、前記検体の異なる断面で再度焦点を合わせられ得る、項目47に記載の方法。
(項目74) 前記再焦点合わせは、自動化されている、項目73に記載の装置。
(項目75) 前記複数の表示は、浅い被写界深度を視界とする検出器を用いて獲得され、該検出器は、前記検体の異なる断面表示を得るために自動的に再度焦点を合わせられ得る、項目47に記載の方法。
(項目76) 前記電磁放射は、少なくとも1つのレーザーにより生成される、項目47に記載の方法。
(項目77) 前記電磁放射は、集束光線を含む、項目76に記載の方法。
(項目78) 前記電磁放射は、100ナノメートル〜30マイクロメートルにある、項目76に記載の方法。
(項目79) 前記電磁放射は、複数のレーザーにより生成される、請求項47に記載の方法。
(項目80) 前記レーザーからの放射ビームは、前記焦点体積において交差する、項目79に記載の方法。
(項目81) 前記レーザーは、異なる波長の放射線を発する、項目79に記載の方法。
(項目82) 前記検体は、照射される、項目47に記載の方法。
(項目83) 前記検体は、ランプで照射される、項目82に記載の方法。
(項目84) 前記検体は、レーザーで照射される、項目82に記載の方法。
(項目85) 前記検体は、発光ダイオードで照射される、項目82に記載の方法。
(項目86) 検体中の所定の粒子に電磁的に影響を及ぼす方法であって、以下の工程:
(a)検体中の複数の焦点平面領域に複数の検出器の焦点を合わせる工程と、
(b)それぞれが該焦点平面領域の1つに対応する複数の二次元断面表示を得る工程であって、所定の粒子は該二次元断面表示の少なくとも1つにおいて識別され得る、工程と、
(c)該複数の二次元断面表示をコンピューターメモリに記憶させる工程と、
(d)該複数の二次元断面表示を組み合わせて、該検体の少なくとも一部分の三次元表示を作成する工程と、
(e)該検体の少なくとも一部分の三次元表示に基づいて、該検体中の所定の粒子を位置決めする工程と、
(f)焦点体積に対して電磁放射の焦点を合わせる工程であって、該焦点体積は該所定の粒子を含有する該検体の一部分と交差し、該焦点体積内の放射は実質的に該焦点体積中の該検体の一部分にのみ影響を及ぼし、該焦点体積中の該検体の一部分は実質的に影響を受けない検体のエンベロープにより取り囲まれている、工程、
とを含む方法。
(項目87) 検体中の所定の粒子に電磁的に影響を及ぼす方法であって、以下の工程:
(a)異なるZレベルで、該検体の複数の二次元断面表示を得る工程であって、該所定の粒子は該断面表示の少なくとも1つにおいて識別可能である、検体の複数の二次元断面表示を得る工程と、
(b)該複数の二次元断面表示から二次元断面表示を選択する工程であって、該所定の粒子に焦点が合わされている、工程と、
(c)該選択された二次元断面表示における該粒子のXおよびY座標ならびに該選択された二次元断面表示のZレベルに関して、該検体の所定の粒子を位置決めする工程と、
(d)焦点体積に対して電磁放射の焦点を合わせる工程であって、該焦点体積は該所定の粒子を含有する該検体の一部分と交差し、ここで該焦点体積内の放射は実質的に該焦点体積中の該検体の一部分にのみ影響を及ぼし、該焦点体積中の該検体の一部分は実質的に影響を受けない検体のエンベロープにより取り囲まれている、工程、
とを含む方法。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、細胞処理装置の1つの実施形態の斜視図であり、筐体およびディスプレイの外側設計を図示する。
【図2】図2は、外側筐体を外して内部コンポーネントを図示した、細胞処理装置の1つの実施形態の斜視図である。
【図3】図3は、細胞処理装置の1つの実施形態のために設計された光学サブアセンブリのブロック図である。
【図4】図4は、階段状のZレベルでCCDアレイにより達成される相対的焦点平面領域の正面図である。
【図5】図5は、三次元画像プロセッサモジュールが、階段状のZレベルでCCDアレイにより取り込まれる画像をどのように組み立てるのかを示す、検体の斜視図である。
【図6】図6は、CCDアレイにより見られるような象限を図示する細胞検体の底面図である。各長方形象限は、その相対的Zレベルに焦点の合った単一のカメラにより取り込まれる画像を表す。
【図7】図7は、細胞処理装置とのCCDアレイの相互関係を図示する光学サブアセンブリのブロック図である。
【図8】図8は、細胞処理装置の1つの実施形態内の、光学サブアセンブリの1つの実施形態の斜視図である。
【図9】図9は、走査レンズおよび可動試料台の配置を図示する光学サブアセンブリの1つの実施形態の側面図である。
【図10】図10は、光学サブアセンブリの1つの実施形態の底面斜視図である。
【図11】図11は、細胞処理装置の可動試料台の頂部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(詳細な説明)
本発明は、標的粒子において応答を誘導する目的で、検体中の特定の粒子の選択的標的化および電磁的照射を行う方法および装置を提供する。1つの実施形態において、本発明は、生物学的検体中の特定の細胞または細胞サブセットを標的化するために使用され得る。細胞は、検体の他の粒子と比較して際だった特徴を顕微鏡画像化または別の方法で検出することにより、標的化され得る。いったん標的化された細胞は、電磁放射で照射されて、様々な応答(壊死、細胞周期または発生の段階の活性化または阻害、遺伝子発現の変更、あるいは外因性分子の取り込みまたはケージ化もしくは細胞下区画化イオンもしくは分子の放出などによる細胞組成の変更を含む)のいずれかを誘導し得る。本発明の装置および方法の利点は、検体内の非標的細胞に実質的に影響を及ぼさずに、典型的な生物学的検体に見いだされる混合集団中の特定の細胞が個別に標的化され、かつ電磁的に影響を及ぼされ得ることである。さらに、本発明は、装置または方法の自動化を提供し、それにより検体のハイスループット処理を可能にする。
【0011】
本明細書中使用される場合、用語「電磁的に影響を及ぼす」は、粒子に関して使用される場合、粒子と電磁放射エネルギーが交差することにより粒子の少なくとも1つの性質が変化することを意味することを意図する。この用語は、電子励起状態のように一時的に、または化学組成もしくは構造のように永久に変化する性質を含み得る。細胞に関して使用される場合、変化する性質として、生存度、膜完全性、細胞周期段階、遺伝子発現レベル、細胞内pH、細胞内組成、細胞下もしくは細胞質ゾルのイオン濃度、または発生段階などが挙げられ得る。
【0012】
本明細書中使用される場合、用語「識別する」は、検体中の粒子に関して使用される場合、粒子の検出可能な性質に従って、検体の少なくとも1つの他の構成成分から粒子を区別することを意味することを意図する。この用語は、形状、大きさ、光学的性質、化学組成、密度、質量、天然もしくは合成の標識の存在もしくは非存在、標識親和性、または付随する化学的もしくは生物学的活性の存在もしくは非存在に基づいて区別することを含み得る。
【0013】
本明細書中使用される場合、用語「焦点体積(focal volume)」は、領域の任意の他の部分が受けるよりも多量の電磁エネルギーを受ける、空間中または検体中の照射領域の三次元部分を意味することを意図する。この用語は、電磁放射線がそこに収束するか、またはそれらがそこから現れて光学系を通過した後に分岐する、焦点により規定される三次元部分を含み得、ここで光学系と接触するこれらの線は平行または非平行であり得る。この用語はまた、その部分が個別のビームそれぞれが通過する領域よりも高いエネルギーを受けるように、2本以上の電磁放射ビームの交差により規定される部分を含み得る。この三次元部分は、その部分を取り囲む検体のエンベロープが実質的に照射により影響を受けないままで、実質的にその部分のみに影響を及ぼす量の電磁放射を受ける、検体の部分を規定し得る。
【0014】
本明細書中使用される場合、用語「検体」は、三次元環境内に粒子を有する任意の型の組成物を意味することを意図する。この用語は、細胞または他の粒子を有する組織などの生物学的検体を含み得る。検体は、容器により、または容器を伴って封入され得る。容器は、細胞の無菌性および生存度を維持するために構築され得る。さらに、検体は、本明細書中に記載される装置または方法の操作の間、それを周囲温度より高くまたは低く保つための、冷却または加熱装置を組み込み得るか、またはそれを伴い得る。検体容器は、使用される場合、実質的にそれ自体が損傷することなく適切なエネルギーを伝達するように、照射レーザー、背面照明装置、および処理レーザーの使用と適合性の材料製で作製され得る。
【0015】
検体の粒子は、微視的粒子(細胞、細胞凝集体、ウイルス、オルガネラなどの細胞下画分、またはリボソームもしくは染色体などの大きな巨大分子など)であり得る。装置または方法で使用される「細胞」は、任意の生物学的細胞であり得、原核生物および真核生物の細胞(動物細胞、植物細胞、酵母細胞、細菌細胞、ヒト細胞、および非ヒト霊長類細胞など)が挙げられる。細胞は、生物体から採取され得るかまたは細胞培養物から収集され得る。
【0016】
本明細書中使用される場合、用語「焦点平面領域」は、二次元で引き伸ばされ、実質的に視野の方向に対して垂直な2枚の平行な平面間に限定される三次元空間中の観察される領域を意味することを意図する。観察される領域は、検体のスライスまたは切片あるいはそのようなスライスまたは切片の一部分であり得る。それ故、検体の焦点平面領域は、検体の断面画像を作成するために使用され得る。焦点平面領域の中央平面は、焦点平面領域を限定する2枚の平行な平面に対して平行でありかつその間の中程にある平面を意味することを意図する。
【0017】
本発明は、検体中の所定の粒子に電磁的に影響を及ぼす方法を提供する。本方法は、以下の工程(a)検体の複数の同一でない二次元断面表示を得る工程であって、所定の粒子は断面表示の少なくとも1つにおいて識別可能(discernable)である工程、(b)複数の断面二次元表示を組み合わせて、検体の三次元表示を作成する工程、(c)三次元表示に基づいて、所定の粒子を三次元において位置決めする工程、および(d)焦点体積に対して電磁放射の焦点を合わせる工程であって、焦点体積は所定の粒子を含有する検体の一部分と交差し、焦点体積内の照射は実質的に焦点体積内の検体の一部分にのみ影響を及ぼし、焦点体積内の検体の一部分は実質的に影響を受けない検体のエンベロープにより取り囲まれている工程を包含する。
【0018】
本発明はさらに、検体中の所定の粒子に電磁的に影響を及ぼす方法を提供する。本方法は、以下の工程(a)検体の複数の焦点平面領域に複数の検出器の焦点を合わせる工程、(b)複数の二次元断面表示(それぞれが1つの焦点平面領域に対応する)を得る工程であって、所定の粒子は二次元断面表示の少なくとも1つにおいて識別され得る工程、(c)複数の二次元断面表示をコンピューターメモリに記憶させる工程、(d)複数の二次元断面表示を組み合わせて、検体の少なくとも一部分の三次元表示を作成する工程;(e)検体の少なくとも一部分の三次元表示に基づいて、検体の所定の粒子を位置決めする工程、および(f)焦点体積に対して電磁放射の焦点を合わせる工程であって、焦点体積は所定の粒子を含有する検体の一部分と交差し、焦点体積内の照射は実質的に焦点体積中の検体の一部分にのみ影響を及ぼし、焦点体積中の検体の一部分は実質的に影響を受けない検体のエンベロープにより取り囲まれている工程を含む。
【0019】
本発明によりさらに提供されるのは、検体中の所定の粒子に電磁的に影響を及ぼす方法である。本方法は、以下の工程:(a)種々のZレベルで、検体の複数の二次元断面表示を得る工程であって、所定の粒子は断面表示の少なくとも1つにおいて識別可能である工程、(b)複数の二次元断面表示から二次元断面表示を選択する工程であって、所定の粒子に焦点が合わされている工程、(c)選択された二次元断面表示における粒子のXおよびY座標ならびに選択された二次元断面表示のZレベルに関して、検体の所定の粒子を位置決めする工程、および(d)焦点体積に対して電磁放射の焦点を合わせる工程であって、焦点体積は所定の粒子を含有する検体の一部分と交差し、焦点体積内の照射は実質的に焦点体積中の検体の一部分にのみ影響を及ぼし、焦点体積中の検体の一部分は実質的に影響を受けない検体のエンベロープにより取り囲まれている工程を含む。
【0020】
本発明の方法は、電磁的に影響を及ぼし、それにより標的細胞に応答を誘導する目的で、細胞集団内の特定の細胞を、選択的に同定し、かつ個別に電磁放射ビームで標的とするために使用され得る。細胞の集団は、生物検体(器官からなどの組織または血液のような生体液を含む)中の混合集団であり得る。本発明の方法において使用される検体はまた、細胞培養においてなど起源において同種であり得る。標的化されて電磁的に影響を及ぼされた検体内の細胞は、2〜3例を挙げると、腫瘍細胞、非腫瘍細胞、線維芽細胞、T細胞、または奇形腫形成細胞を含み得る。
【0021】
細胞は、検体中の他の細胞からその細胞を区別する様々な性質に従って、標的化され得る。細胞を区別するのに有用な性質は、その形態学的特徴(形状または大きさなど)および生理学的特徴(1つまたはそれより多い検出可能なマーカーの位置または存在もしくは非存在など)であり得る。例えば、標的細胞に対して特異性を有する標識が、標的細胞を区別するために混合集団において使用され得る。本明細書中の装置および方法により標的化される細胞は、処理電磁放射源により作成される焦点体積が特に標的細胞に向けられ得るように、選択的に標識されるか、または他の方法で検体中の他のものから区別されるものである。
【0022】
選択される標識は、実質的に、第一の細胞集団を第二の細胞集団から同定して区別する任意のものであり得る。マーカーは、必ずしも破壊的である必要も永続的に細胞に結合する必要もない。例えば、蛍光色素で直接または間接的にタグを付けられたモノクローナル抗体が、特異的標識として使用され得る。細胞表面結合標識の他の例として、非抗体タンパク質、レクチン、炭水化物、または選択的細胞結合能力を持つ短ペプチドが挙げられる。膜インターカレート色素(PKH−2およびPKH−26など)もまた、細胞の分裂の経歴を示す有用な区別標識としての役目を果たし得る。多くの膜透過性試薬もまた、選択された判定基準に基づいて生細胞を互いに区別するために利用可能である。例えば、ファロイジンは膜完全性を示し、テトラメチルローダミンメチルエステル(TMRM)はミトコンドリア膜間電位を示し、モノクロロビマン(monochlorobimane)はグルタチオン還元段階を示し、カルボキシメチルフルオレセインジアセテート(carboxymethyl fluorescein diacetate)(CMFDA)はチオール活性を示し、カルボキシフルオレセインジアセテートは細胞内pHを示し、fura−2は細胞内Ca2+レベルを示し、5,5’,6,6’−テトラクロロ−1,1’,3,3’−テトラエチルベンズイミダゾールカルボシアニンヨージド(JC−1)は膜電位を示す。細胞生存度は、蛍光SYTO13またはYO PRO試薬の使用により評価され得る。同様に、蛍光でタグを付けられた遺伝子プローブ(DNAまたはRNA)は、所定の遺伝子を保有するか、または所定の遺伝子を発現する細胞を標識するために使用され得る。さらに、細胞周期状態が、新規に合成されたDNAを標識するためのブロモデオキシウリジン(BrdU)と組み合わせられた現存のDNAを標識するためのHoechst33342色素の使用によって評価され得る。
【0023】
非標的細胞から標的細胞を区別する能力にさらにより大きな柔軟性を提供するため、2つまたはそれより多い標識(それぞれが異なる蛍光色素を持つ)の組合せが使用され得る。例えば、フィコエリトリン(PE)で標識された抗体とTexas Red(登録商標)で標識された別の抗体とが、抗体により認識される抗原の1つ、両方を発現するか、またはいずれも発現しない標的細胞を同定するために使用され得る。細胞はまた、処理される検体中の他の細胞と比較した存在および非存在の標識の組合せに従って同定され得る。当業者は、様々な多色標識アプローチを使用して、細胞の複合混合物内の特定の細胞亜集団を同定し得る。
【0024】
細胞はまた、内因性または外因性のレポーター遺伝子の発現に基づいて標的化され得る。細胞の標識に有用なレポーター遺伝子として、グリーン蛍光タンパク質(GFP)およびその誘導体、β−ガラクトシダーゼ、およびルシフェラーゼが挙げられる。さらに、細胞は、ポリヒスチジンタグ(Qiagen;Chatsworth,CA)などの組換え融合レポーターポリペプチド、フラッグペプチド(Sigma;St Louis,MO)などの抗体エピトープ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(Amersham Pharmacia;Piscataway,NJ)、セルロース結合ドメイン(Novagen;Madison,WI)、カルモジュリン(Stratagene;San Diego,CA)、ブドウ球菌プロテインA(Pharmacia;Uppsala,Sweden)、マルトース結合タンパク質(New England BioLabs;Beverley,MA)、またはstrep−タグ(Genosys;Woodlands,TX)の存在または非存在に従って検出され得る。上記のもののようなレポーター遺伝子は、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Press,Plainview,New York(1989);Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Press,Plainview,New York(2001);Ausubel et al.(Current Protocols in Molecular Biology(Supplement 47),John Wiley & Sons,New York(1999))に記載されるような公知の方法を使用して、構築および検出され得る。
【0025】
第一集団の細胞について利用可能な特異的標識がない場合、この方法は、非標的集団の細胞について特異的標識を利用することにより逆のやり方で実行され得ることが、注記されなければならない。例えば、造血細胞集団において、混合物内の他の細胞を標識しないで原始造血細胞のみを標識するために、CD34またはACC−133細胞マーカーが使用され得る。この実施形態において、第一の集団の細胞は、標識の非存在により同定され、それによりエネルギービームの標的となる。
【0026】
以下のように、検体は画像化され、検体中の標的細胞の三次元座標が決定され得る。検体内の異なる深度で生じる検体の焦点平面領域は、観測されて、検体の断面画像を生成するために使用され得る。以下でより詳細に記載されるように、粒子は、選択された焦点断面画像において同定および位置決めされ得る。あるいは、検体の三次元画像は、隣接する断面画像をアレンジすることにより再構築され得る。標的細胞は、上記の際だった特徴に従って、三次元画像において同定され得、その検体における相対的な配置が三次元の座標の組により同定される。次いで、処理電磁放射ビームの照準を標的細胞に合わせるために標的細胞の座標が使用され得る。
【0027】
第一の集団の細胞が同定された後、処理電磁放射ビーム(例えば、レーザー、平行または集束非のレーザー光、RFエネルギー、加速粒子、集束超音波エネルギー、電子ビーム、または他の放射線ビームからの)が、第二集団の細胞に実質的に影響を及ぼさずに、第一集団の細胞の少なくとも1つに所定の応答を誘導する標的用量のエネルギーを送達するために使用される。応答は、致命的または非致命的であり得る。本発明の方法において電磁的に誘導され得る応答の例として、生存度、膜完全性、細胞周期段階、遺伝子発現レベル、細胞内pH、細胞内組成物、細胞下もしくは細胞質ゾルのイオン濃度、または発生段階、および以下にさらに詳細に記載されるようなものなどの変化が挙げられる。
【0028】
電磁的に誘導され得る別の応答は、光退色である。光退色において、本方法が開始される前に、色素の形態の標識(例えば、ローダミン123、GFP、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、またはフィコエリトリン)が検体に添加される。細胞の集団が色素と相互作用する時間を持った後、エネルギービームが使用されて、集団中の個々の細胞の領域が脱色される。そのような光退色研究は、細胞構成成分の運動性、補充、および動態、ならびにプロセスなどを研究するために使用され得る。
【0029】
別の応答は、内部分子アンケージングである。そのようなプロセスにおいて、検体は、本方法の開始前にケージ化分子と組み合わせられる。そのようなケージ化分子として、L−アスパラギン酸のβ−2,6−ジニトロベンジルエステルまたは8−ヒドロキシルピレン−1,3,6−トリススルホン酸の1−(2−ニトロフェニル)エチルエーテルが挙げられる。同様に、ケージング基(アルファカルボキシル−2−ニトロベンジル(CNB)および5−カルボキシルメトキシ−2−ニトロベンジル(CMNB)を含む)が、エーテル、チオエーテル、エステル、アミン、または類似した官能基のような生物活性分子に結合され得る。用語「内部分子アンケージング」は、分子アンケージングが細胞表面または細胞内で行われるという事実を示す。そのようなアンケージング実験は、細胞膜透過性および細胞性シグナル伝達などの迅速な分子プロセスを研究する。
【0030】
さらに別の応答は、外部分子アンケージングである。これは、内部分子ケーングとほぼ同じプロセスを使用する。しかしながら、外部分子アンケージングにおいて、アンケージ化分子は標的細胞に付着しないか、またはその中に組み込まれない。代わりに、ケージ化およびアンケージ化改変体分子に対する、周囲の標的細胞の応答が、本装置および本方法により画像化される。
【0031】
上記のように、複数の細胞亜集団が、特異的標識および照明源の適切な使用で同定され得る。さらに、複数の細胞応答が、処理レーザーおよび生物検体に添加される処理物質の適切な使用で誘導され得る。拡大すれば、平行して異なる細胞亜集団(すなわち、異なる応答を誘導するため)を同時同定および処理することが可能である。例えば、1つの細胞亜集団が同定されて、壊死を誘導するための標的となり得るが、同じ検体中の別の細胞亜集団はオプトポレーション(optoporation)のための標的となり得る。プロセスが行われる際、両細胞亜集団は、コンピューターの制御下で、適切な様式で処理される。
【0032】
比色(colorometric)色素の使用に加えて、本発明の実施形態はまた、複数の色を画像化するカメラを含む。例えば、1つの実施形態において、細胞の集団のカラー画像を取り込むためにカラーCCDカメラが使用される。異なる細胞は、異なる着色化合物により標的化されるので、色に基づいて、混合集団中の様々な細胞型を区別する画像が収集され得る。例えば、癌細胞の同定は、2種の異なる着色化合物へのその結合により確認され得る。次いで、これらの2色を検出するカメラは、系が単一の同定用化合物にのみ依存する場合よりも確実に癌細胞の同定を確認し得る。
【0033】
本発明はさらに、検体中の所定の粒子に電磁的に影響を及ぼす装置を提供する。本装置は、(a)検体を支持する能力のある試料台;(b)少なくとも1つのカメラを含む検出器であって、検出器は検体内の所定の粒子を解像する能力がある検出器、(c)所定の粒子を三次元中に位置決めする手段;(d)検体内の焦点体積に電磁放射の焦点を合わせる手段、および(e)試料台および電磁放射焦点合わせ手段の相対的な位置を調節し、それにより焦点体積内の所定の粒子の位置決めを行う手段を含む。
【0034】
図1は、細胞処理装置10の1つの実施形態の例示である。細胞処理装置10は、装置の内部コンポーネントを格納する筐体15を備える。筐体は、使用者の安全性を確実にするためにレーザーセーフティインターロックを含み、また、外部影響(例えば、周囲光、ほこりなど)による干渉を制限する。筐体15の上部には、処理の間、三次元環境の細胞集団の取り込み画像を表示するためのディスプレイユニット20が位置する。これらの画像は、以下により詳細に記載されるように、カメラアレイにより取り込まれる。キーボード25およびマウス30は、データを入力し、装置を制御するために使用される。アクセスドア35は、処理されている細胞の検体容器を保持する、可動試料台へのアクセスを提供する。
【0035】
装置10の内部図は図2に提供される。図示されるように、装置10は装置の内部コンポーネントを保持する上部トレイ200および下部トレイ210を提供する。上部トレイ200は、装置10の内部へ吸引される周囲空気を濾過する1対の吸い込みフィルター215AおよびBを備える。アクセスドア35の下には、上部トレイ200に取り付けられた光学サブアセンブリがあり、これは図3〜10に関して以下でより詳細に議論される。
【0036】
下部トレイ210の上に、装置10を稼働させる、ソフトウェアプログラム、コマンド、および命令を格納するコンピューター225がある。さらに、コンピューター225は、細胞を処理するために、検体上の適切な点へレーザーを導くための制御信号を、電気信号接続を通して処理装置へ提供する。
【0037】
図示されるように、一連の電源230A、B、およびCは、装置10内の様々な電気コンポーネントに電力を提供する。さらに、短い外部停電の間装置が機能し続けることを可能にするため、無停電電源235が組み込まれ得る。
【0038】
