説明

乳酸菌及び下痢の予防におけるそれらの使用

本発明は、抗生物質と関連する下痢または「水あたり」のような、下痢の予防または治療のために有用な乳酸組成物に関する。本発明に係る組成物は、アシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)、アシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus) I-1492、カセイ菌(Lactobacillus casei)、及びそれらの混合物より選択される少なくとも1つの菌株を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下痢の予防における乳酸菌株の使用に関する。より具体的には、本発明は、抗生物質と関連する下痢(AAD)の予防のための乳酸菌の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
下痢は、感染のような一時的な問題、または腸疾患のような慢性的な問題によって引き起こされる可能性がある。下痢のより一般的な幾つかの原因を以下に挙げる:
・細菌感染:例えばカンピロバクター属(Campylobacter)、サルモネラ属(Salmonella)、赤痢菌属(Shigella)、及び大腸菌(Escherichia coli)のような、汚染された食料または水を介して摂取される、幾つかのタイプの細菌が下痢を引き起こすことができる。
・ウイルス感染:ロタウイルス、ノーウォークウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス、及び肝炎ウイルスを含む、多数のウイルスが下痢を引き起こす。
・寄生虫:寄生虫は食料または水を介して身体に浸入することができ、消化系に住み着く。下痢を引き起こす寄生虫は、ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、及びクリプトスポリジウム属(Cryptosporidium)を含む。
・抗生物質、血圧の医薬、及びマグネシウムを含有する制酸薬のような医薬に対する応答。
・炎症性腸疾患または腹腔疾患のような腸疾患。
・腸が正常に働かない、刺激反応性の腸症候群のような腸の機能不全。
【0003】
抗生物質による治療全体の約10%が、胃腸の副作用、特に抗生物質と関連する下痢(AAD)と称される下痢の原因である事が既知である。
【0004】
抗生物質の全ての群がAADを引き起こす可能性があるが、セファロスポリン、拡張達成範囲の(extended-coverage)ペニシリン、及びクリンダマイシンのような広範な達成範囲を有するものがAADの最も一般的な原因である。
【0005】
5から39%のAADの発生率は過去数年間で、特に広範な抗生物質の利用の増加に伴って上昇している(Bergogne-Berezin, 2000; McFarland, 1998; Spencer 1998)。AADの臨床的な症状は、無併発性の下痢から偽膜性大腸炎まで非常に可変的である。
【0006】
10から20%のケースのAADはクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile (C. difficile))感染によって引き起こされていることに注意するべきである(Bergogne-Berezin, 2000; Bartlett, 2002)。クロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)は嫌気性グラム陽性桿菌である。クロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)下痢は大部分が院内疾患であり、入院患者における下痢の最も頻度の高い原因である。外来患者における発生は、養護ホームに隔離されている患者以外では、それほど一般的ではない。
【0007】
クロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)下痢は、偽膜の存在下または非存在下における重度な大腸炎のケースを含む、この生物によって生産される強力な毒素によって引き起こされる広範な下痢疾患を記載するために使用される。
【0008】
大腸炎の所見のあるAADの多くのケースにおいて、及び偽膜を有する全てのAADにおいて、特に、この生物を単離することができる。この生物は環境下に広く存在し、かなりの期間生存する可能性がある。この生物は、糞-口経路によって感染しやすい個体に伝達する。この生物は乳児の正常な微生物叢の一部であると見なされ、約5%の健康な成人及び1/3以下の無症候または感染している入院患者において単離され得る。
【0009】
クロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)毒素A及びBの双方が、臨床的な発症の原因である強力なエンテロトキシン及び細胞毒性作用を示す。
【0010】
AAD、更に特にはクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile) AADは続いて、臨床的なレベルと共に金銭上のレベルにおいても重要な結果をもたらす:罹患率の増大、死亡率の増大、入院数の増大、並びに入院期間の増大(McFarland, 2002)。クロストリジウム・ディフィシル(C. difficile) AADの発生は、この下痢の感染特性を鑑みて、抗生物質治療を受けている患者だけでなく、同じ治療室に入院している他の患者にもリスクを提供することが認められている。
【0011】
疫学的な試験によって、AAD患者がその領域から移動した数週間後でさえ、床、ドアの取っ手、及び家具を含む病院の病室において、クロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)が多くの場合に単離されることが明らかにされている。それほど頻繁ではないが、同様の観察が、無症候性の医療関係者の間において、及び未感染患者に占められている病室において為されている。最近の入院後に再入院した患者はクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)感染の高い有病率を有する事が認められており、重要な感染源である。この生物の胞子を形成する特性のために、これら全ての観察は患者間の交差汚染、環境表面との接触、並びに医療関係者の手を介する伝達の重要な役割を示す。
【0012】
多数の抗生物質を使用してクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)大腸炎を治療している。かくして、AADに対する効果的な予防手段の開発が不可避であろう。
【0013】
乳酸菌
E, Metchnikoff (1845-1919)は、ブルガリア人の長寿及び健康は、発酵性乳製品の摂取によるものであると提言した科学者である。特定の細菌が生物に対して病原性であることはよく知られていた。かくして、安心して使用されてきたヨーグルト菌によって、これらの細菌を置き換えることが提案された。良好な乳酸菌を規定するために、多数の標準的な指針が確立されている。これらの基準では;それらは摂取される前にそれらの活性及び生存を維持しなければならない、それらは胃腸管で生存しなければならない、それらは腸において生存し、増殖できなければならない、及び最終的に有利な効果を生み出さなければならない。更に、前記微生物は病原性でも毒性でもあってはならない。
【0014】
生きている乳酸菌を介して腸内細菌叢を改変することによって健康状態を改善するために、多数の試みが為されている。今日、これらの乳酸菌の有利な効果はよく認識されており、その様な有利性に関する機構を説明するための試みが存在する。Salminenのチームは、免疫学的な調節及び腸粘膜障壁の増強のような化学的な根拠によって支持される最も重要な有利な効果を要約している。その様な有利性が何によるものであるか説明するために、各種の機構が提案されている:腸内細菌叢の改変、病原性細菌の付着または病原の活性化を妨げる機能を有する腸粘膜への付着、腸内細菌叢による食料のタンパク質の改変、細菌の酵素機能の改変、及び最終的には腸粘膜の透過性に対する影響。
【0015】
多数の試験によって、主に胃腸のミクロ生態学的な変化による乳酸菌及びヨーグルトの治療の可能性が示されている。乳酸菌の有効性は、接着している細菌株は競争的な有利性を有し、胃腸管におけるそれらの場所を維持するという重要性を有するために、腸壁に付着するというそれらの機能によって促進される。一方で、永続的に付着することを示す細菌株はいまだに明らかにされていない。腸内の乳酸菌の量の増大によって病原性細菌の増殖を除去することが可能であり、続いて感染の減少をもたらすであろう。最適な腸内細菌叢を有する正常な腸内上皮は、病原性微生物、抗原、及び腸管にとって危険な化合物による浸入または感染に対する障壁である。
