説明

下肢筋力補強具

【課題】下肢における血液やリンパ液の流れを促進することにより、体全体の血行やリンパ液の流れを良好にして、疾病に対する免疫力を高める下肢筋力補強具を提供する。
【解決手段】下肢筋力補強具10は、左右一対の下肢挿嵌リング部11と、両下肢挿嵌リング部11を互いに連結する連結布部12と、腹部ベルト部14aと、下肢挿嵌リング部11を連結布部12の後側で連結する後側水平連結ベルト部13と、後側水平連結ベルト部13の左右中央から上方に延びて腹部ベルト部14aの後側中央に連結される後側上下連結ベルト部15と、後側水平連結ベルト部15の左右両側から前側に回されて腹部ベルト部14a中央部に連結される前後連結ベルト部16と、連結布部12と前後連結ベルト部16を上下に連結する一対の前上下連結ベルト部17と、下肢挿嵌リング部11と前後連結ベルト部16の間を連結する一対の側部上下連結ベルト部18とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下肢における血液やリンパ液の流れを促進することにより下肢のむくみを除き、筋力を補強する下肢筋力補強具に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会の到来の中で、老化による障害、特に脳血管障害等による寝たきり状態や痴呆状態の老人等に対する介護の増大が社会的にまた医療財政的に大きな問題となっている。これらの介護増大に対処するには、脳血管障害等による寝たきり等の要介護状態の老人等を自立可能な状態に回復させるためのリハビリテーション方法を発展させることに加えて、これら要介護状態を未然に防ぐための予防方法の充実及びその成人への徹底が極めて重要になってくる。このような要介護状態を未然に防ぐため、下肢の強化は非常に重要になってくる。本来、下肢の静脈血管には血液の逆流を防ぐための静脈弁が設けられており、筋肉ポンプ作用と相俟って、たえず血液が体の上方に向って流れるようになっている。しかし、運動不足や加齢等により下肢が弱ってくると、このような血液を体の上方に向けてスムーズに送り出す機能が衰えてくる。これを防いで下肢を強化することにより、体全体の血液やリンパ液の流れが促進され、それにより脳や体の疲労をとることができ、疾病に対する免疫力を高める効果が得られる。下肢の強化には、1日1万歩程度の散歩がよいとされているが、時間を要するため忙しい現代人にとってはクリアが困難になっている。また、下肢が弱ってしまうと、なかなか継続して長時間の散歩を行うことも困難になってくる。
【0003】
従来、例えば特許文献1に示すように、着衣時に四肢の基端部を強く締め付けることでその四肢における血流を阻害するようにされた輪状の血流阻害バンドが、四肢を覆う筒状部分の少なくとも1つの基端部に固定的に設けられている筋肉増強用の衣服が知られている。この衣服については、同文献の発明者による、筋肉において血流を阻害することにより筋肉に大きな疲労を与え、それにより筋肉の飛躍的な増強を図ろうとする考えに基づくものであり、四肢の少なくとも1つの基端部を締め付けて血流を阻害するもので,四肢を覆う筒状部のすべてに設ける必要は必ずしもないというものである。
【特許文献1】特開2000−27008号公報
【0004】
しかし、上記特許文献1によれば、四肢の少なくとも1つの基端部を強く締め付けて血流を阻害するものであり、スムーズな血流を促進することに反するものであり、実践的に見ても矛盾があり適当なものではない。場合によっては、装着者の体に悪影響を及ぼすおそれがあり問題である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を解決しようとするもので、短時間の歩行によっても、下肢における血液やリンパ液の流れを促進することにより、下肢のむくみを除いたり筋力を補強したりして、体全体の血行やリンパ液の流れを良好にすることができ、疾病に対する免疫力を高めることが可能な下肢筋力補強具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の構成上の特徴は、ゴム糸を織って形成された伸縮自在なゴムベルトと布部を繋ぎ合せて形成され、両下肢の太ももの付根部分と腹部との間に装着される下肢筋力補強具であって、両下肢の胴への付根部分に挿嵌される環状の左右一対の下肢挿嵌リング部と、一対の下肢挿嵌リング部をその周方向の1箇所で互いに連結する布製の連結布部と、腹部に巻き付けられて両端部分が前側で解除可能に連結されて環状にされる腹部ベルト部と、下肢挿嵌リング部を連結布部の後側で水平に連結する後側水平連結ベルト部と、後側水平連結ベルト部の左右中央から上方に延びて腹部ベルト部の後側中央に連結される後側上下連結ベルト部と、後側水平連結ベルト部の左右両側から延びて前側に回されて腹部ベルト部の前側中央部に着脱可能に連結される前後連結ベルト部と、連結布部の前側の左右2ヶ所と前後連結ベルト部の前側2ヶ所を上下に連結する一対の前上下連結ベルト部と、左右一対の下肢挿嵌リング部の両外側部と前後連結ベルト部の間を連結する一対の側部上下連結ベルト部とを設けたことにある。
