説明

中空体の成形方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、各種タンクやダクトなどの合成樹脂製の中空体であって、取付孔を有する取付ブラケットを一体に設けたものを、熱可塑性合成樹脂のブロー成形により成形する中空体の成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、取付ブラケットを一体に設けたタンクやブラケットなどの中空体の製造においては、ブロー成形により成形された孔無しの取付ブラケットに、ブロー成形後の二次加工としてドリルやプレスにより孔開け加工を行っている。また、実開昭60−83721号公報に記載されているように、各種タンクやダクトなどの合成樹脂製の中空体であって、取付孔を有するブラケットを一体に設けたものを、熱可塑性合成樹脂のブロー成形により成形する中空体の成形方法も、従来から知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】取付ブラケットを一体に設けたタンクやブラケットなどの中空体の製造において、取付ブラケットにドリルやプレスにより孔開けを行う方法では、孔の位置ズレが生じやすいうえ、穿孔方向が取付ブラケットの肉厚方向と直交しない曲がり孔となりやすく、加工精度が低くなる欠点がある。また、実開昭60−83721号公報に記載されているように、中空体のブロー成形時に取付孔を有するブラケットを一体に成形する方法にあっては、取付ブラケットとなる部分の樹脂を圧縮後、取付孔を形成するピンを前進させて取付孔を開け、バリを分離するので、形成された取付孔に不規則な薄い樹脂膜が残留し、これを除去する後加工を要するだけでなく、ピンの前進により移動した樹脂の一部が型内に残留して、それが後続の成形に支障をきたすという問題がある。
【0004】本発明は、取付孔を有する取付ブラケットを一体に設けた中空体を熱可塑性合成樹脂のブロー成形により成形する中空体の成形方法における上記のような問題点を解消しようとするものであって、ブロー金型の型締め時に取付孔凹部を形成するコア型を取付ブラケットの成形リセスから突出させた状態として、中空体のブロー成形時に成形される取付ブラケットに取付孔凹部を形成することにより、ブロー成形時に取付孔部を成形するための樹脂のバリを型内に残留させることなく、また、ブロー成形後の二次加工で取付孔凹部のバリを取付ブラケットの面に沿って除去することにより、取付孔の周囲に不規則な薄い樹脂膜が残留せず、美麗かつ精度の高い取付孔を形成することができるうえ、特に、型割面が型締め方向と直交しないブロー成形金型を用いた取付ブラケットを一体に有する中空体のブロー成形において、取付ブラケットにその肉厚方向と正しく直交する取付孔を形成することができる中空体の成形方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明に係る中空体の成形方法は、一対の分割金型であって型割面が型締め方向と直交しない中空体のブロー成形金型を使用して、取付孔を有する取付ブラケットを一体に設けた中空体を熱可塑性合成樹脂のブロー成形により成形する中空体の成形方法において、ブロー成形金型の型割面に位置させた取付ブラケットの成形リセスに、取付ブラケットの取付孔凹部を成形する突出後退自在のコア型を設けてこのコア型を成形リセスから突出させた状態で型締めして取付孔凹部を有する取付ブラケットを圧縮成形し、次いで、型締め方向と異なる方向にコア型を成形リセスより後退させた後、ブロー成形金型を開いて成形品を取出し、成形品のコア型により成形された取付孔凹部のバリを取付ブラケットの面に沿って切除して、取付ブラケットにその肉厚方向と正しく直交する開口した取付孔を形成するものである。
【0006】
【作用】本発明に係る中空体の成形方法によれば、中空体のブロー成形金型の型割面に位置させた取付ブラケットの成形リセスに、取付ブラケットの取付孔凹部を成形するコア型を突出させた状態で型締めして取付孔凹部を有する取付ブラケットを圧縮成形するので、ブロー成形時には取付ブラケットに樹脂のバリが分離しない態様の取付孔凹部が形成される。このため、ブロー成形金型には、取付孔凹部を成形するためのバリが残留しない。そして、ブロー成形後の二次加工として、取付孔凹部のバリを取付ブラケットの面に沿って切除して、取付ブラケットに開口した取付孔を形成するので、取付孔の周囲に樹脂が薄膜状に残留することがなく、美麗かつ精度の高い取付孔が形成される。
【0007】ブロー成形金型の型割面に位置させた取付ブラケットの成形リセスに設けたコア型は、成形リセスに対して直交する方向に突出させた状態で型締めして取付孔凹部を有する取付ブラケットを圧縮成形することができるので、型割面が型締め方向と直交しないブロー成形金型を用いた取付ブラケットを一体に有する中空体のブロー成形において、取付ブラケットにその肉厚方向と正しく直交する取付孔を形成することができる。
