説明

中間転写媒体

【課題】熱転写シートとの「離型性」、及び被転写体との「転写性(接着性)」に優れる中間転写媒体を提供する。
【解決手段】基材(1)と、該基材の一方の面に少なくとも保護層(4)、及び受容層(5)が積層されてなる中間転写媒体であって、受容層には、側鎖型アラルキル変性シリコーンが、受容層の全質量に対し0.5〜5質量%の割合で含有されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間転写媒体に関し、特には、熱転写シートとの「離型性」、及び被転写体との「転写性(接着性)」に優れる中間転写媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、簡便な印刷方法として熱転写方法が広く使用されるようになってきた。熱転写方法は、基材シートの一方の面に色材層が設けられた熱転写シートと、必要に応じて画像受容層が設けられた熱転写受像シートを重ね合わせ、サーマルヘッド等の加熱手段により熱転写シートの背面を画像状に加熱して、色材層に含まれる色材を選択的に移行させて、熱転写受像シート上に画像を形成する方法である。
【0003】
熱転写方法は、溶融転写方式と昇華転写方式に分けられる。溶融転写方式は顔料等の色材を熱溶融性のワックスや樹脂等のバインダーに分散させた熱溶融インキ層をPETフィルム等の基材シートに担持させた熱転写シートを用い、サーマルヘッド等の加熱手段に画像情報に応じたエネルギーを印加し、紙やプラスチックシート等の熱転写受像シート上に、色材をバインダーと共に転写する画像形成方法である。溶融転写方式による画像は、高濃度で鮮鋭性に優れ、文字等の2値画像の記録に適している。
【0004】
一方、昇華転写方式は主に昇華により熱移行する染料を樹脂バインダー中に溶解或いは分散させた染料層をPETフィルム等の基材シートに担持させた熱転写シートを用い、サーマルヘッド等の加熱手段に画像情報に応じたエネルギーを印加し、紙やプラスチック等の基材シート上に(必要に応じて染料受容層を設けてなる熱転写受像シート上に)、染料のみを転写移行させる画像形成方法である。昇華転写方式は、印加されるエネルギー量に応じて染料の移行量を制御できるため、サーマルヘッドのドット毎に画像濃度を制御した階調画像の形成を行なうことができる。また、使用する色材が染料であるため、形成される画像には透明性があり、異なる色の染料を重ねた場合の中間色の再現性が優れている。したがって、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック等の異なる色の熱転写シートを用い、熱転写受像シート上に各色染料を重ねて転写する際にも、中間色の再現性に優れた高画質な写真調フルカラー画像の形成が可能である。
【0005】
マルチメディアに関連した様々なハード及びソフトの発達により、この熱転写方法は、コンピューターグラフィックス、衛星通信による静止画像そしてCD−ROMその他に代表されるデジタル画像及びビデオ等のアナログ画像のフルカラーハードコピーシステムとして、その市場を拡大している。この熱転写方法による熱転写受像シートの具体的な用途は、多岐にわたっている。代表的なものとしては、印刷の校正刷り、画像の出力、CAD/CAMなどの設計およびデザインなどの出力、CTスキャンや内視鏡カメラなどの各種医療用分析機器、測定機器の出力用途そしてインスタント写真の代替として、また身分証明書やIDカード、クレジットカード、その他カード類への顔写真などの出力、さらに遊園地、ゲームセンター、博物館、水族館などのアミューズメント施設における合成写真、記念写真としての用途などをあげることができる。
【0006】
上記の熱転写受像シートの用途の多様化に伴い、任意の対象物に熱転写画像を形成する要求が高まっている。通常は、熱転写画像を形成する対象物として、基材上に受容層を設けた専用の熱転写受像シートを用いているが、この場合には、基材等に制約が生ずることとなる。このような状況下、特許文献1に示される受容層が基材上に剥離可能に設けられた中間転写媒体が提案されている。この中間転写媒体によれば、染料層を有する中間転写媒体を用いて、受容層に染料を転写して画像を形成し、その後に中間転写媒体を加熱して、受容層を任意の被転写体上に転写することができ、被転写体に制約を受けることがなく熱転写画像の形成が可能となる。
【0007】
しかしながら、上記の中間転写媒体を用いて形成された熱転写画像は、最表面が画像が形成された受容層であることから耐候性、耐摩擦性、耐薬品性等の耐久性に欠ける弱点がある。そこで、近時、特許文献2に示されるように、基材上に、剥離層、保護層、受容層兼接着層が設けられた中間転写媒体が提案されている。この中間転写媒体によれば、熱転写画像の表面に保護層が形成されることから、熱転写画像に耐久性を付与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−238791号公報
