中空エンジンバルブの製造方法
【課題】充填片等の封止材を不要とし、工数を削減することにより、コストを低減することのできる中空エンジンバルブの製造方法を提供する。
【解決手段】弁軸部12の一端部に弁傘部14を備える中実状のバルブ素材11に対して一端側から軸方向に延びる中空穴16を穴あけ加工した後、バルブ素材11における中空穴16の開口端の周辺部の素材自体を変形させることにより該開口端の封口処理を行う。バルブ素材11には、中空穴16の開口端面側に突出する封口処理用のボス部15が形成される。
【解決手段】弁軸部12の一端部に弁傘部14を備える中実状のバルブ素材11に対して一端側から軸方向に延びる中空穴16を穴あけ加工した後、バルブ素材11における中空穴16の開口端の周辺部の素材自体を変形させることにより該開口端の封口処理を行う。バルブ素材11には、中空穴16の開口端面側に突出する封口処理用のボス部15が形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気バルブ、排気バルブ等に用いられる中空エンジンバルブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の吸気バルブや排気バルブでは、バルブ内部を中空にして軽量化を図るとともに冷却効果を向上する中空エンジンバルブが知られている。このような中空エンジンバルブの製造方法としては、例えば特許文献1(以下、従来例という)に記載されたものがある。従来例は、弁軸部の一端部に弁傘部を備える中実状のバルブ素材に対して一端側から軸方向に延びる中空穴を穴あけ加工した後、中空穴の開口端に充填片を挿入し、中空穴の開口端を溶接により気密に閉鎖している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−180272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来例にあっては、充填片等の封止材が必要である。また、封止材を中空穴に挿入する工程、及び、中空穴を閉鎖する溶接工程が必要であるため工数が多い。このため、コストアップを余儀なくされるという問題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、充填片等の封止材を不要とし、工数を削減することにより、コストを低減することのできる中空エンジンバルブの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、特許請求の範囲に記載された構成を要旨とする中空エンジンバルブの製造方法により解決することができる。
請求項1に記載された中空エンジンバルブの製造方法によると、弁軸部の一端部に弁傘部を備える中空エンジンバルブの製造方法であって、弁軸部の一端部に弁傘部を備える中実状のバルブ素材に対して一端側から軸方向に延びる中空穴を穴あけ加工した後、前記バルブ素材における中空穴の開口端の周辺部の素材自体を変形させることにより該開口端の封口処理を行うことを特徴とする。このように構成すると、従来例で必要とされた充填片等の封止材を不要とし、その封止材に係る工数を削減することにより、コストを低減することができる。
【0007】
請求項2に記載された中空エンジンバルブの製造方法によると、前記バルブ素材には、前記中空穴の開口端面側になる面に突出されかつ前記中空穴の開口端の封口処理に際して変形される封口処理用の余肉部が形成されている。このように構成すると、バルブ素材に余肉部を形成することにより、中空穴の封口処理に必要な素材の体積を容易に確保することができる。
【0008】
請求項3に記載された中空エンジンバルブの製造方法によると、前記余肉部は、先細り形状に形成されている。このように構成すると、例えばバルブ素材を鍛造する場合において、成形時に鍛造型に加わる応力が分散されることにより、鍛造型の寿命を向上することができる。
【0009】
請求項4に記載された中空エンジンバルブの製造方法によると、前記封口処理は、前記素材自体を塑性変形させる塑性加工、前記素材自体を加熱源により加熱溶融させる加熱溶融処理の少なくとも1つを行う。このように構成すると、素材自体を塑性変形させる塑性加工、素材自体を加熱源により加熱溶融させる加熱溶融処理の少なくとも1つにより、封口処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態1にかかるエンジンバルブを示す断面図である。
【図2】エンジンバルブの製造方法を示す工程図である。
【図3】封口処理方法を示す説明図である。
【図4】実施形態2にかかるエンジンバルブの製造方法を示す工程図である。
【図5】封口処理方法を示す説明図である。
【図6】実施形態3にかかるエンジンバルブの製造方法を示す工程図である。
【図7】封口処理方法を示す説明図である。
【図8】実施形態4にかかる封口処理方法を示す説明図である。
