説明

中綿衣服

【課題】中綿の片寄りを防止し、耐洗濯性を向上させ、かつ、ふくらみ感、ハリ感などの外観品位と、生産効率を向上させた中綿衣服を提供する。
【解決手段】中綿を有する衣服であって、少なくとも表地と中袋より構成され、中袋に中綿が充填された衣服であって、中袋がキルティング幅5cm〜15cmの範囲で縫製され、かつ少なくとも表地と中袋とが中袋のキルティング方向と異なる方向にキルティング幅5cm〜15cmの範囲で縫製されてなることを特徴とする中綿衣服。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中綿を有する衣服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冬季に、または寒冷地で使用される保温ジャケットやダウンベスト等の中綿衣服は、表地と裏地を重ねてその間に内部空間を作り、その内部の空間に中綿を封入して、タテ方向またはヨコ方向のいずれか一方向に一定のキルティング幅で縫製を施していた。
【0003】
このような衣服は縫製がシンプル且つ容易で生産効率は良いものの、運動時やクリーニング後に中綿の片寄りが生じ、保温性の悪化のみならず、外観品位を損なうといった欠点があった。
【0004】
こうした問題を改善するため、タテヨコ両方向、さらには斜め方向のキルティングを施した中綿衣服が提案されている(特許文献1〜2参照)。また、中綿として綿にラミネートフィルム層を設けた合繊わたを使用し、封入口より封入することにより中綿の浮遊防止と生産効率を向上させたものが提案されている(特許文献3参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献1〜2のタテ、ヨコ、斜め方向のキルティングを施した中綿衣服は、中綿の片寄り防止に優れた衣服が得られるものの、キルティング線が多数見え、また、キルティング線に囲まれた面の面積が小さいため、ふくらみ感、ハリ感がなく、外観品位が悪いという問題があった。
【0006】
さらに、特許文献3の綿にラミネートフィルム層を設けた合繊わたを封入口より吹き込む方法は、ラミネート層により中綿の重量が増し、衣服全体の軽量感が損なわれてしまうという問題に加え、合繊わたは短繊維の捲縮により塊状となっていることから、中綿が片寄りやすいといった問題があった。
【0007】
このように、従来の中綿衣服はそれぞれ中綿の片寄り防止と生産効率を個々に満足させるものの、それらを同時に満たし、外観品位を満足しうるものではなかった。
【特許文献1】特開平9−49174号公報
【特許文献2】実用新案登録第3057644号公報
【特許文献3】特許第2854561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的はかかる従来技術の欠点を改良し、中綿の片寄りを防止し、耐洗濯性を向上させ、かつ、ふくらみ感、ハリ感などの外観品位と、生産効率を向上させた中綿衣服を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明の中綿衣服は下記の構成から成る。
【0010】
すなわち、本発明の中綿衣服の一態様は、少なくとも表地と中袋より構成され、中袋に中綿が充填された衣服であって、中袋がキルティング幅5cm〜15cmの範囲で縫製され、かつ少なくとも表地と中袋とが中袋のキルティング方向と異なる方向にキルティング幅5cm〜15cmの範囲で縫製されてなることを特徴とする。この中綿衣服においては、好ましくは前記中綿が少なくとも開繊させた短繊維を含有し、短繊維同士が実質的に独立を保ちランダム状に充填されたものがよい。さらに、前記中綿は、開繊させた短繊維からなる原綿70〜30重量%と羽毛30〜70%とを混合させてなるものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の中綿衣服により、中綿の片寄りが少なく耐洗濯性に優れ、外観上はタテ方向もしくはヨコ方向もしくは斜め方向一方向のキルティング衣服に見えることからふくらみ感、ハリ感があり、外観品位が良く、なおかつ生産性の良い中綿衣服を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に示す一態様を用いて、本発明の中綿衣服を詳細に説明する。
