説明

下水処理システム

【課題】システム全体の設備コストを低く抑えつつ、消毒剤の注入量をきめ細かに調整し、大腸菌群の数、残留塩素量などを最適化する。
【解決手段】 下水処理設備2の測定動作で得られた各プロセスデータを下水処理設備2→ポンプ場制御装置3→通信回線5→サービスセンタ装置4なる経路で、サービスセンタ装置4に供給して、複数個の消毒剤注入量設定値を演算した後、サービスセンタ装置4→通信回線5→ポンプ場制御装置3なる経路で、ポンプ場制御装置3に複数個の消毒剤注入量設定を供給して表示しながら、運転員に1つの消毒剤注入量設定を選択して、下水処理設備2のポンプ場8から汲み出された処理水の一部に、指定した注入率で消毒剤を注入して、河川13に放流する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水、雨水などを処理する合流式の下水道システムに係わり、特に好天時のみならず、雨天時などにおいても、消毒剤の注入量を最適化するようにした下水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
合流式の下水道システムでは、下水、雨水などの処理水が定められた条件、例えば処理水中に含まれる大腸菌群の個数が“3000個/mL”以下になるように、消毒剤の注入量を調節している。
【0003】
この際、消毒剤の注入量を増やすと、消毒効果が上がり、処理水中の大腸菌群数を低減することができるものの、必要以上の消毒剤を注入すると、処理水とともに、未反応の消毒剤が放流されて、放流水系に悪影響を与えてしまう恐れがある。このため、消毒剤の流入量は、処理水が定められた条件を満足するのに必要十分な量にしなければならない。
【特許文献1】特開2005−131583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような合流式下水道システムでは、雨天時に合流管に流入する雨水の流量が晴天時に流入する下水の流量よりも、はるかに多く、水質も悪いことから、雨天時において、適切な消毒剤の注入量を最適化することが難しいという問題があった。
【0005】
そこで、このような問題を解決する方法として、現場側のポンプ場で、処理水に含まれる有機物濃度を測定し、この測定結果と、消毒剤と処理水とが混和する接触時間とに基づき、ポンプ場制御装置に消毒剤の注入量を演算して、注入量を自動的に調整する方法が提案されている(特許文献1)。
【0006】
また、他の問題解決方法として、各地に配置されたレーダ雨量計、地上雨量計などの計測結果をポンプ場制御装置に伝送して、処理水の流量変化、汚濁負荷量変化などを予測し、消毒剤の注入量を決定して注入量を自動的に調整する方法なども提案されている。
【0007】
しかしながら、これらの問題解決方法では、現場毎に、高性能で高価なポンプ場制御装置を配置しなければならない。
【0008】
また、下水管の状況、周囲の地形、雨の降り方などによって、現場毎に、処理水の流量変化などが異なることから、各ポンプ場制御装置にインストールされているプログラムを現場毎に最適化しなければならず、コストがかかりすぎるという問題がある。
【0009】
本発明は上記の事情に鑑み、下水管の状況、周囲の地形、雨の降り方などに対応して、消毒剤の注入量をきめ細かに調整でき、大腸菌群の数、残留塩素量などを最適化することができる下水処理システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために本発明は、下水、雨水を取り込み、処理水として貯留しつつ、プロセスデータを生成するとともに、入力された制御データで指定された注入量の消毒剤を吐出して、処理水に注入し、放流するポンプ場設備と、通信回線を介して、ポンプ場設備で生成されたプロセスデータを取り込むとともに、このプロセスデータに基づき、複数個の消毒剤注入量設定値を演算するサービスセンタ装置と、サービスセンタ装置で得られた複数個の消毒剤注入量設定値を表示し、運転員によって選択された消毒剤注入量設定値に基づき、制御データを生成して、ポンプ場設備を制御し、消毒剤の注入処理、放流処理を行わせるポンプ場制御装置とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、各現場側に設けられるポンプ場制御装置を低価格化して、システム全体の設備コストを低く抑えることができ、さらにシミュレーション演算で得られた複数個の消毒剤注入量設定値の中から、現場の状況を詳細に把握している運転員に最適な消毒剤注入量設定値を選択することにより、下水管の状況、周囲の地形、雨の降り方などに対応して、消毒剤の注入量をきめ細かに調整でき、大腸菌群の数、残留塩素量などを最適化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
《第1の実施形態》
図1は本発明による下水処理システムの第1の実施形態を示すブロック図である。
【0013】
この図に示す下水処理システム1は、下水、雨水などを取り込み、処理水として貯留しつつ、流入量や水位などを計測して、プロセスデータを生成する処理、貯留している処理水を下水管10に送水する処理、及び消毒剤を注入して河川13などに放流する処理などを行う下水処理設備2と、下水処理設備2から出力されるプロセスデータを取り込み、指定された場所に送信する処理、受信したデータを運転員に提示するとともに、運転員の選択内容に応じて、下水処理設備2に消毒剤注入量指示、放流量指示、送水量指示などを供給するポンプ場制御装置3と、電話回線、専用回線などの通信回線5などを介してポンプ場制御装置3から送信されたプロセスデータを取り込むとともに、このプロセスデータに基づき、複数個の消毒剤注入量設定値を演算し、通信回線5などを介してポンプ場制御装置3に送信するサービスセンタ装置4とを備えている。
【0014】
そして、下水処理設備2側によって、下水、雨水などの流入量や水位などを計測して、プロセスデータを生成し、下水処理設備2→ポンプ場制御装置3→通信回線5→サービスセンタ装置4なる経路で、サービスセンタ装置4にプロセスデータを供給する。また、複数個の消毒剤注入量設定値を演算した後、サービスセンタ装置4→通信回線5→ポンプ場制御装置3なる経路で、ポンプ場制御装置3に複数個の消毒剤注入量設定を供給して表示する。また、運転員によって選択された消毒剤注入量設定、運転員によって設定された放流量指示設定値、送水量指示設定値などに基づき、ポンプ場制御装置3から消毒剤注入量指示、放流量指示、送水量指示を出力して、下水処理設備2のポンプ場8に貯留されている処理水の一部を下水管10に送水するとともに、指定した注入率で消毒剤を注入して、河川13に放流する。
【0015】
下水処理設備2は、下水管6を介して、雨水ます7で集められた雨水、各家庭などから出される下水などを取り込み、処理水として、貯留しつつ、流入量や水位などを計測してプロセスデータを出力するポンプ場8と、ポンプ場制御装置3からの送水量指示に基づき、ポンプ場8に貯留されている処理水を取り込み、下水管10に放流する送水ポンプ9と、ポンプ場制御装置からの放流量指示に基づき、ポンプ場8に貯留されている処理水を取り込み、河川13に放流する放流ポンプ11と、消毒剤を貯留し、ポンプ場制御装置3からの消毒剤注入量指示に基づき、消毒剤を吐出して、河川13に放流される処理水を消毒する消毒装置12とを備えている。
【0016】
そして、下水、雨水などの処理水を取り込み、ポンプ場8に貯留しつつ、ポンプ場8に流入する処理水の流入量、ポンプ場8の水位などを計測して、プロセスデータを生成し、これをポンプ場制御装置3に供給する。また、ポンプ場制御装置3からの送水量指示に基づき、送水ポンプ9を運転してポンプ場8に貯留されている処理水を取り込み、下水管10に送水する。また、ポンプ場制御装置3からの放流量指示、消毒剤注入量指示に基づき、放流ポンプ11を運転して、ポンプ場8に貯留されている処理水を取り込み、消毒装置12から指定された量だけ消毒剤を吐出して処理水に注入した後、河川13に放流する。
【0017】