【0016】
一般的には、乳酸菌の摂取は、非特異的な免疫応答の増強によって働くか、または抗原特異的な免疫応答におけるアジュバントとして働く。動物に対する試験によって、腸と関連するリンパ組織が生きている乳酸菌によって刺激されて、サイトカイン及び抗体(IgA)の生産及びパイエル板及び脾細胞を形成する細胞のマイトジェンの活性の増大を生じさせることが明らかにされている。ヒトの細胞に対する試験では、サイトカインの生産、食細胞活性、抗体生産、T細胞の機能、及びNK細胞活性がヨーグルトの摂取によって増大するか、またはin vitroで乳酸菌に曝露される際に増大する。
【0017】
免疫システムのヨーグルト刺激が、癌、胃腸疾患、及びアレルギー症状のような病気の発生率の低減と関連する可能性があるという証拠が存在する。
【0018】
乳酸菌はプロバイオティクスとしても知られている。用語「プロバイオティクス」は、健康を促進する、生きている微生物からなる食餌サプリメントを意味する(D'Souza et al., 2002)。最も頻繁に使用される種は、乳酸杆菌属(Lactobacillus)の種、ビフィドバクテリウム属(Bifidobaterium)の種、及びサッカロミセス属(Saccharomyces)の種である(Cremonini et al., 2002; Lu et al., 2001; Lewis et al., 1998; D'Souza et al., 2002; Isolauri, 2001)。作用の多数の機構が提案されて、それらの有効性、例えば、抗生物質の生産、胃腸感染及び入手可能な栄養分の競合、免疫調節、並びに乳酸消化の促進を説明している(Lu et al., 2001; D'Souza et al., 2002; Alvarez-Olmos et al., 2001)。
【0019】
in vitro及びin vivoの双方における多数の試験によって、乳酸杆菌属(Lactobacilli)(特に、アシドフィルス菌(L. acidophilus))が腸管の単なる正常共生生物ではないことを明らかにした。乳酸杆菌属(Lactobacilli)は、免疫システムを刺激すること、病原を阻害すること、及び結腸癌のリスクを低減することにおいても重要な役割を担う。
【0020】
更に、一般的な健康に対するプロバイオティクスの効果は非常に多い。プロバイオティクスは、腸の健康を促進し、消化を改善し、免疫システムを増強し、血液コレステロールを低減し、及びHDL/LDL比を低減することが知られている。プロバイオティクスはAADにおいても試みられている。
【0021】
数人の研究者は、プロバイオティクスは子供における急性の感染性の下痢の治療において、並びにAAD及び院内/地域で獲得される下痢の予防において効果的であると結論付けられている(Gill and Garner, 2004)。20を超える試験のメタアナリシスでは、Cornelius et al. (2004)によって、乳酸杆菌属(Lactobacillus)は子供における急性の下痢の安全で効果的な治療であることが示されている。更に、ロイテリ菌(Lactobacillus reuteri)またはビフィドバクテリウムラクティス菌(Bifidobacterium lactis)を添加した育児用調合乳は、乳児の下痢の発症及び期間を低減する(Weizman et al. 2005)。Reniero et al.に対するUS6887465は、35ヶ月から70ヶ月の子供において病原性細菌及びロタウイルスによって引き起こされる下痢を予防するための乳酸杆菌属(Lactobacillus)の株の使用を開示している。
【0022】
プロバイオティクスは、抗生物質が取り込まれた際の二次的な病原体の増殖を制限するために潜在的に有効であると解されている。しかしながら、今日に至るまで、医療従事者は、AADの第1次予防におけるそれらの有効性を支持する強固な記述を有する試験がほとんど公表されていないことを理由の一部として、一般的な方法におけるプロバイオティクスの使用について慎重なままである(Lewis et al., 1998)。これらの試験の1つでは、Plummer et al. (2004)は、2×1010cfuのアシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)及びビフィダム菌(Bifidobacterium bifidum)を含有するプロバイオティクスカプセルを受ける試験下の高齢患者の群における、毒素に関連するクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)の発生率の低減を報告した。しかしながら、Preg et al. (2005)は、カセイ菌(Lactobacillus casei)を含有するヨーグルトを摂取している健康な若い成人の間に、下痢の発生率の低減に関して優位な傾向はなかったとも認めた。かくして、成人のAADの予防におけるプロバイオティクスの効力は総括的な結果を示し、成人において更に評価する必要がある(Szajewska and Mrukowicz, 2005)。
【0023】
公表されている試験の大半はカプセルの形態で凍結乾燥したプロバイオティクスを使用しており、異なる株が評価されている。しかしながら、全プロバイオティクスが同一の方法で作用しないこと、及びそれらは異なる臨床的な効率を有する可能性があることに言及することが重要である。そのため、異なる試験で得られた結果は、これらの試験で評価されたもの以外の株のために有効であると考慮されるべきでない(Cremonini et al., 2002; D'Souza et al., 2002)。
【0024】
かくして、下痢、特に患者に処方される治効のある抗生物質治療と関連する下痢の予防または治療を改善するために、新しい組成物が必要である。
【特許文献1】US6887465
【非特許文献1】Bergogne-Berezin, 2000
【非特許文献2】McFarland, 1998
【非特許文献3】Spencer, 1998
【非特許文献4】Bartlett, 2002
【非特許文献5】McFarland, 2002
【非特許文献6】D'Souza et al., 2002
【非特許文献7】Cremonini et al., 2002
【非特許文献8】Lu et al., 2001
【非特許文献9】Lewis et al., 1998
【非特許文献10】Isolauri, 2001
【非特許文献11】Alvarez-Olmos et al., 2001
【非特許文献12】Gill and Garner, 2004
【非特許文献13】Cornelius et al. (2004)
【非特許文献14】Weizman et al. 2005
【非特許文献15】Plummer et al. (2004)
【非特許文献16】Preg et al. (2005)
【非特許文献17】Szajewska and Mrukowicz, 2005
【非特許文献18】Cremonini et al., 2002; D'Souza et al., 2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の主題は、上述の必要を満たす製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
かくして、本発明は、有効量の少なくとも1つの乳酸菌株及び製薬学的に許容される媒体を含むことを特徴とする、哺乳動物における下痢の予防または治療のための組成物に関する。
【0027】
本発明は、哺乳動物における下痢の予防または治療のための本発明の組成物の使用にも関する。
【0028】
本発明は、哺乳動物における下痢の予防または治療を意図する組成物の製造のための、少なくとも1つの乳酸菌株の使用にも関する。
【0029】
本発明は、有効量の本発明に係る乳酸組成物を哺乳動物に投与する工程を含むことを特徴とする、下痢の予防または治療の方法にも関する。
【0030】
更に、本発明は、本発明の組成物を含有する少なくとも1つの容器を含むことを特徴とする、下痢の予防または治療のためのキットにも関する。
【0031】
本発明の方法によって提供される利点は、AADの発生のリスクを大幅に低減または除去し、病院内での交差汚染のリスクも除去し、それによってAADによる死亡のリスクを低減または除去することである。
【0032】
本発明の他の利点は、AADの無毒性の予防または治療を提供することである。
【0033】
本発明の第3の利点は、AADの予防または治療の非侵襲性の方法を提供することである。
【0034】
本発明の他の利点は、抗生物質の使用を必要としないAADの予防または治療の方法を提供することである。このことが、薬剤間での不適合によって引き起こされる副作用の発生を妨げるであろう。
【0035】
