説明

下地剤塗布装置、輪転印刷機および下地剤塗布方法

【課題】ウェブに対し下地剤を好適に塗布可能な下地剤塗布装置等を提供する。
【解決手段】搬送されるウェブWの表面に下地剤を塗布可能な版胴34および圧胴35と、版胴34および圧胴35による下地剤の塗布と相前後して、下地剤を塗布したウェブWの塗布面の反対面となる非塗布面を冷却すべく、圧胴35内部に設けられた冷却部31と、を備え、冷却部31は、圧胴35内部に冷却水を通水している。これにより、ウェブWの非塗布面を冷却することで、下地剤を冷却することができ、下地剤の粘度を高くすることができるため、下地剤はウェブWに浸透しにくくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送される連続紙に下地剤を塗布可能な下地剤塗布装置、輪転印刷機および下地剤塗布方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の下地剤塗布装置として、新聞用紙の印刷面に白色インキからなる下地処理剤を転写するオフセット印刷機が知られている(例えば、特許文献1参照)。具体的に、このオフセット印刷機では、新聞用紙の印刷面に下地処理剤を転写した後、印刷面の下地処理剤を乾燥させ、この後、下地処理剤が乾燥した新聞用紙の印刷面にオフセット印刷を行っている。
【0003】
【特許文献1】特開2008−30452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のオフセット印刷機において、例えば、新聞用紙の片面に下地処理剤を転写すると、下地処理剤が、その転写面から新聞用紙内部に浸透し、転写面の反対面に裏移りしてしまう虞がある。また、転写面の反対面に下地処理剤が裏移りしてしまうと、転写面に留まるべき下地処理剤が不足してしまう。このとき、下地処理剤は、新聞用紙の繊維間の隙間を埋める目止めとして機能しているため、転写面上の下地処理剤が不足してしまうと、目止めとしての機能が低下してしまう虞がある。これにより、下地処理後の新聞用紙に対し、オフセット印刷が好適に行われず、印刷品質が低下してしまう虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、連続紙に対し下地剤を好適に塗布可能な下地剤塗布装置、輪転印刷機および下地剤塗布方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の下地剤塗布装置は、搬送される連続紙の表面および裏面の少なくともいずれか一方に下地剤を塗布可能な一対の印刷胴と、一対の印刷胴による下地剤の塗布と相前後して、下地剤を塗布した連続紙の塗布面の反対面となる非塗布面を冷却可能な非塗布面冷却手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この場合、下地剤塗布後の連続紙を乾燥可能な乾燥手段をさらに備え、非塗布面冷却手段は、乾燥手段に対し、連続紙の搬送方向の上流側に配設されていることが、好ましい。
【0008】
これらの場合、一対の印刷胴は、その一方が版胴で構成されると共にその他方が圧胴で構成され、連続紙の表面または裏面に下地剤を塗布可能となっており、非塗布面冷却手段は、圧胴を冷却していることが、好ましい。
【0009】
この場合、非塗布面冷却手段は、圧胴内部に冷却水を通水する通水手段を有していることが、好ましい。
【0010】
この場合、非塗布面冷却手段は、圧胴に転接すると共に圧胴を冷却可能な冷却ローラを有していることが、好ましい。
【0011】
この場合、非塗布面冷却手段は、連続紙の非塗布面に転接する冷却ローラを有しており、冷却ローラは、一対の印刷胴に対し、少なくとも連続紙の搬送方向の上流側近傍および連続紙の搬送方向の下流側近傍のいずれか一方に配設されていることが、好ましい。
【0012】
この場合、非塗布面冷却手段は、連続紙の非塗布面にエアーを通風可能な通風手段を有しており、通風手段は、一対の印刷胴に対し、少なくとも連続紙の搬送方向の上流側近傍および連続紙の搬送方向の下流側近傍のいずれか一方に配設されていることが、好ましい。
【0013】
