説明

中皿の上昇機構を備えた容器

【課題】容器体A外部からの操作が可能な操作ハンドルBと、容器体内に立設した螺軸Cに内周縁を螺着し、外周縁を容器体内周面に摺動可能に嵌合した中皿Cとを備え、操作ハンドルBの回転で螺軸Cが回転して中皿Dが上昇し、中皿上方の収納液を吐出孔22から吐出する如く構成した容器であって、中皿の螺軸との螺合部分のシール性を向上させた容器を提案する。
【解決手段】螺軸外周に設けた雄螺条42及び/又は中皿内周に設けた雌螺条50に、螺合した雄螺条及び雌螺条間に生じる隙間dを閉塞縦断するフィンFを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は中皿の上昇機構を備えた容器に関し、詳しくは、螺軸と連動した中皿の上昇により、その上方の収納物の吐出が可能な容器に関する。
【背景技術】
【0002】
中皿の上昇機構を備えた容器として、例えば、中皿上に化粧品固形物を固定して螺軸の回動により繰り出す如く構成した固形物繰出し容器が提案されている。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
上記繰出し容器は、固形物を収納する容器本体と、該容器本体の底部に設けられる回動部と、該回動部より起立して容器本体内に突設し、周囲に螺条を周設した螺軸と、螺軸に螺合するとともに、固形物を保持する中皿とを備え、回動部を回転させることにより、螺軸に螺合された中皿を上方にスライドさせて固形物を繰り出す如く構成している。
【特許文献1】特開2002−086988号公報
【0004】
上記した如き中皿の上昇機構を備え、中皿上に例えば粘度の高い液を収納して吐出する如く構成した液体吐出用の容器も知られている。これらは、中皿の外周縁を容器体内周に摺動可能に嵌合させ、また、容器体の頂部を閉塞してそこに吐出孔を穿設している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した如き中皿の上昇機構を備えた液体吐出用の容器の場合は、中皿の外周縁部は容器体内周面に液密摺動可能に嵌合させているため、充分なシール性を得られるものであるが、中皿の内周縁は螺軸に螺着させているためその部分のシール性が外周縁部と比較して劣るのは否めない。この種の容器では一般に高粘度の液を収納するため若干シール性に劣る場合でも対応できるものではあるが、気温の変化等により粘度が変化する場合もあり、より充分な対策が要望される。
【0006】
本発明は上記した点に鑑みてなされたもので、中皿内周縁部のシール性をより向上させ、しかも操作機能の低下を招くことなく向上させることができて取り扱い操作も容易であり、構造も簡単な中皿の上昇機構を備えた容器を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の容器は、容器体と、操作ハンドルと、螺軸と、中皿とを備えている。
【0008】
容器体は合成樹脂等により形成され、下部から上部に亘り同形,同サイズの内周面を備えたものが使用される。また、有頂で頂部に吐出孔を設けたものが使用される。
【0009】
操作ハンドルは合成樹脂等により形成され、容器体内に立設した螺軸を回転させるためのものであり、外部からの回転操作が可能に容器体の底部に回転可能に装着される。その形状は種々採用できるが、例えば、容器体裏面に回転可能に基板を嵌合させ、該基板の外周縁を容器体外周底部に回転可能に臨ませる形態や、基板の周縁部より延設した操作筒部を容器体外周に回転可能に配置したものが好ましく採用できる。
【0010】
螺軸は合成樹脂或いはエラストマー等により形成され、容器体内中央部に立設させて操作ハンドルの回転により回転して中皿を上下動させる。螺軸は操作ハンドルと一体に形成しても、或いは別体に形成して嵌着,融着,接着等の適宜手段により固定する如く構成しても良い。
【0011】
中皿は合成樹脂或いはエラストマー等により形成されたもので、螺軸の外周に内周縁を螺着するとともに、外周縁を容器体内周面に摺動可能に嵌合して容器体内下部に装着している。そして操作ハンドルの回転による螺軸の回転で上昇或いは下降する如く装着されている。即ち、螺合部分の摩擦力に抗する力が周縁部に働く如く構成しており、容器体内周面と中皿外周縁部との摩擦力が螺合部分の摩擦力より充分大きく作用し、しかも、螺合部分で生じる上昇力或いは下降力が容器体内周面と中皿外周縁部との摩擦力より充分大きい為、螺軸の回転により中皿は上昇或いは下降する。
【0012】
