説明

不織布、及び該不織布を用いた化粧料塗布具

【課題】手を汚すことなく、肌触り良く、液状のメーキャップ化粧料を肌に均一に塗布する不織布、及び該不織布を用いた化粧料塗布具を提供する。
【解決手段】液状のメーキャップ化粧料を含浸する不織布と液状のメーキャップを含浸しない支持体の組み合わせからなる化粧料塗布具であって、不織布は、繊維繊度が0.01〜2.00dtexであり、メルトブローン製法又はスパンレース製法で作製され、支持体は、不織布を着脱自在に取り付け、取手部と、塗布部とを有し、塗布部は、所定の湾曲形状により形成されていることにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布、及び該不織布を用いた化粧料塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、例えばリキッドファンデーション等の液状のメーキャップ化粧料を顔に塗布する方法として、例えば手や指を用いたり、スポンジやブラシ等の化粧料塗布具を用いたりしながら、顔に塗布していく塗布方法が知られている。この化粧料塗布具として、従来では、ゲル素材の表面に低硬度ゴム又は樹脂又は不透性不織布等の薄層を形成したリキッドファンデーション用パフが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、化粧水や乳液等の化粧料を塗布する化粧料塗布具として、コットンパフ等の不織布を取り付けてパッティングするためのコットンパフスティック等が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−253927号公報
【特許文献2】特開2005−160524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に示すリキッドファンデーション用パフは、ゲル素材の表面に形成する不織布が不透性であるため、リキッドファンデーションを肌に均一に塗布してきれいに仕上げるには不向きであった。更に、このリキッドファンデーション用パフは、使い捨てができないため、何度も使用する場合には不衛生であった。
【0006】
また、特許文献2に示す化粧料塗布具は、主に化粧水や乳液等を顔にパッティングするときに使用するものであり、リキッドファンデーションを肌に均一に塗布するには不向きであった。
【0007】
なお、通常用いられるリキッドファンデーション用のスポンジは、その表面の凹凸にリキッドファンデーションが染み込みすぎるため、肌に塗布したときにむら状になってしまう。また、リキッドファンデーション用のブラシは、肌に筋むらができやすく、肌に均一に塗布してきれいに仕上げるためのテクニックを要する。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、液状のメーキャップ化粧料を塗布する場合に、手を汚すことなく、肌触り良く、液状のメーキャップ化粧料を肌に均一に塗布する不織布、及び該不織布を用いた化粧料塗布具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、液状のメーキャップ化粧料を肌に塗布する際に用いられる含浸性のある不織布であって、繊維繊度が0.01〜2.00dtexであり、メルトブローン製法又はスパンレース製法で作製されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上述した不織布と、前記不織布を着脱自在に取り付け可能な支持体とからなる化粧料塗布具であって、前記支持体は、取手部と、塗布部とを有し、前記塗布部は、所定の湾曲形状に形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明において、前記支持体は、前記液状のメーキャップ化粧料が含浸しないことを特徴とする。また、本発明において、前記不織布は、予め設定された所定の領域に前記液状のメーキャップ化粧料が染み込まれていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明において、前記液状のメーキャップ化粧料は、リキッドファンデーションを含むことを特徴とする。また、本発明において、前記支持体は、前記塗布部の所定位置に前記不織布を固定するための固定部を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明において、前記不織布に粘着部を設けた化粧料塗布用シートを前記塗布部の所定位置に貼り付け、前記粘着部は、前記液状のメーキャップ化粧料を含浸しないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、液状のメーキャップ化粧料を塗布する場合に、手を汚すことなく、肌触り良く、液状のメーキャップ化粧料を肌に均一に塗布することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態における化粧料塗布具の一例を示す図である。
