説明

乳幼児用衣服

【課題】 上衣部と下衣部とを一連に構成し、かつ、下衣部の下側を開放させた衣服において、かかる衣服の身丈の調整機能を持たせる。
【解決手段】 下衣部20がその下側部に衣服の前後側においてそれぞれ股覆い片22を有すると共に、前後股覆い片22、22をつなぎ留めてつなぎ留められた股覆い片22の両側から乳幼児Mの足を突き出し可能としてある。前後股覆い片22、22の一方に、衣服の身丈方向Lに亙って位置を異ならせる二以上の第一の留め手段24が設けてある。前後股覆い片22、22の他方に、第一の留め手段24に留め合わされる第二の留め手段25が設けてある。第一の留め手段24と第二の留め手段25とを留め合わせることにより前後股覆い片22、22のつなぎ留めがなされる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、上衣部と下衣部とが一連になっている乳幼児用衣服であって、乳幼児の成長に相応した身丈の調整を可能とした乳幼児用衣服の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】乳幼児の成長に相応した衣服のサイズの調整を可能とした乳幼児用衣服に関し、実開昭59−117615、実開昭62−144918、実開平1−78112にかかる技術が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら従来の技術にあっては、前記サイズの調整をこれらの衣服の身ごろを構成する箇所の生地に予め重なり合う部分を設けておき、この重なり合い寸法を可変させることによりなすものであるため、かかる重なり合い部分が目立ち衣服の外観をスッキリと整え難い不都合があった。また、衣服の身ごろにかかる重なり合う部分を設けているため、かかる重なり合う範囲が広くなり易く、乳幼児の着心地を悪くしたり、乳幼児を暑がらせる結果を招くなどの不都合があった。また、かかるサイズの調整のための構造を前記衣服の機能上必要な構造とは別個に設けさせているため、こうした調整機能を持たせるための複雑な造作を衣服に施すことを要する不都合があった。
【0004】そこでこの発明は、第一に、上衣部と下衣部とを一連に構成してあると共に、乳幼児のおむつの交換に便利なように下衣部の下側を開放させた衣服において、かかる衣服の外観性を損なわないように、しかも、当該衣服に格別の造作を施すことなく、かかる衣服の身丈の調整機能を持たせることを目的とする。また、第二に、かかる機能を有しながら、乳幼児の着心地を通常の衣服と異ならせることのない乳幼児用衣服の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、請求項1記載の発明にあっては、乳幼児用衣服を、上衣部10と下衣部20とが一連になっており、かつ、下衣部20の下側が開放21されている乳幼児用衣服であって、前記下衣部20がその下側部に前記衣服の前後側においてそれぞれ股覆い片22を有すると共に、この前後股覆い片22、22をつなぎ留めて当該つなぎ留められた股覆い片22の両側から乳幼児Mの足を突き出し可能としてあり、前記前後股覆い片22、22の一方に、前記衣服の身丈方向Lに亙って位置を異ならせる二以上の第一の留め手段24が設けてあると共に、当該前後股覆い片22、22の他方に、当該第一の留め手段24に留め合わされる第二の留め手段25が設けてあり、当該第一の留め手段24と第二の留め手段25とを留め合わせることにより前記前後股覆い片22、22の前記つなぎ留めがなされる構成とした。
【0006】かかる構成によれば、前記上衣部10を乳幼児Mの上半身に着せた後、かかる乳幼児Mの股位置において、前記二以上の第一の留め手段24のいずれか一つに第二の留め手段25を留め合わさせて前記前後股覆い片22、22をつなぎ留めさせることによって、かかるつなぎ留めされた前後股覆い片22、22により乳幼児Mの股を覆い、かつ、つなぎ留められた前後股覆い片22、22の両裾から乳幼児Mの足がそれぞれ突き出されるようにして、かかる乳幼児Mの下半身に下衣部20を着せることができる。また、つなぎ留められた前後股覆い片22、22の当該留め合わせを解くことにより前後股覆い片22、22を分離させて、かかる前後股覆い片22、22による乳幼児Mの股の覆い状態を解いて、当該乳幼児Mのおむつの交換をなすことができる。
