説明

乱丁検査装置

【課題】基準画像の位置を設定する際に、折丁全体を検査領域として把握しつつ設定すること。
【解決手段】複数の丁合駒を有する丁合装置に設けられ、丁合駒から1枚ずつ取り出された折丁5の印刷面の一部を検査画像42として撮像し、該検査画像と予め記憶された基準画像43とを比較して乱丁を検査する乱丁検査装置であって、折丁の印刷面を分割して撮像して複数の撮像画像4a〜4dを取得する撮像手段と、該複数の撮像画像から画像領域が連続するパノラマ画像41を作成するパノラマ画像作成手段と、パノラマ画像を表示するパノラマ画像表示手段と、正規の折丁のパノラマ画像の一部を基準画像として設定する基準画像設定手段と、基準画像のパノラマ画像における画像位置を表示する基準画像表示手段等を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は,帳票等の折丁を丁合する際に乱丁を検査する乱丁検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製本中での乱丁、落丁等(本明細書においては乱丁と総称する)の検査装置として、従来から、CCDカメラを用いた乱丁検査装置が知られている。
例えば、中綴じ機械においては、丁合駒ごとのストッカにストックされた帳票(折丁)は、各丁合駒の帳票取出機構によって1枚ずつ取り出され、搬送装置(ギャザリングチェーン)に配置された鞍上に順に載置され、丁合束として形成されて下流の中綴じ機に搬送される。
【0003】
ここで、当該折丁の特徴部分を選択し、それを基準画像として予めメモリに登録しておき、帳票取出機構によって取り出された折丁をCCDカメラで撮影した被検査画像と、予め登録されている基準画像とを比較して、被検査画像中の基準画像の有無を検出することにより、乱丁が発生したかを検知することが行われている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−301881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、選択した基準画像が当該折丁の特徴部を的確に反映していない場合、例えば、隣接する丁合駒と同様の基準画像を選択してしまった場合には、隣接する丁合駒に同じ折丁を誤って収納しても、乱丁を検出することができない。
したがって、そのような検出エラーが生じると基準画像の位置を変更することが必要であるが、撮像画像は折丁の一部のみを撮像したものであるので、基準画像の位置の選択肢は限られてしまい、折丁全体の検査領域を把握しつつ別の基準画像に変更することが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、本発明は、複数の丁合駒を有する丁合装置に設けられ、前記丁合駒から1枚ずつ取り出された折丁の印刷面の一部を検査画像として撮像し、該検査画像と予め記憶された基準画像とを比較して乱丁を検査する乱丁検査装置であって、
前記折丁の印刷面を分割して撮像して複数の撮像画像を取得する撮像手段と、前記複数の撮像画像から画像領域が連続するパノラマ画像を作成するパノラマ画像作成手段と、前記パノラマ画像を表示するパノラマ画像表示手段と、正規の折丁の前記パノラマ画像の一部を前記基準画像として設定する基準画像設定手段と、前記基準画像の前記パノラマ画像における画像位置を表示する基準画像表示手段と、前記設定した基準画像を画像位置と共に予め記憶する基準画像記憶手段と、前記撮像手段で取得された前記検査画像と前記基準画像記憶手段に予め記憶された基準画像とを対比して乱丁を判定する乱丁判定手段と、を有することを特徴とする乱丁検査装置とした。
【0007】
このように構成したことにより、折丁を撮像したパノラマ画像(撮像領域が連続した検査画像)を見ることで、折丁全体の画質や画像内容を把握しながら基準画像を設定することができるので、高い精度の基準画像を設定することができるとともに、検査エラーが生じたときには、パノラマ画像上の基準画像位置を見ながら、素早く、別の適切な基準画像に再設定することができる。
【0008】
また本発明は、前記基準画像表示手段は、前記基準画像が設定された前記撮像画像のみを前記基準画像位置とともに表示する検査画像モード表示手段と、前記パノラマ画像を前記基準画像位置とともに表示するパノラマ画像モード表示手段とを有するとともに、それらモード表示を切り替える表示モード切り替え手段を有することを特徴とする乱丁検査装置とした。
【0009】
このように構成したことにより、乱丁検査作業時においては検査画像モード表示を選択し、基準画像の設定あるいは再設定作業時においてはパノラマ画像モード表示を選択するという、表示モードの選択を行うことができるので、それらの作業を容易かつ、精度良く行うことができる。
