説明

下り通信伝送帯域割り当て方法

【課題】階層符号化形式を適用した多値/高次変調PONシステムにおいて、リンクの使用率がある程度大きい状態においてもONU間での使用可能帯域の公平を保つことができる、あるいは同じ廃棄率に対してバッファサイズを削減することができる下り通信伝送帯域割り当て方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、階層符号化処理部における振り分けアルゴリズムに、ビット位置の候補が少ないフレームが振り分け可能なビット位置に対して、ビット位置の候補が少ないフレームをビット位置の候補が多いフレームよりも優先的に振り分ける制御を加える。本制御で特定のバッファにのみフレームが割り振られることを回避でき、結果としてフレーム廃棄率を低下することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
PON(Passive Optical Network)システムの下り通信へ階層符号化形式による多値/高次変調方式を適用したシステムにおいて階層間利用帯域の公平化を行う伝送帯域割り当て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在光アクセスネットワークとして普及しているPONシステムの下り信号伝送部(図1)において、符号化部分に多値/高次変調方式を適用し、高速化を実現するための研究開発が広く行われている。その中で、PONシステムに多値/高次変調を適用する際の装置の低コスト化、パワーバジェットの向上等を目的とした、階層符号化形式(例えば、非特許文献1を参照。)による多値/高次変調PONが提案されている。なお、本明細書では、「パワーバジェット」とは、光が送信器で出力されてから受信器で受光されるまでに許容できる伝送路損失の見積もりという意味である。
【0003】
一般的にシステムに多値/高次変調方式を適用する目的は、信号のビットレートに対して受信器や送信器および関連する信号処理部の動作周波数を低く抑えることである。上位ネットワーク(NW)と接続する伝送リンク(上位リンク)からB1[bit/s]のビットレートで送られる下り信号をアクセスリンクにおいてB2[bit/symbol]の多値/高次信号に変調すると、上位リンクからの信号の信号処理部は一般的にB1[Hz]程度の動作周波数が必要となるのに対し、アクセスリンクにおける信号の送受信部の動作周波数は1/B2にあたるB1/B2[Hz]程度に抑えることができる。
【0004】
階層符号化形式を適用した多値/高次変調PONシステムにおける、局側装置(OLT:Optical Line Terminal)の上位リンク(B1[bit/s])とアクセス下り信号送信器(B2[bit/symbol])の境界部の例を図2に示す。ただし、本発明と無関係な部分は省略している。階層符号化処理部50はフレーム読み込み部51、ビット位置決定部52、アドレス−ビット位置対応表53、バッファサイズ監視/計算部54を備えている。バッファ60の出口は、アクセスリンクの送受信器の構成により異なるが、符号化部(ビットマッピング部)や変調器などに接続している。多値/高次変調において、このバッファ60のn個の出口から同時に出るnビットのビット列がひとつのシンボルとして送信される。ここではB2[bit/symbol]の符号方式であるので、n=B2である。バッファから先の動作周波数はB1/B2[Hz]程度である。
【0005】
階層符号化処理部50はビットレートがB1[bit/s]の上位リンクからフレームを受け取り、フレーム読み込み部51がフレームヘッダから宛先アドレス情報を取得する。ビット位置決定部52は宛先アドレス情報、アドレス−ビット位置対応表53、バッファサイズ監視/計算部54からの情報をもとにフレームを振り分けるバッファ(60−1〜60−n)や廃棄の判断をし、フレームはその決定に基づき振り分けられるか、廃棄される。図2に信号のやりとりを矢印で示しているが、機能ブロックや信号のやりとりはこの例に限らず、例えばアドレス−ビット位置対応表が存在せず、ヘッダの一部に直接振り分け可能なビット位置を書き込めるようなフレーム構造としているなど、上記のような所望の動作ができる構造であればよい。
【0006】
振り分けるバッファや廃棄の決定アルゴリズムのフローチャートとして、次の条件で説明する。
(条件)
・n=2
・ビット1、2ともに送信可能なフレーム(ビット位置候補が1と2)と、ビット1のみで送信可能なフレーム(ビット位置候補が1のみ)とが存在し、それらに対応する宛先アドレスの数は同数である。
【0007】
