説明

中空糸膜モジュールおよびその製造方法

【目的】 中空糸膜モジュールにより、有機溶剤を比較的高温で膜分離する。
【構成】 低密度ポリオレフィンワックス5〜99重量%と、メルトインデックス50以上の低密度オレフィンポリマー95〜1重量%とを含む溶融した樹脂組成物中に、中空糸膜の集束体の少なくとも一方の端部を浸漬し、ケーシングに封止固定する。前記ワックスおよびポリマーにはポリエチレンなどが含まれる。前記ワックスの密度は0.94g/cm2 以下、粘度法による分子量は20000以下である。前記ワックスとポリマーとを併用すると、中空糸膜との接着性、耐熱性が比較的高く、耐溶剤性に優れる封止固定部を備えた中空糸膜モジュールが得られる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐溶剤性に優れ、液体などの被処理流体を効率よく膜分離する上で有用な中空糸膜モジュールおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、逆浸透型、イオン交換型、浸透気化型、限外濾過型などの種々の分離特性を有する半透膜が開発されている。これらの半透膜は、例えば、平膜状、スパイラル状、中空糸状などの形態でモジュール化されている。
【0003】これらのモジュールのうち、中空糸膜モジュールは、装置の単位体積当りの膜表面積を大きくでき、装置の小型化及びコストダウンができるという利点がある。そのため、中空糸膜モジュールは、医療用途、精密電子工業用途、食品工業用途、理化学用途などの広い分野で利用されている。
【0004】中空糸膜モジュールは、通常、集束された中空糸膜がケーシングに収容され、中空糸膜間および中空糸束とケーシングとの間が、ケーシング端部などにおいて、封止固定されている。
【0005】一方、中空糸膜モジュールによる分離操作は、一次側から高圧下で中空糸膜に流体を供給し、流体中の所定の成分を中空糸膜を通じて選択的に二次側に透過させ、非透過成分を濃縮している。また、透過効率を高めるためには、加熱流体を供給するのが有利である。このような中空糸膜モジュール、特に封止固定部には圧力履歴、熱履歴が作用するので、モジュールには、中空糸束とケースとの間の高い封止性が要求される。中空糸束を封止固定するための材料として、従来、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系接着剤が汎用されている。
【0006】しかし、これらの接着剤を用いて作製したモジュールでは、有機溶剤の濾過をはじめとする高温での薬品処理中に、接着剤が膨潤したりクラックなどが生じ、接着性、ひいては封止性が低下する。そのため、被処理流体の種類が制限される。また、高温高圧下で被処理流体を膜分離に供すると、封止固定部から短時間内に被処理流体がリークし、膜分離操作を継続できなくなる。
【0007】特開昭61−129006号公報には、耐薬品性に優れたゴムを加硫して中空糸束の端部を封止する技術が開示されている。しかし、ゴムを加硫するためには160℃以上の高温処理を必要とする。そのため、耐熱性の低い中空糸膜を使用できず、特定の素材からなる中空糸膜しか使用できない。しかも、モジュールの製造プロセスも複雑である。
【0008】特開平3−221128号公報には、不飽和カルボン酸類を共重合したポリオレフィンを少なくとも一成分として含む接着性樹脂で、中空糸束の端部を接着固定する技術が開示されている。しかし、不飽和カルボン酸を共重合したポリオレフィンだけでは、耐熱性が小さく、高温での膜分離には使用できない。さらに、他のポリオレフィンとの相溶性が悪く、長期に亘り安定性に膜分離に供することが困難である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、中空糸束が強固に接着固定されていると共に、耐溶剤性に優れ、長期に亘り安定に膜分離に供することができる中空糸膜モジュールとその製造方法を提供することにある。
【0010】本発明の他の目的は、有機溶剤であっても比較的高温で膜分離できる中空糸膜モジュールとその製造方法を提供することにある。
【0011】
【発明の構成】本発明者らは、鋭意検討の結果、特定のポリオレフィンを含む樹脂組成物を用いて中空糸束をケーシングに封止固定すると、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成した。
【0012】すなわち、本発明の中空糸膜モジュールは、低密度ポリオレフィンワックスとメルトインデックス50以上の低密度オレフィンポリマーとを含む樹脂組成物で、中空糸膜の集束体の端部が封止固定されている。
【0013】また、本発明の方法では、中空糸膜の集束体の少なくとも一方の端部を、低密度ポリオレフィンワックスとメルトインデックス50以上の低密度オレフィンポリマーとを含む溶融した樹脂組成物中に浸漬し、封止固定することにより、中空糸膜モジュールを製造する。
