説明

中空糸膜モジュールの組立法

【課題】 簡便な方法により、安定した品質のものが得られる、中空糸膜モジュールの組立法の提供。
【解決手段】 少なくとも片端側が固定部材で固定された中空糸膜束を有し、中空糸膜束を囲む外被材を有していない中空糸膜モジュールの組立法であり、所定長さの外被材及び外被材の少なくとも片端に接続した固定部材内に中空糸膜束を収納する工程、中空糸膜束の少なくとも片端と固定部材を接着剤で一体化する工程、必要により、前記中空糸膜束の他端側と固定部材を接着剤で一体化する工程、並びに外被材を取り外す工程、を具備する中空糸膜モジュールの組立法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種水処理に使用する中空糸膜モジュールの組立法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空糸膜モジュールは、食品分野、医薬品分野、電子工業分野、水処理分野等の各種分野において汎用されているが、中空糸膜の周囲がケース(又はハウジング)で囲まれているタイプと、中空糸膜を囲むケースがなく、中空糸膜が露出しているタイプがある。
【0003】
中空糸膜モジュールでは、例えば、中空糸膜を数百本〜数千本程度の束(必要に応じて複数束)として用いるが、中空糸膜は1本の径が1〜3mm前後と非常に細いものであるため、ケースがないタイプの中空糸膜モジュールを組み立てる場合、中空糸膜が折れ曲がったり、中空糸膜同士が絡み合ったりすることから、予め同一長さの中空糸膜を使用したにも拘わらず、全ての中空糸膜の端を揃えることは非常に困難であった。
【0004】
このため、ケースがないタイプの中空糸膜モジュールを組み立てる場合、作業自体が非常に煩雑となり、作業の内容に比べて作業時間が長時間になっているのが現状である。
【特許文献1】特開平7−232197号公報
【特許文献2】特開平11−104657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、中空糸膜束を外側から被うケースがないタイプの中空糸膜モジュールを組み立てる場合であって、簡便で、作業性良く、安定した品質のものが得られる、中空糸膜モジュールの組立法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、課題の解決手段として、
少なくとも片端側が固定部材で固定された中空糸膜束を有し、中空糸膜束を囲む外被材を有していない中空糸膜モジュールの組立法であり、
所定長さの外被材及び外被材の少なくとも片端に接続した固定部材内に中空糸膜束を収納する工程、
中空糸膜束の少なくとも片端と固定部材を接着剤で一体化する工程、
必要により、前記中空糸膜束の他端側と固定部材を接着剤で一体化する工程、並びに
外被材を取り外す工程、
を具備する中空糸膜モジュールの組立法を提供する。
【0007】
中空糸膜束は、数百〜数千本程度の中空糸膜を束ねたものであり、1本又は複数本の中空糸膜束を用いることができる。
【0008】
固定部材は、円柱状の中空糸膜束の端部を差し込んで、接着剤と共に一体化できるものであればよく、最終的に中空糸膜モジュールの構成部材となる。例えば、入水及び/又は出水口を備えたキャップやヘッダーを固定部材として用いることができる。
【0009】
外被材は、取り外しが容易な中空容器であればよく、長さ方向に2分割できる円筒状の容器(必要に応じて蝶番を有し、開閉自在なもの)が好ましい。外被材の長さは、少なくとも中空糸膜長さの80〜120%の範囲が好ましい。
【0010】
このように組み立て工程において外被材と固定部材を用いることにより、ケースやハウジング等の外被材がないタイプの中空糸膜モジュールを組み立てる場合における、中空糸膜が折れ曲がったり、中空糸膜同士が絡み合ったりすることが防止され、長さが揃わないことが防止されるため、作業性良く、安定した品質の中空糸膜モジュールが得られる。
【0011】
本発明は、課題の他の解決手段として、
少なくとも片端側が固定部材で固定された中空糸膜束を有し、中空糸膜束を囲む外被材を有していない中空糸膜モジュールの組立法であり、
中空糸膜束の所望位置を結束手段で結束する工程、
結束された中空糸膜束の少なくとも片端と固定部材を接着剤で一体化する工程、