【図2】使用評価テストに用いた不織布の種類を説明するための図である。
【図3】図2に示す不織布を用いた場合の使用評価テストの結果を示す図である。
【図4】第1実施形態における支持体全体の概要の一例を示す図である。
【図5】支持体の具体的な形状を説明するための図である。
【図6】第2実施形態における化粧料塗布具の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<本発明について>
本発明は、例えば液状のメーキャップ化粧料を肌に塗布するための化粧料塗布具であり、液状のメーキャップ化粧料を含浸する不織布と液状のメーキャップ化粧料を含浸しない素材からなる支持体の組み合わせからなる。なお、不織布については、例えば、繊維繊度が0.01〜2.00dtexであり、メルトブローン製法又はスパンレース製法で作製された不織布を用いることが好ましい。
【0017】
支持体は、不織布を着脱自在に取り付け可能とし、取手部と、塗布部とを有し、塗布部は、顔に液状のメーキャップ化粧料を塗布しやすいように、所定の湾曲形状に形成されていることが好ましい。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、液状のメーキャップ化粧料には、液状ファンデーション(リキッド、クリームを含む)、液状化粧下地、その他液状のチーク等を含むが、一例として、リキッドファンデーションを用いて、ユーザの肌(顔)に塗布する例について説明する。
【0019】
<第1実施形態:化粧料塗布具>
図1は、第1実施形態における化粧料塗布具の一例を示す図である。図1(A)〜図1(C)に示すように、化粧料塗布具100は、不織布1と支持体2とを有している。
【0020】
図1(A)に示すように、不織布1は、例えば柔らかいシート状からなり、リキッドファンデーションを染み込ませた染み込み領域11と、例えば染み込み領域11の両側にある非染み込み領域12とからなる。
【0021】
なお、不織布1は、染み込み領域11の片側のみに非染み込み領域12を有していても良く、また全面にリキッドファンデーションを染み込ませたものであっても良い。また、不織布1には、予めリキッドファンデーションを染み込ませておいても良く、またケース等から不織布1を取り出した後にリキッドファンデーションを染み込ませても良い。なお、不織布1の材質等の詳細については後述する。
【0022】
図1(B)に示すように、支持体2は、ユーザがリキッドファンデーションを塗布する際に、支持体2を持つための取手部21と、ユーザの肌に不織布1を押し当ててリキッドファンデーションをパッティング、又は滑らせながら塗布することを可能にする塗布部22とを有している。
【0023】
塗布部22の表面は、ユーザの肌に対して過度な刺激を与えることがなく、肌あたりが良く、塗布しやすいように、例えば円又は楕円等の湾曲形状とするのが好ましい。なお、支持体2の具体的な形状等については後述する。
【0024】
また、塗布部22の裏面には、不織布1を支持体2の塗布部22に取り付ける際、塗布部22の表面に不織布1の皺がよることがないようにするための固定部23が設けられている。なお、図1(B)の例では、4箇所の固定部23−1〜23−4が設けられているが部材の数や形状等については、本発明においてこれに限定されるものではない。
【0025】
図1(C)に示すように、不織布1は、支持体2の塗布部22の表面に染み込み領域11が位置付けられるように、非染み込み領域12の端部を支持体2の固定部23−1〜23−4に挟み込むことにより固定している。上述したように、ここでは、塗布部22の表面上において皺がよることなく不織布1が取り付けられることが好ましい。
【0026】
このように、化粧料塗布具100は、固定部23−1〜23−4により、不織布1を支持体2から着脱させることができるため、不織布1にリキッドファンデーション等を浸透させ、支持体2に取り付けて使用することができる。また、使用後は、不織布1を取り外して使い捨てにすることができる。これにより、化粧料塗布具100を衛生的に使用することが可能となる。
【0027】