【特許文献2】特開2004−351656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般的に、上記の特許文献2で提案されるように中間転写媒体の受容層は、被転写体と受容層との「転写性(接着性)」を考慮して、転写性(接着性)に優れた樹脂、例えば軟化点が100℃以上のスチレン系樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等が用いられている。しかしながら、これらの「転写性(接着性)」の高い樹脂を主体として構成される受容層を用いた場合には、「転写性(接着性)」が高い分、受容層と熱転写シートとの「離型性」が悪くなり、熱転写シートを用いて受容層上に熱転写画像を形成する際、受容層と熱転写シート(染料層)とが熱融着をおこし、受容層の成分が熱転写シート(染料層)側にとられる不良が生ずることとなる。
【0010】
つまり、中間転写媒体の分野においては、熱転写シートとの「離型性」、被転写体との「転写性(接着性)」とを両立させる必要があるが、これら熱転写シートとの「離型性」、被転写体との「転写性(接着性)」はトレードオフの関係にあり、現状、「離型性」と「転写性(接着性)」とを両立させた中間転写媒体は存在しない。
【0011】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、熱転写シートとの「離型性」、及び被転写体との「転写性(接着性)」に優れる中間転写媒体を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明は、該基材の一方の面に少なくとも保護層、及び受容層が積層されてなる中間転写媒体であって、前記受容層には、側鎖型アラルキル変性シリコーンが、受容層の全質量に対し0.5〜5質量%の割合で含有されていることを特徴とする。
【0013】
また、側鎖型エポキシ変性シリコーンが、受容層の全質量に対し0.5〜5質量%の割合で更に含有されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、熱転写シートとの「離型性」、及び被転写体との「転写性(接着性)」に優れる中間転写媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本願発明の中間転写媒体の層構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の中間転写媒体10について図面を用いて具体的に説明する。図1に示すように本発明の中間転写媒体10は、基材1と、該基材1の一方の面(図1に示す場合にあっては基材1の上面)に形成される保護層4、及び受容層5とから構成される。また、保護層4と受容層5とは熱転写時に被転写体に転写される構成をとる。本発明において、熱転写時に被転写体に転写される層を転写層2という。
【0017】
ここで、本発明は、受容層5に、側鎖型アラルキル変性シリコーンが、受容層5の全質量に対し0.5〜5質量%の割合で含有されていることを特徴とする。以下、本発明について更に具体的に説明する。
【0018】
(基材)
基材1は本発明の中間転写媒体10における必須の構成であり、保護層4(剥離層3を設ける場合にあっては剥離層3)を保持するために設けられる。基材1について特に限定はなく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の耐熱性の高いポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリエチレン誘導体、ポリアミド、ポリメチルペンテン等のプラスチックの延伸または未延伸フィルムが挙げられる。また、これらの材料を2種以上積層した複合フィルムも使用することができる。基材1の厚さは、その強度および耐熱性等が適切になるように材料に応じて適宜選択することができるが、通常は1〜100μm程度のものが好ましく用いられる。
【0019】
(転写層)
図1に示すように基材1上には、熱転写時に基材1から剥離可能に設けられた転写層2が形成されている。この転写層2は、少なくとも本発明の中間転写媒体10における必須の構成である保護層4と受容層5とから構成されている(図1に示す場合にあっては、剥離層3、保護層4、受容層5とから構成されている)。そして、この転写層2は熱転写時に基材1から剥離され、被転写体に転写される。
