説明

乳化剤組成物およびそれを用いた油中水型エマルシヨンの調製方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、乳化剤組成物と、この乳化剤組成物を用いた油中水型エマルシヨンの調製方法とに関するものである。
【0002】
【従来の技術】油中水型エマルシヨンは、従来より、さまざまな分野において、多くのすぐれた特性を有していることが知られていたにもかかわらず、一般には、そのほとんどの用途で水中油型エマルシヨンが用いられていた。
【0003】とくに化粧料の場合、油中水型エマルシヨンは皮膚に塗布することにより、角質層に油脂膜を形成するにもかかわらず、皮膚呼吸を妨げない、水や汗に対して流れ落ちにくい、などといつた多くのすぐれた特徴を有していることが知られているが、実際には、安定性が低いなどの問題から、現在の日本のスキンケア製品における油中水型エマルシヨン製品の割合は非常に低い。
【0004】一般に、化粧料や医薬品の場合、1〜2年という長期の保証期間があるため、製品処方中に高級アルコ―ルや各種の塩類、脂肪酸金属石鹸、低分子ポリエチレンなどのゲル化剤をはじめとする種々の添加剤を加え、粘度を上昇させることによつて、安定化を図る努力がなされているために、現在市販されている油中水型エマルシヨン製品は、そのほとんどが高粘度のクリ―ムである。
【0005】しかし、高粘度の油中水型クリ―ムは、粘度の問題に加え、連続相が油であるために、水中油型のクリ―ムと比較して、のびやべたつきといつた皮膚上での使用感が悪く、皮膚外用医薬品や化粧料としては大きな問題があつた。
【0006】このような問題に対して、これまでに多くの検討がなされてきている。たとえば、特公昭48−15798号公報では、オレイン酸モノグリセライドとソルビト―ルの70%水溶液を混合させて得られる乳化剤組成物を用いることにより、特公昭53−21393号公報では、種々のアミノ酸水溶液と親油性の非イオン系界面活性剤を混合させて得られる乳化剤組成物を用いることにより、特公昭60−26366号公報では、α−モノアルキルグリセリルエ―テルを乳化剤として用い、脂肪酸の金属塩や有機酸塩を併用することにより、それぞれ、安定な油中水型エマルシヨンが得られることが示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかるに、上記のいずれの方法も、比較的高粘度なエマルシヨンを調製することを主目的としたものであり、乳化安定性の面で必ずしも満足できるものではなかつた。中でも、粘度が常温で1,000センチポイズ以下の領域、とくに200センチポイズ以下という非常に低粘度な領域においては、安定性の高い油中水型エマルシヨンを調製することは困難であつた。
【0008】本発明は、従来安定性や使用感のために利用が制限されていた油中水型エマルシヨン製品に関し、それらの問題点を解決するものであり、その目的とするところは、特定の乳化剤組成物の使用により、単に使用感にすぐれるだけでなく、エマルシヨンの安定性を維持させにくい非常に低粘度な領域においても、高い安定性を維持しうる油中水型エマルシヨンを得ることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目的を達成するため、鋭意検討した結果、親油性である特定の非イオン系界面活性剤と、アミノ酸またはその塩および特定の糖アルコ―ルを含有する水溶液とを混合してなる乳化剤組成物を用いることにより、また、油分と特定の乳化剤を混合し、これに上記の乳化剤組成物を加えたのち、水を加えて乳化することにより、非常に低粘度な領域においても、高い安定性を示し、かつ皮膚上での使用感にすぐれた油中水型エマルシヨンを調製できることを見い出し、本発明を完成するに至つた。
【0010】すなわち、本発明の第1は、A)3個以上の水酸基を有する多価アルコ―ルと脂肪酸との部分エステルからなる常温で液状を呈する非イオン系界面活性剤と、B)アミノ酸またはその塩を1〜40重量%および分子内に少なくとも5個以上の水酸基を有する非還元性の糖アルコ―ルを1〜20重量%含有する水溶液とを、A成分の非イオン系界面活性剤:B成分の水溶液が重量比で1:1から1:20となるように混合したことを特徴とする乳化剤組成物に係るものである。