また、化粧料塗布具100を用いることで、リキッドファンデーションを塗布する際に、手を汚さず、きれいに仕上げることが可能となる。
【0028】
<不織布1について>
次に、第1実施形態で用いられる不織布1について説明する。不織布1は、リキッドファンデーション等の液状のメーキャップ化粧料に対して含浸性のある不織布を用いる。また、不織布1は、例えば繊維繊度を0.01〜2.00dtex程度とし、メルトブローン製法又はスパンレース製法で作製された不織布を用いる。
【0029】
ここで、メルトブローン製法とは、例えば熱可塑性樹脂を溶融紡糸し、平滑面に配列して、シート状にしたものであり、紡糸後、冷却する際の繊維どうしの固着のみで繊維間が接着されたものを示す。また、スパンレース(ウォータージェット)製法とは、一定の長さに切断された合成、天然繊維を、開繊又は分散、混合、定量均一化して、シート状にした後、高圧の水流により近接する繊維どうしを絡ませたものを示す。
【0030】
<使用評価テストに用いた不織布の種類>
次に、図2を用いて、上述した不織布1を選出するために検討した不織布の種類について説明する。図2は、使用評価テストに用いた不織布の種類を説明するための図である。
【0031】
図2に示すように、種類の異なる代表的な不織布として、例えば「エアーレイド」、「PET」、「スパンレース」、「極細の湿式不織布」、「メルトブレーン」を用いて検討した。
【0032】
「エアーレイド」は、例えば繊維仕様がパルプ3〜5dtex(98%)、アクリル系バインダ(2%)、繊維配列がエアーレイド、製法がエアーレイド製法、接着方法がバインダ塗布、目付け100g/mとする不織布である。なお、エアーレイド製法とは、例えば一定の長さに切断された合成、天然繊維を気流搬送し、混合して、平滑面に配列して、熱、加圧、接着剤のいずれか、又は複合した手段により繊維間が接着された製法を示す。
【0033】
「PET」は、例えば繊維仕様がコットン4〜10dtex(80%)、低融点PET(ポリエチレンテレフタレート)(20%)、繊維配列が乾式、製法が乾式スパンレース製法、接着方法がウォータージェット(水流交絡)、目付け60g/mとする不織布である。なお、乾式スパンレース製法とは、例えば一定の長さに切断された合成、天然繊維を、液体を用いずに開繊、混合、定量均一化して、シート状にした後、高圧の水流により近接する繊維同士を絡ませる製法を示す。
【0034】
「スパンレース」は、例えば繊維仕様がコットン4〜10dtex(60%)、レーヨン4dtex(40%)、繊維配列が乾式、製法が乾式スパンレース、接着方法がウォータージェット(水流交絡)、メッシュパターン賦与、目付けが40g/mとする不織布である。
【0035】
「極細の湿式不織布」は、例えば繊維仕様がPET約0.1dtex(100%)、繊維配列が湿式、製法が湿式スパンレース製法、接着方法がウォータージェット(水流交絡)、目付けが50g/mとする不織布である。なお、湿式スパンレース製法とは、例えば一定の長さに切断された合成、天然繊維を、液体中に分散、混合し、鋤き上げながら定量均一化しシート状にした後、高圧の水流により近接する繊維同士を絡ませる製法を示す。
【0036】
「メルトブローン」は、例えば繊維仕様がPP約0.05dtex(100%)、繊維配列がメルトブローン(溶融紡糸)、製法がメルトブローン製法、接着方法なし、すなわち、溶融状態から冷却時の自己接着により、目付けが15g/mとする不織布である。上述したように、メルトブローン製法とは、例えば熱可塑性樹脂を溶融紡糸し、平滑面に配列し、シート状にしたものであり、紡糸後、冷却する際の繊維同士の固着のみで繊維間が接着する製法を示す。
【0037】
上述した5種類のサンプルは、繊維仕様、繊維配列、製法、接着方法、目付け等の違いにより、例えば不織布の密度の面から比較すると、「エアーレイド」がより密度が低く、「メルトブローン」がより密度が高い。また、不織布表面の平滑性の面から比較すると、「エアーレイド」がより劣っている一方、「メルトブローン」がより優れているといえる。
【0038】
<不織布1の使用評価テストによる最適条件の選出>
次に、上述した5種類のサンプルを用いて、第1実施形態における最適な不織布1を選出するために実施した使用評価テストについて説明する。図3は、図2に示す不織布を用いた場合の使用評価テストの結果を示している。
【0039】
なお、使用評価テストは、上述した化粧料塗布具100の支持体2に、図2に示す不織布を用いて、リキッドファンデーションを塗布しているときの使用感評価を、20代から30代の一般女性を対象に実施したものである。
【0040】
