説明

中間転写記録媒体

【課題】 基材の一方の面に剥離可能に、少なくとも剥離層、白色層、受容層の順に積層した転写部を設けた中間転写記録媒体において、白色層の転写に異常が生じることがない中間転写記録媒体を提供する。
【解決手段】 少なくとも基材2と、該基材2の一方の面に剥離可能に設けられた転写部11とからなり、該転写部11は基材2側から、少なくとも剥離層3、白色層4、受容層5の順に積層された中間転写記録媒体1において、前記白色層4が少なくともバインダー樹脂と白色顔料から構成されていることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンチキュラーレンズシートに熱転写画像を有した、立体画像を観賞できる熱転写受像シートを作製するために、用いられる中間転写記録媒体に関し、更に詳しくは、基材の一方の面に剥離可能に、少なくとも剥離層、白色層、受容層の順に積層した転写部を設けた中間転写記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の熱転写記録方法が知られているが、それらの中でも、昇華転写用染料を記録材とし、これをポリエステルフィルム等の基材上に適当なバインダーで担持させた染料層を有する熱転写シートから、昇華染料で染着可能な被転写材、例えば、紙やプラスチックフィルム等に染料受容層を形成した熱転写受像シート上に昇華染料を熱転写し、各種のフルカラー画像を形成する方法が提案されている。この場合には、加熱手段として、プリンターのサーマルヘッドによる加熱によって、3色または4色の多数の加熱量が調整された色ドットを熱転写受像シートの受容層に転移させ、該多色の色ドットにより原稿のフルカラーを再現するものである。このように形成された画像は、使用する色材が染料であることから、非常に鮮明で、かつ透明性に優れているため、得られる画像は中間色の再現性や階調性に優れ、従来のオフセット印刷やグラビア印刷による画像と同様であり、かつフルカラー写真画像に匹敵する高品質画像の形成が可能である。
【0003】
また、マルチメディアに関連した様々なハードおよびソフトの発達により、上記の熱転写方法は、コンピューターグラフィックス、衛星通信による静止画像そしてCD−ROMその他に代表されるデジタル画像及びビデオ等のアナログ画像のフルカラーハードコピーシステムとして、その市場を拡大している。
【0004】
この熱転写方法による熱転写受像シートの具体的な用途は、多岐にわたっている。例えば、印刷の校正刷り、画像の出力、CAD/CAMなどの設計およびデザインなどの出力、CTスキャンや内視鏡カメラなどの各種医療用分析機器、測定機器の出力用途そしてインスタント写真の代替として、また身分証明書やIDカード、クレジットカード、その他カード類への顔写真などの出力、さらに遊園地、ゲームセンター、博物館、水族館などのアミューズメント施設における合成写真、記念写真としての用途など多岐になってきている。
【0005】
上記のような用途の多様化に伴い、任意の対象物に熱転写画像を形成する要求が高まり、その対応の一つとして、受容層が基材上に剥離可能に設けられた中間転写記録媒体で、その受容層に染料層を有する熱転写シートを用いて、染料を転写して画像を形成し、その後に中間転写記録媒体を加熱して、受容層を被転写体上に転写する方法が、例えば特許文献1等に提案されている。
【0006】
また、熱転写受像シートの用途として、透明な基材の一方の面上に受容層を設け、該受容層に熱転写画像を形成し、該受容層の上に白色層を設けた印画物が知られている。この印画物は、透明な基材の受容層面の反対側から画像を視認する。
透明な基材が、受容層面の反対側にレンチキュラーレンズを有する場合は、見る角度によって二画像以上の画像を視認でき、あるいは立体画像を観賞できる。(例えば、特許文献2、3、4参照。)
【0007】
しかし、上記の立体画像を観賞できる熱転写受像シートは、レンチキュラーレンズの熱転写画像の形成された受容層の上に、白色層を転写して形成する際、白色層の転写が不均一になったり、白色層が受容層に転写接着しない問題が発生する場合がある。これらの問題は、立体画像を観賞できる熱転写受像シートとしての品質上、重大な欠点であり、これを解決することが強く求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−238791号公報
【特許文献2】特開平6−282019号公報
【特許文献3】特開平11−142995号公報