この場合、装置内部の湿度を検出可能な湿度検出手段と、検出された湿度に対し、非塗布面冷却手段による冷却温度が、結露発生可能な温度とならないように、非塗布面冷却手段による冷却温度を制御可能な冷却温度制御手段と、を備えたことが、好ましい。
【0014】
本発明の輪転印刷機は、上記の下地剤塗布装置と、下地剤塗布後の連続紙に対し印刷可能な印刷装置と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明の下地剤塗布方法は、搬送される連続紙の表面および裏面の少なくともいずれか一方に下地剤を塗布する下地剤塗布工程と、下地剤塗布工程と相前後して、下地剤を塗布した連続紙の塗布面の反対面となる非塗布面を冷却する非塗布面冷却工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の下地剤塗布装置、請求項9の輪転印刷機および請求項10の下地剤塗布方法によれば、非塗布面冷却手段(非塗布面冷却工程)によりウェブの非塗布面を冷却することができる。つまり、非塗布面を冷却すると、連続紙を介して下地剤を冷却することが可能となる。このとき、下地剤は、温度により粘性が変化するものであり、具体的に、下地剤を冷却すると、下地剤の粘度を高くすることができる。このため、連続紙に塗布された下地剤が連続紙を介して冷却されると、下地剤の連続紙側は、高粘度となることで連続紙に浸透しにくくなり、塗布面に留まることとなる。これにより、下地剤は、非塗布面に裏移りすることがない。また、下地剤は、塗布面に留まるため、目止めとして好適に機能させることができる。さらに、連続紙に対し余分な下地剤の吸収を抑制することができるため、連続紙に発生するシワ等を抑制することができる。
【0017】
請求項2の下地剤塗布装置によれば、下地剤を連続紙の塗布面に留まらせた状態で、乾燥手段により下地剤を乾燥させることができる。これにより、下地剤を好適に乾燥させることができ、連続紙に対し良好に下地処理を行うことができる。
【0018】
請求項3の下地剤塗布装置によれば、一対の印刷胴のうち、一方を版胴で構成すると共に他方を圧胴で構成し、圧胴を非塗布面冷却手段により冷却することができる。これにより、連続紙は、版胴による下地剤の塗布と同時に下地剤の冷却が行われるため、下地剤を塗布面に良好に留まらせることができる。
【0019】
請求項4の下地剤塗布装置によれば、圧胴内部に冷却水を通水することで、圧胴を冷却ローラとして機能させることができる。これにより、大幅に装置構成を変更する必要がなく、また、非塗布面冷却手段を簡易な構成とすることができる。
【0020】
請求項5の下地剤塗布装置によれば、圧胴に冷却ローラを転接させることで、圧胴を冷却することができる。これにより、圧胴の構成を変更する必要がなく、また、非塗布面冷却手段を簡易な構成とすることができる。
【0021】
請求項6の下地剤塗布装置によれば、一対の印刷胴の上流側近傍に冷却ローラを配設することで、冷却ローラは、下地剤を塗布する直前に連続紙の非塗布面を冷却することができる。また、一対の印刷胴の下流側近傍に冷却ローラを配設することで、冷却ローラは、下地剤を塗布した直後に連続紙の非塗布面を冷却することができる。このため、非塗布面冷却手段の配設の自由度を向上させることが可能となる。
【0022】
請求項7の下地剤塗布装置によれば、一対の印刷胴の上流側近傍に通風手段を配設することで、通風手段は、下地剤を塗布する直前に連続紙の非塗布面を冷却することができる。また、一対の印刷胴の下流側近傍に通風手段を配設することで、通風手段は、下地剤を塗布した直後に連続紙の非塗布面を冷却することができる。このため、非塗布面冷却手段の配設の自由度を向上させることが可能となる。
【0023】
請求項8の下地剤塗布装置によれば、非塗布面冷却手段から発生する結露を抑制することができるため、結露による連続紙の破断等を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付した図面を参照して、本発明に係る下地剤塗布装置を適用した輪転印刷機について説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0025】
ここで、図1は、実施例1の新聞用オフセット輪転印刷機の一部を表した概略構成図であり、図2は、実施例1に係る下地剤塗布装置を表した概略構成図である。また、図3は、下地剤塗布装置の冷却部周りにおける断面図であり、図4は、変形例に係る下地剤塗布装置の冷却部周りを表した概略構成図である。
