説明

不純物を含有するベリリウムからベリリウム資源を分離回収する方法および装置、並びに回収された高純度金属ベリリウム

【課題】使用済の放射化されたベリリウムからハロゲン化ベリリウムを生成し、更に熱分解によって金属ベリリウムを回収するに際して、除染処理効果を向上させ、熱分解温度を1400℃以下、特に1000℃以下にすることができてベリリウムの回収効率を向上させ、純度の高い金属ベリリウムを回収する。
【解決手段】塩素ガス、臭素ガスあるいはヨウ素ガスとハロゲン化反応させて塩素化ベリリウム、臭素化ベリリウムあるいはヨウ素化ベリリウムのいずれかのハロゲン化ベリリウムを生成し、その際に不揮発性の不純物および放射性コバルトなどを分離し、更に生成したハロゲン化ベリリウムに化学的に活性な水素ガスを混合する工程、およびハロゲン化ベリリウムを水素ガス存在下で熱分解して金属ベリリウム、および塩化水素、臭化水素、あるいはヨウ化水素の分解ガスに変換する工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不純物を含有するベリリウムからベリリウム資源を分離回収する方法および装置、並びに回収された高純度金属ベリリウムに関する。
【背景技術】
【0002】
ベリリウムは、ウランの核分裂反応を利用する核分裂反応原子炉における中性子反射体、さらに未来のエネルギー源としての核融合炉における中性子増倍材として特異的で、貴重な役割を担う物質である。しかしながら、ベリリウム資源は希少であり、使用され放射化されたベリリウム(不純物含有金属ベリリウム)は資源の確保上からも再使用されねばならない。
【0003】
特許文献1には、放射化ベリリウムからハロゲンガスを用いてハロゲン化ベリリウムを生成させる第1工程と、ハロゲン化ベリリウムを金属ベリリウム(ベリリウム金属という場合がある。)に還元する第2工程からなる放射化ベリリウムのリサイクル方法が記載されている。この還元に際しては、SinH2n+2で表わされるシランガスが用いられている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−243798号(特許第3190005号公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
使用され、放射化されたベリリウムには、揮発性および不揮発性の不純物、揮発性の放射性トリチウム(三重水素,H)、放射性コバルト(60CO)などが混在する。使用され、放射化されたベリリウムの再使用のためにはこれらの不純物、放射性トリチウムおよび放射性コバルトなどは高い収率で分離除去され(除染処理)、高純度の金属ベリリウムとして回収することが求められる。
【0006】
従来、ベリリウムをハロゲン元素と反応させてハロゲン化ベリリウムを生成し、金属ベリリウムを分離回収及び除染処理するためには、1400〜1500℃程度の極めて高温状態で熱分解することが必要であった。このような高温状態でハロゲン化ベリリウムを処理するには、高温のハロゲン元素に対し高い耐食性を有する材料で構成される装置が必要であった。揮発性ハロゲン化ベリリウムを1500℃の高温で処理した結果、実際金属ベリリウムの回収率が低く、経済性の面でもコストが高くなるという課題があった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑み使用済の放射化されたベリリウムからハロゲン化ベリリウムを生成し、更に熱分解によって金属ベリリウムを回収するに際して、除染処理効果を向上させ、熱分解温度を1200℃以下、特に1000℃以下にすることができ、かつベリリウムの回収効率を向上させ、精度の高い金属ベリリウムを回収することのできる方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ハロゲン化ベリリウムの生成に先立って不純物含有ベリリウム金属を溶融、凝固工程によってベリリウム微小粒を形成して揮発性の不純物および揮発性の放射性トリチウムを除去し、ハロゲン化ベリリウムの生成に際して放射化コバルトを除去し、ハロゲン化ベリリウムを化学的に活性状を呈する水素ガスの存在下で、従来より低温の1200℃以下、望ましくは800〜1000℃の温度で熱分解し、高純度の金属ベリリウムを回収することを特徴とする。分離したハロゲンガスについては不純物含有ベリリウムの金属のハロゲン化に再使用する。