【0011】また、本発明の第2は、油分に、ヒドロキシ脂肪酸トリグリセライドのエチレンオキサイド20〜60モル付加物からなる乳化剤を加え、これにさらに上記第1の発明に係る乳化剤組成物を混合したのち、水を加えて乳化させることを特徴とする油中水型エマルシヨンの調製方法に係るものである。
【0012】
【発明の構成・作用】本発明の乳化剤組成物に用いるA成分は、3個以上の水酸基を有する多価アルコ―ルと脂肪酸との部分エステルからなる、常温で液状を呈する親油性の非イオン系界面活性剤である。上記の部分エステルは、多価アルコ―ルの種類によつて異なるが、たとえば、水酸基が3個のグリセロ―ルの場合、主にモノエステルとジエステルと少量のトリエステルとの混合物であり、水酸基が4個のジグリセロ―ルやソルビタンの場合、モノエステル、ジエステルと少量のトリエステルおよびテトラエステルとの混合物である。これら部分エステルのうち、良好な乳化剤組成物を形成するものとして、部分エステルの単品またはそれらの混合物が常温で液状を呈し、かつ親油性であるものの中から、選択使用される。
【0013】部分エステルを構成する3個以上の水酸基を有する多価アルコ―ルとしては、たとえば、グリセロ―ル、ジグリセロ―ル、トリグリセロ―ル、テトラグリセロ―ル、ヘキサグリセロ―ル、オクタグリセロ―ル、デカグリセロ―ル、キシリト―ル、ソルビト―ル、マンニト―ル、ソルビタン、トリメチロ―ルプロパン、ペンタエリスリト―ルなどが挙げられる。
【0014】部分エステルを構成する脂肪酸としては、たとえば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、リノ―ル酸など、上記の多価アルコ―ルとの部分エステルが常温で液状を呈するものである限り、公知の種々の脂肪酸を使用することができる。これらの脂肪酸の中でも、とくにシス−Δ9−オクタデセン酸を85重量%以上含有し、かつシス−Δ9−不飽和脂肪酸を90重量%以上含有する高純度オレイン酸が好ましい。
【0015】A成分の部分エステルとして、とくに好適なものは、上記の高純度オレイン酸から誘導される、グリセロ―ルモノオレ―ト、ソルビタンモノオレ―ト、ソルビタンジオレ―ト、ジグリセロ―ルモノオレ―ト、ジグリセロ―ルジオレ―トなどである。これらの部分エステルは、アシル基として非常に高純度なオレイン酸が導入されているため、乳化剤としての酸化安定性にすぐれ、また界面活性剤分子間の配向性が高まる結果、皮膚への浸透性や乳化安定性などの機能性にすぐれるといつた特徴があり、現在、一般に市販されているオレイン酸誘導体と比べて、乳化剤組成物の安定性およびそれを用いて調製される油中水型エマルシヨンの安定性が著しく改善されるという効果を有している。
【0016】本発明の乳化剤組成物に用いるB成分は、アミノ酸またはその塩と、分子内に少なくとも5個以上の水酸基を有する非還元性の糖アルコ―ルとを含有する水溶液である。アミノ酸またはその塩としては、一般的な食品添加物、日本薬局方外医薬品として知られているものの中から選択使用できる。また、上記の非還元性の糖アルコ―ルとしては、食品や日本薬局方医薬品として一般的に用いられているものの中から選択使用でき、とくにキシリト―ル、ソルビト―ル、マンニト―ル、マルチト―ル、ラクチト―ルなどが好ましく用いられる。
【0017】アミノ酸には、グリシン、アラニン、アルギニン塩酸塩、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、ハイドロキシプロリン、セリン、スレオニン、バリン、フエニルアラニンなどがあり、これらの中でも、中性のアミノ酸、とくにアラニンとセリンが好ましい。これらのアミノ酸は、通常L−体であるが、その異性体であるD−体、またそれらの混合物であるDL−体であつても、同様に使用できる。アミノ酸の塩には、ナトリウム塩やカリウム塩などの1価の金属塩、カルシウム塩やマグネシウム塩などの2価の金属塩があり、とくにアスパラギン酸ナトリウム1水和物、アスパラギン酸カリウム2水和物、グルタミン酸ナトリウム1水和物、グルタミン酸カリウム1水和物などが好ましく用いられる。
