説明

乳房取り付け装置

本発明は、乳房取り付け装置、特に、搾乳器のための可撓性の挿入部又は乳頭保護器に関し、挿入部又は保護器は、乳児の授乳の自然な刺激をまねて乳房に明確なマッサージ効果を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳房取り付け装置、特に、搾乳器のための可撓性の挿入部又は乳頭保護器(nipple shield)に関し、挿入部又は保護器は、乳児の授乳の自然な刺激をまねて乳房に明確な(positive)マッサージ効果を与える。
【背景技術】
【0002】
周知のマッサージ式の搾乳器の挿入部及び保護器に関連するいくつかの欠点がある。
【0003】
EP0727234(Avent Limited社)に説明される搾乳器の挿入部は、複数の凹んだ花弁(petal)を有し、これら花弁は、乳房に置かれ、そして、吸引が、真空がマッサージ式の挿入部と硬質な支持ホーンとの間の空間に向けられるという事実により与えられたとき、これら花弁は、乳房から離れるように動く。乳房から離れる動きが実際にマッサージ効果を与えるかどうかは疑わしい。
【0004】
US7396339(The First Years Inc.社)はまた、薄くされた複数の壁を備えたマッサージ式の挿入部内の複数の領域を有する、マッサージ式の複数の凹んだ花弁を備えた搾乳器の挿入部を説明している。しかし、吸引は、挿入部の複数のチャネルを介して、挿入部と乳房との間の空間の薄くされた領域へと向けられる。実質的には、搾乳器から吸引が与えられたとき、この薄くされた領域は、乳房に向かって動き、マッサージ圧力を与える。これは、有益なマッサージを与えることができるが、凹部に吸引を向けるために挿入部の壁のチャネルに頼っている。しかし、これらチャネルは、小さく、使用者自身の乳房によって容易にブロックされうる。
【0005】
代わって、US2004024352(Playtex社)は、メンブレンを備えたマッサージ式の挿入部を有する。これもまた、乳房に明確なマッサージ力を与えるが、マッサージ式の挿入部と支持ホーンとの間のキャビティ中の圧力の強化を利用する。US2004024352に説明される搾乳器は、多くの他の周知の搾乳器と同様にして乳の圧搾を促進する乳房への吸引を与えないか、乳房の吸引及びマッサージ式のメンブレンへの高められた圧力を同時に与えるために搾乳器を必要とする。後者は、所望とされるよりも複雑な搾乳器を必要とする。
【0006】
短いパルスで乳房に与えられる吸引がより効率的な乳の圧搾を与えることは周知である。周知技術のように、乳房に吸引を与えることは、乳児の動作(作用)をまねることによって乳の圧搾を刺激する。周知の搾乳器の可撓性の領域は、わずかなマッサージ効果を与えることによって乳の圧搾をアシストすることができる。しかし、可撓性の領域は、素材の薄くされた領域にわたる差圧によって動き、それ故、マッサージ圧力は、多くのエネルギを必要とする素材の伸びに頼っているので、最小である。
【0007】
周知の乳頭保護器は、一定の壁の厚さを有する。このような乳頭保護器は、厚い壁によりマッサージを妨げるくらい硬質すぎるか、薄い壁により母体の保護を十分に与えず保護器へのダメージの危険性のあるくらい可撓性を有しすぎる(軟質すぎる)。
【発明の概要】
【0008】
従って、本発明は、乳の圧搾を促進する明確なマッサージ効果を与えるために、搾乳器の挿入部として、又は乳頭保護器として使用されることができる乳房取り付け装置を提供する。この取り付け装置は、取り付け装置の首部の少なくとも1つの周囲溝と、クッション性の外側リムとを有することによって、この明確なマッサージ効果を達成する。本発明の取り付け装置の周囲溝は、挿入部の壁に脆さを与え、内向きに潰れて取り付け装置をかなり歪めるように、挿入部内の圧力の減少に対応する。取り付け装置の形状は、かなりの吸引を与える必要なく、かなり大きなマッサージ圧力を与える。
【0009】
これは、周知技術とは異なる。周知技術では、マッサージ力は、素材の伸びに左右され、従って、与えられる吸引に直接比例する。さらに、周知の搾乳器の挿入部は、乳房に向かって、又は乳房から離れるように、局所的な力を加え、この力は、乳児の口の典型ではない、乳房からほぼ垂直に作用する力である。本発明の挿入部の形状変化は、授乳時の乳児の口の作用よりもかなり典型的であるので、乳の圧搾をする際により成功しやすい。特に、挿入部全体が潰れて変形し、幅広のO形状から平たい形状へと移るように、乳児の口をまねている。