図3は、細胞処理装置10の実施形態のための光学サブアセンブリ設計300の1つの実施形態のレイアウトを提供する。図示されるように、照射レーザー305は、検体内の標的細胞に付着した特定の標識を励起させるために使用される有向レーザー出力を提供する。この実施形態において、照射レーザーは特定の標識を光学的に励起させるために、532nmの波長で光を放つ。もちろん、他の波長の光を照射するレーザーもまた、系中に使用され得る。いったん照射レーザーが光線を生成すると、光はシャッター310(これはレーザー光のパルス長を制御する)中を通過する。
【0039】
照射レーザー光はシャッター310を通過した後、ボールレンズ315に入り、ボールレンズ315ではSMA光ファイバーコネクター320中に照射レーザー光の焦点が合わせられる。照射レーザービームは、光ファイバーコネクター320に入った後、光ファイバーケーブル325を通して出口330へ伝送される。照射ビームを光ファイバーケーブル325に通すことにより、照射レーザー305は処理装置内の任意の場所へ配置され得、したがって光学コンポーネントへの直接光路内にのみ配置されるように制限されない。1つの実施形態において、光ファイバーケーブル325は、モードスクランブルおよびより均一な照射点を生成するために、振動モーター327に接続される。
【0040】
光は、出口330を通過した後、ビームを細胞の1フレームに照射するのに適した直径に集束させるために、一連のコンデンサレンズに向けられる。本明細書中で使用されるとおり、細胞の1フレームは、単一のカメラにより取り込まれる1枚の画像内に取り込まれた生物検体の一部分として定義される。このことは、以下でより詳細に記載される。
【0041】
したがって、照射レーザービームは第一のコンデンサレンズ335を通過する。1つの実施形態において、この第一のレンズは4.6mmの焦点距離を有する。次いで、光線は第二のコンデンサレンズ340(これは、1つの実施形態において、100mmの焦点距離を提供する)を通過する。最後に、光線は第三のコンデンサレンズ345(これは200mmの焦点距離を提供する)を通過する。本発明は、特定のコンデンサレンズを使用して記載されているが、照射レーザービームを有利な直径に集束させる他の同様なレンズ構成が同様に機能することが、明らかなはずである。したがって、本発明はいかなる特定のコンデンサレンズ系の特定の実施にも制限されない。
【0042】
照射レーザービームは、いったん第三のコンデンサレンズ345を通過すると、照射レーザーから発せられる532nm波長の光を伝送するキューブビームスプリッタ350に入る。好ましくは、キューブビームスプリッタ350は25.4mm角の立方体である(Melles−Griot,Irvine,CA)。しかしながら、他の大きさが同様に機能すると予想される。さらに、他の実施形態に合うように、多数のプレートビームスプリッタまたは薄膜ビームスプリッタが、キューブビームスプリッタ350の代わりに使用され得る。当業者は、使用される特定の標識、ならびに照射レーザーおよび伝送レーザーの波長に従って、様々な異なる伝送波長を有するビームスプリッタを使用し得る。
【0043】
照射レーザー光は、いったんキューブビームスプリッタ350を通して伝送されると、長波通過ミラー355に到達し、長波通過ミラー355は532nm照射レーザー光を1組のガルバノメーターミラー360に反射し、ガルバノメーターミラー360は、照射レーザー光を、コンピューターの制御下で、走査レンズ(Special Optics,Wharton,NJ)365を通して検体へ導く。ガルバノメーターミラーは、画像化されるべき細胞のフレームにおける三次元の細胞集団の適当な部分に照射レーザー光が向けられるように制御される。本発明のこの実施形態において記載される走査レンズは、屈折レンズを含む。本発明において使用される用語「走査レンズ」は、単独で、または組み合わせて使用される1つまたはそれより多い屈折性または反射性光学要素の系を含むが、これらに限定されないことが注記されなければならない。さらに、走査レンズは、1つまたはそれより多い屈折性および/または反射性光学要素と組み合わせて使用される1つまたはそれより多い回折要素の系を含み得る。当業者には、適当な細胞集団を照射するための、走査レンズ系の設計の仕方は既知である。
【0044】
照射レーザーからの光は、検体に照射するのに有用である波長のものである。この実施形態において、連続波532nm Nd:YAG二重周波数(frequency−doubled)レーザー(B&W Tek,Newark,DE)からのエネルギーは、長波通過ミラー(Custom Scientific,Phoenix,AZ)355に反射し、検体中の蛍光標識を励起させる。1つの実施形態において、蛍光タグはフィコエリトリン(PE)である。あるいは、本発明のこの実施形態において、Alexa532(Molecular Probes,Eugene,OR)が蛍光タグとして使用され得る。フィコエリトリンおよびAlexa532は、580nm付近にピークを持つ発光スペクトルを有するので、検体から発せられた蛍光は長波通過ミラーを介してカメラアレイへ伝送される。カメラアレイの前面におけるフィルターの使用は、所定の波長範囲内にない光を遮断し、それによりカメラアレイに入る背景光の量を減少させる。当業者は、使用される標識の励起波長、励起および発光スペクトル、ならびに長波通過フィルター355の光学的性質に基づいて、適切なフィルターを選択することができる。
【0045】
532nm照射レーザーにはさらに、異なる波長でエネルギーを放出する複数の蛍光色素を励起させる能力がある。例えば、PE、Texas Red(登録商標)、およびCyChromeTMは、全て532nmレーザーにより効果的に励起され得る。しかしながら、それらはそれぞれ576nm、620nm、および670nmがピークのスペクトルを持つエネルギーを放出する。伝送される波長におけるこの差異は、各蛍光色素からの信号が他の信号と区別されることを可能にする。この場合、フィルター460により伝送される波長の範囲は拡張される。さらに、異なる信号がコンピューターにより区別されるように、放射光を取り込むためにカメラアレイが使用される。あるいは、放射光は、3台の単色カメラ(それぞれが特定の蛍光色素の発光波長の1つの選択的観測のためのフィルターを有する)に向けられ得る。様々な異なる励起および発光スペクトルを有する蛍光色素が、単一の検体からの複数の信号の検出および差別化を可能にするために、適切なフィルターおよび照射源とともに使用され得る。当業者は、光学コンポーネントに対する既知の照射および検出波長を考慮して、蛍光色素の励起および発光スペクトルの比較により、特定の組の光学コンポーネントにより差別化され得る蛍光色素を選択することができる。
【0046】
さらに別の実施形態は、単一の固定フィルター460を可動フィルターカセットまたは異なるフィルターを提供するホイール(これらは光路内外へ動かされる)で置き換えることを含む。そのような実施形態において、異なる波長の光の蛍光画像が、細胞処理の間異なる時間で取り込まれる。次いで、画像はコンピューターにより解析および相互に相関され、各細胞標的または全体としての細胞集団について多色の情報を提供する。
【0047】
多くの他のデバイスが検体を照射するためにこのように使用され得、アーク灯または石英ハロゲンランプなどのランプを含むが、これらに限定されないことが、一般に既知である。本発明において有用なアーク灯の例として、水銀灯またはキセノンアーク灯が挙げられる。当業者には、適当なランプが、様々な因子(スペクトルにわたる平均放射輝度、スペクトルの特定領域における放射輝度、スペクトル線の存在、スペクトル線での放射輝度、またはアークサイズを含む)に基づいて選択され得ることが既知である。発光ダイオード(LED)または上記のNd:YAG二重周波数レーザー以外のレーザーもまた、本発明において使用され得る。それ故、本発明は、アルゴンイオンもしくはクリプトンイオンレーザーなどのイオンレーザー、ヘリウムネオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、ローダミン6Gレーザーなどの色素レーザー、YAGレーザー、またはダイオードレーザーを含み得る。当業者は、上記またはShapiro,Practical flow cytometry,第3版.Wiley−Liss,New York(1995)に記載されるものなどの望ましい性質に従って、適切なレーザーまたはランプを選択し得る。
【0048】
上記のNd:YAG二重周波数レーザーの利点として、高強度、比較的効率的なエネルギー使用、小型のサイズ、および発熱が少ないことが挙げられる。異なる励起および発光スペクトルを持つ他の蛍光色素が、照射源、フィルター、ならびに長および/または短波通過ミラーを適切に選択した、そのような装置で使用され得るということもまた一般に既知である。例えば、Texas Red(登録商標)、アロフィコシアニン(APC)、およびPharRedTMは全て、633nm HeNe照射レーザーで励起され得るが、フルオロイソチオシアネート(FITC)、PE、およびCyChromeTMは全て、488nmアルゴン照射レーザーで励起され得る。当業者は、細胞が複数の波長の蛍光エネルギーを返すように、それらに照射する目的で、本発明の様々なコンポーネントを用いた多くの他の光学的レイアウトを利用し得る。上記の照射源は、単独で、または単一の機器内で広範な照射波長を提供するために他の源と組み合わせて使用され得、それにより多くの区別可能な標識の同時使用を可能にする。
【0049】
本発明は、検体を任意の波長または100ナノメートル〜30マイクロメートルの波長範囲(約200〜390nmの範囲に生じる紫外(UV)、約390〜770nmの範囲に生じる可視(VIS)、および約0.77〜25マイクロメートルの範囲の赤外(IR)を含む)で照射するように構成され得る。特定の波長または波長範囲は、上記で記載されるような特定の出力範囲を有する放射線源から生成され得る。同じく上記で例示されたように、適切な光学フィルターが、波長に基づき放射を選択的に通過、反射、または遮断するように選択され得る。本発明において有用な光学フィルターは、誘電体の複数の層が、様々な層からの反射間の強めあう干渉または弱めあう干渉に従って放射を通過または反射させる干渉フィルターを含む。干渉フィルターはまた、当該技術分野でダイクロイックフィルターまたは誘電体フィルターとも称される。同じく本発明において有用であるのは、選択波長または波長範囲を有する放射の通過を吸収により阻止する吸収フィルターである。吸収フィルターは、着色ガラスまたは液体を含む。
【0050】
本発明において使用されるフィルターは、1つまたはそれより多い特定のフィルター伝送特性(バンドパス、ショートパス、およびロングパスを含む)を有し得る。バンドパスフィルターは、最大放射伝送(Tmax)の中央波長および帯域幅により定義される波長範囲の放射線を選択的に通過させ、この範囲外の放射線の通過を遮断する。Tmaxは、中央波長で伝送される放射線の割合を定義する。帯域幅は、典型的には、Tmaxの半分である伝送値でフィルターを通過する波長の範囲である半値幅(FWHM)として記載される。本発明において有用なバンドパスフィルターは、10ナノメートル(nm)、20nm、30nm、40nm、または50nmのFWHMを有し得る。ロングパスフィルターは、Tmaxおよびカットオン波長により定義されるように、より高波長の放射線を選択的に通過させる。カットオン波長は、放射伝送がTmaxの半分である波長であり、波長がカットオン波長よりも増加すると伝送割合も増加し、かつ波長がカットオン波長よりも減少すると伝送割合も減少する。ショートパスフィルターは、Tmaxおよびカットオフ波長により規定されるように、より低波長の放射線を選択的に通過させる。カットオフ波長は、放射伝送がTmaxの半分である波長であり、波長がカットオフ波長よりも増加すると伝送割合が減少し、かつ波長がカットオフ波長よりも減少すると伝送割合が増加する。本発明のフィルターは、50〜100%、60〜90%、または70〜80%のTmaxを有し得る。
【0051】
照射レーザー305に加えて、いったん標的細胞が検出器により同定されるとそれに照射するための処理レーザー400が存在する。1つの実施形態において、処理レーザーからの放射ビームは、細胞集団内の標的細胞の壊死を誘導する。示されるとおり、処理レーザー400は、シャッター410を通過する523nmのエネルギービームを出力する。本明細書で記載される実施形態において、例示のレーザーは523nm波長を有するエネルギービームを出力するが、他の電磁放射源(照射源に関して上記で記載されたものなど)もまた、本発明の範囲内にあり得、標的粒子において望まれる特定の応答に従って選択され得る。
【0052】
処理レーザーエネルギービームは、いったんシャッター410を通過すると、エネルギービームの直径を検体の平面で適切な大きさに調整するビームエキスパンダー(Special Optics,Wharton,NJ)415に入る。ビームエキスパンダー415に続くのは、ビームの偏光を制御する半波長板420である。次いで、処理レーザーエネルギービームは褶曲ミラー425に反射して、キューブビームスプリッタ350に入る。処理レーザーエネルギービームは、照射レーザー光ビームの出口経路と一致するように、キューブビームスプリッタ350内で90°反射される。それ故、処理レーザーエネルギービームと照射レーザー光ビームとの両方が、同じ光路に沿ってキューブビームスプリッタ350を出る。処理レーザービームは、キューブビームスプリッタ350から、長波通過ミラー355に反射して、ガルバノメーター360により導かれ、その後三次元の検体内の焦点体積に処理電磁放射ビームの焦点を合わせる走査レンズ365に入る。焦点体積は、焦点体積内の細胞を殺すのに十分な量の電磁放射エネルギーを受ける。しかしながら、焦点体積を取り囲むエンベロープ中の細胞は、実質的に、処理レーザーからの放射により影響を及ぼされない。それ故、焦点体積を取り囲むエンベロープ中の細胞は処理レーザーにより殺されない。しかしながら、焦点体積は、焦点体積内に少なくとも一部分を有する所定の粒子が本発明の方法および装置において実質的に電磁的に影響を及ぼされ得るように、所定の粒子を完全に包含する必要はない。
【0053】
照射レーザー光ビームのわずかな部分が長波通過ミラー355を通過してパワーメーターセンサー(Gentec,Palo Alto,CA)445に入ることが注記されなければならない。パワーセンサー445に入るビームの部分は、照射レーザー305から発せられるパワーのレベルを計算するために使用される。類似した様式で、処理レーザーエネルギービームのわずかな部分がキューブビームスプリッタ350を通過して第二のパワーメーターセンサー(Gentec,Palo Alto,CA)446に入る。パワーセンサー446に入るビームの部分は、処理レーザー400から発せられるパワーのレベルを計算するために使用される。パワーメーターセンサーは、コンピューターシステム内の命令/コマンドがパワー測定を取り込んで処理レーザーから発せられるエネルギー量を決定するように、コンピューターシステムに電気的に接続されている。それ故、このシステムは、各レーザーのパワーを特定の用途に合うように変更するためのフィードバック制御を提供する。
【0054】
処理レーザーからのエネルギービームは、細胞の応答を達成するために有用である波長のものである。現在記載される実施形態において、放射線源は細胞を殺すのに十分なエネルギーを有する焦点体積を生成する。より詳細には、標的細胞が死に誘導されるように、標的細胞を含む流体の局所体積を加熱するために、パルス523nmのNd:YLF二重周波数レーザーが使用される。細胞死の速度および効率は、Niemz,Laser−tissue interactions:Fundamentals and applications,Springer−Verlag,Berlin 1996に記載されるように、細胞で実際に達した温度に依存する。簡単には、壊死の誘導は、タンパク質の変性および凝固により約60℃以上で生じる。さらに、約80℃以上に加熱すると細胞膜透過性の劇的な増加を引き起こし、さらに細胞に障害を与える。確実な壊死誘導のために必要とされる温度は、曝露期間で変化し、曝露期間が10分の1に減少するごとに約3.5℃上昇する。例えば、壊死は、約72℃で約1ミリ秒の曝露を受けて誘導され得るが、約94℃での曝露は、約1ナノ秒の曝露時間後に壊死を誘導する。それ故、処理電磁放射ビーム波長およびパワーは、数ミリ秒、数秒、またはさらには数分の間に細胞を殺すように選択され得る。
【0055】
Nd:YLF二重周波数、固相レーザー(Spectra−Physics,Mountain View,CA)が、その安定性、発射の高繰返し率、および保守不要で稼働する時間の長さを理由に使用される。しかしながら、大部分の細胞培養液および細胞は、この緑色波長において光に対して比較的透明であり、したがって細胞死を達成するために比較的高い流速量のエネルギーが使用される。処理レーザーからのエネルギーが効果的に吸収され、それにより検体を加熱するように、細胞培養に色素が添加されるかまたは存在している方法では、減少した量のエネルギーが、細胞死を誘導するために使用され得る。特異性はまた、検体中の標的粒子(細胞など)を色素で選択的に標識し、標識粒子に影響を及ぼすのに十分であるが非標識粒子に実質的に影響を及ぼすには弱すぎる低フルエンスの放射線を検体に照射することにより、達成され得る。示される実施例において、処理レーザーからの523nmのエネルギーを吸収するために、無毒性色素FD&C赤色40号(アルラレッド)が使用される。しかしながら、当業者は、検体による効果的なエネルギー吸収をもたらす他のレーザー/色素の組合せを同定し得る。例えば、633nmHeNeレーザーのエネルギーは、FD&C緑色3号(ファストグリーン FCF)により効果的に吸収される。あるいは、488nmアルゴンレーザーのエネルギーはFD&C黄色5号(サンセットイエロー FCF)により効果的に吸収され、1064run Nd:YAGレーザーエネルギーはFiltron(Gentex,Zeeland,MI)赤外吸収色素により効果的に吸収される。エネルギー吸収色素の使用を通して、細胞集団中の標的を殺すために必要とされるエネルギー量が減少され得る。なぜなら、そのような色素の存在でより多くの処理レーザーエネルギーが吸収されるからである。
【0056】
細胞を殺す別の方法は、処理レーザーから発せられる放射の波長を調整することである。処理レーザーから発せられる放射の波長は、照射レーザーに関して上記されたものを含む様々な波長または波長範囲のいずれかであり得る。当業者は、本発明の装置に処理レーザーとして利用可能なさまざまなレーザー(照射レーザーに関して上記されたものなど)を使用することができる。例えば、死滅は紫外レーザーの使用により達成され得る。355nm Nd:YAG三重周波数(frequency−tripled)レーザーからのエネルギーは細胞内の核酸およびタンパク質により吸収されて、細胞死をもたらす。別の実施形態において、細胞の死滅は、近赤外レーザー使用で達成され得る。2100nm Ho:YAGレーザーまたは2940run Er:YAGレーザーからのエネルギーは、細胞内の水により吸収されて、細胞死をもたらす。他の電磁放射源が、焦点体積の粒子または細胞に電磁的に影響を及ぼすための処理電磁放射ビームを生成するために、単独で、または上記のものなどの光学フィルターと組み合わせて使用され得る。
【0057】
この実施形態はエネルギービームによる細胞の死滅を記載するが、当業者は、他の応答(Niemz,前出により概説されるように、光機械的崩壊(photomechanical disruption)、光解離、光切除(photoablation)、および光化学反応を含む)もまたエネルギービームにより細胞に誘導され得ることを認識するだろう。例えば、Oleinick and Evans,「光力学的治療の光生物学:細胞標的および機構(The photobiology of photodynamic therapy:Cellular targets and mechanisms)」,Rad.Res.150:S146−S156(1998)に記載されるように、十分な量のエネルギーが、焦点体積に供給されて、ヘマトポルフィリン誘導体、スズ−エチオプルプリンまたはルテチウムテキサフィリンなどの感光性物質光力学的治療剤を特に活性化し得る。さらに、小さな一過性細孔が細胞膜で形成され(Palumboら,「色素支援レーザーオプトポレーションによる真核生物細胞における標的化遺伝子移入(Targeted gene transfer in eukaryotic cells by dye−assisted laser optoporation)」,J.Photochem.Photobiol.36:41−46(1996))、遺伝的または他の材料が入ることを可能にし得る。この細胞透過性化応答は、少なくとも2つの潜在的機構を通して達成され得る。第一は、衝撃波を誘導するための細胞および周囲の媒質に向けられたレーザーを使用し、それにより近隣の細胞表面に一時的な小孔の形成をもたらし、材料が非特異的に同部位の細胞に入ることを可能にする、オプトポレーションである。第二は、特定の細胞に向けられたレーザーを使用して、それらの標的化される細胞の膜に細孔を選択的に形成する、オプトインジェクション(optoinjection)である。さらに、細胞内または細胞上の特定の分子(タンパク質または遺伝材料など)が、指向性エネルギービームにより不活性化され得る(Grate and Wilson,「RNA転写物のレーザー媒介部位特異的不活性化(Laser−mediated,site−specific inactivation of RNA transcripts)」,PNAS 96:6131−6136(1999);Jay,D.G.,「発色団支援レーザー不活性化によるタンパク質機能の選択的破壊(Selective destruction of protein function by chromophore−assisted laser inactivation)」,PNAS 85:5454−5458(1988))。同じく、光退色が、膜におけるタンパク質拡散などの細胞内移動および分裂中の微小管移動を測定するために使用され得る(Ladhaら,J.Cell Sci.,110(9):1041(1997);Centonze and Borisy,J.Cell Sci.100(part 1):205(1991);White and Stelzer,Trends Cell Biol.9(2):61−5(1999);Meyvisら,Pharm.Res.16(8):1153−62(1999))。さらに、ケージ化化合物の光分解またはアンケージング(多光子放出を含む)が、所定の生物活性産物または他の産物の放出を、時間および空間分解能を持って、制御するために利用され得る(Theriot and Mitchison,J.Cell Biol.119:367(1992);Denk,PNAS 91(14):6629(1994))。特定の標的細胞に向けられた電磁放射の使用を介した、標的細胞に対する応答を誘導するこれらの機構もまた、本発明に組み込まれることを意図する。
【0058】
本発明の装置は、上記のように1つまたはそれより多い処理電磁放射ビームを含み得る。例えば、複数の電磁放射ビームが、1つまたはそれより多い、ランプまたはレーザーなどの電磁放射線源(これは分割されて複数の経路に向け直される)から発生し得る。経路は、単一の焦点体積または複数の焦点体積で終点となり得る。各経路は、所望であれば、異なる波長または強度の処理電磁放射ビームを生成するための異なる光学コンポーネントを通過し得る。代替的に、または加えて、複数の処理レーザーが本発明の装置に使用され得る。
【0059】
電磁放射ビームが検体内の焦点体積で交差するように、1つより多いレーザーが検体に向けられ得る。電磁放射ビームが交差する焦点体積は、焦点体積を取り囲むエンベロープ内の他の領域よりも高い強度の放射を受ける。検体を交差する電磁放射ビームの強度および数は、個別には焦点体積外の粒子に実質的に電磁的に影響を及ぼすことのできない量のエネルギーを生成しながら、焦点体積中の粒子に電磁的に影響を及ぼすのに十分な総エネルギーを生成するように選択され得る。検体の焦点体積と交差する2つまたはそれより多い処理電磁放射ビームは、異なる波長を有し得、かつ特定の電磁効果または電磁効果の組合せを望みどおりに誘導するように焦点体積を同時にまたは順次照射し得る。電磁放射ビームの波長および強度は、先に記載された範囲内から選択され得る。
【0060】
照射レーザー305および処理レーザー400に加えて、本装置は、階段状のZレベル(Zレベルはまた、本明細書中、被写界深度としても示される)で画像または細胞集団のフレームを取り込むカメラ450A、450B、450C、および450Dのアレイを有する検出器を含む。カメラアレイは、互いに関して垂直にずれた視界を有する複数のカメラを含み、これはアレイが検体内の様々なZレベル、または深度で細胞画像を取り込むことを可能にする。図3に図示されるように、各カメラ450A、450B、450C、450D、および450Eは、それぞれレンズ455A、455B、455C、455D、および455Eを通して、それぞれビームスプリッタ457A、457B、457C、および457Dにより反射された光を取り込むように焦点が合わせられている。ビームスプリッタ457A、457B、457C、および457Dに到達する前に、検体からの光はフィルター460を通過して、他の波長で生じる散在背景光を取り込むことなく、所望の波長で細胞の精密な画像化を可能にする。ストップ462は、望ましくない光が検体からの画像を伴わない角度からカメラアレイに入ることを防ぐために、フィルター460とミラー355との間に配置される。フィルター460は、特定の波長範囲内の光を選択的に通すために選択される。伝送される光の波長範囲は、照射レーザー305による励起に際して標的細胞から発せられる波長、ならびに背面光源475からの波長を含む。フィルター460は、照射レーザーの波長領域にある光の通過を選択的に阻止する。そうでなければ、これは検出器を飽和させるか、または蛍光信号を検出不可にする。