【0026】
輪転印刷機として適用された新聞用オフセット輪転印刷機1(以下、輪転印刷機と言う)は、印刷対象物であるウェブW(連続紙)を搬送しながら、このウェブWに下地処理を行い、下地処理後のウェブWに印刷を行っている。図1に示すように、輪転印刷機1は、ウェブWの搬送方向の上流側から、複数(図示では1台)の給紙装置と、複数(図示では1台)のインフィード装置6と、複数(図示では1台)の下地剤塗布装置10と、複数(図示では1台)の印刷装置7と、を備えている。
【0027】
各給紙装置は、それぞれウェブWがロール状に巻かれた3つの巻取紙Pを保持する保持アーム15を備えており、この保持アーム15を回動させることで、巻取紙Pを給紙位置に臨ませることができる。また、各給紙装置には、図示しない紙継装置がそれぞれ設けられており、給紙位置で繰り出されている巻取紙Pが残り少なくなると、この紙継装置により給紙位置にある巻取紙Pに対して、待機位置にある巻取紙Pを紙継することができる。
【0028】
各インフィード装置6は、図示しない駆動モータにより回転駆動するインフィードローラ20と、径方向に移動してダンサー圧を調整するダンサーローラ21とを有しており、インフィードローラ20およびダンサーローラ21は、ウェブに転接して配設されている。このため、インフィードローラ20は、回転することによりウェブWを下流側の下地剤塗布装置10へ向けて搬送し、ダンサーローラ21は、ダンサー圧を調整することによりウェブWのテンションを調整している。
【0029】
詳細は後述するが、各下地剤塗布装置10は、搬送されるウェブWに下地剤を塗布し、この後、下地剤を乾燥させることで、ウェブWに下地処理を施すものである。
【0030】
各印刷装置7は、例えば、両面4色印刷を行う多色刷両面印刷装置である。各印刷装置7は、搬送されるウェブの両面に転接する一対のブランケット胴25,25と、一対のブランケット胴25,25にそれぞれ転接する一対の版胴24,24と、各版胴24にインキを供給可能な各種インキローラ(図示省略)とを備え、これら一組を一色分として、計4組設けられている。なお、印刷装置7として、多色刷両面印刷装置に限らず、両面2色印刷を行う2色刷両面印刷装置、両面単色印刷を行う単色刷両面印刷装置や、一面4色または2色印刷を行う多色刷片面印刷装置など印刷物に応じて適宜使い分けてもよい。
【0031】
また、図示は省略するが、複数の印刷装置7の下流側にはウェブパス装置が配設され、ウェブパス装置の下流側には折機が配設されている。
【0032】
ウェブパス装置は、ウェブWの搬送方向(縦方向)に沿ってその幅方向(横方向)の中央部で裁断する複数のカッタと、裁断したウェブWの搬送経路を設定する多数のターンバーが設けられている。従って、各印刷装置7で印刷が施された各ウェブWは、ウェブパス装置にて、カッタにより縦裁断されると共に、ターンバーにより搬送経路が変更され、所定の順番に重ね合わせられる。
【0033】
折機は、ウェブパス装置から重ね合わせられた複数のウェブWが導入されると、ウェブWを縦折りし、所定の長さで横裁断し、横折りして所望の折帳(新聞:印刷物)を形成し、この折帳を排紙している。
【0034】
ここで、輪転印刷機1による一連の印刷動作について説明する。先ず、各給紙装置から各インフィード装置6を介して各下地剤塗布装置10に各ウェブWが供給されると、各下地剤塗布装置10では、各ウェブWに対して下地処理が行われる。続いて、各下地剤塗布装置10から各印刷装置7に、下地処理後のウェブWが供給されると、各印刷装置7では、各ウェブWに対して4色刷や2色刷が両面に行われる。次に、各印刷装置7で印刷が施された複数のウェブWは、ウェブパス装置において、カッタにより縦裁断されると共に、走行ルートが変更され、それぞれ所定の順番に重ね合わせられる。そして、ウェブパス装置により重ね合わされた複数のウェブWが折機に導入されると、重ね合わされた複数のウェブWは、縦折りされた後、所定の長さで横裁断され、横折りされて所望の折帳が作成され、この後、この折帳は排紙される。
【0035】