【特許文献4】特開平2011−62893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、上記の問題を解決するために本発明の目的は、基材の一方の面に剥離可能に、少なくとも剥離層、白色層、受容層の順に積層した転写部を設けた中間転写記録媒体において、白色層の転写に異常が生じることがない中間転写記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は、請求項1として、少なくとも基材と、該基材の一方の面に剥離可能に設けられた転写部とからなり、該転写部は基材側から、少なくとも剥離層、白色層、受容層の順に積層された中間転写記録媒体において、前記白色層が少なくともバインダー樹脂と白色顔料から構成されていることを特徴とするものである。この構成の中間転写記録媒体を用いることで、熱転写画像の形成された受容層を白色層とともに、被転写体に熱転写するので、白色層の転写に異常が生じない。
【0011】
また請求項2として、前記の白色層は、少なくとも1種の色相調整剤を含有することを特徴とする構成である。これにより、白色層の隠蔽性及び色相が安定して、鮮明な熱転写画像を有する印画物が得られる。
【0012】
また請求項3として、前記の剥離層と白色層の間に、絵柄層が設けられたことを特徴とする構成である。これにより、得られる熱転写画像の背景に絵柄層が現れ、デザイン性に優れたものとなる。また、請求項4として、前記の剥離層と白色層の間に、保護層が設けられたことを特徴とする構成である。これにより、熱転写画像は保護層で覆われるようになるので、耐久性に優れたものとなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の中間転写記録媒体は、上記構成をとることにより、白色層の転写に異常が生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の中間転写記録媒体である一つの実施形態を示す概略図である。
【図2】本発明の中間転写記録媒体である他の実施形態を示す概略図である。
【図3】本発明の中間転写記録媒体である他の実施形態を示す概略図である。
【図4】本発明の中間転写記録媒体である他の実施形態を示す概略図である。
【図5】本発明の中間転写記録媒体の使用される方法を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、発明の実施の形態について、詳述する。
図1に本発明の中間転写記録媒体である一つの実施形態を示す。図1は中間転写記録媒体1の概略断面図であり、基材2の一方の面に剥離層3、白色層4、受容層5を順に積層した構成で、図示したものは、剥離層3、白色層4、受容層5の順に積層された部分が転写部11として、レンチキュラーレンズシートに熱転写されるものである。
【0016】
図2に、本発明の中間転写記録媒体である他の実施形態を示す。基材2の一方の面に剥離層3、絵柄層6、白色層4、受容層5を順に積層した構成で、図示したものは、剥離層3、絵柄層6、白色層4、受容層5の順に積層された部分が転写部11として、レンチキュラーレンズシートに熱転写されるものである。
【0017】
図3に、本発明の中間転写記録媒体である他の実施形態を示す。基材2の一方の面に剥離層3、保護層7、白色層4、受容層5を順に積層した構成で、図示したものは、剥離層3、保護層7、白色層4、受容層5の順に積層された部分が転写部11として、レンチキュラーレンズシートに熱転写されるものである。
【0018】
図4に、本発明の中間転写記録媒体である他の実施形態を示す。基材2の一方の面に剥離層3、保護層7、絵柄層6、白色層4、受容層5を順に積層した構成で、図示したものは、剥離層3、保護層7、絵柄層6、白色層4、受容層5の順に積層された部分が転写部11として、レンチキュラーレンズシートに熱転写されるものである。
【0019】
また、図5に本発明の中間転写記録媒体の使用される方法を説明する概略図であり、基材2の一方の面に剥離層3、白色層4、受容層5を順に積層した転写部11を有する中間転写記録媒体1に、前記受容層5に、染料層を基材上に有する熱転写シートを用いて、熱転写画像8を形成する。(図5(1))
次に、上記の受容層5に熱転写画像8の形成された中間転写記録媒体1と、レンチキュラーレンズシート9とを、受容層とレンチキュラーレンズシートのレンズ(12)側と反対側とが接するように、重ねて、加熱及び加圧して、中間転写記録媒体1の転写部11である、受容層、白色層4、剥離層3がレンチキュラーレンズシート9に転写された印画物10が得られる。これにより、白色層4を背景として、受容層5に形成された熱転写画像8がレンチキュラーレンズシートのレンズにより、観察者の目には、立体画像として観察できる。(図5(2))
