説明

中空体の成形方法及び中空体

【目的】 本発明は中空体の成形方法及び中空体に関し、特に、射出成形された一対の半成形品を合体させて中空体を得ると共に、中空体内に栓等のインサート品を1成形工程中に設け、一対の半成形品の色又は材質を異ならせて、成形品内の収容材料の識別等が外部からできることを特徴とする。
【構成】 本発明による中空体の成形方法及び中空体においては、一対の半成形品(33aA,35aA)を合体させて得る中空体(3a)内にインサート品(23)を自動的に嵌入してインサート品(23)入りの中空体(3a)を得ると共に、色又は材質の異なる半成形品(33aA,35aA)を結合用樹脂(40)により一体の成形品(3a)を得ることができ、さらに、色又は材質の異なる半成形品(33aA,35aA)を用い、内部にインサート品(23)を有する中空品(3a)を得ることができる構成である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、射出成形された一対の半成形品を合体させて中空体を製造する成形方法及び中空体に関し、特に、中空体内に栓等のインサート品を1成形工程中に設けると共に、一対の半成形品の色又は材質を異ならせることにより、成形品内の収容材料の識別等が外部からできるようにするための新規な改良に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の中空体としては、一般に成形後のインサート品を手作業で嵌入していた。また、異種材あるいは異色材の一対の半成形品を用いて1個の中空体を成形する場合、代表的な方法として図5に示す方法が挙げられる。すなわち、図5において符号1で示されるものは、第1半成形品1aを成形する第1半成形品成形工程であり、この第1半成形品成形工程1では、第1型閉1A、第1射出・保圧1B、第1冷却可塑化1C、第1型開1D及び第1取出し1Eを経て第1半成形品1aが得られる。
【0003】符号2で示されるものは第2半成形品2aを成形する第2半成形品成形工程であり、この第2半成形品成形工程2では、第2型閉2A、第2射出・保圧2B、第2冷却可塑化2C、第2型開2D及び第2取出し2Eを経て第2半成形品2aが得られる。
【0004】また、符号3で示されるものは各半成形品1a,2aを合体させて結合用樹脂3bをその合わせ面に射出し、1個の中空体3aを作る工程3であり、前述の各半成形品1a,2aをインサート工程4にて第3型閉3A、第3射出・保圧3B、第3冷却可塑化3C、第3型開3D、第3取出し3Eを経て一体とすることにより前記中空体3aを得ることができる。
【0005】また、例えば、他の従来方法として、特公平2−38377号公報に開示された中空体の成形方法の場合、1個の射出シリンダを用いて同時に一対の半成形品を成形し、その後、スライド型を摺動させて各半成形品を一体化する方法である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来の中空体の成形方法は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。すなわち、図5に示す第1従来方法の場合、3個の射出シリンダを用いなければならず、生産効率が極めて低く、大量生産品を安価に生産するには不適であった。また、第2従来例の中空体の成形方法においては、安価に大量生産できる反面、1個の射出シリンダを用いていたため、一対の半成形品の色又は材質を変え、成形品の中身の材料を外から識別したいとする要求には応えることができなかった。
【0007】本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、一対の半成形品の色又は材質を異ならせることにより、成形品内の収容材料の識別等が外部からできるようにした中空体の成形方法及び中空体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明による中空体の成形方法は、固定型と可動型との間にスライド型を有し、このスライド型を摺動させて一対の半成形品を合体させ、中空体を得るようにした中空体の成形方法において、前記中空体内に形成された溝内にこの溝の厚さよりもやや大なる厚さを有するインサート品をインサート手段を介して圧縮した状態下で嵌入する方法である。
【0009】本発明による中空体の成形方法は、固定型と可動型との間にスライド型を有し、このスライド型を摺動させて一対の半成形品を合体させ、中空体を得るようにした中空体の成形方法において、互いに異なる色又は材質の成形材料を射出する一対の射出シリンダにより互いに色又は材質の異なる前記各半成形品を得ると共に、前記各射出シリンダの何れかにより射出された成形材料により、前記各半成形品を結合させた中空体を成形する方法である。
