説明

乗物のウインドシールド取付構造

【課題】ウインドシールドの位置を手動でより簡単に変更できる、ウインドシールド取付構造を提供する。
【解決手段】乗物の車体前部の上部に設けられ、運転者への風圧を緩和するウインドシールド17の取付構造において、ウインドシールド17に取り付けられたプレート21と、車体に取り付けられたシールドステー18と、プレート21とシールドステー18とを前後から締め付け可能なクランプ30と、を備え、クランプ30は、締め付け及び締め付け解除が手動で操作可能な操作部31を備え、操作部31を操作しクランプ30の締め付けを解除することによって、プレート21がシールドステー18に沿って上下に移動可能となっていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車等の乗物のウインドシールド取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動二輪車の車体前部を覆うフロントカウルの上部に取り付けられるウインドシールドは、その上下方向位置を変更できるようになっているものがある。例えば、特許文献1では、ウインドシールドを支持する支柱に上下に延びる縦長孔を設け、ウインドシールドの支持位置を縦長孔内において上下に移動させることで、ウインドシールドの上下方向位置を変更する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−104086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のようなウインドシールド取付構造では、ウインドシールドの上下方向位置を変更するために、「各縦長孔におけるビスをすべてドライバ等の工具で緩めた後、ウインドシールドを上下させ、その上下方向位置を決定後、緩めたすべてのビスをドライバで再度締め付ける」という作業及びドライバ等の工具が必要となり、ウインドシールドの位置を変更する作業が繁雑となっている。
【0005】
そこで本発明の目的は、ウインドシールドの位置を手動でより簡単に変更できる、ウインドシールド取付構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、乗物の車体前部の上部に設けられ、運転者への風圧を緩和するウインドシールドの取付構造において、前記ウインドシールドに取り付けられたプレートと、前記車体に取り付けられたシールドステーと、前記プレートと前記シールドステーとを前後から締め付け可能なクランプと、を備え、前記クランプは、締め付け及び締め付け解除が手動で操作可能な操作部を備え、前記操作部を操作し前記クランプの締め付けを解除することによって、前記プレートが前記シールドステーに沿って上下に移動可能となっていることを特徴とする。
【0007】
前記構成によれば、操作部によって、プレートとシールドステーとが手動で締め付け及び締め付け解除できるので、工具を用いることなく、ウインドシールドを移動させることができる。すなわち、ウインドシールドの位置を手動で簡単に変更することができる。
【0008】
本発明は、更に、次のような構成を備えるのが好ましい。
(1)前記シールドステー及び前記プレートの一方には、上下方向に延びる長孔が形成されており、前記シールドステー及び前記プレートの他方には、ガイド部が設けられており、前記ガイド部は、前記長孔の左右両側縁に嵌合するようになっている。
(2)前記構成(1)において、前記ガイド部は、前記プレートが前記シールドステーに沿って上下に移動する際、前記長孔の上端又は下端に当接することによって、前記プレートの上方への移動又は下方への移動を規制するようになっている。
(3)前記操作部は、前記クランプのウインドシールド厚さ方向の一端部側に設けられている。
(4)前記操作部は、前記ウインドシールドの前方に位置するようになっている。
(5)前記構成(1)〜(4)のいずれか1つにおいて、前記クランプは、前記操作部の回動によって締め付け及び締め付け解除する、ネジ式締結構造を有し、前記クランプは、前記長孔及び前記プレートに挿通される軸部と、前記軸部より大きい径を有する頭部と、を有する軸状部を備え、前記操作部と前記軸状部とが螺合するようになっている。
(6)前記クランプは、前記操作部の抜け方向の移動を規制する抜止部材を備えている。
(7)前記操作部は、把持される把持部と、前記把持部に連結される操作軸部と、を備え、前記ウインドシールドには、前記操作軸部が挿通する孔が形成されている。
