説明

乱用薬物の結合

乱用薬物(例えばコカイン)および関連物質を、式AもしくはB((A):R12C(CF3)−CO2H;(B):R3=C(CF3)−CO2H)のカルボン酸、またはそれらの誘導体に由来するユニットを含む吸着剤によって選択的に結合する。吸着剤は、ポリマー、またはカルボン酸、誘導体もしくはポリマーがグラフト化されている固体支持体でもよい。好ましい酸は、2−トリフルオロメチルアクリル酸である。薬物を、混合物から選択的に結合し、有機酸を含む溶出液を使用して回収することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
概して、本発明は、乱用薬物および関連化合物を結合する能力のある材料、ならびに分析化学、環境、臨床、法医学、防衛、治安、および食品分析におけるそれらの応用について記述している。この好ましい結合性材料は、コカイン等の乱用薬物への高い親和性を有していて、これらの化合物の精製、様々な試料からの抽出および濃縮、測定、可視化のために、ならびに治療上の応用のために使用できる。
【0002】
規制医薬品の使用は、過去30年の間に劇的に増加してきた。このことが、様々な生理的試料または食品試料中のこれらの化合物を検出することのできる分析器具の進歩を促してきた。薬物検出に最も多用される現代技法は、固相抽出(SPE)または液液抽出(LLE)と、その後のGC−MSを使用する測定である。試料調製を促進し、分析の費用対効果を向上させ、検査のスピードを速める材料を開発する喫緊の必要性がある。本発明の主な目的は、個別の乱用薬物もしくは一連の乱用薬物、または非合法薬物、あるいはそれらの代謝物に対して高い親和性を有すると思われ、かつ高圧液相クロマトグラフィー(HPLC)(場合によっては質量分析法(MS)と組み合わせて)、ガスクロマトグラフィーを含むクロマトグラフィー、および酵素結合免疫吸着分析法(ELISA)、分光法または検知器等の測定法を使用して、これらの化合物の抽出、精製、予備濃縮、分離、または検出のために使用し得る、親和性基質を設計することであった。
【背景技術】
【0003】
参考文献
【0004】
【表1】

【0005】
他の参考文献
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【0006】
過去には、モルヒネおよびコカイン等の乱用薬物のための親和性材料として、実質的に誘導体化されていないスチレン−ジビニルベンゼン(SDVB)樹脂(米国特許第6,057,161号)、フェニルおよびプロピルスルホン酸官能基の両方を有するシリカ(米国特許第6,913,917号),抗体(米国特許第6,913,917号)、および分子インプリントポリマー(複数のMIP)(参照1〜9)を含む、幾つかの異なる材料が使用された。これら全ては、実際の試料からの標的化合物の非効率的もしくは非選択的回収、または抗体の場合のように、親和性基質の不十分な安定性に関連する幾つかの問題を有している。
【発明の開示】
【0007】
本発明は、乱用薬物の選択的結合におけるフッ素化カルボン酸を含有する材料の適用を記述している。
【0008】
乱用薬物および構造的な関連化合物(例えば、代謝物)を結合する能力のある材料が、分析化学、医薬、環境、臨床、法医学、防衛、治安、および食品分析におけるそれらの適用と共に開示されている。具体的には、乱用薬物を結合する能力のある材料は、例えば2−トリフルオロメチルアクリル酸等のトリフルオロメチルカルボン酸の誘導体から作製される。これらの誘導体(通常ポリマー性)から合成される吸着剤は、乱用薬物に対して高い親和性を有し、これらの化合物の抽出、濃縮、および精製のために使用することができる。合成された材料の親和性および選択性を、場合により分子インプリント法を使用することによって高めることもできる。
【0009】
第一の態様では、本発明は、混合物を、好ましくは選択的に乱用薬物を結合する吸着材と接触させることによって、乱用薬物(好ましくはコカインまたはその類似物)または構造的な関連化合物(例えば、代謝物)を、それを含有する混合物から分離する方法を提供する。この吸着材は、以下の式Aおよび/またはBの1種または複数のフルオロカルボン酸、またはそれらの誘導体由来のユニットを含み、
【0010】
【化1】

【0011】
式中、R1は、水素、場合により置換されたアルキルまたはシクロアルキル、場合により置換されたアリールまたはヘテロアリール、場合により置換されたアミン、−OR、または−SRから選択され、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであって場合によっては置換されていて、
2は、場合により置換されたアルキルまたはシクロアルキル、場合により置換されたアリールまたはヘテロアリール、場合により置換されたアミン、OR、またはSRから選択され、式中、Rは、上記に規定された通りか、または二重もしくは三重の炭素−炭素結合を含有する基であり、
3は、場合により置換されたアルキレンまたはシクロアルキレン、酸素、または硫黄から選択される。
【0012】
アルキルおよびアルキレン基は、一般に1〜6個のC原子を有する。アリールおよびヘテロアリールは、一般に最大12個までのC原子を有する。「場合により置換された」とは、1個または複数のH原子が、ハロゲン、OR、SR、NR2、−CO−R、アリール、またはヘテロアリールから適切に選択された置換基によって置き換えられる可能性を指すもので、式中、Rは、上記に規定した通りである。
【0013】