中皿の具体的形状としては、内周面に螺条を設けた筒部を内周縁部に備え、外周縁部に容器体内周面に摺動可能に嵌合する摺動部を備え、螺筒部と摺動部とを底板部で連結した形態のものが採用される。また、中皿にフィンを形成する場合には、この種中皿を形成する一般的な合成樹脂、例えば、ポリオレフィン系樹脂等で形成しても充分効果を発揮するが、内周縁部の一部又は全部を軟質材形成部で構成して、その部分にフィンを形成すると良い。軟質材形成部は合成ゴム等のエラストマーで形成すると良い。
【0013】
本発明では螺軸外周に設けた雄螺条及び/又は中皿内周に設けた雌螺条に、螺合した雄螺条及び雌螺条の間に生じる隙間を閉塞縦断するフィンを突設している。螺合した雄螺条及び雌螺条の間に生じる隙間dは、例えば、図2に示す如く、雌螺条50の螺子山の頂部50t と対向する雄螺条42の螺子山間の底部42b との間、それに連続する雌螺条50上側面と雄螺条42下側面との間、及びそれに連続する雌螺条50の螺子山間の底部50b と対向する雄螺条の頂部42t との間に形成される。
【0014】
従って、雄螺条にのみフィンを突設する場合、雄螺条の螺子山の頂部よりその下側面を通り下方に隣接する螺子山との間の底部に至る部分に突設した単位フィンを、雌螺条の下端部から上端部に亘り間隔をあけて複数配置する。単位フィンを設ける下端部は、少なくとも最下降位置の中皿の雌螺子と螺着している位置に設ける。また、各単位フィンの設置間隔としては、一つの単位フィン外縁と雌螺条との当接が外れる前に次の単位フィンの外縁が雌螺条と当接する間隔が好ましい。各単位フィンはその外縁が対向する雌螺条の外面に密接して隙間を閉塞する大きさを必要とする。
【0015】
また、雌螺条にのみフィンを突設する場合、雌螺条の螺子山の頂部よりその上側面を通り上方に隣接する螺子山との間の底部に至る部分に突設した単位フィンを、少なくとも一箇所設ける。この場合少なくとも一箇所で用は足りるが、容器使用開始から終了までの間をそのフィンで賄うため、強度が要求される。従って、単位フィンを複数設けると好ましく、また、各単位フィンの厚みを比較的厚く構成することが好ましい。
【0016】
また、雄螺条及び雌螺条の両方にフィンを突設する場合は、雌螺条に設けたフィンが雄螺条に設けたフィンを乗り越えていく形態とすることが好ましく、従って、その場合には、雌螺条に設けたフィンの厚みを雄螺条に設けたフィンの厚みより充分厚く形成し、また、雄螺条に設けたフィンは雌螺条のフィンが乗り越え易いように、上下端縁を雄螺条と切り離して揺動可能な形態とすると良い。
【0017】
第1の手段として、以下の通り構成した。即ち、頂部に吐出孔22を開口するとともに、下部から上部に亘り同形、同サイズの内周面を備えた容器体Aと、容器体Aの底部に回転可能に且つ容器体A外部からの回転操作が可能に設けるとともに、容器体A内に螺軸Cを立設した操作ハンドルBと、螺軸Cに内周縁を螺着するとともに、外周縁を容器体A内周面に摺動可能に嵌合させた中皿Dとを備え、操作ハンドルBを回転させることによる螺軸Cの回転で中皿Dが上昇する如く構成した容器であって、螺軸C外周に設けた雄螺条42及び/又は中皿D内周に設けた雌螺条50に、螺合した雄螺条42及び雌螺条50の間に生じる隙間dを閉塞縦断するフィンFを突設した。
【0018】
第2の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段に於いて、雌螺条50にフィンFを突設する場合、雌螺条50の螺子山の頂部50t よりその上側面を通り上方に隣接する螺子山との間の底部50b に至る部分に突設した単位フィンfを、少なくとも一箇所設けて構成した。
【0019】
第3の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第2の手段に於いて、中皿Dが、軟質材で別体に形成して内周縁部の一部又は全部を構成する軟質材形成部D2を備え、該軟質材形成部D2にフィンFを形成した。
【発明の効果】
【0020】
本発明の容器は、中皿D内周縁部の螺軸Cとの螺着部分のシール性が極めて良好であり、保管時等にその部分から液が下方へ漏出する等の不都合を確実に防止できる。特に高粘度の収納液が雰囲気温度の影響で著しく粘度を下げた場合にも充分なシール性を発揮できるものである。また、その構造も従来品と比較してフィンFを突設するという極めて簡単なものであり、更に、取り扱い操作も従来品と変わらず円滑に行えるものである。
【0021】
