説明

乾式電気集じん機の洗浄方法

【課題】乾式電気集じん機の洗浄時に使用する洗浄液の量を適正化し、洗浄工程にかかるコストを安価にするとともに、排水量を減少させ環境負荷を低減させる乾式電気集じん機の洗浄方法を提供することを目的とする。
【解決手段】乾式電気集じん機1と、高電圧発生装置2と、送風装置3と、洗浄手段4と洗浄液を排水する排水手段13と制御器16とを備え、前記排水の汚れ具合を汚れ検知手段により検知し、前記排水の汚れが設定値より汚れていなければ再び洗浄液として再利用するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場などの生産現場において、空気中に浮遊するオイルミストおよび粉塵を電気集じん方式によって捕集、除去し、空気を浄化するために用いられる乾式電気集じん機の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の乾式電気集じん機の洗浄方法として、加圧空気を吹き付けてその表面の塵を吹き飛ばす方法(例えば、特許文献1参照)がある。
【0003】
以下、加圧空気を吹き付けて洗浄する方法を図4を参照しながら説明する。図4は、電気集じん機101とその両端を閉鎖する手段102と気流噴射機構103などから構成されており、加圧空気供給源105から気流噴射機構103に加圧空気を供給し、噴射することによって、極板104に付着した粉塵を払い落とすものである。
【0004】
また、極板に加圧水を吹き付けてその表面を水洗浄する方法(例えば、特許文献2参照)がある。
【0005】
以下、水洗浄の方法を図5を参照しながら説明する。図5に示すように、集塵ユニット111とその前後に設けた洗浄ノズル112とケーシング113などで構成されており、集塵ユニット111内の極板114は狭間隔で並列に複数並んでおり、流入した含塵ガスから粉塵を除去してこの極板114に付着する。この粉塵を除去する方法として、洗浄ノズル112から加圧水が噴き出し粉塵を除去する方法である。
【特許文献1】特公昭57−16864号公報
【特許文献2】特開昭63−248460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の電気集塵装置を、工場などの生産現場において発生したオイルミストを除去する目的で使用した場合は、極板に堆積したオイルを加圧空気や水だけでは十分洗浄できず、また、洗浄を十分行うとすると、1回当たりに使用する水量を増加させたり、定期的に実施している洗浄工程を頻繁に行う(例えば1日6回行うなど)必要があり、洗浄工程にかかるコストが高くなるとともに、排水量も増加し環境負荷が増大するという課題があった。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、洗浄効果を高め、使用する洗浄液の量を適正化し、洗浄工程にかかるコストを安価にするとともに、排水量を減少させ環境負荷を低減させる乾式電気集じん機の洗浄方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の乾式電気集じん機の洗浄方法は上記目的を達成するために、空気中のオイルミストおよび粉塵を捕集する乾式電気集じん機と、前記乾式電気集じん機へ空気を送る送風装置と、前記乾式電気集じん機に高電圧を供給する高電圧発生装置と、前記乾式電気集じん機内部に付着したオイルおよび粉塵を洗浄する洗浄手段と、洗浄液を排水する排水手段とそれらを制御する制御器とを備え、前記排水の汚れ具合を汚れ検知手段により検知し、前記排水の汚れが設定値より汚れていなければ再び洗浄液として再利用するようにしたものである。
【0009】
この手段により、使用する洗浄液の量を適正化し、洗浄工程にかかるコストを安価にするとともに、排水量を減少させ環境負荷を低減させることができる。
【0010】
また他の手段は、洗浄手段として洗浄液を複数個のノズルから噴射する噴射装置を備え、前記洗浄液として界面活性剤またはアルカリ性電解水を使用して洗浄する第1工程と、次に前記洗浄液として水を使用して洗浄する第2工程とを有したものである。
【0011】