【図9】実施形態5にかかる封口処理方法を示す説明図である。
【図10】実施形態6にかかる封口処理方法を示す説明図である。
【図11】実施形態7にかかる封口処理方法を示す説明図である。
【図12】実施形態8にかかる封口処理方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための実施形態について図面を用いて説明する。
【0012】
[実施形態1]
本実施形態にかかる製造方法によって製造された中空エンジンバルブについて説明する。図1は中空エンジンバルブを示す断面図である。
図1に示すように、中空エンジンバルブ10は、弁軸部12と、その弁軸部12の一端部(図1において上端部)に形成された弁傘部14とを備えている。中空エンジンバルブ10には、弁傘部14の端面(上端面)14a側から軸方向(図1において下方)に延びる直線状の中空穴16が形成されている。中空穴16の開口端(図1における上端部)は、閉鎖部18によって閉鎖されている。なお、図中、12aは弁軸部12の端面(下端面)を示す。
【0013】
次に、前記中空エンジンバルブ10の製造方法について説明する。図2はエンジンバルブの製造方法を示す工程図である。
図2に示すように、本製造方法は、鍛造工程(図2(a)参照)と、穴あけ工程(図2(b)参照)と、封口処理工程(図2(c)参照)とを備える。以下、順に説明する。
【0014】
[鍛造工程]
図2(a)に示すように、弁軸部12の一端部(上端部)に弁傘部14を備える中実状のバルブ素材11を準備する。バルブ素材11は、例えば、軸状素材(図示省略)をアップセット鍛造することによって形成される。また、バルブ素材11の弁傘部14の端面(上端面)14aの中央部には、同心状に突出するボス部15が形成されている。ボス部15は、円柱形状に形成されている。なお、バルブ素材11の弁傘部14の端面(上端面)14aは本明細書でいう「中空穴の開口端面側になる面」に相当する。また、ボス部15は本明細書でいう「封口処理用の余肉部」に相当する。
【0015】
[穴あけ工程]
図2(b)に示すように、前記バルブ素材11には、弁傘部14の端面14a側すなわちボス部15の上端面から軸方向に延びる有底状の中空穴16が同心状に穴あけ加工される。穴あけ加工には、例えば、ドリルが用いられる。また、中空穴16の穴径16dは、ボス部15の外径15d(図2(a)参照)よりも小さい値に設定されている。このため、ボス部15は、中空穴16の形成によって円筒形状に形成されている。
【0016】
[封口処理工程]
図2(c)に示すように、前記バルブ素材11における中空穴16の開口端の封口処理が行われることにより、中空エンジンバルブ10が得られる。封口処理は、中空穴16の開口端の周辺部の素材自体に相当するボス部15(図2(b)参照)を閉鎖部18として変形させることにより、該開口端を閉鎖すなわち封口する処理である。また、封口処理は、素材自体(ボス部15)を塑性変形させる塑性加工、素材自体(ボス部15)を加熱源により加熱溶融させる加熱溶融処理の少なくとも1つを行うことである。また、塑性加工は、冷間あるいは熱間で行うことができる。また、塑性加工としては、かしめ加工を用いることができる。また、加熱溶融処理の加熱源としては、レーザ、電子ビーム、プラズマ等を用いることができる。また、封口処理によってボス部15が弁傘部14の端面14aと同一面をなすように平坦化されている。なお、封口処理による閉鎖部18は、弁傘部14の端面14aに対して凸状をなすように形成されてもよいし、あるいは、凹状をなすように形成されてもよい。
【0017】
図3は封口処理方法を示す説明図である。図3に示すように、前記封口処理を行う場合には、バルブ素材11を斜めにした状態で回転軸Lを中心として軸回りに回転させながら、ボス部15に対して塑性加工にかかる加圧力を加えたり、加熱溶融処理にかかる加熱源を照射したりするとよい。なお、図3中、矢印Yは、塑性加工にかかる加圧方向、又は、加熱源の照射方向を指している。
【0018】
前記中空エンジンバルブ10の製造方法によると、従来例で必要とされた充填片等の封止材を不要とし、その封止材に係る工数を削減することができる。これにより、コストを低減することができる。
【0019】
また、バルブ素材11には、中空穴16の開口端面側になる面(端面14a)に突出されかつ中空穴16の開口端の封口処理に際して変形される封口処理用のボス部15が形成されている。したがって、バルブ素材11にボス部15を形成することにより、中空穴16の封口処理に必要な素材の体積を確保することができる。このことは、弁傘部14の端面14aを平坦化する場合に有効である。
【0020】
また、封口処理は、素材自体(ボス部15)を塑性変形させる塑性加工、素材自体(ボス部15)を加熱源により加熱溶融させる加熱溶融処理の少なくとも1つを行う。したがって、素材自体(ボス部15)を塑性変形させる塑性加工、素材自体(ボス部15)を加熱源により加熱溶融させる加熱溶融処理の少なくとも1つにより、封口処理を行うことができる。また、塑性加工と加熱溶融処理とを同時に行ってもよい。