【0061】
背面光源475は、検体600の上に位置して、照射レーザー305により提供されるものと異なる波長で検体の背面照明を提供する。本明細書で記載される実施形態において、背面光源は、それが長波通過ミラーを通ってカメラアレイに向けられるように伝送され得るように、590nmで光を発するLEDである。この背面照明は、画像化されるフレーム中に蛍光標的が存在するかどうかにかかわらず、細胞を画像化するために有用である。背面光は、染色されていない、非蛍光の細胞のみがフレーム中に存在する場合であっても、系の適切な焦点を獲得するために使用され得る。1つの実施形態において、背面光は、アクセスドア35の下側に取り付けられる(図2)。それ故、本装置は、適切な背面光、照射レーザー、および所望の波長の照射をカメラアレイへ選択的に通過させるための光学フィルターで構成され得る。他の波長の光は、フィルター460を通過することを阻止されてカメラアレイ450により記録される。
【0062】
現在記載される実施形態において、検出器が、複数の電荷結合素子(CCD)を有するカメラアレイを含むことが注記されるべきである。カメラは、異なる焦点平面領域を視界とするために置くことができ、視界とされる焦点平面領域のそれぞれは検体の異なる断面画像である。検出器は、処理するためにコンピューターシステムに断面画像を伝送して戻し得る。以下に記載されるように、コンピューターシステムは検体標的細胞の座標を、CCDカメラアレイにより取り込まれた1つまたはそれより多い断面画像を参照して決定する。
【0063】
図4〜図6を全体的に参照して、CCDカメラアレイの使用が図示される。図示されるように、CCDカメラの視界は実質的に平行であり、各CCDカメラは異なる焦点距離を視界としている。各カメラをアレイ内で垂直にずらして配置することにより、またはカメラと検体との間に焦点合わせ光学素子を置くことにより、異なる焦点平面が、カメラにより見られ得る。そのような配置を使用して、検体中の異なる被写界深度で観測された焦点平面領域内の細胞の焦点の合った画像を取り込むことが可能になる。図5に図示されるように、各被写界深度で観測された焦点平面領域は、切断面600A〜600Eで示されるように、断面画像として取り込まれ、次いで図7の三次元画像プロセッサ225Aにより組み立てられて、検体の三次元の体積画像を作製し得る。次いで、この画像は、検体の体積内の適切な位置に処理レーザーを向ける目的で、3つの座標を決定するために使用される。
【0064】
本装置は、光学デバイスの構造に従って、様々な被写界深度で断面画像を作製し得る。当業者は、浅い被写界深度(100μm未満の深度を含む)で画像化するための検出器を構成することができる。検体の大きさに応じて、被写界深度は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、または100μmから選択され得る。より大きな検体について、より大きな被写界深度さえも、より深い画像化のために用いられ得る。
【0065】
本発明の装置は、異なる分解能または倍率で検体の画像を取り込むように構成され得る。これは、1つまたはそれより多いカメラの前にあるレンズ455の性質を変更することにより達成され得る。倍率または分解能が迅速に変更され得るように、異なるレンズを含むタレット、カセット、またはホイールが、カメラと検体との間に置かれ得る。タレット、カセット、またはホイールは、検体処理手順の過程で、または検体処理手順の間に分解能または倍率を手動または自動変更するために、位置決めデバイスに機能的に取り付けられ得る。
【0066】
装置に使用される検出器はまた、方向の異なる視界で検体を画像化する能力のある2つまたはそれより多いカメラを含み得る。方向の異なる視界での画像化は、ステレオ画像化とも呼ばれ、検体の画像を再構築するために使用され得る。2つまたはそれより多いカメラは、それらの種々の方向の視界が1°〜180°から選択される角度で離れている場合に、検体をステレオ画像化し得る。本発明は、1°、2°、5°、10°、15°、20°、25°、30°、35°、40°、45°、50°、90°、または180°未満で離れた、異なる方向の視界を有するカメラを含むことができ、ここで1°はそれが円周の1/360に範囲を定めた角度である数学的用法と一致して使用されることを意図する。
【0067】
本発明において使用される検出器は、比較的浅い焦点平面領域を視界とする1つまたはそれより多いカメラを含むことができ、ここで焦点平面領域は検体の異なる切断面に焦点変更し得る。検体を異なる被写界深度で観測するために特定のカメラの視界が焦点変更され、それにより検体の異なる断面画像を得ることができる。そのような焦点変更は、カメラを移動させることにより達成され得る。検出器の他の下部慣性コンポーネントは、好ましくは、焦点変更を達成するために動かされ、カメラと検体の光学経路の間に置かれるレンズまたはミラーを含む。調整されるべきコンポーネントは、手動または自動焦点変更のための位置決めデバイスに操作可能に取り付けられ得る。自動焦点合わせは、以下で記載されるもののような画像化処理デバイスと通信する能力のある、自動位置決めデバイスの組み込みにより達成され得る。
【0068】
検体またはその中の粒子から向けられた放射を、検体中の粒子の存在または量を決定するために引き続き操作または記憶され得る信号に変換する能力のある任意の検出器が、本発明の装置または方法に使用され得る。検出器は、光ダイオード、光電子倍増管、または電荷結合素子を含み得る。検出器はまた、検体またはその中の粒子から向けられた放射線を、検体の三次元表示に変換され得る信号の組に変換する画像化デバイスを含み得る。そのような画像化デバイスは、CCDカメラ、デジタルカメラ、フィルムカメラ、または写真用カメラなどのようなカメラを含み得る。当業者は、様々な周知の要因(例えば、使用される放射線源との適合性、感受性、検出のスペクトル範囲、およびデータ処理デバイスとの互換性が挙げられる)に基づいて検出器を選択し得る。
【0069】
ここで図8を参照して、光学サブアセンブリの実施形態の斜視図が図示される。図示されるように、照射レーザー305は、光線を、シャッター310およびボールレンズ315を通してSMA光ファイバーコネクター320へ送る。光は、光ファイバーケーブル325および出力330を通過して、コンデンサレンズ335、340、および345中へ入る。次いで、光はキューブビームスプリッタ350に入って長波通過ミラー355に伝送される。長波通過ミラー355から、光線は、コンピューター制御されたガルバノメーター360に入り、次いで走査レンズ365を通して検体中の細胞の適切なフレームに案内される。
【0070】
また図8の斜視図に図示されるように、処理レーザー400はシャッター410を通してビームエキスパンダー415中へエネルギーを伝送する。処理レーザー400からのエネルギーは、ビームエキスパンダー415を通過し、半波長板420を通過してから、褶曲ミラー425に当たり、続いてキューブビームスプリッタ350に入り、ここでエネルギーは90°で長波通過ミラー355へ反射され、ここからエネルギーはコンピューター制御されたガルバノメーターミラー360中へ反射される。ガルバノメーターミラー360は、ビームが検体の一部分(特定の標的細胞が位置する)に当たるように、処理レーザービームが走査レンズ365を通るよう導くように調整され得る。したがって、所望の応答が、本発明の装置を使用して標的細胞に選択的に誘導され得る。
【0071】
検体の非常に大きな表面領域を処理に適応させる目的で、本装置は走査レンズに関して検体容器を機械的に動かす可動試料台を含む。それ故、いったん走査レンズの視野内の特定の細胞亜集団が処理されると、可動試料台は走査レンズの視野内の別の細胞亜集団を持ってくる。図11に図示されるように、コンピューター制御された可動試料台500は、処理されるべき検体600を含有する検体容器505を保持する。可動試料台500は、機器の光学コンポーネントに対して検体容器が動かされ得るように、コンピューター制御されたサーボモーターにより2本の軸に沿って動かされる。定められた経路に沿った試料台の動きは、装置の他の動作と連係している。さらに、特定の座標が、可動試料台の所定の位置への復帰を可能にするために保存され、かつ呼び戻され得る。xおよびy移動のエンコーダは、試料台位置の閉ループフィードバック制御を提供する。
【0072】
フラットフィールド(F−θ)走査レンズ365は、可動試料台の下に取り付けられ得る。走査レンズの視野は、可動試料台500により現在走査レンズの上方に配置されている検体の一部分を含む。レンズ365は、系に焦点を合わせる目的でレンズ365が自動的に上昇および下降させられる(z軸に沿って)ことを可能にするステップモーターに取り付けられ得る。
【0073】
図8〜図10に図示さるように、走査レンズ365の下には、2本の垂直な軸に沿って電磁エネルギーを屈折させる、ガルバノメーター制御されたステアリングミラー360がある。ステアリングミラーの背後には、545nm未満の波長の電磁エネルギーを反射する長波通過ミラー355がある。545nmより長い波長は、長波通過ミラーを通過し、フィルター460、カップリングレンズ455を通ってCCDカメラアレイ中に向けられ、それにより適当な大きさの画像をカメラアレイ450のCCDセンサーに作成する(図3および図4を参照)。走査レンズ365およびカップリングレンズ455の組合せにより定義される倍率は、各カメラによる1つのフレーム中の視界となる範囲を最大にしながら、単一の細胞を確実に検出するように選択され得る。この実施形態においてCCDカメラアレイ(DVC,Austin,TX)が図示されるものの、カメラは、上記のような、当業者に公知の任意の型の検出器または画像収集器材であり得る。装置の光学サブアセンブリは、図2および図9に図示されるように、好ましくは、動作中の安定性を提供するために、振動減衰プラットフォームに取り付けられる。
【0074】
ここで図11を参照して、可動試料台500の頂面図が図示される。示されるように、検体容器は、可動試料台500に着脱式に取り付けられ得る。検体容器505は、可動試料台500に対して前方および後方に動くように設計された上部軸ネストプレート510に置かれている。ステップモーターは、コンピューターからのコマンドが検体容器505の前方または後方への動きを指示するように、上部軸ネストプレート510およびコンピューターシステムに接続され得る。
【0075】
可動試料台500はまた、1対の軸受トラック525AおよびBに沿った可動試料台500の左右の動きを提供する、タイミングベルト515に接続されている。タイミングベルト515は、滑車カバー530の下に収納された滑車に取り付けられている。滑車は、タイミングベルト515を駆動して可動試料台500の左右の動きをもたらすステップモーター535に接続される。ステップモーター535は、コンピューターシステム内のコマンドが可動試料台500の左右の動きを制御するように、コンピューターシステムに電気的に接続されている。走行限界センサー540は、コンピューターシステムと接続していて、可動試料台が所定の側方距離を越えて走行した場合に警告を発する。
【0076】
装置の操作に干渉し得る任意の過度の衝突または振動を記録するために、好ましくは、1対の加速度計545AおよびBがこのプラットフォームに組み込まれる。さらに、検体容器が水平であることを確実にし、それにより検体容器中の重力により誘導される動きの可能性を減少させるために、好ましくは、2軸傾斜計550が可動試料台に組み込まれる。
【0077】
検体室は、検体容器上の結露を除去するための導管組織付きファン、および検体室が許容可能な温度範囲内にあるかどうかを測定するための熱電対を有する。電子コンポーネントにより発生する熱を放出するためのさらなるファンが提供され、適切なフィルターが吸気口215AおよびBに使用される(図2を参照)。
【0078】
コンピューターシステム225は、上記の電子ハードウェアの様々なコンポーネントの動作および同期を制御する。コンピューターシステムは、ハードウェアとインタフェースし得る任意の市販されているコンピューターであり得る。そのようなコンピューターシステムの1つの例は、Microsoft Windows(登録商標)2000オペレーティングシステムを作動させるIntel Pentium(登録商標)IVベースのコンピューターである。ソフトウェアは、様々なデバイスと通信するために、および動作を以下に記載されるような様式で制御するために使用される。
【0079】
装置がまず初期化されると、コンピューターは、装置の適切な初期化のために、ハードドライブからRAMへファイルをロードする。装置が適切に動作することを確実にするために、多数の組込試験が自動的に行われ、細胞処理装置を較正するために較正ルーチンが実行される。これらのルーチンの完了の成功に際して、ユーザーは行われるべき手順に関する情報(例えば、患者名、ID番号など)をキーボードおよびマウスを介して入力するようにプロンプトされる。いったん要求される情報が入力されると、ユーザーはアクセスドア35を開けて検体を可動試料台にロードするようにプロンプトされる。
【0080】
いったん検体が可動試料台に置かれてドアが閉められると、コンピューターは、定位置に動くように試料台に信号を送る。ファンは、検体の加温および除曇を開始するように初期化される。この間、検体内の細胞は、底面に落ち着かせられる。さらに、この間、装置は、検体が適切にロードされ、かつシステムの光学素子の焦点範囲内にあることを確実にするコマンドを実行し得る。例えば、検体容器の底に適切に走査レンズの焦点が合わせられていることを確実にするために、システムによって検体容器の特定のマーキングが位置決めおよび焦点合わせされ得る。適当な時間後、コンピューターはファンを切って処理中の過剰な振動を防止し、細胞処理加工が開始される。
【0081】
最初に、コンピューターは、処理されるべき検体の第一の範囲が直接走査レンズの視野にあるように、可動試料台が走査レンズを覆って位置決めされるように命令する。ガルバノメーターミラーは、視野中の中心フレームがカメラに画像化されるように動くことを命令される。以下に記載されるように、走査レンズにより画像化される領域は、複数のフレームに分割される。各フレームは、フレーム内の細胞がカメラアレイにより効果的に画像化されるように、適切な大きさになっている。
【0082】
次いで、走査レンズが視野に焦点を合わせ得るように、視野を照射するために背面光475が起動される。いったん走査レンズが検体に適切に焦点を合わせると、コンピューターシステムは、各フレームが別々にカメラアレイにより分析されるように視野を複数のフレームに分割する。この方法論は、装置が、機械試料台を動かすことなく巨大な視野内の複数のフレームを処理することを可能にする。試料台を動かす場合に含まれる機械的工程と比較してガルバノメーターは非常に迅速に1つのフレームから次のフレームへ動くことが可能であることから、この方法はきわめて迅速かつ効率的な装置をもたらす。
【0083】
本発明の装置はさらに、検体の1つまたはそれより多い二次元表示を組み合わせて三次元表示を作成するための画像処理デバイス225Aを含み得る。二次元または三次元表示は、検体中の少なくとも1つの所定の粒子の座標(画像を作成するために使用され得る、座標のグラフ式もしくは表形式リストまたはコンピューターコマンドのセットなど)を特定する、検体またはその一部分の画像または任意の特性表示を指す。
【0084】
最初に、1つまたはそれより多い二次元表示(二次元断面画像など)がカメラアレイにより取り込まれ、コンピューターのメモリに記憶され得る。単一の二次元画像は検体の三次元表示を作成するのに十分な情報を含み得るが、三次元画像を作成するために2つまたはそれより多いかまたは複数の二次元画像を処理することが望ましい場合がある。コンピューターの命令は、三次元表示(三次元画像など)を作成または計算し得る。そのようにして計算された三次元画像は、各段のZレベルで、画像中の大きさ、形状、数、または他のオブジェクトの特徴に関して分析され得る。必要であれば、コンピューターは、所定のフレームの焦点を改善するために、走査レンズに取り付けられているZ軸モーターに上昇または下降するように命令する。次いで、ガルバノメーター制御ミラーは、カメラアレイ中で、視野内に、第一のフレームを画像化するように命令される。いったんガルバノメーターミラーが視野中の第一フレームに狙いを合わせられると、照射レーザー前面のシャッターが開けられて、ガルバノメーターミラーおよび走査レンズを通して第一のフレームに照射される。カメラアレイは、細胞の第一のフレーム中の検体からの任意の蛍光発光の画像を取り込む。いったん画像が取得されると、照射レーザー前面のシャッターは閉じられ、そしてコンピューター内のソフトウェアプログラム(Epic,Buffalo Grove,IL)が画像を処理する。
【0085】
画像処理デバイス225Aは、検体の断面画像を探索して焦点の合った断面画像を識別することにより、仮想自動焦点合わせ能力を含み得る。仮想自動焦点合わせは、検体の任意の部分の三次元表示の作成を必要とせず、したがって、三次元表示の形成前または形成なしに行われ得る。複数の断面表示(例えば、断面画像)は、異なる焦点平面領域を視界とする1つまたはそれより多いカメラを使用して、上記のように得られ得る。仮想自動焦点合わせは、複数の断面画像を分析して焦点のあった画像を選択することにより達成され得る。次いで、続く画像処理が、所望の標的粒子を効果的に同定するために、焦点断面画像について選択的に実行され得る。それ故、所定の粒子は、焦点断面画像中のそのXおよびY座標ならびに断面画像のZレベルに基づいて、検体中で同定または位置決めされ得る。XおよびY座標とは、本明細書中使用される場合、視界の方向に対して垂直な平面を形成する二次元中の座標を指す。仮想自動焦点合わせにより選択される複数の焦点断面画像は、上記のように、三次元画像を計算するために使用され得る。
【0086】
リアルタイムの自動焦点合わせが本発明において使用され得るものの、仮想自動焦点合わせはより迅速なスループットという利点を提供する。詳細には、リアルタイムの自動焦点合わせは、焦点断面画像が得られるまでに、しばしば光学コンポーネントの複数調整および再画像化を必要とする。対照的に、重複しない焦点平面領域を視界とするように複数の固定カメラが置かれている場合、少なくとも1つのカメラは、検出器の任意のコンポーネントを動かす必要なく、焦点のあった視界を有する。続いて、画像は、リアルタイムの自動焦点合わせ法に使用されるものと類似のアルゴリズムを使用して、光学コンポーネントの時間のかかる移動および画像の再取得を必要とせずに、解析され得る。
【0087】
既知の自動焦点合わせアルゴリズム(例えば、顕微鏡観察または自動焦点カメラに使用されるもの)が、本発明の装置および方法において、断面画像の解析および焦点断面画像の識別のために使用され得る。本発明の装置または方法において使用され得る自動焦点法の例は、二分探索自動焦点である。二分探索自動焦点は、所望の焦点を有するものが識別されるまで、その間に焦点断面画像が存在すると考えられる2枚の断面画像を予め選択し、反復して(iteratively)介在する断面画像の数を減少させることにより、実際上行われ得る。反復は、境界断面画像の間の中間にある断面画像を選択する工程、選択された断面画像を所定の焦点値について評価する工程、および所望の焦点値を有する断面画像が同定されるまで境界距離をさらに減少させる工程を包含する。あるいは、予め選択された初期断面画像から開始して断面画像が段階的様式で解析される、逐次自動焦点法が使用され得る。
【0088】
別の実施形態において、検出器は、二次元の検体の画像を取り込み得る。仮想自動焦点合わせは、検体の深度が検出器の視界の被写界深度よりも浅い場合に機能する。仮想自動焦点合わせは、上記のように、二次元の検体中に位置する所定の粒子についてXおよびY座標を同定または決定するように実行され得る。そのように同定される粒子は、本発明の装置または方法を使用して、標的化されて電磁的に影響を及ぼされ得る。
【0089】
上記のパワーセンサー445は、照射レーザーにより発せられる光強度のレベルを検出する。測定された強度に基づいて、コンピューターは、特定の用途に対して適切な量の光が細胞のフレームに照射されているかどうかを判定し得る。特定の閾値が得られないか、または信号が所望の最大値を上回る場合、レーザー強度は調整され得、別の照射および画像取込シーケンスが実行される。適切な条件が達成されるまでそのような反復が実行され得るか、または予め選択された回数の反復後、システムは一時停止またはエラー状態の指示を行い得、これはオペレーターに通信される。
【0090】
閾値または最大エネルギーレベルは、本発明の方法または装置の特定の適用に依存する。用語「閾値」は、特定の性質を変化させるのに十分な量のエネルギーを指す。例えば、閾値量の電磁エネルギーは、細胞を殺すのに、膜または細胞を一時的に透過性にするのに、細胞周期の段階を誘導するのに、遺伝子発現を活性化または抑制するのに、細胞内pHを定められた範囲内で増加または減少させるのに、あるいは細胞の形態、代謝、または発生段階を変更させるのに十分な量であり得る。同一の検体中の、閾値の、またはそれを越えた放射を受けない他の細胞は、特定の変化を経験しない。本発明の装置または方法において使用される電磁エネルギーの範囲は、閾値および最高限度により定義され得る。「最高限度」は、閾値量よりも大きく、かつ特定の性質に望ましくない変化を誘導するのに十分なエネルギー量を意味することを意図する。最高限度は、任意の検出可能な変化(閾値エネルギーに関して上記のものを含む)により定義され得る。それ故、本発明において使用される電磁エネルギーの範囲は、恒常的な透過化(permeabilization)も細胞死も引き起こすことなく、膜または細胞を一時的に透過性にするのに十分なエネルギー量を含み得る。
【0091】
検体の望ましくない加熱および光退色を減少させるために、および所望の検出範囲で蛍光信号を提供するために、照射光の遮断が使用され得る。画像解析アルゴリズムが実行されて、取り込まれた画像の特徴を参照することにより、フレーム中の全標的細胞のx−y−z重心座標が位置決めされる。画像に標的がある場合、コンピューターは、可動試料台ポジションおよび視野に関連して標的位置の三次元座標を計算し、次いで処理電磁放射ビームが細胞の第一のフレーム中の第一の標的の位置を指すようにガルバノメーター制御ミラーの位置を合わせる。画像を取り込んだカメラの焦点距離に一部基づいたアルゴリズムによりz座標が計算され得ることが注記されるべきである。さらに、この時点で視野内の細胞の単一のフレームのみが記録されて解析されることが注記されるべきである。それ故、検体のこの亜集団内に比較的少数の同定された標的が存在するはずである。その上さらに、カメラアレイは細胞のより小さな集団に向けられることから、各標的がCCDカメラ内の多数の画素により画像化されるように、より高倍率が使用される。
【0092】
いったんコンピューターシステムがガルバノメーター制御ミラーを細胞の第一のフレーム内の第一の標的細胞の場所を示すように位置決めすると、第一の標的細胞に適切な用量のエネルギーが与えられるように、少しの間処理レーザーが発射される。上記のパワーセンサー446は、処理レーザーにより発せられたエネルギーレベルを検出し、それによりコンピューターは、それが標的細胞に応答を誘導するための所望の範囲内にあるかどうかを計算することが可能になる。処理レーザーのパワーは調整され得、処理レーザーは同じ標的に再び発射される。反復標的化、発射、および検知工程は、適切な条件が達成されるまで、または予め定められた回数を上限として繰り返され得、その後反復は一時中断するか、またはエラーメッセージがオペレーターに通信される。別の実施形態において、処理レーザーはフレーム内の標的細胞の1つより多いグループまたは全てに一度発射され得、引き続いてコンピューターは標的レーザーを、応答を誘導するのに十分なレベルのエネルギーを受けなかった任意の細胞に向け得る。
【0093】
いったん細胞の第一のフレーム中の全ての標的が処理レーザーで照射されると、ミラーは、視野にある細胞の第二のフレームに位置決めされることができ、フレーム照射およびカメラ画像化をした時点で処理工程が繰り返される。この処理工程は、走査レンズ上の視野内の全フレームに対して続けられ得る。これらのフレーム全てが処理されると、コンピューターは可動試料台に検体中の次の視野に移動するように命令し、背面光照射および自動焦点工程から処理が繰り返される。フレームおよび視野は、検体の範囲を不注意に欠落させる可能性を減少させるために重複し得る。いったん検体が完全に処理されると、オペレーターは検体を取り出すように伝えられ、装置は直ちに次の検体の準備が整う。上記の文章は標的の位置決めのための蛍光画像の解析を記載するものの、当業者は、非蛍光背面光LED照射画像が、他の性質(光の吸収、透過、または屈折に基づいて標準的な顕微鏡で視認可能なものなど)に基づいて標的細胞を位置決めするために有用であり得ることを、理解する。
【0094】
