説明

不凍液蓄熱冷房装置

【課題】電気料金が低価格且つ余剰である夜間電力を利用して夜間に冷熱を蓄熱し、昼間時にその冷熱の利用により室内冷房や車両での冷房が行えるようにし、従来の室内冷房用途の冷房装置の排熱による外気温の上昇や広域電力消費量の低減、そして自動車燃料を用いない車室内冷房などが行えるようにする。
【解決手段】一次熱交換部2と二次熱交換部3との間に冷媒循環手段4を介して冷媒を循環させる循環経路を備え、二次熱交換部3は空気との熱交換を行なって冷風を吹き出し可能に設けられた冷房装置で、冷媒を不凍液とし、一次熱交換部2は冷媒と熱交換可能な不凍液を収容した熱交換室7と熱交換室7に収容された不凍液を氷点下で不凍液凍結点以上に冷却する電気稼働の不凍液冷却手段11とから設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は不凍液を冷媒として用いて冷房を行なう不凍液蓄熱冷房装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から室内冷房などに用いられている冷房装置は、室外機と室内機とを冷媒循環経路中に配し、室外機側では冷媒を圧縮して強制送風によって屋外に放熱を行ない、室内機側では冷媒を気化させて取り込んだ室内空気との間で熱交換を行なって冷房をするようにしたものである。また、自動車などの車両に搭載の空調システムにあっても、その冷房動作では冷媒の気化時に空気側から気化熱を取り込み、その熱を受けた冷媒を圧縮して車外放熱させるるようにしているものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、室内冷房用途の冷房装置の稼働は一般家庭においても夏季の昼間に連続的であって電気料金を上昇させ、地域での電力消費量、特に首都圏での電力消費量も大きなものとなっていて、その電力消費量のピーク時にも電力の安定供給を行えるようにするための設備を要するという問題がある。また、前記室内冷房用途に用いる冷房装置ではその室外機から外界に放熱を行なっているため、外界の温度上昇を招き、ヒートアイランド現象の一因となっている。さらに、車両、特に乗用車においては昼間に短時間の屋外駐車でも車室内温度の上昇を抑える目的でエアコンディショナーを稼働させることがあり、石油資源上問題視されるようになってきている。
そこで本発明は上記事情に鑑み、電気料金が低価格且つ余剰である夜間電力を利用して夜間に冷熱を蓄熱し、昼間時にその冷熱の利用により室内冷房や車両での冷房が行えるようにすることを課題とし、従来の室内冷房用途の冷房装置の排熱による外気温の上昇や広域電力消費量の低減、そして自動車燃料を用いない車室内冷房などが行えるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記課題を考慮してなされたもので、一次熱交換部と二次熱交換部との間に冷媒循環手段を介して冷媒を循環させる循環経路を備え、前記二次熱交換部は空気との熱交換を行なって冷風を吹き出し可能に設けられた冷房装置であって、前記冷媒は不凍液であり、前記一次熱交換部は前記冷媒と熱交換可能な不凍液を収容した熱交換室と熱交換室に収容された前記不凍液を氷点下で不凍液凍結点以上に冷却する電気稼働の不凍液冷却手段とからなることを特徴とする不凍液蓄熱冷却装置を提供して、上記課題を解消するものである。
上記発明において、上記一次熱交換部の熱交換室には、二次熱交換部からの不凍液戻り口と二次熱交換部への不凍液送り口とに亘って熱交換室内に対して閉じている熱交換管路が設けられて、該熱交換管路を通る不凍液と熱交換室内の不凍液との間で熱交換が行われる構成とすることが可能である。
また、上記発明において、上記冷媒の不凍液の凍結点より熱交換室内の不凍液の凍結点が低いものとすることが可能である。
さらに、上記発明において、上記熱交換室における二次熱交換部からの不凍液戻り口と二次熱交換部への不凍液送り口とは熱交換室内に対して開放され、不凍液戻り口からの不凍液と熱交換室内の不凍液との混合により熱交換を行なう構成とすることが可能である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、一次熱交換部において電気稼働の不凍液冷却手段により熱交換室に収容した不凍液を冷却できることから、電気料金が低価格且つ余剰の夜間電力を利用して熱交換室の不凍液を冷却することができる。また、昼間時には一次熱交換部における前記熱交換室の不凍液の冷熱を利用して二次熱交換部で空気との熱交換を行なわせるようにするので、冷風となった空気が送り出されるようになる。そして、冷風を送り出すときには不凍液を循環させることで冷熱を利用できるようになり、不凍液冷却手段を稼働させる必要はなく、排熱も生じないようになる。さらに、不凍液を用いているので、水から氷のような状態変化による膨張を考慮する必要がなく、一次熱交換部を設置場所に応じた形状に対応させ易く、狭い場所への組み入れが容易になる。