【0010】
また本発明は、基準画像表示手段は、前記乱丁判定手段によって乱丁が検出された場合に、前記設定された基準画像の位置表示を、当該基準画像によって乱丁が検出されたことが判別可能な表示に変更する表示変更手段を有し、前記表示変更手段によって前記基準画像の位置表示が、乱丁が検出された表示に変更された場合に、前記検査画像モード表示を前記パノラマ画像モード表示に切り替えることを特徴とする乱丁検査装置とした。
【0011】
このように構成したことにより、乱丁が検出されたときには、パノラマ画像モードに自動的に切り替えられて該パノラマ画像上に基準画像位置が表示されるので、その乱丁の検出が、登録されている基準画像の検査位置の設定ミスによるものか否かの判断を容易にすることができる。さらに、基準画像の再設定作業を容易に行うことができる。
【0012】
また本発明は、前記パノラマ画像作成手段は、前記複数の撮像画像から重複する画像領域を取り除いたパノラマ画像要素をそれぞれ作成してそれらを合成し、前記パノラマ画像表示手段は、前記パノラマ画像を表示する際に、隣接する前記パノラマ画像要素を区画する区画線を表示することを特徴とする乱丁検査装置とした。
【0013】
このように構成したことにより、パノラマ画像を構成する複数のパノラマ画像要素の内のどの画像領域に基準画像を設定すればよいのかが容易に判断することができる。
また、隣接するパノラマ画像要素を跨いだ基準画像の設定を回避できるので、1つの撮像画像のみで基準画像を設定することができ、撮像画像からの基準画像の設定のための画像処理を容易にすることができるなど、基準画像の設定或いは再設定を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、このように構成したことにより、基準画像の設定、再設定作業を容易かつ高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明における中綴じ製本ラインに適用した丁合装置の全体構成図。
【図2】本発明における乱丁検査装置の構成図。
【図3】本発明における乱丁検査装置の制御システムの全体構成図。
【図4】本発明における乱丁検査装置の基準画像の登録処理フロー図。
【図5】本発明における乱丁検査装置の検査位置変更フロー図。
【図6】本発明におけるパノラマ画像、検査画像、基準画像の関係を説明する説明図。
【図7】本発明における乱丁検査装置の撮像タイミング処理の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本件発明の第1の実施の形態例を、丁合装置に応用した例を用いて、以下に説明する。
なお、以下の説明における「撮像画像」、「検査画像」、「基準画像」および「パノラマ画像」を定義付けると、図6右図に示すように、「撮像画像」4は、折丁5の一部を撮像手段が撮像した画像をいう。同様に、「基準画像」43は、正規折丁の撮像画像4の一部であって、前記撮像画像から正規折丁の特徴部を抽出した画像をいう。また「検査画像」42は、被検査折丁の撮像画像の一部であって、基準画像位置によって規定される所定の隣接領域aを含む、或いは該隣接領域aを含まない画像領域をいう(したがって、該隣接領域aを含まない場合は、検査画像領域は基準画像位置によって規定される画像領域と同一となる。通常は、隣接領域aを含むように検査画像領域を設定することにより、折丁や撮像位置の位置ズレが乱丁検出の要因とならないようにしている。)。
これらの画像を用いた乱丁検査の手順は、まず、正規折丁の「撮像画像」4から、当該折丁の特徴部を含む一部を「基準画像」43として設定し、予め登録する。次に、被検査折丁の「撮像画像」4から基準画像位置を含む「検査画像」42を抽出し、該「検査画像」42と予め登録しておいた「基準画像」43とを対比判断する。対比判断の結果、該「検査画像」42中に「基準画像」43が所定の一致率以上で存在すると判断された場合、該被検査折丁を正規折丁とみなす。
ここで、「パノラマ画像」41とは、撮像領域が連続する複数のパノラマ画像要素41a〜41dからなる画像であって、折丁5の広い領域をパノラマ状(短冊状)に連続してカバーすることができる画像をいう。基準画像は、このパノラマ画像を構成する複数のパノラマ画像要素41a〜41dの内の、任意の画像領域から選択され、設定される。
【0017】
