説明

乗客コンベアの照明装置

【課題】乗客コンベアにおけるLED照明部又は直流電源装置の寿命を正確に知ることができる乗客コンベアを提供する。
【解決手段】LED照明部11のLED、又は、直流電源装置4の積算点灯時間を求め、トラス内部に設けた温度センサ9の検出温度が高いほどに値が大きくなる補正係数kを積算点灯時間に掛けて補正積算点灯時間を演算し、この補正積算点灯時間がLED照明部11のLEDの寿命、又は、直流電源装置4の寿命に到達したときに表示部10に表示する制御部3を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エスカレータや動く歩道等の乗客コンベアの照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、乗客コンベアに用いられる照明装置としては、蛍光灯ランプが一般的に使用され、ランプ切れは照明装置の寿命であることが多い。この蛍光灯ランプ等の放電灯点灯装置の寿命を適正に判断するため、従来より放電灯点灯時間を積算する積算カウンタを設け、この積算した点灯時間が、寿命に到達すると警告を報知する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−185374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、近年、蛍光灯ランプよりも長寿命でランプ切れのないLEDを用いたLED照明装置が普及し始めているが、次のような問題点があった。
【0005】
第1の問題点は、LEDよりもLEDへ直流電源供給する直流電源装置の寿命が短いかいという点である。
【0006】
第2の問題点は、LEDはランプ切れは起きないが、点灯時間が長くなれば徐々にLEDの明るさが暗くなるという点である。
【0007】
第3の問題点は、LED照明部が使用される場所の温度によって寿命が変化するという点である。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、乗客コンベアにおけるLED照明部又は直流電源装置の寿命を正確に知ることができる乗客コンベアの照明装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態は、乗客コンベアを照明するLEDと、前記LEDに直流電源を供給する直流電源装置と、前記乗客コンベアのトラス内、又は、制御ボックス内の温度を検出する温度センサと、前記LEDの点灯時間を積算して積算点灯時間を求め、前記温度センサの検出温度が高い程に値が大きくなる補正係数を前記積算点灯時間にかけて、補正積算点灯時間を演算し、前記補正積算点灯時間が前記LEDの寿命、又は、前記直流電源装置の寿命に到達したときに、報知部によって寿命に到達したことを報知する制御部と、を有することを特徴とする乗客コンベアの照明装置である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1に係るエスカレータの照明装置のブロック図である。
【図2】照明装置のフローチャートである。
【図3】実施例2に係るエスカレータの照明装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の乗客コンベアの照明装置50について図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
本発明の実施例1の乗客コンベアについて、エスカレータを例にして図1と図2に基づいて説明する。
【0013】
本実施例のエスカレータには、左右の手すりの内部に複数のLED照明部11が並べて設けられている。また、この位置以外にも、照明が必要な場所にそれぞれLED照明部11が設けられている。なお、LED照明部11とは、複数のLEDが基板上に配列された1つのユニットを意味する。これら複数のLED照明部11のLEDをON(点灯)/OFF(消灯)させるために、エスカレータは、点灯スイッチ6を有している。
【0014】
(1)エスカレータの照明装置50
本実施例のエスカレータの照明装置50について、図1に基づいて説明する。図1は、照明装置50のブロック図である。
【0015】
照明装置50は、複数のLED照明部11に加えて、交流電源1、制御部3、運転リレー接点5、キースイッチ6、電磁接触器(LPR)7、表示部10、操作部16、直流電源装置4、温度センサ9を有している。
【0016】
交流電源1は、遮断器2を介して制御部3と直流電源装置4にAC200Vの交流電源を給電する。
【0017】
直流電源装置4は1台であって、交流電源AC200Vを直流電源DC24Vに変換して複数のLED照明部11へ全て給電する。
【0018】
複数のLED照明部11は、例えば並列に接続され、直流電源装置4から直流電源DC24Vが給電されて、全てのLEDが点灯する。
【0019】
電磁接触器(LPR)7は、LED照明部11のLEDをON/OFFするためのものであり、運転リレー接点5と点灯スイッチ6とが直列に接続されている。運転リレー接点5は、エスカレータが運転を開始するとON状態となり、キースイッチ6は、保守員、管理員等がLED照明部11のLEDを点灯させるためのスイッチである。一方、電磁接触器7の接点8aは、複数のLED照明部11へ直流電源を給電するための電源ライン上に接続され、電磁接触器7の接点8bは、制御部3へ照明カウント信号を入力するために、制御部3に設けられている。電磁接触器(LPR)7は、運転リレー接点5、又は、点灯スイッチ6のどちらか一方が、ON状態となると、接点8aと接点8bをON状態にする。