【0009】
前記構成(1)によれば、ガイド部が長孔の左右両側縁に嵌合するようになっているので、長孔に対してウインドシールドが取り付けられたプレートが傾くことを防止でき、ウインドシールドを円滑に移動させることができる。
【0010】
前記構成(2)によれば、プレートの上方への移動又は下方への移動が規制されるので、ウインドシールドの移動量を規制することができる。
【0011】
前記構成(3)によれば、操作部がクランプの一端部側に位置しているので、操作部とクランプとが一軸上に位置することとなり、その結果、操作部に加えた力をクランプに伝達する構成を簡素化することができる。
【0012】
ウインドシールドの前方は後方に比べて、周囲に配置されている部材が少ないことから、運転者のアクセスが容易である。したがって、前記構成(4)によれば、操作部と他の部材との干渉を防止することができ、また、操作部の操作を容易とすることができる。
【0013】
前記構成(5)は、クランプの具体的な締結構造であり、本締結構造を適用することにより、操作部の回動によって、容易に締め付け及び締め付け解除を行うことができる。
【0014】
前記構成(6)によれば、抜止部材によって、操作部が抜け取れて落下してしまうことを防止でき、さらに、操作部の紛失を防止できる。
【0015】
前記構成(7)によれば、操作部によるウインドシールドの損傷を防止できる。
【発明の効果】
【0016】
要するに本発明によると、ウインドシールドの位置を手動で簡単に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るウインドシールド取付構造を備えた自動二輪車の左側面図である。
【図2】図1の自動二輪車の車体フレームの前方斜視図である。
【図3】図2のウインドシールド部分の拡大図である。
【図4】プレートの後面図である。
【図5】プレートの側面図である。
【図6】図3のVI−VI断面図である。
【図7】ナットの平面図である。
【図8】図7のVIII−VIII断面図である。
【図9】本発明の別の実施形態を示す断面図である。
【図10】クランプの別の実施形態を示す図である。
【図11】図10においてレバーを角変位させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係るウインドシールド取付構造を備えた自動二輪車1の左側面図である。なお、本実施形態で用いる方向の概念は、自動二輪車1の運転者から見た方向の概念と一致するものとして説明する。
【0019】
図1に示すように、自動二輪車1は前輪2と後輪3とを備え、前輪2は略上下方向に延びるフロントフォーク4の下部にて回転自在に支持されている。フロントフォーク4は、ステアリングシャフト5に支持されている。ステアリングシャフト5は、ヘッドパイプ6によって回転自在に支持されている。フロントフォーク4の上端部に設けられたアッパーブラケット(図示せず)には、左右に延びるバー型のステアリングハンドル7が取り付けられている。従って、運転者がステアリングハンドル7を左右に揺動させることによって、ステアリングシャフト5を回転軸として、前輪2が操舵される。
【0020】
車体フレーム8は、ヘッドパイプ6から後方に延設されている。車体フレーム8の後下端部には、スイングアーム9の前端部がピボットボルト10で軸支されており、スイングアーム9の後端部には後輪3が回転自在に支持されている。車体フレーム8の上方であって、ステアリングハンドル7の後方には、燃料タンク11が配置され、燃料タンク11の後方には、運転者用のシート12が配置されている。燃料タンク11の下方には、エンジン13が搭載されている。エンジン13の後部には、出力スプロケット(図示せず)が配置されており、出力スプロケットの動力がチェーン14を介して後輪3へと伝達される。
【0021】
ステアリングハンドル7の前方には、ヘッドランプ15配置されており、ヘッドランプ15は、フロントカウル16で覆われている。フロントカウル16は、ヘッドランプ15等の車体の前部の上部を覆い、エンジン13等を覆わない、ハーフカウル型である。フロントカウル16の上部には、運転者への風圧を緩和するウインドシールド17が配置されている。ウインドシールド17は、前方に凸形状を有するように湾曲しており、運転者の前方への視認性を確保するため、透明な樹脂板で形成されている。
【0022】