ところで、上記の下地剤塗布装置10において、ウェブWの塗布面に下地剤を塗布すると、下地剤がウェブWの塗布面から浸透して、ウェブWの塗布面の反対面となる非塗布面に裏移りしてしまう虞がある。このため、実施例1では、下地剤をウェブWの塗布面に塗布すると同時に、ウェブWの非塗布面を冷却している。以下、図2を参照して、実施例1に係る下地剤塗布装置10について説明する。
【0036】
下地剤塗布装置10は、ウェブWの片面(表面または裏面)に下地剤を塗布する塗布部30と、塗布した下地剤を冷却する冷却部31と、冷却した下地剤を乾燥させる乾燥部32とを備えており、これら各部30,31,32間には、ウェブWの搬送方向を変更可能な複数のガイドローラ33が配設されている。このとき、下地剤として、例えば、白色インキが用いられており、白色インキは、温度によってその粘性が変化する。具体的に、白色インキで構成された下地剤は、温度が低ければ低いほどその粘度は高粘度となり、温度が高ければ高いほどその粘度は低粘度となる。なお、下地剤の使用時において、下地剤は、例えば、40℃程度に暖められている。
【0037】
塗布部30は、ウェブWに下地剤を塗布する版胴34と、ウェブWを挟んで版胴34に対接する圧胴35と、版胴34に転接すると共に版胴34に下地剤を供給する下地剤供給ローラ36とを備えている。版胴34は、例えば、ゴムローラで構成されており、下地剤供給ローラ36は、例えば、アニロックスローラで構成されている。従って、塗布部30は、下地剤供給ローラ36により下地剤を版胴34へ供給し、下地剤が供給された版胴34を圧胴35と同期させて回転させる。これにより、塗布部30に導入されたウェブWは、版胴34および圧胴35に挟み込まれながら、ウェブWの片面に下地剤が転写される。このとき、版胴34の周面温度は、下地剤により暖められることで、40℃程度となっている。
【0038】
乾燥部32は、下地剤が転写されたウェブWの塗布面を乾燥させるものであり、熱源となる電熱ヒータ40と、電熱ヒータ40により発生させた熱をウェブWに向けて送風するブロア41と、ブロア41により送られてきた熱風をウェブWに吹き付けるための複数のノズル42と、ウェブWを挟んで複数のノズル42に対向して設けられたガイドプレート43とを備えている。複数のノズル42は、ウェブWの塗布面側に配設され、ウェブWの搬送方向に列設されている。ガイドプレート43は、方形板状に構成され、ウェブWの非塗布面側に配設され、ウェブWの搬送方向へ延在するように配設されている。従って、乾燥部32は、複数のノズル42から吹き出される熱風を、ウェブWの塗布面に吹き当てることで、下地剤の溶媒の揮発を促進させ、これにより、下地剤を乾燥させている。
【0039】
図3に示すように、冷却部31は、圧胴35の軸心に配設した通水管45と、通水管45に冷却水を供給する冷却水供給部46と、を備えている。通水管45は、圧胴35内部の軸心に配設した圧胴側通水管47と、圧胴側通水管47の両側にロータリジョイント48を介して連結された固定通水管49,49とで構成されている。このため、冷却水供給部46から供給された冷却水は、圧胴35が回転しても、通水管45の外部に漏出しないように構成されている。これにより、冷却水により冷却された圧胴35は、冷却ローラとして機能する。このとき、圧胴35の周面温度は、版胴34の周面温度に比して低温度となるように冷却すればよく、好ましくは、20℃程度となるように冷却される。
【0040】
また、下地剤塗布装置10には、装置内部の湿度を検出する湿度センサ50が配設されると共に、冷却水の水温を制御する冷却温度制御部51が配設されている。冷却温度制御部51は、湿度センサ50により検出した湿度に基づいて、冷却水の水温を制御することで、圧胴35の周面に発生する結露を抑制している。
【0041】
複数のガイドローラ33は、塗布部30の上流側、塗布部30と乾燥部32との間、および乾燥部32の下流側にそれぞれ配設されており、搬送されるウェブWの搬送方向を変更して案内している。
【0042】