【0020】
以下、本発明の中間転写記録媒体を構成する各層について、詳細に説明する。
(基材)
本発明の中間転写記録媒体の基材2は、従来の中間転写記録媒体に使用されているものと同じ基材をそのまま用いることができ、特に限定するものではない。好ましい基材の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトンもしくはポリエーテルサルホン等の耐熱性の高いポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリエチレン誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリメチルペンテンまたはアイオノマー等のプラスチックの延伸または未延伸フィルムが挙げられる。また、これらの材料を2種以上積層した複合フィルムも使用することができる。基材の厚さは、その強度および耐熱性等が適切になるように材料に応じて適宜選択することができるが、通常は1〜100μm程度のものが好ましく用いられる。
【0021】
基材の剥離層、白色層、受容層等の設けられた転写部側とは反対の面に、必要に応じて背面層を従来公知の方法で設けることができる。背面層は、中間転写記録媒体を用いて被転写体(レンチキュラーレンズシート)に転写部を転写する際、基材とサーマルヘッド等の加熱デバイスとの融着を防止し、摺動性を向上させるために、従来より背面層に用いられている樹脂と同様の樹脂によって設けることができる。
【0022】
(剥離層)
本発明の中間転写記録媒体の基材上に設ける剥離層3は、中間転写記録媒体の受容層等を被転写体へ転写する時に、基材から受容層等の転写部を剥離しやすくし、さらに被転写体に転写された転写部の最表面層として保護層の機能をもつものである。剥離層は一般的には、エチルセルロース、ニトロセルロース、酢酸セルロースなどのセルロース誘導体、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラールなどのビニル重合体の熱可塑性樹脂や、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、アミノアルキッド樹脂などの熱硬化型の樹脂を用いて形成することができる。
【0023】
剥離層に紫外線吸収剤を含有させることによって、被転写体に転写された後に保護層により覆われる被転写体の画像等の耐光性、耐候性を向上させることができる。使用する紫外線吸収剤としては、従来公知の有機系紫外線吸収剤であるサリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、ニッケルキレート系、ヒンダートアミン系等を挙げることができる。また、これらの紫外線吸収剤に、例えば、ビニル基やアクリロイル基、メタクリロイル基等の付加重合性二重結合、あるいはアルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基等を導入した紫外線吸収性樹脂の形態で含有させてもよい。剥離層の形成はグラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート等の公知の手段により行うことができ、剥離層の塗工量は乾燥状態で0.5〜5.0g/m2程度が好ましい。
【0024】
(白色層)
本発明の中間転写記録媒体における白色層4は、転写された印画物に適度な白色隠蔽性と光拡散性をもたせる働きがあり、着色剤である白色顔料と、バインダー樹脂から構成される。また白色顔料のみでは、白色層のバインダー樹脂の経時変化や耐光性の低下による着色化が生じる場合があるので、色調調整剤としての着色剤も添加することが好ましい。
【0025】
バインダー樹脂は、いずれの樹脂を用いてもよく、好ましい樹脂としては、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリエステル、ポリスチレン、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂、及びこれらの変性体、そして、公知の樹脂の各種共重合体を用いることができる。また、これらの樹脂を複数ブレンドしたものを用いることも可能である。また、上記の樹脂の一部架橋樹脂が挙げられる。
【0026】
また、白色顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム等の金属酸化物があげられる。尚、酸化チタンは、ルチル型酸化チタンとアナターゼ型酸化チタンがあるが、白色性、隠蔽性等を考慮すると、アナターゼ型の酸化チタンを用いることが好ましい。
