乳母車
【課題】 構成が簡単で且つ背もたれ部の換気が十分確保できる乳母車を提供する。
【解決手段】 乳母車は、座部と、座部の後方端から立上がり、傾斜角度を変更可能に設けられた背もたれ板25と、背もたれ板25の上方端に回動可能に連結されたヘッドガード板26と、ヘッドガード板26を、背もたれ板25の延在する方向に延在するように付勢するバネ42と、ヘッドガード板26を背もたれ板25に対して立上げる立上げ手段とを含む。立上げ手段は、背もたれ板25の背面に設けられ、背もたれ板25の回転中心34を中心にその中心が移動可能で且つ、その中心を軸としてそれ自身が回転可能なリクライニングブラケット45と、リクライニングブラケット45とヘッドガード板26とを連結するロッド棒33と、背もたれ板25が所定の傾斜角度になると、リクライニングブラケット45自身の回転を禁止する作動部材46と当接部材50とからなる禁止手段とを含む。
【解決手段】 乳母車は、座部と、座部の後方端から立上がり、傾斜角度を変更可能に設けられた背もたれ板25と、背もたれ板25の上方端に回動可能に連結されたヘッドガード板26と、ヘッドガード板26を、背もたれ板25の延在する方向に延在するように付勢するバネ42と、ヘッドガード板26を背もたれ板25に対して立上げる立上げ手段とを含む。立上げ手段は、背もたれ板25の背面に設けられ、背もたれ板25の回転中心34を中心にその中心が移動可能で且つ、その中心を軸としてそれ自身が回転可能なリクライニングブラケット45と、リクライニングブラケット45とヘッドガード板26とを連結するロッド棒33と、背もたれ板25が所定の傾斜角度になると、リクライニングブラケット45自身の回転を禁止する作動部材46と当接部材50とからなる禁止手段とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乳母車のリクライニング機構に関し、特に、所定の傾斜角度でヘッドガード部の角度が変わる乳母車のリクライニング機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来乳母車のリクライニング機構が、たとえば、特許第3385118号公報(特許文献1)や、特開2001−97228号公報(特許文献2)に開示されている。特許文献1は、背もたれ部が比較的立ち上がった状態では、ヘッドガード部を前記背もたれ部と実質的に一平面上に並ぶ状態にもたらし、背もたれ部が最も倒れた状態では、ヘッドガード部を背もたれ部の上方端から立ち上がった状態にもたらすように制御する、制御部材とを備える乳母車を開示する。
【0003】
特許文献1においては、長穴とその長穴内で移動可能なピン、およびヘッドガード部に回動可能に連結された制御部材を用いて、ヘッドガード部と背もたれ部との位置関係を制御している。
特許文献2も、背もたれ部が所定の角度に後傾するまでは、ヘッドガード部を背もたれ部と実質的に一平面に維持し、所定の角度から略寝かせた状態に後傾するまでは、ヘッドガード部を背もたれ部の上方端から立ち上がった状態にもたらす、育児器具を開示する。
【0004】
特許文献2ヘッドガード部のヒンジ部側に当接ピンを設け、この当接ピンを収容する凹部を用いて、ヘッドガード部と背もたれ部との位置関係を制御している。
【特許文献1】特許第3385118号公報(段落番号0009〜0013、および図18等)
【特許文献2】特開2001−97228号公報(段落番号0004および図4等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の乳母車等のリクライニング機構は上記のように構成されていた。特許文献1によれば、背もたれ部とヘッドガード部との接続部の構成が複雑で、多くの部品を要するという問題があった。
【0006】
また、特許文献2によれば、背もたれ部の傾斜を調節する角度調節プレートが、背もたれ部の中央部において大きな面積を占めるため、背もたれ部に複数の換気用の貫通穴を設けた場合に、角度調節プレートによって、複数の貫通孔が塞がれてしまい、背もたれ部の換気が困難になりうる、という問題があった。
【0007】
この発明は、上記のような従来の課題に鑑みてなされたもので、構成が簡単で且つ背もたれ部の換気が十分確保できる乳母車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
乳母車は、座部と、座部の後方端から立上がり、傾斜角度を変更可能に設けられた背もたれ部と、背もたれ部の上方端に回動可能に連結されたヘッドガード部と、ヘッドガード部を、背もたれ部の延在する方向に延在するように付勢する付勢手段と、ヘッドガード部を背もたれ部に対して立上げる立上げ手段とを含む。立上げ手段は、背もたれ部の背面に設けられ、背もたれ部の回転中心を中心にその中心が移動可能で且つ、その中心を軸としてそれ自身が回転可能な回転部材と、回転部材とヘッドガード部とを連結するロッド棒と、背もたれ部が所定の傾斜角度になると、回転部材自身の回転を禁止する禁止手段とを含み、それによって、背もたれ部の傾斜角度が所定の傾斜角度になるまでは、ロッド棒は、付勢手段の付勢力によって回転部材側に押され、回転部材はその中心を軸に回転されることによって、ヘッドガード部は背もたれ部の延在する方向に延在し、所定の傾斜角度になると、回転部材の回転が禁止され、ロッド棒は、付勢手段の付勢力に抗してヘッドガード部を背もたれ部に対して立上げる。
【0009】
背もたれ部の傾斜角度が所定の傾斜角度になるまでは、ロッド棒は、付勢手段の付勢力によって回転部材側に押され、回転部材はその中心を軸に回転されることによって、ヘッドガード部は背もたれ部の延在する方向に延在する。一方、背もたれ部が所定の傾斜角度になると、回転部材の回転が禁止され、ロッド棒は、付勢手段の付勢力に抗してヘッドガード部を背もたれ部に対して立上げる。したがって、背もたれ部に複雑な構成を設けることなく、少ない部品で、背もたれ部が所定の傾斜角度を超えるとヘッドガード部を背もたれ部に対して立上げうる乳母車を提供できる。
【0010】
その結果、構成が簡単で且つ背もたれ部の換気が十分確保できる乳母車を提供できる。
【0011】
