説明

中気門亜目ダニ類防除剤

【課題】
中気門亜目ダニ類防除剤を提供すること。
【解決手段】
式(1)


(式中、Rはメチル基又はメトキシメチル基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表す。)で示されるエステル化合物を有効成分として含有する中気門亜目ダニ類防除剤、式(1)で示されるエステル化合物の有効量を、中気門亜目ダニ類又は中気門亜目ダニ類の生息場所に施用することを特徴とする中気門亜目ダニ類の防除方法、及び中気門亜目ダニ類防除のための式(1)で示されるエステル化合物の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワクモ、トリサシダニ等の中気門亜目ダニ類の防除剤、及び中気門亜目ダニ類の防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
式(1)

(式中、Rはメチル基又はメトキシメチル基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表す。)
で示されるエステル化合物が有害生物防除剤の有効成分として有用であることが知られている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−63329号公報
【特許文献2】特開2001−11022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、式(1)で示されるエステル化合物が中気門亜目ダニ類(分類上、中気門亜目に属するダニ類)に効力を有することは、具体的には知られていない。
一方、中気門亜目ダニ類は、ワクモやトリサシダニ等、家畜に寄生して被害を与える種が存在し、新しい中気門亜目ダニ類防除剤の開発が望まれている。
本発明は、中気門亜目ダニ類防除剤を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、中気門亜目ダニ類防除剤の有効成分について検討した結果、式(1)で示されるエステル化合物がワクモやトリサシダニ等の中気門亜目ダニ類に対して優れた殺ダニ効力を有するため、式(1)で示されるエステル化合物が中気門亜目ダニ類防除剤の有効成分として有用であることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
即ち、本発明は以下のものである。
1.式(1)