【0010】
挿入部が使用者の乳房に置かれたとき、クッション性の外側リムは、乳房に接触する挿入部の表面から離れて位置されるチャネルにより、快適な感触を与える。従って、吸引が与えられて使用者がポンプ(搾乳器)を彼女の体に押圧したとき、彼女は、可撓性の挿入部によって押圧する硬質ホーンの硬い外側リムを感じることができない。
【0011】
本発明はまた、上に説明されるような、保護器を潰すことを可能にする同様の周囲溝を有する乳頭保護器に関する。従って、授乳する乳児は、保護器が所定の位置にあるときでさえも、なおも、自然なマッサージ効果を与えて乳の圧搾を促進することができる。保護器はまた、母体の乳頭を保護する。
【0012】
本発明のいくつかの実施の形態が、図面を参照して例によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、ヘッドユニット(9)に取り付けられ、さらに、容器及びポンプのリードに取り付けられる、円形部分(2)を備えた搾乳器の挿入部(1)を示す横断面図である。
【図2】図2は、円形のカップ部分の位置に円形の凸状部分(16)を有する搾乳器の挿入部(1)を示す横断面図である。
【図3】図3は、乳頭保護器を示す横断面図である。
【図4】図4は、乳頭保護器の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
取り付け装置は、円形のカップ部分(2)を有することができる。カップ(2)のベースのところで、取り付け装置はまた、取り付け装置(1)のカップ部分(2)から延びた円筒形の首部(3)を有する。取り付け装置(1)は、可撓性素材(軟質素材)でできている。
【0015】
取り付け装置(1)の円筒形部分(3)は、内面に少なくとも1つの周囲溝(12)を有する。溝は、丘部(land)(即ち、溝によりもたらされる突条部)と交互になっている。好ましくは、円筒形部分(3)は、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つの溝を有する。溝(12)は、円筒形部分(3)の外面に、追加的に、又は代わって形成されることができる。取り付け装置(1)は、周囲溝(12)の周りの薄くされた領域を含まない。これら周囲溝(12)及び丘部は、波形の横断面を備えた円筒形部分(3)を与える。
【0016】
取り付け装置は、搾乳器のための挿入部であることができる。挿入部(1)の円形部分(2)は、搾乳器の他の構成部材に取り付けられていないとき、浅いカップ形状を有する。カップ部分(2)の縁部、即ちリム(4)が、リップ(5)を形成するように、それ自身折り返っている。それ自身が折り返っていることによって、挿入部(1)のこの部分はまた、リム(23)を、即ち、使用時にクッション効果を奏する球根状部分を形成している。
【0017】
挿入部はまた、円形カップ部分の位置で円形の凸状部分(16)を有する。凸状部分(16)は、使用者が押圧することができることに対するクッションを与えるように、外向きにドーム状になっている。凸状部分(16)は、乳房が硬質ホーンのリムに押圧されることができないことを確実にする。
【0018】
使用のために組み立てられたとき、挿入部(1)は、硬質ホーン(6)に係合し、これにより、硬質ホーン(6)の内面全体が挿入部(1)により保護される。それ故、硬質ホーン(6)の形状は、可撓性の挿入部(1)の形状にほぼ対応している、即ち、ホーン(6)は、円形部分のベースから延びている円筒形の首部分(14)を備えた円形のカップ部分(13)でできている。ホーン(6)の円形部分(13)のカップの形状は、可撓性の挿入部(1)がホーン(6)内に取着されていないとき、可撓性の挿入部(1)のカップの形状よりもかなり顕著(pronounced)である。硬質ホーン(6)は、カップ部分(13)から円筒形部分(14)へのステップ(15)を有する。硬質ホーン(6)がヘッドユニット(9)に取り付けられたとき、円筒形部分全体が、ヘッドユニットの対応する部分に係合する。
【0019】