図2は、図1の自動二輪車1の車体フレーム8の前方斜視図である。ウインドシールド17は、前方に向かって左右一対として設けられているシールドステー18に取り付けられている。左右一対のシールドステー18は、左右方向に延びる連結部材19によって連結されている。連結部材19は、車体フレーム8の前端部に取り付けられている。
【0023】
図3は、図2のウインドシールド17部分の拡大図である。図3において、ウインドシールド取付構造の左右の一方(右方)については、分解図で示している。図3に示すように、ウインドシールド17には、左右一対の孔16aが形成されている。プレート21は、ウインドシールド17の前面から挿通されるボルト22によって、ウインドシールド17の後面に取り付けられている。シールドステー18には、上下方向に延びる長孔18aが形成されている。なお、上述したように、ウインドシールド17は透明な樹脂板で形成されているが、プレート21及びシールドステー18を前方から視認しにくくするために、ウインドシールド17において、プレート21及びシールドステー18を覆う部分では、凹凸加工が行われている。
【0024】
図4は、プレート21の後面図であり、図5は、プレート21の側面図である。プレート21は、上下方向に細長く形成されており、プレート21の後面には、プレート21と同方向に細長く形成されたガイド部材(ガイド部)211が取り付けられている。ガイド部材211には、上下端において、後方に突出する突出部211aが形成されている。また、プレート21及びガイド部材211の長さ方向の中央部には、ウインドシールド17に形成された孔16aと合致する孔21b及び211bをそれぞれ有しており、また、プレート21及びガイド部材211の長さ方向の両端部には、ボルト22が挿通する孔21c、211cをそれぞれ有している。そして、突出部211aは、孔211cの上下方向外方に位置している。
【0025】
図3に示すように、ウインドシールド17に取り付けられたプレート21は、シールドステー18の前面に対して、クランプ30によって締め付けられるようになっている。クランプ30は、ナット部31cを有する手動で回動可能なノブ(操作部)31と、ノブ31と螺合する頭部32cを有する筒軸状ボルト(軸状部)32と、ワッシャ33と、抜止ボルト(抜止部材)34と、キャップ35と、を有している。ノブ31と筒軸状ボルト32とが螺合することによってプレート21とシールドステー18とを走行方向の前後から締め付けるようになっており、その結果、プレート21が取り付けられたウインドシールド17が、シールドステー18に対して、所定位置に位置するようになっている。ノブ31は、クランプ30のウインドシールド17厚さ方向の前端部に設けられ、ウインドシールド17の前方近傍に位置するようになっている。また、ノブ31及び筒軸状ボルト32は、プレート21がウインドシールド17に取り付けられるための上下のボルト22の上下方向の略中央に位置するようになっている。
【0026】
図6は、図3のVI−VI断面図である。クランプ30がプレート21とシールドステー18とを前後から締め付けている状態では、前方から順に、ノブ31、ワッシャ33、プレート21、シールドステー18、筒軸状ボルト32が位置するようになっている。そして、ノブ31の後方突出状の操作軸部31aがウインドシールド17の孔16aを挿通し、筒軸状ボルト32の軸部32aが、シールドステー18の長孔18a、プレート21及びガイド部材211の孔21b、211b、ワッシャ33を挿通して、ノブ31と筒軸状ボルト32とが螺合するようになっている。ノブ31は、操作軸部31aを直接回動させる場合に比べて小さな力で操作軸部31aを回動させることができるように、把持部31bが操作軸部31aに比べて大径となり、且つ、運転者が把持可能な大きさとなるように、形成されている。また、把持部31bの外周部の径方向寸法が周方向で変化するよう、把持部31bの外周面には、複数の凹部が間隔をおいて形成されており、前記凹部は運転者の指を支持する形状となっている。
【0027】
また、図6に示すように、クランプ30によって、プレート21とシールドステー18との締め付けを解除すると、ガイド部材211が長孔18aの両側縁に嵌合しながら、プレート21は、シールドステー18aの長孔18aに沿って上下に移動可能となっている。プレート21が長孔18aに沿って上下に移動する際、ガイド部材211の突出部211aが、長孔18aの上端17a1又は下端17a2に当接して、プレート21の上方への移動又は下方への移動を規制するようになっている。