上記条件下において、特に公平性等を意識した制御を行わず、フレームの到着順に処理を行う場合の例を図3に示す。まず階層符号化処理部にフレームが到着するタイミングで振り分け処理が行われる。階層符号化処理部はヘッダ内の宛先情報とアドレス−ビット位置対応表(例を図4に示す。)を照会し、そのフレームを振り分け可能なビット位置の候補を確認する。
【0008】
ビット位置の候補が1つしかない場合(本例での、ビット(1)のみに振り分け可能な場合)には、ビット(1)用バッファ内に処理中のフレーム長だけの余裕があるかをバッファサイズ監視/計算部により確認し、余裕があればフレームをビット(1)用バッファに振り分ける。ここでの余裕があるかという判断は、そのとき振り分けようとしているフレーム長の分だけ余りがあるかという判断を指す。余裕がない場合には、フレームは廃棄となる。
【0009】
ビット位置の候補が複数ある場合(本例での、ビット(1、2)に振り分け可能な場合)には、ビット位置を任意に選択する。このポリシーをもとに処理をすると、フレームがビット(1、2)に振り分け可能であれば、まずビット1/2用バッファ内のフレーム量を確認し、余裕があれば振り分け、ビット1/2用バッファに余裕がない場合にはビット2/1用バッファ内のフレーム量を確認し、余裕があれば振り分け、ビット2/1用バッファ内にも余裕がない場合には、フレームは廃棄というフローになる。
【0010】
n>2の場合にも、
(1)ビット位置の候補が1つの場合には、そのバッファ量に余裕があれば、振り分け、なければ廃棄する。
(2)ビット位置の候補が複数ある場合には、任意のビット位置を順に選択し、バッファ量に応じて振り分ける。
というルールに基づいてフレームを振り分ける。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】M. Morimoto, “Joint On−Board Resource Sharing and Hierarchical Modulation Scheme for Satellite Communication”, IEEE Global Telecommunication Conference, 1995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本システムを流れる、あるフレームに着目すると、フレームは動作周波数がB1程度の信号処理部からB1/B2(<B1)[Hz]程度のバッファに送られることとなり、動作周波数が大きい処理部から小さい処理部へ流れていることとなる。設計の際にはすべてのフレームが均等にすべてのバッファに割り振られることを想定して設計を行うため、バッファのサイズをある程度の大きさとし、十分に長い時間で平均して見たときにはフレームが動作周波数がB1程度の信号処理部からB1/B2(<B1)[Hz]程度のバッファB2個に振り分けられることになるので、全体の処理速度は変化していないように見える。しかし、リンクの使用率がある程度大きい状態において、ある短い時間内に特定のフレームが集中した結果、特定のバッファにのみ割り振られるフレームが集中し、廃棄率が高くなる状況が存在し得る。これにより、1つのPONシステムにおいてスプリッタ配下の加入者側装置(ONU:Optical Network Unit)間でのフレームの廃棄率に差が生じる可能性がある。これは、ONU間での使用可能帯域に不公平が生じている状態であるといえる。また、フレームの廃棄率に差が生じることを防ごうとすると充分に大きいバッファサイズが必要となり、遅延や消費電力の増大につながる。すなわち、従来の階層符号化形式を適用した多値/高次変調PONシステムでは、リンクの使用率がある程度大きく、バッファサイズが有限な状態において、ONU間での使用可能帯域に不公平が生じることがあるという課題があった。
【0013】
そこで、上記課題を解決すべく、本発明は、階層符号化形式を適用した多値/高次変調PONシステムにおいて、リンクの使用率がある程度大きい状態においてもONU間での使用可能帯域の公平を保つことができる、あるいは同じ廃棄率に対してバッファサイズを削減することができる下り通信伝送帯域割り当て方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、多値/高次変調を行う前段に待機用バッファを追加し、バッファ内の監視を行い、新しく到着したフレームを必要に応じて待機用バッファに割り当てることとした。
【0015】
具体的には、本発明に係る下り通信伝送帯域割り当て方法は、複数のバッファから同時に出力されるビットで1シンボルを構成する階層符号化形式の多値/高次変調が適用されたPONシステムでの伝送帯域を各ONUに割り当てる下り通信伝送帯域割り当て方法であって、到着した下りフレームのヘッダ内の宛先情報から振り分け可能なビット位置の候補を確認し、前記候補のうち前記下りフレームの振り分け先としたビット位置に対応する前記バッファの残量より前記下りフレームの量が大きいときに、前記下りフレームを待機用バッファに入力することを特徴とする。
【0016】
新しく到着したフレームを必要に応じて待機バッファに割り当てることで、輻輳時の無駄なフレーム廃棄を防止し、ONU間での帯域割当の不公平を解消することができる。従って、本発明は、階層符号化形式を適用した多値/高次変調PONシステムにおいて、リンクの使用率がある程度大きい状態においてもONU間での使用可能帯域の公平を保つことができる、あるいは同じ廃棄率に対してバッファサイズを削減することができる下り通信伝送帯域割り当て方法を提供することができる。
【0017】
本発明に係る下り通信伝送帯域割り当て方法は、前記候補が複数ある場合に、振り分け可能なフレーム数が少ないビット位置を前記振り分け先とすることができる。選択の余地があるフレームを他のビット位置に振り分けることで、特定のビット位置にフレームが集中することを回避することができる。
【0018】
本発明に係る下り通信伝送帯域割り当て方法は、前記待機用バッファ内に下りフレームが存在するときに、到着した下りフレームと前記待機用バッファ内の下りフレームとの間で前記候補の数を比較し、前記候補の数が少ない下りフレームを他より優先させて振り分け先とした前記バッファに入力することができる。
【0019】
階層符号化処理部における振り分けアルゴリズムに、ビット位置の候補が少ないフレームが振り分け可能なビット位置に対して、ビット位置の候補が少ないフレームをビット位置の候補が多いフレームよりも優先的に振り分ける制御を加える。本制御で特定のバッファにのみフレームが割り振られることを回避でき、結果としてフレーム廃棄率を低下することができる。
【0020】
従って、本発明は、階層符号化形式を適用した多値/高次変調PONシステムにおいて、リンクの使用率がある程度大きい状態においてもONU間での使用可能帯域の公平を保つことができる、あるいは同じ廃棄率に対してバッファサイズを削減することができる下り通信伝送帯域割り当て方法を提供することができる。
【0021】
本発明に係る下り通信伝送帯域割り当て方法は、前記待機用バッファ内に下りフレームが存在するときに、到着した下りフレームと前記待機用バッファ内の下りフレームとの間で前記候補の数を比較し、前記候補の数が同じであれば、前記待機用バッファ内の下りフレームを到着した下りフレームより優先させて振り分け先とした前記バッファに入力することができる。フレームが待機用バッファ内に長時間停滞することを避けることができる。
【0022】
本発明に係る下り通信伝送帯域割り当て方法は、前記候補が複数ある場合に、他より優先させて振り分ける前記下りフレームの量が振り分け先とした前記バッファの残量より多いとき、前記下りフレームを、振り分け先とした前記バッファと異なる他の前記バッファに入力する、前記待機用バッファに入力する、又は廃棄することができる。フレームが特定のバッファに集中することを回避することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、階層符号化形式を適用した多値/高次変調PONシステムにおいて、リンクの使用率がある程度大きい状態においてもONU間での使用可能帯域の公平を保つことができる、あるいは同じ廃棄率に対してバッファサイズを削減することができる下り通信伝送帯域割り当て方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】PONシステムを説明する図である。
【図2】OLTが有する階層符号化処理部を説明する図である。
【図3】図2の階層符号化処理部が行うフレーム振り分け処理を説明する図である。
【図4】フレームのヘッダ内にある宛先情報とビット位置を定めた対応表を説明する図である。
【図5】本発明に係る下り通信伝送帯域割り当て方法を行うOLTの階層符号化処理部を説明する図である。
【図6】本発明に係る下り通信伝送帯域割り当て方法を説明する図である。
【図7】本発明に係る下り通信伝送帯域割り当て方法を説明する図である。
【図8】本発明に係る下り通信伝送帯域割り当て方法を説明する図である。
【図9】本発明に係る下り通信伝送帯域割り当て方法を説明する図である。
【図10】本発明に係る下り通信伝送帯域割り当て方法を説明する図である。
【図11】本発明に係る下り通信伝送帯域割り当て方法を説明する図である。
【図12】本発明に係る下り通信伝送帯域割り当て方法を説明する図である。
【図13】本発明に係る下り通信伝送帯域割り当て方法を説明する図である。
【図14】本発明に係る下り通信伝送帯域割り当て方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施形態の構成)
図5は、本実施形態の階層符号化処理部50’を説明する図である。階層符号化処理部50’は、複数のバッファ60から同時に出力されるビットで1シンボルを構成する階層符号化形式の多値/高次変調が適用されたPONシステムでの伝送帯域を各ONU20に割り当てる伝送帯域割り当て方法を実施する。例えば、階層符号化処理部50’は図1のOLT10にあり、OLT10の上位リンク(B1[bit/s])とアクセス下り信号送信器(B2[bit/symbol])の境界部分に配置される。
【0026】
階層符号化処理部50’は図2の階層符号化処理部50に対し、待機用バッファ55を追加している。図6〜図14は、本実施形態の伝送帯域割り当て方法のフローチャートである。図6及び図7がメインのフローチャートであり、図8〜図14が内部の定義済み処理のフローチャートである。本実施形態の伝送帯域割り当て方法と図3のフローチャートとの相違点は、図2の階層符号化処理部50に新たに搭載された待機用バッファ55を利用し、振り分けられるビット位置の候補が多いフレームより、振り分けられるビット位置の候補が少ないフレームを優先的に振り分けるための制御が加えられている点である。
【0027】
(実施形態の動作)
本実施形態の伝送帯域割り当て方法のフローにおいては、フレームが到着したタイミング(ステップS101)か、待機バッファ55内フレーム処理の条件が満たされたタイミング(ステップS102)で振り分け処理が行われる。ここで待機バッファ55内フレーム処理の条件とは、例えばフレームが待機用バッファ55に入った時間からの経過時間Twaitがある閾値Twait_maxを超えるという場合などが考えられる。以下の説明において、OLT10に到着したばかりのフレームを新フレーム、待機用バッファ55に入っているフレームを旧フレームと呼ぶ。
【0028】
「ビット(1)用バッファに対してビット(1、2)に振り分け可能なフレームよりもビット(1)のみに振り分け可能なフレームを優先する」という目的に対しては、待機用バッファ55は2通りの役割を担うことができる。
【0029】
1つは、ビット(1)のみに振り分け可能なフレームを振り分ける際にビット(1)用バッファ60−1に余裕がなかった場合に、バッファサイズに余裕ができるまで待機させ、廃棄の判断までに猶予を設ける役割である。これは図9に示すビット(1)のみ処理[2]に相当する。
【0030】
2つめは、ビット(1、2)に振り分け可能なフレームを振り分ける際にビット(2)用バッファ60−2に余裕がなかった場合に、次に到着するビット(1)のみに振り分け可能なフレームを先に処理できるよう待機させる役割である。これは図11に示すビット(1、2)処理[2]に相当する。
【0031】
具体的には、フレーム読み込み部51、ビット位置決定部52、アドレス−ビット位置対応表53、バッファサイズ監視/計算部54が、到着した下りフレームのヘッダ内の宛先情報から振り分け可能なビット位置の候補を確認し(ステップS106)、前記候補のうち前記下りフレームの振り分け先としたビット位置に対応するバッファ60の残量より下りフレームの量が大きいときに、下りフレームを待機用バッファ55に入力する(ステップS211、S214)。
【0032】
なお、ここでは、前記候補が複数ある場合に、振り分け可能なフレーム数が少ないビット位置を前記振り分け先とする。例えば、ビット(1、2)に振り分け可能なフレームとビット(1)のみに振り分け可能なフレームとが存在する場合、ビット(1)に振り分け可能なフレームは「ビット(1)に振り分け可能なフレーム」及び「ビット(1、2)に振り分け可能なフレーム」であることに対し、ビット(2)に振り分け可能なフレームは「ビット(1、2)に振り分け可能なフレーム」だけであるので、「振り分け可能なフレーム数が少ないビット位置」とはビット(2)となる。すなわち、「ビット(1、2)に振り分け可能なフレーム」はなるべくビット(2)に入力するように振り分けられる。
【0033】
さらに、振り分けられるビット位置の候補が多いフレームより、振り分けられるビット位置の候補が少ないフレームを優先的に振り分けるため、以下の動作を行う。フレーム読み込み部51、ビット位置決定部52、アドレス−ビット位置対応表53、バッファサイズ監視/計算部54は、待機用バッファ55内に下りフレーム(旧フレーム)が存在するとき(ステップS107で“Yes”)に、到着した下りフレーム(新フレーム)と旧フレームとの間で前記候補の数を比較し、前記候補の数が少ない下りフレームを他より優先させて振り分け先としたバッファ60に入力する。