図1は、本発明の中綿衣服の一態様を示す正面図であり、図2は、本発明の中綿衣服の他の態様の例を示す正面図である。図3は、図1に示した中綿衣服の部分拡大断面図である。図4は、図2に示した中綿衣服の部分拡大断面図である。なお、図1〜4における破線は中袋のキルティング線であり、実際には外からは見えない(外観上表れない)ものである。図5は本発明の中綿衣服の中綿吹き込み方法の一例を示す作業状態図である。図6は加圧気体とともに短繊維や、短繊維からなる原綿と羽毛とを充填させる工程の概略図である。図7は本発明の中綿衣服の中綿の性能図である。
【0013】
本発明の中綿衣服を構成する要素として、少なくとも表地5、中袋6および中綿7がある。中綿7を充填した中袋6をキルティング幅5cm〜15cmの範囲で縫製した後、少なくとも表地5と中袋6を、中袋6のキルティング方向と異なる方向にキルティング幅5cm〜15cmの範囲で縫製するものである。
【0014】
本発明でいう表地とは、図1〜4に示すように、衣服の表側、すなわち外から見える側に位置する生地を指し、中袋とは、表地5より内側、すなわち人体側に設けられる、中綿7を封入するための袋を指す。
【0015】
中袋6の素材としては不織布、織物、編物のいずれでも良いが、より好ましくは不織布が通気性が良く、中綿7を構成する繊維の貫通が少ないため好適である。表地5の素材としては、中袋6同様、不織布、織物、編物のいずれでも良いが、より好ましくは高密度の織物が外観のふくらみ感とハリ感が良く、保温性に優れるため好ましい。また、本発明の中綿衣服は、中袋6と表地5の他に、裏地を付与し、表地5と裏地の間に中袋6を設けることも何ら差しつかえない。
中綿衣服の縫製方法としては、中綿7の片寄りを防止してなお外観上は一方向のキルティングであるように見え、ふくらみ感、ハリ感があるものとすることから、中袋6をキルティング縫製した後、表地5と中袋6とを、中袋6のキルティング方向と異なる方向にキルティング縫製する方法が好ましい。予め中袋6をキルティング縫製することなく、最初から表地5と中袋6を一緒にキルティング縫製する場合は中綿片寄り防止のために多方向のキルティングが必要となり、その結果、外観に多方向のキルティング線が見え、外観品位が悪く、また、キルティング線に囲まれた面の面積が小さいため、ふくらみ感、ハリ感がないものとなる。
【0016】
キルティング縫製の方法としては、ミシン縫製あるいは超音波ウェルダー等による融着や接着など、いずれでも良い。なかでもミシン縫製が、引張りなど実着用に耐えうる強度を有し、好適である。
【0017】
キルティング縫製は一定方向に一定間隔で行うことが好ましい。中袋6のキルティング線、すなわち第一のキルティング線1同士の間隔(キルティング幅3)と、表地5と中袋6を縫製したキルティング線、すなわち第二のキルティング線2同士の間隔(キルティング幅4)は、共に5cm〜15cmの範囲が中綿7の片寄りが少なく、ふくらみ感とハリ感に優れ好ましい。5cm未満であると、キルティング線が多数見え、キルティング線に囲まれた面の面積が小さいため、ふくらみ感、ハリ感がなく、外観品位が悪い。逆に15cmを超えると、中綿7の片寄りが生じやすくなり、耐洗濯性が悪い。より好適には9〜12cmの範囲である。
【0018】
本発明においては、中袋6のみのキルティングと、中袋6と表地5とのキルティングをそれぞれ方向を変えて、中袋6を二重にキルティングすることにより、中綿7の片寄りを防止して耐洗濯性を向上させ、なおかつ外観上は一方向のキルティングであるように見え、ふくらみ感、ハリ感を高めることが可能となる。
【0019】
また、本発明の中綿衣服においては、図7に示すように中綿7の素材に少なくとも開繊させた短繊維を使用し、中袋6中で短繊維どうしが実質的に独立を保ちランダム状に充填されたものであることが好ましい。さらに、この中綿7は、開繊させた短繊維からなる原綿70〜30重量%と羽毛30〜70%とを混合させてなるものであることがより好ましい。
【0020】
通常、短繊維の原綿12は捲縮により塊状となっていることから、中綿が中袋の中で片寄りやすいといった欠点がある。これを解消するためには短繊維どうしが実質的に独立を保ちランダム状に充填されるよう原綿12を詰めることが重要である。そうすることにより、従来の短繊維が平面方向に向いたシート状の綿を使用した衣服に比べて軽量で嵩高な衣服を得ることが出来る。