【0018】水溶液中のアミノ酸またはその塩の濃度は、1〜40重量%である。1重量%より低いと、安定な乳化剤組成物が得られず、これを用いて調製される油中水型エマルシヨンの安定性が低下する。アミノ酸またはその塩の濃度が高いほど、上記の安定性が向上してくるが、40重量%よりも高くなると、結晶が析出しやすくなる。本発明では、併用する糖アルコ―ルがアミノ酸またはその塩の結晶析出を防ぎ、高濃度でも安定な水溶液とすることができるが、実用上は、過飽和状態を与えない濃度範囲とすべきであり、この濃度はアミノ酸またはその塩の溶解度によつて異なるため、選択したアミノ酸またはその塩の溶解度に応じて、上記範囲内において、適当な濃度を設定するのがよい。
【0019】また、水溶液中の非還元性の糖アルコ―ルの濃度は、1〜20重量%である。1重量%より低いと、最終的に調製される油中水型エマルシヨンの安定性に問題を生じる場合がある。また、20重量%より高くなると、アミノ酸またはその塩の溶解性に問題を生じやすくなり、結果として、低粘度で安定な油中水型エマルシヨンを得ることが困難となる。
【0020】本発明の乳化剤組成物は、上記A成分の部分エステルからなる常温で液状を呈する親油性の非イオン系界面活性剤と、上記B成分の水溶液とを、前者:後者が重量比で1:1から1:20となるように混合し、これを強固なゲル状の組成物となるまで撹拌することにより、通常、ゲル状の油中水型乳化剤組成物として、得ることができる。撹拌は強いほど良好なゲル状態を得ることができるが、その際、撹拌機によつて乳化剤組成物が高温になる場合には、常温以下に保つために冷却しながら撹拌を行うようにすればよい。
【0021】なお、A成分とB成分との混合比率は、B成分中のアミノ酸またはその塩、非還元性の糖アルコ―ルの種類とその濃度に応じて、適宜最適な比率が選ばれる。たとえば、B成分がL−グルタミン酸ナトリウム1水和物5重量%およびラクチト―ル5重量%の水溶液の場合、A成分:B成分の重量比が1:2〜1:10の範囲となるようにするのがよい。また、L−グルタミン酸ナトリウム1水和物40重量%およびラクチト―ル20重量%の水溶液の場合、A成分:B成分の重量比が1:2〜1:15の範囲となるようにするのがよい。
【0022】本発明においては、上記の乳化剤組成物を用いて、最終目的とする油中水型エマルシヨンを調製する。この方法は、まず、油分に、ヒドロキシ脂肪酸トリグセライドのエチレンオキサイド20〜60モル付加物からなる乳化剤を加えて撹拌混合し、ついでこれに上記の乳化剤組成物を混合して分散させ、しかるのち水を加えて撹拌混合して乳化させるものであり、この方法により、低粘度でかつ安定性の高い油中水型エマルシヨンを調製することができる。
【0023】油分としては、従来より化粧品などに用いられているエステル系油性基剤や、同じく化粧品に多く用いられている非エステル系油性基剤を、広く使用できる。とくに好ましくは、シス−Δ9−オクタデセン酸を85重量%以上含有し、かつシス−Δ9−不飽和脂肪酸を90重量%以上含有する高純度オレイン酸のエステル化物、たとえばグリセロ―ルトリオレ―ト、ジグリセロ―ルテトラオレ―ト、エチルオレ―ト、デシルオレ―ト、オレイルオレ―ト、トリメチロ―ルプロパントリオレ―トなどからなるエステル系油性基剤か、あるいは、この油性基剤とスクアラン、スクアレン、流動パラフイン、ポリブテンの中から選択される1種または2種以上の非エステル系油性基剤との混合物を用いるのがよい。
【0024】ヒドロキシ脂肪酸トリグセライドのエチレンオキサイド20〜60モル付加物において、ヒドロキシ脂肪酸としては、ヒマシ油や硬化ヒマシ油などがある。なお、このトリグセライドのエチレンオキサイド付加物の使用量は、全処方中(油中水型エマルシヨンの全体量中)、1〜5重量%程度とするのがよい。また、このトリグセライドのエチレンオキサイド付加物と前記の油分のほかに、全処方中、1〜10重量%の割合で、3個以上の水酸基を有する多価アルコ―ルと脂肪酸との部分エステルを添加してもよく、これにより油中水型エマルシヨンの安定性をさらに高めることができる。