【0009】
なお、不純物含有金属ベリリウムを、溶融、凝固する一方法について本願出願人は先に特願2007−313966号として出願している。
【0010】
本発明は、揮発性および不揮発性の不純物、揮発性の放射性トリチウムおよび不揮発性の放射性コバルトが混在するベリリウムを高温溶融し、次いで凝固することで、多数の小さなサイズのベリリウム微小表面積を大にして反応性を高める粒を形成し、その際に揮発性の不純物および揮発性の放射性トリチウムを除去する第1工程と、
塩素ガス、臭素ガスあるいはヨウ素ガスとハロゲン化反応させて塩素化ベリリウム、臭素化ベリリウムおよびヨウ素化ベリリウムのいずれかのハロゲン化ベリリウムを生成し、その際に不揮発性の不純物および放射性コバルトを分離し、更に生成したハロゲン化ベリリウムに化学的に活性な水素ガスあるいは水素ガスを混合する第2工程と、
ハロゲン化ベリリウムを水素ガス存在下で熱分解して金属ベリリウム、および塩化水素、臭化水素、あるいはヨウ化水素の分解ガスに変換する第3工程と、および
金属ベリリウムおよび分解ガスを含む流動ガスから金属ベリリウムおよび分解ガスを分離する第4工程と、
を含んで構成されることを特徴とする不純物を含有するベリリウムからベリリウム資源を分離回収する方法を提供する。
【0011】
本発明は、また、第2工程は、高温にされ、放電励起によって生成した水素ガスを混合することを特徴とする不純物を含有するベリリウムからベリリウム資源を分離回収する方法を提供する。
【0012】
本発明は、また、第4工程は、前記分解ガスおよびハロゲン化トリチウムを分離する工程とを含んで構成されることを特徴とする不純物を含有するベリリウムからベリリウム資源を分離回収する方法を提供する。
【0013】
本発明は、また、第4工程は、前記分解ガスから塩素ガス、臭素ガスあるいはヨウ素ガスを分離して第2工程で再使用する工程とを含んで構成されることを特徴とする不純物を含有するベリリウムからベリリウム資源を分離回収する方法を提供する。
【0014】
本発明は、また、第2工程におけるハロゲン化反応を500〜650℃で行い、500℃以上の温度を保持しながら移送し、第3工程においては800〜1200℃の温度下で熱分解し、第4工程においては分解ガスが塩素の場合は−50〜−100℃,臭素の場合は0〜50℃,ヨウ素の場合は50〜100℃の温度で回収することを特徴とする不純物を含有するベリリウムからベリリウム資源を分離回収する方法を提供する。
【0015】
本発明は、また、第1工程においては、ベリリウムを1300℃以上の温度(望ましくは1300℃〜1600℃)で高温溶融することを特徴とする資源を分離回収する方法を提供する。
【0016】
本発明は、揮発性および不揮発性の不純物、揮発性の放射性トリチウムおよび不揮発性の放射性コバルトが混在するベリリウムを高温溶融する手段、それを凝固することで、多数の小さなサイズのベリリウム微小粒を形成する手段、その際に揮発性の不純物および揮発性の放射性トリチウムを除去する手段を備えた第一の装置と、
塩素ガス、臭素ガスあるいはヨウ素ガスとハロゲン化反応させて塩素化ベリリウム、臭素化ベリリウムおよびヨウ素化ベリリウムのいずれかのハロゲン化ベリリウムを生成する手段、その際に不揮発性の不純物および放射性コバルトを分離する手段、更に生成したハロゲン化ベリリウムに化学的に活性な水素ガスあるいは水素ガスを混合させた状態で移送する手段を備えた第二の装置と、
移送されたハロゲン化ベリリウムを水素ガス存在下で熱分解して金属ベリリウム、および塩化水素、臭化水素、あるいはヨウ化水素の分解ガスに変換する手段を備えた第三の装置と、および
ベリリウム金属および分解ガスを含む流動ガスから金属ベリリウムおよび分解ガスを分離する手段を備えた第四の装置と、
を含んで構成されることを特徴とする不純物を含有するベリリウムからベリリウム資源を分離回収する装置を提供する。
【0017】