雌螺条50にフィンFを突設する場合、雌螺条50の螺子山の頂部50t よりその上側面を通り上方に隣接する螺子山との間の底部50b に至る部分に突設した単位フィンfを、少なくとも一箇所設けた場合は、単位フィンfの数を極力少なくすることができるという製造上のメリットがあり、また、フィンFにより雄螺条42及び雌螺条50間の隙間dに存在する液を掻き上げていくため、中皿移動時にもフィンF下方への液の移行を確実に防止でき、螺合部分のシールをより確実に行える利点がある。
【0022】
中皿Dが、軟質材で別体に形成して内周縁部の一部又は全部を構成する軟質材形成部D2を備え、該軟質材形成部D2にフィンFを形成した場合には、フィンFがその外周縁を雄螺条42に充分フィットして摺動させることができ、更に高性能のシール性を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施例の形態を図面を参照して説明する。
【0024】
図1乃至図4は本発明の中皿の上昇機構を備えた容器(以下、単に容器という)を示し、図中1は容器を示す。該容器1は、容器体Aと、操作ハンドルBと、螺軸Cと、中皿Dとを備えている。
【0025】
容器体Aは合成樹脂により形成されたもので、胴部形成部材A1と、頂部形成部材A2とから構成されており、胴部形成部材A1は、中央部に窓孔2を穿設した底壁3周縁より円筒状の周壁4を立設している。周壁4の上面には係止筒5を立設している。底壁3の中央部は操作ハンドルB装着用のスペースを得るため環状に陥没させた陥没部3aを設けており、また、内周縁部には周方向等間隔に複数の切溝を縦設している。
【0026】
頂部形成部材A2は、係止筒5外周に突条相互の係合により抜け出しを防止して嵌合した嵌合筒20の上端より頂壁21を延設し、頂壁21中央に吐出孔22を穿設している。頂壁21の周縁部に垂設したシール筒23を係止筒5の内周に液密に嵌合させている。
【0027】
操作ハンドルBは、容器体Aの裏面に回転可能に装着させる基板30外周縁部より短い操作筒部31を起立し、基板30中央部には内周上部に係止突条32を突周設した支持筒33を立設している。また、支持筒33内の中央部に支持筒33上方へ突出して支柱34を立設し、支柱34の外面から放射状に複数の係止リブ35を突設している。
【0028】
螺軸Cは、中空棒状の本体40の下端部に連結部41を備え、本体40の外周に雄螺条42を周設している。連結部41は、上面中央より本体40を立設した基板部43と、基板部43下面より垂設した嵌合筒44とで構成している。嵌合筒44の外周下部には係合突条45を突周設し、内周には周方向複数の係合リブ46を放射状に突設している。そして、係合突条45を係止突条32下面に乗り越えさせて上方への抜け出しの防止を図るとともに、各係合リブ46を操作ハンドルBの係止リブ35間に嵌合して相互の回動を防止して支持筒33内周に嵌合筒44を嵌合し、また、支柱34の上端を本体40内部下端部に嵌合させ両者を一体化させ、基板部43を容器体底壁3の内周縁上面に回動可能に当接させて下方への抜け出しを防止している。
【0029】
中皿Dは、内周縁部に設けた雌螺条50を螺軸Cの雄螺条42と螺合させ、外周縁を容器体Aの内周面に摺動可能に嵌合させて装着している。また、内周縁部の一部を低密度合成ゴムで形成された軟質材形成部D2で構成しており、それ以外の部分である本体部D1をポリプロピレンで形成している。本体部D1は、内筒部53の上端縁より外方へ底板部54を延設し、底板部54の外周縁に摺動部55を連結している。内筒部53は上端部を軟質材形成部D2を固定するため外方へ拡径した拡径部53a に形成しており、また、底板部54の外周縁部は垂壁部54を介して下方へレベルダウンさせている。拡径部53a 直下の内筒部53内面には雌螺条50を突周設している。軟質材形成部D2は拡径部53a 内側に形成された環状凹部内に融着或いは接着等の適宜固着手段により固定されたリング状をなし、内周面に内筒部の雌螺条50と連続する軟質材形成部の雌螺条50を突周設している。この場合の連続とは必ずしも螺子山同士が連続している状態ではなく、螺軸Cの雄螺条42と螺合できる状態をいっているのであり、両者は離間状態にある。
【0030】
中皿Dの雌螺条50には、螺合した雄螺条42と雌螺条50との隙間dを閉塞縦断するフィンFを一体に突設している。フィンFは図2に拡大図で示す如く、雌螺条50の螺子山の頂部50t からその上側面を通り上方に隣接する螺子山との間の底部50b に至る部分に突設した単位フィンfを、図4に示す如く、それぞれ90°離間位置に連続して8箇所設けており、これらによりフィンFを構成している。