【0028】
図7は、筒軸状ボルト32の平面図であり、図8は、図7のVIII−VIII断面図である。筒軸状ボルト32の頭部には、シールドステー18の長孔18aの両側縁に当接する平面ガイド部32bが形成されている。平面ガイド部32bは、周方向の径寸法が異なり、短軸側の径が長孔18aの左右方向幅より小さく、長軸側の径が長孔18aの左右方向幅より大きくなっている。筒軸状ボルト32が、長孔18aに沿って上下に移動する場合、平面ガイド部32bが長孔18aの両側縁に当接して移動するようになっており、その結果、筒軸状ボルト32の廻り止めが実現されている。平面ガイド部32bの後方には、平面ガイド部32bよりも左右方向に突出している、頭部32cが形成されている。
【0029】
図6に示されるように、長孔18aの厚さ(前後方向長さ)D1は、平面ガイド部32bの厚さ(前後方向長さ)D2とガイド部材211の厚さ(前後方向長さ)D3との合計より大きくなっている。
【0030】
ノブ31を回動させ、ノブ31と筒軸状ボルト32との螺合を締め付けると、プレート21と筒軸状ボルト32との距離が短くなることによって、ウインドシールド17がシールドステー18に近づくようになる。そして、シールドステー18の前面とプレート21の後面とが接するよう、シールドステー18とプレート21とが挟持されることによって、ウインドシールド17がシールドステー18に固定される。また、ノブ31を回動させ、ノブ31と筒軸状ボルト32との螺合を緩めると、プレート21と筒軸状ボルト32との距離が長くなることによって、シールドステー18とプレート21との挟持が解除され、ウインドシールド17は、シールドステー18に対して上下方向に移動可能となる。
【0031】
図6に示すように、抜止ボルト34は、ノブ31の前方から挿入され、その頭部34aが、ノブ31のナット部31cのネジ孔より大径に形成されている。そして、抜止ボルト34は、筒軸状ボルト32のネジ孔32dと螺合するようになっている。その結果、ノブ31が手動で回動され、ノブ31と筒軸状ボルト32との螺合が緩められたとしても、抜止ボルト34と筒軸状ボルト32とが螺合しているので、ノブ31の抜け方向の移動が規制されるようになっている。キャップ35は、ノブ31の前方から、ノブ31のナット部31cのネジ孔を閉止するように、ノブ31に取り付けられており、抜止ボルト34の頭部34aを覆うようになっている。
【0032】
以下、ウインドシールド17の位置を調整する作業について説明する。
【0033】
まず、左右のノブ31を手動で回動させ、ノブ31と筒軸状ボルト32との螺合を緩める。その結果、プレート21とシールドステー18との締め付けが解除される。
【0034】
次に、ノブ31をシールドステー18に沿って上下方向に移動させる。この際、シールドステー18を把持して、直接シールドステー18をシールドステー18に沿って上下に移動させても良い。その結果、プレート21がシールドステー18に沿って上下に移動する。ここで、プレート21の上下の移動は、プレート21に取り付けられたガイド部材211がシールドステー18の長孔18aの左右両側縁に嵌合した状態で行われるので、ウインドシールド17の上下方向の移動において、左右方向にずれることが防止されている。
【0035】
ウインドシールド17を所望の上下方向位置に位置させた後、左右のノブ31を手動で回動させ、ノブ31と筒軸状ボルト32とを螺合させ、プレート21とシールドステー18とを締め付ける。その結果、ウインドシールド17が所望の上下方向位置で固定される。
【0036】
本実施形態によれば、次のような効果を発揮できる。
【0037】
(1)ノブ31によって、プレート21とシールドステー18とが手動で締め付け及び締め付け解除できるので、工具を用いることなく、ウインドシールド17を移動させることができる。すなわち、ウインドシールド17の位置を手動で簡単に変更することができる。
【0038】
(2)シールドステー18において、走行風に対して、ウインドシールド17を支持する面とプレート21に締結される面とが同一面となるので、支持面以外の面でプレート21に締結される場合と比べて、シールドステー18の構造を簡素化できる。さらに、シールドステー18に関して、走行風に対するウインドシールド17の支持と、ウインドシールド17の高さ調整とを同じ部材で実現することができ、シールドステー18の構造を簡素化することができる。また、締結方向と走行風が吹き付ける方向とを同じとすることで、ウインドシールド17及びシールドステー18の補強構造を簡素化することができる。また、ウインドシールド17は、上下方向に延びるプレート21を介してシールドステー18に連結されることで、ウインドシールド17にかかる負荷を分散して、一箇所に集中することを防止でき、ウインドシールド17が必要とする強度を過大となることを防止できる。