本発明は、また、第四の装置は、前記分解ガスおよびハロゲン化トリチウムを分離する手段を備えて構成されることを特徴とする不純物を含有するベリリウムからベリリウム資源を分離回収する装置を提供する。
【0018】
本発明は、また、第四の装置は、前記分解ガスから塩素ガス、臭素ガスあるいはヨウ素ガスを分離する手段を備え、分離した塩素ガス、臭素ガスあるいはヨウ素ガスを第二の装置で再使用する手段を備えて構成されることを特徴とする不純物を含有するベリリウムからベリリウム資源を分離回収する装置を提供する。
【0019】
本発明は、また、前記いずれかの方法によって製造されて、不揮発性の不純物を10ppm以下、揮発性の放射性トリチウムを0.1Bq(ベクレル)/g以下、および放射性コバルトを1Bq(ベクレル)/g以下で含有することを特徴とする高純度金属ベリリウムを提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明にあっては、上述したように溶融を介して多数の小さなサイズのベリリウム微小粒を形成して不純物および放射性トリチウムを除去し、ハロゲンガスによってハロゲン化ベリリウムを生成し、その際に放射性コバルトなどを除去し、化学的に活性状を呈する水素ガスの存在下で熱分解して金属ベリリウムを回収しているので、熱分解を1200℃以下、望ましくは800〜1000℃の温度で行うことができて高純度の金属ベリリウムを回収し、しかも経済的に安価な方法とすることができる。このようにして再生した金属ベリリウムは高純度のものとすることができるので、再使用する金属ベリリウムとして確実に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0022】
図1は、本発明の実施例である不純物含有ベリリウムからベリリウム資源を分離回収する方法を示す工程図であり、図2は、この方法を実施するためのプロセス図である。
【0023】
図1において、不純物含有ベリリウムには、揮発性および不揮発性の不純物、揮発性の放射性トリチウムおよび不揮発性の放射性コバルトなどが混在する。不純物含有ベリリウム金属からベリリウム資源を分離回収する方法は、
揮発性および不揮発性の不純物、揮発性の放射性トリチウムおよび不揮発性の放射性コバルトなどが混在するベリリウムを高温溶融し、次いで凝固することで、多数の小さなサイズのベリリウム微小粒を形成し、その際に揮発性の不純物および揮発性の放射性トリチウムを除去する第1工程(ベリリウム微小粒形成、放射性トリチウム除去工程すなわち使用済Be溶融&トリチウム除去工程)
塩素ガス、臭素ガスあるいはヨウ素ガスとハロゲン化反応させて塩素化ベリリウム、臭素化ベリリウムおよびヨウ素化ベリリウムのいずれかのハロゲン化ベリリウムを生成し、その際に不揮発性の不純物および放射性コバルトを分離し、更に生成したハロゲン化ベリリウムに化学的に活性な水素ガスを混合する第2工程(ハロゲン化ベリリウム生成、放射性コバルト除去、水素ガス混合工程すなわちハロゲン化工程)
ハロゲン化ベリリウムを水素ガス存在下で熱分解して金属ベリリウム、および塩化水素、臭化水素、あるいはヨウ化水素の分解ガスに変換する第3工程(熱分解によるベリリウム金属および分解ガス生成工程すなわち金属ベリリウム形成工程)
金属ベリリウムおよび分解ガスを含む流動ガスから金属ベリリウムおよび分解ガスを分離する第4工程(金属ベリリウム、分解ガス、ハロゲン化トリチウム分離工程すなわち金属ベリリウム&残留ハロゲン元素回収工程)
を含んで構成される。
【0024】
第1工程における不純物含有ベリリウムである使用済ベリリウムの溶融処理によって揮発性トリチウムを含む揮発性不純物はトラップされ、溶融金属ベリリウムは滴下、凝固方法によって多数の微小ベリリウム、すなわちベリリウム微小粒(例えば、直径1mmの球状ベリリウム)とされる。本実施例で微小化のために滴下方法を採用しているが他の微小化方法を採用してもよい。微小化することによって表面積を増大させ、反応効率を高めることができ、後述するハロゲン化が容易になる。
【0025】