好ましくは、禁止手段は、回転部材と一体化された作動部材と、背もたれ部の背面に設けられ、背もたれ部が前記所定の傾斜角度になったとき、作動部材に当接する、当接部材とを含む。
【0012】
さらに好ましくは、回転部材と作動部材とは、回転部材自身の回転軸を挟んで、相互に反対方向に設けられる。
【0013】
この発明の一実施の形態によれば、背もたれ部の変更された傾斜角度を固定するための傾斜角度固定手段をさらに含む。
【0014】
傾斜角度固定手段は、所定の複数の段階に背もたれ部の傾斜角度を固定するのが好ましい。
【0015】
さらに好ましくは、傾斜角度固定手段が所定の複数の段階のいずれか1つに背もたれ部の傾斜角度を固定したとき、背もたれ部の傾斜角度が所定の傾斜角度になる。
【0016】
背もたれ部には、複数の通気孔が設けられてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の一実施の形態に係る乳母車を図面を参照して説明する。図1および図2は、この発明の一実施例に係る座席11を備える乳母車10を示す斜視図である。座席11は、座部13と、座部13の後方端から立ち上がりかつ傾斜角度を変更可能に設けられた背もたれ部14と、背もたれ部14の上方端に回動可能に連結されたヘッドガード部15と、背もたれ部14の両側方端から立ち上がる1対のサイドガード部16とを備える。図1では、背もたれ部14が最も立ち上がった状態にあり、また、ヘッドガード部15が背もたれ部14と実質的に一平面上に並ぶ状態にある。他方、図2では、背もたれ部14が最も倒れた状態にあり、また、ヘッドガード部15は、背もたれ部14の上方端から立ち上がった状態にある。
【0018】
このような座席11の表面は、たとえば布のような可撓性のカバーシートによって与えられる。カバーシートには、好ましくは、適当なクッション材が付加される。このようなカバーシートを取除いた状態が、図3および図4に示されている。図3は、図1に対応し、図4は、図2に対応する。
【0019】
なお、乳母車10はサイドガード部16を含めて、折り畳み可能であるが、ここでは、理解の容易のために、サイドガード部16を含めて、以下においては、折り畳みのための構成についてはその記載を省略する。
【0020】
図3および図4を参照して、座部13、背もたれ部14、およびヘッドガード部15は、それぞれ、剛性の比較的高い材料からなる、座板24、背もたれ板25およびヘッドガード板26を備え、これらの板24〜26によって各々の形状が維持される。
【0021】
背もたれ板25とヘッドガード板26とはヒンジ接続される。これらのヒンジ接続には、たとえば、繰返し屈曲可能な可撓性シート材料からなるヒンジテープが用いられてもよい。ヒンジテープは、接着、粘着または溶着等の方法により、所定の箇所に貼着される。
【0022】
図5は、この実施の形態に係る乳母車10の側面図である。図5を参照して、乳母車10の座席11は、乳母車10を移動するための押棒12に接続された手摺ジョイント21によって保持される。手摺ジョイント21は、押棒12とともに、手摺19や前後の脚17,18を支持する。
【0023】
図5には、図1に示した座席11の背もたれ部15が立ち上がった状態(実線で示す)と、図2に示した最も寝かされた状態(一点鎖線で示す)とが示されている。この実施の形態においては、背もたれ部14は4段階にリクライニング可能であるが、その各段階を規定するための位置決めを行なう背座ブラケット22が手摺ジョイント21に取付けられている。
【0024】
図6は図5においてVI−VIで示す部分の矢視図であり、背もたれ板25およびヘッドガード部26の背面側を示し、図7は図5に示した背座ブラケット22回りの拡大図であり、図8は、図6で示した部分の斜視図である。なお、図7においては、背もたれ板25回りを実線で、背座ブラケット22を一点鎖線で、手摺ジョイント21を点線でそれぞれ示している。また図8においては、手摺ジョイントは省略し、背もたれ板25、ヘッドガード部26の略半分のみを示している。
【0025】
図6から図8を参照して、背もたれ板25に対するヘッドガード板26の立上がり動作を行なう機構(立上げ手段)について説明する。背もたれ板25の背面には、背もたれ板25の変更された傾斜角度を固定するための傾斜角度固定手段の一部として、リクライニングレバー27が設けられている。リクライニングレバー27は固定部材28と、移動部材29と、移動部材29に設けられた貫通孔を介して延びるリクライニングロック棒30とを含む。リクライニングロック棒30は、移動部材29に設けられた貫通孔を貫通して延びる左右のリクライニングロック棒30a,30bと、リクライニングロック棒30a,30bに対してヒンジ36aを介して接続されたリクライニングロック棒30cとを含む。リクライニングロック棒30cは、リクライニングロック棒支持部31に設けられた貫通孔を貫通して横方向に延びる。なお、ここでは、一方のリクライニングロック棒30aについてのみ図示し、他方については省略している。
【0026】
リクライニングロック棒30a,30bは移動部材29を固定部材28側へ移動したとき(図8において矢印Aで示す)、矢印Bで示す方向に相互に近接し、ヒンジ36aおよび37により、リクライニングロック棒30cは、図8において矢印Cで示す方向に移動可能である。
【0027】
一方、手摺ジョイント21の内側(背もたれ板25の存在する側)には、背座ブラケット22が設けられている。背座ブラケット22は図7に示すようにほぼ半円形状をしており、その外周部に4つの穴22a〜22dが設けられている。リクライニングレバー27を操作することにより、リクライニングロック棒30cの横方向への突出寸法を調整して、リクライニング棒支持部31を介して、背座ブラケット22のこれらの4つの穴のいずれかに挿入可能としている。図6〜8に示した状態では、リクライニングロック棒30cは、穴22aに係合している。以上の各部材で傾斜角度固定手段が構成されている。
【0028】
なお、背もたれ板25は、背座ブラケット22によって保持された背もたれ板回転軸34を中心として、リクライニングされる。
【0029】