【0025】上記の部分エステルとしては、前記の乳化剤組成物を構成するA成分と同じ、常温で液状を呈する親油性の非イオン系界面活性剤であつて、A成分と全く同種のものを使用することができる。とくに好ましくは、シス−Δ9−オクタデセン酸を85重量%以上含有し、かつシス−Δ9−不飽和脂肪酸を90重量%以上含有する高純度オレイン酸から誘導される、グリセロ―ルモノオレ―ト、グリセロ―ルジオレ―ト、ジグリセロ―ルモノオレ―ト、ジグリセロ―ルジオレ―ト、ソルビタンモノオレ―ト、ソルビタンセスキオレ―ト、ソルビタントリオレ―ト、マンニト―ルモノオレ―ト、マンニト―ルジオレ―ト、マンニト―ルトリオレ―トなどを用いるのがよい。
【0026】油中水型エマルシヨンの調製において、油分および水の使用比率は、エマルシヨンの用途目的に応じて、適宜選択される。とくに、本発明では、エマルシヨンの粘度が常温で1,000センチポイズ以下、好ましくは200センチポイズ以下となる低粘度の領域に設定できるので、これに応じて油分および水の使用比率も広い範囲で選択することができる。一般的には、油分:水が重量比で90:10から10:90となるようにすればよい。また、このエマルシヨンの調製に際し、前記本発明の乳化剤組成物の混合量は、全処方中、1〜20重量%、好ましくは3〜10重量%の割合とするのが好ましい。
【0027】このように調製される油中水型エマルシヨンは、上記の如き非常に低粘度な領域においても、安定性にすぐれるといつた特徴を有しており、たとえば、油相に油溶性の有効成分、水相に水溶性の有効成分を添加することにより、皮膚に対する浸透性、柔軟性さらには使用感にすぐれた化粧料や、皮膚上で用いる医薬品、あるいは農薬などに使用することができる。
【0028】
【発明の効果】本発明により、かなり低粘度な領域においても、高い安定性を示し、かつ皮膚上での使用感にすぐれた油中水型エマルシヨンを調製することができる。
【0029】
【実施例】つぎに、本発明を、実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】実施例1A成分として、グリセロ―ルモノオレ―ト〔日本油脂(株)製「NOFABLE GO−901」、アシル基組成:シス−Δ9−オクタデセン酸含量88重量%、シス−Δ9−不飽和脂肪酸含量94重量%〕5部を用いた。また、B成分として、L−グルタミン酸ナトリウム1水和物〔味の素(株)製〕3部およびマンニト―ル〔東和化成工業(株)製「マンニツト」〕1部を精製水6部に溶解させた水溶液を用いた。このA成分およびB成分を、常温にて、クレアミツクスCLM−0.8S〔(株)エムテクニツク製〕を用いて、10,000回転で10分間撹拌混合して、油中水型となる乳化剤組成物X1 を得た。
【0031】実施例2A成分として、ジグリセロ―ルモノオレ―ト〔日本油脂(株)製「NOFABLE PGO−9021L」、アシル基組成:シス−Δ9−オクタデセン酸含量88重量%、シス−Δ9−不飽和脂肪酸含量94重量%〕5部を用いた。また、B成分として、L−グルタミン酸ナトリウム1水和物〔味の素(株)製〕4部およびラクチト―ル〔東和化成工業(株)製「MILCHEN」〕1部を精製水5部に溶解させた水溶液を用いた。このA成分およびB成分を、実施例1と同様に撹拌混合して、乳化剤組成物X2 を得た。
【0032】実施例3A成分として、グリセロ―ルモノオレ―ト〔日本油脂(株)製「NOFABLE GO−991P」、アシル基組成:シス−Δ9−オクタデセン酸含量99重量%、シス−Δ9−不飽和脂肪酸含量99重量%〕5部と、グリセロ―ルジオレ―ト〔日本油脂(株)製「NOFABLE GO−902P」、アシル基組成:シス−Δ9−オクタデセン酸含量88重量%、シス−Δ9−不飽和脂肪酸含量94重量%〕5部を用いた。また、B成分として、L−アスパラギン酸ナトリウム1水和物〔味の素(株)製〕4部およびキシリト―ル〔東和化成工業(株)製「キシリツト」〕1部を精製水12部に溶解させた水溶液を用いた。このA成分およびB成分を、実施例1と同様に撹拌混合して、乳化剤組成物X3 を得た。