この工程では、使用済ベリリウムを不活性ガス中あるいは真空中で1300℃以上(望ましくは1300〜1600℃)に加熱し、溶融,凝固して小サイズとし、その際放出するトリチウムガスなど揮発性物質をアルゴンガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを流して除去、もしくは真空排気して除去し、ベリリウム微小粒と揮発性物質との分離を行う。
【0026】
第2工程では、ベリリウム微小粒と塩素ガス、臭素ガス、ヨウ素ガスのハロゲン元素と500℃以上(望ましくは500〜650℃)で反応させて揮発性のハロゲンベリリウムに変換(生成)する。
【0027】
ベリリウムのハロゲン化合物は以下のように、ハロゲンガスの反応によって生成する。
Be+Cl → BeCl
Be+Br → BeBr
Be+I → BeI
【0028】
ベリリウムのハロゲン化合物は次のような反応およびその他の反応によっても生成する。
BeO+Cl+C → BeCl+CO
BeO+Br+C → BeBr+CO
この際に、不揮発性の放射性コバルトなどを分離除去する。
【0029】
このようにして放射性コバルトなどが分離除去された塩素化ベリリウム、臭素化ベリリウムあるいはヨウ素化ベリリウムであるハロゲン化ベリリウムを生成する。これらのベリリウムは単独であっても混合されたものであってもよい。
【0030】
生成したハロゲン化ベリリウムに放電励起して化学的に活性な水素ガスを混合し、キャリーガスとしてアルゴンガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合し、ハロゲン化ベリリウムを500℃以上の温度に保ち移送する。
【0031】
第3工程では、揮発性のハロゲン化ベリリウムを1200℃以下、望ましくは800〜1000℃の高温部で活性のある水素ガスの働きで高温分解する。この分解によって、不揮発成分としての高純度金属ベリリウムを生成する。また、流動するガス中に残留するトリチウムを分解によって生成したハロゲン元素(塩素ガス,臭素ガス,ヨウ素ガス)と反応させて塩化トリチウム,臭化トリチウム,ヨウ化トリチウムであるハロゲン化トリチウムを生成する。残留するハロゲン元素(塩素ガス,臭素ガス,ヨウ素ガス)の一部は水素化して水素化物となる。
【0032】
この工程は、水素還元法であり、BeCl,BeBr,BeIを活性な水素H(radical)で還元し、Cl,Br,IをHCl、HBr及びHIとして除去可能とするものである。
BeCl+2H(radical)→Be+2HCl
BeBr+2H(radical)→Be+2HBr
BeI+2H(radical) →Be+2HI
例えば、ヨウ素ガス挿入法での脱ハロゲン反応
BeI+H→Be+2HI
は、1000〜1200℃程度の高温が必要であると推測されるが、ヒーター表面積を増大するなどすればこれより低温の800℃程度であっても高い金属ベリリウムの回収効率が望めることが分かった。
【0033】
第4工程では、第3工程で生成した金属ベリリウムおよび分解ガスを含む流動ガスから金属ベリリウムを分離回収し、再資源化を図る、この際に、ガス状態で塩素または塩化水素ガス、臭素または臭化水素ガス、あるいはヨウ素またはヨウ化水素ガス、並びにガス状の塩素化トリチウムあるいは臭素化トリチウムまたはヨウ素化トリチウム(あるいはこれらの混合物)のハロゲン化トリチウムをトラップして同時に分離する。
【0034】
臭素またはヨウ素の場合には、100℃以下で冷却回収し、ガス状のハロゲン化トリチウムと分離し、第2工程におけるハロゲン化剤として再利用する。
【0035】
上述の工程とすることによって、生成したハロゲン化ベリリウムを1000℃以下の温度で熱分解し、不純物、放射性トリチウム、放射性コバルトなどをほとんど含まない高純度金属ベリリウムとして再生することができる。
【0036】
このようにして再生された高純度金属ベリリウムは、不揮発性の不純物が10ppm以下、揮発性の放射性トリチウムが0.1Bg以下、および放射性コバルトが1Bg以下とされる。
【0037】
図2は、使用済の放射性ベリリウムから高純度ベリリウムを回収するプロセスを備えた装置100を示す。
【0038】