【0021】
[実施形態2]
実施形態2を説明する。本実施形態は、前記実施形態1に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。図4はエンジンバルブの製造方法を示す工程図である。
図4(a)に示すように、本実施形態は、前記実施形態1のバルブ素材11のボス部15(図2(a)参照)をボス部25に変更したものである。ボス部25は、先細り形状、例えば円錐形状に形成されている。なお、ボス部25は本明細書でいう「封口処理用の余肉部」に相当する。
【0022】
図4(b)に示すように、前記バルブ素材11に穴あけ加工される中空穴16の穴径16dは、ボス部25の大径側の外径25d(図4(a)参照)よりも小さい値に設定されている。このため、ボス部25は、中空穴16の形成によって断面直角三角形状の円錐筒形状に形成されている。
【0023】
本実施形態では、封口処理の1つのかしめ加工として、ローリングかしめ装置(図示省略)を用いてローリングかしめ(スピンかしめ、スピニング等とも呼ばれる)を行う場合を例示する。図5は封口処理方法を示す説明図である。
図5に示すように、バルブ素材11をローリングかしめ装置の下型(図示省略)に支持した状態で、バルブ素材11に対して同心状に配置された円柱形状のポンチ27を回転軸Lを中心として軸回りに旋回(矢印R参照)させながら、ポンチ27を下動させることにより、ポンチ27の先端面(下端面)27aをバルブ素材11のボス部25に押付ける(矢印Y参照)。これにより、ボス部25が圧潰されることによって、バルブ素材11の中空穴16の開口端が封口される(図4(c)参照)。このとき、ボス部25がポンチ27の旋回による摩擦熱で溶融させると、ボス部25を中空穴16内へ容易に圧潰することができる。なお、ポンチ27の先端面27aは、軸線に直交する平面に形成されている。また、ローリングかしめは、前記実施形態1の封口処理に適用してもよい。
【0024】
本実施形態によると、ボス部25が先細り形状すなわち円錐形状に形成されている。したがって、例えばバルブ素材11(図4(a)参照)を鍛造する場合において、成形時に鍛造型に加わる応力が分散されることにより、鍛造型の寿命を向上することができる。詳しくは、例えばボス部25を寸胴形状すなわち円柱形状に形成する場合、円柱形状に対応する鍛造型の成形凹部の内周面と内底面との境界に成形時の応力が集中することにより、鍛造型が破損しやすく、寿命が短くなるおそれがある。しかし、本実施形態のように、ボス部25を先細り形状に形成すると、成形時に鍛造型に加わる応力が分散されることにより、鍛造型の寿命を向上することができる。ひいては、コストを低減することができる。
【0025】
[実施形態3]
実施形態3を説明する。本実施形態は、前記実施形態2に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。図6はエンジンバルブの製造方法を示す工程図である。
図6(a)に示すように、本実施形態は、前記実施形態2のバルブ素材11のボス部25(図2(a)参照)をボス部35に変更したものである。ボス部35は、先細り形状、例えば円錐台形状に形成されている。なお、ボス部35は本明細書でいう「封口処理用の余肉部」に相当する。
【0026】
図6(b)に示すように、前記バルブ素材11に穴あけ加工される中空穴16の穴径16dは、ボス部35の小径側(先端側)の外径35d(図6(a)参照)よりも小さい値に設定されている。このため、ボス部35は、中空穴16の形成によって断面台形形状の円錐台筒形状に形成されている。
【0027】
本実施形態においても、封口処理の1つのかしめ加工として、前記実施形態2と同様、ローリングかしめを行う(図5参照)。図7は封口処理方法を示す説明図である。
図7に示すように、バルブ素材11をローリングかしめ装置の下型(図示省略)に支持した状態で、バルブ素材11に対して同心状に配置された円柱形状のポンチ27を回転軸Lを中心として軸回りに旋回(矢印R参照)させながら、ポンチ27を下動させることにより、ポンチ27の先端面27aをバルブ素材11のボス部35に押付ける(矢印Y参照)。これにより、ボス部35が圧潰されることによって、バルブ素材11の中空穴16の開口端が封口される(図6(c)参照)。なお、ボス部35の小径側の外径35d(図6(a)参照)は、中空穴16の穴径16dよりも小さくしてもよい。この場合、中空穴16の穴あけ加工後におけるボス部35は、前記実施形態2のボス部25(図4(b)参照)と同様、断面直角三角形状の円錐筒形状に形成されることになる。
【0028】
[実施形態4]
実施形態4を説明する。本実施形態は、前記実施形態2(図5参照)に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。図8は封口処理方法を示す説明図である。