ガルバノメーターミラーは、連続したフレームの画像化および連続した標的の照射を制御する利点を提供する。ガルバノメーターのブランドの1つは、Cambridge Technology,Inc.モデル番号6860(Cambridge,MA)である。このガルバノメーターはミリ秒のフラクション内で非常に正確に再配置することができ、妥当な時間内での広範囲および多数の標的の処理を可能にする。さらに、可動試料台は、検体の限定された範囲を走査レンズの視野中に移動させるために使用され得る。この動きの組合せは自動化することができ、装置または方法の処理能力の増加を提供する。
【0095】
本発明の他の実施形態もまた可能であることが理解されるはずである。例えば、コンベヤーベルトと類似した可動試料台が、上記のプロセスを通して細胞の検体を連続して動かすために含まれ得る。制御ボードから連続して生成されるエラー信号は、コンピューターによりモニターされて、画像が取り込まれる前に、または閉ループ様式で標的が発射を受ける前に、ミラーが所定位置にあり、かつ安定していることを確実にする。
【0096】
1つの実施形態において、本明細書中に記載される装置は、1分あたり、生物検体の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10平方センチメートル中の粒子に電磁的に影響を及ぼし得る。別の実施形態において、本明細書中に記載される装置は、1分あたり、生物検体の少なくとも25万、50万、100万、200万、300万、または400万の細胞を処理する。本装置が動作する速度は、1分あたりの電磁的に影響を及ぼされる粒子含有焦点体積の数として測定され得る。本装置は、1分あたり、検体中の少なくとも1、2、3、4、5、6、8、10、15、20、30、60、100、300、500、1000、3000、5000、10000、30000、50000、100000、300000、または500000の別個の焦点体積に、電磁的に影響を及ぼし得る。さらに、画像化の速度は、少なくとも1Hz、2Hz、3Hz、4Hz、5Hz、6Hz、8Hz、10Hz、15Hz、30Hz、50Hz、100Hz、150Hz、300Hz、500Hz、または1000Hzの速度であり得る。
【0097】
1つの実施形態は、生物検体が周期的にインサイチュでモニターおよび処理され得るように、装置中での生物検体のインビトロの維持を可能にする。これは、検体を37℃の標準組織培養環境下に維持することにより達成される。このように、検体中の特定の細胞を経時的に追跡し、検体中の特定の細胞の状態を周期的に評価し、そして/またはこれらの特定の細胞の処理を周期的に行うことができる。このシステムは、大きな検体が走査モードで繰り返し処理され得るように、細胞の場所を記録し、その後可動試料台の向きをそれらの記録された場所へ向ける能力を装置に提供するための、ソフトウェアおよびコンピューターメモリ記憶装置を備える。
【0098】
もちろん、上記の実施形態の多くの改変が可能であり、細胞の照射、画像化、および標的化の代替的方法を含む。例えば、走査レンズと相対的な検体の動きは、走査レンズが動かされながら、検体を実質的に固定された状態に保つことにより達成され得る。照射ビーム、画像、およびエネルギービームの方向付け(steering)は、任意の制御可能な反射または回折デバイス(プリズム、圧電傾斜プラットホーム、または音響光学偏光器を含む)によって達成され得る。さらに、本装置は検体の下または上からのいずれかで画像化/処理し得る。装置は可動走査レンズを通して焦点を合わせることから、照射およびエネルギービームはz軸に沿って種々の焦点平面に向けられ得る。それ故、検体の異なる垂直高度に位置する部分は、三次元の様式で装置により特定的に画像化されて処理される。工程の順序もまた、プロセスを変化することなく変更され得る。例えば、検体中の全標的の座標が位置決めされて記憶され、次いで標的に戻り、それらに1つまたはそれより多い回数である期間にわたりエネルギーを照射し得る。
【0099】
検体を最適に処理するため、検体の大部分が狭い範囲の焦点内に現れるように、検体は実質的に平坦な表面に置かれなければならない。この表面上の細胞密度は、基本的には任意の値であり得る。しかしながら、細胞密度の増加は、本発明の装置または方法において走査または検出されるために必要とされる全表面積を最小化し得る。
【実施例】
【0100】
以下の実施例は、異なる用途での、記載される方法および装置の使用を例示する。
【0101】
(実施例1:自家HSC移植)
自家HSC移植を必要としている、B細胞由来転移性腫瘍を有する患者が医師により同定される。処置の第一工程として、患者は標準HSC収集手順を受け、未知数の腫瘍細胞が混入した約1×1010個の造血細胞の収集物をもたらす。収集された細胞は、CD34表面抗原を有する細胞を選択する市販の免疫親和性カラム(Isolex(登録商標)300、Nexell Therapeutics, Irvine,CA)によりHSCを豊富にし、未知数の腫瘍細胞を含む約3×108個の造血細胞の集団をもたらす。その後、混合集団は、フィコエリトリンと複合した抗B細胞抗体(CD20およびCD23に対する)、およびCyChromeTMと複合した抗CD34抗体と接触させられる。
【0102】
次いで、混合細胞集団は、滅菌検体容器中、実質的に平坦な表面上、ほぼコンフルーエンスで、1平方センチメートル当たり約500,000個の細胞で置かれる。検体は、上記で記載される装置の可動台に置かれ、全ての検出可能な腫瘍細胞が、フィコエリトリンタグの存在およびCyChrome(商標)タグの非存在により同定され、次いで処理レーザーからの致死量のエネルギーの標的とされる。装置の設計は、4時間足らずでの臨床規模の移植検体の処理を可能にする。細胞は、検体容器から回収され、洗浄され、次いで凍結保存される。細胞が再注入される前に、患者の身体中の腫瘍細胞を破壊するために、患者は高用量化学療法を受ける。この処置に続いて、処理された細胞が、37℃で解凍されて患者に静脈内投与される。患者は、その後最初の癌が寛解することなく回復する。
【0103】
(実施例2:同種異系HSC移植)
別の実施形態は、同種異系HSC移植設定における移植片対宿主病の顕著な危険性および重症度に有効であり得る。いったん適したドナーが見つかると、同種異系移植のための患者が選択される。上記の実施例に記載されるように、選択されたドナーから細胞が収集される。この場合、細胞混合物は、フィコエリトリン標識抗CD3 T細胞抗体と接触させられる。あるいは、特異的アロ反応性T細胞サブセットが、アロ抗原の存在下、活性化T細胞マーカー(例えばCD69)を使用して標識され得る。細胞集団は本明細書中に記載される装置により処理され、それにより患者に与えられるT細胞の数を正確に規定および制御する。この種の制御は有利である。なぜなら、多すぎるT細胞の投与は移植片対宿主病の危険性を増加させ、一方少なすぎるT細胞は移植失敗の危険性および既知の有益な移植片対白血病効果を損なう危険性を増加させるからである。本発明および方法は、同種異系移植においてT細胞の数を正確に制御する能力を有する。
【0104】
(実施例3:組織工学)
別の用途では、本装置は、組織工学用途のための接種材料に混入した細胞を除去するために使用される。細胞混入問題は、LangerおよびVacanti,Sci.Amer.280:86−89(1999)に記載されるように、組織工学用途の実行に必要な初代細胞培養物の確立に存在する。詳細には、軟骨欠損に対する軟骨細胞治療が、軟骨バイオプシー由来の細胞集団中の不純物により妨害される。したがって、本発明は、これらの型の細胞を接種材料から特異的に除去するために使用される。例えば、軟骨バイオプシーが、軟骨置換の必要がある患者から取られる。次いで、検体は、Brittbergら、N.E.J.Med.331:889−895(1994)に記載されるように、従来の条件下で増殖させられる。次いで、培養物は任意の混入細胞(急増殖する線維芽細胞など)に対する特異的標識で染色される。次いで、細胞混合物を記載される装置内に置き、標識混入細胞を処理レーザーの標的として、それにより、よりゆっくりと増殖する軟骨細胞が培養物中で完全に発達することを可能にする。
【0105】
(実施例4:幹細胞治療)
さらに別の実施形態は、広範な疾患を処置するための胚幹細胞の使用を含む。胚幹細胞は未分化であることから、それらは移植に使用を見いだす多くの型の組織(心筋細胞およびニューロンなど)を生成するために使用され得る。しかしながら、インプラントされる未分化の胚幹細胞はまた、Pedersen,Sci.Amer.280:68−73(1999)に記載されるように、奇形腫として知られる型の腫瘍を形成する細胞型の寄せ集めをもたらし得る。それ故、胚幹細胞由来の組織の治療的使用は、十分に分化した細胞のみがインプラントされることを確実にするために、細胞の厳密な精製を含まなければならない。本明細書中に記載される装置は、胚幹細胞由来組織の患者への移植前に、未分化の幹細胞を除去するために使用される。
【0106】
(実施例5:ヒト腫瘍細胞培養物の生成)
別の実施形態において、ヒト腫瘍細胞の培養を開始する目的で、腫瘍バイオプシーが癌患者から取り出される。しかしながら、多くの腫瘍型からの初代ヒト腫瘍細胞培養物のインビトロでの確立は、腫瘍細胞より優れたインビトロでの増殖特性を有する初代細胞集団の混入の存在、およびそのような検体から入手可能な腫瘍細胞数の制限により複雑になっている。例えば、混入する線維芽細胞は、多くの癌細胞培養物の確立において主要なチャレンジを表す。開示される装置は、バイオプシーされた腫瘍細胞を無傷にしたままで、混入する細胞を特に標識および破壊するために使用される。したがって、より活動的な初代細胞は癌細胞株を上回ることも破壊もしない。本明細書中に記載される装置は、比較的高い収率で細胞の精製を可能にし、このことは、出発細胞数が制限されている場合の適用に特に重要である。開示される装置からの高収率の精製細胞は、他の細胞精製法を越える顕著な利点を提供する。
【0107】
(実施例6:特異的mRNA発現ライブラリの生成)
異なる細胞集団内の遺伝子の特異的発現パターンは、多くの研究者にとって非常に興味深いものであり、そして異なる細胞型について発現される遺伝子の単離およびライブラリ作成のために多くの研究が行われてきている。例えば、腫瘍細胞対正常細胞においてどちらの遺伝子が発現されるかを知ることは、Cossmanら、Blood 94:411−416(1999)に記載されるように、大きな潜在的価値がある。そのようなライブラリを生成するために使用される増幅方法(例えばPCR)のため、少数の混入細胞さえも不正確な発現ライブラリをもたらし得る。この問題を克服するための一つのアプローチは、Schutzeら、Nat.Biotech.16:737−742(1998)に記載されるように、増幅のための出発遺伝材料を提供するために単一の細胞が使用される、レーザー微量組織採取(laser capture microdissection(LCM))の使用である。mRNAの抽出前の有意な細胞数の精密な精製は、非常に精密な発現ライブラリ、すなわち単一の細胞発現または混入細胞による発現による偏りのない、研究される細胞集団を代表するものの生成を可能にする。本発明に記載される方法および装置は、混入細胞がRNA抽出手順の間存在しないように、細胞集団を高収率で精製するために使用され得る。
【0108】
ヒト前立腺腫瘍内には、複数の細胞型が存在し、そのそれぞれが転移性疾患をもたらす。前立腺癌の基礎およびその進行を理解するために、ゲノミクスのツール(正常前立腺および癌前立腺cDNA(発現配列タグ、すなわちEST)のDNA配列決定ならびに正常組織と癌性組織とのDNAアレイ比較など)が、正常前立腺における、および異なる前立腺腫瘍における遺伝子発現の特有のパターンを研究するために使用されてきた。異なる表面抗原を持つ異なる前立腺細胞亜集団は異なるmRNA発現プロファイルを有することが示されてきた。本明細書中に開示される装置を使用して、特定の細胞亜集団の遺伝子発現を研究するために、原発性ヒト前立腺腫瘍がその特定の細胞亜集団について精製される。例えば、特定の細胞マーカーに対する抗体を新規細胞表面に結合させることにより、初代前立腺細胞の4つの集団がmRNA分析のために精製される。精製された集団は:CD44’CD13’正常基底細胞様癌、CD44’CD13’基底細胞様癌、CD57’CD13’正常管腔細胞様癌上皮細胞、およびCD57’CD13管腔細胞様癌上皮細胞である。各亜集団の性質、ならびに疾患発症および進行に対するそれらの関連を理解することは、疾患の治療に新規の診断および治療アプローチをもたらし得る。
【0109】
(実施例7:特定の細胞集団のトランスフェクション、モニタリング、および精製)
存在する他の細胞をトランスフェクトすることなく適切な数の所望の細胞型をトランスフェクトすることが不可能であるために、多くの研究および臨床遺伝子治療の適用が妨害されている。本発明の方法は、細胞の混合物内のトランスフェクトされるべき細胞の選択的標的化を可能にする。標的化エネルギー源で光機械的衝撃波を細胞膜に、またはその近くに生成することにより、一過性細孔が形成され得、それを通して遺伝または他の材料が細胞に入り得る。遺伝子移入のこの方法はオプトポレーションと呼ばれてきた。上記で記載される装置は、所定の細胞に、迅速、自動化、標的化様式で、オプトポレーションを選択的に誘導し得る。
【0110】
例えば、骨髄細胞がトランスフェクトされるべきプラスミドDNAを含有する溶液を有する検体容器中に蒔かれる。プラスミドDNAは、治療遺伝子(例えば、MDR)、ならびにマーカー遺伝子(例えば、グリーン蛍光タンパク質)をコードする。幹細胞に対する特異性を有するPE標識抗体(抗CD34)が培地中に添加され、そして幹細胞に結合する。検体容器は細胞処理装置内に置かれ、そして第一の処理レーザーが、照射レーザー光下で蛍光性になる任意の細胞に標的を合わせられ、それにより特に標的細胞中へのDNAのトランスフェクションを促進する。細胞は、37℃でインサイチュで維持され、全ての標的細胞は、プラスミドDNAでのトランスフェクションの成功を示唆するグリーン蛍光タンパク質の発現について周期的に分析される。48時間後、グリーン蛍光タンパク質を発現しない細胞は全て第二の処理レーザーで除去され、それによりトランスフェクトされた遺伝子を発現する幹細胞の純粋な集団を得る。
【0111】
(実施例8:生物工学用途における望ましいクローンの選択)
細胞株が価値のある産物を生成するために使用される多くの生物工学プロセスにおいて、産物を産生するのに非常に効果的であるクローンを誘導させることが望ましい。クローンのこの選択は、何らかの様式で単離された多数のクローンを検査することにより、しばしば手作業で実行される。本発明は、特定の産物の産生に望ましいクローンを、迅速かつ自動的に検査および選択することを可能にする。例えば、最大量の抗体を産生しているハイブリドーマ細胞は、Fc領域を指向する蛍光標識により同定され得る。蛍光標識されていないかまたはかすかに蛍光標識された細胞は、殺すための処理レーザーの標的となり、抗体生成に使用するための最良産生クローンは残される。
【0112】
(実施例9:細胞応答の自動モニタリング)
特定の刺激に対する細胞応答の自動モニタリングは、ハイスループット薬物スクリーニングにおいて非常に関心が高い。しばしば、ウェルプレートの1つのウェル中の細胞集団が刺激に曝され、次いで蛍光信号が細胞集団全体から経時で取り込まれる。本明細書中に記載される方法および装置を使用して、より詳細なモニタリングが単一の細胞レベルで行われ得る。例えば、所定の細胞亜集団の特性を同定するために、細胞集団は標識され得る。次いで、これらの細胞を同定するために、この標識は照射レーザーにより励起される。それから、処理レーザーは、第二標識を励起させる目的で、第一標識により同定された個々の細胞を標的とし、それにより各細胞の応答についての情報を提供する。細胞は表面で実質的に静止していることから、各細胞は複数回評価または処理され得、それにより各細胞の応答の動力学についての時間的情報を提供する。同じく、広範囲の走査レンズおよびガルバノメーターミラーの使用を通して、比較的多数のウェルが短時間のうちに迅速にモニタリングされ得る。
【0113】
具体例として、上記の実施例2に示すようなアロ反応性T細胞の場合を考慮してみる。アロ抗原の存在下で、活性化されたドナーT細胞はCD69により同定され得る。これらの細胞を標的とし死滅させるために処理レーザーを使用するかわりに、処理レーザーは、カルボキシフルオレセインジアセテートの励起および蛍光発光を通して、活性化T細胞毎の細胞内pHを検査するために使用し得る。標的化レーザーは、大部分のスクリーニング法が細胞集団全体の応答を評価するのに対して、活性化された細胞のみの検査を可能にする。一連のそのようなウェルが平行してモニターされている場合、様々な薬剤が個々のウェルに添加され得、そして各薬剤に対して活性化T細胞の特定の応答が経時でモニターされ得る。そのような装置は、移植片対宿主病におけるアロ反応性T細胞応答を寛解させる薬剤のためのハイスループットスクリーニング法を提供する。この実施例に基づき、当業者は、刺激に対する細胞応答が個々の細胞でモニターされ、第一標識により同定される所定の細胞のみに焦点が合わせられる、多くの他の実施例を想像し得る。
【0114】
この出願を通して、様々な刊行物が参照されてきた。それらの刊行物の開示はその全体において、本発明が関連する技術分野の状態をより詳しく記載するために、本出願中参考として本明細書により援用される。
【0115】
本発明は、上記に提供される実施例を参照して記載されてきたが、様々な変更が本発明の精神から逸脱することなくなされ得ることが理解されるはずである。したがって、本発明は請求の範囲によってのみ制限される。
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、混合物中の粒子を選択的に同定し、かつ個別に操作する方法およびデバイスに、そしてより詳細には、望ましくない標的細胞をエネルギービームを用いて組織から選択的に除去する方法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
標的細胞を組織から除去する以前の方法は、標的細胞を組織から効果的に分離する能力、または標的細胞に特異的に送達される毒性の化学薬剤の利用可能性に基づいて開発されてきた。標的細胞をそれらの生来の組織から除去するのに十分厳しく、かつ組織に維持されることが望まれる他の細胞に損傷を与えないほどに十分穏やかであるという提供条件内に当たるように釣り合いをとることが難しいので、標的細胞の効果的分離は達成しがたい。さらに、分離法の多くは、組織の大規模な破壊を必要とし、それにより残存細胞による生存組織の再構成を妨げるか、または困難にしている。組織中に存在したままの標的細胞に毒性薬剤が送達され得るものの、周囲の組織への巻き添え損傷を防ぐために必要とされる特異性の度合いは、しばしば達成しがたい。
【0003】
それ故、生物学的組織に見いだされる複合集団内の特定の細胞を迅速かつ効率的に同定および標的化する装置および方法が必要とされている。本発明は、この要求を満たし、かつ関連する利点もまた提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の概要)
本発明は、検体中の所定の粒子に電磁的に影響を及ぼす装置を提供する。本装置は、以下:(a)上記検体を支持し得る試料台と、(b)少なくとも1つのカメラを含む検出器であって、上記検出器は上記検体内の所定の粒子を解像し得る、検出器と、(c)上記所定の粒子を三次元において位置決めする手段と、(d)上記検体内の焦点体積に電磁放射の焦点を合わせる手段と、(e)上記試料台および電磁放射焦点合わせ手段の相対的な位置を調節する手段であって、それにより上記焦点体積内の上記所定の粒子の位置決めを行う、調節する手段、とを含む。
【0005】
本発明は、検体中の所定の粒子に電磁的に影響を及ぼす方法をさらに提供する。本方法は、以下の工程:(a)上記検体の複数の同一でない二次元断面表示を得る工程であって、上記所定の粒子は上記断面表示の少なくとも1つにおいて識別可能である、工程と、(b)上記複数の断面二次元表示を組み合わせて、上記検体の三次元表示を作成する、工程と、(c)上記三次元表示に基づいて、上記所定の粒子を三次元において位置決めする工程と、(d)焦点体積に対して電磁放射の焦点を合わせる工程であって、上記焦点体積は上記所定の粒子を含有する検体の一部分と交差し、上記焦点体積内の放射は実質的に上記焦点体積内の上記検体の一部分にのみ影響を及ぼし、上記焦点体積内の上記検体の一部分は実質的に影響を受けない検体のエンベロープにより取り囲まれている、工程、とを包含する。
【0006】
さらに、検体中の所定の粒子に電磁的に影響を及ぼす方法が提供される。本方法は、以下の工程:(a)検体中の複数の焦点平面領域に複数の検出器の焦点を合わせる工程と、(b)それぞれが上記焦点平面領域の1つに対応する複数の二次元断面表示を得る工程であって、所定の粒子は上記二次元断面表示の少なくとも1つにおいて識別され得る、工程と、(c)上記複数の二次元断面表示をコンピューターメモリに記憶させる工程と、(d)上記複数の二次元断面表示を組み合わせて、それにより上記検体の少なくとも一部分の三次元表示を作成する、工程と、(e)上記検体の少なくとも一部分の三次元表示に基づいて、上記検体中の所定の粒子を位置決めする工程と、(f)焦点体積に対して電磁放射の焦点を合わせる工程であって、上記焦点体積は上記所定の粒子を含有する上記検体の一部分と交差し、上記焦点体積内の放射は実質的に上記焦点体積中の上記検体の一部分にのみ影響を及ぼし、上記焦点体積中の上記検体の一部分は実質的に影響を受けない検体のエンベロープにより取り囲まれている、工程、とを包含する。
【0007】
本発明はまた、検体中の所定の粒子に電磁的に影響を及ぼす方法を提供する。本方法は、以下の工程:(a)異なるZレベルで、上記検体の複数の二次元断面表示を得る工程であって、上記所定の粒子は上記断面表示の少なくとも1つにおいて識別可能である、工程と、(b)上記複数の二次元断面表示から二次元断面表示を選択する工程であって、上記所定の粒子に焦点が合わされている、工程と、(c)上記選択された二次元断面表示における上記粒子のXおよびY座標ならびに上記選択された二次元断面表示のZレベルに関して、上記検体の所定の粒子を位置決めする工程と、(d)焦点体積に対して電磁放射の焦点を合わせる工程であって、上記焦点体積は上記所定の粒子を含有する上記検体の一部分と交差し、ここで上記焦点体積内の放射は実質的に上記焦点体積中の上記検体の一部分にのみ影響を及ぼし、上記焦点体積中の上記検体の一部分は実質的に影響を受けない検体のエンベロープにより取り囲まれている、工程、とを包含する。
【0008】
従って、本発明は、以下を提供する:
(項目1) 検体中の所定の粒子に電磁的に影響を及ぼす装置であって、
以下:
(a)該検体を支持し得る試料台と、
(b)少なくとも1つのカメラを含む検出器であって、該検出器は該検体内の所定の粒子を解像し得る、検出器と、
(c)該所定の粒子を三次元にて位置決めする手段と、
(d)該検体内の焦点体積に電磁放射の焦点を合わせる手段と、
(e)該試料台および電磁放射焦点調節手段の相対的な位置を調節する手段であって、それにより該焦点体積内の該所定の粒子の位置決めを行う、手段、
とを含む装置。
(項目2) 前記検出器は、複数の同一でない二次元画像を得る能力があり、所定の粒子は該二次元画像の少なくとも1つにおいて識別可能である、請求項1に記載の装置。
(項目3) 前記装置は、1分あたり、前記検体中の少なくとも10の別個の焦点体積中の粒子に電磁的に影響を及ぼし得る、項目1に記載の装置。
(項目4) 前記装置は、1分あたり、前記検体中の少なくとも500,000の別個の焦点体積中の粒子に電磁的に影響を及ぼし得る、項目1に記載の装置。
(項目5) 前記検出器は、方向の異なる視界から該検体を画像化し得る複数のカメラを含む、項目1に記載の装置。
(項目6) 前記検出器は、電荷結合素子カメラを含む、項目1に記載の装置。
(項目7) 前記方向の異なる視界は、45°未満の角度で離れている、項目5に記載の装置。
(項目8) 前記検出器は複数のカメラを含み、各カメラは異なる焦点平面領域を視界とし、該視界とされる焦点平面領域それぞれは前記検体の異なる断面画像を作成する、項目1に記載の装置。
(項目9) 前記被写界深度は、100μm未満である、項目8に記載の装置。
(項目10) 前記異なる断面画像は、前記検体の異なる断面に前記カメラの焦点を合わせることにより作成される、項目8に記載の装置。
(項目11) 隣接する焦点平面領域の中央平面間の距離は、概ね前記カメラの視界とされる被写界深度である、項目10に記載の装置。
(項目12) 前記焦点平面領域は、Zレベルで実質的に重複しない、請求項8に記載の装置。
(項目13) 前記カメラは、実質的に互いに平行である視界の方向を有する、項目8に記載の装置。
(項目14) 前記検出器は、浅い焦点平面領域を視界とするカメラを含み、該焦点平面領域は、前記検体の異なる断面に再度焦点を合わせられ得る、請求項1に記載の装置。
(項目15) 前記焦点平面領域は、異なる時点で前記検体の異なる断面に再度焦点を合わせられる、項目14に記載の装置。
(項目16) 再焦点合わせは、少なくとも1Hzの速度で行われる、請求項15に記載の装置。
(項目17) 前記再焦点合わせは、自動化されている、項目14に記載の装置。
(項目18) 前記検出器は、浅い被写界深度を視界とするカメラを含み、前記検出器は、前記検体の異なる断面画像を得るために自動的に再度焦点を合わせられ得る、項目1に記載の装置。
(項目19) 前記自動再焦点合わせは、前記カメラの移動を含む、請求項18に記載の装置。
(項目20) 前記カメラは、レンズを通して浅い被写界深度を視界とし、前記自動再焦点合わせは、該レンズの移動を含む、項目18に記載の装置。