このプロセスを備えた装置、すなわち不純物を含有するベリリウムからベリリウム資源を回収する装置100は、
揮発性および不揮発性の不純物、揮発性の放射性トリチウムおよび不揮発性の放射性コバルトなどが混在するベリリウムを高温溶融する手段、それを凝固することで、多数の小さなサイズのベリリウム微小粒を形成する手段、その際に揮発性の不純物および揮発性の放射性トリチウムを除去する手段を備えた第一の装置と、
塩素ガス、臭素ガスあるいはヨウ素ガスとハロゲン化反応させて塩素化ベリリウム、臭素化ベリリウムおよびヨウ素化ベリリウムのいずれかのハロゲン化ベリリウムを生成する手段、その際に不揮発性の不純物および放射性コバルトを分離する手段、更に生成したハロゲン化ベリリウムに化学的に活性な水素ガスを混合させた状態で移送する手段を備えた第二の装置と、
移送されたハロゲン化ベリリウムを水素ガス存在下で熱分解して金属ベリリウム、および塩化水素、臭化水素、あるいはヨウ化水素の分解ガスに変換する手段を備えた第三の装置と、および
ベリリウム金属および分解ガスを含む流動ガスから金属ベリリウムおよび分解ガスを分離する手段を備えた第四の装置と、
を含んで構成される。
【0039】
図1において、使用済Be溶融およびトリチウム除去工程を形成する第一の装置は、一体化された使用済ベリリウム(Be)投入ホッパー1,その下方に設けた溶融炉2を備え、この間には導入部3、投入制御部4,5および滴下流出制御部6が設けられ、各部へのArガス投入部7が接続され、溶融炉2の上部にはトリチウムトラップ部8が接続されて構成される。これらの装置によってベリリウムの高温溶融手段、ベリリウム微小粒形成手段および放射性トリチウム除去手段が構成される。
【0040】
ハロゲン化工程を形成する第二の装置は、ハロゲン化ベリリウム生成部11を備え、このハロゲン化ベリリウムの生成部11には、塩素ガス,臭素ガスあるいはヨウ素ガスをアルゴンガスと共に導入するハロゲンガス導入部12、放射性コバルト廃棄物導出部13および生成したハロゲン化ベリリウムを含む流動ガス導出する配管14が接続され、流動ガス導出配管14が接続されて回収した塩素化ベリリウム(BeCl)、臭化ベリリウム(BeBr)またはヨウ素化ベリリウム(BeI)が導入されるハロゲン化ベリリウム保留部15を備え、塩素化ベリリウム、臭化ベリリウム、またはヨウ素化ベリリウムを導出する配管16に接続した水素ラジカル発生装置17を備えて構成される。水素ラジカル発生装置17によって放電励起され、化学的に活性な水素ガスが生成され、生成された水素ガスは高温状態が維持されたハロゲン化ベリリウムを混合される。活性水素ガスに代えて水素ガスを使用することができるが、活性上から活性水素ガスが望ましい。
【0041】
水素ラジカル発生装置17は、沿面放電、アーク放電、コロナ放電などの放電場に通気し励起する機能を付設することによって構成され得る。
【0042】
このようにして、ハロゲン化ベリリウム生成手段、放射性コバルト分離手段および水素ガス混合手段が形成される。
【0043】
金属ベリリウム(Be)形成工程を形成する第三の装置は、SiCヒーター等の高温ヒーター21(以下、SiCヒーターで説明する。)から構成される。SiCヒーター21は、化学的に活性な水素ガスの存在下、ハロゲン化ベリリウムを1200℃以下、望ましくは800〜1000℃の高温で分解し、金属ベリリウムを生成し、同時に塩化水素、臭化水素あるいはヨウ化水素の分解ガスに変換する。このようにして、金属ベリリウムおよび分解ガスに変換する手段が形成される。
【0044】
回収工程を形成する第四の装置は、SiCヒーター21の下端に一体化された金属ベリリウム(Be)回収部31、SiCヒーター21の下方部に配管32によって接続された塩化ベリリウム,臭化ベリリウム,あるいはヨウ化ベリリウムのハロゲン化ベリリウム回収部33、このベリリウム回収部33の上方部と配管34を介して接続されたフィルタ35およびアルゴンガス投入部36を有して構成される。
【0045】