【0010】さらに詳細には、前記中空体内に形成された溝内にこの溝の厚さよりもやや大なる厚さを有するインサート品をインサート手段を介して圧縮した状態下で嵌入する方法である。
【0011】本発明による中空体は、スライド型を摺動させると共に、射出成形された第1、第2半成形品を合体させてなる中空体において、前記第1半成形品の端部に形成された第1凹部と、前記第2半成形品の内面に形成された第2凹部と、前記各凹部により形成された溝と、前記溝内に嵌入されたインサート品とを備えた構成である。
【0012】本発明による成形品は、スライド型を摺動させると共に、射出成形された一対の半成形品を合体させ、互いに色又は材質が異なる一対の半成形品を、前記各半成形品の何れかと同一色又は材質の結合用樹脂により一体状とした構成である。
【0013】さらに詳細には、前記各半成形品を一体状に結合させるための結合用樹脂を備え、前記各半成形品は互いに色又は材質が異なると共に、前記結合用樹脂は前記各半成形品の何れかと同一色又は材質よりなる構成である。
【0014】
【作用】本発明による中空体の成形方法及び中空体においては、固定型と可動型との間にスライド型を有し、このスライド型を摺動させて一対の半成形品を合体させ、この中空体の溝内にインサート手段を介して圧縮した状態のインサート品を嵌入することにより、1成形工程で成形とインサート品の嵌入とを行うことができる。また、一対の射出シリンダから射出された互いに異なる色又は材質の各成形材料を可動型のキャビティとスライド型のキャビティに個別に射出して一対の半成形品を成形し、その後、スライド型を摺動させて各半成形品を合体させ、何れかの射出シリンダから射出した結合用樹脂で各成形品を一体状に結合させることにより、互いに色又は材質の異なる一対の半成形品を合体した中空体を作ることができる。
【0015】
【実施例】以下、図面と共に本発明による中空体の成形方法及び中空体の好適な実施例について詳細に説明する。なお、従来例と同一又は同等部分には同一符号を付して説明する。図1から図4迄は本発明による中空体の成形方法及び中空体を示すもので、図1はフロー図、図2R>2は中空体クション型の射出成形機の構成図、図3は図2R>2の要部の拡大詳細図、図4は中空体を示す構成図である。
【0016】まず、図2及び図3において本発明で適用する中空体の射出成形機30について簡単に説明する。この方式の射出成形機については、特公平2−38377号公報にて詳述されているところであるため細部については省略するが、本体31のタイバー32を介して往復動可能に設けられた可動型33に対して固定型34が固定配置され、この可動型33と固定型34との間にスライド型35が摺動自在に設けられている。
【0017】この固定型34に対し、第1、第2射出シリンダ36,37が接続されており、各射出シリンダ36,37からの互いに異なる色又は材質の成形材料は、スライド型35の第1キャビティ35a及び可動型33の第2キャビティ33aに各々独立して供給できるようにスプール等(図示せず)が形成されている。前記スライド型35は、図示しないスライド用シリンダを介して矢印Aの方向に往復摺動するように構成されている。
【0018】次に前述のダイスライドインジェクション型の射出成形機30を用いて図4で示す中空体3aを成形する場合について述べる。まず、図1で示すように、一次成形20において第1型閉じ1A後、各射出シリンダ36,37から互いに異なる色又は材質の成形材料を射出し、各射出シリンダ36,37の各射出保圧1B,2Bを行い、各冷却・可塑化1C,2Cを行って第1型開1Dを行うことにより一次成形を完了すると共に、各キャビティ33a,35a内に第1、第2半成形品33aA及び35aAを成形する。
【0019】次に、二次成形21として、スライド型35を摺動させ、このダイスライド工程22において、前記第1半成形品33aAの第1凹部33aBと第2半成形品35aAの内面の第2凹部35aBによって形成されゴム栓等のインサート品23の厚さよりもわずかに薄い溝100内にこのインサート品23を図示しない自動のインサート手段によってインサートする。この場合、前記溝100の厚さTよりもやや大なる厚さを有するインサート品23を嵌入するため、前記インサート品23を原形よりも圧縮させた状態で1成形工程中においてこの溝100内に嵌入することにより、このインサート品23はこの溝100内に確実に収容される。