ここで、下地剤塗布装置10による一連の下地処理動作について説明する。下地剤塗布装置10にウェブWが導入されると、ウェブWの一方の片面(表面)には、版胴34により下地剤が転写される(下地剤塗布工程)。一方で、ウェブWの他方の片面(裏面)は、圧胴35により冷却される(非塗布面冷却工程)。すなわち、下地剤が塗布されたウェブWの塗布面(表面)は版胴34により暖められる一方、ウェブWの非塗布面(裏面)は圧胴35により冷却される。圧胴35によりウェブWの非塗布面が冷却されると、ウェブWを介して塗布面に塗布された下地剤が冷却される。このため、下地剤は、その表面側が暖かく、そのウェブW側が冷たくなる。これにより、冷却されたウェブW側の下地剤は粘度が高くなるため、下地剤がウェブWに浸透しにくくなる。
【0043】
続いて、下地剤が塗布されたウェブWは、各ガイドローラ33にガイドされながら乾燥部32に導入される。乾燥部32に導入されたウェブWの塗布面には、複数のノズル42から熱風が吹き当てられる(乾燥工程)。これにより、塗布面の下地剤は、その溶媒が揮発して乾燥し、以上をもって下地処理が完了する。そして、下地処理後のウェブWは、下流側の印刷装置7へ向けて搬送される。
【0044】
以上の構成によれば、下地剤塗布装置10は、下地剤の塗布と同時に下地剤を冷却することができる。このため、下地剤がウェブWに浸透する前に、ウェブ側の下地剤の粘度を高くすることができるため、下地剤がウェブWに浸透しにくくなる。これにより、下地剤が非塗布面に裏移りすることなく、ウェブWの塗布面に下地剤を留まらせることができるため、下地剤は目止めとして好適に機能させることができる。さらに、ウェブWに対し余分な下地剤の吸収を抑制することができるため、ウェブWに発生するシワ等を抑制することができる。
【0045】
なお、実施例1では、圧胴35内部に冷却水を通水することで、圧胴35を冷却ローラとして機能させたが、これに限らず、図4に示す変形例として、圧胴35に冷却ローラ55を転接させてもよい。なお、冷却ローラ55は、圧胴35と略同様の構成にしてもよく、図示は省略するが、ローラ本体と、ローラ本体の軸心に配設した通水管と、通水管に冷却水を供給する冷却水供給部とを備え、通水管に冷却水を通水することで、ローラ本体を冷却してもよい。このとき、冷却ローラ55は、圧胴35の周面温度を版胴34の周面温度に比して低温度となるように冷却すればよく、好ましくは、圧胴35の周面温度が20℃程度となるように冷却する。
【実施例2】
【0046】
次に、図5を参照して、実施例2に係る下地剤塗布装置100について説明する。なお、重複した記載を避けるべく異なる部分についてのみ説明する。図5は、実施例2に係る下地剤塗布装置を表した概略構成図である。実施例1の下地剤塗布装置10において、冷却部31は、圧胴35内部に配設したが、これに代えて、実施例2の下地剤塗布装置100では、圧胴35の上流側に冷却部105を配設している。
【0047】
具体的に、下地剤塗布装置100の冷却部105は、冷却ローラ106を有しており、冷却ローラ106は、版胴34および圧胴35に対し、ウェブWの搬送方向の上流側近傍に配設されている。冷却ローラ106は、ウェブWの非塗布面(裏面)に転接するように配設されており、下地剤塗布前のウェブWの非塗布面を冷却している。冷却ローラ106は、実施例1の変形例における冷却ローラ55と同様に構成されているため説明を省略する。
【0048】
従って、実施例2の下地剤塗布装置100にウェブWが導入されると、先ず、ウェブWは、その他方の片面(非塗布面)が冷却ローラ106に冷却される。この後、非塗布面が冷却されたウェブWは塗布部30に導入され、塗布部30は、ウェブWの一方の片面(塗布面)に下地剤を塗布する。なお、冷却ローラ106は、その周面温度を版胴34の周面温度に比して低温度となるように冷却すればよく、好ましくは、その周面温度が20℃程度となるように冷却する。
【0049】
以上の構成によれば、下地剤塗布装置100は、下地剤の塗布の直前にウェブWの非塗布面を冷却することができる。このため、ウェブWの塗布面に下地剤を塗布すると、塗布したウェブ側の下地剤は、ウェブWに接することで冷却されて高粘度となり、ウェブWに浸透しにくくなる。これにより、下地剤が非塗布面に裏移りすることなく、ウェブWの塗布面に下地剤を留まらせることができるため、下地剤は目止めとして好適に機能させることができる。さらに、ウェブWに対し余分な下地剤の吸収を抑制することができるため、ウェブWに発生するシワ等を抑制することができる。なお、冷却ローラ106は、圧胴35のウェブWの搬送方向の上流側近傍に配設したが、圧胴35と冷却ローラ106との距離は、冷却ローラ106による冷却効果が持続可能な距離となっていればよい。また、実施例2において、冷却ローラ106を版胴34の上流側近傍に配設したが、冷却ローラ106に対接して加熱ローラを配設してもよい。