必要により、中空糸膜束の他端側と固定部材を接着剤で一体化する工程、並びに
必要により結束手段を取り外す工程、
を具備する中空糸膜モジュールの組立法を提供する。
【0012】
結束手段は、紐やゴムバンドのようなもののほか、金属製やプラスチック製の輪を用いることができる。
【0013】
本発明は、課題の他の解決手段として、
少なくとも片端側が固定部材で固定された中空糸膜束を有し、中空糸膜束を囲む外被材を有していない中空糸膜モジュールの組立法であり、
所定長さの複数本の支柱及び支柱の少なくとも片端に接続した固定部材を用い、前記複数本の支柱で囲まれた空間内及び固定部材内に中空糸膜束を収納する工程、
中空糸膜束の少なくとも片端と固定部材を接着剤で一体化する工程、
必要により、前記中空糸膜束の他端側と固定部材を接着剤で一体化する工程、並びに
必要により、複数本の支柱を取り外す工程、
を具備する中空糸膜モジュールの組立法を提供する。
【0014】
中空容器からなる外被材に代えて、複数本の支柱を用いる方法である。外被材に比べて軽量で取り扱いやすく、保管や運搬時の取り扱いが容易になるほか、取り外さずに、そのまま中空糸膜モジュールの構成部品として残すこともできる。
【0015】
本発明は、課題の他の解決手段として、請求項1又は3記載の中空糸膜モジュールの組立法において、所望位置が結束された中空糸膜束を用いる中空糸膜モジュールの組立法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の中空糸膜モジュールの組立法によれば、中空糸膜束を外側から被うケースがないタイプの中空糸膜モジュールを組み立てる場合であっても、作業性良く、安定した品質のものが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、各実施形態について、工程ごとに説明する。各工程は、1つの工程を2つ以上に分けてもよいし、2つ以上の工程を1つにしてもよい。なお、中空糸膜モジュールの組立法として公知の工程を付加することもできる。
【0018】
(1)第1の実施の形態
第1工程では、所定長さの外被材及び外被材の少なくとも片端に接続した固定部材内に中空糸膜束を収納する。
【0019】
この工程では、第2工程における接着作業性を円滑にする観点から、中空糸膜束を収納する前に、予め外被材の一端側開口部に固定部材を接続するが、必要に応じて更に補助部材を接続しておくこともできる。なお、作業性をより向上させるため、外被材に収納する前に、中空糸膜束を結束手段で結束しておくこともできる。
【0020】
中空糸膜束は、目的に応じて、例えば数百本〜数千本の中空糸膜を束ねたもので、1本の中空糸膜の外径は1〜2mm前後である。中空糸膜束は、1本でもよいし、複数本を組み合わせて用いることもできる。
【0021】
外被材は、中空糸膜束の外形状に合わせた円筒状の容器が好ましいが、これに限定されるものではない。外被材は、中空糸膜束を収納し易くするため、円筒状容器の場合、長さ方向に2分割できるものが好ましく、長さ方向の合わせ目に対向する周面に複数の蝶番が設けてあり、開閉自在に2分割できるものがより好ましい。
【0022】
なお、外被材が円筒状のままであると、中空糸膜束は開口部から挿入することになるが、外被材が2つに割れた状態であると、中空糸膜束を外被材内に入れる(収納する)ことになる。
【0023】
外被材の径は、中空糸膜束を挿入できる大きさであり、外被材の長さは、作業性を向上させる観点から、中空糸膜束の長さの80〜120%の長さが好ましい。
【0024】
外被材に収納された中空糸膜束は、両端部が外被材から飛び出した状態であり、予め外被材の一端部側に固定部材等を接続している場合には、中空糸膜束の一端部は固定部材内に位置し、他端部側は外被材から飛び出している状態になる。
【0025】
固定部材は、最終的に中空糸膜モジュールの構成部材となるキャップやヘッダーを用いることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0026】
第2工程では、中空糸膜束の少なくとも片端と固定部材を接着剤で一体化する。この工程では、中空糸膜束と固定部材との間隙に接着剤を充填する方法を適用することができる。
