説明

下肢部用衣料

【課題】 着用時に動きやすく、太股をすっきりさせて、脚もウォーキング姿も美しくすることができる、快適な下肢部用衣料を提供する。
【解決手段】 少なくとも大腿部から膝下部までを被覆する下肢部用衣料であって、本体部およびサポート部を含み、前記サポート部は、前記下肢部用衣料の少なくとも前面内側に設けられており、前記サポート部のうち、大腿部を覆う大腿部サポート部が、横方向に非伸縮性あるいは難伸縮性であり、前記サポート部のうち、膝下を覆う膝下サポート部が、外側から内側に向かって斜め上方向に非伸縮性あるいは難伸縮性であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下肢部用衣料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ウォーキングを行う人口が増加している。それとともに、ウォーキング時に、脚を美しく見せ、綺麗に歩きたいという要望が高まっており、たとえば、体型矯正用の膝上丈のパンツやガードルを着用して、体型をすっきり見せようとしたり、逆に、ゆとりのあるウエアを着用して、体型が表れないようにするといったことがなされている。例えば、体型矯正用のガードルとして、股部の内側から外側先部分までの太股の後側にパワーの強い生地を使用することで、太股の後部分を押えてすっきりさせるとともにヒップを持ち上げる機能を有するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、前記体型矯正用の衣類を着用すると、締め付けられることによって苦しくなったり、前記衣類着用部と非着用部との間に段差ができてしまうという問題がある。また、締め付けにより動きづらくなり、綺麗に歩けないという問題も生じる。また、締め付けることや、ゆとりのあるウエアを着用することで、かえって太く見えてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実登第3062222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、着用時に動きやすく、太股をすっきりさせて、脚もウォーキング姿も美しくすることができる、快適な下肢部用衣料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明の下肢部用衣料は、少なくとも大腿部から膝下部までを被覆する下肢部用衣料であって、
本体部およびサポート部を含み、
前記サポート部は、前記下肢部用衣料の少なくとも前面内側に設けられており、
前記サポート部のうち、大腿部を覆う大腿部サポート部が、横方向に非伸縮性あるいは難伸縮性であり、
前記サポート部のうち、膝下を覆う膝下サポート部が、外側から内側に向かって斜め上方向に非伸縮性あるいは難伸縮性である
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、着用時に動きやすいにもかかわらず、太股をすっきりさせて、脚もウォーキング姿も美しくすることができる、快適な下肢部用衣料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明の下肢部用衣料の一例であるレギンス(leggings)(実施形態1)を示す正面図および背面図である。図1(a)は正面図、図1(b)は背面図である。
【図2】図2は、実施形態1のレギンスを着用した状態で、下半身にかかる力の方向を説明する模式図である。
【図3】図3は、本発明における効果を説明する図である。図3(a)は、両膝が外に開いた状態の、正面および右側面から見た人体模式図であり、図3(b)は、脚全体を内側に回転させるような力がかかった状態の、正面および右側面から見た人体模式図である。
【図4】図4は、本発明の下肢部用衣料である実施形態1のレギンスを構成する布地の裁断パターンの一例を説明する図である。図4(a)は左半身を構成する各部分を結合した展開図、図4(b)はサポート部のパターン展開図、図4(c)は本体部前身頃のパターン展開図、図4(d)は本体部後身頃のパターン展開図である。
【図5】図5は、本発明の下肢部用衣料である実施形態2のレギンスを示す正面図および背面図である。図5(a)は正面図、図5(b)は背面図である。