【実施例3】
【0050】
次に、図6を参照して、実施例3に係る下地剤塗布装置200について説明する。なお、この場合も、重複した記載を避けるべく異なる部分についてのみ説明する。図6は、実施例3に係る下地剤塗布装置を表した概略構成図である。実施例2の下地剤塗布装置100において、冷却部105は、圧胴35の上流側近傍に配設したが、実施例3の下地剤塗布装置200では、冷却部205は、圧胴35の下流側近傍に配設している。
【0051】
具体的に、下地剤塗布装置200の冷却部205は、冷却ローラ206を有しており、冷却ローラ206は、版胴34および圧胴35に対し、ウェブWの搬送方向の下流側近傍に配設されている。冷却ローラ206は、ウェブWの非塗布面(裏面)に転接するように配設されており、下地剤塗布後のウェブWの非塗布面を冷却している。冷却ローラ206は、実施例1の変形例における冷却ローラ55と同様に構成されているため説明を省略する。
【0052】
従って、実施例3の下地剤塗布装置200にウェブWが導入されると、塗布部30は、導入されたウェブWの一方の片面(塗布面)に下地剤を塗布し、この直後に、冷却部205は、冷却ローラ206によりウェブWの非塗布面を冷却する。なお、冷却ローラ206は、その周面温度を版胴34の周面温度に比して低温度となるように冷却すればよく、好ましくは、その周面温度が20℃程度となるように冷却する。
【0053】
以上の構成によれば、下地剤塗布装置200は、下地剤を塗布した直後にウェブWの非塗布面を冷却することができる。このため、下地剤がウェブWに浸透する前に、ウェブ側の下地剤の粘度を高くすることができるため、下地剤がウェブWに浸透しにくくなる。これにより、下地剤が非塗布面に裏移りすることなく、ウェブWの塗布面に下地剤を留まらせることができるため、下地剤は目止めとして好適に機能させることができる。なお、冷却ローラ206は、圧胴35のウェブWの搬送方向の下流側近傍に配設したが、圧胴35と冷却ローラ206との距離は、下地剤がウェブWに浸透しきらない距離となればよい。また、実施例3において、冷却ローラ206を版胴34の下流側近傍に配設したが、冷却ローラ206に対接して冷却ローラをさらに配設してもよい。
【実施例4】
【0054】
次に、図7を参照して、実施例4に係る下地剤塗布装置300について説明する。図7は、実施例4に係る下地剤塗布装置を表した概略構成図である。実施例4の下地剤塗布装置300は、搬送されるウェブWの両面に下地剤を塗布すると共に、ウェブWの両面に塗布された下地剤を、下地剤の塗布の直前および直後において冷却している。
【0055】
下地剤塗布装置300は、ウェブWの両面に下地剤を塗布する塗布部304と、両面に塗布した下地剤を冷却する冷却部305と、冷却した下地剤を乾燥させる乾燥部(図示省略)とを備えている。そして、乾燥部は、下地剤が転写されたウェブWの両面を乾燥させている。
【0056】
塗布部304は、ウェブWを挟んで転接する一対の版胴310,310と、各版胴310に転接すると共に各版胴310に下地剤を供給する一対の下地剤供給ローラ311,311とを備えている。このとき、一対の版胴310,310は、ウェブWの両面に対し、部分的に下地剤を転写することが可能な構成となっており、具体的に、ウェブWの表面における所定領域に下地剤を塗布すると共に、ウェブWの裏面における所定領域に下地剤を塗布する。従って、塗布部304に導入されたウェブWは、一対の版胴310,310に挟み込まれながら、その両面に下地剤が部分的に転写され、下地剤転写後のウェブWは乾燥部へ向けて搬送される。
【0057】