また、ヘッドガード板26の背もたれ板25との接続部の近傍の両側には、背もたれ板25の延びる方向に沿ってヘッドガード板26が延びるように付勢する(図8において矢印Dで示す)付勢手段として作動する、バネ42が設けられている。
【0030】
一方、背もたれ板25の下端部の中央部には、図示のない支持部によって背もたれ板25の背面に保持された軸48を中心に回転可能なリクライニングブラケット45が設けられている。すなわち、リクライニングブラケット45は、軸48が背もたれ板回転軸34を中心に回転するとともに、それ自身が軸48を中心に回転可能である。リクライニングブラケット45は回転部材として作動し、ロッド棒33を保持するロッド棒保持部材47と、ロッド棒保持部材47に対して、軸48を中心として、その反対方向に「ハ」の字状に延びる作動部材46とを含む。
【0031】
ロッド棒33はリクライニングブラケット45とヘッドガード部26の下端部とを接続し、図7に最も良く示されているように、その下部で多少下方向に曲げられている。図8に最もよく示されているように、ロッド棒33はその上端部において横方向に曲げられ、上端支持部44a、44bでヘッドガード板26の下端中央部に支持されている。
【0032】
一方、背もたれ板25の下部中央には、ほぼ直方体状の当接部材50が設けられている。当接部材50は、後に説明するように、背もたれ板25が所定の傾斜角度になると、リクライニングブラケット自身の回転を禁止する禁止手段の一部を構成する。なお、当接部材50の上表面にはリクライニングブラケット45の外形である円筒形状に面接触するように、円筒状の溝が設けられている。
【0033】
図7において最もよく示されているように、背もたれ板25が最も立ち上がった状態では、リクライニングロック棒30cが、半円形状の背座ブラケット22に設けられた4つの穴22a〜22Dの内、最も底辺(図7において符号35で示す)に近い位置にある穴22aと係合しているため、リクライニングブラケット45と、当接部材50との間は大きく開いている。
【0034】
なお、図6(図8にも一部)に示されているように、背もたれ板25には通気孔41が複数設けられている。これらの通気孔41に適合するように、図示のない、同一の通気孔を有する遮蔽板が設けられ、この遮蔽板を移動することによって、通気孔41の開口寸法を調整することができる。この通気孔の調整は、調整部材40を操作することによって行なう。また、図6においては、通気孔41はその約左半分のみを示しているが、通気孔は背もたれ板25の全面に設けられている。
【0035】
図6において、最もよく示されているように、この実施の形態によるリクライニング機構は、リクライニングレバー27も、リクライニングロック棒30a〜30cも、ロッド棒33も、全て棒状部材を用いているため、背もたれ板25の全面に設けられた通気孔41を塞ぐことはない。その結果、座席のリクライニングが可能でありながら、通気孔を確保できる。
【0036】
次に、この状態から背もたれ板25の傾斜角度を最も倒れた状態まで順次寝かせて行く場合について説明する。図9から図12は、背もたれ板25の傾斜角度を緩やかにするために、リクライニングレバー27を操作してリクライニングロック棒30cを背座ブラケット22の4つの穴22a〜22dに順次係合させた場合の背座ブラケット22と背もたれ板25との関係を示す図である。
【0037】
図9は図6〜図8に示した状態と同じ状態を示す背座ブラケット22と背もたれ板25とを示す側面図である。図10は、リクライニングロック棒30cを背座ブラケット22の穴22bに係合させた場合の背座ブラケット22と背もたれ板25との関係を示す図であり、図11は、リクライニングロック棒30cを背座ブラケット22の穴22cに係合させた場合の背座ブラケット22と背もたれ板25との関係を示す図であり、図12は、リクライニングロック棒30cを背座ブラケット22の穴22dに係合させた場合の背座ブラケット22と背もたれ板25との関係を示す図である。図9から図11に示すように、係合穴を22a〜22cまで移動させても、ヘッドガード板26は背もたれ板25と同じ平面を維持する。これは、上記したように、この間では、背もたれ板25の傾斜角度が高く、所定の傾斜角度に達していないため、図9から図11に示すように、リクライニングブラケット45が当接部材50と当接せず、ロッド棒33は、バネ42の付勢力によってリクライニングブラケット45側に押され、リクライニングブラケット45はその回転軸48を中心に回転されることによって、ヘッドガード板26は背もたれ板25の延在する方向に延在するためである。
【0038】
しかしながら、この間においても、図9〜図11に示すように、背もたれ板25の傾斜が低くなるにつれて、ロッド棒33がリクライニングブラケット45のロッド棒保持部材47を下方向に押して、回転軸48を中心にして回転させるため、作動部材46が図7において矢印Eで示すように回転し、当接部材50に近づいて、両者の間隔は徐々に狭くなる。
【0039】
こうして、リクライニングロック棒30cを背座ブラケット22の穴22dに係合させると、図12に示すように、リクライニングブラケット45の作動部材46と当接部材50とが平面的に当接する。この背もたれ部の傾斜角度が所定の傾斜角度に対応する。ここで、作動部材46と当接部材50とは、背もたれ板25が所定の傾斜角度になったときにリクライニングブラケット45の回転を禁止する禁止手段として作動する。この場合の図7に対応する拡大図を図13に示す。
【0040】
リクライニングブラケット45の作動部材46と、当接部材50とが当接すると、その当接が線接触のレベルであれば、未だバネ42の、背もたれ板25とヘッドガード板26との平面を保持しようとする付勢力のほうがロッド棒33を介してヘッドガード板26を押し上げる力より強いため、ヘッドガード板26は立ち上がった状態を維持する。
【0041】
しかしながら、図12および図13に示すように、作動部材46と当接部材50とが面で当接するようになると、ロッド棒33を介してヘッドガード板26を押し上げる力の方がバネ42の付勢力よりも強くなり、ヘッドガード板26は背もたれ板25に対して立ち上がる。
【0042】