【0020】
(剥離層)
基材1からの転写層2の剥離性を向上させるために、基材1と保護層4との間に剥離層3を形成してもよい。剥離層3を形成する樹脂としては、従来公知の離型性樹脂であれば特に限定されることはなく、例えば、ワックス類、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、フッ素樹脂、フッ素変性樹脂、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、熱架橋性エポキシ−アミノ樹脂及び熱架橋性アルキッド−アミノ樹脂等が挙げられる。また、剥離層3は、1種の樹脂からなるものであってもよく、2種以上の樹脂からなるものであってもよい。また剥離層3は、離型性樹脂に加えイソシアネート化合物等の架橋剤、錫系触媒、アルミニウム系触媒等の触媒を用いて形成することとしてもよい。なお、剥離層3は、転写時に被転写体側へ移行してもよく、基材1側に残ることとしてもよく、また剥離層3の厚みは0.5〜5μm程度が一般的である。剥離層3の形成方法としては、上記樹脂を適当な溶剤により、溶解または分散させて剥離層3用塗工液を調製し、これを基材1上にグラビア印刷法、スクリーン印刷法またはグラビア版を用いたリバースコーティング法等の従来公知の手段により塗布、乾燥して形成することができる。
【0021】
(保護層)
保護層4を構成する樹脂材料について特に限定はなく、例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、紫外線吸収性樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、これらの各樹脂をシリコーン変性させた樹脂、これらの各樹脂の混合物、電離放射線硬化性樹脂、紫外線吸収性樹脂等が使用可能である。
【0022】
また、電離放射線硬化性樹脂を含有する保護層4は、耐可塑剤性や耐擦過性が特に優れている点で保護層4のバインダーとして好適に用いることができる。電離放射線硬化性樹脂としては特に限定されることはなく、従来公知の電離放射線硬化性樹脂の中から適宜選択して用いることができ、例えば、ラジカル重合性のポリマー又はオリゴマーを電離放射線照射により架橋、硬化させ、必要に応じて光重合開始剤を添加し、電子線や紫外線によって重合架橋させたものを用いることができる。紫外線吸収性樹脂を含有する保護層4は、印画物に耐光性を付与することに優れている。
【0023】
紫外線吸収性樹脂としては、例えば、反応性紫外線吸収剤を熱可塑性樹脂又は上記の電離放射線硬化性樹脂に反応、結合させて得た樹脂を使用することができる。より具体的には、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、ニッケルキレート系、ヒンダートアミン系のような従来公知の非反応性の有機系紫外線吸収剤に、付加重合性二重結合(例えばビニル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基など)、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基のような反応性基を導入したものが挙げられる。
【0024】
また、必要に応じて、例えば、滑剤、可塑剤、充填剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、染料、顔料等の着色剤、その他の添加剤等を添加してもよい。保護層4の形成方法としては、上記に例示される樹脂材料の1種または2種以上を適当な溶剤により、溶解または分散させて保護層用塗工液を調製し、これを基材1(必要に応じて基材1上に設けられた剥離層3)上にグラビア印刷法、スクリーン印刷法またはグラビア版を用いたリバースコーティング法等の従来公知の手段により塗布、乾燥して形成することができる。保護層4の厚さについて特に限定はないが、通常は乾燥後の厚みで0.1〜50g/m2であり、好ましくは1〜20g/m2程度である。
【0025】
(受容層)
図1に示すように、保護層4上には転写層2を構成する受容層5が設けられている。この受容層上には、色材層を有する熱転写シートから熱転写法によって画像が形成される。そして、画像が形成された中間転写媒体の転写層2は、被転写体上に転写され、その結果、印画物が形成される。このため、受容層5を形成するための材料としては、被転写体との密着性(接着性)が高く、且つ昇華性染料または熱溶融性インキ等の熱移行性の染料を受容し易い樹脂材料を使用することができる。
【0026】