【0007】また、前記二以上の第一の留め手段24は、前記衣服の身丈方向Lに亙って位置を異ならせて設けてあることから、前記第二の留め手段25を掛合させる第一の留め手段24を変えることにより、かかる衣服の身丈を容易に調整することができる。より詳細には、前記二以上の第一の留め手段24のうち、上衣部10側に近い位置に設けられた第一の留め手段24に第二の留め手段25を掛合させれば、つなぎ留められる前後股覆い片22、22の重なり合いを多くして前記身丈を小さくすることができ、また、前記二以上の第一の留め手段24のうち、上衣部10側から遠い位置に設けられた第一の留め手段24に第二の留め手段25を掛合させれば、つなぎ留められる前後股覆い片22、22の重なり合いを少なくして前記身丈を小さくすることができる。
【0008】この結果、この発明にかかる乳幼児用衣服によれば、特に、乳幼児Mの成長によりかかる乳幼児Mの肩から股までの体長が長くなっても、前記第二の留め手段25を掛合させる前記二以上の第一の留め手段24を変えることにより前記身丈を大きくして、かかる成長に衣服の身丈をある程度追随させることができ、単一の衣服でありながら比較的長い期間乳幼児Mに着用させることができる。
【0009】この発明にかかる乳幼児用衣服にあっては、かかる衣服の身丈の調整を前記前後股覆い片22、22のつなぎ留め位置の変更、すなわち、かかるつなぎ留めにより重なり合う前後股覆い片22、22の重なり合い寸法の変更によってのみなすものであることから、かかる衣服におけるその余の箇所において衣服の生地の重なり合いを無用に生じさせることがなく、乳幼児Mの着心地を通常の衣服同様に保った状態で、前記身丈の調整をなせる特長を有する。
【0010】この発明にかかる乳幼児用衣服は、身丈の調整ができないと乳幼児Mの成長に追随して着用させ難い上衣部10と下衣部20(パンツ部)とが一連になった乳幼児用衣服に適用されるものであり、例えば、ロンパースや、一般にボディスーツと称されるロンパースタイプのベビー肌着に用いるのに適している。特に、ベビー肌着にあっては、その上からさらに上着、ズボンなどが着用されることから、乳幼児Mの着心地や、乳幼児Mを暑がらせないように、また特に夏季用の乳幼児用衣服においては乳幼児Mを暑がらせないように、前記衣服の生地の重なり合いを無用に生じさせないようにすることが強く要請されるので、乳幼児Mの股位置においてのみかかる生地の重なり合い、すなわち、前記前後股覆い片22、22の重なり合いを生じさせるに留まるこの発明にかかる衣服は、かかるベビー肌着や夏季用の乳幼児用衣服に適用するのに適している。第一の留め手段24および第二の留め手段25としては、スナップや、面状ファスナなど、衣服に用いられる各種の留め手段を用いることができる。
【0011】次いで、請求項2記載の発明にあっては、前記請求項1記載の発明にかかる乳幼児用衣服における前後股覆い片22、22の第一の留め手段24及び第二の留め手段25がそれぞれ、少なくとも、前記股覆い片22の幅方向略中央に位置される中心スナップ24a’、25a’と、この中心スナップ24a’、25a’を挟んだ両側に設けられ、かつ、つなぎ留められた前後股覆い片22、22により構成される衣服の裾縁に近接した位置に設けられる側方スナップ24a”、25a”とを有している構成とした。
【0012】かかる構成によれば、第一の留め手段24を構成する中心スナップ24a’と第二の留め手段25を構成する中心スナップ25a’とを留め合わせることにより、乳幼児Mの正中線上に略位置される位置で前後股覆い片22、22間に隙間が開かないように当該前後股覆い片22、22をつなぎ留めることができ、また、前記第一、第二の留め手段25における側方スナップ24a”、25a”同士を留め合わせることにより、前記衣服の裾縁側において前後股覆い片22、22間に隙間が開かないように当該前後股覆い片22、22をつなぎ留めることができる。この結果、この発明にかかる乳幼児用衣服によれば、かかる衣服の股幅方向Hに沿って適切に前後股覆い片22、22を留め合わせることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、図1ないし図3に示されるこの発明の典型的な実施の形態の一つについて説明する。