【0008】
【実施例】本発明の実施例を図面に基き説明する。図1および図3には、本発明に係る方法により成形された中空体として、自動車の窓洗浄液タンクが例示されている。図1および図3において、1は洗浄液のタンクであって、このタンク1は、後述するように、熱可塑性合成樹脂のブロー成形により成形されるものである。2は洗浄液の注入口部、3は洗浄液ポンプの取付凹部、4は洗浄液送出口であり、洗浄液送出口4は洗浄液ポンプ(図示せず)に接続される。タンク1の上面壁には、肉薄状の取付ブラケット5が一体に成形されており、取付ブラケット5は長孔状の取付孔6を有している。7は型割線であり、この型割線7は、一対の分割金型からなるブロー成形金型の合わせ面である型割面に対応し、注入口部2および取付ブラケット5は、型割線7上に位置している。図示のタンク1は角筒状をなしており、型割線7は略対角稜線を結ぶ方向に形成されている。
【0009】図1および図3に示したタンク1は、図4ないし図6に示す態様でブロー成形される。図4ないし図6において、8は一対の分割金型9,10からなるブロー成形金型である。このブロー成形金型8は、一対の分割金型9,10の型割面11,12が型締め方向Aと直交しないものである。一対の分割金型9,10にはタンク1を成形するキャビティ13,13を有している。14は注入口部2の成形キャビティ、15は洗浄液ポンプの取付凹部3の成形凸部であり、注入口部2の成形キャビティ14は一対の分割金型9,10の型割面11,11に二分するように位置している。16は取付ブラケット5の成形リセスであり、この成形リセス16は、分割金型10の型割面12に位置していて、分割金型9には、成形リセス16に対応してバリ受凹部17が形成されている。18はパリスンである。
【0010】取付ブラケット5の成形リセス16は、取付ブラケット5の周囲を区画する突部19で囲まれていて平坦面をなしており、突部19の外側にはバリ受部20がが設けられている。21はコア型である。このコア型21は、取付ブラケット5に取付孔6を設けるための取付孔凹部22を形成するものであり、成形リセス16から突出または後退するようにスライド自在に支承されていて、油圧シリンダ23により突出後退作動させることができるものである。コア型21の前端面と周面との角部24は曲面状または平面状に形成されており、バリ受凹部17の前周端がなす境界部25と型締め時に干渉しないようにしている。
【0011】次に、取付孔6を有する取付ブラケット5を一体に設けたタンク1の成形態様を図4ないし図6により説明する。図4に示すように、パリスン18を分割金型9,10間に配置し、分割金型9,10の型締めを行ってブロー成形する。分割金型9,10の型締め時には、コア型23を、図5および図6に示すように、取付ブラケット5の成形リセス16より突出させた状態に保持する。
【0012】図5および図6に示すように、分割金型9,10の型締めが進行するにしたがって、突部19に囲まれたパリスン18の部分は成形リセス16で圧縮薄肉化され、タンク1と一体をなす取付ブラケット5が成形されるとともに、成形リセス16から突出しているコア型21により取付孔6となる取付孔凹部22が形成される。ブロー成形後は、コア型21を成形リセス16から後退させ、分割金型9,10を開いて、成形されたタンク1を取出す。そして、二次加工として取付孔凹部22の閉じているバリを取付ブラケット5の面に沿ってカッターなどを用いて切除し、取付ブラケット5に開口した取付孔6を形成する。
【0013】上記のように、タンク1のブロー成形金型8の型割面11,12に位置させた取付ブラケット5の成形リセス16にコア型21を突出させた状態で型締めして取付孔凹部22を有する取付ブラケット5を圧縮成形するので、ブロー成形時には取付ブラケット5に樹脂のバリが分離しない態様の取付孔凹部22が形成される。このため、ブロー成形金型8には、取付孔凹部22を成形するためのバリが残留しない。そして、ブロー成形後の二次加工として、取付孔凹部27のバリを取付ブラケット5の面に沿って切除して、取付ブラケット5に開口した取付孔6を形成するので、取付孔6の周囲には樹脂が薄膜状に残留することがなく、美麗かつ精度の高い取付孔6が形成される。