丁合装置10は、図1および図2に示すように、それぞれに折丁収納手段11―1〜11―nを有した複数の丁合駒10-1〜nを有しており、また、水平方向に延びた回転軸13、当該回転軸13を回転駆動する駆動部16、折丁収納手段11―1〜11―nを支持する折丁載台12、各折丁収納手段11―1〜11―nに対応して当該回転軸13に配設された複数のドラム14―1〜14−n、各丁合駒10-1〜nからの折丁を搬送する搬送ライン(ギャザリングチェーン)17、及び該搬送ライン17上に固設された鞍2を有している。
回転軸13が回転駆動されると、各丁合駒10-1〜nの折丁載台12に載置された折丁5が、ドラム14の爪にて1部ずつ引き出されて搬送ライン17の鞍2上に落下する。落下した折丁5は、搬送されるに従い各丁合駒から順に上積みされて、丁合装置10終端において当該複数の折丁全てがページ順に積層された丁合束が形成される。
【0018】
乱丁検査装置20は、図2および図3に示すように、各丁合駒10-1〜nに1つずつ配置される駒乱丁検査部20-1〜nと、ネットワーク(I/O)を介して接続されるコントローラ30から構成されている。
各駒乱丁検査部20-1〜nは、いずれも同一の構成を有しており、それぞれ、折丁を撮像する撮像手段21、検査側制御部22、および丁合駒10-1〜n側に必要に応じて設けられる入力手段、表示手段(いずれも図示せず)を有している。
撮像手段21は、丁合駒10-1〜nから引き出された折丁5の印刷面を分割撮像するCCDカメラ等からなる撮像装置部21bと、前記撮像装置部21bで撮像された撮像画像の画像処理を行う丁合画像処理部21aとを有している。
【0019】
また、検査側制御部22は、スタータ15からのスタート信号15aを受けてドラム14の回転数をカウントするカウンタ22aと、丁合画像処理部21aで画像処理した複数の撮像画像情報を記憶する撮像画像記憶手段22bと、各丁合駒に特有な識別情報等を記憶する機器情報記憶手段22cと、コントローラ30に予め記憶された基準画像情報と撮像手段21からの検査画像情報とを比較して乱丁を判断する乱丁判定手段22dと、乱丁判定手段22dからの乱丁判定結果等の検査情報を記憶する検査情報記憶手段22eと、検査情報とコントローラ30側からの設定情報とに基づいて丁合装置10を停止する等の制御を行ったり、ネットワーク(I/O)を介してコントローラ30へ検査情報等を出力したりする駒制御手段22fとを有している。
【0020】
そして、各駒乱丁検査部20-1〜nは、撮像装置部21bを除きそれぞれ筐体に収納され、オペレーターによって操作され易いように各丁合駒10-1〜nの近傍にそれぞれ配置されている。撮像装置部21bは、各丁合駒10-1〜nから引き出された折丁5の印刷面を分割撮像するに都合の良い位置に配置されている。
【0021】
コントローラ30は、ネットワーク(I/O)を介して複数の駒乱丁検査部20-1〜nを制御するために、各検査側制御部22とは別個に設けられているものであり、1台で、あるいは最小限の台数で、丁合装置10および乱丁検査装置20を含むシステム全体の制御をするように構成されている。
該コントローラ30は、図3に示すように、タイムサーバ30b、表示手段30c、入力操作手段30d、撮像画像処理手段30e、基準画像設定手段30g、エラー集計分析手段30i、およびメイン制御手段30aを有している。
【0022】
タイムサーバ30bは、各丁合駒10-1〜nに共通する標準時刻をメイン制御手段30aに供給し、メイン制御手段30aは、スタータ15から入力されるスタート信号15a、およびエンコーダ18から入力されるタイミング信号18aとともに、それらを各丁合駒10-1〜nに供給している。これにより、丁合装置10全体に共通した時刻での時刻管理や位置管理が行われる。
【0023】
表示手段30cは、コントローラ30を収納する筐体側面に設けられた液晶表示部(モニター)に画像を表示する手段であって、入力操作手段30dによって入力される各種設定情報、撮像画像処理手段30eによって処理された撮像画像、エラー集計分析手段30jに蓄積される検査情報、駒乱丁検査部20−1〜nからの乱丁発生情報、等を表示するものである。
また、この液晶表示部は、その画面上に表示される画像を、縮小したり、拡大したり、スクロールしたりする機能を備えている。この液晶表示部上にタッチパネル式のポインタ入力装置を構成しても良い。
各駒乱丁検査部20−1〜nに表示手段が設けられていない場合には、各駒乱丁検査部20−1〜nにおける各種情報の表示機能も備えている。
【0024】
また、この表示手段30cは、パノラマ画像表示手段30c−1、基準画像表示手段30c−2、表示モード切替手段30c−3、および表示変更手段30c−4を有している。
パノラマ画像表示手段30c−1はパノラマ画像作成手段30fによって作成されたパノラマ画像を表示するものである。