すなわち、この発明においては、背もたれ板25の傾斜角度が所定の傾斜角度になるまでは、ロッド棒33は、バネ42の付勢力によってリクライニングブラケット45側に押され、リクライニングブラケット45はその中心を軸に回転されることによって、ヘッドガード板26は背もたれ板25の延在する方向に延在する。一方、背もたれ板25が所定の傾斜角度になると、リクライニングブラケット45の回転が禁止され、ロッド棒33は、バネ42の付勢力に抗してヘッドガード板26を背もたれ板25に対して立上げる。
【0043】
なお、ヘッドガード板26を背もたれ板25に対して同じ平面戻すには、傾斜角度固定手段を構成する、リクライニングロッド棒30cと背座ブラケットに設けられた穴との係合位置を22a〜22cのいずれかに変えるだけでよい。
【0044】
このようにして、この発明においては、簡単な構成で、背もたれ部が最も立ち上がった状態から、所定の角度までは、背もたれ部とヘッドガード部とは同じ平面上に位置し、所定の角度を超えると、ヘッドガード部が背もたれ部に対して立ち上がる構成が得られる。
【0045】
また、背もたれ部の背面には、ロッド棒、リクライニングレバーおよびリクライニングロック棒等しか設けられないため、通気孔を塞ぐことはない。その結果、簡単な構成で且つ通気性を確保できる乳母車のリクライニング機構を提供できる。
【0046】
なお、上記実施の形態においては、回転部材として所定の回転軸を中心として回転可能な、「ハ」の字型のリクライニングブラケットを設けた例に付いて説明したが、これに限らず、回転部材を円板状等の任意の形状として、その一部に当接部材と当接して禁止手段を構成する突起部を設けてもよいし、リンク機構としてもよい。
【0047】
また、背もたれ板の背面に当接部材を設けた場合に付いて説明したが、これに限らず、当接部材を設けることなく、回転部材に設けた突起部等を直接背もたれ板に当接させてもよい。
【0048】
また、上記実施の形態においては、ロッド棒を中央部に1本設けた例に付いて説明下が、これに限らず、背もたれ板の側部に設けてもよいし、両サイドに各1本設けても良い。
【0049】
また、回転部材であるリクライニングブラケットと当接部材とを背もたれ板の中央部に設けたが、これも所望の位置に設けても良い。
【0050】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】この発明の一実施の形態に係るリクライニング機構が組み込まれた乳母車において、背もたれ部を最も立ち上げた状態を示す斜視図である。
【図2】この発明の一実施の形態に係るリクライニング機構が組み込まれた乳母車において、背もたれ部が最も倒れた状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示した乳母車において、カバーシートを取除いた状態を示す図である。
【図4】図2に示した乳母車において、カバーシートを取除いた状態を示す図である。
【図5】乳母車の側面図である。
【図6】図5においてVI−VIで示す部分の矢視図である。
【図7】乳母車の背座ブラケットの周囲を示す図である。
【図8】背もたれ板の背面部の斜視図である。
【図9】背もたれ板を最も立ち上げた状態における、背もたれ板とヘッドガード板とロッド棒および背座ブラケットとの位置関係を示す図である。
【図10】背もたれ板を最も立ち上げた状態から一段倒した場合における、背もたれ板とヘッドガード板とロッド棒および背座ブラケットとの位置関係を示す図である。
【図11】背もたれ板を最も立ち上げた状態から二段倒した場合における、背もたれ板とヘッドガード板とロッド棒および背座ブラケットとの位置関係を示す図である。
【図12】背もたれ板を最も倒した場合における、背もたれ板とヘッドガード板とロッド棒および背座ブラケットとの位置関係を示す図である。
【図13】図12に示す状態における図7に対応する図である。
【符号の説明】
【0052】
10 乳母車、11 座席、12 押棒、13 座部、14 背もたれ部、15 ヘッドガード部、16 サイドガード部、21 手摺ジョイント、22 背座ブラケット、25 ヘッドガード板、26 背もたれ板、27 リクライニングレバー、30 リクライニングロック棒、33 ロッド棒、34 背もたれ板回転軸、36,37, ヒンジ、41 通気孔、42 バネ、45 リクライニングブラケット、46 作動部材、47 ロッド棒保持部材、50 当接部材。
【技術分野】
【0001】
この発明は、乳母車のリクライニング機構に関し、特に、所定の傾斜角度でヘッドガード部の角度が変わる乳母車のリクライニング機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来乳母車のリクライニング機構が、たとえば、特許第3385118号公報(特許文献1)や、特開2001−97228号公報(特許文献2)に開示されている。特許文献1は、背もたれ部が比較的立ち上がった状態では、ヘッドガード部を前記背もたれ部と実質的に一平面上に並ぶ状態にもたらし、背もたれ部が最も倒れた状態では、ヘッドガード部を背もたれ部の上方端から立ち上がった状態にもたらすように制御する、制御部材とを備える乳母車を開示する。
【0003】
特許文献1においては、長穴とその長穴内で移動可能なピン、およびヘッドガード部に回動可能に連結された制御部材を用いて、ヘッドガード部と背もたれ部との位置関係を制御している。
特許文献2も、背もたれ部が所定の角度に後傾するまでは、ヘッドガード部を背もたれ部と実質的に一平面に維持し、所定の角度から略寝かせた状態に後傾するまでは、ヘッドガード部を背もたれ部の上方端から立ち上がった状態にもたらす、育児器具を開示する。
【0004】
特許文献2ヘッドガード部のヒンジ部側に当接ピンを設け、この当接ピンを収容する凹部を用いて、ヘッドガード部と背もたれ部との位置関係を制御している。
【特許文献1】特許第3385118号公報(段落番号0009〜0013、および図18等)
【特許文献2】特開2001−97228号公報(段落番号0004および図4等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の乳母車等のリクライニング機構は上記のように構成されていた。特許文献1によれば、背もたれ部とヘッドガード部との接続部の構成が複雑で、多くの部品を要するという問題があった。