バインダーと白色顔料の比率は、バインダー100部に対して30部〜300部が好ましい。白色顔料の比率が上記未満の場合は、白色性および隠蔽性、特に隠蔽性に劣る。また、白色顔料の比率が上記の値を越えた場合には、加工安定性に劣るとともに、形成した塗膜が非常に脆くなり、耐久性に劣り好ましくない。この白色層には、必要に応じて蛍光増白剤等の添加剤を添加することができる。
【0027】
さらに、白色層と剥離層及び受容層との接着性を付与するための手段として、白色層に用いるバインダー樹脂に適した各種の硬化剤を添加することも可能である。例えば、使用するバインダー樹脂が水酸基を含有する樹脂の場合には、硬化剤として各種のイソシアネートを用いることが好ましい。
【0028】
また、白色層には、色相調整剤が添加されていても良い。色相調整剤とは、白色層の白色度を調整する機能を有するものである。また、隠蔽性をさらに高める機能を有するものである。本発明の色相調整剤としては、特に制限無く公知の材料を使用することができるが、例えば、キノン系、アゾ系、トリアリールメタン系、シアニン系、フタロシアニン系、およびインジゴ系からなる着色剤の群から選択される少なくとも1種を含有させることができる。優れた白色度と隠蔽性が得られるという観点からは、アントラキノン系の色剤が特に好ましい。
【0029】
また、白色層には、蛍光増白剤を添加することができる。蛍光増白剤は、スチルベンゼン系化合物、ピラゾリン系化合物等のような蛍光増白効果のある既知の化合物を使用することができる。また、白色層には、シリカ、アルミナ、クレイ、タルク、炭酸カルシウムまたは硫酸バリウム等の無機充填材、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フッ素樹脂またはシリコーン樹脂等の樹脂粒子(プラスチックピグメント)の充填材を添加して、隠蔽性を向上させることができる。白色層の形成は、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート等の公知の手段により行うことができ、乾燥状態で0.5〜2.0g/m2程度が好ましい。
【0030】
(受容層)
本発明における中間転写記録媒体の受容層5は、熱転写シートから移行してくる昇華染料を受容し、形成された画像を維持する為のものである。受容層を形成する為の樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0031】
また、熱転写シートとの離型性を向上させるために、受容層中に離型剤を含有することができる。離型剤としてはポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロン(登録商標)パウダー等の固形ワックス類、フッ素系またはリン酸エステル系界面活性剤、シリコーンオイル、反応性シリコーンオイル、硬化型シリコーンオイル等の各種変性シリコーンオイル、各種シリコーン樹脂などが挙げられるが、シリコーンオイルが好ましい。上記シリコーンオイルとしては油状のものも用いることができるが、硬化型のものを用いても良い。硬化型シリコーンオイルとしては反応硬化型、光硬化型、触媒硬化型等が挙げられるが、反応硬化型、触媒硬化型のシリコーンオイルが特に好ましい。
【0032】
本発明の中間転写記録媒体では、受容層は熱転写シートの染料層との離型性をもちながら、またレンチキュラーレンズシートへ転写した時のレンチキュラーレンズシートとの接着性をもつことが要求されるので、上記のシリコーンオイルを添加する場合、その添加量は受容層を構成する樹脂の0.5〜15質量%にすることが望ましい。なお、受容層を形成する際に、シリコーンオイルを添加して形成すると、塗布後に表面にシリコーンオイルがブリードアウトするが、これを硬化させても離型剤層を形成することができる。
【0033】
上記の如き熱可塑性樹脂及び他の必要な添加剤、例えば、離型剤等を加えたものを、適当な有機溶剤に溶解し、あるいは有機溶剤や水に分散した分散体を、例えばグラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の形成手段により塗布及び乾燥して、受容層を形成することができる。このように形成される受容層の塗布量は、通常、乾燥状態で0.5〜50g/m2程度、好ましくは2〜10g/m2である。また、このような受容層は連続被覆であることが好ましいが、不連続の被覆として形成してもよい。
【0034】
(プライマー層)