【0006】
また、本発明において、二次熱交換部からの不凍液戻り口と二次熱交換部への不凍液送り口とに亘って熱交換室内に対して閉じている熱交換管路が設けられて、該熱交換管路を通る不凍液と熱交換室内の不凍液との間で熱交換が行われる構成とすることで、循環させる不凍液と熱交換室の不凍液とを用途別に特性の異なったものを選択できるようになる。例えば、循環移動させるのに適した特性を有する不凍液を選択でき、そして、熱交換室内で効率よく熱交換を行なわせるのに適した特性を有する不凍液を選択できる。
【0007】
また、本発明において、上記冷媒の不凍液の凍結点より熱交換室内の不凍液の凍結点を低いものとすれば、夜間時などにおいて不凍液冷却装置により多くの電力利用によって短時間に冷却を行なっても、熱交換室内での不凍液冷却手段側に位置する不凍液の凍結(凍結点下となることによる凍結)による冷却不良を生じさせず、よって熱交換室内の隅々の不凍液の温度を下げることができ、効率的に熱交換室内の不凍液の冷却が、冷媒の不凍液に対して適した状態までに短時間で行える。
【0008】
また、本発明において、上記熱交換室における二次熱交換部からの不凍液戻り口と二次熱交換部への不凍液送り口とは熱交換室内に対して開放され、不凍液戻り口からの不凍液と熱交換室内の不凍液との混合により熱交換を行なう構成とすることで、不凍液冷却手段の停止時における一次熱交換部での冷熱の量が大きく、時間当たりの循環量調節で二次熱交換部での温度変更に対応し易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
つぎに本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図中1は不凍液蓄熱冷房装置で、この不凍液蓄熱冷房装置1は一次熱交換部2と二次熱交換部3との間を往復のパイプで連結して冷媒を必用時に循環させることができるようにした循環経路を備えてなるものである。前記二次熱交換部3は例えば居室内に位置されていて、熱交換器30にファン31を近接配置させたものであり、ファン31の駆動による空気が熱交換器と触れることで熱交換を行なうようにしている。また、全体がユニットとして構成されているファンコイルユニットをこの二次熱交換部3とすることも可能である。
本不凍液蓄熱冷房装置1において、冷媒を必用時に循環させるために循環経路中に冷媒循環手段4が設けられていて、この冷媒循環手段4は、電気駆動の循環ポンプ5と流量制御装置6とからなるものである。
【0010】
上記一次熱交換部2は、図示されているように外部と断熱された熱交換室7の内部に、それぞれ上記パイプの端部である二次熱交換部3からの戻り口8と二次熱交換部への送り口9を位置させ、その戻り口8と送り口9とに蛇行管を渡して熱交換室の内部に対して閉じた熱交換器10を設けている。さらに熱交換室7の内部に収容物aを冷却させる電気稼働の不凍液冷却手段11が熱交換室7に一体となった状態で設けられているものである。
【0011】
そして本不凍液蓄熱冷房装置1において、上記循環経路を通る冷媒は不凍液である。また、一次熱交換部2の熱交換室7の内部の上記収容物aも不凍液である。そして、上記不凍液冷却手段11はこの熱交換室7に収容されている不凍液を冷却するものであり、電気料金が低価格且つ余剰である夜間電力を利用して熱交換室7の不凍液を冷却できる。前記不凍液冷却手段11は熱交換室7の不凍液に対して、例えば−35℃に冷却するように設定されているものであって、氷点下ではあるが熱交換室7の不凍液および循環する前記不凍液それぞれの凍結点より十分に高い温度に設定されている。
【0012】
本不凍液蓄熱冷却装置1では夜間時に上記不凍液冷却手段11にて熱交換室7に収容されている上記不凍液を冷却する。そして、本不凍液蓄熱冷房装置1にて室内環境などに対する冷房を行なう昼間時には不凍液冷却手段11による冷却は行なわず、上記冷媒循環手段4によって熱交換器10を通る不凍液と熱交換室7に収容されている不凍液との間で熱交換を行ない、そして、二次熱交換部3に達する不凍液と室内空気との間での熱交換によってその室内空気を冷却する。即ち、一次熱交換部2で得られた冷熱により二次熱交換部3で室内空気を冷やすようにする。
このように、昼間時に本不凍液蓄熱冷房装置1を使用しても上記不凍液冷却手段11を動作させずに室内冷房などが行えるため、冷媒としての不凍液を循環させる冷媒循環手段4と二次熱交換部3の送風機構を稼働させるだけの電力消費となり、使用電力が少なくなる。また、室内冷房時に排熱をしないため、従来の冷房装置における室外機での排熱問題が生じない。