本発明の他の利点は、ほとんどまたは全く副作用を示さない、AADの予防または治療のための長期間にわたって使用することができる組成物を提供することでもある。その様な組成物は、処方箋を必要とせずに健康食品店または専門店において容易に入手可能である。
【0036】
本発明の他の利点は、胃腸管の上部、特に胃で破壊されずに持続能力のある形態で、適切に内臓の粘膜に届く組成物を提供することである。本発明の他の利点は、内臓に移植されることが可能である十分な数の細菌を含有する組成物を提供することでもある。
【0037】
本発明の他の利点は、成人及び子供にも同様に投与される組成物を提供することである。この組成物は、病院環境で、家庭で、育児施設で、または下痢の予防及び調節が必要な任意の施設で投与されて良い。
【0038】
本発明の他の利点は、食餌または食餌サプリメントとして容易に投与される組成物を提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明の他の主題及び利点は、添付の図面を参照すると共に、以下の制限しない詳細な記述を読むことで明らかであろう。
【0040】
表の簡単な説明
表1は実施例1の89のランダム化した患者の基礎的な特徴を示す。
表2は実施例1のAADの発生率及び重度、並びに入院期間を示す。
表3は実施例1の試験期間で報告された望まれない効果を示す。
【0041】
用語に対する本明細書で与えられる範囲を含む、より明確でより一貫した記述の理解を提供するために、以下の規定を提供する。
【0042】
「哺乳動物」は、AADの対象となり得る任意の生物を意味し、脊椎動物、特に、ヒト、家畜、及び野生動物を含む。
【0043】
「下痢」は、緩い、水っぽい便が1日に4回以上生じることを意味する。
【0044】
「抗生物質と関連する下痢 AAD」は、抗生物質治療による下痢を意味する。
【0045】
「予防(prevent, prevention)」は、それによってAADが根絶または遅延するプロセスを意味する。
【0046】
「治療(treat)」は、それによってAADが低減または完全に除去された一定のレベルに維持されるプロセスを意味する。本明細書で使用される「治療(treatment)」は、状態、疾患、または病気の症状を改善または有利に変更する任意の方法を意味する。治療は本発明の組成物の任意の製薬学的な使用も包含する。「治療」は治療的な処置及び予防的若しくは予防の手段の双方も意味する。治療を必要とするものは、既に疾患を有するもの、並びに疾患を有しやすいもの、または疾患が予防されるべきものを含む。本明細書で使用される用語「細菌感染を治療する」は、宿主、好ましくは哺乳動物、更に好ましくはヒトにおける細菌または細菌集団の代謝活性を阻害または除去するプロセスを意味する。
【0047】
「製薬学的に許容される」は、哺乳動物、特にヒトにいずれのリスクも無く投与して良い、不利なまたは毒性の副作用がほとんどまたは全く無い媒体を意味する。その様な媒体は各種の機能のために使用されて良い。例えば、それらは保存剤、溶解剤、安定剤、乳化剤、軟化剤、着色剤、芳香剤、または抗酸化剤として使用されて良い。これらのタイプの媒体は当業者によく知られた方法を使用して容易に調製されて良い。
【0048】
「プロバイオティクス」は、腸内微生物叢のバランスを改善することによる、摂取した宿主に有利に作用する可能性がある乳酸杆菌属(Lactobacillus)の種、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)の種、及び酵母を含む生微生物を意味する。
【0049】
「約」は、微生物の数、組成物の単位の重量、または冷蔵の日数の値が、それらの値を評価するために使用される方法の誤差範囲に依存する特定の範囲内で変化し得ることを意味する。
【0050】
「栄養学的に許容される」は、哺乳動物、特にヒトに対してリスク無しで投与することが可能であり、不利なまたは毒性の副作用がほとんどまたは全くない媒体を意味する。その様な媒体は各種の機能のために使用され得る。例えば、それらは保存剤、溶解剤、安定剤、乳化剤、軟化剤、着色剤、芳香剤、または抗酸化剤として使用されて良い。これらのタイプの媒体は当業者によく知られた方法を使用して容易に調製されて良い。
【0051】
本発明は、有効量の少なくとも1つの乳酸菌株及び製薬学的に許容される媒体を含む、哺乳動物の下痢、より好ましくは抗生物質と関連する下痢の予防または治療のための組成物に関する。好ましい実施態様では、前記乳酸菌株は、アシドフィルス菌(L. acidophilus)、カセイ菌(L. casei)、及びそれらの混合物からなる群より選択される。好ましい実施態様では、前記乳酸菌株は乳酸杆菌属(Lactobacillus)である。更なる他の好ましい実施態様では、前記アシドフィルス菌(L. acidophilus)株はCNCMに寄託されている少なくとも1つのI-1492株である。
【0052】
好ましい実施態様では、本発明の組成物は、冷蔵条件下で約120日まで組成物1gあたりに少なくとも約5億の生きている活性微生物であるアシドフィルス菌(L. acidophilus)株を含む。より好ましい実施態様では、本発明の組成物は、冷蔵条件下で約120日まで組成物1gあたり約500億の生きている活性微生物であるアシドフィルス菌(L. acidophilus)株の集団を含み、少なくとも約80%はCNCMに寄託されている微生物のアシドフィルス菌(L. acidophilus) I-1492である。本発明の組成物は、冷蔵条件で約90日まで組成物の単位あたり少なくとも約1000億の生きている活性微生物であるアシドフィルス菌(L. acidophilus)株の集団を含んでも良く、少なくとも約80%がCNCMに寄託されている微生物のアシドフィルス菌(L. acidophilus) I-1492である。「単位」は、約98gの本発明の組成物を含有する商業的な使用に適切な任意の容器を意味し、例えば、ヨーグルトまたは他の発酵物のような乳製品を収容するために通常使用される広口ビンまたはプラスチック容器であるが、それらに限らない。
【0053】
本発明の他の好ましい実施態様によれば、前記組成物はBio-K Plus(登録商標)製品を含む。本発明の更なる他の好ましい実施態様によれば、本発明の乳酸組成物は発酵ミルクタンパク質及び発酵ダイズタンパク質を更に含む。Bio-K Plus(登録商標)製品は、Bio-K Plus International Inc社によって市販されている容易に入手可能な乳酸発酵製品である。前記Bio-K Plus(登録商標)製品は、アシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)及びカセイ菌(Lactobacillus casei)、より具体的にはアシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus )I-1492 CNCMを含有する。かくして、本発明の組成物は約95%のアシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)及び約5%のカセイ菌(Lactobacillus casei)を含有する。
【0054】
上述のように、前記下痢は好ましくは抗生物質と関連する下痢であるが、それに限らない。全抗生物質治療の約10%が胃腸の副作用、特に抗生物質と関連する下痢(AAD)の原因となることが既知である。抗生物質の全ての群がAADを引き起こす可能性があるが、広範な達成範囲を有するもの、例えばセファロスポリン、拡張達成範囲のペニシリン、及びクリンダマイシンがAADの最も一般的な原因である。10から20%のAADはクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile (C. difficile))感染によって引き起こされる(Hogenauer et al., 1998; Bartlett, 2002)。そのため、本発明の好ましい実施態様では、本発明の組成物はクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)によって引き起こされる哺乳動物の下痢の予防または治療のためのものである。しかしながら、本発明の組成物は「水あたり」タイプの下痢の予防または治療においても使用されて良い。好ましい実施態様では、前記哺乳動物はヒトである。
【0055】
当業者は栄養学的に許容される組成物の調製方法を知っており、投与の特別な方法及び投与するべき量を多数の因子に応じて決定するであろう。選択に影響を与え得る因子は:組成物に入れられる活性成分または不活性成分の正確な性質;哺乳動物の状態、年齢、及び重量、AADの段階、及び治療の性質である。
【0056】
他の態様によれば、本発明は、哺乳動物における下痢の予防または治療のための本発明の組成物の使用を提案する。
【0057】