本発明の熱転写受像シートで、上記の多孔質フィルム/接着剤層/芯材/接着剤層/多孔質フィルムも積層体から構成される基材シート10と、染料受容層7、8との間に、プライマー層12、13を形成したものであってもよい。このようなプライマー層は基材シートと染料受容層との接着性を良好にするためのものであり、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エポキシ樹脂等により形成することができ、その厚さは、塗工量で、乾燥時0.1〜20g/m2程度が好ましい
【0035】
(保護層)
本発明の中間転写記録媒体では、基材上に設ける剥離層と白色層との間に保護層7を設けることができる。この保護層は、中間転写記録媒体の受容層等の転写部が被転写体へ転写された後に、その転写部の最表面の剥離層だけでは保護層の機能が不十分な場合に設けるものである。保護層は少なくともバインダー樹脂から構成され、受容層とともに被転写体に転写された後は、印画物としての熱転写画像付きのレンチキュラーレンズシートの表面保護層として所望の物性をもつ樹脂組成を選定する。
【0036】
一般的には、エチルセルロース、ニトロセルロース、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール等のビニル重合体の熱可塑性樹脂や、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノアルキッド樹脂等の熱硬化型樹脂を保護層樹脂として用いることができる。画像形成された転写部が転写された印画物に対して、耐摩擦性、耐薬品性、耐汚染性が特に要求される場合は、保護層樹脂として電離放射線硬化型樹脂を用いることもできる。
【0037】
また、保護層は、水溶性樹脂のポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリルエマルジョン、ウレタンエマルジョン等のエマルジョンを用い、さらに架橋アクリル微粒子、架橋ポリスチレン微粒子、架橋ポリスチレンアクリル微粒子、および、これら微粒子表面への官能基誘導体等の実質的に透明な微粒子を加えて、耐溶剤性や耐可塑剤性を向上させることができる。また、保護層に、帯電防止剤や、印画物の耐擦過性を向上させる為の滑剤、汚染防止の為の界面活性剤、耐候性能を向上させる為の紫外線吸収剤、酸化防止剤等を加えることができる。保護層は上記の剥離層と同様の方法で形成することができ、塗工量は乾燥状態で0.1〜10g/m2が好ましい。
【0038】
(絵柄層)
本発明の中間転写記録媒体では、剥離層と白色層の間に、絵柄層6を設けることができ、中間転写記録媒体から熱転写画像を有する転写部がレンチキュラーレンズシートに転写された印画物の裏面側で、その絵柄層のロゴマークや地紋などの絵柄を観察できる。その絵柄層は、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の公知の手段により印刷して形成することができ、絵柄層の印刷量は乾燥状態で0.5〜2.0g/m2程度が好ましい。
絵柄を形成する材料として、蛍光染料、蛍光顔料など、可視光では見えないが特定波長の光の照射で認識できるものを使用した場合は、セキュリティ性向上の観点から好ましい。
【0039】
(レンチキュラーレンズシート)
本発明の中間転写記録媒体に熱転写画像を形成した後に、その熱転写画像を有する転写部が転写される被転写体の一つとしてレンチキュラーレンズシートが挙げられ、そのレンチキュラーレンズシートは、従来から知られた方法により製造して使用することができる。例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル−スチレン共重合体樹脂等からなる透明樹脂である成型用樹脂を用いて、押出し成型法、射出成型法、プレス成型法などで加工して、レンチキュラーレンズシートを製造して用意することができる。
【実施例】
【0040】
次に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。以下、特に断りのない限り、部又は%は質量基準である。
(実施例1)
基材2として、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、該基材の一方の面に、グラビアコート法で、下記組成の剥離層形成用塗工液を、乾燥後1.0g/m2になるように塗布し、乾燥して剥離層3を形成した。次いで、この剥離層の上に、グラビアコート法で、下記組成のプライマー層形成用塗工液を、乾燥後1.0g/m2になるように塗布し、乾燥してプライマー層を形成した。
【0041】
(剥離層形成用塗工液)
・アクリル樹脂 95部
(BR−87、三菱レイヨン(株)製)
・ポリエステル樹脂 5部