【0014】なお、ここで図1は、この実施の形態にかかる乳幼児用衣服の全体構成を理解し易いように、かかる衣服を下衣部20を構成する前後股覆い片22、22をつなぎ留めない状態で乳幼児Mに着用させた状態を示しており、また、図2は、かかる前後股覆い片22、22をつなぎ留めた状態で乳幼児Mに着用させた状態を示している。また、図3は、前記前後股覆い片22、22をつなぎ留める構造を理解し易いように、後側の股覆い片22の突き出し端側にある第一の留め手段24を構成するスナップ24aに、第二の留め手段25を構成するスナップ25aを留め合わせた状態で、この留め合わせ部分を縦断面の状態として示している。
【0015】この実施の形態は、ロンパースタイプの肌着として乳幼児用衣服を構成した例を示している。
【0016】かかる肌着は、襟口11と両長袖12、12を備えた上衣部10と、この上衣部10に連続して設けられた下衣部20とを有している。なお、上衣部10は、必要に応じて、襟口11にカラーなどを備えさせたり、袖を半袖としたり、ノースリーブ状としたり、さらには、適宜の飾りボタンなどの装飾部材を設けるなどして構成してあっても良い。
【0017】下衣部20は、下側が開放21されている。また、この下衣部20における下側部(すなわち、前記開放21側)には、この肌着における前後側においてそれぞれ、この肌着の下方に向けて突き出される股覆い片22が一体に設けてある。
【0018】かかる前後股覆い片22、22は、その突き出し側22aをつなぎ留めることにより、乳幼児Mの股を覆え、かつ、かかるつなぎ留め状態においてその両側からかかる乳幼児Mの足を突き出させるように構成してある。すなわち、かかるつなぎ留め状態にある前後股覆い片22、22により、この股覆い片22の両側に裾口23が形成される構成としてある。
【0019】前記前後股覆い片22、22のつなぎ留めは、前記肌着の後側にある股覆い片22に設けられた第一の留め手段24と、当該肌着の前側にある股覆い片22に設けられた第二の留め手段25とを留め合わせることによりなすことができるようにしてある。
【0020】より詳細には、この実施の形態にあっては、前記第二の留め手段25が、前記前側にある股覆い片22における当該肌着の内側に向けて係合突部25cを突き出させたスナップ25aの雄ボタン25bとしてあると共に、前記第一の留め手段24が、前記後側にある股覆い片22における当該肌着の外側に向いた係合凹部24cを有するスナップ24aの雌ボタン24bとしてある。したがって、この実施の形態にあっては、後側にある股覆い片22の肌着の外側に向いた面と前側にある股覆い片22の肌着の内側に向いた面とが接し合うように前後股覆い片22、22を乳幼児Mの股において重なり合わせ、かつ、前記第二の留め手段25を構成する雄ボタン25bと前記第一の留め手段24を構成する雌ボタン24bとを係合し合わせることにより、かかる前後股覆い片22、22をつなぎ留めさせてかかる乳幼児Mの股を覆わせることができる。
【0021】また、この実施の形態にあっては、第一の留め手段24および第二の留め手段25がそれぞれ、前記前後股覆い片22、22の幅方向(衣服の股幅方向H)に沿って等間隔に三つのスナップ24a、24a…(25a、25a…)を並設させることにより構成してある。より詳細には、かかる三つのスナップ24a、24a…(25a、25a…)は、前記股覆い片22の幅方向略中央に位置される中心スナップ24a’、25a’と、この中心スナップ24a’、25a’を挟んだ両側に設けられ、かつ、つなぎ留められた前後股覆い片22、22により構成される衣服の裾口23の裾縁に近接した位置に設けられる側方スナップ24a”、25a”とにより構成されている。