他の態様によれば、本発明は、本発明の組成物の製造のための乳酸菌株の使用を提案する。好ましい実施態様では、I-1492株以外のアシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)株;及びカセイ菌(Lactobacillus casei)株は市販起源のものであってよく、乳酸発酵の業者より購入してもよい。
【0058】
本発明に係る組成物を調製するために、約98gの組成物の単位あたり約500億から約1000億の微生物の量で、本発明に係る少なくとも1つの乳酸杆菌属(Lactobacillus)株を適切な支持体に含ませる。
【0059】
本発明に係る組成物は、ミルクに基づく媒体に乳酸菌を作用させて発酵させることによって得られて良い。この目的のために、以下のプロセスが使用されて良い。
【0060】
まず、I-1492、アシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)、及びカセイ菌(casei)株を、複数の工程を含む標準のプログラムに従って、10%のCO2条件下でMRSタイプ発酵培地においてインキュベートする。部分的に乳酸を含まず、脱気されている還元乳汁ベースを95℃で1.5分間低温殺菌し、10%を播種する。最後に、以下のプログラムに従ってインキュベートする:
1)I-1492株:10%CO2条件下、37℃で2時間
2)アシドフィルス菌(acidophilus)株:37℃で2時間
3)カセイ菌(casei)株:37℃で1時間。
【0061】
次いで、37℃で15時間、無酸素雰囲気及び媒体中で生産物を共発酵させる(CO2下で脱気する)。
【0062】
本発明を実現するために、健康へのリスクが存在しない限り、任意のアシドフィルス菌(acidophilus)及びカセイ菌(casei)株が使用されて良い。本発明の組成物に存在するアシドフィルス菌(Lactobadilli acidophilus)(I-1492株より得られるものを含む)の総濃度は、組成物98g単位あたり少なくとも500億でなければならない。I-1492の濃度は、組成物約98g単位あたりの微生物の総数の少なくとも80%でなければならない。
【0063】
総アミノ酸量はミルクと同様であるが、遊離のアミノ酸は好ましくは有意に多い。1000と5000Daの間の分子量を有する、本発明の組成物に含まれるペプチドのレベルは約30%であり、10残基よりも短い小ペプチドのレベルは約15%である。その様なレベルのペプチドが、驚くべき方法で免疫及び消化システムを強化することが既知である。
【0064】
ヒトまたは哺乳動物に投与される、または本発明の組成物に存在する乳酸菌の量及び濃度は治療上有効量である。治療上有効量の乳酸菌は、乳酸菌または組成物が投与される宿主において過剰に不利な効果を引き起こさずに、有利な結果を得るために必要な量である。実際に、AADを予防するための乳酸菌の有効量は、AADに関連する症状を任意の様式で減衰または軽減するのに十分な量である。有効量は、投薬計画に従って、1回以上の投与で投与されて良い。例えば、上述のように、本発明の好ましい実施態様に係る有効量は、組成物約98g単位あたり約500億から約1000億の細菌である。その様な量は、単回投与で投与されて良く、または有効である他の投薬計画によって投与されて良い。しかしながら、乳酸菌または組成物の各成分の正確な量、及び投与される組成物の量は、予防されるAADのタイプ、組成物の他の成分、投与の方法、哺乳動物の年齢及び重量等のような因子に従って変化すると解される。
【0065】
本発明に係る組成物は、通常製薬学的または栄養学的な投与のために固体または液体の形態、すなわち、例えばゲル、カプセル、または任意の当業者に既知の他の基剤中の液体の投与形態で提供されて良い。使用可能な組成物の中でも、特に経口投与可能な組成物が好ましい。本発明の場合では、本発明の組成物は食餌の形態として(例えば乳酸発酵物)、または食餌サプリメントとして投与されて良い。より特には、本発明に係る組成物は各種の摂取可能な形態、例えばミルク、ヨーグルト、カード、発酵ミルク、ミルクに基づく発酵製品、ダイズに基づく発酵製品、発酵穀物に基づく製品、ミルクに基づく粉末、及び乳児用調合乳で存在して良い。前記組成物は食餌または食餌サプリメントの形態で投与されても良い。その様な食餌は、病院で使用されるもののようなタンパク質濃縮物であって良い。
【0066】
製薬製剤の場合では、前記生産物は、300億までに限らない範囲で含まれる乳酸杆菌属(Lactobacillus)株の量と共に、カプセル、錠剤、液体細菌懸濁物、乾燥経口サプリメント、湿性経口サプリメント、乾燥経管栄養製剤、または湿性経管栄養製剤等に限らない形態で調製されて良い。
【0067】
本発明は、有効量の本発明の乳酸組成物を哺乳動物に投与する工程を含む、下痢の予防または治療のための方法にも関する。好ましい実施態様では、前記投与は経口投与である。好ましい実施態様では、前記組成物は最初の2日間は1日に約49gの量で投与され、次いで少なくとも10日の次の期間は1日に約98gの量で投与される。
【0068】
予防手段として、及び腸管輸送及び健康の一般的な維持のために、1日あたり約98gの本発明の組成物を摂取することが望ましい。健康の一般的な維持のために、一日おきに30日間約98gを摂取することが望ましい。「水あたり」タイプの下痢の場合では、3日間は1日に2回で約98g、続いて7から15日間は1日あたり約98gを摂取することが望ましい。便秘の場合に関しては、4日間に1日あたり約49gを摂取することが望ましい。本発明の組成物は、1日あたり約24.5gの好ましい量で12月を超える子供に与えても良く、より若い乳児に関しては1日に約ティースプーン1杯という好ましい量で哺乳瓶にサプリメントとして与えても良い。
【0069】
本発明は、例えばAADの予防のための有用な製薬学的なキットも含む。前記キットは、本発明に係る組成物を含有する1つ以上の容器を含む。その様なキットは、望まれる場合には、例えば、1つ以上の製薬学的に許容される媒体を含有する容器、または当業者に明らかな任意の他の更なる容器のような1つ以上の従来の製薬学的な要素を更に含む。本発明に係るキットは、有利には、投与される組成物の量、投与の説明、及び/または成分の混合の説明を説明するパンフレットまたは任意の他の印刷された支持体の形態で、使用説明書を含んで良い。
【0070】
以下の実施例は、本発明の使用の範囲の説明を提供するが、本発明の範囲を制限しない。本発明の意思及び範囲を忘れること無く、変形及び変更が作製されて良い。本明細書で試験し、本発明が使用されて良いことを明らかにしたことが認められるものと同等な他の方法及び同等な製品が使用されても良いが、原料及び好ましい方法を記載する。
【実施例】
【0071】
(実施例1)
抗生物質と関連する下痢の予防における、プラセボの効力に対する乳酸杆菌属(lactobacillus) (BIO-K+)の効力の比較試験
この実施例に記載する試験は、AADの第1次感染防御における乳酸発酵の乳酸杆菌属(Lactobacillus)製剤の利用を評価する。従って、二重マスク試験、ランダム化試験、プラセボ対照臨床試験を実施した。この試験では2つの群を比較する:乳酸杆菌属(Lactobacillus)製剤を受けている実験的な群とプラセボ製剤を受けている対照の群:いずれの細菌株も乳清を欠いていた。
【0072】
試験される集団
単独療法においてアミノシドまたはバンコマイシン以外で、最低3日間の推定期間で経口または非経口的に抗生物質治療を受けている、Montreal, QC, CanadaのMaisonneuve-Rosemont病院の成人入院患者が前記試験に適任であった。除外基準は以下を含む:参加の拒否、同意を得ることが不可能、フランス語を話せない、活発な下痢、募集の前の3ヶ月以内のクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)感染、確認されたラクトースへの不耐性、管理されていない炎症性腸疾患、並びにプロバイオティクスの定期的な取り込み。更に、化学療法、放射線療法、非経口的栄養補給若しくは経鼻胃プローブを介する経腸栄養補給、nil per os患者、オストミーを有する患者、損傷または人口心臓弁を有する患者、並びに移植片を有する患者は前記試験から除外した。
【0073】
書面での同意を各患者に対して得た。治療する医師の許可を必要とした。研究プロトコル及び同意書は病院の倫理委員会に提出し、2003年9月12日に受理された。
【0074】
試験の目的
主な目的は、AADが入院の間にもたらされるか、または患者が退院した後にもたらされるかどうか、2つの群の各々におけるAADの発生率を評価することにあった。24時間の期間で少なくとも3回の液状便の存在によって、AADを規定した。抗生物質治療が原因であることを確実にするために、浣腸または緩下薬の使用のような全ての他の病因を除外した。AADが治療の終了より前に生じていない場合に限り、全患者に対して抗生物質の治療の終了の21日後にAADの発生率を評価するための検証を検討した。
【0075】