【0020】
制御部3は、液晶表示装置等よりなる表示部10、スイッチやキーボードよりなる操作部16、温度センサ9、前記した電磁接触器7の接点8bが接続されている。制御部3は、LEDの寿命(時間)、直流電源装置4の寿命(時間)、及び、後から説明する補正係数kを内部のメモリに記憶している。直流電源装置4の寿命としては、例えば1000時間であり、LEDの寿命としては、例えば5000時間であり、これら寿命を制御部3に記憶しておく。
【0021】
温度センサ9は、制御ボックス内部に配置されている。この制御ボックスは、制御部3、直流電源装置4等が収納された箱であって、エスカレータのトラス内部、特に駆動モータ等が配置された機械室内部に配置されている。そして、この温度センサ9は、トラス内部、すなわち、制御ボックス内部の温度を検出する。
【0022】
(2)照明装置50の動作状態
次に、照明装置50の動作状態について図2のフローチャートに基づいて説明する。
【0023】
ステップS1において、エスカレータが運転を開始すると運転リレー接点5がON状態となり、電磁接触器(LPR)7の接点8aと接点8bがON状態となる。接点8aがON状態となると、複数のLED照明部11のLEDに直流電源装置4から直流電源が給電されて点灯を開始する。また、接点8bがON状態になると、制御部3に照明カウント信号が入力される。そして、照明カウント信号が入力(ON)されればステップS2に進み、ONされなければステップS1の状態を維持する。また、保守員によってキースイッチ6が操作されても、電磁接触器7の接点8aと接点8bがON状態となり、LED照明部11のLEDが点灯すると共に照明カウント信号が制御部3に入力される。
【0024】
ステップS2において、制御部3は、直流電源装置4の使用時間である第1点灯時間と、LED照明部11のLEDの点灯時間である第2点灯時間のそれぞれをカウントして積算して、第1積算点灯時間と第2積算点灯時間を求める。このように第1点灯時間と第2点灯時間を別々にカウントするのは、直流電源装置4とLED照明部11とを交換するタイミングが異なり、例えば、最初に直流電源装置4を交換するとその時点で第1積算点灯時間はリセットされるが、LED照明部11はまだ交換されていないため第2積算点灯時間の積算を続けるからである。そして、エスカレータが停止したり、また、キースイッチ6がOFF状態になってLEDの点灯が終了すると、制御部3は、第1点灯時間と第2点灯時間の積算をそれぞれ終了し、第1積算点灯時間と第2積算点灯時間を記憶する。また、制御部3は、この点灯している時間の間に、温度センサ9によって検出された温度を連続して記憶する。そして、ステップS3に進む。
【0025】
ステップS3において、制御部3は、点灯している時間の間の検出温度の平均温度を演算する。そして、制御部3は、演算した平均温度に対応した補正係数kを内部のメモリから呼び出し、この補正係数kを第1積算点灯時間にかけて、第1補正積算点灯時間を演算する。この補正係数kとは、例えば平均検出温度が30℃の場合を標準の1.0として、35℃の場合は1.5、40℃の場合は2.0、逆に30℃より低い25℃の場合は0.5とする。これは、トラス(すなわち、制御ボックス)内の温度が高くなれば直流電源装置4の電解コンデンサの寿命が短くなるため、寿命が短くなる度合いに対応した補正係数kを積算点灯時間にかけて、温度による寿命に対する影響を積算点灯時間に反映させている。制御部3は、同様に補正係数kを第2積算点灯時間にかけて、第2補正積算点灯時間を演算する。
【0026】
ステップS4において、制御部3は、演算した第1補正積算点灯時間が、直流電源装置4の寿命(時間)に到達したか否かを判断し、到達していればステップS5に進み、到達していなければステップS7に進む。
【0027】
ステップS5において、直流電源装置4の寿命に到達したため、表示部10に直流電源装置4が寿命になったことを画面で表示し、ステップS6に進む。
【0028】
ステップS6において、保守員が直流電源装置4を交換すれば、制御部3は、第1積算点灯時間のみをリセットし、第2積算点灯時間はそのままカウントを続け、ステップS1に戻る。
【0029】
ステップS7において、制御部3は、演算した第2補正積算点灯時間が、LED照明部11のLEDの寿命(時間)に到達したか否かを判断し、到達していればステップS8に進み、到達していなければステップS1に戻る。
【0030】
ステップS8において、制御部3は、表示部10にLED照明部11のLEDが寿命になったことを表示し、ステップS9に進む。
【0031】
ステップS9において、保守員がLED照明部11の交換を行うと、第2積算点灯時間のみをリセットし、第1積算点灯時間はそのままカウントを続け、ステップS1に戻る。
【0032】
(3)効果
本実施例によれば、制御ボックス内の温度センサ9によって検出した温度に対応して第1積算点灯時間と第2積算点灯時間を補正し、直流電源装置又はLED照明部のLEDの寿命を判断するため、これら寿命が到達したときに正確に保守員又は管理員に報知できる。
【0033】
また、直流電源装置4とLED照明部11のLEDとは別々に寿命を判断するため、より正確に寿命の判断を行うことができる。特に、直流電源装置4とLED照明部11を交換した場合に各積算点灯時間を個々にリセットするため、直流電源装置4とLED照明部11を同時に交換する必要がない。
【実施例2】
【0034】
次に、本発明の実施例2に係るエスカレータについて図3に基づいて説明する。
【0035】