【0014】さらに、ブロー成形金型8の型割面11,12に位置させた取付ブラケット5の成形リセス16に設けたコア型21は、成形リセス16面に対して直交する方向に突出させた状態で型締めして取付孔凹部22を有する取付ブラケット5を圧縮成形するので、型割面11,12が型締め方向と直交しないブロー成形金型8を用いた場合でも、取付ブラケット5には、図3に示したように、その肉厚方向と正しく直交する取付孔6を形成することができる。なお、図2には型割面が型締め方向と直交するブロー成形金型を用いて成形したタンク1を本発明に係る図3のものと比較のために例示したが、このように型割面が型締め方向と直交するブロー成形金型を用いたブロー成形方法では、図3に示すように取付ブラケット5にその肉厚方向と正しく直交する取付孔6を成形することはできないことが明かである。このように、本発明によれば、型割面11,12が型締め方向と直交しないブロー成形金型8を用いて、取付ブラケット5にその肉厚方向と正しく直交する取付孔6を形成することができるので、タンク1の取付条件などに応じて任意の箇所に取付ブラケット5を設けることができる。
【0015】なお、本発明の実施例として示したタンクは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミドなどブロー成形可能な熱可塑性合成樹脂で構成されるものである。
【0016】
【発明の効果】本発明によれば、ブロー金型の型締め時に取付孔凹部を形成するコア型を取付ブラケットの成形リセスから突出させた状態として、中空体のブロー成形時に成形される取付ブラケットに取付孔凹部を形成することにより、ブロー成形時に取付孔部を成形するための樹脂のバリを型内に残留させることなく、また、ブロー成形後の二次加工で取付孔凹部のバリを取付ブラケットの面に沿って除去することにより、取付孔の周囲に不規則な薄い樹脂膜が残留せず、美麗かつ精度の高い取付孔を形成することができるうえ、特に、型割面が型締め方向と直交しないブロー成形金型を用いた取付ブラケットを一体に有する中空体のブロー成形において、取付ブラケットにその肉厚方向と正しく直交する取付孔を形成することができる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る方法により成形されたタンクの全体斜視図である。
【図2】本発明に係る方法により成形されたタンクの特徴を説明するために比較例として示した他のタンクの平面図である。
【図3】本発明に係る方法により成形されたタンクの平面図である。
【図4】本発明に係る方法を説明するブロー成形の型締め前の態様を示す一部を破断した平面図である。
【図5】本発明に係る方法を説明するブロー成形の型締め直前の態様を示す拡大断面図である。
【図6】本発明に係る方法を説明するブロー成形の型締め完了時の態様を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
1 タンク
2 注入口部
5 ブラケット
6 取付孔
7 型割線
8 ブロー成形金型
9,10 分割金型
11,12 型割面
13,13 キャビティ
16 取付ブラケットの成形リセス
17 バリ受凹部
18 パリスン
19 突部
21 コア型
22 取付孔凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一対の分割金型であって型割面が型締め方向と直交しない中空体のブロー成形金型を使用して、取付孔を有する取付ブラケットを一体に設けた中空体を熱可塑性合成樹脂のブロー成形により成形する中空体の成形方法において、ブロー成形金型の型割面に位置させた取付ブラケットの成形リセスに、取付ブラケットの取付孔凹部を成形する突出後退自在のコア型を設けてこのコア型を成形リセスから突出させた状態で型締めして取付孔凹部を有する取付ブラケットを圧縮成形し、次いで、型締め方向と異なる方向にコア型を成形リセスより後退させた後、ブロー成形金型を開いて成形品を取出し、成形品のコア型により成形された取付孔凹部のバリを取付ブラケットの面に沿って切除して、取付ブラケットにその肉厚方向と正しく直交する開口した取付孔を形成することを特徴とする中空体の成形方法。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【特許番号】特許第3503031号(P3503031)
【登録日】平成15年12月19日(2003.12.19)
【発行日】平成16年3月2日(2004.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−109891
【出願日】平成5年4月13日(1993.4.13)
【公開番号】特開平6−297554
【公開日】平成6年10月25日(1994.10.25)
【審査請求日】平成12年3月31日(2000.3.31)
【前置審査】 前置審査
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【参考文献】
【文献】実開 昭60−41308(JP,U)
【文献】実開 平4−104410(JP,U)
【文献】実公 昭41−2123(JP,Y1)