もしカルボン酸が炭素−炭素多重結合を含有しないならば、ビニルまたはアリルアルコールのエステルを例とする、多重結合を含有する誘導体の使用が、一般的になされよう。
【0014】
この吸着材は、ポリマー、特に、薬物(例えばコカイン)またはその構造類似物(例えばベンゾイルエクゴニン)の存在下で(A)もしくは(B)またはそれらの誘導体の重合によって調製された分子インプリントポリマー(「MIP」)であってよい。別の態様では、本発明は、このようなMIP(複数)を提供する。
【0015】
標的化合物が分離されるこの混合物は、普通は水性であり、従来のMIP(複数)では問題をはらみかねない。
【0016】
従って、様々な態様で、本発明は以下のことを提供する:
(1)重合による、フッ素化カルボン酸の重合性誘導体からの吸着剤の合成。
(2)フッ素化カルボン酸の重合性誘導体を使用した、乱用薬物の存在下での分子インプリントポリマーの合成。
(3)フッ素化カルボン酸の、ビーズまたは膜の表面へのグラフト化。
(4)乱用薬物もしくは関連化合物の抽出、濃縮、除去、または精製への合成吸着材の適用、またはそれらの検出。
【0017】
好ましい標的化合物は、通常は、アミン官能基の存在の故にカチオン性の特徴を有している。特に好ましい標的化合物には、ヘロイン、モルヒネ、6−アセチルモルヒネ、モルヒネ−3−グルクロニド、コデイン、コカイン、ベンゾイルエクゴニン、エクゴニンメチルエステル、アンフェタミン、メタンフェタミン、およびリゼルギン酸ジエチルアミドが含まれる。
発明を実施するための形態
第一の実施形態は、フッ素化カルボン酸の重合性誘導体からの吸着剤の合成を記述している。普通は、重合性二重結合を含有するフッ素化カルボン酸モノマー、またはモノマーの混合物を、架橋剤およびラジカル開始剤と一緒に、通常は溶媒と共に混合する。ポリマーの調製のために使用されるこの架橋剤は、通常は、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニル、アリル、またはスチレン誘導体から選択され、好例にはエチレングリコールジメタクリル酸エステル、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、およびそれらの混合物が含まれる。このモノマー(複数も)および架橋剤は、一般に、重合混合物中に約10〜80体積%の量で、より好ましくは約40〜80体積%の量で存在する。モノマー(複数も)は、モノマーおよび架橋剤の混合物の5〜20体積%を構成することができる。溶媒を、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エステル、アルコール、ケトン、エーテル、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ジメチルスルフィド、ホルムアミド、シクロヘキサノール、H2O、グリセロール、塩の水溶液(例えば酢酸ナトリウム)、可溶性ポリマーの溶液、およびそれらの混合物から選択することができる。好例には、トルエンおよびクロロホルムが含まれる。孔形成成分を、モノマー混合物中に存在させてもよく、5〜60体積%の量が適切である。従来のラジカル発生重合開始剤を、重合を開始させるために用いることができる。適切な開始剤の例には、OO−t−アミル−O−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート、ジプロピルペルオキシジカーボネート、およびベンゾイルペルオキシドなどの過酸化物、ならびにアゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(イソブチルアミド)二水和物、および1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物が含まれる。この開始剤は、一般に重合混合物中にモノマー重量の約0.2〜5%の量で存在する。ラジカル重合、リビング重合、イオン重合、懸濁もしくは乳化重合、または当業者には既知である他の任意の方式を含め、幾つかの異なった重合方式を使用することができる。好ましい種類の重合は、ラジカル重合である。重合は、UV照射または熱によって開始することができる。吸着材調製のために使用することができるモノマーには、フッ素化カルボン酸の誘導体が含まれ、ビニルモノマー、アリルモノマー、アセチレン、アクリル酸エステル、またはメタクリル酸エステルが好ましい。当業者であれば、具体的なシステムに適したモノマーおよび架橋剤を選択し得る。
【0018】
第二の実施形態は、フッ素化カルボン酸の重合性誘導体を使用する、乱用薬物(または類似物もしくは関連化合物)の存在下での分子インプリントポリマーの合成を記述している。原理上は、重合されたフッ素化カルボン酸は、既に様々な実際の適用に十分な親和性を有している。しかし、仮に重合されたフッ素化カルボン酸が、意図する適用のために十分な親和性または選択性を有していないとしても、それらの性能を、分子インプリント法を通して向上させることができる。本発明は、鋳型物質の構造と相補的なパターンでモノマー分子が自己集合するための該鋳型物質として機能する対応する薬物もしくは関連化合物、またはその化学的誘導体の存在下でのポリマーの形成も教示している。重合の後で鋳型物質を抽出することによって、ポリマーの構造中に、鋳型物質分子またはその類似物の選択的再結合を可能にする結合部位を備えた跡(imprint)が残るであろう。