説明

上部供給二重旋回型ガス化器

【課題】上部供給二重旋回型ガス化器を提供すること。
【解決手段】本発明の上部供給二重旋回型ガス化器は、微粉炭が窒素によって供給される供給ラインと、供給される微粉炭を分離する分配器と、分配器で分離された微粉炭、及び酸化剤を供給する多数のバナーノズルと、微粉炭と酸化剤とが反応して合成ガスの流れを生成する圧力反応器と、圧力反応器の内部に供給される酸化剤に旋回力を与える旋回器とを含み、圧力反応器の下部にスラグ冷却および貯留容器をさらに含む。各バナーノズルは断面円形の三重管から構成される。バナーノズルの中央領域へ微粉炭と搬送用気体が供給され、中央領域を取り囲んでいる環状領域34へ酸化剤が供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上部供給二重旋回型ガス化器に係り、さらに詳しくは、円筒型ガス化器の上部に設置された多数のバナーノズルを介して供給される石炭または重質残渣油などの燃料を酸化剤との反応によってガス化するが、微粉炭の場合、バナーノズルの酸化剤の流れに旋回を発生させて燃料と酸化剤との混合を促進し、且つバナーの周辺を取り囲むガス化器の上部全領域に酸化剤の一部を、旋回を同伴しているまたは同伴していない状態で下方に供給してガス化反応を促進させることが可能な上部供給二重旋回型ガス化器に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、新・再生エネルギーは、過多な初期投資の障害要因にも拘らず、化石エネルギーの枯渇問題と環境問題に対する核心解決方案であるという点で、先陣進各国ではこれに関する果敢な研究開発と普及政策などを推進している。
韓国は、「新エネルギーおよび再生エネルギーの開発、利用、普及促進法」第2条の規定に基づいて、「既存の化石燃料を変換させて利用し、或いは日光、水、地熱、降水、生物有機体などを含む再生可能なエネルギーを変換させて利用するエネルギー」と定義し、11分野のエネルギー、すなわち太陽光、太陽熱、バイオ、風力、水力、海洋、廃棄物、地熱の8分野の再生エネルギーと、燃料電池、石炭液化ガスおよび重質残渣油ガス、水素エネルギーの3分野の新エネルギーに区分している。
その中でも、ガス化複合発電技術(IGCC、Integrated Gasification Combined Cycle)は、石炭、重質残渣油などの低級原料を高温・高圧のガス化器で水蒸気と共に限定された酸素を用いて不完全燃焼およびガス化させ、一酸化炭素と水素が主な成分である合成ガスを作って精製工程を経た後、ガスタービンおよび蒸気タービンなどを駆動して発電する新技術である。
【0003】
ガス化器の一例として、「Gasifier Injector」という発明の名称で出願された特許文献1によれば、微粉炭を、ガス化器の上部に位置した多数の分岐管で分離してガス化器の内部へ供給する。各分岐管は、多孔性物質から構成されている板を貫通し、多孔性物質を介して酸化剤を供給する。この際、微粉炭を供給する分岐管の周辺に孔を空いて分岐管の周辺へ多くの酸化剤が供給されるようにし、この孔を介して供給された酸化剤が微粉炭と急速度で混合されるようにする。残りの少量の酸化剤は多孔性物質を通過して円筒型ガス化器の上部全体領域から下方に供給されるようにしている。
【0004】
ところが、この特許文献1の場合には、多数のバナーを上部に設置するにあたって、多孔性物質を貫通してガス化器の内部へ供給される微粉炭を酸化剤と急速に混合するために、微粉炭供給部が多孔性物質を貫通し、貫通する領域の周囲に孔を空いて酸化剤を供給し、且つ微粉炭供給部を除いた全体領域において酸化剤を上部から下方に供給する構成であるが、このように微粉炭と酸化剤の流れがいずれも垂直下方向に供給されるため、微粉炭粒子もいずれも垂直下方向に進んで粒子が溶融し、溶融した粒子がガス化器の壁に沿って流れる一般なスラギングが発生せず、スラギングガス化器の実現に困難さが存在する。すなわち、微粉炭粒子の中でも比較的多くの量が粒子状物質として排出される。また、微粉炭供給部の周辺へ流れる酸化剤とこれを取り囲んで供給される酸化剤それぞれの流量制御が不可能であって、燃料の変更、又は微粉炭及びこれによる酸化剤の流量変更などの多様な運転条件に対応することが難しいという欠点がある。
【0005】