【0025】
基準画像表示手段30c−2は、基準画像設定手段30gによって設定された基準画像および基準画像位置を表示するものであり、基準画像が設定された撮像画像(4a〜4dのいずれか)上に基準画像43の位置(および検査画像領域42)を表示する検査画像モードと、パノラマ画像41上に基準画像43の位置(および検査画像領域42)を表示するパノラマ画像モードという、2つのモード表示手段を有している。
表示モード切替手段30c−3は、これら2つのモード表示手段を切り替える手段である。
【0026】
表示変更手段30c−4は、乱丁判定手段22dによって乱丁(エラー)が検出された場合に、基準画像43の位置表示を、当該基準画像43に基づく乱丁検査によって乱丁が検出されたことが判別可能な表示(例えば、基準画像43位置を示す境界線を点滅表示にしたり、あるいは該境界線の色彩を変更したり、する。)に変更するとともに、検査画像モード表示をパノラマ画像モード表示に切り替えるものである。
したがって、乱丁が検出された際には、表示モード切替手段30c−3によってパノラマ画像モード表示に切り替えられ、該パノラマ画像41上に、乱丁発生した情報が基準画像位置情報とともに表示されることとなる。
【0027】
入力操作手段30dは、メイン制御手段30aに対し各種情報を入力するスイッチ手段である。液晶表示部上に構成されるポインタ入力装置に換えて、この入力操作手段30dにおけるマウスやキーボードによる入力手段を用いることもできる。
また、メイン制御手段30aからネットワークを通じて、各丁合駒10-1〜nへ各種操作情報(例えば、各駒乱丁検査部20−1〜nにおいて、乱丁の連続発生を許容する回数の設定、あるいは検査画像と基準画像との許容する一致率の設定等。)を入力する手段ともなっている。もちろん、各駒乱丁検査部20−1〜nに入力手段を設けて、直接入力することもできる。
【0028】
撮像画像処理手段30eは、正規の折丁5の印刷面を分割して撮像した撮像画像4(4a〜4d)を、パノラマ画像作成手段30fによってパノラマ画像41として作成し、記憶する手段である。このパノラマ画像作成手段30fについては、後に詳述する。
この作成されたパノラマ画像41は、パノラマ画像表示手段30c−1によって前記液晶表示部に表示される。
【0029】
基準画像設定手段30gは、作成されたパノラマ画像41から、当該折丁の特徴部分を切り取って基準画像43として作成し、その基準画像情報を基準画像位置情報と共に基準画像記憶手段30hに予め記憶させるものである。
この基準画像情報および基準画像位置情報は、乱丁判定手段22dによる乱丁検査の際に、基準画像記憶手段30hから呼び出されて検査画像情報と対比され、乱丁の発生が検査される。
またこの基準画像位置情報は、検査画像モード表示における撮像画像4、あるいはパノラマ画像モード表示におけるパノラマ画像41上に基準画像43の位置を表示するために用いられる。
また、基準画像43の位置が設定されると、検査領域設定手段30iにより、その基準画像位置を含む所定領域が検査画像領域42として設定される。
【0030】
エラー集計・分析手段30jは、各駒乱丁検査部20-1〜nからの検査情報を記憶、集計し、丁合毎10−1〜n毎の検査エラーの傾向や原因等を分析するものである。
例えば、検査領域設定手段30iにより設定した検査画像領域42の設定履歴を記憶する手段を設け、パノラマ画像41上の検査画像の位置を記憶させておき、製本出荷後に見つける乱丁を、その履歴を追跡させて原因追究できるように構成することができる。
これにより、適切な基準画像を設定したにもかかわらず、不良が生じて正規製本として出版されたときは、その丁合駒における撮像画像処理手段(パノラマ画像記憶手段)から基準画像の撮像領域を履歴追跡することができるので、不良に対する的確な措置をすることが容易となる。
【0031】
次に、パノラマ画像41の作成について、説明する。
パノラマ画像41は、前記したように、撮像領域が連続する複数個(n個)のパノラマ画像要素41a〜41nからなる画像であって、折丁5の広い領域をパノラマ状(短冊状)に連続してカバーすることができる画像をいう。
4枚の撮像画像4からパノラマ画像41を作成する実施例を、図6を用いて説明する。
図6左図に示すように、折丁5に対し4つの撮像画像4(4a〜4d)を、折丁5の引き出し方向に沿うように、かつ隣接する撮像画像間で重合部4eが生ずるように、分割撮像し、取得する。重合部4eを設けるのは、カメラによる撮像画像4は一般的に画像端部で焦点が甘くなり、画像が不鮮明になることがあるので、鮮明な中央部分のみをパノラマ画像として使用するためと、パノラマ画像を帯状に連続した画像として形成することを担保するためである。