【0014】以下に、必要に応じて添付図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。
【0015】図1は中空糸膜モジュールの一例を示す概略断面図である。
【0016】この例では、中空糸膜モジュールは、中空糸膜の透過側、すなわち二次側に選択的に透過した透過液や透過気体が流出する流出口2a,2bが形成されたケーシング1と、このケーシング1内に収納された複数の中空糸膜からなる中空糸束3と、ケーシング1の両端部を閉塞するための蓋体4a,4bとを備えている。前記中空糸束3の両端部は、中空糸膜の端面が開口した状態で、封止固定部5a,5bで接着封止されている。
【0017】一方の蓋体4aには、中空糸膜の一次側に被処理液を供給するための供給口6aが形成され、他方の蓋体4bには、濃縮液が排出する排出口6bが形成されている。また、前記ケーシング1と封止固定部5a,5bと蓋体4a,4bの交点部には、弾性O−リング7a,7bが挾圧状態で配され、前記交点部を封止している。
【0018】そして、前記封止固定部5a,5bは、低密度ポリオレフィンワックスとメルトインデックス50以上の低密度オレフィンポリマーとを含む樹脂組成物で形成されている。
【0019】このような中空糸膜モジュールでは、封止固定部5a,5bが前記オレフィン系樹脂で形成されているため、耐溶剤性が極めて高い。そのため、気体、水などの他、種々の有機溶媒を効率よく処理できる。しかも、封止固定部5a,5bが単一のオレフィン系ポリマーではなく、前記ワックスとポリマーとを含む樹脂組成物で形成されているので、実用的に何ら問題のない接着封止性、耐熱性および強度を備えている。
【0020】前記低密度ポリオレフィンワックスには、密度0.94g/cm2 以下、好ましくは0.91〜0.94g/cm3 程度、粘度法による分子量20000以下、好ましくは2500〜15000、さらに好ましくは5000〜12500程度のポリオレフィン系ワックスが含まれる。
【0021】本発明では、低密度ポリオレフィンワックスとともに、メルトインデックス50以上、好ましくは50〜200、さらに好ましくは50〜150程度の低密度オレフィンポリマーを使用する。
【0022】なお、メルトインデックスとは、ASTM D1238に規定する試験法に基づいて測定され、2160gの荷重をピストン上に加えた時、190℃の溶融体が特定のオリフィスを通して、10分間に押出される量(g)を意味し、通常、メルトインデックスが大きい程、ポリマーの分子量は小さい。
【0023】前記低密度オレフィンポリマーとしては、密度0.94g/cm2 以下、好ましくは0.91〜0.94g/cm3 程度、粘度法による分子量が20000以上のポリオレフィンが使用できる。
【0024】低密度ポリオレフィンワックスおよび低密度オレフィンポリマーは、エチレンを主成分として構成されている場合が多い。低密度ポリオレフィンワックスおよび低密度オレフィンポリマーは、ポリエチレン、エチレンと、他のオレフィン、例えば、プロピレン、ブチレン、4−メチルペンテン−1などとの共重合体であってもよく、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステルなどとの共重合により一部変性されていてもよい。前記ワックスおよびオレフィンポリマーがエチレン系共重合体である場合、エチレンと共重合する単量体の割合は、例えば、1〜40重量%、好ましくは5〜30重量%程度である。好ましい低密度ポリオレフィンワックスには、例えば、ポリエチレンワックスなどが含まれ、好ましい低密度オレフィンポリマーには、例えば、エチレン−ブテン共重合体などが含まれる。
【0025】また、X線解析法によるポリエチレンワックスなどの低密度ポリオレフィンワックス及びポリエチレンなどの低密度オレフィンポリマーの結晶化度は、例えば、60〜75%程度である。
【0026】なお、一般に、ポリオレフィン類は耐溶剤性に優れているものの、熱収縮率が大きく、耐熱性、中空糸膜との接着性、強度などが劣るとされている。しかし、前記特定のワックスとオレフィンポリマーとを組合せて使用すると、実用上問題のないモジュールが得られる。
【0027】より詳細には、ポリオレフィンの結晶化度が高くなるにつれて、一般に熱収縮率が大きくなるため、中空糸との間に隙間が生じ易く、接着封止性が低下する。しかし、低密度ポリオレフィンワックスとの併用により、熱収縮を抑制でき、接着封止性を高めることができる。
【0028】また、ワックスは一般に耐熱性が小さい。しかし、低密度ポリオレフィンワックス、例えば、粘度法による分子量が4000程度のワックスは軟化点が120℃程度であるため、100℃以下での分離処理に何ら支障なく使用できる。さらに、前記ワックスにオレフィンポリマーを併用すると、耐熱性を高めることができる。