分子インプリントに使用されるモノマー混合物には、通常は適当な溶媒中に混合した、架橋剤、フッ素化カルボン酸の重合性誘導体、場合によりポリマーの形態または結合特性を調節する能力のある他のモノマー(複数も)、開始剤、および鋳型薬物が含まれるのが普通である。この乱用薬物およびそれらの代謝物は、テトラヒドロカンナビノール、ヘロイン、モルヒネ、6−アセチルモルヒネ、モルヒネ−3−グルクロニド、コデイン、コカイン、ベンゾイルエクゴニン、エクゴニンメチルエステル、アンフェタミン、メタンフェタミン、リゼルギン酸ジエチルアミド、フェンサイクリジン、(ブタバルビタール、ペントバルビタール、セコバルビタール、フェノバルビタール、アルフェナール、およびアモバルビタール等の)バルビツール酸系薬、(オキサゼパムおよびクロルジアゼポキシド等の)ベンゾジアゼピン系薬、(ドキセピン、イミプラミン、およびアミトリプチリン、または対応する他の代謝物等の)三環系抗欝薬から選択され得るが、これらに限定されない。ポリマーの調製のために使用されるこの架橋剤は、通常は、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニル、アリル、またはスチレン誘導体から選択され、エチレングリコールジメタクリル酸エステル、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、およびそれらの混合物の非限定的例がある。架橋剤を含むこのモノマーは、一般に、重合混合物中に約10〜80体積%の量で、より好ましくは約40〜80体積%の量で存在する。モノマー(複数も)は、モノマーおよび架橋剤の混合物の5〜20体積%を構成してもよい。溶媒を、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エステル、アルコール、ケトン、エーテル、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ジメチルスルフィド、ホルムアミド、シクロヘキサノール、H2O、グリセロール、塩の水溶液(例えば酢酸ナトリウム)、可溶性ポリマーの溶液、およびそれらの混合物を含む群から選択することができる。好ましい溶媒には、トルエンおよびクロロホルムが含まれる。孔形成成分は、5〜60体積%の量でモノマー混合物中に存在する。従来のラジカル発生重合開始剤を、重合を開始させるために用いることができる。適切な開始剤の例には、OO−t−アミル−O−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート、ジプロピルペルオキシジカーボネート、およびベンゾイルペルオキシド等の過酸化物、ならびにアゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(イソブチルアミド)二水和物、および1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物が含まれる。この開始剤は、一般に重合混合物中にモノマー重量の約0.2〜5%の量で存在する。重合は、UV照射または熱によって開始することができる。重合を、当業者ならば既知であるバルク重合、懸濁および乳化重合、沈殿重合、リビング重合等の様々な方法によって行うことができよう。
【0019】
第三の実施形態は、インプリント化または非インプリント化材料であってよいフッ素化カルボン酸系ポリマーを、ビーズまたは膜の表面へグラフト化することについて記述している。フッ素化カルボン酸またはそれらのポリマーを、前もって形成されたビーズ、膜、毛細管、または繊維等の調製済物品の表面にグラフト化すれば望ましいことと思われる。グラフト化は、当業者には既知の様々な方法で達成することができる。こうして対応する無機またはポリマー材料の表面を、フッ素化カルボン酸の対応する誘導体の共有結合を可能にする官能基で活性化することができる。これに使用される化学反応の代表例は、シッフ塩基の形成、ジスルフィド結合、S−金属結合、エステル形成などとなろう。別のタイプのグラフト化には、ビーズまたは膜の表面上に化学的にまたは物理的に固定されたラジカル開始剤を備えるラジカルグラフト化が含まれよう。プラズマグラフト化も親和性吸着材の製造に使用することができる。
【0020】
第四の実施形態は、合成吸着剤の適用、(乱用薬物、それらの類似物および代謝物の)精製、ならびに様々な試料からのそれらの抽出および濃縮、またはそれらの検出について記述している。この適用の代表例は、生物または食品の試料からの乱用薬物の固相抽出であろう。これらの吸着剤を、高圧液相クロマトグラフィー(HPLC)および質量分析法(MS)と組合わせたHPLCを含むクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、および酵素結合免疫吸着分析法(ELISA)、または検出器等の定量化法と組合わせて使用することができる。これらの吸着剤は、検知装置、マイクロ流体ユニット、または検出キットの必須の部分でもあり得る。これら全ての提案された適用は、本発明によって網羅されている。
【0021】
ここで、本発明を、次の非限定的な実施例の参照で更に具体的に記述しよう。
【0022】
(実施例1) 架橋2−トリフルオロメチルアクリル酸(TFMAA)の合成
2−トリフルオロメチルアクリル酸(TFMAA)1g、架橋剤であるエチレングリコールジメタクリル酸エステル(EGDMA)4g、開始剤(1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル))0.1g、および溶媒ジメチルホルムアミド(DMF)5gを混合することによって、ポリマーを合成する。このポリマーに、Honleの100UVランプ(強度0.157W/cm2)を使用して20分間UVを照射し、1日の間80℃を保持した。合成後は、ポリマーを粉砕し、メタノールで湿潤篩別して63〜106μmの粒子を得た。