パノラマ画像作成手段30fは、この4つの撮像画像4a〜4dから隣接する撮像画像の重合部4eを電子的に画像処理して取り除いて、それぞれパノラマ画像要素41a〜41dを作成し、図6右図に示すように、これらパノラマ画像要素41a〜41dを連続した帯状の連続画像(パノラマ画像)41として合成するものであり、これにより、折丁5の搬送方向に沿った短冊状のパノラマ画像41が形成される。
そして、作成されたパノラマ画像41は、パノラマ画像41上の隣接するパノラマ画像要素の区画線44の位置情報とともに、撮像画像処理手段30eに記憶される。また、このパノラマ画像41は、パノラマ画像表示手段39c−1によって表示されるが、その際、この区画線44を表示することもできる。
なお、図6右図に示すパノラマ画像41は概念的なものであり、撮像画像4の大きさや、合成前の撮像画像数によって、折丁5上における実際の大きさ(長さや幅)は異なる。
【0032】
次に、折丁5から、4つの撮像画像(撮像画像1〜4)を得、その4つの撮像画像からパノラマ画像41を得るタイミング処理について、図7を用いて説明する。
この実施例では、折丁5毎のタイミングパルス数が200に設定されている。
先ず、表示モード切替手段30c−3を操作してパノラマ画像モード表示に切り替える。
次に、スタータ15を起動すると、スタート信号15aが出力して所定位置からエンコーダ18がスタートする。スタート信号15aを基点に10パルス以内に折丁1が引き出される。
スタート信号15a出力から10パルス時点で撮像1が行われ、撮像領域1の画像が取得される(11〜50パルス)。
次に、撮像1から40パルス時点で撮像2が行われ、撮像領域2の撮像画像が取得される(51〜90パルス)。
次に、撮像2から40パルス時点で撮像3が行われ、撮像領域3の撮像画像が取得される(91〜130パルス)。
次に、撮像3から40パルス時点で撮像4が行われ、撮像領域4の撮像画像が取得される(131〜170パルス)。
次に30パルス以内で重合部4eの整理などの画像処理が行われ(171〜200パルス)、作成されたパノラマ画像要素は、パノラマ画像作成手段30fによって合成されてパノラマ画像が作成され、撮像画像処理手段30eに記憶される。
以上で、1サイクルのパノラマ画像41の作成が終了する。次に引き出される折丁5に対しても同様の処理が行われ、以降、n枚の折丁5に対して同様なパノラマ画像41の作成処理が行われる。
【0033】
なお、撮像装置部21bとして通常のCCDカメラを用いて複数の撮像画像を取得するには、折丁5の引き出し速度(あるいは、CCDカメラが搬送経路上にある場合には、折丁の搬送速度)、CCDカメラの画像処理速度などの撮像性能、CCDカメラの折丁5からの距離、などの条件によっては、1枚の折丁から得られる撮像枚数に制限がある場合が生ずる。
例えば、引き出し速度が撮像性能に比べて非常に早い場合には、1枚の折丁に対し1枚の撮像画像しか撮像できない場合がある。そのような場合は、連続する撮像画像を得るために、折丁を2枚目、3枚目、4枚目と引き出し、撮像場所をそれぞれの折丁で連続的に変えながら撮像する。そして、その別々の折丁を撮像した4枚の撮像画像を用いて、上記したと同様の処理により、パノラマ画像を合成する。
一方、撮像手段による撮像可能な領域が小さな場合には、1枚の折丁に対する撮像回数を増やして多数の撮像画像を得た上で、それらを上記と同様な処理によって合成することにより、画質の良いパノラマ画像41を得ることができる。
【0034】
次に、基準画像43および検査画像領域42の設定(登録)について説明する。
図6右図に示すように、基準画像43は、作成されたパノラマ画像41の中からオペレーターが選択した画像位置に基準画像設定手段30gによって設定される。
パノラマ画像41を構成するパノラマ画像要素41a〜41dのうちのどの画像領域から選択するかは、機器のオペレーターが、パノラマ画像41全体を観察した上で、パノラマ画像上の該当位置をスクロールしたり、拡大表示したりしながら、当該折丁の他の折丁(特に、隣接する折丁)に無い特徴部を把握し、その特徴部に基準画像位置を設定することで、行うことができる。
パノラマ画像を表示する液晶表示部はタッチパネル式のポインタ入力装置としても構成されており、オペレーターが特徴部となる所定位置を該ポインタ入力装置で入力すると、基準画像設定手段30gは、その入力された座標位置pを基点とした所定範囲を基準画像43として設定する。この設定された基準画像43は、その位置情報とともに基準画像記憶手段30hに予め記憶され、乱丁検査時等、必要に応じて読み出されて使用される。