(項目21) 前記カメラは、ミラーにより反射される浅い被写界深度を視界とし、前記自動再焦点合わせは、該ミラーの移動を含む、項目18に記載の装置。
(項目22) 前記自動再焦点合わせは、前記検体の移動を含む、項目18に記載の装置。
(項目23) 前記粒子を位置決めする手段は、1つまたは複数の二次元表示を処理して三次元表示を作成するデバイスを含む、項目1に記載の装置。
(項目24) 前記粒子を位置決めする手段は、少なくとも1つの所定の粒子の位置座標を記憶し得るコンピューターメモリを含む、項目1に記載の装置。
(項目25) 前記調節する手段は、電磁放射焦点調節手段に機能的に接続された自動位置決めデバイスを含む、項目1に記載の装置。
(項目26) 前記粒子を位置決めする手段は、前記自動位置決めデバイスと通信可能である、項目25に記載の方法。
(項目27) 前記調節する手段は、前記試料台に機能的に接続された自動位置決めデバイスを含む、項目1に記載の装置。
(項目28) 前記粒子を位置決めする手段は、前記自動位置決めデバイスと通信可能である、項目27に記載の方法。
(項目29) 前記調節する手段は、前記電磁放射焦点調節手段および試料台に機能的に接続された自動位置決めデバイスを含む、項目1に記載の装置。
(項目30) 前記粒子を位置決めする手段は、前記自動位置決めデバイスと通信可能である、項目29に記載の方法。
(項目31) 前記電磁放射焦点調節手段に向けられた電磁放射源をさらに含む、項目1に記載の装置。
(項目32) 前記電磁放射源は、少なくとも1つのレーザーである、請求項31に記載の装置。
(項目33) 前記放射は、集束している、項目32に記載の装置。
(項目34) 前記少なくとも1つのレーザーは、100ナノメートル〜30マイクロメートルの波長を発する、項目31に記載の装置。
(項目35) 前記源は、複数のレーザーを含む、項目31に記載の装置。
(項目36) 前記レーザーからの放射ビームは、前記焦点体積において交差する、項目35に記載の装置。
(項目37) 前記レーザーは、異なる波長の放射線を発する、項目35に記載の装置。
(項目38) 前記焦点体積が細胞を死滅させるのに十分なエネルギーを含み得る、項目31に記載の装置。
(項目39) 前記焦点体積が細胞をオプトインジェクトするのに十分なエネルギーを含み得る、項目31に記載の装置。
(項目40) 前記焦点体積が細胞構成成分を不活性化するのに十分なエネルギーを含み得る、項目31に記載の装置。
(項目41) 前記焦点体積が感光性剤を活性化するのに十分なエネルギーを含み得る、項目31に記載の装置。
(項目42) 前記感光性剤は、ケージ化化合物、光力学的治療剤、またはフルオロフォアである、項目41に記載の装置。
(項目43) 前記検体を照射するために置かれた照射デバイスをさらに含む、項目1に記載の装置。
(項目44) 前記照射デバイスは、ランプを含む、項目43に記載の装置。
(項目45) 前記照射デバイスは、レーザーを含む、項目43に記載の装置。
(項目46) 前記照射デバイスは、発光ダイオードを含む、項目43に記載の装置。
(項目47) 検体中の所定の粒子に電磁的に影響を及ぼす方法であって、以下の工程
(a)該検体の複数の同一でない二次元断面表示を得る工程であって、該所定の粒子は該断面表示の少なくとも1つにおいて識別可能である、工程と、
(b)該複数の断面二次元表示を組み合わせて、該検体の三次元表示を作成する工程と、
(c)該三次元表示に基づいて、該所定の粒子を三次元にて位置決めする工程と、
(d)焦点体積に対して電磁放射の焦点を合わせる工程であって、該焦点体積は該所定の粒子を含有する該検体の一部分と交差し、該焦点体積内の放射は実質的に該焦点体積内の該検体の一部分にのみ影響を及ぼし、該焦点体積内の該検体の一部分は実質的に影響を受けない検体のエンベロープにより取り囲まれている、工程、
とを含む方法。
(項目48) 前記検体は、多層の粒子である、項目47に記載の方法。
(項目49) 前記検体は、生物検体である、項目47に記載の方法。
(項目50) 前記粒子は、細胞である、項目49に記載の方法。
(項目51) 前記電磁的影響は、死亡である、項目50に記載の方法。
(項目52) 前記電磁的影響は、オプトインジェクションである、請求項50に記載の方法。
(項目53) 前記電磁的影響は、遺伝子発現の変更である、項目50に記載の方法。
(項目54) 前記電磁的影響は、蛍光である、項目50に記載の方法。
(項目55) 前記電磁的影響は、イオンのアンケージングである、請求項50に記載の方法。
(項目56) 前記所定の粒子は、選択マーカーの存在により識別可能である、項目47に記載の方法。
(項目57) 前記選択マーカーは、前記粒子に対して非破壊的である、項目56に記載の方法。
(項目58) 前記選択マーカーは、色素を含む、項目56に記載の方法。
(項目59) 前記選択マーカーは、抗体を含む、項目56に記載の方法。
(項目60) 前記所定の粒子は、複数の選択マーカーにより識別可能である、項目47に記載の方法。
(項目61) 前記マーカーは、腫瘍細胞について選択性である、項目56に記載の方法。
(項目62) 前記所定の粒子は、選択マーカーの非存在により識別可能である、項目47に記載の方法。
(項目63) 前記検体の位置は、前記所定の粒子を含有する前記検体の一部分が前記焦点体積と交差するように変更される、項目47に記載の方法。
(項目64) 前記焦点体積の位置は、前記所定の粒子を含有する前記検体の一部分が前記焦点体積と交差するように変更される、項目47に記載の方法。
(項目65) 1分あたり、位置決めされた粒子を含有する前記検体の少なくとも10の別個の部分が、電磁的に影響を及ぼされる、項目47に記載の方法。
(項目66) 1分あたり、位置決めされた粒子を含有する前記検体の少なくとも500,000の別個の部分が、電磁的に影響を及ぼされる、項目47に記載の方法。
(項目67) 前記複数の表示は複数のカメラを用いて獲得され、各カメラは異なる焦点平面領域を視界とし、視界とされる焦点平面領域それぞれは前記検体の異なる断面画像を作成する、項目47に記載の方法。
(項目68) 前記被写界深度は、100μm未満である、項目67に記載の方法。
(項目69) 前記異なる断面表示は、前記検体中の異なる焦点平面領域にカメラの視界を焦点合わせることにより作成される、項目67に記載の方法。
(項目70) 隣接する調節焦点平面領域の中央平面間の距離は、概ね前記カメラの視界とされる被写界深度である、項目69に記載の装置。
(項目71) 前記断面表示は、実質的に重複しない、項目67に記載の方法。
(項目72) 前記カメラの視界の向きは、実質的に互いに平行である、項目67に記載の方法。
(項目73) 前記複数の表示は、浅い被写界深度を視界とするカメラを用いて獲得され、前記焦点平面領域は、前記検体の異なる断面で再度焦点を合わせられ得る、項目47に記載の方法。
(項目74) 前記再焦点合わせは、自動化されている、項目73に記載の装置。
(項目75) 前記複数の表示は、浅い被写界深度を視界とする検出器を用いて獲得され、該検出器は、前記検体の異なる断面表示を得るために自動的に再度焦点を合わせられ得る、項目47に記載の方法。
(項目76) 前記電磁放射は、少なくとも1つのレーザーにより生成される、項目47に記載の方法。
(項目77) 前記電磁放射は、集束光線を含む、項目76に記載の方法。
(項目78) 前記電磁放射は、100ナノメートル〜30マイクロメートルにある、項目76に記載の方法。
(項目79) 前記電磁放射は、複数のレーザーにより生成される、請求項47に記載の方法。
(項目80) 前記レーザーからの放射ビームは、前記焦点体積において交差する、項目79に記載の方法。
(項目81) 前記レーザーは、異なる波長の放射線を発する、項目79に記載の方法。
(項目82) 前記検体は、照射される、項目47に記載の方法。
(項目83) 前記検体は、ランプで照射される、項目82に記載の方法。
(項目84) 前記検体は、レーザーで照射される、項目82に記載の方法。
(項目85) 前記検体は、発光ダイオードで照射される、項目82に記載の方法。
(項目86) 検体中の所定の粒子に電磁的に影響を及ぼす方法であって、以下の工程:
(a)検体中の複数の焦点平面領域に複数の検出器の焦点を合わせる工程と、
(b)それぞれが該焦点平面領域の1つに対応する複数の二次元断面表示を得る工程であって、所定の粒子は該二次元断面表示の少なくとも1つにおいて識別され得る、工程と、
(c)該複数の二次元断面表示をコンピューターメモリに記憶させる工程と、
(d)該複数の二次元断面表示を組み合わせて、該検体の少なくとも一部分の三次元表示を作成する工程と、
(e)該検体の少なくとも一部分の三次元表示に基づいて、該検体中の所定の粒子を位置決めする工程と、
(f)焦点体積に対して電磁放射の焦点を合わせる工程であって、該焦点体積は該所定の粒子を含有する該検体の一部分と交差し、該焦点体積内の放射は実質的に該焦点体積中の該検体の一部分にのみ影響を及ぼし、該焦点体積中の該検体の一部分は実質的に影響を受けない検体のエンベロープにより取り囲まれている、工程、
とを含む方法。
(項目87) 検体中の所定の粒子に電磁的に影響を及ぼす方法であって、以下の工程:
(a)異なるZレベルで、該検体の複数の二次元断面表示を得る工程であって、該所定の粒子は該断面表示の少なくとも1つにおいて識別可能である、検体の複数の二次元断面表示を得る工程と、
(b)該複数の二次元断面表示から二次元断面表示を選択する工程であって、該所定の粒子に焦点が合わされている、工程と、
(c)該選択された二次元断面表示における該粒子のXおよびY座標ならびに該選択された二次元断面表示のZレベルに関して、該検体の所定の粒子を位置決めする工程と、
(d)焦点体積に対して電磁放射の焦点を合わせる工程であって、該焦点体積は該所定の粒子を含有する該検体の一部分と交差し、ここで該焦点体積内の放射は実質的に該焦点体積中の該検体の一部分にのみ影響を及ぼし、該焦点体積中の該検体の一部分は実質的に影響を受けない検体のエンベロープにより取り囲まれている、工程、
とを含む方法。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、細胞処理装置の1つの実施形態の斜視図であり、筐体およびディスプレイの外側設計を図示する。
【図2】図2は、外側筐体を外して内部コンポーネントを図示した、細胞処理装置の1つの実施形態の斜視図である。
【図3】図3は、細胞処理装置の1つの実施形態のために設計された光学サブアセンブリのブロック図である。
【図4】図4は、階段状のZレベルでCCDアレイにより達成される相対的焦点平面領域の正面図である。
【図5】図5は、三次元画像プロセッサモジュールが、階段状のZレベルでCCDアレイにより取り込まれる画像をどのように組み立てるのかを示す、検体の斜視図である。
【図6】図6は、CCDアレイにより見られるような象限を図示する細胞検体の底面図である。各長方形象限は、その相対的Zレベルに焦点の合った単一のカメラにより取り込まれる画像を表す。
【図7】図7は、細胞処理装置とのCCDアレイの相互関係を図示する光学サブアセンブリのブロック図である。
【図8】図8は、細胞処理装置の1つの実施形態内の、光学サブアセンブリの1つの実施形態の斜視図である。
【図9】図9は、走査レンズおよび可動試料台の配置を図示する光学サブアセンブリの1つの実施形態の側面図である。
【図10】図10は、光学サブアセンブリの1つの実施形態の底面斜視図である。
【図11】図11は、細胞処理装置の可動試料台の頂部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(詳細な説明)
本発明は、標的粒子において応答を誘導する目的で、検体中の特定の粒子の選択的標的化および電磁的照射を行う方法および装置を提供する。1つの実施形態において、本発明は、生物学的検体中の特定の細胞または細胞サブセットを標的化するために使用され得る。細胞は、検体の他の粒子と比較して際だった特徴を顕微鏡画像化または別の方法で検出することにより、標的化され得る。いったん標的化された細胞は、電磁放射で照射されて、様々な応答(壊死、細胞周期または発生の段階の活性化または阻害、遺伝子発現の変更、あるいは外因性分子の取り込みまたはケージ化もしくは細胞下区画化イオンもしくは分子の放出などによる細胞組成の変更を含む)のいずれかを誘導し得る。本発明の装置および方法の利点は、検体内の非標的細胞に実質的に影響を及ぼさずに、典型的な生物学的検体に見いだされる混合集団中の特定の細胞が個別に標的化され、かつ電磁的に影響を及ぼされ得ることである。さらに、本発明は、装置または方法の自動化を提供し、それにより検体のハイスループット処理を可能にする。
【0011】
本明細書中使用される場合、用語「電磁的に影響を及ぼす」は、粒子に関して使用される場合、粒子と電磁放射エネルギーが交差することにより粒子の少なくとも1つの性質が変化することを意味することを意図する。この用語は、電子励起状態のように一時的に、または化学組成もしくは構造のように永久に変化する性質を含み得る。細胞に関して使用される場合、変化する性質として、生存度、膜完全性、細胞周期段階、遺伝子発現レベル、細胞内pH、細胞内組成、細胞下もしくは細胞質ゾルのイオン濃度、または発生段階などが挙げられ得る。
【0012】
本明細書中使用される場合、用語「識別する」は、検体中の粒子に関して使用される場合、粒子の検出可能な性質に従って、検体の少なくとも1つの他の構成成分から粒子を区別することを意味することを意図する。この用語は、形状、大きさ、光学的性質、化学組成、密度、質量、天然もしくは合成の標識の存在もしくは非存在、標識親和性、または付随する化学的もしくは生物学的活性の存在もしくは非存在に基づいて区別することを含み得る。
【0013】
本明細書中使用される場合、用語「焦点体積(focal volume)」は、領域の任意の他の部分が受けるよりも多量の電磁エネルギーを受ける、空間中または検体中の照射領域の三次元部分を意味することを意図する。この用語は、電磁放射線がそこに収束するか、またはそれらがそこから現れて光学系を通過した後に分岐する、焦点により規定される三次元部分を含み得、ここで光学系と接触するこれらの線は平行または非平行であり得る。この用語はまた、その部分が個別のビームそれぞれが通過する領域よりも高いエネルギーを受けるように、2本以上の電磁放射ビームの交差により規定される部分を含み得る。この三次元部分は、その部分を取り囲む検体のエンベロープが実質的に照射により影響を受けないままで、実質的にその部分のみに影響を及ぼす量の電磁放射を受ける、検体の部分を規定し得る。
【0014】
本明細書中使用される場合、用語「検体」は、三次元環境内に粒子を有する任意の型の組成物を意味することを意図する。この用語は、細胞または他の粒子を有する組織などの生物学的検体を含み得る。検体は、容器により、または容器を伴って封入され得る。容器は、細胞の無菌性および生存度を維持するために構築され得る。さらに、検体は、本明細書中に記載される装置または方法の操作の間、それを周囲温度より高くまたは低く保つための、冷却または加熱装置を組み込み得るか、またはそれを伴い得る。検体容器は、使用される場合、実質的にそれ自体が損傷することなく適切なエネルギーを伝達するように、照射レーザー、背面照明装置、および処理レーザーの使用と適合性の材料製で作製され得る。
【0015】
検体の粒子は、微視的粒子(細胞、細胞凝集体、ウイルス、オルガネラなどの細胞下画分、またはリボソームもしくは染色体などの大きな巨大分子など)であり得る。装置または方法で使用される「細胞」は、任意の生物学的細胞であり得、原核生物および真核生物の細胞(動物細胞、植物細胞、酵母細胞、細菌細胞、ヒト細胞、および非ヒト霊長類細胞など)が挙げられる。細胞は、生物体から採取され得るかまたは細胞培養物から収集され得る。
【0016】
本明細書中使用される場合、用語「焦点平面領域」は、二次元で引き伸ばされ、実質的に視野の方向に対して垂直な2枚の平行な平面間に限定される三次元空間中の観察される領域を意味することを意図する。観察される領域は、検体のスライスまたは切片あるいはそのようなスライスまたは切片の一部分であり得る。それ故、検体の焦点平面領域は、検体の断面画像を作成するために使用され得る。焦点平面領域の中央平面は、焦点平面領域を限定する2枚の平行な平面に対して平行でありかつその間の中程にある平面を意味することを意図する。
【0017】
本発明は、検体中の所定の粒子に電磁的に影響を及ぼす方法を提供する。本方法は、以下の工程(a)検体の複数の同一でない二次元断面表示を得る工程であって、所定の粒子は断面表示の少なくとも1つにおいて識別可能(discernable)である工程、(b)複数の断面二次元表示を組み合わせて、検体の三次元表示を作成する工程、(c)三次元表示に基づいて、所定の粒子を三次元において位置決めする工程、および(d)焦点体積に対して電磁放射の焦点を合わせる工程であって、焦点体積は所定の粒子を含有する検体の一部分と交差し、焦点体積内の照射は実質的に焦点体積内の検体の一部分にのみ影響を及ぼし、焦点体積内の検体の一部分は実質的に影響を受けない検体のエンベロープにより取り囲まれている工程を包含する。
【0018】
本発明はさらに、検体中の所定の粒子に電磁的に影響を及ぼす方法を提供する。本方法は、以下の工程(a)検体の複数の焦点平面領域に複数の検出器の焦点を合わせる工程、(b)複数の二次元断面表示(それぞれが1つの焦点平面領域に対応する)を得る工程であって、所定の粒子は二次元断面表示の少なくとも1つにおいて識別され得る工程、(c)複数の二次元断面表示をコンピューターメモリに記憶させる工程、(d)複数の二次元断面表示を組み合わせて、検体の少なくとも一部分の三次元表示を作成する工程;(e)検体の少なくとも一部分の三次元表示に基づいて、検体の所定の粒子を位置決めする工程、および(f)焦点体積に対して電磁放射の焦点を合わせる工程であって、焦点体積は所定の粒子を含有する検体の一部分と交差し、焦点体積内の照射は実質的に焦点体積中の検体の一部分にのみ影響を及ぼし、焦点体積中の検体の一部分は実質的に影響を受けない検体のエンベロープにより取り囲まれている工程を含む。
【0019】
本発明によりさらに提供されるのは、検体中の所定の粒子に電磁的に影響を及ぼす方法である。本方法は、以下の工程:(a)種々のZレベルで、検体の複数の二次元断面表示を得る工程であって、所定の粒子は断面表示の少なくとも1つにおいて識別可能である工程、(b)複数の二次元断面表示から二次元断面表示を選択する工程であって、所定の粒子に焦点が合わされている工程、(c)選択された二次元断面表示における粒子のXおよびY座標ならびに選択された二次元断面表示のZレベルに関して、検体の所定の粒子を位置決めする工程、および(d)焦点体積に対して電磁放射の焦点を合わせる工程であって、焦点体積は所定の粒子を含有する検体の一部分と交差し、焦点体積内の照射は実質的に焦点体積中の検体の一部分にのみ影響を及ぼし、焦点体積中の検体の一部分は実質的に影響を受けない検体のエンベロープにより取り囲まれている工程を含む。
【0020】
本発明の方法は、電磁的に影響を及ぼし、それにより標的細胞に応答を誘導する目的で、細胞集団内の特定の細胞を、選択的に同定し、かつ個別に電磁放射ビームで標的とするために使用され得る。細胞の集団は、生物検体(器官からなどの組織または血液のような生体液を含む)中の混合集団であり得る。本発明の方法において使用される検体はまた、細胞培養においてなど起源において同種であり得る。標的化されて電磁的に影響を及ぼされた検体内の細胞は、2〜3例を挙げると、腫瘍細胞、非腫瘍細胞、線維芽細胞、T細胞、または奇形腫形成細胞を含み得る。
【0021】
細胞は、検体中の他の細胞からその細胞を区別する様々な性質に従って、標的化され得る。細胞を区別するのに有用な性質は、その形態学的特徴(形状または大きさなど)および生理学的特徴(1つまたはそれより多い検出可能なマーカーの位置または存在もしくは非存在など)であり得る。例えば、標的細胞に対して特異性を有する標識が、標的細胞を区別するために混合集団において使用され得る。本明細書中の装置および方法により標的化される細胞は、処理電磁放射源により作成される焦点体積が特に標的細胞に向けられ得るように、選択的に標識されるか、または他の方法で検体中の他のものから区別されるものである。
【0022】
選択される標識は、実質的に、第一の細胞集団を第二の細胞集団から同定して区別する任意のものであり得る。マーカーは、必ずしも破壊的である必要も永続的に細胞に結合する必要もない。例えば、蛍光色素で直接または間接的にタグを付けられたモノクローナル抗体が、特異的標識として使用され得る。細胞表面結合標識の他の例として、非抗体タンパク質、レクチン、炭水化物、または選択的細胞結合能力を持つ短ペプチドが挙げられる。膜インターカレート色素(PKH−2およびPKH−26など)もまた、細胞の分裂の経歴を示す有用な区別標識としての役目を果たし得る。多くの膜透過性試薬もまた、選択された判定基準に基づいて生細胞を互いに区別するために利用可能である。例えば、ファロイジンは膜完全性を示し、テトラメチルローダミンメチルエステル(TMRM)はミトコンドリア膜間電位を示し、モノクロロビマン(monochlorobimane)はグルタチオン還元段階を示し、カルボキシメチルフルオレセインジアセテート(carboxymethyl fluorescein diacetate)(CMFDA)はチオール活性を示し、カルボキシフルオレセインジアセテートは細胞内pHを示し、fura−2は細胞内Ca2+レベルを示し、5,5’,6,6’−テトラクロロ−1,1’,3,3’−テトラエチルベンズイミダゾールカルボシアニンヨージド(JC−1)は膜電位を示す。細胞生存度は、蛍光SYTO13またはYO PRO試薬の使用により評価され得る。同様に、蛍光でタグを付けられた遺伝子プローブ(DNAまたはRNA)は、所定の遺伝子を保有するか、または所定の遺伝子を発現する細胞を標識するために使用され得る。さらに、細胞周期状態が、新規に合成されたDNAを標識するためのブロモデオキシウリジン(BrdU)と組み合わせられた現存のDNAを標識するためのHoechst33342色素の使用によって評価され得る。
【0023】
非標的細胞から標的細胞を区別する能力にさらにより大きな柔軟性を提供するため、2つまたはそれより多い標識(それぞれが異なる蛍光色素を持つ)の組合せが使用され得る。例えば、フィコエリトリン(PE)で標識された抗体とTexas Red(登録商標)で標識された別の抗体とが、抗体により認識される抗原の1つ、両方を発現するか、またはいずれも発現しない標的細胞を同定するために使用され得る。細胞はまた、処理される検体中の他の細胞と比較した存在および非存在の標識の組合せに従って同定され得る。当業者は、様々な多色標識アプローチを使用して、細胞の複合混合物内の特定の細胞亜集団を同定し得る。
【0024】
細胞はまた、内因性または外因性のレポーター遺伝子の発現に基づいて標的化され得る。細胞の標識に有用なレポーター遺伝子として、グリーン蛍光タンパク質(GFP)およびその誘導体、β−ガラクトシダーゼ、およびルシフェラーゼが挙げられる。さらに、細胞は、ポリヒスチジンタグ(Qiagen;Chatsworth,CA)などの組換え融合レポーターポリペプチド、フラッグペプチド(Sigma;St Louis,MO)などの抗体エピトープ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(Amersham Pharmacia;Piscataway,NJ)、セルロース結合ドメイン(Novagen;Madison,WI)、カルモジュリン(Stratagene;San Diego,CA)、ブドウ球菌プロテインA(Pharmacia;Uppsala,Sweden)、マルトース結合タンパク質(New England BioLabs;Beverley,MA)、またはstrep−タグ(Genosys;Woodlands,TX)の存在または非存在に従って検出され得る。上記のもののようなレポーター遺伝子は、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Press,Plainview,New York(1989);Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Press,Plainview,New York(2001);Ausubel et al.(Current Protocols in Molecular Biology(Supplement 47),John Wiley & Sons,New York(1999))に記載されるような公知の方法を使用して、構築および検出され得る。
【0025】
第一集団の細胞について利用可能な特異的標識がない場合、この方法は、非標的集団の細胞について特異的標識を利用することにより逆のやり方で実行され得ることが、注記されなければならない。例えば、造血細胞集団において、混合物内の他の細胞を標識しないで原始造血細胞のみを標識するために、CD34またはACC−133細胞マーカーが使用され得る。この実施形態において、第一の集団の細胞は、標識の非存在により同定され、それによりエネルギービームの標的となる。
【0026】
以下のように、検体は画像化され、検体中の標的細胞の三次元座標が決定され得る。検体内の異なる深度で生じる検体の焦点平面領域は、観測されて、検体の断面画像を生成するために使用され得る。以下でより詳細に記載されるように、粒子は、選択された焦点断面画像において同定および位置決めされ得る。あるいは、検体の三次元画像は、隣接する断面画像をアレンジすることにより再構築され得る。標的細胞は、上記の際だった特徴に従って、三次元画像において同定され得、その検体における相対的な配置が三次元の座標の組により同定される。次いで、処理電磁放射ビームの照準を標的細胞に合わせるために標的細胞の座標が使用され得る。