他の例として、「Dump Cooled Gasifier」という発明の名称で出願された特許文献2には、ガス化器を構成する壁をセラミックチューブから構成し、セラミックチューブの内部へ気体状の冷却物質を流れるようにしてガス化反応時の高温環境とガス化反応の際に発生する高温の気体及びスラグから内壁を保護する構成であるが、セラミックチューブでガス化反応領域を取り囲む構成であるから、セラミック物質の機械的強度が弱いという点を考慮するとき、各チューブの継ぎ目が完璧でない場合には高温高圧の環境で損傷が発生してガス化器を安定的に運転することができなくなる可能性を内包しているという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許公開第2006/0242907号明細書
【特許文献2】米国特許公開第2008/0141913号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
石炭または重質残渣油などの燃料をガス化して清浄エネルギーとして活用するために考案されているガス化技術の大部分は、比較的遅いガス化反応をガス化器内で完了させるためにガス化器を大型化しているが、ガス化器の体積が大きくなるにも拘らず、微粉炭を燃料として使用する場合に炭素を完全にガスに転換することが難しい。そこで、本発明は、これを解消するために案出されたもので、その目的は、流動の適切な制御によってガス化反応を促進させるために、旋回流を活用して燃料と酸化剤の急速な混合を図ることにより、急速なガス化反応を誘導し、微粉炭を燃料として使用する場合に旋回力によって微粉炭がガス化器の壁面へ移動して溶融状態でガス化器の内壁に沿って流れる過程で炭素がガス状態に転換されるようにすることにより、急速混合によるガス化反応およびガス化器の壁面における炭素のガスへの転換反応を介してガス化器の体積を減らすと共により高い炭素転換率を得ることが可能な上部供給二重旋回型ガス化器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、微粉炭が窒素によって供給される供給ラインと、前記供給ラインを介して供給される微粉炭を分離する分配器と、前記分配器で分離された微粉炭と酸化剤を供給する多数のバナーノズルと、微粉炭と酸化剤とが反応して合成ガスを生成する圧力反応器と、前記圧力反応器の内部に供給される酸化剤に旋回力を与える旋回器とを含み、圧力反応器の下部には水が貯水されたスラグ冷却および貯留容器が設置されることを特徴とする、上部供給二重旋回型ガス化器を提供する。
【0009】
バナーノズルのそれぞれは、断面が円形であり、中央領域と、該中央領域を取り囲む環状領域とを有する三重管から構成され、中央領域へ微粉炭と搬送用気体が供給され、環状領域へ酸素または酸素と水蒸気との混合気体からなる酸化剤が供給され、環状領域の外側の環状領域へ冷却水が循環し、この際、旋回器は各バナーノズルの酸化剤が供給される環状領域に設置される。
また、圧力反応器の最上部には追加の酸化剤が供給されるように多孔性物質からなる多孔板が設置され、この多孔板をバナーノズルのそれぞれが貫通する。
本発明において、圧力反応器の壁がメンブランチューブ形態であれば、その壁面にセラミックまたは耐火物質の耐火材がコートされる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、燃料および燃料供給ラインの周辺から供給される酸化剤およびガス化器の上部全体から供給される酸化剤などの全ての流れが下方向に直線的な流れである従来の技術とは異なり、燃料の周辺を取り囲む環状領域で旋回器を通過する過程で酸化剤が旋回力を持つことにより燃料と酸化剤との混合を促進させ、且つバナーの周辺を取り囲むガス化器の全領域において酸化剤の一部が旋回を同伴している或いは同伴していない状態で下方向に供給されてガス化反応を促進させ、極めて短い時間内に反応を完了することによりガス化器の体積減少が達成されるので、ガス化器の製作コストを減少する効果を持つ。
【0011】
また、本発明は、ガス化のための燃料として最も多く用いられる固体粒子状態の微粉炭を使用する場合、微粉炭粒子が溶融した後、凝集した状態の液状スラグがガス化器の壁面に沿って流れるので、気体に便乗して流れる従来の状態より一層長い滞留時間を有するから、炭素転換率を向上させる効果を持つ。
また、微粉炭粒子を粒子状物質として排出することにより処理に多くの費用が必要な従来の技術と比較して、凝集したスラグ状態に処理して副産物として販売することができるから、経済性を確保することができる効果も持つ。
【0012】
本発明の前記及び他の目的、特徴及び利点は、添付図面を参照する次の詳細な説明によって一層明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のガス化器の構成を示す概略図である。