【0039】
(3)ウインドシールド17はプレート21を介してシールドステー18に取り付けられるので、ウインドシールド17を移動させた場合に、ウインドシールド17に傷がつくことを防止できる。
【0040】
(4)ガイド部材211は、長孔18aの左右両側縁に嵌合するようになっているので、長孔18aに対してウインドシールド17が取り付けられたプレート21が傾くことを防止でき、ウインドシールド17を円滑に移動させることができる。
【0041】
(5)ガイド部材211の突出部211aは、プレート21が長孔18aに沿って上下に移動する際、長孔18aの上端又は下端に当接することによって、プレート21の上方への移動又は下方への移動を規制するようになっているので、ウインドシールド17の移動量を規制することができる。また、プレート21とシールドステー18との締め付けが緩んでも、突出部211aが長孔18aに引っ掛かることによって、ウインドシールド17がシールドステー18から落下しにくくすることができる。
【0042】
(6)ガイド部材211は、上下方向に間隔を有する孔211cで長孔18aに取り付けられるようになっているので、長孔18aに対してプレート21が傾くことを防止できる。さらに、ガイド部材211は、その長手方向が上下方向に延びるように形成され、左右方向の両側縁が長孔18aに嵌合することによって、長孔18aに対してプレート21が傾くことを更に防止できる。このように、ガイド部材211は、ウインドシールド17の上下方向以外の方向への移動を規制する機能を有している。本実施形態では、ガイド部材211に形成される突出部211aが、ウインドシールド17の上下方向への移動を規制する規制部として機能することで、別途規制部をガイド部材211とは別に形成する場合に比べて、ウインドシールド取付構造を簡素化できる。
【0043】
(7)ノブ31は、クランプ30のウインドシールド厚さ方向の前端部に設けられているので、ノブ31とクランプ30とが上下左右にずれておらず、一軸上に位置することとなり、その結果、ノブ31に加えた締結力をクランプ30に伝達する構成を簡素化することができる。具体的には、ノブ31の回動軸とクランプ30の締結軸とを同一とすることができ、構造を簡素化することができる。
【0044】
(8)ウインドシールド17の前方は後方に比べて、周囲に配置されている部材が少ないことから、運転者のアクセスが容易である。ノブ31は、ウインドシールド17の前方に位置するようになっているので、ノブ31と他の部材との干渉を防止することができ、また、ノブ31の操作を容易とすることができる。
【0045】
(9)ウインドシールド17の前方にノブ31が配置される、すなわち、クランプ30の軸方向に対してノブ31とシールドステー18とが並んで配置されることで、もともとシールドステー18によって運転者の視界が遮られていた部分にノブ31の中心が配置されることとなり、ノブ31が配置されることによる運転者の視界の低下を抑制できる。また、ノブ31がシールドステー18の上端部と下端部との間に配置されるので、ノブ31がシールドステー18から左右方向に突出する部分を減少させることができ、運転者の視界の低下を抑制することができる。
【0046】
(10)クランプ30は、ノブ31の回動によって締め付け及び締め付け解除する、ネジ式締結構造を有し、前記クランプは、前記長孔及び前記プレートに挿通される軸部と、前記軸部より大きい径を有する頭部と、を有する筒軸状ボルト32を備え、ノブ31と筒軸状ボルト32とが螺合するようになっているので、ノブ31の回動によって、容易に締め付け及び締め付け解除を行うことができる。
【0047】
(11)クランプ30は、ノブ31の抜け方向の移動を規制する抜止ボルト34を備えているので、抜止ボルト34によって、ノブ31が抜け取れて落下してしまうことを防止でき、さらに、ノブ31の紛失を防止できる。
【0048】
(12)ウインドシールド17には、ノブ31の操作軸部31aが挿通する孔16aが形成されているので、ノブ31によるウインドシールド17の損傷を防止できる。
【0049】