【0023】
(実施例2) コカイン、デオキシエフェドリン、メタドン、およびモルヒネのための分子インプリントポリマーの合成
このポリマーの組成を、表1に示す。全ての鋳型物質分子との良好な相互作用、およびそれに続く最大限の結合部位数の形成を確保するために、鋳型物質に比して過剰な機能性モノマー(〜4倍)を使用した。鋳型物質を欠く以外は同じ組成を使用するブランクポリマーを調製した。これらのポリマーは、Honleの100UVランプを20分間使用して重合され、次に80℃の油浴中で1日の間保温された。ポリマーを粉砕し、メタノールを使用して篩別した。45μmと106μmとの間の分画を集め、Slurry Packer1666型(Alltech製、UK)を使用してステンレス鋼製HPLCカラム(50×4.6mm)に詰めた。
【0024】
【表2】

【0025】
(実施例3) クロマトグラフ条件におけるポリマー性能の試験
実施例2で調製されたHPLCカラムを、水性条件下で薬物に結合するポリマーの分析のために使用した。ConstaMetric−3200溶媒送達システム(LDC Analytical、UK)、PerkinElmer ISS−100自動注入システム、およびWaters Lambda−Max 481型LC検出器(UK)を含むHPLCシステムを使用して、評価実験を実行した。この実施例および次の実施例におけるHPLC分析は、1.0mL・min-1の流速で実施され、260nmのUV検出器によって観測された。注入量は、20μLの注入体積中に20μgであった。報告された全てのクロマトグラフィーのデータは、3〜5回の繰り返し実験の結果を示している。測定の標準偏差は、5%を下回っていた。全てのポリマーは、水を使用してカラムから吸着された化合物を溶出するのが困難であるほどの、水中での薬物への非常に高い親和性を明示していた。溶出を達成するために、溶出液を酢酸で酸性化した。試験の結果は、TFMAA系ポリマーの対応する薬物に対する相対的親和力を示している(表2)。保持比(K’)は、K’=(t−t0)/t0で決定され、tは、所与の化学種の保持時間であり、t0は、ボイドマーカー(アセトン)の保持時間である。ポリマーの親和性は、分子インプリント法によって更に向上し得ると結論付けることが可能である。
【0026】
【表3】

【0027】
(実施例4) ブランクポリマーおよびコカインでインプリントされたポリマーの選択性の試験
P1(コカインをインプリントした)およびC1(対応するブランク)ポリマーを含有するHPLCカラム(50×4.6mm)を上記のように調製した。このHPLCカラムを、機能的類似物(デオキシエフェドリン、セロトニン、およびドーパミン)および構造的類似物(ベンゾイルエクゴニン)を含有する混合物からコカインを分離するために使用した。結果を、図1に示す。コカインの他の類似物からのベースライン分離が達成されていることが見出された。結果は、P1ポリマーが、他の類似物と比べてコカインに対する優れた親和性を有していたことを示唆している。対応するブランクポリマーC1では、コカインの最も近似する類似物であるベンゾイルエクゴニンからのコカインのベースライン分離が実証されず、TFMAAポリマーの選択性が、分子インプリントによって向上し得ることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】機能性モノマーおよび対応するブランクポリマー(C1)として2−TFMAAを用いてトルエン中で調製された、コカイン(P1)でインプリントされたMIPを使用した、コカインおよび幾つかの構造的および機能的類似物のクロマトグラフ分離を図示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乱用薬物またはその代謝物もしくは類似物である標的化合物を、それを含有する混合物から、前記標的化合物に選択的に結合する吸着材料と前記混合物を接触させることによって分離する方法であって、前記吸着材料が、以下の式Aおよび/またはBの1種または複数のフルオロカルボン酸、またはそれらの誘導体由来のユニットを含み、
【化1】

式中、R1は、水素、場合により置換されたアルキルまたはシクロアルキル、場合により置換されたアリールまたはヘテロアリール、場合により置換されたアミン、−OR、または−SRから選択され、式中、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであって場合によっては置換されており、
2は、場合により置換されたアルキルまたはシクロアルキル、場合により置換されたアリールまたはヘテロアリール、場合により置換されたアミン、OR、またはSRから選択され、式中、Rは、上記に規定された通りか、または二重もしくは三重の炭素−炭素結合を含有する基であり、
3は、場合により置換されたアルキレンもしくはシクロアルキレン、酸素、または硫黄から選択される、
方法。
【請求項2】