【0020】次に、第2型閉じ10を行った後、第2射出シリンダ37(第1射出シリンダ36でも可)により輪状等の結合用樹脂40を各半成形品33aA,35aA間の溝41内に射出することにより、一体状の中空体3aが得られる。従って、この中空体3aの各半成形品33aA,35aAの色又は材質は互いに異なり、それによって、成形品内部に収容した薬品等の材質の識別を行うことができる。なお、前述の結合用樹脂40の色又は材質は、何れかの半成形品33aA,35aAと同一となる。なお、前述の半成形品33aA,35aAの色又は材質を同一とすることも、もちろん可能であることは述べるまでもないことである。従って、本発明によれば、インサート品23を内蔵した中空体3a、各半成形品33aA,35aAが異なる色又は材質で結合用樹脂40が何れかの色又は材質からなる中空品3a、及び、各半成形品33aA,35aAが異なる色又は材質よりなる中空品3aの何れも製造することができる。
【0021】
【発明の効果】本発明による中空体の成形方法及び中空体は、以上のように構成されているため、1成形工程において、人手を介することなく、中空体内に栓等のインサート品を嵌入した状態の中空体を得ることができる。また、各半成形品の色又は材質を異ならせた中空体を得ることができ、それによって、成形品内に収容した薬品又は医薬品等の種類を外部から識別することができ、従来の方法では不可能な二色付きの成形品を大量に安価に作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による中空体の成形方法を示すフロー図である。
【図2】射出成形機を示す構成図である。
【図3】図2の要部の拡大詳細図である。
【図4】成形品を示す断面図である。
【図5】従来の方法を示すフロー図である。
【符号の説明】
3a 中空体
33 可動型
34 固定型
35 スライド型
33aA,35aA 半成形品
36,37 射出シリンダ
40 結合用樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】固定型(34)と可動型(33)との間にスライド型(35)を有し、このスライド型(35)を摺動させて一対の半成形品(33aA,35aA)を合体させ、中空体(3a)を得るようにした中空体の成形方法において、前記中空体(3a)内に形成された溝(100)内にこの溝(100)の厚さ(T)よりもやや大なる厚さを有するインサート品(23)をインサート手段を介して圧縮した状態下で嵌入することを特徴とする中空体の成形方法。
【請求項2】固定型(34)と可動型(33)との間にスライド型(35)を有し、このスライド型(35)を摺動させて一対の半成形品(33aA,35aA)を合体させ、中空体(3a)を得るようにした中空体の成形方法において、互いに異なる色又は材質の成形材料を射出する一対の射出シリンダ(36,37)により互いに色又は材質の異なる前記各半成形品(33aA,35aA)を得ると共に、前記各射出シリンダ(36,37)の何れかにより射出された成形材料により、前記各半成形品(33aA,35aA)を結合させた前記中空体(3a)を成形することを特徴とする中空体の成形方法。
【請求項3】前記中空体(3a)内に形成された溝(100)内にこの溝(100)の厚さ(T)よりもやや大なる厚さを有するインサート品(23)をインサート手段を介して圧縮した状態下で嵌入することを特徴とする請求項2記載の中空体の成形方法。
【請求項4】スライド型(35)を摺動させると共に、射出成形された第1、第2半成形品(33aA,35aA)を合体させてなる中空体において、前記第1半成形品(33aA)の端部に形成された第1凹部(33aB)と、前記第2半成形品(35aA)の内面に形成された第2凹部(35aB)と、前記各凹部(33aB,35aB)により形成された溝(100)と、前記溝(100)内に嵌入されたインサート品(23)とを備えたことを特徴とする中空体。
【請求項5】スライド型(35)を摺動させると共に、射出成形された一対の半成形品(33aA,35aA)を合体させ、互いに色又は材質が異なる一対の半成形品(33aA,35aA)を、前記各半成形品(33aA,35aA)の何れかと同一色又は材質の結合用樹脂(40)により一体状に構成したことを特徴とする中空体。
【請求項6】前記各半成形品(33aA,35aA)を一体状に結合させるための結合用樹脂(40)を備え、前記各半成形品(33aA,35aA)は互いに色又は材質が異なると共に、前記結合用樹脂(40)は前記各半成形品(33aA,35aA)の何れかと同一色又は材質よりなる構成としたことを特徴とする請求項4記載の中空体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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