(バイロン200、東洋紡績(株)製)
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0042】
(プライマー層形成用塗工液)
・ポリエステル樹脂 3.3部
(バイロン200、東洋紡績(株)製)
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 2.7部
(CNL、日信化学工業(株)製)
・イソシアネート硬化剤 1.5部
(XEL硬化剤、ザ・インクテック(株)製)
・メチルエチルケトン/トルエン(質量比2/1) 10部
【0043】
上記のプライマー層の上に、グラビアコート法で、下記組成の白色層形成用塗工液1を、乾燥後1.0g/m2になるように塗布し、乾燥して白色層4を形成した。さらに、その白色層の上に、グラビアコート法で、下記組成の受容層形成用塗工液を、乾燥後2.5g/m2になるように塗布し、乾燥して受容層5を形成して、実施例1の中間転写記録媒体1を作製した。
【0044】
(白色層形成用塗工液1)
・ポリエステル樹脂 33部
(バイロン200、東洋紡績(株)製)
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 27部
(CNL、日信化学工業(株)製)
・イソシアネート硬化剤 15部
(XEL硬化剤、ザ・インクテック(株)製)
・アナターゼ型酸化チタン 75部
(TCA−888、トーケムプロダクツ社製)
・トルエン 50部
・メチルエチルケトン 50部
【0045】
(受容層形成用塗工液)
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 200部
(CNL、日信化学工業(株)製)
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 200部
【0046】
(実施例2)
上記の実施例1の中間転写記録媒体において、プライマー層と白色層4との間に、下記条件にて、絵柄層6を形成して、実施例2の中間転写記録媒体1を作製した。
グレー(灰色)のグラビアインキを用いて、「DNP」のロゴマークを一文字が6ポイントの大きさで、また「DNP」の単位で、上下方向、左右方向で、それぞれ5mmの間隔をおいて、縦方向及び横方向に多数配列させて、グラビア印刷により、絵柄層6を形成した。
【0047】
また実施例1の中間転写記録媒体における白色層形成用塗工液1を以下に示す白色層形成用塗工液2に変更して、その他は実施例1の形成条件と同様にした。
(白色層形成用塗工液2)
・ポリエステル樹脂 13.1部
(WR−905、日本合成化学(株)製)
・アナターゼ型酸化チタン 75部
(TCA−888、トーケムプロダクツ社製)
・蛍光増白剤(ベンゾイミダゾール誘導体) 0.39部
(製品名チノパールIJT、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
・水/イソプロピルアルコール(質量比2/1) 60部
【0048】
(実施例3)
上記の実施例2に中間転写記録媒体において、剥離層3と絵柄層6との間に、グラビアコート法で、下記組成の保護層形成用塗工液を、乾燥後1.0g/m2になるように塗布し、乾燥して保護層7を形成して、実施例3の中間転写記録媒体を作製した。
(保護層形成用塗工液)
・アクリル樹脂 20部
(ダイヤナールBR87、三菱レイヨン(株)製)
・メチルエチルケトン 40部
・トルエン 40部
【0049】
但し、実施例2の中間転写記録媒体における白色層形成用塗工液2を以下に示す白色層形成用塗工液3に変更して、その他は実施例2の形成条件と同様にした。
(白色層形成用塗工液3)
・ポリエステル樹脂 33部
(バイロン200、東洋紡績(株)製)
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 27部
(CNL、日信化学工業(株)製)
・イソシアネート硬化剤 15部
(XEL硬化剤、ザ・インクテック(株)製)
・酸化チタン(アナターゼ型) 75部
(KA−10、チタン工業製)
・ベンゾオキサゾール系蛍光増白剤 0.5部
(Uvitex OB、CIBA GEIGY社製)
・アントラキノン系青色染料 0.3部
(Kayaset Blue−N、日本化薬製)
・アントラキノン系赤色染料 0.3部
(Macrolex red Vioret R、Bayer社製)
・トルエン 50部
・メチルエチルケトン 50部
【0050】
(比較例1)