【図6】図6は、本発明の下肢部用衣料である実施形態5の膝下丈のレギンスを示す正面図および背面図である。図6(a)は正面図、図6(b)は背面図である。
【図7】図7は、本発明の下肢部用衣料である実施形態6のサポーターを示す正面図および背面図である。図7(a)は正面図、図7(b)は背面図である。
【図8】図8は、着用評価において、着用者が立った状態での姿勢を右側面側から見た図である。(a)は実施形態1のレギンス着用時、(b)はヌード状態、(c)は従来品のレギンス着用時である。
【図9】図9は、着用評価において、着用者が立った状態での下半身を正面から見た図である。(a)は実施形態1のレギンス着用時、(b)はヌード状態、(c)は従来品のレギンス着用時である。
【図10】図10は、着用評価において、着用者が歩行時の前足着地時の状態を右側面側から見た図である。(a)は実施形態1のレギンス着用時、(b)はヌード状態、(c)は従来品のレギンス着用時である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の下肢部用衣料において、前記膝下サポート部における非伸縮あるいは難伸縮の方向が、上下方向に対して、20〜55°の範囲内の角度をなしていることが好ましい。
【0009】
本発明の下肢部用衣料において、前記大腿部サポート部が、大腿部前面の幅の略中心線から大腿部後面の幅の略中心線の範囲内にあり、
前記膝下サポート部が、膝下部前面の幅の略中心線から膝下部後面の幅の略中心線の範囲内にあることが好ましい。
【0010】
本発明の下肢部用衣料において、前記本体部と前記サポート部とが、固着されて形成されていることが好ましい。
【0011】
本発明の下肢部用衣料における、前記サポート部において、前記大腿部サポート部に対して、前記膝下サポート部が斜めに形成されていることが好ましい。
【0012】
本発明の下肢部用衣料が、部分的に伸縮性が異なる生地を含み、
前記部分的に伸縮性が異なる生地が、2種以上の繊維を含む編地において、前記2種以上の繊維のうちの少なくとも1種の繊維が部分的に除去されたものであり、
前記サポート部が、前記少なくとも1種の繊維が除去されていない部分を含むことが好ましい。
【0013】
本発明の下肢部用衣料について、例をあげて説明する。ただし、本発明は、以下の例に限定および制限されない。
【0014】
(実施形態1)
図1に、本発明の下肢部用衣料の実施形態1に係るレギンス(leggings)100を示す。図1(a)は、本実施形態の下肢部用衣料100(レギンス)の正面図、図1(b)は、背面図である。図中の二点鎖線は、膝の位置を示している。図示のように、本実施形態のレギンス100は、大腿部から膝下部までを被覆しており、さらに腰部まで被覆する股付きの下肢部用衣料である。本実施形態において、レギンス100は、本体部110と、サポート部120とが縫着され形成されている、「カットソータイプ」である。サポート部120は、着用時に前面内側となる部分に設けられている。前記サポート部のうち、大腿部を覆う大腿部サポート部120Aは、横方向(体側から内股に向かう方向)に非伸縮性あるいは難伸縮性である。そして、前記サポート部のうち、膝下を覆う膝下サポート部120Bは、外側から内側に向かって斜め上方向に非伸縮性あるいは難伸縮性である。
【0015】
図2は、実施形態1のレギンスを着用した状態で、下半身にかかる力の方向を説明する模式図である。大腿部の前面内側において横方向の伸びを抑え、膝下の前面内側において斜め方向の伸びを抑えたレギンス100を着用すると、伸びが抑えられている方向に着用部分が引き寄せられる。このレギンス100を着用した場合、脚部に対して内旋する方向に力がかかり(図中矢印RAおよびRB)、後傾していた骨盤が立ち上がることで、骨盤が安定する(図中矢印X)。そのため、上半身の体重が前に乗りやすくなる。また、前内腿部において横方向の伸びを抑えることで、太股の肉を押えて、脚部のシルエットをすっきりさせることができる。膝から下は、斜め方向に伸びが抑えられているので、膝前面では、膝に向かって外側下方から内側上方に向かって、斜め方向に力がかかる。また、膝背面では、外側上方から内側下方に向かって斜め方向に力がかかる。そのため、歩行時、脚を振り出すときに、膝が伸ばされる方向に力がかかることになる。その後、自力で膝を曲げて地面を蹴り出すが、次に脚を振り出すときに、膝を伸ばす力が補助される。そのため、膝が前に出やすくなり、また、膝裏を伸ばしやすくなり、ウォーキング時の姿勢を良くすることができる。