この使用評価テストでは、リキッドファンデーションを塗布しているときの「塗布中のなめらかさ」、「塗布具の肌あたり」、「塗布具のざらつき」、「仕上がりの筋むら」、「仕上がりの均一さ」、「全体評価」を検討項目とする評価を行った。具体的には、上述した20代〜30代の一般女性10名(n=10)を対象に、各検討項目に対して−3〜+3の7段階(−3、−2、−1、0、1、2、3)で評価してもらい、各検討項目に対する評価点の平均点を算出して、「−3〜−1.5未満→評価×」、「−1.5〜0未満→評価△」、「0〜1.5未満→評価○△」、「1.5〜3→評価○」を評価基準としたものである。
【0041】
なお、支持体2として、後述する図4及び図5に示す形状からなる木製の支持体を使用した。リキッドファンデーションには、油相:20〜40%、粉末:10〜30%、水相:20〜50%のファンデーションを使用した。
【0042】
図3に示すように、「塗布中のなめらかさ」は、「極細の湿式不織布」が「評価○(1.5〜3)」、「メルトブローン」が「評価○△(0〜1.5)」であり、「極細の湿式不織布」と「メルトブローン」が、肌に対してなめらかであるという評価結果が得られた。
【0043】
また、「塗布具の肌あたり」については「メルトブローン」が「評価○(1.5〜3)」、「スパンレース」と「極細の湿式不織布」が「評価○△(0〜1.5)」であり、「メルトブローン」が、肌あたりが良く、次に「スパンレース」、「極細の湿式不織布」が、肌あたりが良いという評価結果が得られた。
【0044】
また、「塗布具のざらつき」については、「メルトブローン」が「評価○(1.5〜3)」、「極細の湿式不織布」が「評価○△(0〜1.5)」であり、「メルトブローン」が、ざらつきがなく感触が良く、次に「極細の湿式不織布」が、ざらつきがなく感触が良いという評価結果が得られた。
【0045】
また、「仕上がりの筋むら」については、「メルトブローン」が「評価○(1.5〜3)」であり、「メルトブローン」が、リキッドファンデーション塗布後の仕上がりに筋むらが生じないという評価結果が得られた。
【0046】
また、「仕上がりの均一さ」については、「極細の湿式不織布」と「メルトブローン」が「評価○△(0〜1.5)」で、「極細の湿式不織布」と「メルトブローン」が、リキッドファンデーションを肌に均一に塗布できるという評価結果が得られた。
【0047】
更に、上述した各検討項目に対する評価を纏めた「全体評価」については、「メルトブローン」が「評価○(1.5〜3)」、「極細の湿式不織布」が「評価○△(0〜1.5)」であり、「メルトブローン」が最も評価が高く、次に「極細の湿式不織布」の評価が高かった。
【0048】
ここで、上述した「メルトブローン」は、繊維が細く(約0.05dtex)、製法上の理由から連続繊維であり、繊維端面が存在しないことから表面平滑性が高い。また、製法上、繊維配置後に接着のための工程がなく、繊維間距離の乱れがないため、シート断面において繊維の凹凸のバラつきが小さく、空隙が均一であることもミクロでの平滑性に寄与している。
【0049】
したがって、「メルトブローン」は、この表面平滑性により「仕上がりの筋むら」が少なく、リキッドファンデーションを含浸した場合でも肌上で滑らせた時の動摩擦が低いため、肌に対してなめらかな感触となり、最も高い評価を得ることができたといえる。
【0050】
また、「極細の湿式不織布」は、繊維は細く(約0.1dtex)、表面平滑性は比較的高い。しかしながら、製法上の理由から切断された繊維端面が一定の割合で表面に存在するため、肌に対するざらつきが生じやすい。また、水流交絡処理により繊維間距離にバラつきが生じて、ミクロでの平滑性が劣る。これにより、「極細の湿式不織布」の場合には、「メルトブローン」の場合よりも評価が低かったものと推測される。
【0051】
「スパンレース」、「PET」は、コットンの繊維が太く(約4〜10dtex)、表面平滑性は比較的低い。また、製法上の理由から切断された繊維端面が一定の割合で表面に存在するため、肌に対してざらつきが生じやすい。また、水流交絡処理により繊維間距離にバラつきが生じてしまうため、ミクロでの平滑性が劣り、評価が低い結果になったものと推測される。
【0052】
なお、「PET」の繊維表面特性は、「スパンレース」に対して親水性が低い。したがって上述のリキッドファンデーション(外相が油相、すなわち疎水性の性質を持つ)との相性を考慮した場合、「PET」の方が「スパンレース」よりも、ファンデーションとなじみにくい特性を有する。
【0053】