第2の目的は、AADの重度、入院期間、乳酸杆菌属(Lactobacillus)製剤の無害を評価することである。AADの重度の評価に関しては、以下のパラメータを評価した:便の中のクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)毒素Bの存在、便の中の血液の存在(陽性Gaiac試験によって)、熱の存在、下痢の期間、下痢の発症中の1日の液状便の平均数(3つのカテゴリーに分類:3から4、5から9、または9より多い1日あたりの液状便)、並びにAADに対する抗生物質治療の利用。
【0076】
潜在的な交絡変数の影響を評価するために、年齢、治療の臨床的適応、患者の状態の重度、使用される抗生物質の種類、抗性剤治療の期間、受けている抗生物質の数、募集の前の数ヶ月以内または予防後の検証期間の抗生物質の利用、クロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)前駆体、クロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)で汚染された治療室における入院、プロトンポンプインヒビターの使用、緩下剤の使用、麻酔剤の使用、マグネシウムの経口サプリメントの取り込み並びにヨーグルトの消費が記載された。患者は試験期間を通じてヨーグルトを摂取しないように知らされていることに注意するべきである。患者の状態の重度は、HMRの医学的な記録サービスによって使用される「All Patient Refined Diagnosis Related Groups」(APR-DRG v12.0)分類システムの助けを借りて得られた臨床的な危険の発生率によって決定した。
【0077】
データ収集及び試験経過
抗生物質治療を受けている患者の一覧から、連日、潜在的な対象者を識別した。現在のまたは過去のファイルが修正されるたびに、適任であるか及び同意を得られるかを確認するために、患者をインタビューした。
【0078】
ランダム化は、事前に確立されたブロック順序に従って、病院の研究薬局(research pharmacy)によって作成された。最初に、ランダム化は抗生物質治療の開始の24時間後以内に作成された。プロトコルの修正後に、患者は抗生物質治療の開始の48時間後以内にランダム化され得た。
【0079】
ランダム化の後に、患者は、属する群に従ってアシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus) (I-1492)及びカセイ菌(casei)の製剤のいずれか、あるいはプラセボを受けた。用量は、2日間は1日に1回で約49gの製剤(1/2カップ)であり、その後の期間は1日に1回で約98g(1カップ)であった。予防の全期間は、抗生物質治療の期間に相当した。前記抗生物質治療は、連続的な様式で受けている全抗生物質からなる。前記製剤は、入院の間に毎日、研究薬局によって分配されて看護師によって投与された。患者が、抗生物質治療が終わる前に病院から退院した場合には、予防の完了のために必要な量のカップを与えた。
【0080】
抗生物質治療の間、抗生物質の取り込み及びAADの発生に対するデータを3日間ごとに医療ファイルから収集した。その後、抗生物質治療の終了時、及び抗生物質治療の7、14、及び21日後にデータを収集した。更に、望まれない効果の出現を評価するために、抗生物質治療の最後の日に加えて、ランダム化の5日後(またはより早期に生じる場合には患者の退院時)に患者をインタビューした。これらの様式の検証は入院の期間にのみ適用した。患者が検証の終了よりも前に退院した場合は、抗生物質治療の終了時、及び抗生物質治療後の7、14、21日に実施した電話インタビューによってデータを収集した。それに対して質問されるであろう異なる情報を記録するために、記憶補助を患者に与えた。
【0081】
常に、AADが生じた場合には予防を止めて、検証はAADの重度の評価に限った。退院した後に患者がAADを示した場合は、患者は研究者の1人に接触しなければならず、適当であると判断した場合には、医学的な評価及び便の分析のためにHMRの感染症診療室に患者を呼んだ。
【0082】
統計分析
80%の統計的検出力及び95%の信頼水準で、治療の2つの群の間のAADの発生率における50%の減少(すなわち、30%から15%)を検出できるために、1群あたり120の患者というサンプルサイズに応じて試験を考案した。この計算は、2つの割合の間の差の二者間仮説検定に基づいた。
【0083】
患者の特徴、並びに重度及び無害性の効力測定を、割合、平均、及び標準偏差、または中央値及び四分位間の間隔で評価した。試験された群の間の離散変数の比較を、カイ二乗検定またはフィッシャーの正確確率検定によって実施した。連続型変数に関しては、スチューデントのt検定によって、実験群と対照の間で観察される差の統計的な有意性の検証を実施した。全ての分析は両側であり、使用されたαタイプ誤差は0.05であった。
【0084】
各々の分析に関して、乳酸杆菌属(Lactobacillus)製剤の真の効力を評価するために、治療を意図する方法を使用した。そうするために、ランダム化された群の患者をランダム化し、試験される製剤の少なくとも1回の用量を受けることが分析のために考慮された。主な目的のため、試験で最低3回の用量の製剤を受け、計画された用量の少なくとも75%を摂取し、計画された検証を完了した患者のみを含むために、プロトコルの方法ごとに従う第2の分析を実施した。
【0085】
結果
抗生物質治療を開始する1422の患者のファイルを、適任であるか評価するために参考にした。このうち、89の患者をランダム化した。他の患者を除外した理由を図1に記載した。89のランダム化した患者の内、5の患者はランダム化した後に投与を受けなかったため、または除外基準が生じたために数に入れなかった。分析された84の患者に関して、検証の平均期間は20±12日であり、2つの群の間に有意な差は認められなかった(p=0.53)。84のうち、58の患者(69.0%)がプロトコルに計画された試験を完了した。乳酸杆菌属(Lactobacillus)群の3人の患者は、試験の経過中に死亡した。これらの患者にはAADを示したものは存在せず、死亡は試験した製剤の使用に直接関連するものではないようであった。患者の分布図を図1に示す。
【0086】
27の患者は本試験への参加を拒否した。彼らの個体群統計学的な特徴並びに抗生物質治療は、本試験への参加を許可した患者と同程度であった。男性よりも多くの女性が拒否したが(66.7%対33.3%)、この分布は、参加を許可した患者と有意に異なることは無かった(p=0.17)。
【0087】
患者の基本的な特徴は表1に記載のように同様である。β-ラクタミンの使用のみが2つの群の間で均一に分布していない(p=0.02)。そのため、記号論理学的な回帰分析の後に、この特徴は、AADの発生に関する交絡変数と見なさなかった(p=0.08)。試験される集団は平均70歳であり、主に呼吸管感染に関して治療を受けている。
【0088】
AADの発生率、その重度、及び入院期間に関連する結果を表2に記載する。
【0089】
本試験の主な目的に関しては、27%(23/84)の患者がAADに罹った、すなわち乳酸杆菌属(lactobacillus)製剤を受けている群における17.1%(7/41)に対し、プラセボの群では37.2%(16/34)。この差は統計的に有意である(p=0.04)。プロトコルで計画された試験を完了した患者に限って分析した際にも有意である(各々53.3%(16/30)及び25.0%(7/28);p=0.03)。入院の間、乳酸杆菌属(Lactobacillus)製剤を受けている患者の7.3%(3/41)に対して、群の患者の18.6%(8/43)がAADを発症した。この差は統計的に有意でなかった(p=0.13)。試験の間に病院から退院した患者に関しては、乳酸杆菌属(Lactobacillus)の群と比較すると、プラセボの群においてより多くの患者がAADを発症した、すなわち、34.8%(8/23)及び13.8%(4/29)。このケースにおいても、差は有意でなかった(p=0.07)。
【0090】
一覧に示したAADの重度に関しては、限られた数の分析された患者が潜在的な結論を限定する。更に、重度の特定の測定は、全ての患者のために実施されなかった。65.2%のAADのケースでは、クロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)の存在を検出するために便の分析を実施した。AADに罹った全患者には、陽性の結果が、プラセボ群の患者の43.8%(7/16)及び乳酸杆菌属(lactobacillus)製剤を受けている患者の14.3%(1/7)に関して得られた。しかしながら、この差は統計的に有意ではなかった(p=0.051)。分析された患者の総数に対して、乳酸杆菌属(lactobacillus)群の2.4%と比較して、プラセボ群の16.3%(7/43)がクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)感染に罹っていた。この差は統計的に有意である(p<0.05)。