【0033】実施例4A成分として、ソルビタンモノオレ―ト〔日本油脂(株)製「NOFABLESO−901」、アシル基組成:シス−Δ9−オクタデセン酸含量88重量%、シス−Δ9−不飽和脂肪酸含量94重量%〕5部を用いた。また、B成分として、L−セリン〔味の素(株)製〕3部およびソルビト―ル〔東和化成工業(株)製「ソルビツト D−パウダ―」〕1部を精製水6部に溶解させた水溶液を用いた。このA成分およびB成分を、実施例1と同様に撹拌混合して、乳化剤組成物X4 を得た。
【0034】実施例5A成分として、ソルビタンモノオレ―ト〔日本油脂(株)製「ノニオン OP−80R」、アシル基組成:シス−Δ9−オクタデセン酸含量55重量%、シス−Δ9−不飽和脂肪酸含量82重量%〕5部を用いた。また、B成分として、L−グルタミン酸ナトリウム1水和物〔味の素(株)製〕3部およびマルチト―ル〔東和化成工業(株)製「AMALTY」〕1部を精製水6部に溶解させた水溶液を用いた。このA成分およびB成分を、実施例1と同様に撹拌混合して、乳化剤組成物X5 を得た。
【0035】比較例1ソルビタンモノオレ―ト〔日本油脂(株)製「NOFABLE SO−901」、アシル基組成:シス−Δ9−オクタデセン酸含量88重量%、シス−Δ9−不飽和脂肪酸含量94重量%〕5部と、ラクチト―ル〔東和化成工業(株)製「MILCHEN」〕4部を精製水6部に溶解させた水溶液とを、実施例1と同様に撹拌混合して、乳化剤組成物Y1 を得た。
【0036】比較例2ソルビタンモノカプリレ―ト〔日本油脂(株)製「ノニオン CP−08R」10部と、L−セリン〔味の素(株)製〕1部を精製水9部に溶解させた水溶液とを、実施例1と同様に撹拌混合して、乳化剤組成物Y2 を得た。
【0037】比較例3ポリオキシエチレンソルビタンモノオレ―ト〔日本油脂(株)製「ノニオンOT−221」、エチレンオキサイド付加モル数20〕5部と、L−グルタミン酸ナトリウム1水和物〔味の素(株)製〕3部およびラクチト―ル〔東和化成工業(株)製「MILCHEN」〕1部を精製水6部に溶解させた水溶液とを、実施例1と同様に撹拌混合して、乳化剤組成物Y3 を得た。
【0038】実施例6〜10油分として、オレイルオレ―ト〔日本油脂(株)製「NOFABLE OO−9080」、アシル基組成:シス−Δ9−オクタデセン酸含量72重量%、シス−Δ9−不飽和脂肪酸含量88重量%〕6部と、スクアレン〔スクアテツク(株)製「ス―パ―スクアレン」6部とを用い、これらの油分に50℃に加温したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油〔日本油脂(株)製「ユニオ―ル HC−40」、エチレンオキサイド付加モル数40〕0.5部を加えて十分に撹拌し、これに実施例1〜5で得た乳化剤組成物X1 〜X5 :2部を混合して、油相中に分散させたのち、撹拌しながら精製水8部を徐々に加え、常温にて、クレアミツクスCLM−0.8S〔(株)エムテクニツク製〕を用いて、8,000回転で10分間撹拌混合して、5種の油中水型エマルシヨンを調製した。
【0039】実施例11〜15油分として、グリセロ―ルトリオレ―ト〔日本油脂(株)製「NOFABLEGO−903」、アシル基組成:シス−Δ9−オクタデセン酸含量72重量%、シス−Δ9−不飽和脂肪酸含量88重量%〕12部を用い、この油分に、ソルビタンセスキオレ―ト〔日本油脂(株)製「NOFABLE SO−902」、アシル基組成:シス−Δ9−オクタデセン酸含量72重量%、シス−Δ9−不飽和脂肪酸含量88重量%〕1.6部と、50℃に加温したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油〔日本油脂(株)製「ユニオ―ル HC−40」、エチレンオキサイド付加モル数40〕0.4部とを加えて十分に撹拌し、これに実施例1〜5で得た乳化剤組成物X1 〜X5 :1部を混合して、油相中に分散させたのち、撹拌しながら精製水6部を徐々に加え、以下実施例6〜10と同様に撹拌混合して、5種の油中水型エマルシヨンを調製した。