【0021】
短繊維を開繊させる方法としては図5に示すように一般的にカード機8が用いられる。十分にほぐした原綿12をカード機8にかけて開繊させた短繊維はシート状であり、大部分の短繊維はシート平面方向を向いているため、そのままの状態では従来の中綿と同じである。本発明の中綿衣服に使用する中綿7は、更にファン9で得られた加圧気体10をカード機8で得られた原綿12に吹き付け、加圧気体10の気流の中で短繊維の方向をランダムに配向させる。次いでランダムに配向した短繊維を加圧気体10とともに袋に圧入するように吹き込んで本発明の中綿衣服に使用する中綿7を得る。
【0022】
短繊維の方向をランダムに分離させる方法としては、加圧気体10を原綿12に吹き付ける方法以外にも、図6に示すように原綿12をファン9で吸引し加圧気体10とともにノズル14から吹き出す方法や、シート状の原綿12を物理的に叩き落としたり引き裂いたりするような方法も考えられるが、加圧気体10を吹き付ける方法が短繊維の方向をランダムに分離させることが容易である。
【0023】
カード機8に通して得られるシート状の原綿12は、接着剤となるバインダー類を付着させないことが好ましい。更に、短繊維の方向をランダムに配向させた綿も、接着剤となるバインダー類を付着させないことが好ましい。
【0024】
本発明において中綿7(もしくは原綿12)に使用する短繊維は、ポリエステル、ポリアクリル、ポリアミド、ポリプロピレン、レーヨンなどの化学繊維、木綿、羊毛、麻、絹などの天然繊維などいずれも使用できるが、特に上記したような軽量で嵩高な綿を得るためにはポリエステル繊維を使用することが好ましい。更に、吸湿性などを考慮して木綿などの天然繊維を混繊させることや後加工により機能付与した短繊維を使用することも好ましい形態の一つである。また化学繊維については、中空繊維や捲縮繊維などを用いて、嵩高性や保温性を向上させることも好ましい形態の一つである。短繊維の繊度は、衣服の風合いを柔らかくするために細くすることが好ましく、一般的に1〜5デシテックス、より好ましくは、1〜3デシテックス程度にするとより風合いの柔らかい綿が得られる。
【0025】
本発明においては、中綿7に前述の短繊維からなる原綿12に加え、ふくらみ・ハリ感、保温性を高めるために、羽毛13を一定の混合比率で混合させることが好ましい。本発明に使用される羽毛13としては、ダウンとフェザーとを配合したものが好ましい。ここでいうダウンとは、カモ、アヒル、ガチョウなど、水鳥の胸部分に生えている非常に柔らかい羽のことで、中央から柔らかい糸状の羽が放射線状に伸びた球形状をしているものである。よって、非常に柔らかく、細い羽が互いに絡み合い、多くの空気層を構成するために、フェザーに比べて嵩高で、保温性にも優れている。フェザーは水鳥の体を覆う羽のことで、羽軸があり、細い毛が木の枝のように生えているものである。ちょうど木の葉のような形状をしている。
【0026】
本発明の羽毛13の混合比率は、中綿7の全重量に対して30〜70重量%の範囲であることが好ましい。30重量%以上であれば、ふくらみ・ハリ感、保温性が得られ、へたりが生じにくい。また、70重量%以下であれば耐洗濯性に優れ、混合する短繊維の抗菌・保温・消臭などの機能加工効果も得られやすい。より好適な範囲は30〜50重量%である。
【0027】
本発明の羽毛13に含まれるフェザーはダウンに比べると硬く、嵩高性も劣る。上述したように、ダウンの方が風合い、嵩高性に優れているために一般的には羽毛の配合比率はダウンが大きい方が良いとされている。しかし、ダウンはフェザーに比べ高価なため、風合い、嵩高性などを考慮しながら羽毛の配合比率が決められる。本発明においては、羽毛13の配合比率は特に限定するものではないが、より好適にはダウンが80〜90重量%かつフェザーが20〜10重量%の範囲である。
【0028】
本発明の上記態様によれば、従来羽毛のみで構成された中綿衣服では不可能であった耐洗濯性、抗菌・保温・消臭などの機能加工を、合成繊維短繊維からなる原綿12を混合することにより得ると共に、羽毛を一定の割合で混合することにより、原価が高い羽毛の使用量を抑えつつ、ふくらみ・ハリ感、保温性もまた有する中綿衣服を得ることが可能となる。