基材として、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、該基材の一方の面に、実施例1における剥離層形成条件と同様にして、剥離層を形成し、その剥離層の上に、実施例1で使用した受容層形成用塗工液により、乾燥後2.5g/m2になるように塗布し、乾燥して受容層を形成して、比較例1の中間転写記録媒体を作製した。
【0051】
上記の実施例1〜3と比較例1の中間転写記録媒体と、VDS製カードプリンターCX210用熱転写シートを用い、サーマルプリンター(VDS製、カードプリンターCX210により、顔写真を色分解して得たイエロー、マゼンタ及びシアンの各画像情報に従って、イエロー、マゼンタ及びシアンの各染料を中間転写記録媒体の受容層に転写することにより、中間転写記録媒体の受容層にフルカラーの顔写真画像を形成した。
【0052】
被転写体としてのレンチキュラーレンズシートは、以下のように作製して用意した。188μm厚さのポリエチレンテレフタレートの支持体の片面に、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂PETG(SKケミカル製)と接着性樹脂(アドマー、商品名、三菱化学(株)製)を、共押出して、その樹脂シートとエンボスロールの間に供給し、積層し、レンチキュラーレンズが形成されたレンチキュラーレンズシート(厚み340μm)を得た。このレンチキュラーレンズシートは、レンズ形状として、半径150μm、レンズ高さ70μm、ピッチ254μmである。
【0053】
上記の実施例1〜3と比較例1の熱転写画像を形成した中間転写記録媒体と、上記のレンチキュラーレンズシートとを、受容層とレンチキュラーレンズシートのレンズ側と反対側とが接するように、重ねて、サーマルプリンター(VDS製、カードプリンターCX210)を用い、中間転写記録媒体の転写部をレンチキュラーレンズシートに転写することにより、熱転写画像を有するレンチキュラーレンズシートを作製した。尚、比較例1では、熱転写画像を有する受容層の形成された中間転写記録媒体の転写部を、上記に示すレンチキュラーレンズシートに転写した後に、白色層転写シートにより、白色層を転写した。尚、白色層転写シートは、実施例1で使用した基材の上に、実施例2で使用した条件の剥離層、白色層を順に形成して、用意した。
【0054】
実施例1〜3により得られた熱転写画像を有するレンチキュラーレンズシートは、熱転写画像に異常がなく、また白色層の転写に異常が生じることがなく、鮮明な立体画像を観賞できた。また、実施例2、3は、裏面にロゴマークを有したレンチキュラーレンズシートであり、宣伝効果を有するものであった。また、実施例3で得られた熱転写画像を有するレンチキュラーレンズシートは、熱転写画像の背景の白色性において優れ、特に熱転写画像の鮮明性が高いものであった。さらに、得られたレンチキュラーレンズシートの裏面側に保護層を有するので、耐擦過性など、耐久性がより高いものであった。
【0055】
それに対し、比較例1で得られた熱転写画像を有するレンチキュラーレンズシートは、受容層の上に、白色層を転写して設けたので、熱転写画像の背景の白色層に転写ムラが生じて、レンチキュラーレンズシートのレンズ面から観察して、白色層のムラが目立っていた。
【符号の説明】
【0056】
1 中間転写記録媒体
2 基材
3 剥離層
4 白色層
5 受容層
6 絵柄層
7 保護層
8 熱転写画像
9 レンチキュラーレンズシート
10 印画物
11 転写部
12 レンチキュラーレンズ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材と、該基材の一方の面に剥離可能に設けられた転写部とからなり、該転写部は基材側から、少なくとも剥離層、白色層、受容層の順に積層された中間転写記録媒体において、前記白色層が少なくともバインダー樹脂と白色顔料から構成されていることを特徴とする中間転写記録媒体。
【請求項2】
前記の白色層は、少なくとも1種の色相調整剤を含有することを特徴とする請求項1に記載する中間転写記録媒体。
【請求項3】
前記の剥離層と白色層の間に、絵柄層が設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載する中間転写記録媒体。
【請求項4】
前記の剥離層と白色層の間に、保護層が設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載する中間転写記録媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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