【0029】メルトインデックス100以下のオレフィンポリマーは、一般に溶融粘度が高いため、160℃で溶融しても中空糸束を均一に浸漬して封止することが困難である。しかし、メルトインデックス50以上のオレフィンポリマーであっても前記ワックスと組合せると、低密度オレフィンポリマーの優れた特性を維持しつつ、溶融粘度を低下でき、中空糸束との接着封止性を高めることができる。
【0030】さらに、オレフィンポリマーを用いると、中空糸膜の表面処理により接着性を向上させたとしても、熱収縮によりポリオレフィンと中空糸膜との界面に僅かな隙間が生じる。しかし、前記ワックスと併用すると、中空糸束との接着封止性を高めることができる。
【0031】さらに、オレフィンポリマーの結晶化度が高くなるにつれて、一般に耐溶剤性が向上する。一方、ポリオレフィンワックスも、耐溶剤性が比較的高い。例えば、結晶化度が60%と低く、分子量が7200のポリオレフィンワックスでも、酢酸エチル:酢酸:水=6:2:2:(重量比)などの溶媒中、80℃で2000時間浸漬しても重量変化は5%程度であり、実用上問題ない耐溶剤性を示す。従って、前記ワックスとオレフィンポリマーとを併用すると、前記ワックスよりもさらに高い耐溶剤性を確保できる。
【0032】さらには、オレフィンワックス単独では強度が小さく、冷却時の収縮によりクラックが生じる場合があるものの、前記特定のオレフィンポリマーと組合せると、強度を高め、クラックの発生を防止できる。
【0033】低密度ポリオレフィンワックスと低密度オレフィンポリマーとの割合は、溶融粘度を低くするため、実用的な強度が得られる範囲、例えば、低密度ポリオレフィンワックス/低密度オレフィンポリマー=5〜99/95〜1(重量%)の範囲で適当に選択できるが、低密度ポリオレフィンワックスの割合が多い方が好ましい。好ましい前記割合は、例えば、低密度ポリオレフィンワックス/低密度オレフィンポリマー=25〜95/75〜5(重量%)、好ましくは50〜95/50〜5(重量%)程度である。前記ワックスの割合が5重量%未満であると熱収縮率や溶融粘度が大きく、接着封止性が低下し易く、99重量%を越えると、封止固定部の強度、耐溶剤性が低下し易い。
【0034】前記樹脂組成物は、必要に応じて、酸化防止剤などの老化防止剤、充填剤などの種々の添加剤を含んでいてもよい。
【0035】前記中空糸膜を構成するポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリプロピレン、ポリ−4−メチルペンテン−1などのオレフィン系ポリマー;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体などのフッ素含有ポリマー;酢酸セルロースなどのセルロース系ポリマー;ポリ塩化ビニル;アクリロニトリル系ポリマー;ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−メタクリル酸メチル共重合体などのアクリル系ポリマー;シリコーン樹脂;ポリアミド;ポリイミド;ポリエーテルスルホン;ポリスルホン;ポリフェニレンオキサイド;ポリフェニレンスルフィド;ポリアリレート;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルイミド;ポリカーボネート;ポリビニルアルコール系ポリマーなどが例示される。
【0036】好ましい中空糸膜には、多孔質膜が含まれる。このような多孔質中空糸膜は、粗面による接着表面積の増大及びアンカーなどにより、前記樹脂組成物による接着封止性が高い。
【0037】なお、前記中空糸膜の表面粗さ、孔径などは特に制限されず、分離方式や分離成分の種類などに応じて選択できる。また、必要に応じて、中空糸膜は、有機溶剤による処理、プラズマ放電処理、コロナ放電処理、オゾン処理などの表面処理を施した後、接着封止に供してもよい。
【0038】ケーシングの形状は、用途などに応じて選択できるが、通常、円筒状であり、ノズル状供給口などを側部に有している場合が多い。ケーシングの材質は、被処理流体や分離成分の種類などに応じて選択でき、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどのプラスチック;ステンレススチールなどの金属などであってもよい。ケーシングは、通常、耐溶剤性の点からポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ステンレススチールなどで形成される場合が多い。
【0039】ケーシングは必要に応じて、前記流出口を通じて透過側が減圧可能であってもよく、減圧可能なチャンバ内に配設されていてもよい。また、前記図1とは逆に、ケーシングの流出口から被処理流体を供給し、中空糸膜の開口部から透過成分を流出させてもよい。
【0040】なお、中空糸膜は、両端面のうち少なくとも一方の端面が開口していればよい。例えば、複数の中空糸膜の一方の端部は、端面が開口した状態で封止固定部で接着封止され、中空糸膜の他方の端部の中空部は閉塞されていてもよい。また、複数の中空糸膜の両端部を集束し、中空糸膜の端面が開口した状態で、集束部を接着封止してもよい。