(式中、Rはメチル基又はメトキシメチル基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表す。)
で示されるエステル化合物を有効成分として含有する中気門亜目ダニ類防除剤。
2.中気門亜目ダニ類がワクモである1.記載の中気門亜目ダニ類防除剤。
3.式(1)で示されるエステル化合物の有効量を、中気門亜目ダニ類又は中気門亜目ダニ類の生息場所に施用することを特徴とする中気門亜目ダニ類の防除方法。
4.中気門亜目ダニ類がワクモである3.記載の中気門亜目ダニ類の防除方法。
5.中気門亜目ダニ類防除のための式(1)で示されるエステル化合物の使用。
【発明の効果】
【0007】
本発明の防除剤は家畜に寄生して被害を与えるワクモやトリサシダニその他の中気門亜目ダニ類に優れた効力を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の防除剤は式(1)で示されるエステル化合物を有効成分として含有することを特徴とする。
式(1)で示されるエステル化合物は、例えば特開2000−63329号公報(前記特許文献1)又は特開2001−11022号公報(前記特許文献2)に記載された化合物であり、該公報に記載された方法で製造することができる。
式(1)で示されるエステル化合物には不斉炭素に基づく異性体が存在し、また炭素−炭素二重結合に基づく異性体が存在する場合があるが、本発明には活性な異性体のいずれをも使用することができる。
【0009】
式(1)で示される化合物としては、例えば2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル 3−(1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル 3−(1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル 3−(2−メチル−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル 1R−トランス−3−(1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル 1R−トランス−3−(1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、及び2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル 1R−トランス−3−(2−メチル−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレートが挙げられる。
【0010】
本発明の防除剤が効力を有する中気門亜目ダニ類としては、例えばタンカンマヨイダニ、フツウマヨイダニ等のマヨイダニ科のダニ類、スズメサシダニ、ワクモ等のワクモ科のダニ類、イエダニ、トリサシダニ等のオオサシダニ科のダニ類、及びネズミトゲダニ、ミツバチヘギイタダニ等のトゲダニ科のダニ類が挙げられる。
【0011】
本発明の防除剤は、式(1)で示されるエステル化合物そのものでもよく、さらに固体担体、液体担体、ガス状担体及び/又は餌(毒餌基材)等と混合し、必要により界面活性剤、その他の製剤用補助剤を添加して、油剤、乳剤、水和剤、フロアブル剤、粒剤、粉剤、エアゾール、加熱蒸散剤(線香等)、煙霧剤、燻煙剤、毒餌、マイクロカプセル剤、ULV剤、スポットオン製剤、ポアオン製剤、シャンプー製剤、シート製剤、樹脂製剤等に製剤化されているものでもよい。
これらの製剤には式(1)で示されるエステル化合物が、通常0.01〜90重量%含有される。
【0012】
製剤化の際に用いられる固体担体としては、例えば粘土類(カオリンクレー、珪藻土、合成含水酸化珪素、ベントナイト、フバサミクレー、酸性白土等)、タルク、セラミック、その他の無機鉱物(セリサイト、石英、硫黄、活性炭、炭酸カルシウム、水和シリカ等)、化学肥料(硫安、燐安、硝安、尿素、塩安等)等の微粉末及び粒状物等があげられる。
液体担体としては、例えば水、アルコール類(メタノール、エタノール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メチルナフタレン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、シクロヘキサン、灯油、軽油等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、ニトリル類(アセトニトリル、イソブチロニトリル等)、エーテル類(ジイソプロピルエーテル、ジオキサン等)、酸アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、トリクロロエタン、四塩化炭素等)、ジメチルスルホキシド及び植物油(大豆油、綿実油等)があげられる。
ガス状担体(噴射剤)としては、例えばフルオロカーボン、ブタンガス、LPG(液化石油ガス)、ジメチルエーテル及び炭酸ガスがあげられる。
【0013】
界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルアリールエーテル類及びそのポリオキシエチレン化物、ポリエチレングリコールエーテル類、多価アルコールエステル類並びに糖アルコール誘導体があげられる。
その他の製剤用補助剤としては、固着剤、分散剤及び安定剤等、具体的には例えばカゼイン、ゼラチン、多糖類(でんぷん、アラビアガム、セルロース誘導体、アルギン酸等)、リグニン誘導体、ベントナイト、糖類、合成水溶性高分子(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸類等)、PAP(酸性りん酸イソプロピル)、BHT(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、BHA(2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールと3−tert−ブチル−4−メトキシフェノールとの混合物)、植物油、鉱物油、脂肪酸及び脂肪酸エステル等があげられる。
【0014】
毒餌の基材としては、たとえば穀物粉、植物油、糖、結晶セルロース等の餌成分、ジブチルヒドロキシトルエン、ノルジヒドログアイアレチン酸等の酸化防止剤、デヒドロ酢酸等の保存料、トウガラシ粉末等の子どもやペットによる誤食防止剤、チーズ香料、タマネギ香料、ピーナッツオイルなどの害虫誘引性香料等があげられる。
樹脂製剤の基材としては、例えば塩化ビニル系重合体、及びポリウレタンが挙げられる。
【0015】
本発明の中気門亜目ダニ類防除方法は、通常本発明の防除剤を中気門亜目ダニ類又は中気門亜目ダニ類の生息場所に施用することにより行われる。
本発明の防除剤を中気門亜目ダニ類又は中気門亜目ダニ類の生息場所に施用するに際し、その施用量は、平面に施用する場合には、1mあたり式(1)で示されるエステル化合物の量として通常0.01〜1000mgの範囲内であり、空間に施用する場合には、1mあたり式(1)で示されるエステル化合物の量として通常0.001〜100mgの範囲内である。
【0016】
本発明の防除剤が乳剤、フロアブル剤、水和剤等に製剤化されている場合には、通常、式(1)で示されるエステル化合物の濃度が10〜1000ppmとなるように水に希釈して散布することにより施用され、本発明の防除剤が油剤、粒剤、粉剤、エアゾール等に製剤化されている場合には、通常そのまま施用される。
【0017】
また、本発明の防除剤は、家畜に寄生する中気門亜目ダニ類の防除に使用することもできる。本発明の防除剤を家畜に寄生する中気門亜目ダニ類の防除に使用する方法としては、例えば、次の方法が挙げられる。
(I)本発明の防除剤を畜舎の中に前記の割合で散布等により施用する方法。
(II)中気門亜目ダニ類が寄生する又は今後寄生するであろう家畜に、経皮、又は経口的に投与する方法。
この場合の経皮的に投与する方法としては、例えば家畜に本発明の防除剤を散布する方法、家畜を本発明の防除剤に浸漬する方法、家畜に本発明の防除剤をスポットオン処理する方法、家畜に本発明の防除剤をポアオン処理する方法、及び樹脂製剤又はシート製剤に製剤化された本発明の防除剤を家畜に装着する方法が挙げられる。経口的に投与する方法としては、例えば本発明の防除剤を家畜の餌に混入させ、家畜に食べさせる方法が挙げられる。
本発明の防除剤を家畜に投与する場合、投与量は、経皮的に投与する場合には動物の体重1kgあたりの式(1)で示されるエステル化合物の量として、通常0.01〜500mgの範囲内であり、経口的に投与する場合には動物の体重1kgあたりの式(1)で示されるエステル化合物の量として、通常0.01〜100mgの範囲内である。
【0018】
中気門亜目ダニ類が寄生する家畜としては、例えば鶏、ウズラ、アヒル等の鳥類が挙げられる。
【0019】
本発明の防除剤は、他の殺虫剤、殺線虫剤、殺ダニ剤、共力剤、動物用飼料等と共に用いることもできる。
【実施例】
【0020】
以下、製剤例、試験例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、製剤例中、部は重量部を意味する。
【0021】
製剤例1
2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル 1R−トランス−3−(1−プロペニル(E/Z=1/8))−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル 1R−トランス−3−(1−プロペニル(E/Z=1/8))−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート又は2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル 1R−トランス−3−(2−メチル−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート5重量部、ソルポールSM200(東邦化学製界面活性剤)10重量部およびキシレン85重量部を混合して乳剤を得る。
【0022】
製剤例2
2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル 1R−トランス−3−(1−プロペニル(E/Z=1/8))−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル 1R−トランス−3−(1−プロペニル(E/Z=1/8))−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート又は2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル 1R−トランス−3−(2−メチル−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート30重量部、ジエチレングリコールモノメチルエーテル70重量部を混合し、スポットオン製剤を得る。
【0023】
製剤例3
2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル 1R−トランス−3−(1−プロペニル(E/Z=1/8))−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル 1R−トランス−3−(1−プロペニル(E/Z=1/8))−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート又は2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル 1R−トランス−3−(2−メチル−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート5重量部、オレイン酸メチル25重量部および流動パラフィン70重量部を混合し、ポアオン製剤を得る。
【0024】
製剤例4
2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル 1R−トランス−3−(1−プロペニル(E/Z=1/8))−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル 1R−トランス−3−(1−プロペニル(E/Z=1/8))−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート又は2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル 1R−トランス−3−(2−メチル−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート4.5重量部、合成含水酸化珪素微粉末1部、ドリレスB(凝集剤、三共株式会社製)1部、クレー7部を乳鉢でよく混合した後、ジュースミキサーで攪拌混合する。得られた混合物にカットクレー86.5部を加えて、十分攪拌混合して、粉剤を得る。
【0025】
試験例1
パスツールピペット(岩城硝子株式会社製、品番:IK−PAS−5P、全長:146mm、細管部長:40mm、直径:7mm)の上部(広い方の口)約15mmを脱脂綿で栓をした。このパスツールピペットに、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル 1R−トランス−3−(1−プロペニル(E/Z=1/8))−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート10ppmのアセトン溶液を前記脱脂綿の栓の直下まで吸い上げ、5秒間保持し、次いで、該アセトン溶液を排出した。このパスツールピペットを2時間室温で放置した後、ワクモ成ダニ20頭をその中に入れ、パスツールピペットの下部(狭い方の口)を粘土で閉じた。これを室温で1日間放置した後に、供試したワクモの生死を調査した(3反復)。その結果、ワクモの致死率は100%であった。
【0026】
試験例2
パスツールピペット(岩城硝子株式会社製、品番:IK−PAS−5P、全長:146mm、細管部長:40mm、直径:7mm)の上部(広い方の口)約15mmを脱脂綿で栓をした。このパスツールピペットに、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル 1R−トランス−3−(1−プロペニル(E/Z=1/8))−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート10ppmのアセトン溶液を前記脱脂綿の栓の直下まで吸い上げ、5秒間保持し、次いで、該アセトン溶液を排出した。このパスツールピペットを2時間室温で放置した後、ワクモ成ダニ20頭をその中に入れ、パスツールピペットの下部(狭い方の口)を粘土で閉じた。これを室温で1日間放置した後に、供試したワクモの生死を調査した(3反復)。その結果、ワクモの致死率は98%であった。
【0027】
参考例
パスツールピペット(岩城硝子株式会社製、品番:IK−PAS−5P、全長:146mm、細管部長:40mm、直径:7mm)の上部(広い方の口)約15mmを脱脂綿で栓をした。このパスツールピペットに、アセトンを前記脱脂綿の栓の直下まで吸い上げ、5秒間保持し、次いで、該アセトン溶液を排出した。このパスツールピペットを2時間室温で放置した後、ワクモ成ダニ20頭をその中に入れ、パスツールピペットの下部(狭い方の口)を粘土で閉じた。これを室温で1日間放置した後に、供試したワクモの生死を調査した(3反復)。その結果、ワクモの致死率は0%であった。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の防除剤は中気門亜目ダニ類防除剤として有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)

(式中、Rはメチル基又はメトキシメチル基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表す。)
で示されるエステル化合物を有効成分として含有する中気門亜目ダニ類防除剤。
【請求項2】
中気門亜目ダニ類がワクモである請求項1記載の中気門亜目ダニ類防除剤。
【請求項3】
式(1)

(式中、Rはメチル基又はメトキシメチル基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表す。)
で示されるエステル化合物の有効量を、中気門亜目ダニ類又は中気門亜目ダニ類の生息場所に施用することを特徴とする中気門亜目ダニ類の防除方法。
【請求項4】
中気門亜目ダニ類がワクモである請求項3記載の中気門亜目ダニ類の防除方法。
【請求項5】
中気門亜目ダニ類防除のための式(1)

(式中、Rはメチル基又はメトキシメチル基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表す。)
で示されるエステル化合物の使用。

【公開番号】特開2006−36714(P2006−36714A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221440(P2004−221440)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】