本実施例と実施例1の異なる点は、表示部10に代えて、音声出力装置12とスピーカ13を有し、さらに直流電源装置4に加えて、予備電源装置15と直流電源制御装置14とを有している点にある。
【0036】
本実施例の照明装置50であると、直流電源装置4、又は、LED照明部11のLEDの寿命が来ると、制御部3がその旨を音声出力装置12を介してスピーカ13から音声で報知する。
【0037】
また、直流電源装置4の寿命が来ると、直流電源制御装置14が、直流電源装置4に代えて、予備直流電源装置15からLED照明部11に直流電源を供給するように切り換える。これによって、直流電源装置4の交換が遅れて寿命が尽きても、予備直流電源装置15からの直流電源によってLED照明部11のLEDが消灯することがない。
【変更例】
【0038】
上記各実施例では、LED照明部11の寿命が来ると、表示部10又は音声出力装置とスピーカ13からその旨を警告したが、これに加えて、制御部3が、LED照明部11のLEDを点滅させてもよい。これによって、LED照明部11に寿命が来たことを一目で判断できる。
【0039】
また、LED照明部11は、通常点灯時間が長くなると共に明るさが低減してくる。そのため、この明るさの低減を防止するため、第2積算点灯時間が短い場合には、直流電源装置4から供給する直流電流値を小さくしておき、積算点灯時間が長くなればなるほどこの直流電流値を上昇させて、LED照明部11の明るさを常に一定にするようにしてもよい。
【0040】
また、上記実施例では、エスカレータで説明したが、これに代えて動く歩道で適用してもよい。
【0041】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
100・・・エスカレータ、1・・・交流電源、2・・・遮断器、、3・・・制御部、4・・・直流電源装置、5・・・運転リレー接点、6・・・キースイッチ、7・・・電磁接触器、8a・・・電磁接触器の接点、8b・・・電磁接触器の接点、9・・・温度センサ、10・・・表示部、11・・・LED照明部、12・・・音声出力装置、13・・・スピーカ、14・・・直流電源制御装置、15・・・予備直流電源装置、16・・・操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアを照明するLEDと、
前記LEDに直流電源を供給する直流電源装置と、
前記乗客コンベアのトラス内の温度を検出する温度センサと、
前記LEDの点灯時間を積算して積算点灯時間を求め、前記温度センサの検出温度が高い程に値が大きくなる補正係数を前記積算点灯時間にかけて、補正積算点灯時間を演算し、前記補正積算点灯時間が前記LEDの寿命、又は、前記直流電源装置の寿命に到達したときに、報知部によって寿命に到達したことを報知する制御部と、
を有することを特徴とする乗客コンベアの照明装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記補正積算点灯時間が、前記LEDの寿命、又は、前記直流電源装置の寿命に到達したときに、前記LEDを点滅させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアの照明装置。
【請求項3】
前記報知部が、表示部、又は、音声出力部である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の乗客コンベアの照明装置。
【請求項4】
前記LEDに直流電源を供給する予備直流電源装置をさらに有し、
前記制御部は、前記補正積算点灯時間が、前記直流電源装置の寿命に到達したときに、前記直流電源装置に代えて前記予備直流電源装置から前記LEDに直流電源を供給する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の乗客コンベアの照明装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記補正積算点灯時間が長い程に、前記直流電源装置から前記LEDに給電する直流電流値を上昇させる、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の乗客コンベアの照明装置。
【請求項6】
1台の前記直流電源装置が、全ての前記LEDに直流電源を給電する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の乗客コンベアの照明装置。
【請求項7】
前記直流電源装置と前記制御部とが、制御ボックス内に配され、
前記制御ボックスが前記トラス内に配され、
前記温度センサが、前記制御ボックス内に配されている、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の乗客コンベアの照明装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記LED用の前記補正積算点灯時間と前記直流電源装置用の前記補正積算点灯時間をそれぞれ演算する、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の乗客コンベアの照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−126514(P2012−126514A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279539(P2010−279539)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】