説明

主軸定位置停止制御方法

【目的】 高速回転中の主軸を短時間で定位置停止できるようにする。
【構成】 主軸の高速回転状態で停止位置指令が与えられると同時に速度指令を零として減速し、ある設定速度以下になったところで減速を続けながら原点位置を待つ動作を開始し、原点位置を捕捉した時点での主軸速度と位置制御のための指令速度を比較し、指令速度が大きい間は零速度指令のまま減速を続け、主軸速度より指令速度が小さくなった時点で指令速度にしたがって位置制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は工作機械の工具交換時に必要な、主軸の定位置停止制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】停止位置割り出しのために必要な原点位置の捕捉を高速のまま行うと、停止するまでにパルスエンコーダからのパルスの誤カウントなどによって正確な位置に停止することが出来ない。このため従来、図4に示すように、一度高速回転を行なうと現在位置を破棄してしまい、定位置停止指令が与えられると、低速度の速度指令を出力して減速し、その低速度を保った状態で原点位置を待つ動作を開始し、原点位置捕捉後に位置制御を行って定位置停止を行っていた。このため、最大1回転分の待ち時間が生じるという問題点がある。これを解決したものに特開昭63−273114がある。すなわち、高速回転時に定位置停止指令が入ると、速度指令を零として減速し、ある目標速度Vo になった時点で位置ループに切り換える。しかし、目標位置から現在位置までの距離に位置ループゲインを乗じた値をそのまま速度指令として使用すると、図5のように現在速度と指令速度に段差が出てしまい、再加速する場合がある。特開昭63−273114では、速度ループから位置ループへの切り換え時の速度Vo から目標停止位置に停止するための速度パターンを傾き一定の直線として演算しておき、これを位置制御に使用している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記のように従来の方法では、高速回転中に定位置停止指令が与えられた場合、低速度に減速したあと一定速度を保持した状態で原点位置を待つので、最大1回転分の待ち時間が生じるという問題点があり、また、再加速を防止するために速度パターンを演算しておかねばならず、処理が面倒であった。本発明はこの待ち時間を無くすことにより、従来より短い時間で定位置停止を行なう簡単な制御方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明は主軸速度が高速から低速へ減速する際、ある設定速度を通過する時はいつも原点位置を捕捉する動作を行い捕捉した原点位置はある設定速度を超えない限り保持しておく。主軸が高速回転中に定位置停止指令が与えられた場合は、速度指令を零として減速を行い、原点位置を捕捉すると位置制御ループに入るが位置制御のための速度指令が現在速度よりも大きい間は速度指令を零のまま減速を継続し、小さくなったところで位置制御を行なうものである。
【0005】
【作用】上記手段により、高速回転中に定位置停止指令が与えられた場合、一定速度で原点位置を待つ時間が無くなる。よって従来よりも短い時間で定位置停止を行うことができる。
【0006】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例を図1に示して説明する。1は目標位置設定器、2は速度指令切り換えスイッチ、3は速度制御装置、4は主軸、5はパルスエンコーダ、6はカウンタ、7はメモリ、8はカウンタ5の値をメモリへ出力するためのスイッチ、9は主軸速度が設定値以下になると閉じるスイッチ、10は現在位置演算器、11は乗算器である。図1において、カウンタ6はパルスエンコーダ5からのパルスPA、PBにより主軸の正・逆回転に応じてアップ・ダウンカウントする。スイッチ9が閉じると、パルスエンコーダ5の1回転に1パルス発生する原点信号PCによりスイッチ8を閉じ、その時のカウンタの値が原点位置としてメモリ7に記憶される。ここで高速回転から減速する際に、主軸速度Vが設定速度VL 以下になったところでスイッチ9を閉じ、その後の原点信号PCの到来でスイッチ8が閉じてそのときのカウンタの値が原点位置としてメモリ7に記憶される。記憶された原点位置は主軸速度が設定速度VL を超えない間は記憶され続ける。このシーケンスによりVL より低速度の状態では常時、原点位置が記憶されているため、定位置停止指令が与えられると即座に位置制御ループに入ることができる。また高速回転中に定位置停止指令が入るとスイッチ2をA側にし速度制御装置3に零速度指令を与えて減速する。減速の途中、主軸速度Vが設定速度VL 以下になったところでスイッチ9を閉じると、その後の原点信号PCによりスイッチ8が閉じ、その時点のカウンタの値が原点位置として記憶され、これとカウンタの値により現在位置が演算器10で計算され、目標位置発生器1からの位置指令との偏差量に位置ループゲインKP を乗算器11で乗算することで位置ループの指令速度VP が得られる。主軸速度VとVP を比較し、VP の方が大きい間はスイッチ2をA側のまま減速を続けVP が小さくなったところでスイッチ2をB側にして位置制御を行うことで目標位置に停止する。図2は以上のシーケンスを表したフローチャートである。
【0007】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば従来より短い時間でしかも、簡単な手段で主軸の定位置停止を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を表す図である。
【図2】本発明の実施例を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の定位置停止を行った場合の主軸速度の時間的変化を示す図である。
【図4】従来の定位置停止を行った場合の主軸速度の時間的変化を示す図である。
【図5】従来の定位置停止を行った場合の主軸の再加速を説明する図である。
【符号の説明】
1 目標位置設定器
2 速度指令切り換えスイッチ
3 速度制御装置
4 主軸
5 パルスエンコーダ
6 カウンタ
7 メモリ
8、9 スイッチ
10 現在位置演算器
11 乗算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 誘導電動機と、この誘導電動機により駆動される主軸と、この主軸に取り付けられ、主軸回転に伴って所定の位相差を有する2相信号と1回転に付き1パルスの原点信号を生成するパルスエンコーダと、このパルスエンコーダからのパルスを計数するカウンタと、前記原点信号により前記カウンタの値を保持する保持手段と、前記誘導電動機を制御する速度制御装置とを備え、外部から与えられる任意の停止位置指令と現在位置指令との偏差量に位置ループゲインを乗じたものを前記速度制御装置への速度指令として用いる位置決め制御装置において、前記主軸の高速回転状態で前記停止位置指令が与えられると同時に速度指令を零として減速し、ある設定速度以下になったところで減速を続けながら原点位置を待つ動作を開始し、前記原点位置を捕捉した時点での主軸速度と位置制御のための指令速度を比較し、前記指令速度が大きい間は零速度指令のまま減速を続け、前記主軸速度より前記指令速度が小さくなった時点で前記指令速度に従って位置制御を行うことを特徴とする主軸定位置停止制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平5−53646
【公開日】平成5年(1993)3月5日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−244742
【出願日】平成3年(1991)8月29日
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)