【0006】
また、特許文献2によれば、背もたれ部の傾斜を調節する角度調節プレートが、背もたれ部の中央部において大きな面積を占めるため、背もたれ部に複数の換気用の貫通穴を設けた場合に、角度調節プレートによって、複数の貫通孔が塞がれてしまい、背もたれ部の換気が困難になりうる、という問題があった。
【0007】
この発明は、上記のような従来の課題に鑑みてなされたもので、構成が簡単で且つ背もたれ部の換気が十分確保できる乳母車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
乳母車は、座部と、座部の後方端から立上がり、傾斜角度を変更可能に設けられた背もたれ部と、背もたれ部の上方端に回動可能に連結されたヘッドガード部と、ヘッドガード部を、背もたれ部の延在する方向に延在するように付勢する付勢手段と、ヘッドガード部を背もたれ部に対して立上げる立上げ手段とを含む。立上げ手段は、背もたれ部の背面に設けられ、背もたれ部の回転中心を中心にその中心が移動可能で且つ、その中心を軸としてそれ自身が回転可能な回転部材と、回転部材とヘッドガード部とを連結するロッド棒と、背もたれ部が所定の傾斜角度になると、回転部材自身の回転を禁止する禁止手段とを含み、それによって、背もたれ部の傾斜角度が所定の傾斜角度になるまでは、ロッド棒は、付勢手段の付勢力によって回転部材側に押され、回転部材はその中心を軸に回転されることによって、ヘッドガード部は背もたれ部の延在する方向に延在し、所定の傾斜角度になると、回転部材の回転が禁止され、ロッド棒は、付勢手段の付勢力に抗してヘッドガード部を背もたれ部に対して立上げる。
【0009】
背もたれ部の傾斜角度が所定の傾斜角度になるまでは、ロッド棒は、付勢手段の付勢力によって回転部材側に押され、回転部材はその中心を軸に回転されることによって、ヘッドガード部は背もたれ部の延在する方向に延在する。一方、背もたれ部が所定の傾斜角度になると、回転部材の回転が禁止され、ロッド棒は、付勢手段の付勢力に抗してヘッドガード部を背もたれ部に対して立上げる。したがって、背もたれ部に複雑な構成を設けることなく、少ない部品で、背もたれ部が所定の傾斜角度を超えるとヘッドガード部を背もたれ部に対して立上げうる乳母車を提供できる。
【0010】
その結果、構成が簡単で且つ背もたれ部の換気が十分確保できる乳母車を提供できる。
【0011】
好ましくは、禁止手段は、回転部材と一体化された作動部材と、背もたれ部の背面に設けられ、背もたれ部が前記所定の傾斜角度になったとき、作動部材に当接する、当接部材とを含む。
【0012】
さらに好ましくは、回転部材と作動部材とは、回転部材自身の回転軸を挟んで、相互に反対方向に設けられる。
【0013】
この発明の一実施の形態によれば、背もたれ部の変更された傾斜角度を固定するための傾斜角度固定手段をさらに含む。
【0014】
傾斜角度固定手段は、所定の複数の段階に背もたれ部の傾斜角度を固定するのが好ましい。
【0015】
さらに好ましくは、傾斜角度固定手段が所定の複数の段階のいずれか1つに背もたれ部の傾斜角度を固定したとき、背もたれ部の傾斜角度が所定の傾斜角度になる。
【0016】
背もたれ部には、複数の通気孔が設けられてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の一実施の形態に係る乳母車を図面を参照して説明する。図1および図2は、この発明の一実施例に係る座席11を備える乳母車10を示す斜視図である。座席11は、座部13と、座部13の後方端から立ち上がりかつ傾斜角度を変更可能に設けられた背もたれ部14と、背もたれ部14の上方端に回動可能に連結されたヘッドガード部15と、背もたれ部14の両側方端から立ち上がる1対のサイドガード部16とを備える。図1では、背もたれ部14が最も立ち上がった状態にあり、また、ヘッドガード部15が背もたれ部14と実質的に一平面上に並ぶ状態にある。他方、図2では、背もたれ部14が最も倒れた状態にあり、また、ヘッドガード部15は、背もたれ部14の上方端から立ち上がった状態にある。
【0018】
このような座席11の表面は、たとえば布のような可撓性のカバーシートによって与えられる。カバーシートには、好ましくは、適当なクッション材が付加される。このようなカバーシートを取除いた状態が、図3および図4に示されている。図3は、図1に対応し、図4は、図2に対応する。
【0019】
なお、乳母車10はサイドガード部16を含めて、折り畳み可能であるが、ここでは、理解の容易のために、サイドガード部16を含めて、以下においては、折り畳みのための構成についてはその記載を省略する。
【0020】
図3および図4を参照して、座部13、背もたれ部14、およびヘッドガード部15は、それぞれ、剛性の比較的高い材料からなる、座板24、背もたれ板25およびヘッドガード板26を備え、これらの板24〜26によって各々の形状が維持される。
【0021】
背もたれ板25とヘッドガード板26とはヒンジ接続される。これらのヒンジ接続には、たとえば、繰返し屈曲可能な可撓性シート材料からなるヒンジテープが用いられてもよい。ヒンジテープは、接着、粘着または溶着等の方法により、所定の箇所に貼着される。
【0022】
図5は、この実施の形態に係る乳母車10の側面図である。図5を参照して、乳母車10の座席11は、乳母車10を移動するための押棒12に接続された手摺ジョイント21によって保持される。手摺ジョイント21は、押棒12とともに、手摺19や前後の脚17,18を支持する。
【0023】
図5には、図1に示した座席11の背もたれ部15が立ち上がった状態(実線で示す)と、図2に示した最も寝かされた状態(一点鎖線で示す)とが示されている。この実施の形態においては、背もたれ部14は4段階にリクライニング可能であるが、その各段階を規定するための位置決めを行なう背座ブラケット22が手摺ジョイント21に取付けられている。
【0024】