【0091】
陽性Gaiac試験による便中の血液の検出は、AADに罹った患者の8.7%のみで為された。AADに罹った患者の65.2%において、体温を測定した。これら2つの変数に関しては、有意な差が2つの群の間に認められなかった。AADの平均発症期間は、2つの群の間で異ならず(p=0.85)、1日あたりの便の数も同様であった(p=0.13)。抗生物質治療の終了後に大半のAADの発生が認められることは興味深い、すなわちプラセボ群において75%(12/16)及び乳酸杆菌属(Lactobacillus)群において71.4%(5/7)(p>0.99)。抗生物質治療の終了時とAADの発生時との間の平均の期間は2つの群の間で異ならなかった(各々、8.5日(±6.3)及び4.2日(±3.8)(p=0.18))。
【0092】
AADに罹った患者には、経験的な方法で与えられるまたは確認されたクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)感染を標的とする抗生物質治療(per osバンコマイシンまたは i.v. またはper osメトロニダゾール)が、各々、プラセボ及び乳酸杆菌属(Lactobacillus)群の患者の81.3%(13/16)及び42.9%(3/7)のために使用した(p=0.14)。
【0093】
乳酸杆菌属(Lactobacillus)製剤を受けた患者の入院期間の中央値は、プラセボを受けた群よりも短かった。試験において前記製剤を受けた群に関しては8日(6-14.5)であり、プラセボを受けた群に関しては10日(9-8)であった。この差は統計的に有意であった(p=0.048)。
【0094】
プラセボに対する乳酸杆菌属(Lactobacillus)製剤の効力も、使用された抗生物質の種類(β-ラクタミン類、マクロライド類、キノロン類、及び他の種類の記載されていない多様な抗生物質)に従って比較した。これらの差は抗生物質の種類の各々に関して統計的に有意でない。得られた結果を図2及び図3に示す。
【0095】
試験における生産物の無害性に関しては、2つの群について各々の望まれない症状の発生率を表3に記載する。少なくとも1つの望まれない効果が患者の48.8%によって報告され、これは2つの群の各々におけるものであった。望まれない効果の症状の後に製剤の使用を止めた患者の発生率に関しては、互いの群に違いは無い(プラセボ群では20.1%(9/43)及び乳酸杆菌属(Lactobacillus)群では9.8%(4/41);p=0.15)。
【0096】
考察
多数の試験によって、AADの第1次予防におけるプロバイオティクスの効力が評価されているが、明確な臨床データはほとんど得られず、これまで得られている結果は混合されている(Siitonen et al., 1990; Cremonini, et al., 2002; Thomas et al., 2001; Tankanow et al., 1990; Armuzzi, et al., 2001; McFarland et al., 1995; Surawicz et al., 1989; Arvola et al., 1999; Adam et al., 1977; Gotz et al., 1979; Lewis et al., 1998)。特定の試験では、AADの発生率の有意な低減と必ずしも関連付けられずに、AADの重度の減少またはそれらの発生の遅延が観察されている(Siitonen et al., 1990; McFarland et al., 1995; Arvola et al., 1999; Vanderhoof et al., 1999)。更に、検証の期間に対する、使用されるAADの規定の、採用した患者の特徴の、または試験に含まれる抗生物質の重要な隔たりが存在する(Lewis et al., 1998; Surawicz et al., 1998; Stoddart et al., 2002)。予防期間(5-21日)及び使用される用量も非常に多様であった(D'Souza et al., 2002)。
【0097】
更に、公表されている試験の大半は、カプセルの形態の凍結乾燥したプロバイオティクスを使用しており、異なる株を評価している。しかしながら、全てのプロバイオティクスが同一の様式で作用せず、それらは異なる有効性を有する可能性があることが重要である。そのため、異なる試験で得られた結果は、これらの試験で評価された以外の株に関しては有効でないと解されるべきである(Cremonin et al., 2002; D'Souza et al., 2002)。今日まで、いずれの公表されている試験も、本試験で使用された組み合わせ、すなわちアシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)、アシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus) I-1492、及びカセイ菌(Lactobacillus casei)の有効性を評価していなかった。
【0098】
本実施例では、上述の試験で認められる特定の隔たりを改善するために異なるパラメータを試験した。そのため、AADの客観的及び再現的な規定を使用した、すなわち、24時間当たり3回以上の液状便の存在。この規定は患者、介護者、及び研究者による解釈の余地がほとんどない。更に、抗生物質治療の期間によって確立される予防の期間は、固定された期間とは異なり、いかなる患者に関しても同等の保護を提供する方法である。
【0099】
本実施例では、1日に1回で約98g(始めの2日は約49g)(1カップ)のアシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)、アシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus) I-1492、及びカセイ菌(casei)を豊富に含む乳酸発酵物の利用が、AADの第1次予防に効果的であることを明らかにした。サンプルのサイズは始めに240の患者の予測されるランダム化を決定したが、統計的に有意な差が84の患者に限定されたサンプルで2つの群の間に認めることができた。この観察は、とりわけ、試験の間のAADの顕著な発生率(プラセボ群において37.2%)によって説明されて良く、サンプルサイズの計算において予測された30%より高いことを明らかにした。この発生率は文献でこれまで報告された中で最も高く、とりわけ、最近の過去数年を通じて認められるクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)のAADであるケースの数の増加と一致する。
【0100】
AADの52.1%(12/23)が家庭で生じることに注意しなければならない。そのため、患者の退院後の検証が、AADの真のリスクのより完全な評価を確実にするために必要であった。家庭における検証は、入院期間が短くされる医療システムにおける外来への変更という実際の事実関係においては、同様に適切である。最終的に家庭で生じる可能性がある合併症は病院環境上で悪い影響を有するため、患者を変えることが有用である。
【0101】
抗生物質後の検証は、2つの群において、約75%の観察されるAADは抗生物質治療の後に生じたため、特に重要である。AADは抗生物質治療の終了後6週目まで生じる可能性があるが、後期の下痢は他の病因により関連して生じるために、抗生物質後の検証は3週間に限定した(McFarland et al., 1995; Arvola et al., 1999)。抗生物質治療後にAADが現れるまでの期間に関するデータの範囲は2つの群において大きかったことに注意すべきである:プラセボ群では1から20日、乳酸杆菌属(lactobacillus)群では2から11日。AADの特定のケースは、抗生物質治療終了の21日後を超えて生じた場合には検出されなかった可能性がある。
【0102】
抗生物質治療の期間を含む、検証の平均20日の期間は、21日の計画された抗生物質治療後の検証のよりも短いと見なされるため、驚くべきことと解される可能性がある。この事は、患者の21%が、計画された検証を完了しなかったという事実によって説明されて良い(使用の停止、検証の欠損、死亡、またはプロトコルに従わない)。また、検証は、AADの急速な発生が存在する際にはより短かった。
【0103】