樹脂材料について特に限定はないが、本発明においては、例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化ポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルエステル等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンやプロピレン等のオレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体系樹脂、アイオノマー、セルロースジアセテート等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂材料の中でも特に好ましいものはポリエステル系樹脂及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体及びそれらの混合物である。
【0027】
受容層5は側鎖型アラルキル変性シリコーンを含有する。側鎖型アラルキル変性シリコーンは離型剤としての役割を果たし、優れた「離型性」を有する。したがって、受容層が側鎖型アラルキル変性シリコーンを含有する本発明によれば、画像形成時に色材層を有する熱転写シートと、中間転写媒体の受容層5との融着を防ぐことができる。
【0028】
また、一般的に離型剤としての役割を果たす物質の含有量が多くなるほど、同一温度における被転写体と受容層との転写性(接着性)は低下していく。転写性(接着性)を向上させるためには、転写時の温度を上げる必要があるが、転写時の温度が上がるにしたがって被転写体の変形等の問題が生ずることとなる。本発明の受容層5に含有される側鎖型アラルキル変性シリコーンは、受容層5の総質量(樹脂材料の総質量+離型剤の総質量の合計質量)に対し0.5質量%以上含有されていれば優れた「離型性」を有し、また、その上限値は5質量%以上に規定されている。したがって、本発明の中間転写媒体10によれば、受容層5に含有される離型剤の含有量を、従来に比べ大幅に低減させる事ができ、被転写体が変形等することのない温度(「155℃」程度の温度)で、被転写体に受容層5を含む転写層2を転写することができる。
【0029】
また、側鎖型アラルキル変性シリコーンの含有量が5質量%を超えても、それ以上の熱転写シートとの「離型性」の向上効果は認められない一方で、被転写体との「転写性(接着性)」は徐々に低下する。したがって、本発明の受容層5には、側鎖型アラルキル変性シリコーンが、受容層5の総質量に対し0.5質量%以上5質量%以下の割合で含有されている。
【0030】
上記で説明した側鎖型アラルキル変性シリコーンは「離型性」に優れるが、受容層5の「離型性」を更に向上させることに着目すると、受容層5には、離型剤としての役割を果たす側鎖型エポキシ変性シリコーンが更に含有されていることが好ましい。側鎖型エポキシ変性シリコーンは、「転写性」に関しては側鎖型アラルキル変性シリコーンに劣るものの、側鎖型アラルキル変性シリコーンに比べ、非常に優れた「離型性」を有する。したがって、「離型性」にも優れ、「転写性」も非常に良好な側鎖型アラルキル変性シリコーンと、「離型性」が非常に良好な側鎖型エポキシ変性シリコーンとを組合わせて用いることにより、「離型性」、「転写性」ともに非常に優れた中間転写媒体とすることができる。
【0031】
また、側鎖型エポキシ変性シリコーンは、受容層の全質量に対し、0.5〜5質量%の割合で含有されていることが好ましい。側鎖型エポキシ変性シリコーンの含有量が0.5質量%未満である場合には、側鎖型エポキシ変性シリコーンを含有させることによる「離型性」の向上効果が低減し、また、側鎖型エポキシ変性シリコーンの含有量が5質量%以上である場合には、その分離型剤の含有量が増えることとなり「転写性(接着性)」が低下する虞があるためである。
【0032】
また、受容層5に側鎖型アラルキル変性シリコーンと、側鎖型エポキシ変性シリコーンとを含有させる場合にあっては、上記で説明した含有量の範囲内であって、かつ、その総和(側鎖型アラルキル変性シリコーンと、側鎖型エポキシ変性シリコーンとの合計質量)が、受容層5の総質量に対し1〜5質量%であることが好ましい。この割合で、側鎖型アラルキル変性シリコーンと、側鎖型エポキシ変性シリコーンとを受容層5に含有させることにより、受容層5に、特に優れた「離型性」と、「転写性(接着性)」を付与することができる。
【0033】
また、側鎖型エポキシ変性シリコーンとの質量比が9:1〜1:9の範囲外である場合、すなわち、側鎖型アラルキル変性シリコーンの占める割合が多い場合、側鎖型エポキシ変性シリコーンの占める割合が多い場合には、前者の場合には、更なる「離型性」の向上効果が得られず、後者の場合には、被転写体との「転写性(接着性)」が低下することとなる。このような点を考慮すると、側鎖型アラルキル変性シリコーンと側鎖型エポキシ変性シリコーンとの質量比は9:1〜1:9の範囲内であることが好ましい。