そのため、「PET」の方が、「スパンレース」よりもファンデーションを放出しやすく、弱い力で肌に移りやすいため、肌に塗布しやすく、「仕上がりの均一さ」に寄与すると仮定したが、評価に対する影響は見られなかった。このことから、「仕上がりの均一さ」には、ファンデーションと不織布との相性である親水性、疎水性のバランスによるなじみやすさ等よりも、不織布の平滑性の因子の方が大きく作用するものと推測される。
【0054】
「エアーレイド」は、パルプの繊維がコットンより細い。しかしながら、製法上気流で搬送しやすくするために繊維長がかなり短く、切断された繊維端面がかなりの割合で表面に存在するため、ざらつきが生じやすい。また、「エアーレイド」は、パルプ繊維剛性の高さから、使用時の力でも凹凸が解消しにくく、助長されたため、「塗布中のなめらかさ」、「仕上がりの筋むら」の両面で評価が低い結果になったものと推測される。
【0055】
なお、「エアーレイド」は、繊維長が短く繊維間距離が小さく密集しているため、高粘度のファンデーションを含みにくい一方、密集した構造に起因する毛細管現象から、一旦ファンデーションを含んでしまうと放出しにくく、肌に移りにくいという特徴を持つ。これに対し、上述の「スパンレース」は、その毛細管現象から、ファンデーションを含みにくく、放出しやすい特徴を持つ。
【0056】
このような不織布の毛細管現象によるファンデーションの含みやすさ、放出しやすさは、「仕上がりの均一さ」に影響すると考えられたが、評価に対する影響は見られなかった。このことから、「仕上がりの均一さ」には、不織布の毛細管現象の違いよりも、不織布の平滑性の因子が大きく作用するものと推測される。
【0057】
以上の通り、使用評価テストでは、図2に示す不織布のうち「メルトブローン」が最も高い評価を得た。したがって、最適な不織布1には、例えば「メルトブローン」を用いると良い。
【0058】
<不織布1の選出について>
次に、不織布1の選出について説明する。上述した図2に示す「メルトブローン」(繊維仕様:PP約0.05dtex)と「エアーレイド」(繊維仕様:パルプ3dtex)とを比較すると、「エアーレイド」の方が不織布表面の平滑性が劣る。
【0059】
ここで、不織布表面の平滑性とは、例えば不織布表面の凹凸の状態を意味し、不織布の表面に凹凸がある場合には、肌との接触の仕方に局所的な差異が生じるため、リキッドファンデーションが多めに塗布されたり、少なめに塗布されたりして、いわゆるムラ(むら)を発生させる。
【0060】
この不織布表面の平滑性は、例えば繊維が太い細い等の繊維繊度等に影響され、例えば繊維繊度が約2.00dtexを超えると筋むらが発生する場合が多い。
【0061】
一方、繊維が細くなるにつれて、一般的に不織布の強度が低下する。すなわち、繊維1本1本の強度が低くなるため、局所的に繊維切れや交絡はずれ等が発生して、不織布の一部が伸びたり切れたりして、弛んだ部分がシワになり、シート全体に凹凸が生じて、塗布時のむらの発生につながる。具体的には、繊維繊度が約0.01dtexを下回る場合には、伸びや切れが顕著に発生してしまう。
【0062】
そこで、不織布1に用いる繊維繊度としては、約0.01〜2.00dtexを目処に設定すると良い。
【0063】
また、上述した図2の「スパンレース」や「PET」は、乾式スパンレース製法により作製されているが、この乾式スパンレース製法と、「極細の湿式不織布」の湿式スパンレース製法とは、液体を用いて繊維を分散させるか否かにより製法が異なる。
【0064】
乾式スパンレース製法の場合には、一定の長さに切断された合成、天然繊維を、水を使わずに、ほぐして均一に配置するため、トゲのような突起のついた回転体の上で物理的にかきとりながら繊維を分散させる。この工程上、乾式スパンレース製法で用いられる繊維は、細すぎると固まったり、切れてしまったりするため、繊維繊度としては、約1.00dtexが下限となる。しかしながら、繊維繊度が、約1.00〜2.00dtex程度の細い繊維を用いた乾式スパンレースであれば、「スパンレース」や「PET」よりも不織布表面の平滑性が優れた不織布を得ることが可能となる。
【0065】
以上のことから、第1実施形態における不織布1には、例えば、繊維繊度が、約0.01〜2.00dtexであり、メルトブローン製法又はスパンレース製法で作製された不織布を用いるものとする。なお、スパンレース製法のうち、乾式スパンレース製法で作製された不織布を用いる場合には、繊維繊度が、約1.00〜2.00dtexのものを用いるのが好ましい。
【0066】
上述した不織布1を用いることで、リキッドファンデーションの塗布中に、なめらかな感触で、ざらつきがなく、肌触り、使用感の良さを感じながら、リキッドファンデーションを筋むらなく、肌に均一に塗布してきれいに仕上げることが可能となる。