キャビティ(7)が、可撓性の挿入部(1)と硬質ホーン(6)との間に形成される。円筒形部分(2)の縁部又は円形の凸状部分(16)のところの可撓性の挿入部(1)のリップ(5)は、挿入部(1)の外面の尖った突条部とリップ(5)の外縁部との間に形成された凹部、即ちチャネル(8)を有する。硬質ホーン(6)の対応する部分は、可撓性の挿入部(1)とホーン(6)との間の緊密な接続を果すように、凹部、即ちチャネル(8)に係合する。従って、挿入部(1)の口は、硬質ホーン(6)へとかぎ形に曲がっている(hook)。
【0020】
可撓性の挿入部(1)と硬質ホーン(6)との間のキャビティ(7)のシールは、円形部分の縁部でリップ(5)に垂直に延びている挿入部(1)の2つの小さな平行な平頂の(flat-topped)突出部によって壊される。これら突出部はまた、これら突出部が挿入部(1)とホーン(6)との間のシールを壊すとすれば、リップに対して他の方向にも延びることができる。これら突出部は、例えば、突条部、バー又は構成部(formation)である、挿入部(1)から突き出た任意の構造であることができる。キャビティ(7)がシールされると、挿入部の変形は、使用中、キャビティの体積を変化させる。これは、圧力に影響を与え、圧力の変化が、挿入部(1)の変形に対する耐性(従って、挿入部によって与えられるマッサージ量の抑制)を与える。挿入部(1)に与えられる2つの小さな平頂の突条部は、ホーン(6)の外側リムの周りに空気の通路を生じ、キャビティ(7)がキャビティ(7)の内部の体積の変形にかかわらず周囲圧力を維持することができることを確実にする。
【0021】
ヘッドユニット(9)に取り付ける挿入部(1)の円筒形部分(3)の端部のところで、挿入部分はまた、硬質ホーン(6)がその中に緊密に係合されることができるチャネル、即ち凹部(10)を与えるように、それ自体折り返っている。従って、可撓性の挿入部(1)は、両端部で硬質ホーン(6)にかぎ形に曲がっている。
【0022】
挿入部(1)のカップ部分がかぎ形に曲がっている硬質ホーン(6)の部分は、挿入部(8)のチャネル、即ち凹部に係合する(即ち相互作用する)平らなリム(11)である。挿入部(1)の円筒形部分(3)に係合する硬質ホーン(6)の他端は、円筒形の硬質ホーンの部分を残して切り抜かれた部分を有し、これは、ホーンの残りの部分よりも薄く、挿入部(1)によって与えられる凹部、即ちチャネル(10)に係合する(即ち相互作用する)。
【0023】
可撓性の挿入部(1)が硬質ホーン(6)に取り付けられたとき、可撓性の挿入部(1)は、伸ばされ、挿入部(1)のカップ形状を、より顕著になり乳房の形状にほぼ対応するようにさせる。これにより、挿入部(1)は、乳房に置かれることができる。
【0024】
挿入部(1)と硬質ホーン(6)との組合せ構造が、ヘッドユニット(9)に、即ち、円筒形部分(3)の端部でポンプの本体に取り付けられる。
【0025】
ヘッドユニット(9)は、手動ポンプ又は電動ポンプに取り付けられることができる。適切な電動ポンプは、膜ポンプである。
【0026】
使用時には、ヘッドユニット(9)はまた、乳を収集する容器に接続される。ヘッドユニット(9)は、容器にユニットをねじ留めするための雌ねじを有することができる。ユニットはまた、容器に取り付けるユニットの部分に一方向弁を有することができ、これにより、容器が取り付けられたとき、乳がユニット及び弁を通過して容器に導かれる。一方向弁は、周知技術のようなダックビル弁又はフラップ弁であることができる。
【0027】
使用時には、吸引は、可撓性の挿入部が周囲溝に沿って潰れるように、ポンプによって乳房及び可撓性の挿入部に与えられる。これは、挿入部(1)の円筒形の首部(3)を潰れて変形するようにし、円形の横断面から平たい楕円の横断面へと移る。この形状の変化は、乳房にマッサージ圧力を与え、乳の産出を刺激する。
【0028】
吸引パルスが終わった後、ポンプがユニットに空気を流し戻して、可撓性の挿入部(1)が元の形状に戻る。吸引サイクルの間に圧搾された乳は、挿入部(1)の首部を通過してユニット本体(9)へと流れ、一方向弁を介して貯蔵容器に入れられる。
【0029】
挿入部(1)の2つの平頂の突出部は、可撓性の挿入部(1)と硬質ホーン(6)との間のキャビティ(7)が周囲雰囲気からシールされていないので、挿入部の変形が最小の耐性(抵抗)で起こることを確実にする。
【0030】
可撓性の挿入部(1)は、シリコーンゴムでできていることができ、一方、ホーン(6)及びポンプのヘッドユニット(9)は、ポリプロピレンのような硬質プラスチックでできていることができる。