【0041】さらに、膜モジュールは、ケーシングを備えることなく、複数の中空糸膜の少なくとも一方の端部が接着封止され、かつケースに装着可能であってもよい。この場合、膜モジュールを、ケースにカートリッジ式に装着できる。好ましい中空糸膜モジュールにおいて、複数の中空糸膜の少なくとも一方の端部は、前記封止固定部でケーシングに接着封止されている場合が多い。
【0042】被処理流体は、中空糸膜の分離特性に応じて選択でき、空気、酸素、窒素などの気体や液体含む流体が使用できる。液体としては、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ブチルエーテルなどのエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;酢酸、無水酢酸、プロピオン酸などの有機酸類;ジエチルアミン、アニリンなどのアミン類;ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類;シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類;クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。
【0043】図1に示す中空糸膜モジュールは、次のようにして製造できる。
【0044】複数の中空糸膜を束ね、必要に応じて中空糸膜の端面の開口部を接着剤などの密封手段により密封して、ケーシング内に収容する。中空糸束の一方の端部を、溶融した前記樹脂組成物に浸漬し、自然冷却することにより封止固定する。また、前記中空糸束の他方の端部も同様にして封止固定し、封止固定部の先端部を切断して、中空糸膜の端面を開口させる。ケーシング内壁と封止固定部との間に隙間が生じる場合には、前記のように、弾性O−リングなどの封止部材により封止できる。
【0045】なお、中空糸膜モジュールが、例えば、前記カートリッジ式モジュールである場合、中空糸束の端部を、ケーシングに封止固定する必要はない。
【0046】前記樹脂組成物の溶融温度は、中空糸束の封止固定を妨げない範囲で選択できるが、溶融温度が高いほど、冷却固化後の収縮率は大きくなる。そのため、封止固定部の熱収縮を小さくするためには、樹脂組成物の溶融温度が低い方が有利である。樹脂組成物は、前記ワックス及びポリマーの混合物の軟化点から10〜50℃、好ましくは20〜40℃程度高い温度で溶融させるのが好ましい。このような温度で溶融した樹脂組成物に中空糸束を浸漬すると、自然冷却という簡単な操作で、封止固定部と中空糸膜との界面に隙間が生じるのを防止できる。
【0047】本発明の膜分離モジュールは、例えば、液体の膜分離、液体から気体成分の膜分離などに利用できる。
【0048】
【発明の効果】本発明の中空糸膜モジュールとその製造方法によれば、特定のワックスとポリマーを含む樹脂組成物により、中空糸膜の集束体の端部が封止固定するので、中空糸束を強固に接着固定できると共に、耐溶剤性に優れ、長期に亘り被処理流体を安定に膜分離できる。
【0049】また、封止固定部がワックスとオレフィンポリマーとの樹脂組成物で形成されているにも拘らず比較的耐熱性が高く、有機溶剤であっても比較的高温で膜分離できる。
【0050】
【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【0051】実施例1内径500μm、外径800μmのポリアクリロニトリル系共重合体中空糸膜を、1N−NaOH水溶液中、80℃で55分間加水分解してニトリル基の一部をカルボキシル基に変換した後、アイオネン型ポリカチオンでポリイオンコンプレックス化した。
【0052】低密度ポリオレフィンワックス(三井石油化学(株)製、三井ハイワックス720P、密度0.92g/cm2 、分子量7200)80重量部と、低密度ポリオレフィン[エチレン(80重量%)−ブテン(20重量%)共重合体、日本ユニカー(株)製、MG−365、密度0.93g/cm2 、メルトインデックス110]20重量部とを混合し、金型内で135℃で溶融した。
【0053】中空糸膜を均一に集束して先端を密封し、円筒状のポリエーテルスルホン製ケーシング内に収納した。加熱溶融した前記樹脂樹脂組成物に、中空糸束の片方の端部を浸漬して冷却固化した後、他方の端部も同様にして封止固定した。次いで、中空糸束の両端部を切断して開口させ、モジュールを作製した。
【0054】そして、中空糸膜モジュールに、99重量%エタノール水溶液を60℃で供給したところ、分離係数α=2450、透過係数Q=75g/m2 ・hrの分離性能を示した。前記操作を7日間連続で行ったところ、封止固定部には何ら異常が認められなかった。