また、ポンプ場制御装置3は、下水処理設備2から出力されるプロセスデータを取り込み、通信回線5を介してサービスセンタ装置4に供給する。また、通信回線5を介してサービスセンタ装置4から送信された複数個の消毒剤注入量設定値を取り込んで、運転員に提示する。そして、運転員によって選択された1つの消毒剤注入量設定、運転員によって設定された放流量指示設定値、送水量指示設定値などに基づき、消毒剤注入量指示、放流量指示、送水量指示を出力して下水処理設備2を制御する。
【0018】
また、サービスセンタ装置4は、通信回線5を介してポンプ場制御装置3から送信されたプロセスデータを取り込むとともに、このプロセスデータに基づき、シミュレーション演算などを行って、複数個の消毒剤注入量設定値を生成し、通信回線5を介してポンプ場制御装置4に送信する。
【0019】
この際、図2に示すように、一般的な消毒処理では、消毒剤となる塩素注入量が増加すると、対数形式で表示されている大腸菌群が直線的に減少し、また最初からしばらくの間、残留塩素が“0mg/L”で推移した後、直線的に増加するという特性を持つ。
【0020】
ここで、消毒処理された下水中の大腸菌群数が“b1”に規制され、残留塩素量が“a1”に規制されていれば、これら大腸菌群の基準値“b1”、残留塩素の基準値“a1”に各々、対応して、塩素注入量が“b2”、“a2”になる。
【0021】
そして、これら塩素注入量“b2”、“a2”が、例えば“b2>a2”となっているとき、大腸菌群、残留塩素量のどちらを重視するかによって、適切な塩素注入量が異なることから、塩素注入量“b2”〜“a2”の間で、複数個の塩素注入量設定値を演算する。これらの塩素注入量設定値が選択されたとき、大腸菌群数、残留塩素量が基準値からどれだけ離れるかを示す差分値、これらの差分値が所定のしきい値を超えているかどうかを示す警告メッセージなどを作成し、ポンプ場制御装置3に表示する。運転員は大腸菌群数、残留塩素量のどちらを重視するかによって、最適な塩素注入量設定値を選択する。
【0022】
このように、第1の実施形態では、下水処理設備2の測定動作で得られた各プロセスデータを下水処理設備2→ポンプ場制御装置3→通信回線5→サービスセンタ装置4なる経路で、サービスセンタ装置4に供給して、複数個の消毒剤注入量設定値を演算した後、サービスセンタ装置4→通信回線5→ポンプ場制御装置3なる経路で、ポンプ場制御装置3に複数個の消毒剤注入量設定を供給して表示し、運転員に1つの消毒剤注入量設定を選択させて、下水処理設備2のポンプ場8から汲み出された処理水の一部に、指定した注入率で消毒剤を注入して、河川13に放流するようにしている。このため、各現場側に設けられるポンプ場制御装置3を低価格化して、システム全体の設備コストを低く抑えることができる。また、現場の状況を詳細に把握している運転員は、下水管6の状況、周囲の地形、雨の降り方などに対応して消毒剤の注入量をきめ細かに調整でき、大腸菌群の数、残留塩素量などを最適化することができる。
【0023】
また、第1の実施形態では、サービスセンタ装置4によって、処理水の大腸菌群を低減するのに適した消毒剤注入量設定値と、処理水の残留消毒剤量を低減するのに適した消毒剤注入量設定値と、これら各消毒剤注入量設定値の間にある1つ以上の消毒剤注入量設定値とを演算して、ポンプ場制御装置3の運転員に表示するようにしている。このため、処理水の残留消毒剤量を低減するのに適した消毒剤注入量設定値から処理水の大腸菌群を低減するのに適した消毒剤注入量設定値までの範囲内で、運転員は最適な消毒剤注入量設定値を選択でき、大腸菌群の数、残留塩素量などを最適化することができる。
【0024】
《第2の実施形態》
図3は本発明による下水処理システムの第2の実施形態を示すブロック図である。
【0025】