【0031】
取り付け装置はまた、乳頭保護器であることができる。取り付け装置が乳頭保護器であるとき、円筒形の首部が乳頭を受ける形状に合わせられたドーム状部分(1)で終わっている。
【0032】
保護器のドーム形状部分(19)は、少なくとも1つの切り抜き部分(17)を有する。切り抜き部分は、ドーム形状部分全体の実質的に5分の1、4分の1、3分の1又はそれ以上であることができる。ドーム形状部分は、さらに、ドーム形状部分の先端の比較的小さな複数の孔(18)を有することができる。
【0033】
乳頭保護器のカップ形状部分は、幅広の平らな領域であり、薄い素材ででき、乳房に対してシールすることができる。円筒形部分(3)及びドーム部分(19)は、比較的厚い素材でできていることができる。
【0034】
使用時には、乳頭保護器は、乳房に置かれ、乳児が、円筒形部分(3)を吸引する。乳児が吸引するのに従って、円筒形部分(3)の周囲溝(12)が保護器を潰し、これにより、乳房に自然なマッサージ効果を与えて、乳の放出を促進する。
【0035】
乳児はまた、Oから比較的平たい形状までその口の形状を変えることによって引き起こされるマッサージ作用を与えることができる。周囲溝(12)は、これによって、乳頭保護器が、容易に潰され、最小の干渉で乳房への自然なマッサージ作用を伝達することができることを確実にする。言い換えれば、保護器が潰れなければ、乳児の授乳作用からのマッサージ力に耐える。これは、乳頭保護器が自然な授乳作用を抑制し、乳房への刺激を低減させ、最終的に、母体の乳の供給を減らすので望ましくない。
【0036】
切り抜き部分は、乳児の口への乳の実質的な放出を与える。さらに、切り抜き部分は、乳児が母体の乳頭を感じることができることを意味している。
【0037】
非使用時には、保護器は、ケーシングに収容され保護されることができる。ケーシング(22)は、保護器の乳頭部分を収容するように、第2のドーム形状部分(21)を備えた第1のカップ形状部分(20)を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の乳房を受けるようにサイズ設定された第1の円形部分と、
第2の円筒形部分とを具備し、
前記第2の円筒形部分は、周囲溝を有する可撓性の乳房取り付け装置。
【請求項2】
搾乳器の挿入部である請求項1の取り付け装置。
【請求項3】
さらに両端部にリップを具備する請求項2の挿入部。
【請求項4】
乳頭保護器である請求項1の取り付け装置。
【請求項5】
前記第2の円筒形部分は、ドーム形状部分で終わっている請求項4の取り付け装置。
【請求項6】
前記ドーム形状部分は、切り抜き領域を有する請求項5の取り付け装置。
【請求項7】
円形部分と、円筒形部分とを具備し、人間の乳房の形状に対応している請求項2又は3の挿入部を有する硬質ホーン。
【請求項8】
前記挿入部は、前記ホーンと前記挿入部との間のシールを妨げるように配置された突出部を有する請求項7のホーン。
【請求項9】
前記挿入部は、硬質ホーンに取着されている請求項7又は8のホーン。
【請求項10】
前記挿入部は、前記挿入部の両端のリップと、ホーンの対応する部分との間の相互作用によってホーンに取着されている請求項9のホーン。
【請求項11】
請求項7ないし10のいずれか1のホーンと、
前記挿入部と連通する圧力源と、
乳を収集するための容器とを具備する搾乳器。
【請求項12】
前記圧力源は、膜ポンプである請求項11の搾乳器。
【請求項13】
請求項7ないし10のいずれか1のホーンを乳房に置くことと、
負の圧力源を与えることと、
圧搾された乳を収集することとを具備する乳を圧搾する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−532723(P2012−532723A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520089(P2012−520089)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001345
【国際公開番号】WO2011/007140
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(500543845)ジャッケル インターナショナル リミティド (3)
【Fターム(参考)】