図6右図によれば、オペレーターは、パノラマ画像41の内のパノラマ画像要素41a内に特徴部分を見いだして座標位置pを選定しており、この座標位置pに基づいて基準画像43が設定される。この際、区画線44が表示されていると、隣接するパノラマ画像要素41bに跨らないように基準画像が設定できるので、基準画像43の設定が容易となるし、そのための画像処理も簡単となる。
このように基準画像43の領域が設定されると、検査領域設定手段30iによって、該基準画像43に所定の隣接領域aを含むように検査画像領域42が設定される。
【0035】
つぎに、このようなパノラマ画像41の作成、およびパノラマ画像41からの基準画像43および検査画像領域42の設定(登録)処理を、図4に記載のフロー図を用いて説明する。
先ず、オペレーターが検査画像モードからパノラマ画像モードに切り替える。ここで、折丁5の用紙サイズと撮像枚数を入力操作手段30dにより設定すると、機器に予め設定されている折丁引き出し速度および撮像手段21の撮像能力(撮像範囲と画像処理能力)に基づいて、撮像画像処理手段30eによりパノラマ画像を合成するための撮像回数Nが設定される。この設定された撮像回数Nは、相当する駒制御手段22fに送信される(S1)。
【0036】
次に、スタータ15の起動により、折丁5の引き出しが開始される(S2)。
撮像手段21は、引き出されて移動する折丁5を、撮像回数連写することにより、撮像位置を連続的に変化させたN枚の撮像画像4(4a〜4n)を得る(S3)。
この撮像画像4は、各駒乱丁検査部20の撮像画像記憶手段22bに記憶される(S4)。
ここで、このように撮像した回数が、設定された撮像回数に達しているか否かが駒制御手段22fにより判断され(S5)、設定回数に達していない場合には(S5 N)、次の折丁が引き出されて、前の折丁の撮像位置に引き続く所定箇所が撮像される。このような作業が繰り返されて、1枚の折丁5の所定範囲が、N個の連続する撮像画像4(4a〜4n)として撮像され記憶される。
撮像回数が設定回数に達したら、駒制御手段22fは、撮像画像記憶手段22bに記憶している撮像画像を撮像画像処理手段30eに送信する。
撮像画像処理手段30eは、それらN個の撮像画像(4a〜4n)の重合部4eをパノラマ画像作成手段30fにより整理し、画像領域が連続する複数のパノラマ画像要素(41a〜41n)からなるパノラマ画像41を作成し、記憶する(S6)。
このように作成されたパノラマ画像41は、パノラマ画像表示手段30c−1により、区画線44とともに液晶表示部上に表示される(S7)。
【0037】
パノラマ画像41を構成するパノラマ画像要素41a〜41nのうちのどの画像領域から基準画像43を選択するかは、機器のオペレーターが、パノラマ画像41全体を観察した上で、当該折丁の他の折丁にない特徴部を見いだし、その特徴部位をポインタ入力装置で入力すると、基準画像設定手段30gは、そのポインタ入力位置を基点に所定範囲を基準画像として設定する(S8)。
このように設定された基準画像43の画像情報および画像位置は、基準画像記憶手段30hに記憶され、必要に応じて読み出される(S9)。
さらに、このように設定された基準画像43の領域に基づいて、検査領域設定手段30iにより検査画像領域42が設定され、記憶される(S10)。
【0038】
次に、以上の構成に基づいて乱丁検査が行われる手順を、図5に示すフロー図および図6を用いて説明する。
スタータ15が起動されると、丁合装置10の丁合作業がスタートする。
基準画像43および検査画像領域42は、先ず、図6右図に示すように、撮像画像4aから作成されたパノラマ画像要素41a内に設定されているものとする。
乱丁検査が開始されると(S1)、乱丁判定手段22dは、引き出された折丁5の撮像画像4aにおける検査画像領域42内の画像情報と、予め基準画像記憶手段30hに記憶されている基準画像43の画像情報とを比較し(S2)、その一致率を求め、求めた一致率が、乱丁として判定される所定値以下の数値である場合、乱丁が発生したものとして判定し(S3)、乱丁発生情報(エラー情報)を出力する(S4)。
乱丁発生情報が出力されると、表示変更手段30c−4によって、モニター上の表示が検査画像モード表示からパノラマ画像モード表示に切り替えられ(S5)、パノラマ画像41が表示される(S6)。
このパノラマ画像41上には、基準画像43の位置、あるいは検査画像領域42の位置が表示され(7)、オペレーターは、その基準画像43位置にある撮像画像を見て、エラー発生の原因が基準画像43の設定(つまり、検査画像領域42の設定)によるものであるのかどうかを判断する(S8)。