【0016】
ここで、図3を用いて、前記本発明の下肢部用衣料着用時の効果を説明する。図3(a)は、両膝が外に開いた状態の、正面および右側面から見た人体模式図であり、図3(b)は、脚全体を内側に回転させるような力がかかった状態の、正面および右側面から見た人体模式図である。膝が開いている状態(a)では、ガニ股になり、骨盤が後傾し易くなる。そのため、立位姿勢も、歩行姿勢も悪くなってしまう。一方、本発明の下肢部用衣料を着用し、脚全体を内側に回転させるような力をかけた状態(b)では、膝が内側に向きやすくなり、骨盤の位置も安定する。そのため、足圧中心Pに真直ぐ綺麗に立てるようになり、姿勢も美しくなる。このような状態では、歩行時にも、下半身で身体の土台をしっかり安定させた上に、上半身の体重が前に乗りやすくなるので、歩行姿勢も美しくなる。
【0017】
前記膝下サポート部120Bは、非伸縮あるいは難伸縮の方向が、着用時の上下方向(膝から踵に向かう方向)に対して、20〜55°の範囲内の角度をなしていることが好ましく、より好ましくは、30〜45°の範囲内である。前記角度範囲内であると、膝を内旋させようとする力と、膝を伸ばそうとする力とのバランスがよく、ぶれずにまっすぐに歩きやすくなる。
【0018】
サポート部120と本体部110とを縫着して、下肢部用衣料を構成する場合、サポート部120として編地を用い、前記膝下サポート部の裁断パターンを、前記編地の編方向に対して斜めに配置することができる。図4に実施形態1のレギンスを構成する布地の裁断パターンの一例を示す。図4(a)は左半身を構成する各部分を結合した展開図、図4(b)はサポート部120のパターン展開図、図4(c)は本体部前身頃110Aのパターン展開図、図4(d)は本体部後身頃110Bのパターン展開図である。図4(b)において、上下方向が編地の易伸縮方向を、左右方向が編地の非伸縮あるいは難伸縮方向を表わす。図4(b)に示すように、サポート部120は、膝下から外側に向かい、斜め方向に形成されている。そして、図4(a)に示すように、前記斜め方向に形成されている部分を縦向きにして、本体部と縫着する。このようにサポート部120を形成することで、下肢部用衣料において、非伸縮性あるいは難伸縮性の方向を、大腿部と膝下とで変えることができ、大腿部サポート部が、横方向に非伸縮性あるいは難伸縮性であり、前記膝下サポート部が、外側から内側に向かって斜め上方向に非伸縮性あるいは難伸縮性である下肢部用衣料を得ることができる。
【0019】
また、前記サポート部は、膝下サポート部での編方向が斜めになっている編地を使用することもできる。この場合、前記サポート部は、大腿部サポート部と膝下サポート部とで編方向を切り替えた編地によって形成してもよいし、大腿部サポート部と膝下サポート部とで、編方向の異なる生地を縫着することで形成してもよい。
【0020】
本実施形態のように、本体部110と、サポート部120とが縫着され形成されている、「カットソータイプ」の場合、腿から膝の縫製部分にダーツを設けて、さらに、膝上の肉を押えることもできる。ダーツを設けることにより、着用時のシルエットをより良好にすることができる。
【0021】
サポート部120は、大腿部サポート部120Aが、大腿部前面の幅の略中心線から大腿部後面の幅の略中心線の範囲内を取り囲んでいることが好ましく、より好ましくは、大腿部前面の幅の略中心線から内股線の範囲内である。ここで、内股線とは、脚部内側面の幅の略中央線を指す。また、サポート部120は、膝下サポート部120Bにおいて、膝下部前面の幅の略中心線から膝下部後面の幅の略中心線の範囲内を取り囲んでいることが好ましく、より好ましくは、膝下部前面の幅の略中心線から内股線の範囲内である。サポート部120の占める割合が多すぎると、締め付け感が強くなりすぎたり、歩行時に動きづらくなりやすい。例えば、膝を全て覆うと、膝が曲げにくくなってしまう。一方、サポート部120の占める割合が少なすぎると、脚部のシルエットをすっきりさせる効果や、脚部を内旋させる効果が得られにくくなる。
【0022】
サポート部120としては、一方向の伸度を抑え、他の方向は伸縮性が良い素材を用いることがより好ましい。例えば、ワンウェイパワーネット、ワンウェイトリコット等を用いることができる。本実施形態のように、サポート部120と本体部110とを縫製して、下肢部用衣料を構成すると、サポート部120に裏打ち等がなく形成できるので、下肢部用衣料をより軽くすることができる。本体布110としては、例えば、ツーウェイトリコット、ツーウェイラッセル、パワーネット等を用いることができる。
【0023】
(実施形態2)
図5に、本発明の下肢部用衣料の実施形態2に係るレギンス200を示す。図5(a)は、レギンス200の正面図、図5(b)は、背面図である。図示のように、本実施形態のレギンス200は、大腿部から膝下部までを被覆しており、さらに腰部まで被覆する股付きの下肢部用衣料である。
【0024】
レギンス200において、サポート部220は、ブロック状の非伸縮性あるいは難伸縮性部分を有している。前記ブロック状の部分以外の部分は、前記ブロック状の部分とは伸縮性が異なっている。前記ブロック状の非伸縮性あるいは難伸縮性部分は、2種以上の繊維を含む繊維からなっている。そして、前記ブロック状の部分以外の部分は、前記2種以上の繊維のうちの少なくとも1種の繊維が除去されている。前記構成とすることにより、部分的に伸縮性を変えて、繊維を除去した部分は除去しなかった部分に比べて易伸縮性とすることが可能となる。前記2種以上の繊維のうちの少なくとも1種の繊維を除去する方法としては、例えば、部分的に薬品加工を行うことにより、前記少なくとも1種の繊維を溶解や炭化によって部分的に除去する方法を用いることができるが、これに限定されない。
【0025】
サポート部220は、例えば、本実施形態においてブロック状の非伸縮性あるいは難伸縮性部分を有しているように、その内部においても、前記少なくとも1種の繊維を、例えば、線状や柄等の模様に除去することが好ましい。こうすることにより、サポート部において、前記模様の形状に応じた方向で伸びを持たせることができ、着用しやすく、膝を曲げる等の動作における動きやすさを向上させることができる。例えば、図5に示すように、サポート部220は、大腿部サポート部220Aにおいては、非伸縮性あるいは難伸縮性の組織を、前記横方向に間隔をあけてブロック状に配置して構成することができる。前記間隔部分は、本体部210と同一の組織とすることができる。また、膝下サポート部220Bにおいては、非伸縮性あるいは難伸縮性の組織を、前記斜め上方向に間隔をあけてブロック状に配置して構成することができる。前記間隔部分は、本体部210と同一の組織とすることができる。前記間隔を設けることで、前記間隔の幅方向には伸縮性を付与することができる。以上のように形成することで、大腿部サポート部220Aは、横方向(体側から内股に向かう方向)に非伸縮性あるいは難伸縮性とすることができ、膝下サポート部220Bは、外側から内側に向かって斜め上方向に非伸縮性あるいは難伸縮性とすることができる。
【0026】
本実施形態において、サポート部220は、本体部210内に形成されているので、各部材間を縫製する必要がない。本実施形態では、サポート部220と本体部210との間の縫製線がないため、着用感を向上させることができる。また、脱衣後に、肌に縫製線の跡が残るといったこともない点で好ましい。
【0027】
(実施形態3)
本発明の下肢部用衣料は、本体部で下肢部用衣料全体を構成し、さらに、非伸縮性あるいは難伸縮性の生地を、本体部に固着することによりサポート部を設けてもよい。非伸縮性あるいは難伸縮性の生地は、縫着や接着等の方法で固着することができる。前記非伸縮性あるいは難伸縮性の生地としては、例えば、マーキゼット、パワーネット等を好適に用いることができる。
【0028】
非伸縮性あるいは難伸縮性の生地を、本体部に固着することによりサポート部を設ける場合、下肢部用衣料における伸縮性の設計の自由度を広げることができる。
【0029】
(実施形態4)
本発明の下肢部用衣料は、本体部において、編組織を切り替えることによって、サポート部を形成することもできる。編組織の切り替えによってサポート部を形成する場合も、前述の実施形態と同様に、サポート部は、着用時に前面内側となる部分に設ける。前記サポート部のうち、大腿部を覆う大腿部サポート部220Aは、横方向(体側から内股に向かう方向)に非伸縮性あるいは難伸縮性である。そして、前記サポート部のうち、膝下を覆う膝下サポート部220Bは、外側から内側に向かって斜め上方向に非伸縮性あるいは難伸縮性である。
【0030】
実施形態4において、前記サポート部は、前記本体部内に形成されているので、各部材間を縫製する必要がない。本実施形態では、前記部材間の縫製線がないため、着用感を向上させることができる。また、脱衣後に、肌に縫製線の跡が残るといったこともない点で好ましい。
【0031】
編組織の切り替えによって前記サポート部を形成する場合、編組織の切り替えとしては、(I)丸編みの編組織の切り替え、または、(II)ジャカードラッシェル編みないしジャカードトリコット編みの地編組織の切り替えであることが好ましい。また、前記サポート部は、使用される弾性糸の太さまたは弾性糸の使用本数密度の変化の組み合わせによっても形成することができる。さらに、編組織の切り替えとともに、前記サポート部は、編組織の切り替えと使用される弾性糸の太さまたは弾性糸の使用本数密度の変化の組み合わせによっても形成することができる。
【0032】
編組織の切り替えに替えて、前記本体部のサポート部に対応する箇所に、弾力性を有する合成樹脂またはゴム等の溶液やエマルジョンを、含浸またはコーティングさせ、乾燥させて、部分的に伸縮性を変えるといった方法を用いることもできる。この方法は、上記実施形態において、併用することもできる。
【0033】
(実施形態5)
図6に、本発明の下肢部用衣料の実施形態5に係る膝下丈のレギンス500を示す。図6(a)は、レギンス500の正面図、図6(b)は、背面図である。図示のように、本実施形態5のレギンス500は、膝下丈である他は、前記実施形態1のレギンス100と同様の構成である。膝下の部分の長さは、少なくとも腓腹部(ふくらはぎ)の上部にかかる長さを有していることが好ましい。
【0034】
(実施形態6)
図7に、本発明の下肢部用衣料の実施形態6に係るサポーター600を示す。図7(a)は、サポーター600の正面図、図7(b)は、背面図である。本実施形態のサポーター600は、大腿部から膝下部までを被覆する、脚部が左右別々に分かれている筒状の下肢部用衣料である。サポーター600は、本体部610と、サポート部620とを含み、サポート部620は、着用時に前面内側となる部分に設ける。前記サポート部のうち、大腿部を覆う大腿部サポート部620Aは、横方向(体側から内股に向かう方向)に非伸縮性あるいは難伸縮性である。そして、前記サポート部のうち、膝下を覆う膝下サポート部620Bは、外側から内側に向かって斜め上方向に非伸縮性あるいは難伸縮性である。本実施形態6のように、膝の上下部分を含む構成であれば、股部を有することなく、本発明の効果を得ることができる。本実施形態6のサポーター600は、左右別々に分かれ、脚部のみからなる他は、前記実施形態1のレギンス100と同様の構成である。
【0035】
[着用評価]
実施形態1に示す本発明のレギンス100の着用評価結果を示す。図8は、同一モニター(着用者)が、(a)前記レギンス100を着用した状態、(b)ヌード状態、(c)従来品のレギンスを着用した状態で、着用者が立った状態での姿勢を右側面側から見た図である。モニターの背中側にある床面からの垂線Hは、ヒップの膨らみの頂点を通っている。(b)ヌード状態、(c)従来品のレギンスを着用した状態については、肩甲骨の位置が垂線Hに近くなっている。これに対し、(a)レギンス100を着用した状態では、肩甲骨の位置と垂線Hとの間の間隔が、他に比べて広くなっており、上半身が真直ぐに立ち上がっていることがわかる。
【0036】
図9は、図8と同様の状態で着用者が立った状態での下半身を正面から見た図である。(a)は実施形態1のレギンス100着用時、(b)はヌード状態、(c)は従来品のレギンス着用時である。レギンス100を着用した場合は、大腿部の間の間隔が広くなっていることから、内腿部分が細くなっていることがわかる。
【0037】
図10は、着用者が歩行時の前足着地時の状態を右側面側から見た図である。(a)は実施形態1のレギンス100着用時、(b)はヌード状態、(c)は従来品のレギンス着用時である。この図は、歩く位置とカメラの位置を固定し、一定時間経過後に撮影した写真の画像を模式図としたものである。各図において、線A、BおよびCは床面からの垂線であり、線Aは前に出ている脚の踝を通る線、線Bは後の足の踵を通る線、線Cは側面から見てウエストの幅の中心を通る線である。(b)および(c)の場合、線Cが線Aおよび線Bの中心付近に位置している。これに対し、(a)の場合、線Cが線Aおよび線Bの中心付近よりも前に位置しており、レギンス100を着用した場合は、前足着地時に、上半身が前側にしっかり乗っていることがわかる。なお、レギンス100を着用した場合は、他に比べて、踵を地面に着地した瞬間の膝裏の角度が広く、速く歩くことができていた。