冷却部305は、一対の版胴310,310の上流側近傍に配設された上流側通風部315と、一対の版胴310,310の下流側近傍に配設された下流側通風部316と、を備えており、上流側通風部315はウェブWの他方の片面(裏面)を通風し、下流側通風部316はウェブWの一方の片面(表面)を通風している。上流側通風部315は、例えば、ウェブWの幅方向に延びるスリット形状の通風ノズル320と、通風ノズル320に冷気を送風可能な冷気送風装置321とを備えている。そして、通風ノズル320は、ウェブの裏面に冷気を吹き当てるように配設されており、冷気送風装置321は、通風ノズル320を介してウェブWの裏面に冷気を吹き当てることで、ウェブWの裏面を冷却している。下流側通風部316も、上流側通風部315と同様の構成となっており、通風ノズル325と冷気送風装置326とを備えている。そして、通風ノズル325は、ウェブの表面に冷気を吹き当てるように配設されており、冷気送風装置326は、通風ノズル325を介してウェブWの表面に冷気を吹き当てることで、ウェブWの表面を冷却している。なお、各通風ノズル320,325には、開口部の幅方向における一部を閉塞するマスクプレート330,331が装着可能となっている。そして、各通風ノズル320,325にマスクプレート330,331を装着することで、各通風ノズル320,325は、ウェブWの幅方向において部分的に冷気を吹き当てることが可能となっている。
【0058】
ここで、実施例4に係る下地剤塗布装置300による一連の下地処理動作について説明する。下地剤塗布装置300にウェブWが導入されると、先ず、上流側通風部315によりウェブWの裏面が冷却される。このとき、上流側通風部315は、マスクプレート330をウェブWの幅方向において適宜調整して通風ノズル320に装着し、ウェブWの表面に塗布される下地剤の幅と同幅とすることで、冷却が必要な部分に冷気を吹き当てる。なお、下地剤がウェブWの表面において全幅に亘って塗布される場合、上流側通風部315は、マスクプレート330を装着せず、ウェブWの全幅において冷気を吹き当てるようにしてもよい。
【0059】
続いて、裏面が冷却されたウェブWが塗布部304に導入されると、塗布部304は、一対の版胴310,310によりウェブWの両面に下地剤を転写する。このとき、塗布部304は、ウェブWの両面に対し、部分的に下地剤を塗布可能となっている。ウェブWの両面に下地剤が転写されると、ウェブWの裏面は事前に冷却されているため、ウェブWの表面に塗布された下地剤の裏移りを抑制することができる。
【0060】
この後、両面に下地剤が塗布されたウェブWが下流側通風部316に導入されると、下流側通風部316は、ウェブWの表面を冷却する。このとき、下流側通風部316は、上流側通風部315と同様に、マスクプレート331をウェブWの幅方向において適宜調整して通風ノズル325に装着し、ウェブWの裏面に塗布される下地剤の幅と同幅とすることで、冷却が必要な部分に冷気を吹き当てる。なお、この場合も上流側通風部315と同様に、下地剤がウェブWの裏面において全幅に亘って塗布される場合、下流側通風部316は、マスクプレート331を装着せず、ウェブWの全幅において冷気を吹き当てるようにしてもよい。これにより、ウェブWの表面を冷却するとことで、ウェブWの裏面に塗布された下地剤の裏移りを抑制することができる。
【0061】
以上の構成によれば、下地剤塗布装置300は、ウェブWの両面に下地剤を塗布すると共に、ウェブWの両面を冷却することができる。これにより、両面に塗布された下地剤が裏移りすることなく、ウェブW上に下地剤を留まらせることができるため、下地剤は目止めとして好適に機能させることができる。
【0062】
なお、実施例2および3において、冷却ローラ106,206を版胴34の上流側近傍または下流側近傍に配設したが、冷却ローラ106,206に代えて、通風部を配設してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上のように、本発明に係る下地剤塗布装置、輪転印刷機および下地剤塗布方法は、ウェブに下地剤を好適に塗布する場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施例1の新聞用オフセット輪転印刷機の一部を表した概略構成図である。
【図2】実施例1に係る下地剤塗布装置を表した概略構成図である。
【図3】下地剤塗布装置の冷却部周りにおける断面図である。
【図4】変形例に係る下地剤塗布装置の冷却部周りを表した概略構成図である。
【図5】実施例2に係る下地剤塗布装置を表した概略構成図である。
【図6】実施例3に係る下地剤塗布装置を表した概略構成図である。