図6は図5においてVI−VIで示す部分の矢視図であり、背もたれ板25およびヘッドガード部26の背面側を示し、図7は図5に示した背座ブラケット22回りの拡大図であり、図8は、図6で示した部分の斜視図である。なお、図7においては、背もたれ板25回りを実線で、背座ブラケット22を一点鎖線で、手摺ジョイント21を点線でそれぞれ示している。また図8においては、手摺ジョイントは省略し、背もたれ板25、ヘッドガード部26の略半分のみを示している。
【0025】
図6から図8を参照して、背もたれ板25に対するヘッドガード板26の立上がり動作を行なう機構(立上げ手段)について説明する。背もたれ板25の背面には、背もたれ板25の変更された傾斜角度を固定するための傾斜角度固定手段の一部として、リクライニングレバー27が設けられている。リクライニングレバー27は固定部材28と、移動部材29と、移動部材29に設けられた貫通孔を介して延びるリクライニングロック棒30とを含む。リクライニングロック棒30は、移動部材29に設けられた貫通孔を貫通して延びる左右のリクライニングロック棒30a,30bと、リクライニングロック棒30a,30bに対してヒンジ36aを介して接続されたリクライニングロック棒30cとを含む。リクライニングロック棒30cは、リクライニングロック棒支持部31に設けられた貫通孔を貫通して横方向に延びる。なお、ここでは、一方のリクライニングロック棒30aについてのみ図示し、他方については省略している。
【0026】
リクライニングロック棒30a,30bは移動部材29を固定部材28側へ移動したとき(図8において矢印Aで示す)、矢印Bで示す方向に相互に近接し、ヒンジ36aおよび37により、リクライニングロック棒30cは、図8において矢印Cで示す方向に移動可能である。
【0027】
一方、手摺ジョイント21の内側(背もたれ板25の存在する側)には、背座ブラケット22が設けられている。背座ブラケット22は図7に示すようにほぼ半円形状をしており、その外周部に4つの穴22a〜22dが設けられている。リクライニングレバー27を操作することにより、リクライニングロック棒30cの横方向への突出寸法を調整して、リクライニング棒支持部31を介して、背座ブラケット22のこれらの4つの穴のいずれかに挿入可能としている。図6〜8に示した状態では、リクライニングロック棒30cは、穴22aに係合している。以上の各部材で傾斜角度固定手段が構成されている。
【0028】
なお、背もたれ板25は、背座ブラケット22によって保持された背もたれ板回転軸34を中心として、リクライニングされる。
【0029】
また、ヘッドガード板26の背もたれ板25との接続部の近傍の両側には、背もたれ板25の延びる方向に沿ってヘッドガード板26が延びるように付勢する(図8において矢印Dで示す)付勢手段として作動する、バネ42が設けられている。
【0030】
一方、背もたれ板25の下端部の中央部には、図示のない支持部によって背もたれ板25の背面に保持された軸48を中心に回転可能なリクライニングブラケット45が設けられている。すなわち、リクライニングブラケット45は、軸48が背もたれ板回転軸34を中心に回転するとともに、それ自身が軸48を中心に回転可能である。リクライニングブラケット45は回転部材として作動し、ロッド棒33を保持するロッド棒保持部材47と、ロッド棒保持部材47に対して、軸48を中心として、その反対方向に「ハ」の字状に延びる作動部材46とを含む。
【0031】
ロッド棒33はリクライニングブラケット45とヘッドガード部26の下端部とを接続し、図7に最も良く示されているように、その下部で多少下方向に曲げられている。図8に最もよく示されているように、ロッド棒33はその上端部において横方向に曲げられ、上端支持部44a、44bでヘッドガード板26の下端中央部に支持されている。
【0032】
一方、背もたれ板25の下部中央には、ほぼ直方体状の当接部材50が設けられている。当接部材50は、後に説明するように、背もたれ板25が所定の傾斜角度になると、リクライニングブラケット自身の回転を禁止する禁止手段の一部を構成する。なお、当接部材50の上表面にはリクライニングブラケット45の外形である円筒形状に面接触するように、円筒状の溝が設けられている。
【0033】
図7において最もよく示されているように、背もたれ板25が最も立ち上がった状態では、リクライニングロック棒30cが、半円形状の背座ブラケット22に設けられた4つの穴22a〜22Dの内、最も底辺(図7において符号35で示す)に近い位置にある穴22aと係合しているため、リクライニングブラケット45と、当接部材50との間は大きく開いている。
【0034】
なお、図6(図8にも一部)に示されているように、背もたれ板25には通気孔41が複数設けられている。これらの通気孔41に適合するように、図示のない、同一の通気孔を有する遮蔽板が設けられ、この遮蔽板を移動することによって、通気孔41の開口寸法を調整することができる。この通気孔の調整は、調整部材40を操作することによって行なう。また、図6においては、通気孔41はその約左半分のみを示しているが、通気孔は背もたれ板25の全面に設けられている。
【0035】
図6において、最もよく示されているように、この実施の形態によるリクライニング機構は、リクライニングレバー27も、リクライニングロック棒30a〜30cも、ロッド棒33も、全て棒状部材を用いているため、背もたれ板25の全面に設けられた通気孔41を塞ぐことはない。その結果、座席のリクライニングが可能でありながら、通気孔を確保できる。
【0036】
次に、この状態から背もたれ板25の傾斜角度を最も倒れた状態まで順次寝かせて行く場合について説明する。図9から図12は、背もたれ板25の傾斜角度を緩やかにするために、リクライニングレバー27を操作してリクライニングロック棒30cを背座ブラケット22の4つの穴22a〜22dに順次係合させた場合の背座ブラケット22と背もたれ板25との関係を示す図である。
【0037】