【0034】
上記で説明したように、本発明の中間転写媒体は、受容層5にアラルキル変性シリコーンが含有されていることを必須の構成とし、好ましくは、側鎖型エポキシ変性シリコーンが更に含有される構成をとるが、このことは、側鎖型アラルキル変性シリコーン、側鎖型エポキシ変性シリコーン以外の離型剤が含有されることを禁止する趣旨ではない。つまり、必要に応じて適宜、側鎖型アラルキル変性シリコーン、側鎖型エポキシ変性シリコーン以外の離型剤としての役割を果たす物質を受容層5に含有することもできる。
【0035】
受容層5は、例えば、上述に例示される材料の中から選択される単独または複数の樹脂材料、及び上記で説明した側鎖型アラルキル変性シリコーン、必要に応じて側鎖型エポキシ変性シリコーン、又は他の離型剤を加え、水または有機溶剤等の適当な溶剤に溶解または分散させて受容層用塗工液を調製し、これをグラビア印刷法、スクリーン印刷法またはグラビア版を用いたリバースコーティング法等の手段により、塗布、乾燥して形成することができる。受容層5の厚さについても特に限定はないが、通常、乾燥状態で1〜10g/m2程度である。
【0036】
(プライマー層)
保護層4と受容層5との接着力を向上させるために、保護層4と受容層5との間にプライマー層(図示しない)を形成することとしてもよい。プライマー層としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、酸変性ポリオレフィン系樹脂、エチレンと酢酸ビニル或いはアクリル酸などとの共重合体、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ゴム系化合物などを使用することができ、好ましくは、酸素若しくは窒素を有するもの、若しくはイソシアネート化合物化合物を反応性のもの、例えばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂、アイオノマー樹脂、ゴム系樹脂等の従来の接着剤として既知のものである。また、プライマー層にはマイクロシリカやポリエチレンワックスなどのフィラーを含有させることが好ましい。
【0037】
(被転写体)
被転写体上には、上述した中間転写媒体の熱転写画像の形成された転写層2が転写され、その結果、各種耐久性に優れた熱転写画像を有する印画物が得られる。本発明の中間転写媒体が適用される被転写体は特に限定されず、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、天然繊維紙、コート紙、トレーシングペーパー、ガラス、金属、セラミックス、木材、布等いずれのものでもよい。特に本発明の中間転写媒体は、「155℃」程度の温度で、これらの被転写体に転写層を転写可能であることから、「155℃」以下の温度で変形することがない材料からなる被転写体と特に好適に組合せて用いることができる。
【実施例】
【0038】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下、特に断りのない限り、部または%は質量基準である。
【0039】
(実施例1)
基材として厚さ12μmのPETフィルムを用い、該基材の一方の面へ、グラビアコート法で、下記組成の剥離層形成用塗工液を、乾燥後1.0μmになるように塗布し乾燥して剥離層を形成した。次いで、この剥離層上に、グラビアコート法で、下記の保護層形成用塗工液を、乾燥後2.0μmになるように塗布し乾燥して保護層を形成した。次いで、この保護層上に、グラビアコート法で、下記のプライマー層形成用塗工液を、乾燥後1.0μmになるように塗布し乾燥してプライマー層を形成した。次いで、このプライマー層上に、グラビアコート法で、下記の受容層形成用塗工液1を、乾燥後2.5μmになるように塗布し乾燥して受容層を形成し実施例1の中間転写媒体を得た。
【0040】
<剥離層形成用塗工液>
・アクリル樹脂 95部
(BR−87 三菱レイヨン(株)製)
・ポリエステル樹脂 5部
(バイロン200 東洋紡(株)製)
・トルエン 200部
・MEK 200部
【0041】
<保護層形成用塗工液>
・スチレン−アクリル系樹脂 150部
(ミューティクルPP320P 三井化学(株)製)
・ポリビニルアルコール 100部
(C−318 (株)DNPファインケミカル製)
・水/エタノール(質量比1/2) 70部
【0042】
<プライマー層形成用塗工液>
・ポリエステル樹脂 33部
(バイロン200、東洋紡(株)製)