この図に示す下水処理システム21は、電話回線、専用回線などの通信回線24などを介して、各場所に配置されたレーダ雨量計22、地上雨量計23などから伝送されるデータを取り込み、降雨量予測、流入流量予測、流入水質予測、消毒剤注入量演算を行い、電話回線、専用回線などの通信回線25を介してポンプ場側に供給するサービスセンタ装置24と、現場側のプロセスデータを取り込んで表示するとともに、通信回線25を介して受信した各データを運転員に提示し、運転員の選択内容に応じた消毒剤注入量指示、放流量指示、送水量指示などを生成するポンプ場制御装置26と、下水、雨水などの処理水を取り込み、流入量や水位などを計測して、プロセスデータを生成し、ポンプ場制御装置26に供給しながら、ポンプ場制御装置26からの消毒剤注入量指示、放流量指示、送水量指示などに基づき、処理水の一部を下水管32に送水する処理、消毒剤を注入して河川34などに放流する処理などを行う下水処理設備27とを備えている。
【0026】
サービスセンタ装置24は、電話回線、専用回線などの通信回線24を介して、各場所に配置されたレーダ雨量計22、地上雨量計23などから伝送されるデータを取り込みながら、これら各データに対し、予め設定されている予測演算式、シミュレーション演算式などを適用して、降雨量予測値、流入流量予測値、流入水質予測値、複数個の消毒剤注入量設定値を生成し、電話回線、専用回線などの通信回線25を介して、ポンプ場制御装置26に送信する。
【0027】
この際、消毒処理された下水中の大腸菌群数が“b1”に規制され、残留塩素量が“a1”に規制されていれば、これら大腸菌群の基準値“b1”、残留塩素の基準値“a1”に各々、対応して、塩素注入量が“b2”、“a2”になる。そして、これら塩素注入量“b2”、“a2”が、例えば“b2>a2”となっているとき、大腸菌群数、残留塩素量のどちらを重視するかによって、適切な塩素注入量が異なることから、塩素注入量“b2”〜“a2”の間で、複数個の塩素注入量設定値を演算するとともに、これらの各塩素注入量設定値を選択したとき、大腸菌群数、残留塩素量が基準値からどれだけ離れるかを示す差分値、これらの各差分値が所定のしきい値を超えているかどうかを示す警告メッセージなどを作成し、ポンプ場制御装置26に表示する。
【0028】
ポンプ場制御装置26は、下水処理設備27から出力されるプロセスデータを取り込み、下水処理設備27に流入する処理水の流入量や水位などを表示するとともに、通信回線25を介して、サービスセンタ装置24から送信された降雨量予測値、流入流量予測値、流入水質予測値、複数個の消毒剤注入量設定値を取り込み、図4に示すように、トレンド形式で、これら降雨量予測値、流入流量予測値、流入水質予測値、複数個の消毒剤注入量設定値を表示して、運転員に認識しながら、運転員によって選択された1つの消毒剤注入量設定、運転員によって設定された放流量指示設定値、送水量指示設定値などに基づき、消毒剤注入量指示、放流量指示、送水量指示を出力して、下水処理設備27を制御する。
【0029】
下水処理設備27は、下水管28を介して、雨水ます29で集められた雨水、各家庭などから出される下水を取り込み、処理水として貯留しつつ、流入量や水位などを計測して、プロセスデータを出力するポンプ場30と、ポンプ場制御装置26からの送水量指示に基づき、ポンプ場30に貯留されている処理水を取り込み、下水管32に送水する送水ポンプ31と、ポンプ場制御装置26からの放流量指示に基づき、ポンプ場30に貯留されている処理水を取り込み、河川34に放流する放流ポンプ33と、消毒剤を貯留し、ポンプ場制御装置26からの消毒剤注入量指示に基づき、消毒剤を吐出して、河川34に放流される処理水を消毒する消毒装置35とを備えている。
【0030】
そして、下水、雨水などを取り込み、処理水として、ポンプ場30に貯留しつつ、ポンプ場30に流入する下水、雨水などの流入量、ポンプ場30の水位などを計測して、プロセスデータを生成し、これをポンプ場制御装置26に供給する。また、ポンプ場制御装置26からの送水量指示に基づき、送水ポンプ31を運転して、ポンプ場30に貯留されている処理水を取り込み、下水管32に送水する。また、ポンプ場制御装置26からの放流量指示、消毒剤注入量指示に基づき、放流ポンプ33を運転して、ポンプ場30に貯留されている処理水を取り込みながら、消毒装置35から指定された量だけ、消毒剤を吐出して処理水に注入し、消毒した後、河川34に放流する。