クロストリジウム・ディフィシル(C. difficile) AADの発生は、所定の関連する臨床的及び金銭的な意味を考察するために重要な重度のパラメータである。更に、試験組成物がクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile) AADの発生率を有意に低減することに注目することは興味深い。文献では、クロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)による感染がAADの全てのケースの10から20%を占めることが報告されている(D'Souza et al., 2002; Gaynes et al., 2004)。病院環境におけるクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)感染の発生という実際の事実関係では、試験の結果は、プラセボ群で認められたように50%というかなりの割合を示す。この値は本試験における少数の患者から判断すると過大評価されて良いが、この割合はおそらく実際の値に近い。
【0104】
入院期間は、乳酸杆菌属(Lactobacillus)の群においてより短かった。この観察結果は、AADの発生率を低減する乳酸杆菌属(Lactobacillus)製剤の有効性によって説明される。しかしながら、患者の基本的な病状の重度の危険性がある影響が考慮されなければならない。実際、2つの群の間は有意に異なるが、乳酸杆菌属(Lactobacillus)群は、より少ない非常に重いケースと、より多いプラセボ群より軽度なケースとを含むことが注意される。
【0105】
多数の患者が(すなわち、2つの群の各々において48.8%)、少なくとも1つの望ましくない効果を示し、その大半は胃腸システムに影響を受けた。この発生率は高いが、深刻な望まれない効果は示されなかった。それにも拘らず、無視できない数の患者が望まれない効果の発生後に製剤の使用を止めた。これらのデータは、試験の経過の間、並びに一般的に実施される製剤の将来的な使用の間の潜在的な遵守の問題を示す。また、プラセボ群においても望まれない症状の高い発生率が観察されたのは驚くべきことである。しかしながら、プラセボは独特な味を有する乳清であり、その利用が消化の問題と関連する可能性が考慮されなければならない。
【0106】
結論として、1日あたり98gのアシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)、アシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus) CNCM I-1492、及びカセイ菌(casei)の組み合わせを豊富に含む乳酸発酵物が、治療するための抗生物質治療を受けている84の成人入院患者におけるAADの発生率を低減することが可能であった。乳酸杆菌属(Lactobacillus)製剤は、入院期間の有意な減少も可能にした。AADの重度に対する製剤の効果を検出するにはランダム化する患者が少なすぎた。クロストリジウム・ディフィシル(C. difficile) AADの発生率は、治療される群においてより低かった。
【0107】
(実施例2)
Pierre- le Gardeur病院センターにおける、重度のクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)大腸炎の発生の解決におけるプロバイオティクスの効力
導入
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)大腸炎は、Pierre- le Gardeur病院センターにおいて頻発する院内感染症である(Montreal region, Quevec, Canada)。実際に、2002-2003事業年度の間には、発生率は1000入院あたり9.5ケースであった。しかしながら、これらの感染症は再発性のものでさえ、いずれの重度も示さず、標準のメトロニダゾールまたは経口のバンコマイシン治療に応答した。
【0108】
2003年の8月から10月の間に、このタイプの症状には滅多に現れない重度性及び死亡を伴う院内感染の発生率の50%近い増大があった。更に、通常の治療に対する応答が、時には遅く、効果が無いことさえあった。
【0109】
2003年の11月には、その状況を打開するための一連の方策が実施された。感染された患者を専用の人員と共に集団で隔離した。更に、主に下痢を有する患者の部屋の浴室、床、及び壁の消毒と共に病院のより厳しい管理を実施した。また、医療器具を、各々の及び全ての患者に対する使用の間に殺菌した(アームバンド、ボウルなど)。抗生物質を継続し(第2及び第3世代のセファロスポリン)、モキシフロキサシンを除去した。実際に、この抗生物質は2003年の8月から10月の間のケースの35%で使用された(単独で使用されたのは15%)。続いて、5.6%までのモキシフロキサシンを摂取している患者がクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)大腸炎を発症した(単独で使用されると2.2%)。対照的に、第2及び第3世代のセファロスポリンで治療されている患者の4.6%が大腸炎に罹り(単独で使用されると1.2%)、クリンダマイシンで治療されている患者の0.9%のみが影響を受けた(単独で使用されると0.4%)。キノロンと偽膜性大腸炎の間のこの関連が最近の文献に記載されている。
【0110】
これらの手法に関係なく、発生率は増大した。したがって、2004年2月1日に、プロバイオティクスが抗生物質治療を受けている全患者に対して与えられた。クロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)大腸炎の重度なケースの発生率の低減が主な目的であった。
【0111】
方法論
Pierre-Le Gardeur病院センターは、250のベッドを有する非大学病院である。しかしながら、2004年4月16日から、Pierre-Le Gardeur病院センターは284のベッドを有する新しい建物に移転した。この試験は、2004年の2月1日から2004年の8月31日の間に実施した。移転の間のサービスの多数の停止のために、4月の間のクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)の発生率は試験において考慮に入れなかった。
【0112】
全患者、入院患者、及び救急病棟における観察において抗生物質治療を受けている患者は、一ヶ月間を超えてプロバイオティクスを摂取した。使用されたプロバイオティクスは、Bio-K+(International Inc.)であった。この製品は、パスツール研究所で特性決定された、ヒト起源の株であるアシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)(I-1492)を含有している。前記製品は2つの形態として存在している:約500億の細菌を含有する約98gの組成物の生製品として、及び約300億の細菌を含有するカプセルとして。使用された用量は、1日あたり約98gのビンの用量(2004年2月から3月の間に提供された)または1日あたり2カプセル(2004年5月以降から提供した)。プロバイオティクスは病院の薬局によって分配された。抗生物質治療が開始された際のプロバイオティクス治療の急速な開始を確実にするために、常在的に調剤していた。
【0113】
1000の入院あたりの新規な院内のケースの数を報告することによって、前記発生率を毎月算出した。前記院内のケースは、アトランタのCDCの基準に従って測定した(Garner et al., 1998)。しかしながら、抗生物質治療を受けていた、3日間以上入院せずに救急病棟における観察下に置かれた患者も試験に含まれた。再発性のケースは一度のみ集計した。更に、前記院内のケースをそれらの重度によって細分した。前記重度は以下の少なくとも1つの存在によって規定される:集中治療の必要、懐疑的なショック、毒性の巨大結腸、結腸切除の必要性、治療の応答の遅延または不在(>48時間)、並びに死亡率。
【0114】
R-Biopharm(Ridascreen(登録商標))社製のELISA試験を使用して、クロストリジウム・ディフィシル(C. difficile) A/B毒素の検出を実施した。前記試験を保存していない便サンプルに対して1日に5回実施した。
【0115】
プロバイオティクス治療(生製品のみ)を受けている患者による治療の観察は、2004年3月の間に3日間分析した。治療を観察しなかった患者には、なぜそれが観察されなかったのかを聞いた。カプセル製品に関する問題は観察されなかったため、カプセルを服用している患者に関してはこの分析を実施しなかった。その地域における患者による治療の観察は検証しなかったが、退院後に患者に処方箋を与えた。
【0116】
結果
総数で2544の患者が、2004年2月1日から8月31日の間にプロバイオティクスを摂取した。結果を図4に要約している。
【0117】