図8に示すように、本実施形態は、ポンチ27の先端面(下端面)27bが、軸線(回転軸L)に対して傾斜する平面に形成されている。本実施形態によると、ボス部25のかしめ時において、ポンチ27の先端面27bにより、ボス部25を回転軸L側へ押圧することができる。
【0029】
[実施形態5]
実施形態5を説明する。本実施形態は、前記実施形態2(図5参照)に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。図9は封口処理方法を示す説明図である。
図9に示すように、本実施形態は、ポンチ27の軸線L1を、回転軸Lに対して偏心させたものである。ポンチ27は回転軸Lを中心として旋回する。本実施形態によると、前記実施形態2(図5参照)と比べて、ポンチ27の外径(軸径)を小径化することができる。
【0030】
[実施形態6]
実施形態6を説明する。本実施形態は、前記実施形態5(図9参照)に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。図10は封口処理方法を示す説明図である。
図10に示すように、本実施形態は、ポンチ27の先端面(下端面)27bが、軸線L1に対して傾斜する平面に形成されている。また、ポンチ27の先端面27bは、回転軸L側を高く、その反対側を低くするように傾斜されている。本実施形態によると、ボス部25のかしめ時において、ポンチ27の先端面27bにより、ボス部25を回転軸L側へ押圧することができる。
【0031】
[実施形態7]
実施形態7を説明する。本実施形態は、前記実施形態5(図9参照)に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。図11は封口処理方法を示す説明図である。
図11に示すように、本実施形態は、ポンチ27の軸線L1を回転軸Lに対して傾斜させたものである。これにより、また、ポンチ27の先端面27aは、回転軸L側を高く、その反対側を低くするように傾斜されている。本実施形態によると、ボス部25のかしめ時において、ポンチ27の先端面27aにより、ボス部25を回転軸L側へ押圧することができる。
【0032】
[実施形態8]
実施形態8を説明する。本実施形態は、前記実施形態2(図5参照)に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。図12は封口処理方法を示す説明図である。
図12に示すように、本実施形態は、ポンチ27の先端面(下端面)27cを、凹型円錐状面に形成したものである。本実施形態によると、ボス部25のかしめ時において、ポンチ27の先端面27cにより、ボス部25を回転軸L側へ押圧することができる。
【0033】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、前記実施形態では、バルブ素材11に弁傘部14の端面14a側から軸方向に延びる中空穴16を穴あけ加工したが、バルブ素材11に弁軸部12の端面12a側(図1において下端面側)から軸方向に延びる中空穴16を穴あけ加工してもよい。また、中空エンジンバルブ10の中空穴16に、空気の代わりに、ナトリウム(Na)を封入することにより伝熱特性を向上させてもよい。また、ボス部15は、必要に応じて設けられるものであり、省略することもできる。
【符号の説明】
【0034】
10…中空エンジンバルブ
11…バルブ素材
12…弁軸部
14…弁傘部
15…ボス部(余肉部)
16…中空穴
18…閉鎖部
25…ボス部(余肉部)
35…ボス部(余肉部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気バルブ、排気バルブ等に用いられる中空エンジンバルブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の吸気バルブや排気バルブでは、バルブ内部を中空にして軽量化を図るとともに冷却効果を向上する中空エンジンバルブが知られている。このような中空エンジンバルブの製造方法としては、例えば特許文献1(以下、従来例という)に記載されたものがある。従来例は、弁軸部の一端部に弁傘部を備える中実状のバルブ素材に対して一端側から軸方向に延びる中空穴を穴あけ加工した後、中空穴の開口端に充填片を挿入し、中空穴の開口端を溶接により気密に閉鎖している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−180272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来例にあっては、充填片等の封止材が必要である。また、封止材を中空穴に挿入する工程、及び、中空穴を閉鎖する溶接工程が必要であるため工数が多い。このため、コストアップを余儀なくされるという問題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、充填片等の封止材を不要とし、工数を削減することにより、コストを低減することのできる中空エンジンバルブの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、特許請求の範囲に記載された構成を要旨とする中空エンジンバルブの製造方法により解決することができる。