【0022】また、この実施の形態にあっては、前記前側の股覆い片22に設けられる第二の留め手段25が、当該股覆い片22の突き出し側22aにある縁部に設けてあると共に、前記後側の股覆い片22に設けられる第一の留め手段24が、当該後側の股覆い片22において、前記肌着の身丈方向Lに亙って間隔を開けて、当該後側の股覆い片22の突き出し側22aにある縁部とこれより上方の位置との二か所に設けてある。
【0023】なお、この実施の形態にあっては、肌着の縁部に設けられた各スナップ24a、24a…(25a、25a…)はかかる肌着の玉縁部26に収まるように設けられ、また、この縁部より上方に設けられた各スナップ24a、24a…は前記後側の股覆い片22の幅方向に亙って縫い付けられたテープ27に収まるように設けられている。
【0024】この結果、この実施の形態にあっては、前記前側の股覆い片22と後側の股覆い片22とを、前記肌着の身丈方向Lに向けて異なる二箇所の位置でつなぎ留めることができ、このようにつなぎ留められて重なり合う前後股覆い片22、22の当該重なり合い寸法を前記上下の第一の留め手段24、24相互の間隔分調整することができる。この結果、この間隔分、前記肌着の身丈を容易に調整することができる。
【0025】なお、以上に説明した例とは別に、前記前側の股覆い片22に前記肌着の身丈方向Lに亙って位置を異ならせる二以上の第一の留め手段24、24…を設け、かつ、前記後側の股覆い片22に第二の留め手段25を設けて肌着を構成しても良い。
【0026】
【発明の効果】この発明にかかる乳幼児用衣服によれば、上衣部と下衣部とを一連に構成してあると共に、乳幼児のおむつの交換に便利なように下衣部の下側を開放させた衣服において、乳幼児の股を覆う前後股覆い片をつなぎ留める留め手段にかかる衣服の身丈の調整機能を併せ持たせることができ、衣服に複雑な造作を施すことなく、しかも、当該衣服の外観性を損なうことなく、かかる調整機能を発揮させることができる特長を有する。
【0027】特に、前記身丈の調整のための衣服の生地の重なり合いを前記前後股覆い片においてのみ必要とし、衣服の他の箇所に無用の生地の重なり合いを生じさせないことから、乳幼児の着心地を通常の衣服と同様のものとすることができる特長を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】乳幼児用衣服の使用状態を示す正面図
【図2】乳幼児用衣服の使用状態を示す正面図
【図3】乳幼児用衣服の縦断面図
【符号の説明】
10 上衣部
20 下衣部
21 開放
22 股覆い片
24 第一の留め手段
25 第二の留め手段
L 身丈方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】 上衣部と下衣部とが一連になっており、かつ、下衣部の下側が開放されている乳幼児用衣服であって、前記下衣部がその下側部に前記衣服の前後側においてそれぞれ股覆い片を有すると共に、この前後股覆い片をつなぎ留めて当該つなぎ留められた股覆い片の両側から乳幼児の足を突き出し可能としてあり、前記前後股覆い片の一方に、前記衣服の身丈方向に亙って位置を異ならせる二以上の第一の留め手段が設けてあると共に、当該前後股覆い片の他方に、当該第一の留め手段に留め合わされる第二の留め手段が設けてあり、当該第一の留め手段と第二の留め手段とを留め合わせることにより前記前後股覆い片の前記つなぎ留めがなされる構成としてあることを特徴とする乳幼児用衣服。
【請求項2】 前後股覆い片の第一の留め手段及び第二の留め手段がそれぞれ、少なくとも、前記股覆い片の幅方向略中央に位置される中心スナップと、この中心スナップを挟んだ両側に設けられ、かつ、つなぎ留められた前後股覆い片により構成される衣服の裾縁に近接した位置に設けられる側方スナップとを有していることを特徴とする請求項1記載の乳幼児用衣服。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平11−43808
【公開日】平成11年(1999)2月16日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−213918
【出願日】平成9年(1997)7月25日
【出願人】(592112503)株式会社ミリカンパニーリミテッド (2)