【0027】
接着剤は、中空糸膜モジュールの組立用の公知の接着剤、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂系接着剤を用いることができる。
【0028】
その後、必要に応じて上記工程と同様にして、中空糸膜束の他端側と固定部材とを接着剤で一体化することができる。
【0029】
その後、外被材を取り外して、少なくとも片端側が固定部材で固定された中空糸膜束を有し、中空糸膜束を囲む外被材を有していない中空糸膜モジュールを得ることができる。得られた中空糸膜モジュールは、中空糸膜が折れ曲がったり、中空糸膜同士が絡み合ったりしておらず、長さも揃っている。
【0030】
次に、図1、図2により、実施例を説明する。図1、図2は、組み立て方法を説明するための概略断面図である。
【0031】
第1工程では、外被材10の一端側開口部11に固定部材12を取り付ける。このとき、外被材10と固定部材12との接続は、外被材10を容易に取り外すことができるように、締め付け具や粘着テープ等を用いることが好ましい。
【0032】
固定部材12は、中空糸膜モジュールのヘッダー(又はキャップ)となるものであり、その開口部13は入水及び/出水口となるもので、実用時には入水管及び/又は出水管を接続する。固定部材12の側面(大径部分の側面)には、接着剤の充填口14が設けられており、小径部分の側面には螺子部15が設けられている。
【0033】
固定部材12には、補助部材となる仮キャップ16が固定部材12の螺子部15にねじ込むことで着脱自在に取り付けられている。
【0034】
このように外被材10に固定部材12と仮キャップ16が接続された状態のものに、外被材の10の開口部から中空糸膜束17の端面が仮キャップ16の底面16aに当たるまで挿入する。
【0035】
第2工程では、外被材10に設けられた接着剤注入口14、あるいは固定部材12の接着剤注入口からエポキシ樹脂等の接着剤18を注入し、使用した接着剤の性質に応じた硬化条件にて保持して、硬化させる。この工程の処理により、固定部材12と中空糸膜束17の端部が接着剤18により一体化される。なお、外被材10に設けられた接着剤注入口14は、接着剤の注入後に接着剤等で閉塞されないが、固定部材12に設けられた接着剤注入口は、その位置により、接着剤の注入後に接着剤等で閉塞する場合もある。必要に応じて、中空糸膜束17の他端部も同様に接着剤を用いて、固定部材と一体化することができる。
【0036】
その後、中空糸膜束17の一端又は両端を固定部材に固定した後、仮キャップ16及び外被材10を取り外す。仮キャップ16を外したとき、固定部材12の開口部13から飛び出している中空糸膜束17は切断する。
【0037】
このようにして、組立工程において外被材を用いると、外被材が、中空糸膜束を支持する機能(例えば、中空糸膜束が外被材にもたれて支持される「背もたれ機能」)と、中空糸膜束の長さを一定長さに合わせる機能(長さ合わせ機能)を発揮する。そして、結束手段を併用した場合、前記の背もたれ機能がより強化される。
【0038】
よって、本実施形態の組立法を適用して得られた中空糸膜モジュールは、中空糸膜が折れ曲がったり、中空糸膜同士が絡み合ったりしておらず、全ての中空糸膜の長さも揃っている。
【0039】
(2)第2の実施の形態
第1工程では、中空糸膜束の所望位置を結束手段で結束する。結束手段としては、ゴムバンド、紐、プラスチックや金属製の開閉自在の輪(蝶番付きの輪)等を1又は2以上用いることができる。結束位置は、中央部やその近傍のように、後工程の接着作業性を損なわない位置であればよい。
【0040】
第2工程では、結束された中空糸膜束の片端と固定部材を接着剤で一体化する。この接着剤による一体化方法は、第1の実施形態を応用することができる。本実施形態では、第1の実施形態のように外被材は用いないが、中空糸膜束が結束されているので、主として背もたれ機能が発揮される。なお、図2の作業工程において、結束された中空糸膜束17を支えるための適当な支持手段を用いることができる。
【0041】
その後、第1の実施形態と同様にして組み立て、目的とする中空糸膜モジュールを得ることができる。このように結束手段を用いることにより、主として背もたれ機能が発揮されるため、本実施形態の組立法を適用して得られた中空糸膜モジュールは、中空糸膜が折れ曲がったり、中空糸膜同士が絡み合ったりしていない。