【0031】
上記の如く構成した容器1は、雄螺条42と雌螺条50との間に常時フィンFが存在するため、保管中に容器周囲を取り巻く雰囲気温度が上昇して収納液の流動性が増しても螺合部分から下方への液の移行を防止できる。また、図1の状態から操作ハンドルBを回転させれば螺軸Cが回転し、螺軸Cの雄螺条42と中皿Dの雌螺条50が作用して中皿Dが上方へ移行し、中皿D上方の収納物が吐出孔22より吐出される。この際、フィンFにより雄螺条42及び雌螺条50の隙間dを閉塞しているため、その部分にある液がフィンFにより掻き上げられてその下方へは移行しない。
【0032】
図5乃至図7は他の例を示し、図1の例に於いて、中皿DにフィンFを形成する代わりに螺軸CにフィンFを形成している。従って、中皿は軟質材形成部がなく一体に形成されている。本例では、図6に示す如く、雄螺条42の螺子山の頂部42t よりその下側面を通り下方に隣接する螺子山との間の底部42b に至る部分に突設した単位フィンfを、図7に示す如く、それぞれ90°離間位置に連続して雄螺条42の下端部から上端部に亘り配置してフィンFを構成している。その他の構成は図1の例と同様であるため、同符号を付して説明を省略する。
【0033】
この場合の容器1も同様に、保管中に収納液の流動性が増加してもフィンFの存在で液螺合部分から下方への液の移行を防止できる。また、図5の状態から操作ハンドルBを回転させれば螺軸Cが回転し、螺軸Cの雄螺条42と中皿Dの雌螺条50が作用して中皿Dが上方へ移行し、中皿D上方の収納物が吐出孔22より吐出される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明中皿の上昇機構を備えた容器の縦断面図である。(実施例1)
【図2】本発明容器の中皿螺合部分の要部拡大断面図である。(実施例1)
【図3】本発明容器の中皿の要部拡大横断面図である。(実施例1)
【図4】本発明容器の中皿の拡大断面図である。(実施例1)
【図5】本発明中皿の上昇機構を備えた容器の縦断面図である。(実施例2)
【図6】本発明容器の中皿螺合部分の要部拡大断面図である。(実施例2)
【図7】本発明容器の螺軸の要部拡大断面図である。(実施例2)
【符号の説明】
【0035】
1…中皿の上昇機構を備えた容器
A…容器体
A1…胴部形成部材
2…窓孔,3…底壁,3a…陥没部,4…周壁,5…係止筒
A2…頂部形成部材
20…嵌合筒,21…頂壁,22…吐出孔,23…シール筒
B…操作ハンドル
30…基板,31…操作筒部,32…係止突条,33…支持筒,34…支柱,35…係止リブ
C…螺軸
40…本体,41…連結部,42…雄螺条,42t …頂部,42b …底部,43…基板部,
44…嵌合筒,45…係合突条,46…係合リブ
D…中皿
D1…本体部,D2…軟質材形成部
50…雌螺条,50t …頂部,50b …底部,53…内筒部,53a …拡径部,54…底板部, 54a …垂壁部,55…摺動部,d…隙間,F…フィン,f…単位フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂部に吐出孔22を開口するとともに、下部から上部に亘り同形、同サイズの内周面を備えた容器体Aと、容器体Aの底部に回転可能に且つ容器体A外部からの回転操作が可能に設けるとともに、容器体A内に螺軸Cを立設した操作ハンドルBと、螺軸Cに内周縁を螺着するとともに、外周縁を容器体A内周面に摺動可能に嵌合させた中皿Dとを備え、操作ハンドルBを回転させることによる螺軸Cの回転で中皿Dが上昇する如く構成した容器であって、螺軸C外周に設けた雄螺条42及び/又は中皿D内周に設けた雌螺条50に、螺合した雄螺条42及び雌螺条50の間に生じる隙間dを閉塞縦断するフィンFを突設したことを特徴とする中皿の上昇機構を備えた容器。
【請求項2】
雌螺条50にフィンFを突設する場合、雌螺条50の螺子山の頂部50t よりその上側面を通り上方に隣接する螺子山との間の底部50b に至る部分に突設した単位フィンfを、少なくとも一箇所設けて構成してなる請求項1記載の中皿の上昇機構を備えた容器。
【請求項3】
中皿Dが、軟質材で別体に形成して内周縁部の一部又は全部を構成する軟質材形成部D2を備え、該軟質材形成部D2にフィンFを形成してなる請求項2記載の中皿の上昇機構を備えた容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate