説明

丸編機の制御装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は編地の表面と裏面のそれぞれに対し柄編機能を有する丸編機の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】図3は編地の表面と裏面のそれぞれに対し柄編機能を有する従来の丸編機を示す斜視図、図4はその丸編機の制御装置を示すブロック図である。図3、図4において、固定されているシリンダカム体2とダイヤルカム体3との間に配置されている釜1の回転により糸4が引込まれ、編地が編まれるようになっている。釜1の表面には回転軸と平行になるよう複数のシリンダ針5aが、また釜1の回転軸を中心として放射状になるよう複数のダイヤル針5bがそれぞれ装着されていると共に、このシリンダ針5aとダイヤル針5bを収容するシリンダ針溝6aとダイヤル針溝6bが設けられている。そして、編地の表面はシリンダ針5aにより編まれ、裏面はダイヤル針5bにより編まれる。釜1の表面近傍に配置されているシリンダ針溝検出器7aとダイヤル針溝検出器7bにより、釜1の回転に伴って移動するシリンダ針溝6aとダイヤル針溝6bがそれぞれ検出される。シリンダ系とダイヤル系は同一構成であるので、各構成要素の名称からシリンダ、ダイヤルの文字を略し、符号にa(シリンダ),b(ダイヤル)を付して説明を簡略化する。
【0003】針溝検出信号SDa,SDbは波形整形部8a,8bに送出されてパルス化され、この波形整形部8a,8bから出力された針パルス信号SPa,SPbの数を針番地カウント部9a,9bにより積算し、針番地番号NDa,NDbが柄編制御部10a,10bに送出されて編地の柄出しが制御される。柄編と針5a,5bの位置関係を変更したい場合には、針番地カウント初期化部11a,11bから初期化パルスIPa,IPbを針番地カウント部9a,9bへ送出し、この針番地カウンタ部9a,9bのカウント値を0とする。
【0004】このような構成における従来の丸編機の制御装置の動作を図5のフローチャートに基づいて説明する。丸編機停止中に初期化パルスIPaが発生したか判断し(ステップST5−1)、YES、つまり、初期化パルスIPaが発生した場合は針番地カウント部9aの値Mを0にする(ステップST5−2)。しかる後、上記ステップST5−1における判断結果がNO、つまり、初期化パルスIPaが発生していない場合と同様に初期化パルスIPbが発生したか判断する(ステップST5−3)。この判断結果がYES、つまり、初期化パルスIPbが発生した場合は針番地カウント部9bの値Nを0にする(ステップST5−4)。一方、上記ステップST5−3の判断結果がNO、つまり、初期化パルスIPbが発生していない場合は、発生した場合と同様に運転するかを判断する(ステップST5−5)。NO、つまり、丸編機の運転を待つ場合はステップST5−1へ戻り、YES、つまり、運転に入る場合は針パルス信号SPaが発生したかを判断する(ステップST5−6)。判断結果がYESの場合は針番地カウント部9aの値Mを+1し(ステップST5−7)、シリンダ針5aが1針移動したので、柄編制御部10aを動作させて柄編制御する(ステップST5−8)。次に、上記ステップST5−6の判断結果がNOの場合は、YESの場合と同様に針パルス信号SPbが発生したかを判断し(ステップST5−9)、YESの場合は針番地カウンタ部9bの値Nを+1し(ステップST5−10)、ダイヤル針5bが1針移動したので、柄編制御部10bを動作させて柄編制御する(ステップST5−11)、その後、ステップST5−9における判断結果がNOの場合とともにステップST5−5へ戻り、以降上記の動作をくり返す。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このように従来装置においては、シリンダ系とダイヤル系が完全に独立しているので、表面の柄編と裏面の柄編の位置関係を自由に設定できる。しかしながら、編地製品としては均一なものができるよう、通常表面と裏面の柄編の位置関係を一定にして編む必要がある。そこで、従来は丸編機を停止させておいて、針番地カウント部11a,11bから同時に初期化パルスIPa,IPbを発生し、針番地番号NDa,NDbを一致させているが、初期化パルスIPa,IPbを発生させるタイミングによって、図6の針番地番号NDの変化に示すように、図6(ロー1)のタイミングでは図7のように針番地番号はシリンダ針5aが先行する。また、図6(ロ−2)のタイミングでは図8R>8のように針番地番号はダイヤル針5bが先行する。例えば、図7のようになるのが基準とした場合、目視でそうなっていないとき、編地を少し編んでは初期化パルス11a,11bを発生させ、試行錯誤により図7のようになるまで繰り返していた。よって、位置関係を調整するのに時間がかかってしまうという問題があった。
【0006】本発明は上記従来の課題に鑑みなされたものであり、表面の柄編と裏面の柄編の位置関係がいつも一定になるよう自動的に調整することができる丸編機の制御装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を解決するために、本発明は、表面を柄編制御するための第1の柄編制御系と、裏面を柄編制御するための第2の柄編制御系と、表面と裏面の柄編制御を初期化するための初期化部と、この初期化部からの初期化パルスに基づいて不要な針パルス信号を除去する不要パルス除去部とを具備したものである。
【0008】
【作用】従って、本発明によれば、第1の柄編制御系と第2の柄編制御系のいずれかの針番地を任意に指定することにより、他方も同期して針番地が追従変化するので、編地の表面の柄編と裏面の柄編の位置関係の調整に不要な針パルスを除去することができる。この結果、従来のように調整をくり返して行ない目視確認をする必要なしに、表面の柄編と裏面の柄編がいつも一定の位置関係になるよう迅速に、かつ、容易に調整することができる。
【0009】
【実施例】以下、図面に基づき本発明の好適な実施例を説明する。図1には本発明に係る丸編機の制御装置のブロック構成図が示されており、前記図4に示す従来装置と同一部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0010】表面の編柄とシリンダ針5aの位置関係、及び裏面の編柄とダイヤル針5bの位置関係を変更する場合には、針番地カウント初期化部11から初期化パルスIPを第1の柄編制御系の針番地カウント部9aと第2の柄編制御系の針番地カウント部9bに対して同時に送出し、この針番地カウント部9a,9bのカウント値を0、つまり、初期化することにより実現する。ここで、第1の柄編制御系はシリンダ針溝検出器7aからの針溝検出信号SDaを入力する波形整形部8aと、この波形整形部8aからの針パルス信号SPaをカウントする針番地カウント部9aと、この針番地カウント部9aからの針番地番号NDaで柄編制御を行う柄編制御部10aとで構成されている。また、第2の柄編制御系はダイヤル針溝検出器7bからの針溝検出信号SDbを入力する波形整形部8bと、この波形整形部8bからの針パルス信号SPbより不要な針パルスを除去した針パルス信号SPcをカウントする針番地カウント部9bと、この針番地カウント部9bからの針番地番号NDbで柄編制御を行う柄編制御部10bとで構成されている。不要パルス除去部12はフリップフロップ部12−1とAND回路部12−2を有し、上記初期化パルスIPがフリップフロップ部12−1のリセット入力へ送出されると、フリップフロップ部12−1はリセットされて、その出力信号SFは論理「0」となる。この時、AND回路部12−2の入力に波形整形部8bから針パルス信号SPbが発生しても、AND回路部12−2の出力である針パルス信号SPcは論理「0」のまま変化せず、次段の針番地カウント部9bのカウント値は変化しない。
【0011】次に針パルス信号SPaが波形整形部8aからセット入力へ送出されると、フリップフロップ部12−1はセットされて、その出力信号SFは論理「1」となる。この状態において、波形整形部8bからAND回路部12−2の入力に針パルス信号SPbが送出されると、AND回路部12−2の出力である針パルス信号SPcも論理「1」の信号になるので、針番地カウント部9bは針パルス信号SPcの数を積算する。
【0012】このような構成において、その動作を図2のフローチャートに基づいて説明する。丸編機停止中に、初期化パルスIPが発生したか判断し(ステップST2−1)、YES、つまり、初期化パルスIPが発生した場合は針番地カウント部9a,9bの値M,Nを0にする(ステップST2−2)。しかる後、上記ステップST2−1における判断結果がNO、つまり、初期化パルスIPが発生しない場合は、発生した場合と同様に運転するかを判断し(ステップST2−3)、NO、つまり、丸編機の運転を待つ場合はステップST2−1へ戻り、YES、つまり、運転に入る場合は針番地カウント部9a,9bの値M,Nがともに0であるかを判断する(ステップST2−4)。判断結果がYES、つまり、値M,Nがともに0ならば丸編機が運転に入るので、針パルス信号SPaが発生したかの判断を繰返す(ステップST2−5)。そして、YES、つまり、針パルス信号SPaが発生したら針番地カウント部9aの値をM=1にし(ステップST2−6)、シリンダ針5aが1針移動したので柄編制御部10aを動作させる(ステップST2−7)。その後、針パルス信号SPaが発生したかを判断し(ステップST2−8)、YESの場合は針番地カウント部9aの値Mを+1し(ステップST2−9)、シリンダ針5aが1針移動したので柄編制御部10aを動作させる(ステップST2−10)。次に、上記ステップST2−8の判断結果がNOの場合は、YESの場合と同様に針パルス信号SPbが発生したかを判断し(ステップST2−11)、YESの場合は針番地カウンタ部9bの値Nを+1し(ステップST2−12)、ダイヤル針5bが1針移動したので柄編制御部10bを動作させる(ステップST2−13)、その後、上記ステップST2−11の判断結果がNOの場合とともにステップST2−3へ戻り上記の動作をくり返す。
【0013】針パルス信号SPa,SPb,SPcと初期化パルスIPとのタイミング関係、及び針番地番号NDa,NDbの変化する例を図6(ハ)に示し、同図(ロ)に示す従来装置例と比較すると、同図中に点線で示した針番地番号NDa,NDbの変化(ロ−2)が(ハ−2)のようになる。この場合、(ロ−1)は(ハ−1)のようになり同じである。
【0014】以上のように本発明によれば、初期化パルスIPと針パルス信号SPa,SPbとのタイミング関係とは無関係に、いつも一定の針番地番号NDaとNDbの関係を得ることができる。また、図1のブロック機構図によれば、いつも図7に示すシリンダ針5aとダイヤル針5bの位置関係が得られるが、図1の不要パルス除去部12の接続をシリンダ系とダイヤル系とで入れかえることにより、容易に図8に示すシリンダ針5aとダイヤル針5bの位置関係を得ることもできる。
【0015】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、第1の柄編制御系と第2の柄編制御系のいずれかの針番地を任意に指定することにより、他方も同期して針番地が追従変化するので、編地の表面の柄編と裏面の柄編の位置関係の調整を従来より迅速、かつ、容易に行なうことが可能であり、調整時間を短縮できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例による丸編機の制御装置を示すブロック図である。
【図2】その動作を説明するフローチャートである。
【図3】丸編機の一例を示す斜視図である。
【図4】従来の丸編機の制御装置を示すブロック図である。
【図5】その動作を説明するフローチャートである。
【図6】針パルス信号と針番地番号の関係を示す図である。
【図7】シリンダ針とダイヤル針の位置関係を示す図である。
【図8】シリンダ針とダイヤル針の位置関係を示す図である。
【符号の説明】
7a シリンダ針溝検出器
7b ダイヤル針溝検出器
8a,8b 波形整形部
9a,9b 針番地カウント部
10a,10b 柄編制御部
11 初期化部
12 不要パルス除去部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 表面を柄編制御するための第1の柄編制御系と、裏面を柄編制御するための第2の柄編制御系と、表面と裏面の柄編制御を初期化するための初期化部と、この初期化部からの初期化パルスに基づいて不要な針パルス信号を除く不要パルス除去部とを有し、前記初期化パルス発生直後に限り前記不要パルス除去部が不要な前記針パルス信号を除去し、編地の表面の柄編と裏面の柄編との位置関係がいつも一定になるよう構成したことを特徴とする丸編機の制御装置。

【図3】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【特許番号】第2781293号
【登録日】平成10年(1998)5月15日
【発行日】平成10年(1998)7月30日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−170123
【出願日】平成3年(1991)7月10日
【公開番号】特開平5−25757
【公開日】平成5年(1993)2月2日
【審査請求日】平成8年(1996)4月16日
【出願人】(000149066)オークマ株式会社 (476)