【0031】
このように、第2の実施形態では、サービスセンタ装置24によって、各場所に配置されたレーダ雨量計22、地上雨量計23などから伝送されるデータを使用して、降雨量予測演算、流入流量予測演算、流入水質予測演算、複数個の消毒剤注入量演算などを行わせるとともに、ポンプ場制御装置26の表示器上に、降雨量予測値、流入流量予測値、流入水質予測値、複数個の消毒剤注入量設定値を表示し、さらに運転員によって選択された消毒剤注入量設定、運転員によって設定された放流量指示設定値、送水量指示設定値などに基づき、ポンプ場制御装置26から消毒剤注入量指示、放流量指示、送水量指示を出力して、下水処理設備27を制御し、下水管32に送水するとともに、消毒処理などを行わせ、河川34に放流するようにしている。このため、各現場側に設けられるポンプ場制御装置を低価格化して、システム全体の設備コストを低く抑えることができ、さらに各地に配置されたレーダ雨量計22の計測結果、あるいは地上雨量計23の計測結果を用いて、降雨量予測値、流入流量予測値、流入水質予測値、複数個の消毒剤注入量設定値を演算し、これらを運転員に提示して、現場の状況を詳細に把握している運転員に最適な消毒剤注入量設定値を選択させることができる。これによって、下水管28の状況、周囲の地形、雨の降り方などに対応して、消毒剤の注入量をきめ細かに調整でき、大腸菌群の数、残留塩素量などを最適化することができる。
【0032】
また、第2の実施形態では、サービスセンタ装置24によって、処理水の大腸菌群を低減するのに適した消毒剤注入量設定値と、処理水の残留消毒剤量を低減するのに適した消毒剤注入量設定値と、これら各消毒剤注入量設定値の間にある1つ以上の消毒剤注入量設定値とを演算して、ポンプ場制御装置26の運転員に表示するようにしてるいる。このため、処理水の残留消毒剤量を低減するのに適した消毒剤注入量設定値から処理水の大腸菌群を低減するのに適した消毒剤注入量設定値までの範囲内で、運転員に最適な消毒剤注入量設定値を選択させて、大腸菌群の数、残留塩素量などを最適化することができる。
【0033】
また、第2の実施形態では、サービスセンタ装置24によって、各消毒剤注入量設定値で処理水に消毒剤を注入したとき、処理水中の残存大腸菌群数、残留消毒剤量を演算し、これらをポンプ場制御装置26に表示するようにしている。このため、運転員に最適な消毒剤注入量設定値を判断するとき、処理水中の残存大腸菌群数、残留消毒剤量を把握し易くして、大腸菌群の数、残留塩素量などを最適化することができる。
【0034】
また、第2の実施形態では、サービスセンタ装置24によって、各消毒剤注入量設定値で処理水に消毒剤を注入したときの残存大腸菌群数、残留消毒剤量を演算するとともに、予め設定されている基準残存大腸菌群数、基準残留消毒剤量との差分を各々、演算し、これらの各差分が予め設定されているしきい値を超えているとき、警告メッセージを生成して、ポンプ場制御装置26に表示するようにしている。このため、各消毒剤注入量設定値で処理水に消毒剤を注入したときの残存大腸菌群数、残留消毒剤量が警告範囲内になるとき、運転員に警告メッセージを知らせて、大腸菌群の数、残留塩素量などを最適化することができる。
【0035】
また、第2の実施形態では、サービスセンタ装置24によって、降雨量、流入流量、流入水質を予測し、これらの予測結果に基づき、ポンプ場制御装置26にトレンド形式で降雨量予測値、流入流量予測値、流入水質予測値、消毒剤注入量設定値を表示するようにしている。このため、数十分後〜数時間後における、ポンプ場30に流入する雨水量の変化などを運転員に把握させて、最適な消毒剤注入量設定値を選択させ、大腸菌群の数、残留塩素量などを最適化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明による下水処理システムの第1の実施形態を示すブロック図。
【図2】図1に示すサービスセンタ装置の消毒剤注入量設定値演算動作例を説明する模式図。
【図3】本発明による下水処理システムの第2の実施形態を示すブロック図。