【0040】実施例16〜20油分として、オレイルオレ―ト〔日本油脂(株)製「NOFABLE OO−9990」、アシル基組成:シス−Δ9−オクタデセン酸含量99重量%、シス−Δ9−不飽和脂肪酸含量99重量%〕6部と、スクアレン〔スクアテツク(株)製「ス―パ―スクアレン」3部と、スクアラン〔スクアテツク(株)製「ス―パ―スクアラン」3部とを用い、これらの油分に、ソルビタントリオレ―ト〔日本油脂(株)製「NOFABLE SO−993」、アシル基組成:シス−Δ9−オクタデセン酸含量99重量%、シス−Δ9−不飽和脂肪酸含量99重量%〕0.8部と、グリセロ―ルモノオレ―ト〔日本油脂(株)製「NOFABLEGO−991」、アシル基組成:シス−Δ9−オクタデセン酸含量99重量%、シス−Δ9−不飽和脂肪酸含量99重量%〕1.2部と、50℃に加温したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油〔日本油脂(株)製「ユニオ―ル HC−40」、エチレンオキサイド付加モル数40〕0.4部とを加えて十分に撹拌し、これに実施例1〜5で得た乳化剤組成物X1 〜X5 :1部を混合して、油相中に分散させたのち、撹拌しながら精製水10部を徐々に加え、以下実施例6〜10と同様に撹拌混合して、5種の油中水型エマルシヨンを調製した。
【0041】実施例21〜25油分として、ジグリセロ―ルテトラオレ―ト〔日本油脂(株)製「NOFABLE PGO−9024L」、アシル基組成:シス−Δ9−オクタデセン酸含量88重量%、シス−Δ9−不飽和脂肪酸含量94重量%〕6部と、ポリブテン〔日本油脂(株)製「パ―ルリ―ムEX」6部とを用い、これらの油分に、ソルビタントリオレ―ト〔日本油脂(株)製「NOFABLE SO−903」、アシル基組成:シス−Δ9−オクタデセン酸含量88重量%、シス−Δ9−不飽和脂肪酸含量94重量%〕1部と、ソルビタンセスキオレ―ト〔日本油脂(株)製「NOFABLE SO−902」、アシル基組成:シス−Δ9−オクタデセン酸含量88重量%、シス−Δ9−不飽和脂肪酸含量94重量%〕1部と、50℃に加温したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油〔日本油脂(株)製「ユニオ―ル HC−40」、エチレンオキサイド付加モル数40〕0.4部とを加えて十分に撹拌し、これに実施例1〜5で得た乳化剤組成物X1 〜X5 :1部を混合して、油相中に分散させたのち、撹拌しながら精製水6部を徐々に加え、以下実施例6〜10と同様に撹拌混合して、5種の油中水型エマルシヨンを調製した。
【0042】比較例4〜8油分として、オレイルオレ―ト〔日本油脂(株)製「NOFABLE OO−9080」、アシル基組成:シス−Δ9−オクタデセン酸含量88重量%、シス−Δ9−不飽和脂肪酸含量94重量%〕12部を用い、この油分に、ソルビタンセスキオレ―ト〔日本油脂(株)製「NOFABLE SO−902」、アシル基組成:シス−Δ9−オクタデセン酸含量88重量%、シス−Δ9−不飽和脂肪酸含量94重量%〕1部を加えて十分に撹拌し、これに実施例1〜5で得た乳化剤組成物X1 〜X5 :1部を混合して油相中に分散させたのち、撹拌しながら、あらかじめ精製水6部にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油〔日本油脂(株)製「ユニオ―ル HC−40」、エチレンオキサイド付加モル数40〕0.4部を50℃で溶解したのち常温に冷却したものを徐々に加え、以下実施例6〜10と同様に撹拌混合して、5種の油中水型エマルシヨンを調製した。
【0043】比較例9〜13油分として、ジグリセロ―ルテトラオレ―ト〔日本油脂(株)製「NOFABLE PGO−9024L」、アシル基組成:シス−Δ9−オクタデセン酸含量88重量%、シス−Δ9−不飽和脂肪酸含量94重量%〕12部を用い、この油分に、ソルビタンセスキオレ―ト〔日本油脂(株)製「NOFABLE SO−902」、アシル基組成:シス−Δ9−オクタデセン酸含量88重量%、シス−Δ9−不飽和脂肪酸含量94重量%〕1部と、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレ―ト〔日本油脂(株)製「ノニオン OT−221」、ポリソルベ―ト80、エチレンオキサイド付加モル数20〕0.5部とを加えて十分に撹拌し、これに実施例1〜5で得た乳化剤組成物X1 〜X5 :1部を混合して、油相中に分散させたのち、撹拌しながら精製水6部を徐々に加え、以下実施例6〜10と同様に撹拌混合して、5種の油中水型エマルシヨンを調製した。