アルゴンガス投入部36からは配管37を介してアルゴンガスがベリリウム回収部23およびフィルタ35に導入される。ベリリウム回収部33からは配管38を介して回収されたBeCl,BeBr,あるいはBeIがハロゲン化ベリリウム保留部15に戻される。フィルタ35を分離され、アルゴンガスによって剥離されたBeCl,BeBr,あるいはBeIも配管39を介してハロゲン化ベリリウム保留部15に戻される。
【0046】
第四の装置は、更に残留ハロゲン元素回収工程および排ガス処理工程を行う処理装置を備える。残留ハロゲン元素回収工程は、残留ハロゲン元素回収部41から構成される。残留ハロゲン元素回収部41は、配管42を介してフィルタ35に接続される。ガス状で分離した塩素または塩化水素、あるいは臭素または臭化水素、あるいはヨウ素またはヨウ化水素、および塩化トリチウムあるいは臭化トリチウムあるいはヨウ化トリチウムをハロゲン化ベリリウム回収部33およびフィルタ35から分離して配管42を介して残留ハロゲン回収部41に導入する。塩素の場合は−50〜−100℃、臭素の場合は0〜50℃、ヨウ素の場合は50〜100℃の温度で冷却回収され、再利用される。
【0047】
残りのガスは配管43を介して排ガス処理工程を形成するトリチウムトラップ44に導入され、ここで常温で塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素とが分離され、配管45を介してトリチウム廃棄物46として回収される。このようにして、金属ベリリウム分解ガスおよびハロゲン化トリチウムを分離する手段が形成される。
【0048】
以上のように、本実施例によれば、第1工程から第4工程を一連のプロセスとして持つことによって、使用済で放射性ベリリウム(すなわちベリリウム塊)を用いて、ハロゲン元素によりハロゲン化物にし、化学的に活性な水素ガスの存在下の高温状態(1200℃以下、望ましくは800〜1000℃)で当該ベリリウムに蓄積されていた放射性トリチウム及び放射性コバルトなどが分離除去された後に、熱分解しているので、従来のように1400〜1500℃以上での高温状態との熱分解処理でハロゲン化ベリリウムを熱分解することを要せず、従って1400〜1500℃のような高温に耐え得る耐食性材料で装置を構成することを要せず、金属ベリリウムの回収率を向上させ、高純度の金属ベリリウムの再利用を可能とし、しかも安価に高純度金属ベリリウムを得ることのできる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明実施例の構成を工程で示す図。
【図2】本発明実施例の構成をプロセスで示す図。
【符号の説明】
【0050】
1…使用済Be投入ホッパー、2…溶融炉、11…ハロゲン化ベリリウム生成部、12…ハロゲンガス導入部、13…放射性コバルト廃棄物導出部、15…ハロゲン化ベリリウム保留部、17…水素ラジカル発生装置、21…SiCヒーター等の高温ヒーター、31…金属ベリリウム(Be)回収部、33…ハロゲン化ベリリウム回収部、35…フィルタ、41…残留ハロゲン元素回収部、44…トリチウムトラップ、46…トリチウム廃棄物、100…使用済の放射性ベリリウムから高純度ベリリウムを回収するプロセスを備えた装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性および不揮発性の不純物、揮発性の放射性トリチウムおよび不揮発性の放射性コバルトなどが混在するベリリウムを高温溶融し、次いで凝固することで、多数の小さなサイズのベリリウム微小表面積を大にして反応性を高める粒を形成し、その際に揮発性の不純物および揮発性の放射性トリチウムを除去する第1工程と、
塩素ガス、臭素ガスあるいはヨウ素ガスとハロゲン化反応させて塩素化ベリリウム、臭素化ベリリウムあるいはヨウ素化ベリリウムのいずれかのハロゲン化ベリリウムを生成し、その際に不揮発性の不純物および放射性コバルトを分離し、更に生成したハロゲン化ベリリウムに化学的に活性な水素ガスあるいは水素ガスを混合する第2工程と、
ハロゲン化ベリリウムを水素ガス存在下で熱分解して金属ベリリウム、および塩化水素、臭化水素、あるいはヨウ化水素の分解ガスに変換する第3工程と、および
金属ベリリウムおよび分解ガスを含む流動ガスから金属ベリリウムおよび分解ガスを分離する第4工程と、
を含んで構成されることを特徴とする不純物を含有するベリリウムからベリリウム資源を分離回収する方法。
【請求項2】
請求項1において、第2工程は、高温にされ、放電励起によって生成した水素ガスを混合することを特徴とする不純物を含有するベリリウムからベリリウム資源を分離回収する方法。
【請求項3】
請求項1または2において、第4工程は、前記分解ガスおよびハロゲン化トリチウムを分離する工程とを含んで構成されることを特徴とする不純物を含有するベリリウムからベリリウム資源を分離回収する方法。
【請求項4】
請求項1または3において、第4工程は、前記分解ガスから塩素ガス、臭素ガスあるいはヨウ素ガスを分離して第2工程で再使用する工程とを含んで構成されることを特徴とする不純物を含有するベリリウムからベリリウム資源を分離回収する方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかにおいて、第2工程におけるハロゲン化反応を500〜650℃で行い、500℃以上の温度を保持しながら移送し、第3工程においては800〜1200℃の温度下で熱分解し、第4工程においては分解ガスが塩素の場合は−50〜−100℃,臭素の場合は0〜50℃,ヨウ素の場合は50〜100℃の温度で回収することを特徴とする不純物を含有するベリリウムからベリリウム資源を分離回収する方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかにおいて、第1工程においては、ベリリウムを1300〜1600℃で高温溶融することを特徴とする資源を分離回収する方法。
【請求項7】
揮発性および不揮発性の不純物、揮発性の放射性トリチウムおよび不揮発性の放射性コバルトなどが混在するベリリウムを高温溶融する手段、それを凝固することで、多数の小さなサイズのベリリウム微小粒を形成する手段、その際に揮発性の不純物および揮発性の放射性トリチウムを除去する手段を備えた第一の装置と、
塩素ガス、臭素ガスあるいはヨウ素ガスとハロゲン化反応させて塩素化ベリリウム、臭素化ベリリウムあるいはヨウ素化ベリリウムのいずれかのハロゲン化ベリリウムを生成する手段、その際に不揮発性の不純物および放射性コバルトを分離する手段、更に生成したハロゲン化ベリリウムに化学的に活性な水素ガスあるいは水素ガスを混合させた状態で移送する手段を備えた第二の装置と、
移送されたハロゲン化ベリリウムを水素ガス存在下で熱分解して金属ベリリウム、および塩化水素、臭化水素、あるいはヨウ化水素の分解ガスに変換する手段を備えた第三の装置と、および
ベリリウム金属および分解ガスを含む流動ガスから金属ベリリウムおよび分解ガスを分離する手段を備えた第四の装置と、
を含んで構成されることを特徴とする不純物を含有するベリリウムからベリリウム資源を分離回収する装置。
【請求項8】
請求項7において、第四の装置は、前記分解ガスおよびハロゲン化トリチウムを分離する手段を備えて構成されることを特徴とする不純物を含有するベリリウムからベリリウム資源を分離回収する装置。
【請求項9】
請求項7または8において、第四の装置は、前記分解ガスから塩素ガス、臭素ガスあるいはヨウ素ガスを分離する手段を備え、分離した塩素ガス、臭素ガスあるいはヨウ素ガスを第二の装置で再使用する手段を備えて構成されることを特徴とする不純物を含有するベリリウムからベリリウム資源を分離回収する装置。
【請求項10】
請求項1から5のいずれかの方法によって製造されて、不揮発性の不純物を10ppm以下、揮発性の放射性トリチウムを0.1Bq(ベクレル)/g以下、および放射性コバルトを1Bq(ベクレル)/g以下で含有することを特徴とする高純度金属ベリリウム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−222494(P2009−222494A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65838(P2008−65838)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)
【出願人】(000140627)株式会社化研 (27)