【図2】微粉炭と酸化剤供給ノズルの概念図である。
【図3】酸化剤が供給される環状領域に旋回器を設置した構成の概念図である。
【図4】ガス化器の上部に多数のバナーノズルを設置した構成の概念図である。
【図5】スラグの流れ、急冷および貯留の概念図である。
【図6】従来の技術と本発明との微粉炭粒子の分布比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明に係る一実施例の動作を詳細に説明する。
図1は本発明に係るガス化器の構成図を示している。図示の如く、本発明のガス化器100は、矢印aの方向に微粉炭が窒素によって供給される供給ライン10と、この供給ライン10を介して供給される微粉炭を分離する分配器20と、分配器20で分離された微粉炭、及び酸化剤を矢印bの方向に供給する多数のバナーノズル30と、微粉炭と酸化剤とが反応して合成ガスの流れ(矢印c)を生成する圧力反応器40と、圧力反応器40の内部に供給される酸化剤に旋回力を与える旋回力付与手段としての旋回器50、80(50は図3)とを含み、圧力反応器40の下部にスラグ冷却および貯留容器70(図5)をさらに含む。
微粉炭と酸化剤を供給する各バナーノズル30は、断面円形の三重管からなっており、最も中央領域32へ微粉炭と搬送用気体が供給される。中央領域32を取り囲んでいる環状領域へ酸化剤が供給されるが、酸化剤は酸素または酸素と水蒸気との混合気体であってもよい。
【0015】
バナーノズルの厚さを含んで三重管の形態を示している図2の如く、三重管の最外側の環状領域36へは冷却水が循環して微粉炭および酸化剤供給部位の加熱を防止する。このように三重管から構成されて原料と酸化剤を供給する多数のバナーノズル30は圧力反応器40の内部に引き込まれる。
【0016】
図3には、酸化剤が供給される領域であり、且つ微粉炭が供給される中央領域32を取り囲んでいる環状領域34に、旋回力付与手段として旋回器50を設置する概念図を示している。図3に示されているように、三重管の環状領域34の出口部分に旋回器50が設置されることにより、酸化剤が最終的には強い旋回力をもってバナーノズル30を抜け出る。
三重管が下方に延びている圧力反応器40の最上部には、多孔性物質からなる多孔板60を設置する。圧力反応器40上に位置した多孔板60の上部に追加の酸化剤を図1の矢印bの方向に供給する。追加の酸化剤に旋回力を与える追加の旋回器80を多孔板60の下部に設置することにより、多孔板60の上部に供給されて圧力反応器40へ流れる酸化剤に旋回力を付与しているが、燃料特性またはガス化の運転条件によっては多孔板60を通過する追加の酸化剤に旋回力を付与する旋回器を設置しないこともある。このように圧力反応器40に多孔板60と旋回器80が設置され、多数個のバナーノズル30が多孔板60と旋回器80を貫通して圧力反応器40へ引き込まれる。
【0017】
これにより、図4に示されているように、圧力反応器40の上部にはバナーノズル30の中央領域32を介して微粉炭と搬送用気体が供給され、多数個のバナーノズル30を取り囲んでいるガス化器上部の全体領域へは追加の酸化剤が供給されるので、ガス化器の内部へ供給される酸化剤の流量をそれぞれ別途に制御することができる。
【0018】
このように酸化剤と微粉炭が圧力反応器40の内部へ供給され、酸化剤と微粉炭が反応することにより、COとH2が主な成分である合成ガスを生産する。この際、微粉炭粒子内に含まれている灰材は二重旋回効果により発生する遠心力によって圧力反応器40の壁側に向かい、溶融状態のスラグ流れは耐火材(図5の斜線で表示された)に沿って下方に流れる。このスラグの流れは圧力反応器40の下部に位置したスラグ冷却および貯留容器70に落ち、この容器70に冷却水72として水を貯留しているので、容器70に流下したスラグは急冷に固化して処理される。圧力反応器40の壁(ガス化反応領域)を、チューブの内部に冷却物質が流れ且つメンブランがチューブとチューブとを結ぶメンブランチューブ形態の壁から構成する場合には、燃料特性またはガス化運転条件に応じてメンブランチューブの壁面に耐火材をコートし或いはコートしない。耐火材をコートする場合には一般な耐火材またはセラミック物質を使用することができる。
【0019】
上述したように、本発明は、複数のバナーノズル30を介して圧力反応器40の内部へ供給されるので、流動の均一性、微粉炭粒子のスラギング特性および微粉炭粒子分布の均一性などにおいて向上をもたらしてガス化反応特性の向上を図ることができる。結果として速い反応を誘導してガス化器の体積を減少させることができ、炭素転換率および冷ガス効化率(cold gas efficiency)などの性能においても向上をもたらすことができる。