【0027】
第一の集団の細胞が同定された後、処理電磁放射ビーム(例えば、レーザー、平行または集束非のレーザー光、RFエネルギー、加速粒子、集束超音波エネルギー、電子ビーム、または他の放射線ビームからの)が、第二集団の細胞に実質的に影響を及ぼさずに、第一集団の細胞の少なくとも1つに所定の応答を誘導する標的用量のエネルギーを送達するために使用される。応答は、致命的または非致命的であり得る。本発明の方法において電磁的に誘導され得る応答の例として、生存度、膜完全性、細胞周期段階、遺伝子発現レベル、細胞内pH、細胞内組成物、細胞下もしくは細胞質ゾルのイオン濃度、または発生段階、および以下にさらに詳細に記載されるようなものなどの変化が挙げられる。
【0028】
電磁的に誘導され得る別の応答は、光退色である。光退色において、本方法が開始される前に、色素の形態の標識(例えば、ローダミン123、GFP、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、またはフィコエリトリン)が検体に添加される。細胞の集団が色素と相互作用する時間を持った後、エネルギービームが使用されて、集団中の個々の細胞の領域が脱色される。そのような光退色研究は、細胞構成成分の運動性、補充、および動態、ならびにプロセスなどを研究するために使用され得る。
【0029】
別の応答は、内部分子アンケージングである。そのようなプロセスにおいて、検体は、本方法の開始前にケージ化分子と組み合わせられる。そのようなケージ化分子として、L−アスパラギン酸のβ−2,6−ジニトロベンジルエステルまたは8−ヒドロキシルピレン−1,3,6−トリススルホン酸の1−(2−ニトロフェニル)エチルエーテルが挙げられる。同様に、ケージング基(アルファカルボキシル−2−ニトロベンジル(CNB)および5−カルボキシルメトキシ−2−ニトロベンジル(CMNB)を含む)が、エーテル、チオエーテル、エステル、アミン、または類似した官能基のような生物活性分子に結合され得る。用語「内部分子アンケージング」は、分子アンケージングが細胞表面または細胞内で行われるという事実を示す。そのようなアンケージング実験は、細胞膜透過性および細胞性シグナル伝達などの迅速な分子プロセスを研究する。
【0030】
さらに別の応答は、外部分子アンケージングである。これは、内部分子ケーングとほぼ同じプロセスを使用する。しかしながら、外部分子アンケージングにおいて、アンケージ化分子は標的細胞に付着しないか、またはその中に組み込まれない。代わりに、ケージ化およびアンケージ化改変体分子に対する、周囲の標的細胞の応答が、本装置および本方法により画像化される。
【0031】
上記のように、複数の細胞亜集団が、特異的標識および照明源の適切な使用で同定され得る。さらに、複数の細胞応答が、処理レーザーおよび生物検体に添加される処理物質の適切な使用で誘導され得る。拡大すれば、平行して異なる細胞亜集団(すなわち、異なる応答を誘導するため)を同時同定および処理することが可能である。例えば、1つの細胞亜集団が同定されて、壊死を誘導するための標的となり得るが、同じ検体中の別の細胞亜集団はオプトポレーション(optoporation)のための標的となり得る。プロセスが行われる際、両細胞亜集団は、コンピューターの制御下で、適切な様式で処理される。
【0032】
比色(colorometric)色素の使用に加えて、本発明の実施形態はまた、複数の色を画像化するカメラを含む。例えば、1つの実施形態において、細胞の集団のカラー画像を取り込むためにカラーCCDカメラが使用される。異なる細胞は、異なる着色化合物により標的化されるので、色に基づいて、混合集団中の様々な細胞型を区別する画像が収集され得る。例えば、癌細胞の同定は、2種の異なる着色化合物へのその結合により確認され得る。次いで、これらの2色を検出するカメラは、系が単一の同定用化合物にのみ依存する場合よりも確実に癌細胞の同定を確認し得る。
【0033】
本発明はさらに、検体中の所定の粒子に電磁的に影響を及ぼす装置を提供する。本装置は、(a)検体を支持する能力のある試料台;(b)少なくとも1つのカメラを含む検出器であって、検出器は検体内の所定の粒子を解像する能力がある検出器、(c)所定の粒子を三次元中に位置決めする手段;(d)検体内の焦点体積に電磁放射の焦点を合わせる手段、および(e)試料台および電磁放射焦点合わせ手段の相対的な位置を調節し、それにより焦点体積内の所定の粒子の位置決めを行う手段を含む。
【0034】
図1は、細胞処理装置10の1つの実施形態の例示である。細胞処理装置10は、装置の内部コンポーネントを格納する筐体15を備える。筐体は、使用者の安全性を確実にするためにレーザーセーフティインターロックを含み、また、外部影響(例えば、周囲光、ほこりなど)による干渉を制限する。筐体15の上部には、処理の間、三次元環境の細胞集団の取り込み画像を表示するためのディスプレイユニット20が位置する。これらの画像は、以下により詳細に記載されるように、カメラアレイにより取り込まれる。キーボード25およびマウス30は、データを入力し、装置を制御するために使用される。アクセスドア35は、処理されている細胞の検体容器を保持する、可動試料台へのアクセスを提供する。
【0035】
装置10の内部図は図2に提供される。図示されるように、装置10は装置の内部コンポーネントを保持する上部トレイ200および下部トレイ210を提供する。上部トレイ200は、装置10の内部へ吸引される周囲空気を濾過する1対の吸い込みフィルター215AおよびBを備える。アクセスドア35の下には、上部トレイ200に取り付けられた光学サブアセンブリがあり、これは図3〜10に関して以下でより詳細に議論される。
【0036】
下部トレイ210の上に、装置10を稼働させる、ソフトウェアプログラム、コマンド、および命令を格納するコンピューター225がある。さらに、コンピューター225は、細胞を処理するために、検体上の適切な点へレーザーを導くための制御信号を、電気信号接続を通して処理装置へ提供する。
【0037】
図示されるように、一連の電源230A、B、およびCは、装置10内の様々な電気コンポーネントに電力を提供する。さらに、短い外部停電の間装置が機能し続けることを可能にするため、無停電電源235が組み込まれ得る。
【0038】
図3は、細胞処理装置10の実施形態のための光学サブアセンブリ設計300の1つの実施形態のレイアウトを提供する。図示されるように、照射レーザー305は、検体内の標的細胞に付着した特定の標識を励起させるために使用される有向レーザー出力を提供する。この実施形態において、照射レーザーは特定の標識を光学的に励起させるために、532nmの波長で光を放つ。もちろん、他の波長の光を照射するレーザーもまた、系中に使用され得る。いったん照射レーザーが光線を生成すると、光はシャッター310(これはレーザー光のパルス長を制御する)中を通過する。
【0039】
照射レーザー光はシャッター310を通過した後、ボールレンズ315に入り、ボールレンズ315ではSMA光ファイバーコネクター320中に照射レーザー光の焦点が合わせられる。照射レーザービームは、光ファイバーコネクター320に入った後、光ファイバーケーブル325を通して出口330へ伝送される。照射ビームを光ファイバーケーブル325に通すことにより、照射レーザー305は処理装置内の任意の場所へ配置され得、したがって光学コンポーネントへの直接光路内にのみ配置されるように制限されない。1つの実施形態において、光ファイバーケーブル325は、モードスクランブルおよびより均一な照射点を生成するために、振動モーター327に接続される。
【0040】
光は、出口330を通過した後、ビームを細胞の1フレームに照射するのに適した直径に集束させるために、一連のコンデンサレンズに向けられる。本明細書中で使用されるとおり、細胞の1フレームは、単一のカメラにより取り込まれる1枚の画像内に取り込まれた生物検体の一部分として定義される。このことは、以下でより詳細に記載される。
【0041】
したがって、照射レーザービームは第一のコンデンサレンズ335を通過する。1つの実施形態において、この第一のレンズは4.6mmの焦点距離を有する。次いで、光線は第二のコンデンサレンズ340(これは、1つの実施形態において、100mmの焦点距離を提供する)を通過する。最後に、光線は第三のコンデンサレンズ345(これは200mmの焦点距離を提供する)を通過する。本発明は、特定のコンデンサレンズを使用して記載されているが、照射レーザービームを有利な直径に集束させる他の同様なレンズ構成が同様に機能することが、明らかなはずである。したがって、本発明はいかなる特定のコンデンサレンズ系の特定の実施にも制限されない。
【0042】
照射レーザービームは、いったん第三のコンデンサレンズ345を通過すると、照射レーザーから発せられる532nm波長の光を伝送するキューブビームスプリッタ350に入る。好ましくは、キューブビームスプリッタ350は25.4mm角の立方体である(Melles−Griot,Irvine,CA)。しかしながら、他の大きさが同様に機能すると予想される。さらに、他の実施形態に合うように、多数のプレートビームスプリッタまたは薄膜ビームスプリッタが、キューブビームスプリッタ350の代わりに使用され得る。当業者は、使用される特定の標識、ならびに照射レーザーおよび伝送レーザーの波長に従って、様々な異なる伝送波長を有するビームスプリッタを使用し得る。
【0043】
照射レーザー光は、いったんキューブビームスプリッタ350を通して伝送されると、長波通過ミラー355に到達し、長波通過ミラー355は532nm照射レーザー光を1組のガルバノメーターミラー360に反射し、ガルバノメーターミラー360は、照射レーザー光を、コンピューターの制御下で、走査レンズ(Special Optics,Wharton,NJ)365を通して検体へ導く。ガルバノメーターミラーは、画像化されるべき細胞のフレームにおける三次元の細胞集団の適当な部分に照射レーザー光が向けられるように制御される。本発明のこの実施形態において記載される走査レンズは、屈折レンズを含む。本発明において使用される用語「走査レンズ」は、単独で、または組み合わせて使用される1つまたはそれより多い屈折性または反射性光学要素の系を含むが、これらに限定されないことが注記されなければならない。さらに、走査レンズは、1つまたはそれより多い屈折性および/または反射性光学要素と組み合わせて使用される1つまたはそれより多い回折要素の系を含み得る。当業者には、適当な細胞集団を照射するための、走査レンズ系の設計の仕方は既知である。
【0044】
照射レーザーからの光は、検体に照射するのに有用である波長のものである。この実施形態において、連続波532nm Nd:YAG二重周波数(frequency−doubled)レーザー(B&W Tek,Newark,DE)からのエネルギーは、長波通過ミラー(Custom Scientific,Phoenix,AZ)355に反射し、検体中の蛍光標識を励起させる。1つの実施形態において、蛍光タグはフィコエリトリン(PE)である。あるいは、本発明のこの実施形態において、Alexa532(Molecular Probes,Eugene,OR)が蛍光タグとして使用され得る。フィコエリトリンおよびAlexa532は、580nm付近にピークを持つ発光スペクトルを有するので、検体から発せられた蛍光は長波通過ミラーを介してカメラアレイへ伝送される。カメラアレイの前面におけるフィルターの使用は、所定の波長範囲内にない光を遮断し、それによりカメラアレイに入る背景光の量を減少させる。当業者は、使用される標識の励起波長、励起および発光スペクトル、ならびに長波通過フィルター355の光学的性質に基づいて、適切なフィルターを選択することができる。
【0045】
532nm照射レーザーにはさらに、異なる波長でエネルギーを放出する複数の蛍光色素を励起させる能力がある。例えば、PE、Texas Red(登録商標)、およびCyChromeTMは、全て532nmレーザーにより効果的に励起され得る。しかしながら、それらはそれぞれ576nm、620nm、および670nmがピークのスペクトルを持つエネルギーを放出する。伝送される波長におけるこの差異は、各蛍光色素からの信号が他の信号と区別されることを可能にする。この場合、フィルター460により伝送される波長の範囲は拡張される。さらに、異なる信号がコンピューターにより区別されるように、放射光を取り込むためにカメラアレイが使用される。あるいは、放射光は、3台の単色カメラ(それぞれが特定の蛍光色素の発光波長の1つの選択的観測のためのフィルターを有する)に向けられ得る。様々な異なる励起および発光スペクトルを有する蛍光色素が、単一の検体からの複数の信号の検出および差別化を可能にするために、適切なフィルターおよび照射源とともに使用され得る。当業者は、光学コンポーネントに対する既知の照射および検出波長を考慮して、蛍光色素の励起および発光スペクトルの比較により、特定の組の光学コンポーネントにより差別化され得る蛍光色素を選択することができる。
【0046】
さらに別の実施形態は、単一の固定フィルター460を可動フィルターカセットまたは異なるフィルターを提供するホイール(これらは光路内外へ動かされる)で置き換えることを含む。そのような実施形態において、異なる波長の光の蛍光画像が、細胞処理の間異なる時間で取り込まれる。次いで、画像はコンピューターにより解析および相互に相関され、各細胞標的または全体としての細胞集団について多色の情報を提供する。
【0047】
多くの他のデバイスが検体を照射するためにこのように使用され得、アーク灯または石英ハロゲンランプなどのランプを含むが、これらに限定されないことが、一般に既知である。本発明において有用なアーク灯の例として、水銀灯またはキセノンアーク灯が挙げられる。当業者には、適当なランプが、様々な因子(スペクトルにわたる平均放射輝度、スペクトルの特定領域における放射輝度、スペクトル線の存在、スペクトル線での放射輝度、またはアークサイズを含む)に基づいて選択され得ることが既知である。発光ダイオード(LED)または上記のNd:YAG二重周波数レーザー以外のレーザーもまた、本発明において使用され得る。それ故、本発明は、アルゴンイオンもしくはクリプトンイオンレーザーなどのイオンレーザー、ヘリウムネオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、ローダミン6Gレーザーなどの色素レーザー、YAGレーザー、またはダイオードレーザーを含み得る。当業者は、上記またはShapiro,Practical flow cytometry,第3版.Wiley−Liss,New York(1995)に記載されるものなどの望ましい性質に従って、適切なレーザーまたはランプを選択し得る。
【0048】
上記のNd:YAG二重周波数レーザーの利点として、高強度、比較的効率的なエネルギー使用、小型のサイズ、および発熱が少ないことが挙げられる。異なる励起および発光スペクトルを持つ他の蛍光色素が、照射源、フィルター、ならびに長および/または短波通過ミラーを適切に選択した、そのような装置で使用され得るということもまた一般に既知である。例えば、Texas Red(登録商標)、アロフィコシアニン(APC)、およびPharRedTMは全て、633nm HeNe照射レーザーで励起され得るが、フルオロイソチオシアネート(FITC)、PE、およびCyChromeTMは全て、488nmアルゴン照射レーザーで励起され得る。当業者は、細胞が複数の波長の蛍光エネルギーを返すように、それらに照射する目的で、本発明の様々なコンポーネントを用いた多くの他の光学的レイアウトを利用し得る。上記の照射源は、単独で、または単一の機器内で広範な照射波長を提供するために他の源と組み合わせて使用され得、それにより多くの区別可能な標識の同時使用を可能にする。
【0049】
本発明は、検体を任意の波長または100ナノメートル〜30マイクロメートルの波長範囲(約200〜390nmの範囲に生じる紫外(UV)、約390〜770nmの範囲に生じる可視(VIS)、および約0.77〜25マイクロメートルの範囲の赤外(IR)を含む)で照射するように構成され得る。特定の波長または波長範囲は、上記で記載されるような特定の出力範囲を有する放射線源から生成され得る。同じく上記で例示されたように、適切な光学フィルターが、波長に基づき放射を選択的に通過、反射、または遮断するように選択され得る。本発明において有用な光学フィルターは、誘電体の複数の層が、様々な層からの反射間の強めあう干渉または弱めあう干渉に従って放射を通過または反射させる干渉フィルターを含む。干渉フィルターはまた、当該技術分野でダイクロイックフィルターまたは誘電体フィルターとも称される。同じく本発明において有用であるのは、選択波長または波長範囲を有する放射の通過を吸収により阻止する吸収フィルターである。吸収フィルターは、着色ガラスまたは液体を含む。
【0050】
本発明において使用されるフィルターは、1つまたはそれより多い特定のフィルター伝送特性(バンドパス、ショートパス、およびロングパスを含む)を有し得る。バンドパスフィルターは、最大放射伝送(Tmax)の中央波長および帯域幅により定義される波長範囲の放射線を選択的に通過させ、この範囲外の放射線の通過を遮断する。Tmaxは、中央波長で伝送される放射線の割合を定義する。帯域幅は、典型的には、Tmaxの半分である伝送値でフィルターを通過する波長の範囲である半値幅(FWHM)として記載される。本発明において有用なバンドパスフィルターは、10ナノメートル(nm)、20nm、30nm、40nm、または50nmのFWHMを有し得る。ロングパスフィルターは、Tmaxおよびカットオン波長により定義されるように、より高波長の放射線を選択的に通過させる。カットオン波長は、放射伝送がTmaxの半分である波長であり、波長がカットオン波長よりも増加すると伝送割合も増加し、かつ波長がカットオン波長よりも減少すると伝送割合も減少する。ショートパスフィルターは、Tmaxおよびカットオフ波長により規定されるように、より低波長の放射線を選択的に通過させる。カットオフ波長は、放射伝送がTmaxの半分である波長であり、波長がカットオフ波長よりも増加すると伝送割合が減少し、かつ波長がカットオフ波長よりも減少すると伝送割合が増加する。本発明のフィルターは、50〜100%、60〜90%、または70〜80%のTmaxを有し得る。
【0051】
照射レーザー305に加えて、いったん標的細胞が検出器により同定されるとそれに照射するための処理レーザー400が存在する。1つの実施形態において、処理レーザーからの放射ビームは、細胞集団内の標的細胞の壊死を誘導する。示されるとおり、処理レーザー400は、シャッター410を通過する523nmのエネルギービームを出力する。本明細書で記載される実施形態において、例示のレーザーは523nm波長を有するエネルギービームを出力するが、他の電磁放射源(照射源に関して上記で記載されたものなど)もまた、本発明の範囲内にあり得、標的粒子において望まれる特定の応答に従って選択され得る。
【0052】
処理レーザーエネルギービームは、いったんシャッター410を通過すると、エネルギービームの直径を検体の平面で適切な大きさに調整するビームエキスパンダー(Special Optics,Wharton,NJ)415に入る。ビームエキスパンダー415に続くのは、ビームの偏光を制御する半波長板420である。次いで、処理レーザーエネルギービームは褶曲ミラー425に反射して、キューブビームスプリッタ350に入る。処理レーザーエネルギービームは、照射レーザー光ビームの出口経路と一致するように、キューブビームスプリッタ350内で90°反射される。それ故、処理レーザーエネルギービームと照射レーザー光ビームとの両方が、同じ光路に沿ってキューブビームスプリッタ350を出る。処理レーザービームは、キューブビームスプリッタ350から、長波通過ミラー355に反射して、ガルバノメーター360により導かれ、その後三次元の検体内の焦点体積に処理電磁放射ビームの焦点を合わせる走査レンズ365に入る。焦点体積は、焦点体積内の細胞を殺すのに十分な量の電磁放射エネルギーを受ける。しかしながら、焦点体積を取り囲むエンベロープ中の細胞は、実質的に、処理レーザーからの放射により影響を及ぼされない。それ故、焦点体積を取り囲むエンベロープ中の細胞は処理レーザーにより殺されない。しかしながら、焦点体積は、焦点体積内に少なくとも一部分を有する所定の粒子が本発明の方法および装置において実質的に電磁的に影響を及ぼされ得るように、所定の粒子を完全に包含する必要はない。
【0053】
照射レーザー光ビームのわずかな部分が長波通過ミラー355を通過してパワーメーターセンサー(Gentec,Palo Alto,CA)445に入ることが注記されなければならない。パワーセンサー445に入るビームの部分は、照射レーザー305から発せられるパワーのレベルを計算するために使用される。類似した様式で、処理レーザーエネルギービームのわずかな部分がキューブビームスプリッタ350を通過して第二のパワーメーターセンサー(Gentec,Palo Alto,CA)446に入る。パワーセンサー446に入るビームの部分は、処理レーザー400から発せられるパワーのレベルを計算するために使用される。パワーメーターセンサーは、コンピューターシステム内の命令/コマンドがパワー測定を取り込んで処理レーザーから発せられるエネルギー量を決定するように、コンピューターシステムに電気的に接続されている。それ故、このシステムは、各レーザーのパワーを特定の用途に合うように変更するためのフィードバック制御を提供する。
【0054】
処理レーザーからのエネルギービームは、細胞の応答を達成するために有用である波長のものである。現在記載される実施形態において、放射線源は細胞を殺すのに十分なエネルギーを有する焦点体積を生成する。より詳細には、標的細胞が死に誘導されるように、標的細胞を含む流体の局所体積を加熱するために、パルス523nmのNd:YLF二重周波数レーザーが使用される。細胞死の速度および効率は、Niemz,Laser−tissue interactions:Fundamentals and applications,Springer−Verlag,Berlin 1996に記載されるように、細胞で実際に達した温度に依存する。簡単には、壊死の誘導は、タンパク質の変性および凝固により約60℃以上で生じる。さらに、約80℃以上に加熱すると細胞膜透過性の劇的な増加を引き起こし、さらに細胞に障害を与える。確実な壊死誘導のために必要とされる温度は、曝露期間で変化し、曝露期間が10分の1に減少するごとに約3.5℃上昇する。例えば、壊死は、約72℃で約1ミリ秒の曝露を受けて誘導され得るが、約94℃での曝露は、約1ナノ秒の曝露時間後に壊死を誘導する。それ故、処理電磁放射ビーム波長およびパワーは、数ミリ秒、数秒、またはさらには数分の間に細胞を殺すように選択され得る。
【0055】
Nd:YLF二重周波数、固相レーザー(Spectra−Physics,Mountain View,CA)が、その安定性、発射の高繰返し率、および保守不要で稼働する時間の長さを理由に使用される。しかしながら、大部分の細胞培養液および細胞は、この緑色波長において光に対して比較的透明であり、したがって細胞死を達成するために比較的高い流速量のエネルギーが使用される。処理レーザーからのエネルギーが効果的に吸収され、それにより検体を加熱するように、細胞培養に色素が添加されるかまたは存在している方法では、減少した量のエネルギーが、細胞死を誘導するために使用され得る。特異性はまた、検体中の標的粒子(細胞など)を色素で選択的に標識し、標識粒子に影響を及ぼすのに十分であるが非標識粒子に実質的に影響を及ぼすには弱すぎる低フルエンスの放射線を検体に照射することにより、達成され得る。示される実施例において、処理レーザーからの523nmのエネルギーを吸収するために、無毒性色素FD&C赤色40号(アルラレッド)が使用される。しかしながら、当業者は、検体による効果的なエネルギー吸収をもたらす他のレーザー/色素の組合せを同定し得る。例えば、633nmHeNeレーザーのエネルギーは、FD&C緑色3号(ファストグリーン FCF)により効果的に吸収される。あるいは、488nmアルゴンレーザーのエネルギーはFD&C黄色5号(サンセットイエロー FCF)により効果的に吸収され、1064run Nd:YAGレーザーエネルギーはFiltron(Gentex,Zeeland,MI)赤外吸収色素により効果的に吸収される。エネルギー吸収色素の使用を通して、細胞集団中の標的を殺すために必要とされるエネルギー量が減少され得る。なぜなら、そのような色素の存在でより多くの処理レーザーエネルギーが吸収されるからである。
【0056】
細胞を殺す別の方法は、処理レーザーから発せられる放射の波長を調整することである。処理レーザーから発せられる放射の波長は、照射レーザーに関して上記されたものを含む様々な波長または波長範囲のいずれかであり得る。当業者は、本発明の装置に処理レーザーとして利用可能なさまざまなレーザー(照射レーザーに関して上記されたものなど)を使用することができる。例えば、死滅は紫外レーザーの使用により達成され得る。355nm Nd:YAG三重周波数(frequency−tripled)レーザーからのエネルギーは細胞内の核酸およびタンパク質により吸収されて、細胞死をもたらす。別の実施形態において、細胞の死滅は、近赤外レーザー使用で達成され得る。2100nm Ho:YAGレーザーまたは2940run Er:YAGレーザーからのエネルギーは、細胞内の水により吸収されて、細胞死をもたらす。他の電磁放射源が、焦点体積の粒子または細胞に電磁的に影響を及ぼすための処理電磁放射ビームを生成するために、単独で、または上記のものなどの光学フィルターと組み合わせて使用され得る。