(13)キャップ35は、抜止ボルト34を覆うようにノブ31に取り付けられているので、抜止ボルト34への不要な接触を防止できる。
【0050】
(14)シールドステー18は、ウインドシールド17の後方において、前方に向かって設けられているので、側方に向かって設けられている場合と比べて、前方からの風圧を受けるウインドシールド17を安定して支持することができる。また、シールドステー18は左右一対として設けられているので、1個のみ設けられる場合と比べて、ウインドシールド17を安定して支持しながら上下方向に移動させることができ、また、3個以上設けられる場合と比べて、ウインドシールド17の上下方向の移動を円滑に行うことができる。
【0051】
(15)ノブ31及び筒軸状ボルト32は、上下のボルト22の上下方向の略中央に位置するようになっているので、ノブ31と筒軸状ボルト32との螺合によって、プレート21はシールドステー18に安定して支持されるようになっている。ここで、プレート21はウインドシールド17に取り付けられているので、ウインドシールド17を安定して支持することができる。
【0052】
上記実施形態では、プレート21にガイド部材211が取り付けられているが、プレート21とガイド部材211とが一体として形成されることによって、プレートにガイド部が設けられても良い。
【0053】
上記実施形態では、シールドステー18に長孔18aが形成され、プレート21にガイド部材211が取り付けられているが、シールドステーにガイド部材が取り付けられ、プレートに長孔が形成されても良い。
【0054】
上記実施形態では、ガイド部材211の突出部211aが、プレート21が長孔18aに沿って上下に移動する際、長孔18aの上端又は下端に当接することによって、プレート21の上方への移動又は下方への移動を規制するようになっている。しかし、プレート21をウインドシールド17に取り付けるボルト22の先端部が、プレート21が長孔18aに沿って上下に移動する際、長孔18aの上端又は下端に当接することによって、プレート21の上方への移動又は下方への移動を規制しても良い。この場合、ボルト22の先端部は弾性材でできたナットと螺合している、又は、ボルト22の先端部は弾性材等で覆われている、ことが好ましい。ボルト22が上記のような構成を有することによって、ボルト22本体が長孔18aの上端又は下端に接触して損傷することを防止できる。
【0055】
上記実施形態では、ノブ31が、ウインドシールド17の前方近傍に位置するようになっているが、図9に示すように、ウインドシールド17の後方近傍に位置するようになっていても良い。ノブ31がウインドシールド17の後方近傍に位置することによって、ノブ31の空気抵抗の影響を無視することができる。なお、この場合は、ノブ31と筒軸状ボルト32との前後方向位置は逆となる。
【0056】
上記実施形態では、クランプ30は、ノブ31の回動によって締め付け及び締め付け解除する、ネジ式締結構造を有しているが、本発明のクランプは、ネジ式締結構造に限定されず、プレート21とシールドステー18とを締め付け及び締め付け解除可能な構造であれば良い。例えば、図10及び図11に示すようなクランプ40を適用しても良い。クランプ40は、回動中心41aを中心として手動で角変位可能なレバー41と、部材を挟んで支持する、挟持部材42及び挟持部材43と、を有している。そして、クランプ40では、図10に示す状態から図11に示す状態へレバー41を角変位させると、挟持部材42と挟持部材43との間の間隔が小さくなり、挟持部材42と挟持部材43との間に位置するウインドシールド17、プレート21及びシールドステー18を締め付けるようになっている。また、図11に示す状態から図10に示す状態へレバー41を、回動中心41aを中心として角変位させると、挟持部材42と挟持部材43との間の間隔が大きくなり、挟持部材42と挟持部材43との間に位置するウインドシールド17、プレート21及びシールドステー18の締め付けを解除するようになっている。また、挟持部材43に対する挟持部材42の対向面42a及び挟持部材42に対する挟持部材43の対向面43aは、図10及び図11に示すように、それぞれ、平坦な平面となっているが、挟持部材42と挟持部材43との間に位置するウインドシールド17、プレート21及びシールドステー18への保持性を高めるように、それぞれ、凹凸が形成されていても良い。
【0057】