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 27部
(CNL、日信化学工業(株)製)
・イソシアネート硬化剤 15部
(XEL硬化剤、ザ・インクテック(株)製)
・トルエン 50部
・MEK 50部
【0043】
<受容層形成用塗工液1>
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 98部
(CNL 日信化学工業(株)製)
・側鎖型アラルキル変性シリコーンオイル 2部
(KF−410 信越化学工業(株)製)
・トルエン 200部
・MEK 200部
【0044】
(実施例2)
受容層形成用塗工液1に代えて、下記組成の受容層形成用塗工液2を使用した以外は、全て実施例1と同様にして、実施例2の中間転写媒体を得た。
【0045】
<受容層形成用塗工液2>
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体) 95部
(CNL 日信化学工業(株)製)
・側鎖型アラルキル変性シリコーンオイル 5部
(KF−410 信越化学工業(株)製)
・トルエン 200部
・MEK 200部
【0046】
(実施例3)
受容層形成用塗工液1に代えて、下記組成の受容層形成用塗工液3を使用した以外は、全て実施例1と同様にして、実施例3の中間転写媒体を得た。
【0047】
<受容層形成用塗工液3>
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 ) 98部
(CNL 日信化学工業(株)製)
・側鎖型アラルキル変性シリコーンオイル 1.5部
(KF−410 信越化学工業(株)製)
・側鎖型エポキシ変性シリコーンオイル 0.5部
(KP−1800U 信越化学工業(株)製)
・トルエン 200部
・MEK 200部
【0048】
(実施例4)
受容層形成用塗工液1に代えて、下記組成の受容層形成用塗工液4を使用した以外は、全て実施例1と同様にして、実施例4の中間転写媒体を得た。
【0049】
<受容層形成用塗工液4>
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 98部
(CNL、日信化学工業(株)製)
・側鎖型アラルキル変性シリコーンオイル 0.5部
(KF−410 信越化学工業(株)製)
・側鎖型エポキシ変性シリコーンオイル 1.5部
(KP−1800U 信越化学工業(株)製)
・トルエン 200部
・MEK 200部
【0050】
(実施例5)
受容層形成用塗工液1に代えて、下記組成の受容層形成用塗工液5を使用した以外は、全て実施例1と同様にして、実施例5の中間転写媒体を得た。
【0051】
<受容層形成用塗工液5>
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 98部
(CNL、日信化学工業(株)製)
・側鎖型アラルキル変性シリコーンオイル 1.5部
(KF−410 信越化学工業(株)製)
・側鎖型エポキシ変性シリコーンオイル 0.5部
(X−22−3000T 信越化学工業(株)製)
・トルエン 200部
・MEK 200部
【0052】
(実施例6)
受容層形成用塗工液1に代えて、下記組成の受容層形成用塗工液6を使用した以外は、全て実施例1と同様にして、実施例6の中間転写媒体を得た。
【0053】
<受容層形成用塗工液6>
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 98部
(CNL、日信化学工業(株)製)
・側鎖型アラルキル変性シリコーンオイル 0.5部
(KF−410 信越化学工業(株)製)
・側鎖型エポキシ変性シリコーンオイル 1.5部
(X−22−3000T 信越化学工業(株)製)
・トルエン 200部
・MEK 200部
【0054】
(実施例7)
受容層形成用塗工液1に代えて、下記組成の受容層形成用塗工液7を使用した以外は、全て実施例1と同様にして、実施例7の中間転写媒体を得た。
【0055】
<受容層形成用塗工液7>
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 98部
(CNL 日信化学工業(株)製)
・側鎖型アラルキル変性シリコーンオイル 1.5部
(X−24−510 信越化学工業(株)製)
・側鎖型エポキシ変性シリコーンオイル 0.5部
(X−22−3000T 信越化学工業(株)製)
・トルエン 200部
・MEK 200部
【0056】
(比較例1)
受容層形成用塗工液1に代えて、下記組成の受容層形成用塗工液8を使用した以外は、全て実施例1と同様にして、比較例1の中間転写媒体を得た。