短繊維をランダムに配向させた原綿12および羽毛13を混合して衣服の中綿7を得る方法としては、タンブルで混ぜる方法、中袋6に原綿12を先に薄く投入した後、羽毛13を投入する方法、コロナ放電などで静電気を帯びさせた原綿12と羽毛13を絡ませる方法などあるが、いずれでも良い。中綿7を衣服に詰める方法としては、予め適度な大きさの中袋6に加圧空気とともに圧入するように充填させて得た原綿12もしくは原綿12および羽毛13を、衣服を構成する中袋6の中へ手作業で詰め込み、適度に平らにならした後で、前述の中袋6の縫製方法でキルティングすることが好ましい。更に好ましくは、図6に示すように、短繊維をランダムに配向させた原綿12もしくは原綿12および羽毛13を加圧気体10ともに、衣服を構成するキルティングする前の中袋6あるいはキルティングでできた中袋6の空間の中へ直接圧入するように充填させるとよい。この場合、型板11を中袋6を挟むように当接させながら原綿12もしくは原綿12および羽毛13を加圧気体10とともに衣服を構成する中袋6の中に直接圧入すると良い。こうすることにより、加圧気体10の圧力によって中袋6が大きく膨らむことを防ぎ、衣服を構成する部材として適当な厚さにコントロールしながら短繊維をランダムに配向させた状態で充填することが可能となる。
【0029】
上記方法により得られる中綿7は、短繊維を含みながら羽毛100%に近似した風合いを持ち、縫製面での生産効率および耐洗濯性が良いというメリットがある一方、羽毛100%に比べると中綿密度が高いため、一方向のみでのキルティングでは中綿7の片寄りが生じやすい。そこで、本発明においては、前述のキルティング縫製方法と組み合わせることで、中綿7の片寄りを防止しつつ、かつ一方向キルティングの外観を満足させる中綿衣服を得ることが可能となる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
実施例および比較例において用いた中綿衣服の外観(デザイン、ハリ感、ふくらみ感)、中綿7の安定性、耐洗濯性について評価者2名にて着用評価を実施した。◎および○の個数を総合評価とした。総合評価が大きいものほど優れているが、20点以上を良好とした。
【0032】
(評価)
(1)外観−デザイン評価
着用した時のデザイン良否を記号◎、○、△、×の4段階で評価した。本発明の中綿衣服は、○以上を良好とした。表1に評価基準を示す。
【0033】
【表1】

【0034】
(2)外観−ハリ感評価
着用した時に外観上より見える衣服のハリ感を記号◎、○、△、×の4段階で評価した。本評価においては、○以上を合格とした。表1に評価基準を示す。
【0035】
(3)外観−ふくらみ感
着用した時に外観上より見える中綿7のふくらみ感を記号◎、○、△、×の4段階で評価した。本評価においては、○以上を合格とした。表1に評価基準を示す。
【0036】
(4)中綿安定性
着用した中綿衣服の中綿7に片寄りがないか、中綿7の安定性を、身頃部の縫目線より5cm以上離れたキルティング面10点の厚さの標準偏差で評価した。測定には編物用プレッサーフートを使用し、荷重3g/cmをかけたときの厚さをJIS L 1096(1999)に準じて測定した後、標準偏差を算出した。本評価においては、標準偏差5.0mm以内を合格とした。表1に評価基準を示す。
【0037】
(5)耐洗濯性
着用した中綿衣服をドライクリーニングした際、型くずれによる中綿衣服の嵩高低下がないか、洗濯前後での嵩高低下率(%)を評価した。測定には編物用プレッサーフートを使用し、荷重3g/cmをかけたときの厚さをJIS L 1096(1999)に準じて測定した後、式(1)の計算式で嵩高低下率を算出した。本発明の移動用シートは、−10%以下を合格とした。
嵩高低下率(%)=(1−D/D)×100 (1)
:洗濯前の中綿衣服の厚さ(mm)。
:洗濯後の中綿衣服の厚さ(mm)。
【0038】
実施例1
図1に示した中綿衣服、すなわちポリエステル短繊維1.1dTex×38mmを原綿12とし、図5に示す装置で中綿7を製造した