【0055】実施例2内径500μm、外径800μmのアクリロニトリル/メタクリル酸メチル共重合体(モル比=95/5)からなる中空糸膜を用いた。低密度ポリオレフィンワックス(三井石油化学(株)製、三井ハイワックス720P、密度0.92g/cm2 、分子量7200)90重量部と低密度ポリオレフィン(日本ユニカー(株)製、低密度ポリエチレンNUC−8360、密度0.92g/cm2 、メルトインデックス65)10重量部とを混合し、金型中140℃で溶融し、実施例1と同様にして中空糸膜モジュールを作製した。
【0056】そして、中空糸膜モジュールに80重量%酢酸水溶液を80℃で供給したところ、分離係数α=1850、透過係数Q=330g/m2 ・hrの分離性能を示した。前記操作を7日間連続で行ったところ、封止固定部には何ら異常が認められなかった。
【0057】実施例3実施例2で作製した中空糸膜モジュールに、98重量%トルエン水溶液を80℃で供給したところ、分離係数α=1650、透過係数Q=250g/m2 ・hrの分離性能を示した。上記操作を7日間連続で行っても、封止固定部には何ら異常が認められなかった。
【0058】比較例1実施例1の中空糸膜を用い、封止樹脂として、ワックス(三井石油化学(株)製、三井ハイワックス800P、密度0.97g/cm2 、分子量8000)80重量部とポリオレフィン(日本ユニカー(株)製、MG−365、密度0.93g/cm2 、メルトインデックス110)20重量部との混合物を用いた。前記混合物を金型中145℃で溶解し、実施例1と同様にして中空糸膜モジュールを作製した。
【0059】そして、中空糸膜モジュールに、99重量%エタノール水溶液を60℃で供給したところ、分離係数α=85、透過係数Q=210g/m2 ・hrであり、低い分離性能を示した。また、分離性能が低下した原因を調べたところ、中空糸膜と封止固定部との間に隙間が生じていた。
【0060】比較例2実施例1の中空糸膜を用い、封止樹脂として、ポリオレフィンワックス(三井石油化学(株)製、三井ハイワックス1100P、密度0.97g/cm2 、分子量11000)を用いた。前記ワックスを金型中145℃で溶解し、中空糸束の一方の端部を浸漬して、自然冷却したところ、封止固定部の樹脂にクラックが生じた。
【0061】比較例3エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)製、エピコート828)100重量部と硬化剤(油化シェルエポキシ(株)製、エピキュアU)25重量部とを混合し、封止剤を調製した。実施例2の中空糸膜を均一に集束して先端を密封し、中空糸束を円筒状のポリエーテルスルホン製ケーシング内に収納し、上記封止剤で両方の端部を封止固定した。中空糸膜を開口するため、両端部を切断し、中空糸膜モジュールを作製した。
【0062】そして、中空糸膜モジュールに、80重量%酢酸水溶液を80℃で供給したところ、分離係数α=1730、透過係数Q=300g/m2 ・hrの分離性能を示した。上記操作を継続したところ、24時間後に、封止固定部にクラックが生じ、被処理液がリークした。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は中空糸膜モジュールの一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1…ケーシング
3…中空糸束
4a,4b…蓋体
5a,5b…封止固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 低密度ポリオレフィンワックスとメルトインデックス50以上の低密度オレフィンポリマーとを含む樹脂組成物で、中空糸膜の集束体の少なくとも一方の端部が封止固定されている中空糸膜モジュール。
【請求項2】 中空糸膜の集束体の少なくとも一方の端部がケーシングに封止固定されている請求項1記載の中空糸膜モジュール。
【請求項3】 樹脂組成物が、密度0.94g/cm2 以下、粘度法による分子量20000以下の低密度ポリオレフィンワックスと、メルトインデックス50〜200の低密度オレフィンポリマーとを含む請求項1記載の中空糸膜モジュール。
【請求項4】 低密度ポリオレフィンワックスと、低密度オレフィンポリマーとの割合が、5〜99/95〜1(重量%)である請求項1記載の中空糸膜モジュール。
【請求項5】 中空糸膜の集束体の少なくとも一方の端部を、低密度ポリオレフィンワックスとメルトインデックス50以上の低密度オレフィンポリマーとを含む溶融した樹脂組成物中に浸漬し、封止固定する中空糸膜モジュールの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開平6−170181
【公開日】平成6年(1994)6月21日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−352031
【出願日】平成4年(1992)12月8日
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)