請求項1に記載された中空エンジンバルブの製造方法によると、弁軸部の一端部に弁傘部を備える中空エンジンバルブの製造方法であって、弁軸部の一端部に弁傘部を備える中実状のバルブ素材に対して一端側から軸方向に延びる中空穴を穴あけ加工した後、前記バルブ素材における中空穴の開口端の周辺部の素材自体を変形させることにより該開口端の封口処理を行うことを特徴とする。このように構成すると、従来例で必要とされた充填片等の封止材を不要とし、その封止材に係る工数を削減することにより、コストを低減することができる。
【0007】
請求項2に記載された中空エンジンバルブの製造方法によると、前記バルブ素材には、前記中空穴の開口端面側になる面に突出されかつ前記中空穴の開口端の封口処理に際して変形される封口処理用の余肉部が形成されている。このように構成すると、バルブ素材に余肉部を形成することにより、中空穴の封口処理に必要な素材の体積を容易に確保することができる。
【0008】
請求項3に記載された中空エンジンバルブの製造方法によると、前記余肉部は、先細り形状に形成されている。このように構成すると、例えばバルブ素材を鍛造する場合において、成形時に鍛造型に加わる応力が分散されることにより、鍛造型の寿命を向上することができる。
【0009】
請求項4に記載された中空エンジンバルブの製造方法によると、前記封口処理は、前記素材自体を塑性変形させる塑性加工、前記素材自体を加熱源により加熱溶融させる加熱溶融処理の少なくとも1つを行う。このように構成すると、素材自体を塑性変形させる塑性加工、素材自体を加熱源により加熱溶融させる加熱溶融処理の少なくとも1つにより、封口処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態1にかかるエンジンバルブを示す断面図である。
【図2】エンジンバルブの製造方法を示す工程図である。
【図3】封口処理方法を示す説明図である。
【図4】実施形態2にかかるエンジンバルブの製造方法を示す工程図である。
【図5】封口処理方法を示す説明図である。
【図6】実施形態3にかかるエンジンバルブの製造方法を示す工程図である。
【図7】封口処理方法を示す説明図である。
【図8】実施形態4にかかる封口処理方法を示す説明図である。
【図9】実施形態5にかかる封口処理方法を示す説明図である。
【図10】実施形態6にかかる封口処理方法を示す説明図である。
【図11】実施形態7にかかる封口処理方法を示す説明図である。
【図12】実施形態8にかかる封口処理方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための実施形態について図面を用いて説明する。
【0012】
[実施形態1]
本実施形態にかかる製造方法によって製造された中空エンジンバルブについて説明する。図1は中空エンジンバルブを示す断面図である。
図1に示すように、中空エンジンバルブ10は、弁軸部12と、その弁軸部12の一端部(図1において上端部)に形成された弁傘部14とを備えている。中空エンジンバルブ10には、弁傘部14の端面(上端面)14a側から軸方向(図1において下方)に延びる直線状の中空穴16が形成されている。中空穴16の開口端(図1における上端部)は、閉鎖部18によって閉鎖されている。なお、図中、12aは弁軸部12の端面(下端面)を示す。
【0013】
次に、前記中空エンジンバルブ10の製造方法について説明する。図2はエンジンバルブの製造方法を示す工程図である。
図2に示すように、本製造方法は、鍛造工程(図2(a)参照)と、穴あけ工程(図2(b)参照)と、封口処理工程(図2(c)参照)とを備える。以下、順に説明する。
【0014】
[鍛造工程]
図2(a)に示すように、弁軸部12の一端部(上端部)に弁傘部14を備える中実状のバルブ素材11を準備する。バルブ素材11は、例えば、軸状素材(図示省略)をアップセット鍛造することによって形成される。また、バルブ素材11の弁傘部14の端面(上端面)14aの中央部には、同心状に突出するボス部15が形成されている。ボス部15は、円柱形状に形成されている。なお、バルブ素材11の弁傘部14の端面(上端面)14aは本明細書でいう「中空穴の開口端面側になる面」に相当する。また、ボス部15は本明細書でいう「封口処理用の余肉部」に相当する。
【0015】
[穴あけ工程]
図2(b)に示すように、前記バルブ素材11には、弁傘部14の端面14a側すなわちボス部15の上端面から軸方向に延びる有底状の中空穴16が同心状に穴あけ加工される。穴あけ加工には、例えば、ドリルが用いられる。また、中空穴16の穴径16dは、ボス部15の外径15d(図2(a)参照)よりも小さい値に設定されている。このため、ボス部15は、中空穴16の形成によって円筒形状に形成されている。