【0044】比較例14〜18油分として、中鎖脂肪酸トリグリセライド〔日本油脂(株)製「パナセ―ト800」〕8部と、スクアラン〔スクアテツク(株)製「ス―パ―スクアラン」〕4部とを用い、この油分に実施例1〜5で得た乳化剤組成物X1 〜X5 :3部を加えて分散させたのち、撹拌しながら精製水6部を徐々に加え、以下実施例6〜10と同様に撹拌混合して、5種の油中水型エマルシヨンを調製した。
【0045】比較例19〜21油分として、オレイルオレ―ト〔日本油脂(株)製「NOFABLE OO−9080」、アシル基組成:シス−Δ9−オクタデセン酸含量72重量%、シス−Δ9−不飽和脂肪酸含量88重量%〕12部を用い、この油分に、ソルビタンセスキオレ―ト〔日本油脂(株)製「NOFABLE SO−902」、アシル基組成:シス−Δ9−オクタデセン酸含量72重量%、シス−Δ9−不飽和脂肪酸含量88重量%〕1部と、グリセロ―ルモノオレ―ト〔日本油脂(株)製「NOFABLE GO−901」、アシル基組成:シス−Δ9−オクタデセン酸含量72重量%、シス−Δ9−不飽和脂肪酸含量88重量%〕1部と、50℃に加温したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油〔日本油脂(株)製「ユニオ―ル HC−40」、エチレンオキサイド付加モル数40〕0.4部とを加えて十分に撹拌し、これに比較例1〜3で得た乳化剤組成物Y1 〜Y3 :1部を混合して、油相中に分散させたのち、撹拌しながら精製水6部を徐々に加え、以下実施例6〜10と同様に撹拌混合して、3種の油中水型エマルシヨンを調製した。
【0046】比較例22油分として、グリセロ―ルトリオレ―ト〔日本油脂(株)製「NOFABLEGO−903」、アシル基組成:シス−Δ9−オクタデセン酸含量88重量%、シス−Δ9−不飽和脂肪酸含量94重量%〕12部を用い、この油分に、ソルビタンセスキオレ―ト〔日本油脂(株)製「NOFABLE SO−902」、アシル基組成:シス−Δ9−オクタデセン酸含量88重量%、シス−Δ9−不飽和脂肪酸含量94重量%〕2部と、50℃に加温したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油〔日本油脂(株)製「ユニオ―ル HC−40」、エチレンオキサイド付加モル数40〕0.4部とを加えて、十分に撹拌しながら、あらかじめ精製水6部にL−グルタミン酸ナトリウム1水和物〔味の素(株)製〕0.1部とラクチト―ル〔東和化成工業(株)製「MILCHEN」〕0.1部とを溶解させたものを徐々に加え、以下実施例6〜10と同様に撹拌混合して、油中水型エマルシヨンを調製した。
【0047】比較例23油分として、グリセロ―ルトリオレ―ト〔日本油脂(株)製「NOFABLEGO−903」、アシル基組成:シス−Δ9−オクタデセン酸含量72重量%、シス−Δ9−不飽和脂肪酸含量88重量%〕12部を用い、この油分に、ソルビタンモノオレ―ト〔日本油脂(株)製「NOFABLE SO−901」、アシル基組成:シス−Δ9−オクタデセン酸含量72重量%、シス−Δ9−不飽和脂肪酸含量88重量%〕1部と、グリセロ―ルモノオレ―ト〔日本油脂(株)製「NOFABLE GO−901」、アシル基組成:シス−Δ9−オクタデセン酸含量72重量%、シス−Δ9−不飽和脂肪酸含量88重量%〕1部と、50℃に加温したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油〔日本油脂(株)製「ユニオ―ルHC−40」、エチレンオキサイド付加モル数40〕0.4部とを加えて、十分に撹拌しながら、精製水6部を徐々に加え、以下実施例6〜10と同様に撹拌混合して、油中水型エマルシヨンを調製した。
【0048】以上の実施例6〜25および比較例4〜23で調製した各油中水型エマルシヨンについて、コントラバス社のレオマツト115を用いて、常温(25℃)での粘度を測定した結果、実施例6〜25のものは、いずれも、200センチポイズ以下の低粘度であり、また比較例4〜23のものでも、これとほとんど変わらないか、あるいは200センチポイズをやや上回る程度であつた。具体例として、実施例1,3で得た乳化剤組成物X1 ,X3 を用いた数種の油中水型エマルシヨンについて、25℃および40℃の測定粘度を、下記の表1に示した。