カード機8として、池上機械社製のM32型カード機を使用し、十分に開繊させたシート綿を作り、次いで、加圧気体10を発生せるファン9として昭和ファン社製のS2HPL型のファン(2700rpm)を使用して上記のシート綿に加圧気体10を吹き付け、加圧気体10とともにランダムに分離した短繊維の中綿7を、衣服を構成する中袋6の中に直接圧入した。当該中袋6は、高密度の不織布を使用し、中綿衣服の前身頃、後身頃、袖などのパーツとなる形に裁断し、中袋6を縫製して得た。その後、タテ方向に第一のキルティング線同士の間隔(キルティングの幅3)を10cmとして第一のキルティング線1を縫製した後、ポリエステルサテンの表地5とポリエステルタフタの裏地を中袋6が中間にくるように重ねて配置し、ヨコ方向に第二のキルティング線同士の間隔(キルティングの幅4)を10cmとして第二のキルティング線2を縫製した。第一のキルティング線と第二のキルティング線とがなす角度は90度である。その後各部材どうしを組み立て縫いして本発明の中綿衣服を得た。表2にその結果を示す。
【0039】
実施例2
図2に示した中綿衣服、すなわちアクリル短繊維3.0dTex×38mmを原綿12とし、天然のグースダウンを羽毛13とし、図5に示す装置で中綿7を製造した。なお、混合比率は原綿12を50%、羽毛13を50%とした。中袋6には高密度不織布を使用し、斜め45度方向に第一のキルティング線の幅3を5cmとして第一のキルティング線1を縫製した後、ポリエステルツイルの表地5を中袋6の外側に配置し、斜め135度方向に5cmで第二のキルティング線2を縫製後、部材どうしを組み立て縫いして本発明の中綿衣服を得た。表2にその結果を示す。なお、その他の構成は実施例1と同様にした。
【0040】
実施例3
図1に示した中綿衣服、すなわち実施例1の中袋6に高密度織物を使用し、タテ方向に第一のキルティング線の幅3を14cmとして第一のキルティング線1を縫製した後、ナイロンタフタの表地5とナイロンタフタの裏地を中袋6が中間にくるように配置し、ヨコ方向に第二のキルティング線の幅4を14cmとして第二のキルティング線2を縫製した。第一のキルティング線と第二のキルティング線とがなす角度は90度である。その後部材どうしを組み立て縫いして本発明の中綿衣服を得た。表2にその結果を示す。なお、その他の構成は実施例1と同様にした。
【0041】
実施例4
図1に示した中綿衣服、すなわちポリエステル短繊維1.1dTex×38mmを原綿12とし、ダウンとフェザーを9:1の割合で配合したものを羽毛13とし、図5に示す装置で中綿7を製造した。なお、混合比率は原綿12を70%、羽毛13を30%とした。
【0042】
カード機8として、池上機械社製のM32型カード機を使用し、十分に開繊させたシート綿を作り、次いで、加圧気体10を発生せるファン9として昭和ファン社製のS2HPL型のファン(2700rpm)を使用して上記のシート綿に加圧気体10を吹き付け、加圧気体10とともにランダムに分離した短繊維の中綿7を、衣服を構成する中袋6の中に直接圧入した。当該中袋6は、高密度の不織布を使用し、中綿衣服の前身頃、後身頃、袖などのパーツとなる形に裁断し、中袋6を縫製して得た。その後、タテ方向に第一のキルティング線同士の間隔(キルティングの幅3)を10cmとして第一のキルティング線1を縫製した後、ポリエステルサテンの表地5とポリエステルタフタの裏地を中袋6が中間にくるように重ねて配置し、ヨコ方向に第二のキルティング線同士の間隔(キルティングの幅4)を10cmとして第二のキルティング線2を縫製した。第一のキルティング線と第二のキルティング線とがなす角度は90度である。その後各部材どうしを組み立て縫いして本発明の中綿衣服を得た。表2にその結果を示す。
【0043】
比較例1
ポリエステル短繊維1.1dTex×38mmを原綿12とし、図に示す装置で中綿7を製造した。カード機8として、池上機械社製のM32型カード機を使用し十分に開繊させたシート綿を作り、次いで、加圧気体10を発生せるファン9として昭和ファン社製のS2HPL型のファン(2700rpm)を使用して上記のシート綿に加圧気体10を吹き付け、加圧気体10とともにランダムに分離した短繊維を、衣服を構成する中袋6の中に直接圧入した。当該中袋6は、高密度の不織布を使用し、中綿衣服の前身頃、後身頃、袖などのパーツとなる形に裁断し、中袋6を縫製して得た。その後、ポリエステルサテンの表地5とポリエステルタフタの裏地を中袋6が中間にくるように配置し、中袋6のみのキルティング縫製、すなわち第一のキルティング線1を縫製することなく、タテ方向のみに第二のキルティング線の幅4を20cmとして第二のキルティング線2を縫製した。その後各部材どうしを組み立て縫いして本発明の中綿衣服を得た。表2にその結果を示す。