【0016】
[封口処理工程]
図2(c)に示すように、前記バルブ素材11における中空穴16の開口端の封口処理が行われることにより、中空エンジンバルブ10が得られる。封口処理は、中空穴16の開口端の周辺部の素材自体に相当するボス部15(図2(b)参照)を閉鎖部18として変形させることにより、該開口端を閉鎖すなわち封口する処理である。また、封口処理は、素材自体(ボス部15)を塑性変形させる塑性加工、素材自体(ボス部15)を加熱源により加熱溶融させる加熱溶融処理の少なくとも1つを行うことである。また、塑性加工は、冷間あるいは熱間で行うことができる。また、塑性加工としては、かしめ加工を用いることができる。また、加熱溶融処理の加熱源としては、レーザ、電子ビーム、プラズマ等を用いることができる。また、封口処理によってボス部15が弁傘部14の端面14aと同一面をなすように平坦化されている。なお、封口処理による閉鎖部18は、弁傘部14の端面14aに対して凸状をなすように形成されてもよいし、あるいは、凹状をなすように形成されてもよい。
【0017】
図3は封口処理方法を示す説明図である。図3に示すように、前記封口処理を行う場合には、バルブ素材11を斜めにした状態で回転軸Lを中心として軸回りに回転させながら、ボス部15に対して塑性加工にかかる加圧力を加えたり、加熱溶融処理にかかる加熱源を照射したりするとよい。なお、図3中、矢印Yは、塑性加工にかかる加圧方向、又は、加熱源の照射方向を指している。
【0018】
前記中空エンジンバルブ10の製造方法によると、従来例で必要とされた充填片等の封止材を不要とし、その封止材に係る工数を削減することができる。これにより、コストを低減することができる。
【0019】
また、バルブ素材11には、中空穴16の開口端面側になる面(端面14a)に突出されかつ中空穴16の開口端の封口処理に際して変形される封口処理用のボス部15が形成されている。したがって、バルブ素材11にボス部15を形成することにより、中空穴16の封口処理に必要な素材の体積を確保することができる。このことは、弁傘部14の端面14aを平坦化する場合に有効である。
【0020】
また、封口処理は、素材自体(ボス部15)を塑性変形させる塑性加工、素材自体(ボス部15)を加熱源により加熱溶融させる加熱溶融処理の少なくとも1つを行う。したがって、素材自体(ボス部15)を塑性変形させる塑性加工、素材自体(ボス部15)を加熱源により加熱溶融させる加熱溶融処理の少なくとも1つにより、封口処理を行うことができる。また、塑性加工と加熱溶融処理とを同時に行ってもよい。
【0021】
[実施形態2]
実施形態2を説明する。本実施形態は、前記実施形態1に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。図4はエンジンバルブの製造方法を示す工程図である。
図4(a)に示すように、本実施形態は、前記実施形態1のバルブ素材11のボス部15(図2(a)参照)をボス部25に変更したものである。ボス部25は、先細り形状、例えば円錐形状に形成されている。なお、ボス部25は本明細書でいう「封口処理用の余肉部」に相当する。
【0022】
図4(b)に示すように、前記バルブ素材11に穴あけ加工される中空穴16の穴径16dは、ボス部25の大径側の外径25d(図4(a)参照)よりも小さい値に設定されている。このため、ボス部25は、中空穴16の形成によって断面直角三角形状の円錐筒形状に形成されている。
【0023】
本実施形態では、封口処理の1つのかしめ加工として、ローリングかしめ装置(図示省略)を用いてローリングかしめ(スピンかしめ、スピニング等とも呼ばれる)を行う場合を例示する。図5は封口処理方法を示す説明図である。
図5に示すように、バルブ素材11をローリングかしめ装置の下型(図示省略)に支持した状態で、バルブ素材11に対して同心状に配置された円柱形状のポンチ27を回転軸Lを中心として軸回りに旋回(矢印R参照)させながら、ポンチ27を下動させることにより、ポンチ27の先端面(下端面)27aをバルブ素材11のボス部25に押付ける(矢印Y参照)。これにより、ボス部25が圧潰されることによって、バルブ素材11の中空穴16の開口端が封口される(図4(c)参照)。このとき、ボス部25がポンチ27の旋回による摩擦熱で溶融させると、ボス部25を中空穴16内へ容易に圧潰することができる。なお、ポンチ27の先端面27aは、軸線に直交する平面に形成されている。また、ローリングかしめは、前記実施形態1の封口処理に適用してもよい。
【0024】