【0038】
着用者に、着用感のコメントを求めたところ、レギンス100を着用した場合、他の場合に比べて、「脚が前に出やすい。」、「膝が内側に向く感じがする。」、「バネが入っている感じがする。」との回答が得られた。本発明の下肢部用衣料では、歩行時に、自力で膝を曲げて地面を蹴り出し、次に脚を振り出すときに、膝を伸ばす力が補助されるが、この作用が「バネが入っている」ように感じられていると考えられる。
【0039】
以上、実施の形態の具体例として、レギンスおよびサポーターをあげて本発明を説明したが、本発明の下肢部用衣料は、これらの具体例で記載されたもののみに限定されるものではなく、膝の上下部分を被覆するタイツ、スパッツ、トレンカ、パンティストッキング等の各種の下肢部用衣料に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の下肢部用衣料は、種々の態様が可能である。例えば、上記の実施形態のような衣類以外にも、ファンデーション衣類、スポーツ衣類、アウターなど、各種の下肢部用衣料に適用できる。
【符号の説明】
【0041】
100、200、500 下肢部用衣料(レギンス)
600 下肢部用衣料(サポーター)
110、210、610 本体部
110A 本体部前身頃
110B 本体部後身頃
120、220、620 サポート部
120A、220A、620A 大腿部サポート部
120B、220B、620B 膝下サポート部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも大腿部から膝下部までを被覆する下肢部用衣料であって、
本体部およびサポート部を含み、
前記サポート部は、前記下肢部用衣料の少なくとも前面内側に設けられており、
前記サポート部のうち、大腿部を覆う大腿部サポート部が、横方向に非伸縮性あるいは難伸縮性であり、
前記サポート部のうち、膝下を覆う膝下サポート部が、外側から内側に向かって斜め上方向に非伸縮性あるいは難伸縮性である
ことを特徴とする下肢部用衣料。
【請求項2】
前記膝下サポート部における非伸縮あるいは難伸縮の方向が、上下方向に対して、20〜55°の範囲内の角度をなしていることを特徴とする、請求項1記載の下肢部用衣料。
【請求項3】
前記大腿部サポート部が、大腿部前面の幅の略中心線から大腿部後面の幅の略中心線の範囲内にあり、
前記膝下サポート部が、膝下部前面の幅の略中心線から膝下部後面の幅の略中心線の範囲内にあることを特徴とする、請求項1または2記載の下肢部用衣料。
【請求項4】
前記本体部と前記サポート部とが、固着されて形成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の下肢部用衣料。
【請求項5】
前記サポート部において、前記大腿部サポート部に対して、前記膝下サポート部が斜めに形成されていることを特徴とする、請求項4記載の下肢部用衣料。
【請求項6】
前記下肢部用衣料が、部分的に伸縮性が異なる生地を含み、
前記部分的に伸縮性が異なる生地が、2種以上の繊維を含む編地において、前記2種以上の繊維のうちの少なくとも1種の繊維が部分的に除去されたものであり、
前記サポート部が、前記少なくとも1種の繊維が除去されていない部分を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の下肢部用衣料。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−207345(P2012−207345A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74552(P2011−74552)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(306033379)株式会社ワコール (116)
【Fターム(参考)】