発生の間の重度なケースの平均の発生率は、1000の入院あたり7.7ケースであった(2003年8月から2004年1月の間)。試験の最初の月の後に、発生率は1000の入院あたり2.6ケースにまで低下した(66%の低減)。更に、2004年3月からは、もはや重度なケースは存在しなかった。2003年の8月から2004年の1月の間に直接的な死亡率は10ケースであった。1人の患者が2003年11月に全結腸切除を受けた。死亡の最後のケースは2004年1月であった。総発生率も低減した。実際に、現在の発生率(2.1ケース/1000入院)は、発生前の発生率(9.5ケース/1000入院)よりも78%低い。クロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)の単離における新しいケースは2004年8月11日からは現れなかった。
【0118】
コンプライアンスに関しては、201の観察を3日間実施した。生製品に関して66%の観察率を記録した。観察された患者の23%がプロバイオティクスの摂取を拒否し、11%が部分的に摂取した。治療に関する遵守の欠如の主な理由は、製品の味であった(フルーツ風味の製品であっても)。
【0119】
カプセルの予想される1年のコストは1000000カナダドルであるが、一方で生製品のコストは約2500000カナダドルである。
【0120】
考察
プロバイオティクス(乳酸杆菌属(Lactobacillus), サッカロミセス-ボウラディ(Saccharomyces boulardii))の使用は、抗生物質と関連する下痢の第1次予防に効果的である事が明らかになった。最近のメタアナリシスがそれについて言及している(D'Souza et al., 2002)。その原理は、抗生物質に治療によって部分的に破壊された腸内細菌叢を再構成することである。
【0121】
Legardeurセンターにおけるプロバイオティクスの大量の使用は、非常に急速に結果を生じさせた。実際に、改善された環境的な衛生状態と関係なく、発生のコントロールは不可能であった。この事は、センターの古い敷地のために維持することが困難であるという事実によって説明されて良い。浴室は数少なく、重大な数の患者が救急病棟及び他の病室の廊下で見られた。他の説明としては、大量の感染患者またはクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)の特定の株に感染している患者がより重大になっていることである。
【0122】
新しい病院センターは環境の清潔のレベルで利点を提供する。実際に、70%の部屋が個室であり、各々浴室が備え付けられている。他の部屋は、2人の患者のために意図されており、浴室設備も備え付けられている。4人の患者を収容する可能性がある部屋は存在しない。また、もはや救急病棟の廊下には存在しない。これらの改善に関係せずに、院内のクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)のケースは移転後二ヶ月で既に有意に低減し始めていたことに注意することが重要である。
【0123】
プロバイオティクスの効力を測定するための本試験における回顧的な比較に関係なく、この重度な発生の急速なコントロール及びこの手法のコストの低減は、病院がこの問題に直面した際に真剣に考慮しなければならない要素である。
【0124】
【表1】

【0125】
【表2】

【0126】
【表3】

(参考文献)



【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】図1は、実施例1に記載の試験に関する患者の分布を図示する。
【図2】図2は、実施例1で摂取される抗生物質の種類によるAADの発生率を説明する図である。
【図3】図3は、実施例1に記載の試験の結果を要約している。
【図4】図4は、実施例4に記載の試験におけるクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)感染の経時的な進展を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の少なくとも1つの乳酸菌株と製薬学的に許容される媒体とを含むことを特徴とする、哺乳動物における下痢の予防または治療のための組成物。
【請求項2】
前記乳酸菌株がアシドフィルス菌、カセイ菌、及びそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項3】
前記乳酸菌株が乳酸杆菌属のものであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記アシドフィルス菌株が、CNCMに寄託されている少なくとも1つのI-1492株であることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
組成物の単位あたりに、冷蔵条件下で約120日間まで、少なくとも約500億の生きている活性微生物であるアシドフィルス菌株の集団を含み、前記微生物の少なくとも約80%がCNCMに寄託されているアシドフィルス菌I-1492であることを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記下痢が抗生物質と関連することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記下痢が、クロストリジウム・ディフィシル感染によって引き起こされることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記哺乳動物がヒトであることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
哺乳動物における下痢の予防または治療のためであることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項10】
前記下痢が抗生物質と関連することを特徴とする、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記下痢が、クロストリジウム・ディフィシル感染によって引き起こされることを特徴とする、請求項9または10に記載の使用。
【請求項12】
前記哺乳動物がヒトであることを特徴とする、請求項9から11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
哺乳動物における下痢の予防または治療を意図する組成物の製造のための、乳酸菌株の使用。
【請求項14】
前記乳酸菌株が乳酸杆菌属のものであることを特徴とする、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記乳酸菌株が、アシドフィルス菌及び/またはカセイ菌の種であることを特徴とする、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記乳酸菌株が、CNCMに寄託されているI-1492株であることを特徴とする、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記下痢が抗生物質と関連することを特徴とする、請求項13から16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記下痢が、クロストリジウム・ディフィシル感染によって引き起こされることを特徴とする、請求項13から17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
前記哺乳動物がヒトであることを特徴とする、請求項17または18に記載の使用。
【請求項20】
請求項1から8のいずれか一項に記載の乳酸組成物の有効量を哺乳動物に投与する工程を含むことを特徴とする、下痢の予防または治療のための方法。
【請求項21】
前記投与が経口投与であることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記経口投与が、2日間の49g/日の乳酸組成物及び該2日間の後の98g/日であることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項1から8に規定される組成物を含有する、少なくとも1つの容器を含むことを特徴とする、下痢の予防または治療のためのキット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2008−502606(P2008−502606A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515755(P2007−515755)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000954
【国際公開番号】WO2005/123100
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(506417371)バイオ−ケー・プラス・インターナショナル・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】