本実施形態によると、ボス部25が先細り形状すなわち円錐形状に形成されている。したがって、例えばバルブ素材11(図4(a)参照)を鍛造する場合において、成形時に鍛造型に加わる応力が分散されることにより、鍛造型の寿命を向上することができる。詳しくは、例えばボス部25を寸胴形状すなわち円柱形状に形成する場合、円柱形状に対応する鍛造型の成形凹部の内周面と内底面との境界に成形時の応力が集中することにより、鍛造型が破損しやすく、寿命が短くなるおそれがある。しかし、本実施形態のように、ボス部25を先細り形状に形成すると、成形時に鍛造型に加わる応力が分散されることにより、鍛造型の寿命を向上することができる。ひいては、コストを低減することができる。
【0025】
[実施形態3]
実施形態3を説明する。本実施形態は、前記実施形態2に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。図6はエンジンバルブの製造方法を示す工程図である。
図6(a)に示すように、本実施形態は、前記実施形態2のバルブ素材11のボス部25(図2(a)参照)をボス部35に変更したものである。ボス部35は、先細り形状、例えば円錐台形状に形成されている。なお、ボス部35は本明細書でいう「封口処理用の余肉部」に相当する。
【0026】
図6(b)に示すように、前記バルブ素材11に穴あけ加工される中空穴16の穴径16dは、ボス部35の小径側(先端側)の外径35d(図6(a)参照)よりも小さい値に設定されている。このため、ボス部35は、中空穴16の形成によって断面台形形状の円錐台筒形状に形成されている。
【0027】
本実施形態においても、封口処理の1つのかしめ加工として、前記実施形態2と同様、ローリングかしめを行う(図5参照)。図7は封口処理方法を示す説明図である。
図7に示すように、バルブ素材11をローリングかしめ装置の下型(図示省略)に支持した状態で、バルブ素材11に対して同心状に配置された円柱形状のポンチ27を回転軸Lを中心として軸回りに旋回(矢印R参照)させながら、ポンチ27を下動させることにより、ポンチ27の先端面27aをバルブ素材11のボス部35に押付ける(矢印Y参照)。これにより、ボス部35が圧潰されることによって、バルブ素材11の中空穴16の開口端が封口される(図6(c)参照)。なお、ボス部35の小径側の外径35d(図6(a)参照)は、中空穴16の穴径16dよりも小さくしてもよい。この場合、中空穴16の穴あけ加工後におけるボス部35は、前記実施形態2のボス部25(図4(b)参照)と同様、断面直角三角形状の円錐筒形状に形成されることになる。
【0028】
[実施形態4]
実施形態4を説明する。本実施形態は、前記実施形態2(図5参照)に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。図8は封口処理方法を示す説明図である。
図8に示すように、本実施形態は、ポンチ27の先端面(下端面)27bが、軸線(回転軸L)に対して傾斜する平面に形成されている。本実施形態によると、ボス部25のかしめ時において、ポンチ27の先端面27bにより、ボス部25を回転軸L側へ押圧することができる。
【0029】
[実施形態5]
実施形態5を説明する。本実施形態は、前記実施形態2(図5参照)に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。図9は封口処理方法を示す説明図である。
図9に示すように、本実施形態は、ポンチ27の軸線L1を、回転軸Lに対して偏心させたものである。ポンチ27は回転軸Lを中心として旋回する。本実施形態によると、前記実施形態2(図5参照)と比べて、ポンチ27の外径(軸径)を小径化することができる。
【0030】
[実施形態6]
実施形態6を説明する。本実施形態は、前記実施形態5(図9参照)に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。図10は封口処理方法を示す説明図である。
図10に示すように、本実施形態は、ポンチ27の先端面(下端面)27bが、軸線L1に対して傾斜する平面に形成されている。また、ポンチ27の先端面27bは、回転軸L側を高く、その反対側を低くするように傾斜されている。本実施形態によると、ボス部25のかしめ時において、ポンチ27の先端面27bにより、ボス部25を回転軸L側へ押圧することができる。
【0031】
[実施形態7]
実施形態7を説明する。本実施形態は、前記実施形態5(図9参照)に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。図11は封口処理方法を示す説明図である。
図11に示すように、本実施形態は、ポンチ27の軸線L1を回転軸Lに対して傾斜させたものである。これにより、また、ポンチ27の先端面27aは、回転軸L側を高く、その反対側を低くするように傾斜されている。本実施形態によると、ボス部25のかしめ時において、ポンチ27の先端面27aにより、ボス部25を回転軸L側へ押圧することができる。
【0032】
[実施形態8]