【0034】
例えば、旧フレームの候補がビット(1)、新フレームの候補がビット(1、2)である場合、ステップS111、S112、S113、S115を行う。一方、旧フレームの候補がビット(1、2)、新フレームの候補がビット(1)である場合、ステップS111、S116、S117を行う。
【0035】
また、旧フレームと新フレームの候補数が同じであれば、旧フレームを優先させる。フレーム読み込み部51、ビット位置決定部52、アドレス−ビット位置対応表53、バッファサイズ監視/計算部54は、待機用バッファ55内に下りフレーム(旧フレーム)が存在するとき(ステップS107で“Yes”)に、到着した下りフレーム(新フレーム)と旧フレームとの間で前記候補の数を比較し、前記候補の数が同じであれば、旧フレームを新フレームより優先させて振り分け先としたバッファ60に入力する。
【0036】
例えば、旧フレームの候補がビット(1)、新フレームの候補がビット(1)である場合、ステップS111、S112、S113、S114を行う。一方、旧フレームの候補がビット(1、2)、新フレームの候補がビット(1、2)である場合、ステップS111、S116、S118、S119を行う。
【0037】
なお、フレームを振り分け先として決定したバッファ60に入力しようとしたときに、バッファ60の残量が少なくフレームを受け入れることができないとき、以下の(i)(ii)(iii)のいずれかのように動作する。
(i)他のビット位置へ振り分け可能であれば、当該フレームを当該ビット位置のバッファ60に入力する(ステップS221、S223、S224)。
(ii)当該フレームを待機用バッファ55に入力する(ステップS221、S223、S226)。
(iii)当該フレームを廃棄する(ステップS221、S223、S225)。
【0038】
図6及び図7のフロー内では、定義済み処理の候補が複数存在する場合があり([1]or[2]等の記載がされている定義済み処理(ステップS109、S110、S115、S119))、待機用バッファ55を上記の2つの役割のうちどちらに用いるか、あるいは併用するかを選択することができる。
【0039】
図6及び図7の中で、選択できる定義済み処理のうち、処理[1]のみを選択していくと、待機用バッファ55を用いない従来手法と同じ処理となり、もっとも処理が軽い。一方で処理[2]のみを選択していくと、公平性はもっとも高いが、処理[1]と併用した場合に比べて重くなる。図12に示すビット(1、2)処理[3]は、待機用バッファ55をより有効活用したい場合に用いるが、公平性は処理[2]のみを選択した場合に比べ低くなる。すなわち、公平性と処理の重さとのバランスを考慮していずれの処理を選択するかを決定することができる。例えば、当該選択を予め階層符号化処理部50’に設定しておくこともできる。また、階層符号化処理部50’が自動的に処理[1]、[2]、[3]を選択してもよい。上位リンクからの下りフレーム量が設定された伝送帯域の80%未満のときに公平性を高めるように処理を選択し、80%を越えたときに負荷を軽くする処理を選択するようにしてもよい。
【0040】
(本実施形態の効果)
本例においては、ビット(1)用バッファに対しては、ビット(1)のみに振り分け可能なフレームをビット(1、2)に振り分け可能なフレームよりも優先して振り分けることが可能となる。これを本例以外の条件に拡張すると、ビット位置候補が少ないフレームの振り分け可能なビット位置に対しては、ビット位置候補が少ないフレームが多いフレームよりも優先的に振り分けられることとなる。これにより、本発明の課題で述べた「リンクの使用率がある程度大きい状態において、ある短い時間内に特定のフレームが集中した結果、特定のバッファにのみ割り振られるフレームが集中し、廃棄率が高くなる状況」でのバッファ間でのフレーム廃棄率の差が緩和され、該当PONシステムにおけるスプリッタ配下のONU間の使用帯域の公平性が改善される。
【0041】
以下は、図5の階層符号化処理部及び図6〜図14の伝送帯域割り当て方法を説明したものである。
(1)
1つの送信器と、光パワースプリッタを介して接続される複数の受信器と、前記送信器と前記受信器とを接続する伝送路と、を備え、多値/高次変調方式を採用し、
前記送信器は、階層符号化処理部と、ビット位置決定部と、アドレス−ビット位置対応表と、バッファサイズ監視/計算部と、バッファNと、待機用バッファを備え、
前記バッファNに対し、フレームが集中し、廃棄率が高い状態において、前記待機用バッファの利用方法に関するフレーム処理方法であって、
前記待機バッファ内のフレーム処理を行うステップと、旧フレームの振り分け可能ビット位置により処理を選択するビット選択ステップからなるフレーム処理方法。