前記吸着材料が、塩、エステル、チオエステル、アミド、およびニトリルから選択される、1種または複数のカルボン酸誘導体由来のユニットを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フルオロカルボン酸が、2−トリフルオロメチルアクリル酸である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記吸着材料が、重合で用いられる炭素−炭素多重結合を有するモノマーを重合させることによって調製されるポリマーを含み、前記モノマーが、式(A)もしくは(B)のフルオロカルボン酸、またはそれらの誘導体である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記重合は、架橋剤によって生じる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記架橋剤が、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニル誘導体、アリル誘導体、およびスチレン誘導体から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記架橋剤が、エチレングリコールジメタクリル酸エステル、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、およびジビニルエーテルのうちの1種または複数である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記重合ステップが、ラジカル重合を用いる請求項4乃至7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記重合ステップが、リビング重合、イオン重合、または懸濁もしくは乳化重合を用いる、請求項4乃至7のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記吸着材料が、式(A)もしくは(B)のカルボン酸、それらの誘導体、またはこのようなカルボン酸もしくはそれらの誘導体のポリマーを、固体支持体上に接合することによって調製される、請求項1乃至9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記固体支持体が、ビーズ、繊維、毛細管、または膜の形状である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記吸着材料が、標的化合物の存在下で、式(A)もしくは(B)の1種または複数の酸、またはそれらの誘導体を重合することによって調製される分子インプリントポリマーである、請求項1乃至11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記吸着材料が、孔形成成分の存在下で調製された多孔質ポリマーである、請求項1乃至12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記標的化合物が結合している前記吸着材料から前記標的化合物を溶出する、その次のステップを含む、請求項1乃至13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記ステップ(c)が、酸を含む溶出液を用いる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記溶出液が、有機酸を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記標的化合物が、カチオン性の特徴を有する、請求項1乃至16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記標的化合物が、アミン官能性を有する、請求項1乃至17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記標的化合物が、テトラヒドロカンナビノール、ヘロイン、モルヒネ、6−アセチルモルヒネ、モルヒネ−3−グルクロニド、コデイン、コカイン、ベンゾイルエクゴニン、エクゴニンメチルエステル、アンフェタミン、メタンフェタミン、リゼルギン酸ジエチルアミド、フェンサイクリジン、バルビツール酸系薬、ベンゾジアゼピン系薬、および三環系抗欝薬から選択される、請求項1乃至18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記標的化合物が、ヘロイン、モルヒネ、6−アセチルモルヒネ、モルヒネ−3−グルクロニド、コデイン、コカイン、ベンゾイルエクゴニン、エクゴニンメチルエステル、アンフェタミン、メタンフェタミン、およびリゼルギン酸ジエチルアミドから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記標的化合物を含有する前記混合物が、水溶液である、請求項1乃至20のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−530629(P2009−530629A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500912(P2009−500912)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【国際出願番号】PCT/GB2007/000945
【国際公開番号】WO2007/107720
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(504455403)クランフィールド ユニヴァーシティー (5)
【氏名又は名称原語表記】CRANFIELD UNIVERSITY
【Fターム(参考)】