図9は図6〜図8に示した状態と同じ状態を示す背座ブラケット22と背もたれ板25とを示す側面図である。図10は、リクライニングロック棒30cを背座ブラケット22の穴22bに係合させた場合の背座ブラケット22と背もたれ板25との関係を示す図であり、図11は、リクライニングロック棒30cを背座ブラケット22の穴22cに係合させた場合の背座ブラケット22と背もたれ板25との関係を示す図であり、図12は、リクライニングロック棒30cを背座ブラケット22の穴22dに係合させた場合の背座ブラケット22と背もたれ板25との関係を示す図である。図9から図11に示すように、係合穴を22a〜22cまで移動させても、ヘッドガード板26は背もたれ板25と同じ平面を維持する。これは、上記したように、この間では、背もたれ板25の傾斜角度が高く、所定の傾斜角度に達していないため、図9から図11に示すように、リクライニングブラケット45が当接部材50と当接せず、ロッド棒33は、バネ42の付勢力によってリクライニングブラケット45側に押され、リクライニングブラケット45はその回転軸48を中心に回転されることによって、ヘッドガード板26は背もたれ板25の延在する方向に延在するためである。
【0038】
しかしながら、この間においても、図9〜図11に示すように、背もたれ板25の傾斜が低くなるにつれて、ロッド棒33がリクライニングブラケット45のロッド棒保持部材47を下方向に押して、回転軸48を中心にして回転させるため、作動部材46が図7において矢印Eで示すように回転し、当接部材50に近づいて、両者の間隔は徐々に狭くなる。
【0039】
こうして、リクライニングロック棒30cを背座ブラケット22の穴22dに係合させると、図12に示すように、リクライニングブラケット45の作動部材46と当接部材50とが平面的に当接する。この背もたれ部の傾斜角度が所定の傾斜角度に対応する。ここで、作動部材46と当接部材50とは、背もたれ板25が所定の傾斜角度になったときにリクライニングブラケット45の回転を禁止する禁止手段として作動する。この場合の図7に対応する拡大図を図13に示す。
【0040】
リクライニングブラケット45の作動部材46と、当接部材50とが当接すると、その当接が線接触のレベルであれば、未だバネ42の、背もたれ板25とヘッドガード板26との平面を保持しようとする付勢力のほうがロッド棒33を介してヘッドガード板26を押し上げる力より強いため、ヘッドガード板26は立ち上がった状態を維持する。
【0041】
しかしながら、図12および図13に示すように、作動部材46と当接部材50とが面で当接するようになると、ロッド棒33を介してヘッドガード板26を押し上げる力の方がバネ42の付勢力よりも強くなり、ヘッドガード板26は背もたれ板25に対して立ち上がる。
【0042】
すなわち、この発明においては、背もたれ板25の傾斜角度が所定の傾斜角度になるまでは、ロッド棒33は、バネ42の付勢力によってリクライニングブラケット45側に押され、リクライニングブラケット45はその中心を軸に回転されることによって、ヘッドガード板26は背もたれ板25の延在する方向に延在する。一方、背もたれ板25が所定の傾斜角度になると、リクライニングブラケット45の回転が禁止され、ロッド棒33は、バネ42の付勢力に抗してヘッドガード板26を背もたれ板25に対して立上げる。
【0043】
なお、ヘッドガード板26を背もたれ板25に対して同じ平面戻すには、傾斜角度固定手段を構成する、リクライニングロッド棒30cと背座ブラケットに設けられた穴との係合位置を22a〜22cのいずれかに変えるだけでよい。
【0044】
このようにして、この発明においては、簡単な構成で、背もたれ部が最も立ち上がった状態から、所定の角度までは、背もたれ部とヘッドガード部とは同じ平面上に位置し、所定の角度を超えると、ヘッドガード部が背もたれ部に対して立ち上がる構成が得られる。
【0045】
また、背もたれ部の背面には、ロッド棒、リクライニングレバーおよびリクライニングロック棒等しか設けられないため、通気孔を塞ぐことはない。その結果、簡単な構成で且つ通気性を確保できる乳母車のリクライニング機構を提供できる。
【0046】
なお、上記実施の形態においては、回転部材として所定の回転軸を中心として回転可能な、「ハ」の字型のリクライニングブラケットを設けた例に付いて説明したが、これに限らず、回転部材を円板状等の任意の形状として、その一部に当接部材と当接して禁止手段を構成する突起部を設けてもよいし、リンク機構としてもよい。
【0047】
また、背もたれ板の背面に当接部材を設けた場合に付いて説明したが、これに限らず、当接部材を設けることなく、回転部材に設けた突起部等を直接背もたれ板に当接させてもよい。
【0048】
また、上記実施の形態においては、ロッド棒を中央部に1本設けた例に付いて説明下が、これに限らず、背もたれ板の側部に設けてもよいし、両サイドに各1本設けても良い。
【0049】
また、回転部材であるリクライニングブラケットと当接部材とを背もたれ板の中央部に設けたが、これも所望の位置に設けても良い。
【0050】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】この発明の一実施の形態に係るリクライニング機構が組み込まれた乳母車において、背もたれ部を最も立ち上げた状態を示す斜視図である。
【図2】この発明の一実施の形態に係るリクライニング機構が組み込まれた乳母車において、背もたれ部が最も倒れた状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示した乳母車において、カバーシートを取除いた状態を示す図である。
【図4】図2に示した乳母車において、カバーシートを取除いた状態を示す図である。
【図5】乳母車の側面図である。
【図6】図5においてVI−VIで示す部分の矢視図である。
【図7】乳母車の背座ブラケットの周囲を示す図である。
【図8】背もたれ板の背面部の斜視図である。
【図9】背もたれ板を最も立ち上げた状態における、背もたれ板とヘッドガード板とロッド棒および背座ブラケットとの位置関係を示す図である。
【図10】背もたれ板を最も立ち上げた状態から一段倒した場合における、背もたれ板とヘッドガード板とロッド棒および背座ブラケットとの位置関係を示す図である。
【図11】背もたれ板を最も立ち上げた状態から二段倒した場合における、背もたれ板とヘッドガード板とロッド棒および背座ブラケットとの位置関係を示す図である。