【図4】図2に示すポンプ場制御装置のデータ表示例を示す模式図。
【符号の説明】
【0037】
1,21:下水処理システム
2,27:下水処理設備
3,26:ポンプ場制御装置
4:サービスセンタ装置
5,24,25:通信回線
6,10,28,32:下水管
7,29:雨水ます
8,30:ポンプ場
9,31:送水ポンプ
11,33:放流ポンプ
12,35:消毒装置
13,34:河川
22:レーダ雨量計
23:地上雨量計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水、雨水を取り込み、処理水として貯留しつつ、プロセスデータを生成するとともに、入力された制御データで指定された注入量の消毒剤を吐出して処理水に注入し、放流するポンプ場設備と、
通信回線を介して、ポンプ場設備で生成されたプロセスデータを取り込むとともに、このプロセスデータに基づき、複数個の消毒剤注入量設定値を演算するサービスセンタ装置と、
サービスセンタ装置で得られた複数個の消毒剤注入量設定値を表示し、運転員によって選択された消毒剤注入量設定値に基づき、制御データを生成して、ポンプ場設備を制御し、消毒剤の注入処理、放流処理を行わせるポンプ場制御装置と、
を備えたことを特徴とする下水処理システム。
【請求項2】
各場所に設けられたレーダ雨量計、あるいは地上雨量計で得られたデータに基づき、降雨量、流入流量、流入水質のうち、少なくともいずれかを予測演算して、複数個の消毒剤注入量設定値を演算するサービスセンタ装置と、
サービスセンタ装置で得られた複数個の消毒剤注入量設定値を表示し、運転員によって選択された消毒剤注入量設定値に基づき、制御データを生成するポンプ場制御装置と、
下水、雨水を取り込み、処理水として貯留しつつ、ポンプ場制御装置から出力される制御データに基づき、指定された注入量だけ、消毒剤を吐出して、処理水に注入し、放流するポンプ場設備と、
を備えたことを特徴とする下水処理システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の下水処理システムにおいて、
前記サービスセンタ装置は、処理水の大腸菌群を低減するのに適した消毒剤注入量設定値、処理水の残留消毒剤量を低減するのに適した消毒剤注入量設定値、これら消毒剤注入量設定値の間にある1つ以上の消毒剤注入量設定値を前記ポンプ場制御装置に供給する、
ことを特徴とする下水処理システム。
【請求項4】
請求項1または2に記載の下水処理システムにおいて、
前記サービスセンタ装置は、各消毒剤注入量設定値で処理水に消毒剤を注入したとき、処理水中の残存大腸菌群数、残留消毒剤量を演算して、前記ポンプ場制御装置に表示する、
ことを特徴とする下水処理システム。
【請求項5】
請求項1または2に記載の下水処理システムにおいて、
前記サービスセンタ装置は、各消毒剤注入量設定値で処理水に消毒剤を注入したとき、処理水中の残存大腸菌群数、残留消毒剤量を演算するとともに、予め設定されている基準残存大腸菌群数、基準残留消毒剤量との差分を各々、演算し、これらの各差分が予め設定されているしきい値を超えているとき、警告メッセージを生成して、前記ポンプ場制御装置に表示する、
ことを特徴とする下水処理システム。
【請求項6】
請求項1または2に記載の下水処理システムにおいて、
前記サービスセンタ装置は、降雨量、流入流量、流入水質を予測するとともに、複数個の消毒剤注入量設定値を演算し、前記ポンプ場制御装置にトレンド形式で降雨量予測値、流入流量予測値、流入水質予測値、消毒剤注入量設定値を表示する、
ことを特徴とする下水処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−90279(P2007−90279A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285249(P2005−285249)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)