さらには熱交換室7においては本装置の稼働時の不凍液に対する温度条件の下では、氷点下であって上述した−35℃のような非常に低い温度であっても、不凍液の凍結固体化による体積膨張を考慮する必要がなく、一次熱交換部2を設置する場所に応じた形状にして占有面積を小さくしたり、狭い場所への組み込みが行えるものである。
【0013】
また、本不凍液蓄熱冷房装置1では、二次熱交換部3と上記往復のパイプの熱交換室7への接続部分と熱交換室7の内部に温度センサ12が設けられており、これらから得られた温度情報に基づきながら熱交換室7の接続部分での循環不凍液の温度を一定に保つように上記流量制御装置6が循環ポンプ5の動作を制御する。
【0014】
上記実施の形態では、必要時に循環する不凍液と熱交換室7の内部に収容されている不凍液とは同じものであるが、循環する冷媒としての不凍液の凍結点より熱交換室7の内部の不凍液の凍結点を低くなるようにそれぞれの不凍液を選択してもよく、このようにした場合には、夜間時などにおいて不凍液冷却装置により多くの電力利用によって短時間に冷却を行なっても、熱交換室7内での不凍液冷却手段側に位置する不凍液の凍結による冷却不良を生じさせず、よって熱交換室7内の隅々の不凍液の温度を均等に下げることができ、効率的に熱交換室7の内部の不凍液の冷却が、冷媒の不凍液に対して適した状態までに短時間で行え、有利である。
【0015】
また、上記実施の形態では、戻り口8と送り口9との間に熱交換器10を配しているが、戻り口8と送り口9とを熱交換室7の内部に対して開放し、戻り口8からの不凍液と熱交換室7の内部の不凍液との混合により熱交換を行なう構成とすることも可能であり、このようにすれば、不凍液冷却手段の停止時における一次熱交換部での冷熱の量が十分に大きなものとなり、時間当たりの循環量調節で二次熱交換部3での温度変更を行なう上で有利である。
なお、上記実施の形態では室内冷房用途の場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、車両への搭載も可能であり、その場合には上記不凍液冷却手段の電源への接続を必要に応じて外すことができる構成とすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る不凍液蓄熱冷房装置の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0017】
1…不凍液蓄熱冷房装置
2…一次熱交換部
3…二次熱交換部
4…冷媒循環手段
5…循環ポンプ
6…流量制御装置
7…熱交換室
8…戻り口
9…送り口
10…熱交換器
11…不凍液冷却手段
12…温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次熱交換部と二次熱交換部との間に冷媒循環手段を介して冷媒を循環させる循環経路を備え、前記二次熱交換部は空気との熱交換を行なって冷風を吹き出し可能に設けられた冷房装置であって、
前記冷媒は不凍液であり、前記一次熱交換部は前記冷媒と熱交換可能な不凍液を収容した熱交換室と熱交換室に収容された前記不凍液を氷点下で不凍液凍結点以上に冷却する電気稼働の不凍液冷却手段とからなることを特徴とする不凍液蓄熱冷却装置。
【請求項2】
上記一次熱交換部の熱交換室には、二次熱交換部からの不凍液戻り口と二次熱交換部への不凍液送り口とに亘って熱交換室内に対して閉じている熱交換管路が設けられて、該熱交換管路を通る不凍液と熱交換室内の不凍液との間で熱交換が行われる構成とした請求項1に記載の不凍液蓄熱冷房装置。
【請求項3】
上記冷媒の不凍液の凍結点より熱交換室内の不凍液の凍結点が低い請求項2に記載の不凍液蓄熱冷房装置。
【請求項4】
上記熱交換室における二次熱交換部からの不凍液戻り口と二次熱交換部への不凍液送り口とは熱交換室内に対して開放され、不凍液戻り口からの不凍液と熱交換室内の不凍液との混合により熱交換を行なう構成とした請求項1に記載の不凍液蓄熱冷房装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−84131(P2006−84131A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−270033(P2004−270033)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(595131857)株式会社チャフローズコーポレーション (9)