【0067】
<支持体について>
次に、支持体2について具体的に説明する。図4は、第1実施形態における支持体全体の概要の一例を示す図である。また、図5は、支持体の具体的な形状を説明するための図である。
【0068】
第1実施形態における支持体2は、図4、図5に示すように、塗布部22が湾曲した形状で形成されている。なお、図4の例では、支持体2は木製であるが、本発明においてはこれに限定されず、例えばリキッドファンデーション等の液状のメーキャップ化粧料を含浸しない樹脂、金属、陶器等でも良い。
【0069】
なお、支持体2における塗布部22の湾曲形状は、図5の例では、例えば127°で形成しているが、本発明においてはこれに限定されるものではない。また、塗布部22の表面のRは、予め設定された値(図5の例では、表面側R19、裏面側R17)で形成されている。支持体2は、上述した表面のRが形成された塗布部22の面上に沿って不織布1を覆うように取り付けることで、塗布部22の表面を利用してファンデーションを塗布することが可能となる。
【0070】
また、支持体2を持つ取手部21には、所定のR(図5の例では、R23)が設けられているが、本発明においてはこれに限定されるものではない。また、支持体2の角部に所定のRを設けることで使用性を良くしても良い。
【0071】
上述したように、第1実施形態では、支持体2の塗布部22の表面に、不織布1を取り付けて、ユーザの肌等の化粧対象部位に接触させることで、不織布1の表面に染み込ませたリキッドファンデーションを化粧対象部位に塗布させることが可能となる。
【0072】
また、不織布1は、なめらかな感触で肌あたりが良いため、使用感が良く、液状のメーキャップ化粧料を肌に均一に塗布することが可能となる。また、化粧料塗布具100は、液状のメーキャップ化粧料を浸透させた不織布1を支持体2に着脱自在に取り付け可能とすることで、不織布1を使い捨てにし、衛生的に使用することが可能となる。
【0073】
なお、上述の例では、不織布1を柔らかいシート状の形状として説明したが、本発明においてはこれに限定されるものではなく、不織布1は、例えば支持体2を覆う筒状の形状としても良い。また、不織布1の裏面の非染み込み領域12には、シールのような接着剤等を貼付しておき、支持体2の裏面に不織布1の接着剤等を貼り付けるようにして用いても良い。
【0074】
更に、例えば上述した支持体2を2つ用いて、お互いを重ね合わせることで、支持体2の外周に巻き付けた不織布1を挟んで固定するようにしても良い。その場合には、2つの支持体2の取手部21を、料理用のトングのように蝶番又はヒンジ部で接合して開閉可能な構造体とすると良い。また、重ね合わせた2つの支持体2の間には、不織布1の両側の非染み込み領域12を挟み込み、2つの支持体2の裏面先端部に嵌合部を設け、その嵌合部によって2つの支持体2を閉じた状態で保持しながら用いると良い。
【0075】
<第2実施形態:化粧料塗布具>
次に、図6を用いて、第2実施形態における化粧料塗布具について説明する。図6は、第2実施形態における化粧料塗布具の一例を示す図である。
【0076】
図6(A)〜図6(D)に示すように、第2実施形態の化粧料塗布具101は、第1実施形態の化粧料塗布具100と比較すると、不織布1に粘着部10を設けた化粧料塗布用シート30を、支持体2における塗布部22の所定位置に貼り付ける点で異なる。
【0077】
図6(A)は、化粧料塗布用シート30の外観(塗布部22との接触面側)を示している。図6(B)は、化粧料塗布用シートを貼り付ける支持体2を示している。図6(C)は、支持体2の塗布部22に化粧料塗布用シート30を貼り付けた状態を示している。また、図6(D)は、化粧料塗布用シート30の断面図を示している。
【0078】
図6(A)に示すように、化粧料塗布用シート30は、不織布1と粘着部10とを有するように構成される。不織布1は、第1実施形態における繊維繊度が0.01〜2.00dtexであり、メルトブローン製法又はスパンレース製法で作製された不織布等を用いる。粘着部10は、不織布1よりも僅かに内側(例えば数ミリ程度)の領域に設けられているが、不織布1と同一の領域に設けても良く、一部のみ不織布1より内側の領域に設けても良い。
【0079】
化粧料塗布用シート30は、例えば全体形状を長方形とし、支持体2における塗布部22の表面全体を覆うように、長辺L(図6(A)に示す縦方向)、短辺S(図6に示す横方向)を設定すると良い。
【0080】
図6(B)に示す支持体2は、上述した図1(B)、図4、及び図5に示す支持体2を用いるが、例えば裏面には固定部23−1〜23−4を設けなくても良い。