【0044】
比較例2
ポリエステル短繊維6.6dTex×38mmを原綿12とし、実施例と同じカード機8でシート綿を作り、次いでアクリル系樹脂のエマルション液(濃度5%)を調整し、このエマルション液を、シート綿の両面に、片面当たり面密度が5g/平方メートルのとなるようにスプレーして、その後、乾燥およびキュアリングを施して面密度が90g/平方メートルの中綿7を作製した。次いでこの綿を実施例と同じ中綿衣服の前身頃、後身頃、袖などのパーツとなる形に裁断し、ポリエステルサテンの表地5とポリエステルタフタの裏地の間に挟んで、中袋6のみのキルティング縫製、すなわち第一のキルティング線1を縫製することなく、第二のキルティング線の幅4を4cmとしてタテヨコ二方向に第二のキルティング線2を縫製し、部材どうしを組み立て縫いして本発明の中綿衣服を得た。表2にその結果を示す。
【0045】
比較例3
比較例2のポリエステルサテンの表地5とポリエステルタフタの裏地の間に中綿7を挟んで、キルティング縫製を行わず、部材どうしを組み立て縫いして本発明の中綿衣服を得た。表2にその結果を示す。なお、その他の構成は比較例2と同様にした。
【0046】
【表2】

【0047】
表2から明らかなように、本発明の中綿衣服は、中袋6単体を5〜10cmの範囲でキルティングした後、表地5を重ね合わせて異方向に、5〜10cmの範囲でキルティングを行うことにより、外観(デザイン、ふくらみ感、ハリ感)、中綿7の安定性と耐洗濯性に優れた中綿衣服となった。また、中綿7には開繊された短繊維からなる原綿12を70〜30%の範囲かつ羽毛13を30〜70%の範囲で混合したものを用いることにより、縫製時の生産効率に優れた中綿衣服となった。
【0048】
すなわち、本発明の中綿衣服は、発明の要素を多く満たす程、総合評価は高いものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、冬季に使用される保温ジャケットやダウンベスト等の中綿衣服として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の中綿衣服の一態様を示す正面図である。
【図2】本発明の中綿衣服の他の態様の例を示す正面図である。
【図3】図1に示した中綿衣服の部分拡大断面図(斜視図)である。
【図4】図2に示した中綿衣服の部分拡大断面図(斜視図)である。
【図5】本発明の中綿衣服の中綿吹き込み方法の一例を示す作業状態図
【図6】加圧気体とともに短繊維および羽毛を充填させる工程の概略図である。
【図7】本発明の中綿衣服の中綿の性能図である。
【符号の説明】
【0051】
1 :第一のキルティング線
2 :第二のキルティング線
3 :第一のキルティング線の幅
4 :第二のキルティング線の幅
5 :表地
6 :中袋
7 :中綿
8 :カード機
9 :ファン
10 :加圧気体
11 :型板
12 :原綿
13 :羽毛
14 :ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表地と中袋より構成され、中袋に中綿が充填された衣服であって、中袋がキルティング幅5cm〜15cmの範囲で縫製され、かつ少なくとも表地と中袋とが中袋のキルティング方向と異なる方向にキルティング幅5cm〜15cmの範囲で縫製されてなることを特徴とする中綿衣服。
【請求項2】
前記中綿が、少なくとも開繊させた短繊維を含有し、該短繊維同士が実質的に独立を保ちランダム状に充填されたものであることを特徴とする請求項1に記載の中綿衣服。
【請求項3】
前記中綿が、開繊させた短繊維からなる原綿70〜30重量%と羽毛30〜70%とを混合させてなることを特徴とする請求項2に記載の中綿衣服。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−211387(P2007−211387A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345971(P2006−345971)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】