【図7】実施例4に係る下地剤塗布装置を表した概略構成図である。
【符号の説明】
【0065】
1 輪転印刷機
6 インフィード装置
7 印刷装置
10 下地剤塗布装置
30 塗布部
31 冷却部
32 乾燥部
33 ガイドローラ
34 版胴
35 圧胴
36 下地剤供給ローラ
45 通水管
46 冷却水供給部
50 湿度センサ
51 冷却温度制御部
55 冷却ローラ(変形例)
100 下地剤塗布装置(実施例2)
106 冷却ローラ(実施例2)
200 下地剤塗布装置(実施例3)
206 冷却ローラ(実施例3)
300 下地剤塗布装置(実施例4)
315 上流側通風部
316 下流側通風部
W ウェブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される連続紙の表面および裏面の少なくともいずれか一方に下地剤を塗布可能な一対の印刷胴と、
前記一対の印刷胴による前記下地剤の塗布と相前後して、前記下地剤を塗布した前記連続紙の塗布面の反対面となる非塗布面を冷却可能な非塗布面冷却手段と、を備えたことを特徴とする下地剤塗布装置。
【請求項2】
下地剤塗布後の前記連続紙を乾燥可能な乾燥手段をさらに備え、
前記非塗布面冷却手段は、前記乾燥手段に対し、前記連続紙の搬送方向の上流側に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の下地剤塗布装置。
【請求項3】
前記一対の印刷胴は、その一方が版胴で構成されると共にその他方が圧胴で構成され、前記連続紙の表面または裏面に前記下地剤を塗布可能となっており、
前記非塗布面冷却手段は、前記圧胴を冷却していることを特徴とする請求項1または2に記載の下地剤塗布装置。
【請求項4】
前記非塗布面冷却手段は、前記圧胴内部に冷却水を通水する通水手段を有していることを特徴とする請求項3に記載の下地剤塗布装置。
【請求項5】
前記非塗布面冷却手段は、前記圧胴に転接すると共に前記圧胴を冷却可能な冷却ローラを有していることを特徴とする請求項3に記載の下地剤塗布装置。
【請求項6】
前記非塗布面冷却手段は、前記連続紙の非塗布面に転接する冷却ローラを有しており、
前記冷却ローラは、前記一対の印刷胴に対し、少なくとも前記連続紙の搬送方向の上流側近傍および前記連続紙の搬送方向の下流側近傍のいずれか一方に配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の下地剤塗布装置。
【請求項7】
前記非塗布面冷却手段は、前記連続紙の非塗布面にエアーを通風可能な通風手段を有しており、
前記通風手段は、前記一対の印刷胴に対し、少なくとも前記連続紙の搬送方向の上流側近傍および前記連続紙の搬送方向の下流側近傍のいずれか一方に配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の下地剤塗布装置。
【請求項8】
装置内部の湿度を検出可能な湿度検出手段と、
検出された前記湿度に対し、前記非塗布面冷却手段による冷却温度が、結露発生可能な温度とならないように、前記非塗布面冷却手段による冷却温度を制御可能な冷却温度制御手段と、を備えたことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の下地剤塗布装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の下地剤塗布装置と、
下地剤塗布後の前記連続紙に対し印刷可能な印刷装置と、を備えたことを特徴とする輪転印刷機。
【請求項10】
搬送される連続紙の表面および裏面の少なくともいずれか一方に下地剤を塗布する下地剤塗布工程と、
前記下地剤塗布工程と相前後して、前記下地剤を塗布した前記連続紙の塗布面の反対面となる非塗布面を冷却する非塗布面冷却工程と、を備えたことを特徴とする下地剤塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−89420(P2010−89420A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262939(P2008−262939)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】