【0020】
本発明に係る効果を科学的に検証するために、このような概念を単純化した電算解析によって確認した。結果を表1、表2および図6に示す。表1の数値は、流動の均一性を示す因子であって、数値が0の場合が完全に理想的に均一な流動であることを示す因子であるが、大部分の従来の技術のように線形的に酸化剤と原料を供給する場合に比べて、本発明のように二重旋回を付与することにより一層速く理想的な状態に接近していることを示している。表2は、微粉炭粒子が圧力反応器の壁にぶつかる特性を示し、スラギング特性と直接的な関連を結ぶ度合いを示すが、本発明によるガス化器でより多くの粒子が壁にぶつかることを示している。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
一方、図6は微粉炭粒子の平面上分布図を示している。右に示した本発明に係る微粉炭粒子の分布が、左に示した従来の技術による微粉炭粒子の分布より均一であることが分かる。このような電算解析結果は、本発明に係る装置の効果が既存のガス化器の効果に比べて優れることを直接示している。
【0024】
以上、本発明の好適な実施例を説明の目的で詳細に開示したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、添付した請求の範囲に開示された本発明の精神と範囲から逸脱することなく様々な変形、追加及び置換が可能であることを理解するであろう。
【符号の説明】
【0025】
10 供給ライン
20 分配器
30 バナーノズル
32 中央領域
34、36 環状領域
40 圧力反応器
50、80 旋回器
60 多孔板
70 スラグ急冷および貯留容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部供給二重旋回型ガス化器であって、
微粉炭が窒素によって供給される供給ラインと、
前記供給ラインを介して供給される微粉炭を分離する分配器と、
前記分配器で分離された微粉炭、及び酸化剤を供給する多数のバナーノズルと、
前記微粉炭と前記酸化剤とが反応して合成ガスを生成する圧力反応器と、
前記圧力反応器の内部に供給される前記酸化剤に旋回力を与える旋回器と、を含んでなる、上部供給二重旋回型ガス化器。
【請求項2】
前記圧力反応器の下部に、冷却水が貯留されたスラグ冷却および貯留容器をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の上部供給二重旋回型ガス化器。
【請求項3】
前記バナーノズルのそれぞれは、断面が円形であり、中央領域と、該中央領域を取り囲む環状領域とを有する三重管から構成され、前記中央領域へ前記微粉炭と搬送用気体が供給され、前記環状領域へ酸素または酸素と水蒸気との混合気体からなる前記酸化剤が供給されることを特徴とする、請求項1に記載の上部供給二重旋回型ガス化器。
【請求項4】
前記環状領域の外側の環状領域へ冷却水が循環することを特徴とする、請求項3に記載の上部供給二重旋回型ガス化器。
【請求項5】
前記旋回器が前記各バナーノズルの前記環状領域に設置されることを特徴とする、請求項1に記載の上部供給二重旋回型ガス化器。
【請求項6】
前記圧力反応器の最上部には追加の酸化剤が供給されるように多孔性物質からなる多孔板が設置され、該多孔板を前記バナーノズルのそれぞれが貫通することを特徴とする、請求項1に記載の上部供給二重旋回型ガス化器。
【請求項7】
前記圧力反応器は、メンブランチューブ形態の壁であり、壁面にセラミックまたは耐火物質の耐火材がコートされたことを特徴とする、請求項1に記載の上部供給二重旋回型ガス化器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−513688(P2013−513688A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543026(P2012−543026)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/KR2010/008856
【国際公開番号】WO2011/071339
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(507268341)エスケー イノベーション カンパニー リミテッド (57)