【図12】背もたれ板を最も倒した場合における、背もたれ板とヘッドガード板とロッド棒および背座ブラケットとの位置関係を示す図である。
【図13】図12に示す状態における図7に対応する図である。
【符号の説明】
【0052】
10 乳母車、11 座席、12 押棒、13 座部、14 背もたれ部、15 ヘッドガード部、16 サイドガード部、21 手摺ジョイント、22 背座ブラケット、25 ヘッドガード板、26 背もたれ板、27 リクライニングレバー、30 リクライニングロック棒、33 ロッド棒、34 背もたれ板回転軸、36,37, ヒンジ、41 通気孔、42 バネ、45 リクライニングブラケット、46 作動部材、47 ロッド棒保持部材、50 当接部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部と、
前記座部の後方端から立上がり、傾斜角度を変更可能に設けられた背もたれ部と、
前記背もたれ部の上方端に回動可能に連結されたヘッドガード部と、
前記ヘッドガード部を、前記背もたれ部の延在する方向に延在するように付勢する付勢手段と、
前記ヘッドガード部を前記背もたれ部に対して立上げる立上げ手段とを含み、
前記立上げ手段は、
前記背もたれ部の背面に設けられ、前記背もたれ部の回転中心を中心にその中心が移動可能で且つ、その中心を軸としてそれ自身が回転可能な回転部材と、
前記回転部材と前記ヘッドガード部とを連結するロッド棒と、
前記背もたれ部が所定の傾斜角度になると、前記回転部材自身の回転を禁止する禁止手段とを含み、
それによって、前記背もたれ部の傾斜角度が前記所定の傾斜角度になるまでは、前記ロッド棒は、前記付勢手段の付勢力によって前記回転部材側に押され、前記回転部材はその中心を軸に回転されることによって、前記ヘッドガード部は前記背もたれ部の延在する方向に延在し、前記所定の傾斜角度になると、前記回転部材の回転が禁止され、前記ロッド棒は、前記付勢手段の付勢力に抗して前記ヘッドガード部を前記背もたれ部に対して立上げる、乳母車。
【請求項2】
前記禁止手段は、前記回転部材と一体化された作動部材と、前記背もたれ部の背面に設けられ、前記背もたれ部が前記所定の傾斜角度になったとき、前記作動部材に当接する、当接部材とを含む、請求項1に記載の乳母車。
【請求項3】
前記回転部材と作動部材とは、前記回転部材自身の回転軸を挟んで、相互に反対方向に設けられる、請求項1または2に記載の乳母車。
【請求項4】
前記背もたれ部の変更された傾斜角度を固定するための傾斜角度固定手段をさらに含む、請求項1から3のいずれかに記載の乳母車。
【請求項5】
前記傾斜角度固定手段は、所定の複数の段階に前記背もたれ部の傾斜角度を固定する、請求項4に記載の乳母車。
【請求項6】
前記傾斜角度固定手段が前記所定の複数の段階のいずれか1つに前記背もたれ部の傾斜角度を固定したとき、前記背もたれ部の傾斜角度が前記所定の傾斜角度になる、請求項4または5に記載の乳母車。
【請求項7】
前記背もたれ部には、複数の通気孔が設けられる、請求項1から6のいずれかに記載の乳母車。
【請求項1】
座部と、
前記座部の後方端から立上がり、傾斜角度を変更可能に設けられた背もたれ部と、
前記背もたれ部の上方端に回動可能に連結されたヘッドガード部と、
前記ヘッドガード部を、前記背もたれ部の延在する方向に延在するように付勢する付勢手段と、
前記ヘッドガード部を前記背もたれ部に対して立上げる立上げ手段とを含み、
前記立上げ手段は、
前記背もたれ部の背面に設けられ、前記背もたれ部の回転中心を中心にその中心が移動可能で且つ、その中心を軸としてそれ自身が回転可能な回転部材と、
前記回転部材と前記ヘッドガード部とを連結するロッド棒と、
前記背もたれ部が所定の傾斜角度になると、前記回転部材自身の回転を禁止する禁止手段とを含み、
それによって、前記背もたれ部の傾斜角度が前記所定の傾斜角度になるまでは、前記ロッド棒は、前記付勢手段の付勢力によって前記回転部材側に押され、前記回転部材はその中心を軸に回転されることによって、前記ヘッドガード部は前記背もたれ部の延在する方向に延在し、前記所定の傾斜角度になると、前記回転部材の回転が禁止され、前記ロッド棒は、前記付勢手段の付勢力に抗して前記ヘッドガード部を前記背もたれ部に対して立上げる、乳母車。
【請求項2】
前記禁止手段は、前記回転部材と一体化された作動部材と、前記背もたれ部の背面に設けられ、前記背もたれ部が前記所定の傾斜角度になったとき、前記作動部材に当接する、当接部材とを含む、請求項1に記載の乳母車。
【請求項3】
前記回転部材と作動部材とは、前記回転部材自身の回転軸を挟んで、相互に反対方向に設けられる、請求項1または2に記載の乳母車。
【請求項4】
前記背もたれ部の変更された傾斜角度を固定するための傾斜角度固定手段をさらに含む、請求項1から3のいずれかに記載の乳母車。
【請求項5】
前記傾斜角度固定手段は、所定の複数の段階に前記背もたれ部の傾斜角度を固定する、請求項4に記載の乳母車。
【請求項6】
前記傾斜角度固定手段が前記所定の複数の段階のいずれか1つに前記背もたれ部の傾斜角度を固定したとき、前記背もたれ部の傾斜角度が前記所定の傾斜角度になる、請求項4または5に記載の乳母車。
【請求項7】
前記背もたれ部には、複数の通気孔が設けられる、請求項1から6のいずれかに記載の乳母車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−55462(P2007−55462A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−244077(P2005−244077)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(390006231)アップリカ育児研究会アップリカ▲葛▼西株式会社 (97)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(390006231)アップリカ育児研究会アップリカ▲葛▼西株式会社 (97)
【Fターム(参考)】
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