【0042】
(2)
(1)のフレーム処理方法のビット選択ステップは、
ビット1用バッファ内のフレーム量に余裕があるかを判断するフレーム量判断ステップと、
前記フレーム量判断ステップにおいて余裕がない場合にフレーム廃棄を行うステップと、
前記フレーム量判断ステップにおいて余裕がある場合にフレームをビット1用バッファに割り当てるステップからなる。
【0043】
(3)
(1)のフレーム処理方法のビット選択ステップは、
ビット1用バッファ内のフレーム量に余裕があるかを判断するフレーム量判断ステップと、
前記フレーム量判断ステップにおいて余裕がない場合にフレームを待機用バッファへ割り当てるステップと、
前記フレーム量判断ステップにおいて余裕がある場合にフレームをビット1用バッファに割り当てるステップからなる。
【0044】
(4)
(1)のフレーム処理方法のビット選択ステップは、
ビット2用バッファ内のフレーム量に余裕があるかを判断するフレーム量判断ステップと、
前記フレーム量判断ステップにおいて余裕がある場合にフレームをビット2用バッファに割り当てるステップと、
前記フレーム量判断ステップにおいて余裕がない場合に、前記ビット1用バッファに割り当てるステップと、からなる。
【0045】
(5)
(1)のフレーム処理方法のビット選択ステップは、
ビット2用バッファ内のフレーム量に余裕があるかを判断するフレーム量判断ステップと、
前記フレーム量判断ステップにおいて余裕がある場合にフレームをビット2用バッファに割り当てるステップと、
前記フレーム量判断ステップにおいて余裕がない場合に、フレームを待機用バッファへ割り当てるステップと、からなる。
【符号の説明】
【0046】
10:局側装置(OLT)
20:加入者側装置(ONU)
30:光パワースプリッタ
50、50’:階層符号化処理部
51:フレーム読み込み部
52:ビット位置決定部
53:アドレス−ビット位置対応表
54:バッファサイズ監視/計算部
55:待機用バッファ
60、60−1、60−2、・・・、60−n:バッファ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッファから同時に出力されるビットで1シンボルを構成する階層符号化形式の多値/高次変調が適用されたPONシステムでの伝送帯域を各ONUに割り当てる下り通信伝送帯域割り当て方法であって、
到着した下りフレームのヘッダ内の宛先情報から振り分け可能なビット位置の候補を確認し、
前記候補のうち前記下りフレームの振り分け先としたビット位置に対応する前記バッファの残量より前記下りフレームの量が大きいときに、前記下りフレームを待機用バッファに入力することを特徴とする下り通信伝送帯域割り当て方法。
【請求項2】
前記候補が複数ある場合に、振り分け可能なフレーム数が少ないビット位置を前記振り分け先とすることを特徴とする請求項1に記載の下り通信伝送帯域割り当て方法。
【請求項3】
前記待機用バッファ内に下りフレームが存在するときに、
到着した下りフレームと前記待機用バッファ内の下りフレームとの間で前記候補の数を比較し、前記候補の数が少ない下りフレームを他より優先させて振り分け先とした前記バッファに入力することを特徴とする請求項1又は2に記載の下り通信伝送帯域割り当て方法。
【請求項4】
前記待機用バッファ内に下りフレームが存在するときに、
到着した下りフレームと前記待機用バッファ内の下りフレームとの間で前記候補の数を比較し、前記候補の数が同じであれば、前記待機用バッファ内の下りフレームを到着した下りフレームより優先させて振り分け先とした前記バッファに入力することを特徴とする請求項1又は2に記載の下り通信伝送帯域割り当て方法。
【請求項5】
前記候補が複数ある場合に、
他より優先させて振り分ける前記下りフレームの量が振り分け先とした前記バッファの残量より多いとき、前記下りフレームを、振り分け先とした前記バッファと異なる他の前記バッファに入力する、前記待機用バッファに入力する、又は廃棄することを特徴とする請求項3又は4に記載の下り通信伝送帯域割り当て方法。
【請求項6】
伝送帯域の割り当ての公平性と割り当て処理の負荷量とを考慮して、前記下りフレームを、前記バッファに入力する、前記待機用バッファに入力する、あるいは廃棄するかを選択することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の下り通信伝送帯域割り当て方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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