【0007】
上記のように構成した本発明においては、まず、左右一対の下肢挿嵌リング部が両下肢に挿入され、両下肢の胴への付根部分に挿嵌されることにより、付根部が締め付けられる。つぎに、腹部ベルト部が、腹部に巻き付けられて前側で連結されることにより腹部に固定される。これにより、左右一対の下肢挿嵌リング部と腹部ベルト部とが、後側水平連結ベルト部と後側上下連結ベルト部によって連結されており、それぞれが伸縮自在なゴムベルトで構成されていることにより上下に互いに引っ張り合った状態にされる。つぎに、前後連結ベルト部が上方に引張られて上端側が腹部ベルト部の前側中央に固定される。この状態で、前後連結ベルト部と連結布部との間が前上下連結ベルト部によって連結されると共に、前後連結ベルト部と一対の下肢挿嵌リング部との間が側部上下連結ベルト部によって連結されており、それぞれが伸縮自在なゴムベルトで構成されていることにより上下に互いに引っ張り合った状態にされる。そのため、両下肢の太ももの上体への付根部分が、一対の下肢挿嵌リング部によってそれぞれ締め付けられると共に、付根部分内側のそけい部を中心として付根部分全体が腹部側に引張られた状態になる。
【0008】
このように本発明においては、太もも部分を中心として下肢全体の筋肉が上方に引張られた状態になるため、下肢全体の血流やリンパ液の流れが促されて、下肢から上体に向けて、足先からの血液やリンパ液が下肢に留まることなくスムーズに上体に戻されるので、下肢のむくみが防止される。また、下肢から血液とスムーズに上体に戻されることにより、体全体の血流やリンパ液の流れが促進され、それにより、疾病に対する免疫力が高められて脳血管障害等が防止される。特に、下肢筋力補強具を装着した状態で軽く散歩等を行うことにより、これらの効果が一層高められる。また、脳血管障害やそれに伴う後遺症により、体全体の血流やリンパ液の流れが損なわれている患者に対しても、下肢筋力補強具を装着した状態で軽く歩行を行うことにより、血流やリンパ液のスムーズな流れが回復することにより、症状を改善させる効果が得られる。
【0009】
また、本発明において、下肢挿嵌リング部及び腹部ベルト部の環の大きさが調節可能にされることが好ましい。これにより、下肢挿嵌リング部の下肢への締付け状態及び腹部ベルト部の腹部への締付け状態を、下肢や腹部の太さに合わせて適正かつ自由に調節することができる。
【0010】
また、本発明において、前後連結ベルト部への、前上下連結部ベルト部及び側部上下連結ベルト部の取り付け部分が、前後連結ベルト部に対して摺動可能にされてもよい。これにより、前上下連結部ベルト部及び側部上下連結ベルト部が、前後連結ベルト部に対して摺動することにより、下肢筋力補強具の下肢への装着がスムーズに行われる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、各部が伸縮自在なゴムベルトで構成された下肢筋力補強具を装着することにより、両下肢の太ももの上体への付根部分が、一対の下肢挿嵌リング部によってそれぞれ締め付けられると共に、付根部分内側のそけい部を中心として付根部分全体が腹部側に引張られた状態になるため、太もも部分を中心として下肢全体の筋肉が引張られた状態になり、下肢全体の血流やリンパ液の流れが促されて、下肢から上体に向けて、足先からの血液やリンパ液が下肢に留まることなくスムーズに上体に戻される。その結果、本発明においては、下肢のむくみが防止され、下肢から血液やリンパ液がスムーズに上体に戻されることにより、体全体の血流やリンパ液の流れが促進され、それにより、疾病に対する免疫力が高められて脳血管障害等が防止されると共に、脳血管障害やそれに伴う後遺症の症状を改善させる効果が得られ、特に下肢筋力補強具を装着して軽く歩行を行うことによりこれらの効果がさらに高められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施例について図面を用いて説明する。図1は、実施例である両下肢1の太ももの付根部分2と上体の腹部3との間に装着される、ゴム糸を織って形成された伸縮自在なゴムベルトを繋ぎ合せて形成された下肢筋力補強具10の展開状態を正面図により示したものであり、図2−1〜3は、下肢筋力補強具10の身体への装着状態を正面図、背面図及び側面図により示したものである。