【0042】
(3)第3の実施の形態
第1工程では、所定長さの複数本の支柱及び支柱の少なくとも片端に接続した固定部材を用い、前記複数本の支柱で囲まれた(或いは挟まれた)空間内及び固定部材内に中空糸膜束を収納する。なお、結束手段を用いて、中空糸膜束を結束することが好ましい。
【0043】
この支柱は、主として長さ合わせ機能を発揮するから、結束手段と併用すると、背もたれ機能と長さ合わせ機能の両方を発揮できるので好ましい。
【0044】
支柱の本数は制限されないが、固定部材の周囲に4本程度取り付けることができる。支柱の本数を増やすことで、背もたれ機能を強化してもよい。支柱の取り付け方法は、例えば、4本の支柱を取り付けた輪(輪に設けた4つの穴に支柱を差し込んで固定したもの)を固定部材にはめ込む方法を適用できる。
【0045】
次に、第2工程では、第1の実施形態又は第2の実施形態と同様にして、中空糸膜束の少なくとも片端と固定部材を接着剤で一体化する。
【0046】
その後、必要により、第1の実施形態又は第2の実施形態と同様にして、中空糸膜束の他端側と固定部材を接着剤で一体化し、必要により、複数本の支柱を取り外す。支柱を取り付けた状態であれば、保管及び運搬時の取り扱いが容易になる点で有利であり、実用上も中空糸膜モジュール運転時の性能には影響しない。
【0047】
このように支柱を用いることにより、主として長さ合わせ機能が発揮され、結束手段と併用することにより、長さ合わせ機能と背もたれ機能の両方が発揮される。このため、本実施形態の組立法を適用して得られた中空糸膜モジュールは、中空糸膜が折れ曲がったり、中空糸膜同士が絡み合ったりしておらず、全ての中空糸膜の長さも揃っている。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】中空糸膜モジュールの組立法の説明図。
【図2】中空糸膜モジュールの組立法の説明図。
【符号の説明】
【0049】
10 外被材
12 固定部材
17 中空糸膜束
18 接着剤



【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片端側が固定部材で固定された中空糸膜束を有し、中空糸膜束を囲む外被材を有していない中空糸膜モジュールの組立法であり、
所定長さの外被材及び外被材の少なくとも片端に接続した固定部材内に中空糸膜束を収納する工程、
中空糸膜束の少なくとも片端と固定部材を接着剤で一体化する工程、
必要により、前記中空糸膜束の他端側と固定部材を接着剤で一体化する工程、並びに
外被材を取り外す工程、
を具備する中空糸膜モジュールの組立法。
【請求項2】
少なくとも片端側が固定部材で固定された中空糸膜束を有し、中空糸膜束を囲む外被材を有していない中空糸膜モジュールの組立法であり、
中空糸膜束の所望位置を結束手段で結束する工程、
結束された中空糸膜束の少なくとも片端と固定部材を接着剤で一体化する工程、
必要により、中空糸膜束の他端側と固定部材を接着剤で一体化する工程、並びに
必要により結束手段を取り外す工程、
を具備する中空糸膜モジュールの組立法。
【請求項3】
少なくとも片端側が固定部材で固定された中空糸膜束を有し、中空糸膜束を囲む外被材を有していない中空糸膜モジュールの組立法であり、
所定長さの複数本の支柱及び支柱の少なくとも片端に接続した固定部材を用い、前記複数本の支柱で囲まれた空間内及び固定部材内に中空糸膜束を収納する工程、
中空糸膜束の少なくとも片端と固定部材を接着剤で一体化する工程、
必要により、前記中空糸膜束の他端側と固定部材を接着剤で一体化する工程、並びに
必要により、複数本の支柱を取り外す工程、
を具備する中空糸膜モジュールの組立法。
【請求項4】
請求項1又は3記載の中空糸膜モジュールの組立法において、所望位置が結束された中空糸膜束を用いる中空糸膜モジュールの組立法。

【図1】
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【図2】
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