上記実施形態では、自動二輪車を用いて説明したが、運転者よりも前方にウインドシールドを備える乗物全般であれば自動二輪車以外でも適用可能である。たとえば小型滑走艇、バギー車、不整地走行車などの鞍乗り型車両に好適に用いることができ、さらにステアリングハンドルを有する乗物において、ステアリングハンドルよりも前方にウインドシールドを備える乗物について好適に適用可能である。
【0058】
本発明は、上記実施形態で説明した構成には限定されず、特許請求の範囲に記載した内容を逸脱することなく、当業者が考え得る各種変形例を含むことができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明では、ウインドシールドの位置を手動でより簡単に変更できる、ウインドシールド取付構造を提供できるので、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0060】
1 自動二輪車
2 前輪 3 後輪 4 フロントフォーク 5 ステアリングシャフト
6 ヘッドパイプ 7 ステアリングハンドル 8 車体フレーム
9 スイングアーム 10 ピボットボルト
11 燃料タンク
12 シート 13 エンジン 14 チェーン 15 ヘッドランプ
16 フロントカウル
17 ウインドシールド
18 シールドステー 18a 長孔
19 連結部材
21 プレート 211 ガイド部材 211a 突出部
22 ボルト
30 クランプ
31 ノブ 32 筒軸状ボルト 33 ワッシャ 34 抜止ボルト
35 キャップ
40 クランプ 41 レバー 42 挟持部材 43 挟持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物の車体前部の上部に設けられ、運転者への風圧を緩和するウインドシールドの取付構造において、
前記ウインドシールドに取り付けられたプレートと、
前記車体に取り付けられたシールドステーと、
前記プレートと前記シールドステーとを前後から締め付け可能なクランプと、を備え、
前記クランプは、締め付け及び締め付け解除が手動で操作可能な操作部を備え、
前記操作部を操作し前記クランプの締め付けを解除することによって、前記プレートが前記シールドステーに沿って上下に移動可能となっていることを特徴とする、ウインドシールド取付構造。
【請求項2】
前記シールドステー及び前記プレートの一方には、上下方向に延びる長孔が形成されており、
前記シールドステー及び前記プレートの他方には、ガイド部が設けられており、
前記ガイド部は、前記長孔の左右両側縁に嵌合するようになっている、請求項1記載のウインドシールド取付構造。
【請求項3】
前記ガイド部は、前記プレートが前記シールドステーに沿って上下に移動する際、前記長孔の上端又は下端に当接することによって、前記プレートの上方への移動又は下方への移動を規制するようになっている、請求項2記載のウインドシールド取付構造。
【請求項4】
前記操作部は、前記クランプのウインドシールド厚さ方向の一端部側に設けられている、請求項1〜3のいずれか1つに記載のウインドシールド取付構造。
【請求項5】
前記操作部は、前記ウインドシールドの前方に位置するようになっている、請求項1〜3のいずれか1つに記載のウインドシールド取付構造。
【請求項6】
前記クランプは、前記操作部の回動によって締め付け及び締め付け解除する、ネジ式締結構造を有し、
前記クランプは、前記長孔及び前記プレートに挿通される軸部と、前記軸部より大きい径を有する頭部と、を有する軸状部を備え、
前記操作部と前記軸状部とが螺合するようになっている、請求項2〜5のいずれか1つに記載のウインドシールド取付構造。
【請求項7】
前記クランプは、前記操作部の抜け方向の移動を規制する抜止部材を備えている、請求項1〜6のいずれか1つに記載のウインドシールド取付構造。
【請求項8】
前記操作部は、把持される把持部と、前記把持部に連結される操作軸部と、を備え、
前記ウインドシールドには、前記操作軸部が挿通する孔が形成されている、請求項1〜7のいずれか1つに記載のウインドシールド取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−91387(P2013−91387A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234117(P2011−234117)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)