【0057】
この実施形態はエネルギービームによる細胞の死滅を記載するが、当業者は、他の応答(Niemz,前出により概説されるように、光機械的崩壊(photomechanical disruption)、光解離、光切除(photoablation)、および光化学反応を含む)もまたエネルギービームにより細胞に誘導され得ることを認識するだろう。例えば、Oleinick and Evans,「光力学的治療の光生物学:細胞標的および機構(The photobiology of photodynamic therapy:Cellular targets and mechanisms)」,Rad.Res.150:S146−S156(1998)に記載されるように、十分な量のエネルギーが、焦点体積に供給されて、ヘマトポルフィリン誘導体、スズ−エチオプルプリンまたはルテチウムテキサフィリンなどの感光性物質光力学的治療剤を特に活性化し得る。さらに、小さな一過性細孔が細胞膜で形成され(Palumboら,「色素支援レーザーオプトポレーションによる真核生物細胞における標的化遺伝子移入(Targeted gene transfer in eukaryotic cells by dye−assisted laser optoporation)」,J.Photochem.Photobiol.36:41−46(1996))、遺伝的または他の材料が入ることを可能にし得る。この細胞透過性化応答は、少なくとも2つの潜在的機構を通して達成され得る。第一は、衝撃波を誘導するための細胞および周囲の媒質に向けられたレーザーを使用し、それにより近隣の細胞表面に一時的な小孔の形成をもたらし、材料が非特異的に同部位の細胞に入ることを可能にする、オプトポレーションである。第二は、特定の細胞に向けられたレーザーを使用して、それらの標的化される細胞の膜に細孔を選択的に形成する、オプトインジェクション(optoinjection)である。さらに、細胞内または細胞上の特定の分子(タンパク質または遺伝材料など)が、指向性エネルギービームにより不活性化され得る(Grate and Wilson,「RNA転写物のレーザー媒介部位特異的不活性化(Laser−mediated,site−specific inactivation of RNA transcripts)」,PNAS 96:6131−6136(1999);Jay,D.G.,「発色団支援レーザー不活性化によるタンパク質機能の選択的破壊(Selective destruction of protein function by chromophore−assisted laser inactivation)」,PNAS 85:5454−5458(1988))。同じく、光退色が、膜におけるタンパク質拡散などの細胞内移動および分裂中の微小管移動を測定するために使用され得る(Ladhaら,J.Cell Sci.,110(9):1041(1997);Centonze and Borisy,J.Cell Sci.100(part 1):205(1991);White and Stelzer,Trends Cell Biol.9(2):61−5(1999);Meyvisら,Pharm.Res.16(8):1153−62(1999))。さらに、ケージ化化合物の光分解またはアンケージング(多光子放出を含む)が、所定の生物活性産物または他の産物の放出を、時間および空間分解能を持って、制御するために利用され得る(Theriot and Mitchison,J.Cell Biol.119:367(1992);Denk,PNAS 91(14):6629(1994))。特定の標的細胞に向けられた電磁放射の使用を介した、標的細胞に対する応答を誘導するこれらの機構もまた、本発明に組み込まれることを意図する。
【0058】
本発明の装置は、上記のように1つまたはそれより多い処理電磁放射ビームを含み得る。例えば、複数の電磁放射ビームが、1つまたはそれより多い、ランプまたはレーザーなどの電磁放射線源(これは分割されて複数の経路に向け直される)から発生し得る。経路は、単一の焦点体積または複数の焦点体積で終点となり得る。各経路は、所望であれば、異なる波長または強度の処理電磁放射ビームを生成するための異なる光学コンポーネントを通過し得る。代替的に、または加えて、複数の処理レーザーが本発明の装置に使用され得る。
【0059】
電磁放射ビームが検体内の焦点体積で交差するように、1つより多いレーザーが検体に向けられ得る。電磁放射ビームが交差する焦点体積は、焦点体積を取り囲むエンベロープ内の他の領域よりも高い強度の放射を受ける。検体を交差する電磁放射ビームの強度および数は、個別には焦点体積外の粒子に実質的に電磁的に影響を及ぼすことのできない量のエネルギーを生成しながら、焦点体積中の粒子に電磁的に影響を及ぼすのに十分な総エネルギーを生成するように選択され得る。検体の焦点体積と交差する2つまたはそれより多い処理電磁放射ビームは、異なる波長を有し得、かつ特定の電磁効果または電磁効果の組合せを望みどおりに誘導するように焦点体積を同時にまたは順次照射し得る。電磁放射ビームの波長および強度は、先に記載された範囲内から選択され得る。
【0060】
照射レーザー305および処理レーザー400に加えて、本装置は、階段状のZレベル(Zレベルはまた、本明細書中、被写界深度としても示される)で画像または細胞集団のフレームを取り込むカメラ450A、450B、450C、および450Dのアレイを有する検出器を含む。カメラアレイは、互いに関して垂直にずれた視界を有する複数のカメラを含み、これはアレイが検体内の様々なZレベル、または深度で細胞画像を取り込むことを可能にする。図3に図示されるように、各カメラ450A、450B、450C、450D、および450Eは、それぞれレンズ455A、455B、455C、455D、および455Eを通して、それぞれビームスプリッタ457A、457B、457C、および457Dにより反射された光を取り込むように焦点が合わせられている。ビームスプリッタ457A、457B、457C、および457Dに到達する前に、検体からの光はフィルター460を通過して、他の波長で生じる散在背景光を取り込むことなく、所望の波長で細胞の精密な画像化を可能にする。ストップ462は、望ましくない光が検体からの画像を伴わない角度からカメラアレイに入ることを防ぐために、フィルター460とミラー355との間に配置される。フィルター460は、特定の波長範囲内の光を選択的に通すために選択される。伝送される光の波長範囲は、照射レーザー305による励起に際して標的細胞から発せられる波長、ならびに背面光源475からの波長を含む。フィルター460は、照射レーザーの波長領域にある光の通過を選択的に阻止する。そうでなければ、これは検出器を飽和させるか、または蛍光信号を検出不可にする。
【0061】
背面光源475は、検体600の上に位置して、照射レーザー305により提供されるものと異なる波長で検体の背面照明を提供する。本明細書で記載される実施形態において、背面光源は、それが長波通過ミラーを通ってカメラアレイに向けられるように伝送され得るように、590nmで光を発するLEDである。この背面照明は、画像化されるフレーム中に蛍光標的が存在するかどうかにかかわらず、細胞を画像化するために有用である。背面光は、染色されていない、非蛍光の細胞のみがフレーム中に存在する場合であっても、系の適切な焦点を獲得するために使用され得る。1つの実施形態において、背面光は、アクセスドア35の下側に取り付けられる(図2)。それ故、本装置は、適切な背面光、照射レーザー、および所望の波長の照射をカメラアレイへ選択的に通過させるための光学フィルターで構成され得る。他の波長の光は、フィルター460を通過することを阻止されてカメラアレイ450により記録される。
【0062】
現在記載される実施形態において、検出器が、複数の電荷結合素子(CCD)を有するカメラアレイを含むことが注記されるべきである。カメラは、異なる焦点平面領域を視界とするために置くことができ、視界とされる焦点平面領域のそれぞれは検体の異なる断面画像である。検出器は、処理するためにコンピューターシステムに断面画像を伝送して戻し得る。以下に記載されるように、コンピューターシステムは検体標的細胞の座標を、CCDカメラアレイにより取り込まれた1つまたはそれより多い断面画像を参照して決定する。
【0063】
図4〜図6を全体的に参照して、CCDカメラアレイの使用が図示される。図示されるように、CCDカメラの視界は実質的に平行であり、各CCDカメラは異なる焦点距離を視界としている。各カメラをアレイ内で垂直にずらして配置することにより、またはカメラと検体との間に焦点合わせ光学素子を置くことにより、異なる焦点平面が、カメラにより見られ得る。そのような配置を使用して、検体中の異なる被写界深度で観測された焦点平面領域内の細胞の焦点の合った画像を取り込むことが可能になる。図5に図示されるように、各被写界深度で観測された焦点平面領域は、切断面600A〜600Eで示されるように、断面画像として取り込まれ、次いで図7の三次元画像プロセッサ225Aにより組み立てられて、検体の三次元の体積画像を作製し得る。次いで、この画像は、検体の体積内の適切な位置に処理レーザーを向ける目的で、3つの座標を決定するために使用される。
【0064】
本装置は、光学デバイスの構造に従って、様々な被写界深度で断面画像を作製し得る。当業者は、浅い被写界深度(100μm未満の深度を含む)で画像化するための検出器を構成することができる。検体の大きさに応じて、被写界深度は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、または100μmから選択され得る。より大きな検体について、より大きな被写界深度さえも、より深い画像化のために用いられ得る。
【0065】
本発明の装置は、異なる分解能または倍率で検体の画像を取り込むように構成され得る。これは、1つまたはそれより多いカメラの前にあるレンズ455の性質を変更することにより達成され得る。倍率または分解能が迅速に変更され得るように、異なるレンズを含むタレット、カセット、またはホイールが、カメラと検体との間に置かれ得る。タレット、カセット、またはホイールは、検体処理手順の過程で、または検体処理手順の間に分解能または倍率を手動または自動変更するために、位置決めデバイスに機能的に取り付けられ得る。
【0066】
装置に使用される検出器はまた、方向の異なる視界で検体を画像化する能力のある2つまたはそれより多いカメラを含み得る。方向の異なる視界での画像化は、ステレオ画像化とも呼ばれ、検体の画像を再構築するために使用され得る。2つまたはそれより多いカメラは、それらの種々の方向の視界が1°〜180°から選択される角度で離れている場合に、検体をステレオ画像化し得る。本発明は、1°、2°、5°、10°、15°、20°、25°、30°、35°、40°、45°、50°、90°、または180°未満で離れた、異なる方向の視界を有するカメラを含むことができ、ここで1°はそれが円周の1/360に範囲を定めた角度である数学的用法と一致して使用されることを意図する。
【0067】
本発明において使用される検出器は、比較的浅い焦点平面領域を視界とする1つまたはそれより多いカメラを含むことができ、ここで焦点平面領域は検体の異なる切断面に焦点変更し得る。検体を異なる被写界深度で観測するために特定のカメラの視界が焦点変更され、それにより検体の異なる断面画像を得ることができる。そのような焦点変更は、カメラを移動させることにより達成され得る。検出器の他の下部慣性コンポーネントは、好ましくは、焦点変更を達成するために動かされ、カメラと検体の光学経路の間に置かれるレンズまたはミラーを含む。調整されるべきコンポーネントは、手動または自動焦点変更のための位置決めデバイスに操作可能に取り付けられ得る。自動焦点合わせは、以下で記載されるもののような画像化処理デバイスと通信する能力のある、自動位置決めデバイスの組み込みにより達成され得る。
【0068】
検体またはその中の粒子から向けられた放射を、検体中の粒子の存在または量を決定するために引き続き操作または記憶され得る信号に変換する能力のある任意の検出器が、本発明の装置または方法に使用され得る。検出器は、光ダイオード、光電子倍増管、または電荷結合素子を含み得る。検出器はまた、検体またはその中の粒子から向けられた放射線を、検体の三次元表示に変換され得る信号の組に変換する画像化デバイスを含み得る。そのような画像化デバイスは、CCDカメラ、デジタルカメラ、フィルムカメラ、または写真用カメラなどのようなカメラを含み得る。当業者は、様々な周知の要因(例えば、使用される放射線源との適合性、感受性、検出のスペクトル範囲、およびデータ処理デバイスとの互換性が挙げられる)に基づいて検出器を選択し得る。
【0069】
ここで図8を参照して、光学サブアセンブリの実施形態の斜視図が図示される。図示されるように、照射レーザー305は、光線を、シャッター310およびボールレンズ315を通してSMA光ファイバーコネクター320へ送る。光は、光ファイバーケーブル325および出力330を通過して、コンデンサレンズ335、340、および345中へ入る。次いで、光はキューブビームスプリッタ350に入って長波通過ミラー355に伝送される。長波通過ミラー355から、光線は、コンピューター制御されたガルバノメーター360に入り、次いで走査レンズ365を通して検体中の細胞の適切なフレームに案内される。
【0070】
また図8の斜視図に図示されるように、処理レーザー400はシャッター410を通してビームエキスパンダー415中へエネルギーを伝送する。処理レーザー400からのエネルギーは、ビームエキスパンダー415を通過し、半波長板420を通過してから、褶曲ミラー425に当たり、続いてキューブビームスプリッタ350に入り、ここでエネルギーは90°で長波通過ミラー355へ反射され、ここからエネルギーはコンピューター制御されたガルバノメーターミラー360中へ反射される。ガルバノメーターミラー360は、ビームが検体の一部分(特定の標的細胞が位置する)に当たるように、処理レーザービームが走査レンズ365を通るよう導くように調整され得る。したがって、所望の応答が、本発明の装置を使用して標的細胞に選択的に誘導され得る。
【0071】
検体の非常に大きな表面領域を処理に適応させる目的で、本装置は走査レンズに関して検体容器を機械的に動かす可動試料台を含む。それ故、いったん走査レンズの視野内の特定の細胞亜集団が処理されると、可動試料台は走査レンズの視野内の別の細胞亜集団を持ってくる。図11に図示されるように、コンピューター制御された可動試料台500は、処理されるべき検体600を含有する検体容器505を保持する。可動試料台500は、機器の光学コンポーネントに対して検体容器が動かされ得るように、コンピューター制御されたサーボモーターにより2本の軸に沿って動かされる。定められた経路に沿った試料台の動きは、装置の他の動作と連係している。さらに、特定の座標が、可動試料台の所定の位置への復帰を可能にするために保存され、かつ呼び戻され得る。xおよびy移動のエンコーダは、試料台位置の閉ループフィードバック制御を提供する。
【0072】
フラットフィールド(F−θ)走査レンズ365は、可動試料台の下に取り付けられ得る。走査レンズの視野は、可動試料台500により現在走査レンズの上方に配置されている検体の一部分を含む。レンズ365は、系に焦点を合わせる目的でレンズ365が自動的に上昇および下降させられる(z軸に沿って)ことを可能にするステップモーターに取り付けられ得る。
【0073】
図8〜図10に図示さるように、走査レンズ365の下には、2本の垂直な軸に沿って電磁エネルギーを屈折させる、ガルバノメーター制御されたステアリングミラー360がある。ステアリングミラーの背後には、545nm未満の波長の電磁エネルギーを反射する長波通過ミラー355がある。545nmより長い波長は、長波通過ミラーを通過し、フィルター460、カップリングレンズ455を通ってCCDカメラアレイ中に向けられ、それにより適当な大きさの画像をカメラアレイ450のCCDセンサーに作成する(図3および図4を参照)。走査レンズ365およびカップリングレンズ455の組合せにより定義される倍率は、各カメラによる1つのフレーム中の視界となる範囲を最大にしながら、単一の細胞を確実に検出するように選択され得る。この実施形態においてCCDカメラアレイ(DVC,Austin,TX)が図示されるものの、カメラは、上記のような、当業者に公知の任意の型の検出器または画像収集器材であり得る。装置の光学サブアセンブリは、図2および図9に図示されるように、好ましくは、動作中の安定性を提供するために、振動減衰プラットフォームに取り付けられる。
【0074】
ここで図11を参照して、可動試料台500の頂面図が図示される。示されるように、検体容器は、可動試料台500に着脱式に取り付けられ得る。検体容器505は、可動試料台500に対して前方および後方に動くように設計された上部軸ネストプレート510に置かれている。ステップモーターは、コンピューターからのコマンドが検体容器505の前方または後方への動きを指示するように、上部軸ネストプレート510およびコンピューターシステムに接続され得る。
【0075】
可動試料台500はまた、1対の軸受トラック525AおよびBに沿った可動試料台500の左右の動きを提供する、タイミングベルト515に接続されている。タイミングベルト515は、滑車カバー530の下に収納された滑車に取り付けられている。滑車は、タイミングベルト515を駆動して可動試料台500の左右の動きをもたらすステップモーター535に接続される。ステップモーター535は、コンピューターシステム内のコマンドが可動試料台500の左右の動きを制御するように、コンピューターシステムに電気的に接続されている。走行限界センサー540は、コンピューターシステムと接続していて、可動試料台が所定の側方距離を越えて走行した場合に警告を発する。
【0076】
装置の操作に干渉し得る任意の過度の衝突または振動を記録するために、好ましくは、1対の加速度計545AおよびBがこのプラットフォームに組み込まれる。さらに、検体容器が水平であることを確実にし、それにより検体容器中の重力により誘導される動きの可能性を減少させるために、好ましくは、2軸傾斜計550が可動試料台に組み込まれる。
【0077】
検体室は、検体容器上の結露を除去するための導管組織付きファン、および検体室が許容可能な温度範囲内にあるかどうかを測定するための熱電対を有する。電子コンポーネントにより発生する熱を放出するためのさらなるファンが提供され、適切なフィルターが吸気口215AおよびBに使用される(図2を参照)。
【0078】
コンピューターシステム225は、上記の電子ハードウェアの様々なコンポーネントの動作および同期を制御する。コンピューターシステムは、ハードウェアとインタフェースし得る任意の市販されているコンピューターであり得る。そのようなコンピューターシステムの1つの例は、Microsoft Windows(登録商標)2000オペレーティングシステムを作動させるIntel Pentium(登録商標)IVベースのコンピューターである。ソフトウェアは、様々なデバイスと通信するために、および動作を以下に記載されるような様式で制御するために使用される。
【0079】
装置がまず初期化されると、コンピューターは、装置の適切な初期化のために、ハードドライブからRAMへファイルをロードする。装置が適切に動作することを確実にするために、多数の組込試験が自動的に行われ、細胞処理装置を較正するために較正ルーチンが実行される。これらのルーチンの完了の成功に際して、ユーザーは行われるべき手順に関する情報(例えば、患者名、ID番号など)をキーボードおよびマウスを介して入力するようにプロンプトされる。いったん要求される情報が入力されると、ユーザーはアクセスドア35を開けて検体を可動試料台にロードするようにプロンプトされる。
【0080】
いったん検体が可動試料台に置かれてドアが閉められると、コンピューターは、定位置に動くように試料台に信号を送る。ファンは、検体の加温および除曇を開始するように初期化される。この間、検体内の細胞は、底面に落ち着かせられる。さらに、この間、装置は、検体が適切にロードされ、かつシステムの光学素子の焦点範囲内にあることを確実にするコマンドを実行し得る。例えば、検体容器の底に適切に走査レンズの焦点が合わせられていることを確実にするために、システムによって検体容器の特定のマーキングが位置決めおよび焦点合わせされ得る。適当な時間後、コンピューターはファンを切って処理中の過剰な振動を防止し、細胞処理加工が開始される。
【0081】
最初に、コンピューターは、処理されるべき検体の第一の範囲が直接走査レンズの視野にあるように、可動試料台が走査レンズを覆って位置決めされるように命令する。ガルバノメーターミラーは、視野中の中心フレームがカメラに画像化されるように動くことを命令される。以下に記載されるように、走査レンズにより画像化される領域は、複数のフレームに分割される。各フレームは、フレーム内の細胞がカメラアレイにより効果的に画像化されるように、適切な大きさになっている。
【0082】
次いで、走査レンズが視野に焦点を合わせ得るように、視野を照射するために背面光475が起動される。いったん走査レンズが検体に適切に焦点を合わせると、コンピューターシステムは、各フレームが別々にカメラアレイにより分析されるように視野を複数のフレームに分割する。この方法論は、装置が、機械試料台を動かすことなく巨大な視野内の複数のフレームを処理することを可能にする。試料台を動かす場合に含まれる機械的工程と比較してガルバノメーターは非常に迅速に1つのフレームから次のフレームへ動くことが可能であることから、この方法はきわめて迅速かつ効率的な装置をもたらす。
【0083】
本発明の装置はさらに、検体の1つまたはそれより多い二次元表示を組み合わせて三次元表示を作成するための画像処理デバイス225Aを含み得る。二次元または三次元表示は、検体中の少なくとも1つの所定の粒子の座標(画像を作成するために使用され得る、座標のグラフ式もしくは表形式リストまたはコンピューターコマンドのセットなど)を特定する、検体またはその一部分の画像または任意の特性表示を指す。
【0084】
最初に、1つまたはそれより多い二次元表示(二次元断面画像など)がカメラアレイにより取り込まれ、コンピューターのメモリに記憶され得る。単一の二次元画像は検体の三次元表示を作成するのに十分な情報を含み得るが、三次元画像を作成するために2つまたはそれより多いかまたは複数の二次元画像を処理することが望ましい場合がある。コンピューターの命令は、三次元表示(三次元画像など)を作成または計算し得る。そのようにして計算された三次元画像は、各段のZレベルで、画像中の大きさ、形状、数、または他のオブジェクトの特徴に関して分析され得る。必要であれば、コンピューターは、所定のフレームの焦点を改善するために、走査レンズに取り付けられているZ軸モーターに上昇または下降するように命令する。次いで、ガルバノメーター制御ミラーは、カメラアレイ中で、視野内に、第一のフレームを画像化するように命令される。いったんガルバノメーターミラーが視野中の第一フレームに狙いを合わせられると、照射レーザー前面のシャッターが開けられて、ガルバノメーターミラーおよび走査レンズを通して第一のフレームに照射される。カメラアレイは、細胞の第一のフレーム中の検体からの任意の蛍光発光の画像を取り込む。いったん画像が取得されると、照射レーザー前面のシャッターは閉じられ、そしてコンピューター内のソフトウェアプログラム(Epic,Buffalo Grove,IL)が画像を処理する。
【0085】
画像処理デバイス225Aは、検体の断面画像を探索して焦点の合った断面画像を識別することにより、仮想自動焦点合わせ能力を含み得る。仮想自動焦点合わせは、検体の任意の部分の三次元表示の作成を必要とせず、したがって、三次元表示の形成前または形成なしに行われ得る。複数の断面表示(例えば、断面画像)は、異なる焦点平面領域を視界とする1つまたはそれより多いカメラを使用して、上記のように得られ得る。仮想自動焦点合わせは、複数の断面画像を分析して焦点のあった画像を選択することにより達成され得る。次いで、続く画像処理が、所望の標的粒子を効果的に同定するために、焦点断面画像について選択的に実行され得る。それ故、所定の粒子は、焦点断面画像中のそのXおよびY座標ならびに断面画像のZレベルに基づいて、検体中で同定または位置決めされ得る。XおよびY座標とは、本明細書中使用される場合、視界の方向に対して垂直な平面を形成する二次元中の座標を指す。仮想自動焦点合わせにより選択される複数の焦点断面画像は、上記のように、三次元画像を計算するために使用され得る。
【0086】
リアルタイムの自動焦点合わせが本発明において使用され得るものの、仮想自動焦点合わせはより迅速なスループットという利点を提供する。詳細には、リアルタイムの自動焦点合わせは、焦点断面画像が得られるまでに、しばしば光学コンポーネントの複数調整および再画像化を必要とする。対照的に、重複しない焦点平面領域を視界とするように複数の固定カメラが置かれている場合、少なくとも1つのカメラは、検出器の任意のコンポーネントを動かす必要なく、焦点のあった視界を有する。続いて、画像は、リアルタイムの自動焦点合わせ法に使用されるものと類似のアルゴリズムを使用して、光学コンポーネントの時間のかかる移動および画像の再取得を必要とせずに、解析され得る。