【0081】
図6(C)に示すように、化粧料塗布具101は、化粧料塗布用シート30を粘着部10により支持体2の塗布部22の表面に着脱自在に貼り付けて用いる。このように、粘着部10を塗布部の表面に貼り付けることで、支持体2の塗布部22の表面には、不織布1で覆われた塗布面が形成される。
【0082】
化粧料塗布具101は、使用者が顔にリキッドファンデーションを塗布する場合、不織布1にリキッドファンデーションを含浸させて用いる。また、使用後は、化粧料塗布用シート30を支持体2から取り外して使い捨てにする。これにより、化粧料塗布具101を衛生的に使用することが可能となる。
【0083】
図6(D)に示すように、化粧料塗布用シート30において、粘着部10は、粘着層10Aと、芯材10Bと、粘着層10Cとを有するように構成される。
【0084】
粘着部10は、粘着層10Aを支持体2の塗布部22に接着することで、不織布1を支持体2に対して着脱可能とする。芯材10Bは、粘着層10Aと粘着層10Cとの間に挟まれ、不織布1に含浸したリキッドファンデーションの浸透を遮断して、支持体2を汚さないようにする。粘着層10Cは、不織布1と粘着して、粘着部10と不織布1とを一体化させる。
【0085】
なお、粘着部10は、上述した構成に限らず、例えば粘着層10Cのみにより構成しても良い。この場合には、化粧料塗布用シート30は、粘着層10Cにより不織布1を支持体2の塗布部22に貼り付けて用いられる。
【0086】
上述したように、第2実施形態によれば、リキッドファンデーションを塗布する際に、化粧料塗布具101を用いることで、手を汚さず、きれいに仕上げることが可能となる。
【0087】
<粘着部10の芯材10Bの材質について>
次に、上述した粘着部10の芯材10Bについて説明する。粘着部10の芯材10Bは、リキッドファンデーション等の液状メーキャップ化粧料の浸透を遮断し、液状メーキャップ化粧料が含浸しないための材質を用いる。
【0088】
例えば、芯材10Bの材質としては、炭化水素系プラスチック(非極性プラスチック)、極性ビニル系プラスチック(ビニル基を持つモノマー重合体)、線状構造プラスチック(エンジニアリング・プラスチック)、セルロース系プラスチック(セルロース誘導体)、シリコーン系樹脂、熱可塑性エラストマー等を用いると良い。
【0089】
炭化水素系プラスチックには、結晶性のものとして、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、結晶性ポリブタジエン等を用いると良い。また、非晶性のものとして、例えばポリスチレン、ポリブタジエン、スチレン・ブタジエン樹脂等を用いると良い。
【0090】
また、極性ビニル系プラスチックには、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA、AS、ABS、アイオノマー、AAS、ACS)、ポリメチルメタクリレート(アクリル)、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンポリテトラフルオロエチレン共重合体等を用いると良い。
【0091】
また、線状構造プラスチックには、ポリアセタール(ポリオキシメチレン)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート(Uポリマー)、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリオキシベンゾイル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、その他液晶ポリエステル等を用いると良い。
【0092】
また、セルロース系プラスチックには、例えば酢酸セルロース、酢酪酸セルロース、セロファン、セルロイド等を用いると良い。また、熱可塑性エラストマーには、スチレン・ブタジエン系、ポリオレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、1,2−ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル系、アイオノマー等を用いると良い。
【0093】
上述したように、粘着部10の芯材10Bに、液状メーキャップ化粧料の浸透を遮断し、液状メーキャップ化粧料が含浸しない材質を用いることで、化粧料塗布用シート30を化粧料塗布具101に貼り付けて使用した場合でも、化粧料塗布具101を汚さないまま、液状メーキャップ化粧料を塗布することが可能となる。