【0057】
<受容層形成用塗工液8>
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 200部
(CNL 日信化学工業(株)製)
・トルエン 200部
・MEK 200部
【0058】
(比較例2)
受容層形成用塗工液1に代えて、下記組成の受容層形成用塗工液9を使用した以外は、全て実施例1と同様にして、比較例2の中間転写媒体を得た。
【0059】
<受容層形成用塗工液9>
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 98部
(CNL 日信化学工業(株)製)
・側鎖型エポキシ変性シリコーンオイル 2部
(KP−1800U 信越化学工業(株)製)
・トルエン 200部
・MEK 200部
【0060】
(比較例3)
受容層形成用塗工液1に代えて、下記組成の受容層形成用塗工液10を使用した以外は、全て実施例1と同様にして、比較例3の中間転写媒体を得た。
【0061】
<受容層形成用塗工液10>
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 98部
(CNL 日信化学工業(株)製)
・ポリエーテル変性シリコーンオイル 2部
(KF−352A 信越化学工業(株)製)
・トルエン 200部
・MEK 200部
【0062】
(比較例4)
受容層形成用塗工液1に代えて、下記組成の受容層形成用塗工液11を使用した以外は、全て実施例1と同様にして、比較例4の中間転写媒体を得た。
【0063】
<受容層形成用塗工液11>
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 98部
(CNL 日信化学工業(株)製)
・アミノ・ポリエーテル変性シリコーンオイル 2部
(X−22−3939A 信越化学工業(株)製)
・トルエン 200部
・MEK 200部
【0064】
HDP−5000(HID社)プリンタと、該プリンタ用の純正染料リボンを用いて20℃ 50%環境下にて、染料離型性評価およびカードへの再転写性評価を行った。なお、用いたカードは下記組成の塩化ビニル製カード(DNP社製)である。
(塩化ビニル製カードの材料組成)
・ポリ塩化ビニルコンパウンド(重合度800) 100部
(安定化剤等の添加剤を約10%含有)
・白色顔料(酸化チタン) 10部
・可塑剤(DOP) 0.5部
【0065】
<<染料離型性評価>>
実施例1〜7、比較例1〜4の中間転写媒体の受容層に黒ベタを印画した後の染料リボンを確認し、受容層が染料層側に取られて画像不良になっていないかの評価を下記基準で行った。評価結果を表1に示す。
<評価基準>
◎・・・全く染料層にダメージがなく、印画物に不良なし。
○・・・わずかに受容層にダメージがみられるが、印画物に不良なし。
△・・・染料層にかなりダメージがみられ、印画物にも少し不良が発生。
×・・・染料層にかなり大きくダメージがみられ、印画物にもかなり不良が発生。
【0066】
<<再転写性評価>>
実施例1〜7、比較例1〜4の中間転写媒体の受容層に白ベタを印画した後、上記の塩化ビニルカードに再転写条件155℃にて再転写を行い、下記基準で画像の再転写性の評価を行った。
【0067】
<評価基準>
◎・・・密着不良全く無し。
○・・・密着不良がほぼ無し。
△・・・密着不良がかなり発生。
×・・・密着不良がかなり大きく発生。
【0068】
【表1】

【符号の説明】
【0069】
1…基材
2…転写層
3…剥離層
4…保護層
5…受容層
10…中間転写媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の一方の面に少なくとも保護層、及び受容層が積層されてなる中間転写媒体であって、
前記受容層には、側鎖型アラルキル変性シリコーンが、前記受容層の全質量に対し0.5〜5質量%の割合で含有されていることを特徴とする中間転写媒体。
【請求項2】
側鎖型エポキシ変性シリコーンが、前記受容層の全質量に対し0.5〜5質量%の割合で更に含有されていることを特徴とする請求項1に記載の中間転写媒体。

【図1】
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【公開番号】特開2012−51212(P2012−51212A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195080(P2010−195080)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】