【0087】
既知の自動焦点合わせアルゴリズム(例えば、顕微鏡観察または自動焦点カメラに使用されるもの)が、本発明の装置および方法において、断面画像の解析および焦点断面画像の識別のために使用され得る。本発明の装置または方法において使用され得る自動焦点法の例は、二分探索自動焦点である。二分探索自動焦点は、所望の焦点を有するものが識別されるまで、その間に焦点断面画像が存在すると考えられる2枚の断面画像を予め選択し、反復して(iteratively)介在する断面画像の数を減少させることにより、実際上行われ得る。反復は、境界断面画像の間の中間にある断面画像を選択する工程、選択された断面画像を所定の焦点値について評価する工程、および所望の焦点値を有する断面画像が同定されるまで境界距離をさらに減少させる工程を包含する。あるいは、予め選択された初期断面画像から開始して断面画像が段階的様式で解析される、逐次自動焦点法が使用され得る。
【0088】
別の実施形態において、検出器は、二次元の検体の画像を取り込み得る。仮想自動焦点合わせは、検体の深度が検出器の視界の被写界深度よりも浅い場合に機能する。仮想自動焦点合わせは、上記のように、二次元の検体中に位置する所定の粒子についてXおよびY座標を同定または決定するように実行され得る。そのように同定される粒子は、本発明の装置または方法を使用して、標的化されて電磁的に影響を及ぼされ得る。
【0089】
上記のパワーセンサー445は、照射レーザーにより発せられる光強度のレベルを検出する。測定された強度に基づいて、コンピューターは、特定の用途に対して適切な量の光が細胞のフレームに照射されているかどうかを判定し得る。特定の閾値が得られないか、または信号が所望の最大値を上回る場合、レーザー強度は調整され得、別の照射および画像取込シーケンスが実行される。適切な条件が達成されるまでそのような反復が実行され得るか、または予め選択された回数の反復後、システムは一時停止またはエラー状態の指示を行い得、これはオペレーターに通信される。
【0090】
閾値または最大エネルギーレベルは、本発明の方法または装置の特定の適用に依存する。用語「閾値」は、特定の性質を変化させるのに十分な量のエネルギーを指す。例えば、閾値量の電磁エネルギーは、細胞を殺すのに、膜または細胞を一時的に透過性にするのに、細胞周期の段階を誘導するのに、遺伝子発現を活性化または抑制するのに、細胞内pHを定められた範囲内で増加または減少させるのに、あるいは細胞の形態、代謝、または発生段階を変更させるのに十分な量であり得る。同一の検体中の、閾値の、またはそれを越えた放射を受けない他の細胞は、特定の変化を経験しない。本発明の装置または方法において使用される電磁エネルギーの範囲は、閾値および最高限度により定義され得る。「最高限度」は、閾値量よりも大きく、かつ特定の性質に望ましくない変化を誘導するのに十分なエネルギー量を意味することを意図する。最高限度は、任意の検出可能な変化(閾値エネルギーに関して上記のものを含む)により定義され得る。それ故、本発明において使用される電磁エネルギーの範囲は、恒常的な透過化(permeabilization)も細胞死も引き起こすことなく、膜または細胞を一時的に透過性にするのに十分なエネルギー量を含み得る。
【0091】
検体の望ましくない加熱および光退色を減少させるために、および所望の検出範囲で蛍光信号を提供するために、照射光の遮断が使用され得る。画像解析アルゴリズムが実行されて、取り込まれた画像の特徴を参照することにより、フレーム中の全標的細胞のx−y−z重心座標が位置決めされる。画像に標的がある場合、コンピューターは、可動試料台ポジションおよび視野に関連して標的位置の三次元座標を計算し、次いで処理電磁放射ビームが細胞の第一のフレーム中の第一の標的の位置を指すようにガルバノメーター制御ミラーの位置を合わせる。画像を取り込んだカメラの焦点距離に一部基づいたアルゴリズムによりz座標が計算され得ることが注記されるべきである。さらに、この時点で視野内の細胞の単一のフレームのみが記録されて解析されることが注記されるべきである。それ故、検体のこの亜集団内に比較的少数の同定された標的が存在するはずである。その上さらに、カメラアレイは細胞のより小さな集団に向けられることから、各標的がCCDカメラ内の多数の画素により画像化されるように、より高倍率が使用される。
【0092】
いったんコンピューターシステムがガルバノメーター制御ミラーを細胞の第一のフレーム内の第一の標的細胞の場所を示すように位置決めすると、第一の標的細胞に適切な用量のエネルギーが与えられるように、少しの間処理レーザーが発射される。上記のパワーセンサー446は、処理レーザーにより発せられたエネルギーレベルを検出し、それによりコンピューターは、それが標的細胞に応答を誘導するための所望の範囲内にあるかどうかを計算することが可能になる。処理レーザーのパワーは調整され得、処理レーザーは同じ標的に再び発射される。反復標的化、発射、および検知工程は、適切な条件が達成されるまで、または予め定められた回数を上限として繰り返され得、その後反復は一時中断するか、またはエラーメッセージがオペレーターに通信される。別の実施形態において、処理レーザーはフレーム内の標的細胞の1つより多いグループまたは全てに一度発射され得、引き続いてコンピューターは標的レーザーを、応答を誘導するのに十分なレベルのエネルギーを受けなかった任意の細胞に向け得る。
【0093】
いったん細胞の第一のフレーム中の全ての標的が処理レーザーで照射されると、ミラーは、視野にある細胞の第二のフレームに位置決めされることができ、フレーム照射およびカメラ画像化をした時点で処理工程が繰り返される。この処理工程は、走査レンズ上の視野内の全フレームに対して続けられ得る。これらのフレーム全てが処理されると、コンピューターは可動試料台に検体中の次の視野に移動するように命令し、背面光照射および自動焦点工程から処理が繰り返される。フレームおよび視野は、検体の範囲を不注意に欠落させる可能性を減少させるために重複し得る。いったん検体が完全に処理されると、オペレーターは検体を取り出すように伝えられ、装置は直ちに次の検体の準備が整う。上記の文章は標的の位置決めのための蛍光画像の解析を記載するものの、当業者は、非蛍光背面光LED照射画像が、他の性質(光の吸収、透過、または屈折に基づいて標準的な顕微鏡で視認可能なものなど)に基づいて標的細胞を位置決めするために有用であり得ることを、理解する。
【0094】
ガルバノメーターミラーは、連続したフレームの画像化および連続した標的の照射を制御する利点を提供する。ガルバノメーターのブランドの1つは、Cambridge Technology,Inc.モデル番号6860(Cambridge,MA)である。このガルバノメーターはミリ秒のフラクション内で非常に正確に再配置することができ、妥当な時間内での広範囲および多数の標的の処理を可能にする。さらに、可動試料台は、検体の限定された範囲を走査レンズの視野中に移動させるために使用され得る。この動きの組合せは自動化することができ、装置または方法の処理能力の増加を提供する。
【0095】
本発明の他の実施形態もまた可能であることが理解されるはずである。例えば、コンベヤーベルトと類似した可動試料台が、上記のプロセスを通して細胞の検体を連続して動かすために含まれ得る。制御ボードから連続して生成されるエラー信号は、コンピューターによりモニターされて、画像が取り込まれる前に、または閉ループ様式で標的が発射を受ける前に、ミラーが所定位置にあり、かつ安定していることを確実にする。
【0096】
1つの実施形態において、本明細書中に記載される装置は、1分あたり、生物検体の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10平方センチメートル中の粒子に電磁的に影響を及ぼし得る。別の実施形態において、本明細書中に記載される装置は、1分あたり、生物検体の少なくとも25万、50万、100万、200万、300万、または400万の細胞を処理する。本装置が動作する速度は、1分あたりの電磁的に影響を及ぼされる粒子含有焦点体積の数として測定され得る。本装置は、1分あたり、検体中の少なくとも1、2、3、4、5、6、8、10、15、20、30、60、100、300、500、1000、3000、5000、10000、30000、50000、100000、300000、または500000の別個の焦点体積に、電磁的に影響を及ぼし得る。さらに、画像化の速度は、少なくとも1Hz、2Hz、3Hz、4Hz、5Hz、6Hz、8Hz、10Hz、15Hz、30Hz、50Hz、100Hz、150Hz、300Hz、500Hz、または1000Hzの速度であり得る。
【0097】
1つの実施形態は、生物検体が周期的にインサイチュでモニターおよび処理され得るように、装置中での生物検体のインビトロの維持を可能にする。これは、検体を37℃の標準組織培養環境下に維持することにより達成される。このように、検体中の特定の細胞を経時的に追跡し、検体中の特定の細胞の状態を周期的に評価し、そして/またはこれらの特定の細胞の処理を周期的に行うことができる。このシステムは、大きな検体が走査モードで繰り返し処理され得るように、細胞の場所を記録し、その後可動試料台の向きをそれらの記録された場所へ向ける能力を装置に提供するための、ソフトウェアおよびコンピューターメモリ記憶装置を備える。
【0098】
もちろん、上記の実施形態の多くの改変が可能であり、細胞の照射、画像化、および標的化の代替的方法を含む。例えば、走査レンズと相対的な検体の動きは、走査レンズが動かされながら、検体を実質的に固定された状態に保つことにより達成され得る。照射ビーム、画像、およびエネルギービームの方向付け(steering)は、任意の制御可能な反射または回折デバイス(プリズム、圧電傾斜プラットホーム、または音響光学偏光器を含む)によって達成され得る。さらに、本装置は検体の下または上からのいずれかで画像化/処理し得る。装置は可動走査レンズを通して焦点を合わせることから、照射およびエネルギービームはz軸に沿って種々の焦点平面に向けられ得る。それ故、検体の異なる垂直高度に位置する部分は、三次元の様式で装置により特定的に画像化されて処理される。工程の順序もまた、プロセスを変化することなく変更され得る。例えば、検体中の全標的の座標が位置決めされて記憶され、次いで標的に戻り、それらに1つまたはそれより多い回数である期間にわたりエネルギーを照射し得る。
【0099】
検体を最適に処理するため、検体の大部分が狭い範囲の焦点内に現れるように、検体は実質的に平坦な表面に置かれなければならない。この表面上の細胞密度は、基本的には任意の値であり得る。しかしながら、細胞密度の増加は、本発明の装置または方法において走査または検出されるために必要とされる全表面積を最小化し得る。
【実施例】
【0100】
以下の実施例は、異なる用途での、記載される方法および装置の使用を例示する。
【0101】
(実施例1:自家HSC移植)
自家HSC移植を必要としている、B細胞由来転移性腫瘍を有する患者が医師により同定される。処置の第一工程として、患者は標準HSC収集手順を受け、未知数の腫瘍細胞が混入した約1×1010個の造血細胞の収集物をもたらす。収集された細胞は、CD34表面抗原を有する細胞を選択する市販の免疫親和性カラム(Isolex(登録商標)300、Nexell Therapeutics, Irvine,CA)によりHSCを豊富にし、未知数の腫瘍細胞を含む約3×108個の造血細胞の集団をもたらす。その後、混合集団は、フィコエリトリンと複合した抗B細胞抗体(CD20およびCD23に対する)、およびCyChromeTMと複合した抗CD34抗体と接触させられる。
【0102】
次いで、混合細胞集団は、滅菌検体容器中、実質的に平坦な表面上、ほぼコンフルーエンスで、1平方センチメートル当たり約500,000個の細胞で置かれる。検体は、上記で記載される装置の可動台に置かれ、全ての検出可能な腫瘍細胞が、フィコエリトリンタグの存在およびCyChrome(商標)タグの非存在により同定され、次いで処理レーザーからの致死量のエネルギーの標的とされる。装置の設計は、4時間足らずでの臨床規模の移植検体の処理を可能にする。細胞は、検体容器から回収され、洗浄され、次いで凍結保存される。細胞が再注入される前に、患者の身体中の腫瘍細胞を破壊するために、患者は高用量化学療法を受ける。この処置に続いて、処理された細胞が、37℃で解凍されて患者に静脈内投与される。患者は、その後最初の癌が寛解することなく回復する。
【0103】
(実施例2:同種異系HSC移植)
別の実施形態は、同種異系HSC移植設定における移植片対宿主病の顕著な危険性および重症度に有効であり得る。いったん適したドナーが見つかると、同種異系移植のための患者が選択される。上記の実施例に記載されるように、選択されたドナーから細胞が収集される。この場合、細胞混合物は、フィコエリトリン標識抗CD3 T細胞抗体と接触させられる。あるいは、特異的アロ反応性T細胞サブセットが、アロ抗原の存在下、活性化T細胞マーカー(例えばCD69)を使用して標識され得る。細胞集団は本明細書中に記載される装置により処理され、それにより患者に与えられるT細胞の数を正確に規定および制御する。この種の制御は有利である。なぜなら、多すぎるT細胞の投与は移植片対宿主病の危険性を増加させ、一方少なすぎるT細胞は移植失敗の危険性および既知の有益な移植片対白血病効果を損なう危険性を増加させるからである。本発明および方法は、同種異系移植においてT細胞の数を正確に制御する能力を有する。
【0104】
(実施例3:組織工学)
別の用途では、本装置は、組織工学用途のための接種材料に混入した細胞を除去するために使用される。細胞混入問題は、LangerおよびVacanti,Sci.Amer.280:86−89(1999)に記載されるように、組織工学用途の実行に必要な初代細胞培養物の確立に存在する。詳細には、軟骨欠損に対する軟骨細胞治療が、軟骨バイオプシー由来の細胞集団中の不純物により妨害される。したがって、本発明は、これらの型の細胞を接種材料から特異的に除去するために使用される。例えば、軟骨バイオプシーが、軟骨置換の必要がある患者から取られる。次いで、検体は、Brittbergら、N.E.J.Med.331:889−895(1994)に記載されるように、従来の条件下で増殖させられる。次いで、培養物は任意の混入細胞(急増殖する線維芽細胞など)に対する特異的標識で染色される。次いで、細胞混合物を記載される装置内に置き、標識混入細胞を処理レーザーの標的として、それにより、よりゆっくりと増殖する軟骨細胞が培養物中で完全に発達することを可能にする。
【0105】
(実施例4:幹細胞治療)
さらに別の実施形態は、広範な疾患を処置するための胚幹細胞の使用を含む。胚幹細胞は未分化であることから、それらは移植に使用を見いだす多くの型の組織(心筋細胞およびニューロンなど)を生成するために使用され得る。しかしながら、インプラントされる未分化の胚幹細胞はまた、Pedersen,Sci.Amer.280:68−73(1999)に記載されるように、奇形腫として知られる型の腫瘍を形成する細胞型の寄せ集めをもたらし得る。それ故、胚幹細胞由来の組織の治療的使用は、十分に分化した細胞のみがインプラントされることを確実にするために、細胞の厳密な精製を含まなければならない。本明細書中に記載される装置は、胚幹細胞由来組織の患者への移植前に、未分化の幹細胞を除去するために使用される。
【0106】
(実施例5:ヒト腫瘍細胞培養物の生成)
別の実施形態において、ヒト腫瘍細胞の培養を開始する目的で、腫瘍バイオプシーが癌患者から取り出される。しかしながら、多くの腫瘍型からの初代ヒト腫瘍細胞培養物のインビトロでの確立は、腫瘍細胞より優れたインビトロでの増殖特性を有する初代細胞集団の混入の存在、およびそのような検体から入手可能な腫瘍細胞数の制限により複雑になっている。例えば、混入する線維芽細胞は、多くの癌細胞培養物の確立において主要なチャレンジを表す。開示される装置は、バイオプシーされた腫瘍細胞を無傷にしたままで、混入する細胞を特に標識および破壊するために使用される。したがって、より活動的な初代細胞は癌細胞株を上回ることも破壊もしない。本明細書中に記載される装置は、比較的高い収率で細胞の精製を可能にし、このことは、出発細胞数が制限されている場合の適用に特に重要である。開示される装置からの高収率の精製細胞は、他の細胞精製法を越える顕著な利点を提供する。
【0107】
(実施例6:特異的mRNA発現ライブラリの生成)
異なる細胞集団内の遺伝子の特異的発現パターンは、多くの研究者にとって非常に興味深いものであり、そして異なる細胞型について発現される遺伝子の単離およびライブラリ作成のために多くの研究が行われてきている。例えば、腫瘍細胞対正常細胞においてどちらの遺伝子が発現されるかを知ることは、Cossmanら、Blood 94:411−416(1999)に記載されるように、大きな潜在的価値がある。そのようなライブラリを生成するために使用される増幅方法(例えばPCR)のため、少数の混入細胞さえも不正確な発現ライブラリをもたらし得る。この問題を克服するための一つのアプローチは、Schutzeら、Nat.Biotech.16:737−742(1998)に記載されるように、増幅のための出発遺伝材料を提供するために単一の細胞が使用される、レーザー微量組織採取(laser capture microdissection(LCM))の使用である。mRNAの抽出前の有意な細胞数の精密な精製は、非常に精密な発現ライブラリ、すなわち単一の細胞発現または混入細胞による発現による偏りのない、研究される細胞集団を代表するものの生成を可能にする。本発明に記載される方法および装置は、混入細胞がRNA抽出手順の間存在しないように、細胞集団を高収率で精製するために使用され得る。
【0108】
ヒト前立腺腫瘍内には、複数の細胞型が存在し、そのそれぞれが転移性疾患をもたらす。前立腺癌の基礎およびその進行を理解するために、ゲノミクスのツール(正常前立腺および癌前立腺cDNA(発現配列タグ、すなわちEST)のDNA配列決定ならびに正常組織と癌性組織とのDNAアレイ比較など)が、正常前立腺における、および異なる前立腺腫瘍における遺伝子発現の特有のパターンを研究するために使用されてきた。異なる表面抗原を持つ異なる前立腺細胞亜集団は異なるmRNA発現プロファイルを有することが示されてきた。本明細書中に開示される装置を使用して、特定の細胞亜集団の遺伝子発現を研究するために、原発性ヒト前立腺腫瘍がその特定の細胞亜集団について精製される。例えば、特定の細胞マーカーに対する抗体を新規細胞表面に結合させることにより、初代前立腺細胞の4つの集団がmRNA分析のために精製される。精製された集団は:CD44’CD13’正常基底細胞様癌、CD44’CD13’基底細胞様癌、CD57’CD13’正常管腔細胞様癌上皮細胞、およびCD57’CD13管腔細胞様癌上皮細胞である。各亜集団の性質、ならびに疾患発症および進行に対するそれらの関連を理解することは、疾患の治療に新規の診断および治療アプローチをもたらし得る。
【0109】
(実施例7:特定の細胞集団のトランスフェクション、モニタリング、および精製)
存在する他の細胞をトランスフェクトすることなく適切な数の所望の細胞型をトランスフェクトすることが不可能であるために、多くの研究および臨床遺伝子治療の適用が妨害されている。本発明の方法は、細胞の混合物内のトランスフェクトされるべき細胞の選択的標的化を可能にする。標的化エネルギー源で光機械的衝撃波を細胞膜に、またはその近くに生成することにより、一過性細孔が形成され得、それを通して遺伝または他の材料が細胞に入り得る。遺伝子移入のこの方法はオプトポレーションと呼ばれてきた。上記で記載される装置は、所定の細胞に、迅速、自動化、標的化様式で、オプトポレーションを選択的に誘導し得る。
【0110】
例えば、骨髄細胞がトランスフェクトされるべきプラスミドDNAを含有する溶液を有する検体容器中に蒔かれる。プラスミドDNAは、治療遺伝子(例えば、MDR)、ならびにマーカー遺伝子(例えば、グリーン蛍光タンパク質)をコードする。幹細胞に対する特異性を有するPE標識抗体(抗CD34)が培地中に添加され、そして幹細胞に結合する。検体容器は細胞処理装置内に置かれ、そして第一の処理レーザーが、照射レーザー光下で蛍光性になる任意の細胞に標的を合わせられ、それにより特に標的細胞中へのDNAのトランスフェクションを促進する。細胞は、37℃でインサイチュで維持され、全ての標的細胞は、プラスミドDNAでのトランスフェクションの成功を示唆するグリーン蛍光タンパク質の発現について周期的に分析される。48時間後、グリーン蛍光タンパク質を発現しない細胞は全て第二の処理レーザーで除去され、それによりトランスフェクトされた遺伝子を発現する幹細胞の純粋な集団を得る。
【0111】
(実施例8:生物工学用途における望ましいクローンの選択)
細胞株が価値のある産物を生成するために使用される多くの生物工学プロセスにおいて、産物を産生するのに非常に効果的であるクローンを誘導させることが望ましい。クローンのこの選択は、何らかの様式で単離された多数のクローンを検査することにより、しばしば手作業で実行される。本発明は、特定の産物の産生に望ましいクローンを、迅速かつ自動的に検査および選択することを可能にする。例えば、最大量の抗体を産生しているハイブリドーマ細胞は、Fc領域を指向する蛍光標識により同定され得る。蛍光標識されていないかまたはかすかに蛍光標識された細胞は、殺すための処理レーザーの標的となり、抗体生成に使用するための最良産生クローンは残される。
【0112】
(実施例9:細胞応答の自動モニタリング)
特定の刺激に対する細胞応答の自動モニタリングは、ハイスループット薬物スクリーニングにおいて非常に関心が高い。しばしば、ウェルプレートの1つのウェル中の細胞集団が刺激に曝され、次いで蛍光信号が細胞集団全体から経時で取り込まれる。本明細書中に記載される方法および装置を使用して、より詳細なモニタリングが単一の細胞レベルで行われ得る。例えば、所定の細胞亜集団の特性を同定するために、細胞集団は標識され得る。次いで、これらの細胞を同定するために、この標識は照射レーザーにより励起される。それから、処理レーザーは、第二標識を励起させる目的で、第一標識により同定された個々の細胞を標的とし、それにより各細胞の応答についての情報を提供する。細胞は表面で実質的に静止していることから、各細胞は複数回評価または処理され得、それにより各細胞の応答の動力学についての時間的情報を提供する。同じく、広範囲の走査レンズおよびガルバノメーターミラーの使用を通して、比較的多数のウェルが短時間のうちに迅速にモニタリングされ得る。
【0113】
具体例として、上記の実施例2に示すようなアロ反応性T細胞の場合を考慮してみる。アロ抗原の存在下で、活性化されたドナーT細胞はCD69により同定され得る。これらの細胞を標的とし死滅させるために処理レーザーを使用するかわりに、処理レーザーは、カルボキシフルオレセインジアセテートの励起および蛍光発光を通して、活性化T細胞毎の細胞内pHを検査するために使用し得る。標的化レーザーは、大部分のスクリーニング法が細胞集団全体の応答を評価するのに対して、活性化された細胞のみの検査を可能にする。一連のそのようなウェルが平行してモニターされている場合、様々な薬剤が個々のウェルに添加され得、そして各薬剤に対して活性化T細胞の特定の応答が経時でモニターされ得る。そのような装置は、移植片対宿主病におけるアロ反応性T細胞応答を寛解させる薬剤のためのハイスループットスクリーニング法を提供する。この実施例に基づき、当業者は、刺激に対する細胞応答が個々の細胞でモニターされ、第一標識により同定される所定の細胞のみに焦点が合わせられる、多くの他の実施例を想像し得る。
【0114】
この出願を通して、様々な刊行物が参照されてきた。それらの刊行物の開示はその全体において、本発明が関連する技術分野の状態をより詳しく記載するために、本出願中参考として本明細書により援用される。
【0115】
本発明は、上記に提供される実施例を参照して記載されてきたが、様々な変更が本発明の精神から逸脱することなくなされ得ることが理解されるはずである。したがって、本発明は請求の範囲によってのみ制限される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の装置。
【請求項1】
本明細書に記載の装置。
【図7】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−206066(P2011−206066A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165993(P2011−165993)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【分割の表示】特願2008−237226(P2008−237226)の分割
【原出願日】平成13年10月24日(2001.10.24)
【出願人】(506149922)シンテレクト, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【分割の表示】特願2008−237226(P2008−237226)の分割
【原出願日】平成13年10月24日(2001.10.24)
【出願人】(506149922)シンテレクト, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
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