【0039】
エラー発生原因が基準画像43の設定でないと判断される場合は、エラー解除処理を行う(S9)。
一方、基準画像43の設定がエラー検出の要因であると判断された場合には、パノラマ画像41の全体を観察しつつ、その画像領域内の画像をスクロール、ピンチイン、ピンチアウトして画質、内容を確認しながら移動し、該折丁に特徴的な画像領域を新たに選択し、基準画像43の設定変更を行う。図6右図に示す例では、パノラマ画像41の全体を観察しつつ、新たな特徴的な画像領域を、当初のp位置とは異なるp’位置に見いだし、そこに新たな基準画像43aを設定する。この際、区画線44が表示されていると、p’位置に隣接するパノラマ画像要素41bおよび41dに跨らないように基準画像が設定できるので、基準画像の設定が容易となる。この設定変更作業により、検査画像領域も検査画像領域42aに変更される(S10)。
このように設定変更された基準画像は、その画像位置情報とともに、基準画像設定手段30gに上書きされる(S11)。
以降の乱丁検査は、この新たに設定された基準画像43aおよび検査画像領域42aを用いて行われる。
【0040】
以上のように構成されることで、次のような作用効果を奏する。
(1)折丁5全体をカバーできるようなパノラマ画像41(連続画像)を作成し、折丁の広い領域をカバーする該パノラマ画像41上において基準画像の設定をすることができるので、他の丁合駒における折丁と類似する基準画像を避けたり、あるいは適切な明度(平均濃度)やコントラストを有する基準画像を選択したりするなど、基準画像の設定の自由度を格段に向上することが可能である。
これにより、検査精度の高い基準画像が設定でき、設定のまずさ、例えば基準画像に類似する検査画像が他の折丁(特に、隣接する折丁)に存在することでそれとの混同が生じる虞が生じたり、あるいは基準画像の明度(平均濃度)やコントラストが適切な範囲でないことによって検査画像との対比判定精度が低下したりすることから生じる検査エラーを、極力避けることができる。
【0041】
(2)乱丁検査装置20において、丁合装置10にエラーが検出したときは、表示変更手段30c−4によって液晶表示部(モニタ−)にパノラマ画像が表示されるので、表示されたパノラマ画像を拡張したりスクロールしたりしながら、その基準画像が全検査領域のどこにあるかを容易に見出すことができる。よってエラー時の措置に対する作業性が極めて優れている。
【0042】
(3)基準画像の位置や区画線がパノラマ画像上に表示されるので、検査エラー原因が設定登録された基準画像にあると判明したきは、基準画像を別の適切な検査領域に移動することが容易であり、また隣接するパノラマ画像要素に跨って設定することが回避されるなど、基準画像の再設定が容易である。
【0043】
(4) 適切な基準画像を設定したにもかかわらず、不良が生じて正規製本として出版されたときは、その丁合駒における撮像画像処理手段(パノラマ画像記憶手段)から基準画像の撮像領域を履歴追跡することができるので、丁合装置の丁合不良等に対する的確な措置をすることができる。
【0044】
(5)汎用性のある、通常のカメラ装置を使用できるので、安いコストで実施可能である。
【0045】
なお、本発明は上述した実施形態例に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された発明の技術思想の範囲で様々な変形が可能である。変形例としては、例えば以下のものがある。
(1)上述した実施形態では、液晶表示部(モニター)上に1個のパノラマ画像しか表示していないが、これに限ることなく、隣接する折丁のパノラマ画像を同一モニター上に並列して表示するように構成することもできる。
このように表示すると、隣接する駒間での特徴部の抽出がより容易となり、より的確な基準画像の設定が行える。
【0046】
(2)上記の実施形態例では、折丁引き出し速度(折丁搬送速度)を固定としてあるが、これに限ることなく、例えば、送り速度を調節可能なラジオツマミを用いて変更可能としたり、あるいは折丁サイズを切替スイッチによって変更可能としたりすることにより、これら変更情報に基づいて、撮像枚数Nを設定するように構成することもできる。
このように構成すると、より汎用性のある乱丁検査装置とすることができる。
【0047】
(3)上記の実施形態例では、駒乱丁検査部20―1〜20−nおよびコントローラ30に所定の機能を分散して設けているが、コントローラ30に最大限の機能を集中させ、駒乱丁検査部20―1〜20−nは撮像装置部21b等、最小限の機能だけとして構成することもできる。反対に、撮像画像処理手段30eや基準画像設定手段30g等を駒乱丁検査部20―1〜20−n側に設けるように構成することもできる。これにより、オペレーターの操作性を向上させた乱丁検査装置20を提供することができる。