【0013】
下肢筋力補強具10は、両下肢1の太もも2の上体への付根部分に挿嵌される左右一対の下肢挿嵌リング部11を設けており、一対の下肢挿嵌リング部11はその対向する内側部分が布製の略長方形の連結布部12で連結されている。一対の下肢挿嵌リング部11が連結布部12の後側で後側水平連結ベルト部13により水平に連結されている。下肢挿嵌リング部11は、中間にて前側部11aと後側部11bに分割されており、その間に設けた金属製のリング11cを通して前側部15aは固定されており、後側部11bはリング11cを通して前側に折り返されており、折り返し部先端が後側部11bに重ね合わされて面状ファスナ11dによって固定されている。これにより、下肢挿嵌リング部11の径が太ももの太さに合わせて調節可能なようになっている。
【0014】
また、下肢筋力補強具10は、腹部3に巻き付けられて両端部分が前側で解除可能に連結されてリング状にされる腹部ベルト部14を設けている。後側水平連結ベルト部13の左右中央と腹部ベルト部14の後側中央間が、後側上下連結ベルト部15により連結されている。後側上下連結ベルト部15は、上端側で上側部15aと下側部15bに分割されており、その間に設けた金属製のリング15cを通して上側部15aは固定されており、下側部15bはリング15cを通して後側に折り返されており、折り返し部先端が下側部15bに重ね合わされて面状ファスナ15dによって固定されている。これにより、後側上下連結ベルト部15の上下長さが体に合わせて調節可能なようになっている。
【0015】
後側水平連結ベルト部13の左右両側から延びて前側に回された前後連結ベルト16が、腹部ベルト部14の前側中央部に着脱可能に連結されるようになっている。前後連結ベルト部16は、後側水平連結ベルト部13の左右両側から延びた一対の左右側部16aを前側で一本に重ね合せて重ね合わせ部16bとなっている。重ね合せ部16bの先端側に面状ファスナ16cを設けており、重ね合せ部16bが面状ファスナ16cによって上記腹部ベルト部14の前側に固定されるようになっており、前側の上下長さを調節できるようになっている。前後連結ベルト部16は、左右側部16aの重ね合せ部16b近傍位置で、連結布部12の前側の左右2ヶ所に取りつけられた一対の前上下連結ベルト部17と摺動可能に連結されている。また、前後連結ベルト部16は、左右側部16a後側部分において、左右一対の下肢挿嵌リング部11の両外側部に固定された側部上下連結ベルト部18と摺動可能に連結されている。これにより、前後連結ベルト部16の上下の移動がスムーズにされる。
【0016】
上記下肢筋力補強具10の体への装着について、図1及び図2−1〜3により説明する。まず、左右一対の下肢挿嵌リング部11に両下肢1を挿入して、両下肢1の上体への付根部分に挿嵌して両太もも2を締め付け、つぎに腹部ベルト部14を腹部3に巻き付けて前側で面状ファスナ14aで連結して固定する。これにより、左右一対の下肢挿嵌リング部11と腹部ベルト部14とが、後側水平連結ベルト部13と後側上下連結ベルト部15によって連結されているため、それぞれが伸縮自在なゴムベルトで構成されていることにより上下に互いに引っ張り合った状態にされる。
【0017】
つぎに、前後連結ベルト部16が上方に引張られて上端側の面状ファスナ16cが腹部ベルト部14の前側中央部に取り付けられる。この状態で、前後連結ベルト部16と連結布部12との間が、前上下連結ベルト部17によって連結されると共に、前後連結ベルト部16と一対の下肢挿嵌リング部11との間が、側部上下連結ベルト部18によって連結されているため、それぞれが伸縮自在なゴムベルトで構成されていることにより上下に互いに引っ張り合った状態にされる。そのため、両下肢1の太もも2の上体への付根部分が、一対の下肢挿嵌リング部11によってそれぞれ締め付けられると共に、付根部分内側のそけい部を中心として付根部分全体が腹部側に引張られた状態になる。
【0018】