実施形態8を説明する。本実施形態は、前記実施形態2(図5参照)に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。図12は封口処理方法を示す説明図である。
図12に示すように、本実施形態は、ポンチ27の先端面(下端面)27cを、凹型円錐状面に形成したものである。本実施形態によると、ボス部25のかしめ時において、ポンチ27の先端面27cにより、ボス部25を回転軸L側へ押圧することができる。
【0033】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、前記実施形態では、バルブ素材11に弁傘部14の端面14a側から軸方向に延びる中空穴16を穴あけ加工したが、バルブ素材11に弁軸部12の端面12a側(図1において下端面側)から軸方向に延びる中空穴16を穴あけ加工してもよい。また、中空エンジンバルブ10の中空穴16に、空気の代わりに、ナトリウム(Na)を封入することにより伝熱特性を向上させてもよい。また、ボス部15は、必要に応じて設けられるものであり、省略することもできる。
【符号の説明】
【0034】
10…中空エンジンバルブ
11…バルブ素材
12…弁軸部
14…弁傘部
15…ボス部(余肉部)
16…中空穴
18…閉鎖部
25…ボス部(余肉部)
35…ボス部(余肉部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁軸部の一端部に弁傘部を備える中空エンジンバルブの製造方法であって、
弁軸部の一端部に弁傘部を備える中実状のバルブ素材に対して一端側から軸方向に延びる中空穴を穴あけ加工した後、前記バルブ素材における中空穴の開口端の周辺部の素材自体を変形させることにより該開口端の封口処理を行うことを特徴とする中空エンジンバルブの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の中空エンジンバルブの製造方法であって、
前記バルブ素材には、前記中空穴の開口端面側になる面に突出されかつ前記中空穴の開口端の封口処理に際して変形される封口処理用の余肉部が形成されていることを特徴とする中空エンジンバルブの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の中空エンジンバルブの製造方法であって、
前記余肉部は、先細り形状に形成されていることを特徴とする中空エンジンバルブの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の中空エンジンバルブの製造方法であって、
前記封口処理は、前記素材自体を塑性変形させる塑性加工、前記素材自体を加熱源により加熱溶融させる加熱溶融処理の少なくとも1つを行うことを特徴とする中空エンジンバルブの製造方法。
【請求項1】
弁軸部の一端部に弁傘部を備える中空エンジンバルブの製造方法であって、
弁軸部の一端部に弁傘部を備える中実状のバルブ素材に対して一端側から軸方向に延びる中空穴を穴あけ加工した後、前記バルブ素材における中空穴の開口端の周辺部の素材自体を変形させることにより該開口端の封口処理を行うことを特徴とする中空エンジンバルブの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の中空エンジンバルブの製造方法であって、
前記バルブ素材には、前記中空穴の開口端面側になる面に突出されかつ前記中空穴の開口端の封口処理に際して変形される封口処理用の余肉部が形成されていることを特徴とする中空エンジンバルブの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の中空エンジンバルブの製造方法であって、
前記余肉部は、先細り形状に形成されていることを特徴とする中空エンジンバルブの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の中空エンジンバルブの製造方法であって、
前記封口処理は、前記素材自体を塑性変形させる塑性加工、前記素材自体を加熱源により加熱溶融させる加熱溶融処理の少なくとも1つを行うことを特徴とする中空エンジンバルブの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−237312(P2012−237312A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−98445(P2012−98445)
【出願日】平成24年4月24日(2012.4.24)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月24日(2012.4.24)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
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