【0048】
(4)上記の実施形態例では、エラー出力により、検査画像モードからパノラマ画像モードに切り替える表示変更手段30c−4が機能するように構成したが、該表示変更手段30c−4を設けることなく、オペレーターが必要に応じて表示モード切替手段30c−3を操作することにより、パノラマ画像モードに変更するように構成することもできる。
【0049】
(5)上記の実施の形態例では、乱丁発生情報を検出することによりエラー処理をするように構成されているが、乱丁発生情報が所定回数連続して検出することでエラー出力されるように構成することができる。このように構成することにより、乱丁検知の要因が、真に乱丁発生によるものか、あるいは乱丁発生ではなく基準画像43の設定のまずさによるものかを、ある程度、区別することができる。
【0050】
(6)また、モニター上に表示される検査画像領域42(又は基準画像43位置)を囲線で囲い、またはポイントなどで印を付けたり、点滅させることによって検査画像領域42(または基準画像43)を容易に確認するように構成することができる。このように構成することにより、検査画像領域42(または基準画像43)の位置が一目瞭然となり、作業効率が向上する。広いパノラマ画像上では特に有効である。
【符号の説明】
【0051】
4 撮像画像
5 折丁
10 丁合装置
10−1〜n 丁合駒
14 ドラム
15 スタータ
18 エンコーダ
20 乱丁検査装置
20―1〜n 駒乱丁検査部
21 撮像手段
22 検査側制御部
30 コントローラ
30a メイン制御手段
30c 表示手段
30d 入力操作手段
41 パノラマ画像(連続画像)
41a〜41n パノラマ画像要素
42、42a 検査画像領域
43、43a 基準画像
44 区画線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の丁合駒を有する丁合装置に設けられ、前記丁合駒から1枚ずつ取り出された折丁の印刷面の一部を検査画像として撮像し、該検査画像と予め記憶された基準画像とを比較して乱丁を検査する乱丁検査装置であって、
前記折丁の印刷面を分割して撮像して複数の撮像画像を取得する撮像手段と、前記複数の撮像画像から画像領域が連続するパノラマ画像を作成するパノラマ画像作成手段と、前記パノラマ画像を表示するパノラマ画像表示手段と、正規の折丁の前記パノラマ画像の一部を前記基準画像として設定する基準画像設定手段と、前記基準画像の前記パノラマ画像における画像位置を表示する基準画像表示手段と、前記設定した基準画像を画像位置と共に予め記憶する基準画像記憶手段と、前記撮像手段で取得された前記検査画像と前記基準画像記憶手段に予め記憶された基準画像とを対比して乱丁を判定する乱丁判定手段と、を有することを特徴とする乱丁検査装置。
【請求項2】
請求項1において、前記基準画像表示手段は、前記基準画像が設定された前記撮像画像のみを前記基準画像位置とともに表示する検査画像モード表示手段と、前記パノラマ画像を前記基準画像位置とともに表示するパノラマ画像モード表示手段とを有するとともに、それらモード表示を切り替える表示モード切り替え手段を有することを特徴とする乱丁検査装置。
【請求項3】
請求項2において、基準画像表示手段は、前記乱丁判定手段によって乱丁が検出された場合に、前記設定された基準画像の位置表示を、当該基準画像によって乱丁が検出されたことが判別可能な表示に変更する表示変更手段を有し、前記表示変更手段によって前記基準画像の位置表示が、乱丁が検出された表示に変更された場合に、前記検査画像モード表示を前記パノラマ画像モード表示に切り替えることを特徴とする乱丁検査装置。
【請求項4】
請求項1〜3において、前記パノラマ画像作成手段は、前記複数の撮像画像から重複する画像領域を取り除いたパノラマ画像要素をそれぞれ作成してそれらを合成し、前記パノラマ画像表示手段は、前記パノラマ画像を表示する際に、隣接する前記パノラマ画像要素を区画する区画線を表示することを特徴とする乱丁検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−56479(P2013−56479A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196260(P2011−196260)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(591142507)株式会社北電子 (348)