そのため、太もも2部分を中心として下肢1全体の筋肉が引張られた状態になるため、下肢1全体の血流やリンパ液の流れが促されて、下肢1から上体に向けて足先からの血液やリンパ液が下肢に留まることなくスムーズに上体に戻される。その結果、上記実施例においては、下肢のむくみが防止され、また、体全体の血流やリンパ液の流れが促進され、それにより、疾病に対する免疫力が高められて脳血管障害等が防止される。特に、下肢筋力補強具10を装着して軽く散歩等を行うことにより、これらの効果はさらに高められる。また、脳血管障害やそれに伴う後遺症により、体全体の血流やリンパ液の流れが損なわれている患者に対しても、下肢筋力補強具10を装着して軽く歩行を行うことにより、血流やリンパ液のスムーズな流れが回復できることにより、症状を改善させる効果が得られる。 なお、上記実施例において下肢筋力補強具については一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の下肢筋力補強具は、太もも部分を中心として下肢全体の筋肉が引張られた状態になり、下肢全体の血流やリンパ液の流れが促されて、下肢から上体に向けて、足先からの血液やリンパ液が下肢に留まることなくスムーズに上体に戻され、下肢のむくみが防止されると共に体全体の血流やリンパ液の流れが促進され、それにより、疾病に対する免疫力が高められて脳血管障害等が防止されるため、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例である下肢筋力補強具の展開状態を示す正面図である。
【図2−1】同下肢筋力補強具の装着状態を示す正面図である。
【図2−2】同下肢筋力補強具の装着状態を示す背面図である。
【図2−3】同下肢筋力補強具の装着状態を示す右側面図である。
【符号の説明】
【0021】
10…下肢筋力補強具、11…下肢挿嵌リング部、12…連結布部、13…後側水平連結ベルト部、14a…腹部ベルト部、15…後側上下連結ベルト部、16…前後連結ベルト部、17…前上下連結ベルト部、18…側部上下連結ベルト部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム糸を織って形成された伸縮自在なゴムベルトと布部を繋ぎ合せて形成され、両下肢の太ももの付根部分と腹部との間に装着される下肢筋力補強具であって、
両下肢の胴への付根部分に挿嵌される環状の左右一対の下肢挿嵌リング部と、該一対の下肢挿嵌リング部をその周方向の1箇所で互いに連結する布製の連結布部と、腹部に巻き付けられて両端部分が前側で解除可能に連結されて環状にされる腹部ベルト部と、前記下肢挿嵌リング部を前記連結布部の後側で水平に連結する後側水平連結ベルト部と、該後側水平連結ベルト部の左右中央から上方に延びて前記腹部ベルト部の後側中央に連結される後側上下連結ベルト部と、該後側水平連結ベルト部の左右両側から延びて前側に回されて前記腹部ベルト部の前側中央部に着脱可能に連結される前後連結ベルト部と、前記連結布部の前側の左右2ヶ所と前記前後連結ベルト部の前側2ヶ所を上下に連結する一対の前上下連結ベルト部と、前記左右一対の下肢挿嵌リング部の両外側部と前記前後連結ベルト部の間を連結する一対の側部上下連結ベルト部とを設けたことを特徴とする下肢筋力補強具。
【請求項2】
前記下肢挿嵌リング部及び前記腹部ベルト部の環の大きさが調節可能にされたことを特徴とする請求項1に記載の下肢筋力補強具。
【請求項3】
前記前後連結ベルト部への、前記前上下連結部ベルト部及び側部上下連結ベルト部の取り付け部分が、該前後連結ベルト部に対して摺動可能にされたことを特徴とする請求項1又は2に記載の下肢筋力補強具。


【図1】
image rotate

【図2−1】
image rotate

【図2−2】
image rotate

【図2−3】
image rotate


【公開番号】特開2006−342485(P2006−342485A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194576(P2006−194576)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【分割の表示】特願2005−56608(P2005−56608)の分割
【原出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(503015156)
【出願人】(505075972)
【Fターム(参考)】