【0094】
<粘着部10の粘着層10A及び粘着層10Cについて>
次に、上述した粘着部10の粘着層10A及び粘着層10Cの材質について説明する。粘着層10A及び粘着層10Cには、例えばゴム系粘着剤を用いると良い。ゴム系粘着剤の一般的な組成として、例えば、ポリスチレン/ポリイソプレン系ブロック共重合体、ポリスチレン/ポリブタジエン系ブロック共重合体及びこれらの水素添加物をはじめとする各種スチレン系熱可塑性ブロック共重合体を主成分とするエラストマーを含み、粘着付与剤、軟化剤、老化防止剤等をブレンドしたものを用いると良い。
【0095】
また、粘着付与剤には、例えば脂肪族系石油樹脂、脂肪族/芳香族系石油樹脂、シクロペンタジエン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、テルペン系樹脂等を用いると良い。また、軟化剤には、アジピン酸系エーテルエステル、アジピン酸系ポリエステル、ポリエーテルエステル、脂肪酸アルキルエステル等を用いると良い。
【0096】
また、老化防止剤は、例えばゴム系接着剤の主成分のゴムや粘着付与剤等が時間の経過とともに劣化することを防ぐための目的で添加され、ジタ―シャリーブチルヒドロキシトルエン(BHT)、N、N‘−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(DPPD)等を用いると良い。
【0097】
上述したように、第2実施形態では、不織布1に粘着部10を設けた化粧料塗布用シート30を、支持体2における塗布部22の所定位置に貼り付けて塗布し、使用後は、支持体2から取り外して使い捨てにする。これにより、化粧料塗布具101を衛生的に使用することが可能となる。
【0098】
本発明の実施形態によれば、液状のメーキャップ化粧料を塗布する場合に、手を汚すことなく、肌触り良く、液状のメーキャップ化粧料を肌に均一に塗布することが可能となる。
【0099】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0100】
1 不織布
2 支持体
10 粘着部
10A,10C 粘着層
10B 芯材
11 染み込み領域
12 非染み込み領域
21 取手部
22 塗布部
23 固定部
30 化粧料塗布用シート
100,101 化粧料塗布具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状のメーキャップ化粧料を肌に塗布する際に用いられる含浸性のある不織布であって、
繊維繊度が0.01〜2.00dtexであり、メルトブローン製法又はスパンレース製法で作製されることを特徴とする不織布。
【請求項2】
請求項1に記載された不織布と、
前記不織布を着脱自在に取り付け可能な支持体とからなる化粧料塗布具であって、
前記支持体は、取手部と、塗布部とを有し、
前記塗布部は、所定の湾曲形状に形成されていることを特徴とする化粧料塗布具。
【請求項3】
前記支持体は、前記液状のメーキャップ化粧料を含浸しないことを特徴とする請求項2に記載の化粧料塗布具。
【請求項4】
前記不織布は、予め設定された所定の領域に前記液状のメーキャップ化粧料が染み込まれていることを特徴とする請求項2又は3に記載の化粧料塗布具。
【請求項5】
前記液状のメーキャップ化粧料は、リキッドファンデーションを含むことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の化粧料塗布具。
【請求項6】
前記支持体は、前記塗布部の所定位置に前記不織布を固定するための固定部を有することを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一項に記載の化粧料塗布具。
【請求項7】
前記不織布に粘着部を設けた化粧料塗布用シートを前記塗布部の所定位置に貼り付けることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一項に記載の化粧料塗布具。
【請求項8】
前記粘着部は、前記液状のメーキャップ化粧料を含浸しないことを特徴とする請求項7に記載の化粧料塗布具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−35070(P2012−35070A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155177(P2011−155177)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)