【0049】
【表1】


【0050】つぎに、上記の実施例6〜25および比較例4〜23で調製した各油中水型エマルシヨンについて、エマルシヨンの調製後、速やかに下記の要領にて、安定性および使用性の評価を行つた。これらの結果は、後記の表2(実施例6〜25)および表3(比較例4〜23)に示されるとおりであつた。なお、各表には、参考のために、用いた乳化剤組成物の種類を併記した。
【0051】<安定性>油中水型エマルシヨン5mlを、15mlのふた付きのポリプロピレン製スピツツ管(減菌済)に入れ、各温度での安定性の評価を行つた。調製1日後、10日後に肉眼判定により、分離が全く認められないものを◎、油相が僅かに分離したものを○、水相の分離が認められるものを△、油相、水相ともに分離が認められるものを×、2相がほとんど分離しているものを××、として評価した。
【0052】<使用性>健常な男女20名をパネラ―とし、油中水型エマルシヨンを手の甲に塗布した際の皮膚上での、のびとさつぱり感を、下記の基準にしたがつて、評価した。表中、「N」はのび、「S」はさつぱり感、である。
◎ : 良いと答えた人数が16人以上○ : 良いと答えた人数が12〜15人△ : 良いと答えた人数が7〜11人× : 良いと答えた人数が6人以下
【0053】
【表2】


【0054】
【表3】


【0055】上記の表2および表3の結果から明らかなように、本発明の乳化剤組成物X1〜X5 を用いるとともに、油分にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を加え、これに上記の乳化剤組成物X1 〜X5 を混合したのち、水を加えて乳化させる方法により、低粘度であつて、かつ安定性および使用感ともにすぐれた油中水型エマルシヨンを調製できるものであることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 A)3個以上の水酸基を有する多価アルコ―ルと脂肪酸との部分エステルからなる常温で液状を呈する非イオン系界面活性剤と、B)アミノ酸またはその塩を1〜40重量%および分子内に少なくとも5個以上の水酸基を有する非還元性の糖アルコ―ルを1〜20重量%含有する水溶液とを、A成分の非イオン系界面活性剤:B成分の水溶液が重量比で1:1から1:20となるように混合したことを特徴とする乳化剤組成物。
【請求項2】 A成分の非イオン系界面活性剤において、部分エステルを構成する脂肪酸が、シス−Δ9−オクタデセン酸を85重量%以上含有し、かつシス−Δ9−不飽和脂肪酸を90重量%以上含有する高純度オレイン酸からなる請求項1に記載の乳化剤組成物。
【請求項3】 油分に、ヒドロキシ脂肪酸トリグリセライドのエチレンオキサイド20〜60モル付加物を加え、これに請求項1または請求項2に記載の乳化剤組成物を混合したのち、水を加えて乳化させることを特徴とする油中水型エマルシヨンの調製方法。
【請求項4】 油分が、シス−Δ9−オクタデセン酸を85重量%以上含有し、かつシス−Δ9−不飽和脂肪酸を90重量%以上含有する高純度オレイン酸のエステル化物からなるか、あるいは、このエステル化物とスクアラン、スクアレン、流動パラフイン、ポリブテンの中から選択される1種または2種以上との混合物からなる請求項3に記載の油中水型エマルシヨンの調製方法。

【特許番号】特許第3509199号(P3509199)
【登録日】平成16年1月9日(2004.1.9)
【発行日】平成16年3月22日(2004.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−158114
【出願日】平成6年6月15日(1994.6.15)
【公開番号】特開平8−985
【公開日】平成8年1月9日(1996.1.9)
【審査請求日】平成12年12月8日(2000.12.8)
【出願人】(000004341)日本油脂株式会社 (896)
【参考文献】
【文献】特公 昭53−21393(JP,B1)