この手段により、洗浄の効果を高めながら、使用する洗浄液の量を適正化し、洗浄工程にかかるコストを安価にするとともに、排水量を減少させ環境負荷を低減させることができる。
【0012】
また他の手段は、洗浄手段として噴霧装置と複数個のノズルから噴射する噴射装置とを備え、前記噴霧装置により電気集じん機内部に第1洗浄液をミスト状に充満させ洗浄する第1工程と、次に前記噴射装置により第2洗浄液を噴射し洗浄する第2工程とを有し、前記第2工程時の排水を汚れ検知手段により検知する。
【0013】
この手段により、ミスト状の洗浄液を充満させることで少量で洗浄の効果が高まるため、洗浄液の使用量をさらに適正化することができ、洗浄工程にかかるコストを安価にするとともに、排水量を減少させ環境負荷を低減させることができる。
【0014】
また他の手段は、第1洗浄液に界面活性剤を使用したものである。
【0015】
この手段により、オイルを捕集した場合に洗浄を確実に行うことができる。
【0016】
また他の手段は、第1洗浄液にアルカリ性電解水を使用したものである。
【0017】
この手段により、アルカリ性電解水は界面活性剤を含まないため環境負荷を低減させることが出来る。
【0018】
また他の手段は、第2洗浄液に水を使用したものである。
【0019】
この手段により、水で第1洗浄液を洗い流すことにより、第1洗浄液による火花放電などを防止することが出来る。
【0020】
また他の手段は、噴霧装置として、二流体ノズルを用い高圧空気によって第1洗浄液をミスト状にするものである。
【0021】
この手段により、電気集じん機内に第1洗浄液を効率よく充満させることができる。
【0022】
また他の手段は、第1洗浄液をミスト状に噴霧する噴霧装置への配管経路中に熱源手段を設けたものである。
【0023】
この手段により、ミスト状にした洗浄液の温度を高めることができ洗浄の効果を上げることができる。
【0024】
また他の手段は、複数個のノズルから洗浄液を噴射する噴射装置への配管経路中に熱源手段を設けたものである。
【0025】
この手段により、ノズルから噴射する洗浄液の温度を高めることができ洗浄の効果を上げることができる。
【0026】
また他の手段は、熱源手段の下流側に温度検知手段を設け、配管内部の洗浄液の温度が設定値に近づくように前記温度検知手段により得た温度を元に制御器により前記熱源手段の運転を制御するようにしたものである。
【0027】
この手段により、洗浄液の温度を一定に保つことができ安定的に洗浄効果を高めることができる。
【0028】
また他の手段は、ノズルから吹く洗浄液の配管経路中に配管内流量検出手段を設け、設定値以下の流量となると制御器から警報信号を出力するものである。
【0029】
この手段により、ノズルの目詰まりを発見することができ知らせることができる。
【0030】
また他の手段は、排水が再利用され始め、前記汚れ検知手段により検知した汚れが設定値より汚れてきた場合、すぐに前記排水の再利用を終わらずに一定時間は前記排水の再利用を行い続けるようにしたものである。
【0031】
この手段により、排水の再利用が一瞬で終わることを防ぐことができ、排水量を減少させ環境負荷を低減させることができる。
【0032】
また他の手段は、汚れ検知手段により検知し、排水が所定値以上に汚れてきた場合、排水の再利用中で一定時間再利用を行い続ける時間内であっても、再利用を中止するようにしたものである。
【0033】
この手段により、極端に排水が汚れた場合に再利用したことによるノズルの目詰まりを防ぐことができ、また新たに洗浄液の使用を開始することにより洗浄効果を高めることができる。
【0034】
また他の手段は、排水を再利用した後、排水手段からノズルへ戻す配管内に清浄水を流すようにしたものである。
【0035】
この手段により、洗浄液を再利用するために使用する配管内を洗浄することが出来る。
【0036】
また他の手段は、汚れ検知手段として光学式センサを用いたものである。
【0037】
この手段により、洗浄液の汚れ具合を定量的に検知することができる。
【0038】
また他の手段は、乾式電気集じん機の洗浄終了時に光学式センサ部分を洗浄するようにしたものである。
【0039】
この手段により、光学式センサが誤検知することなく、洗浄液の汚れ具合を検知することができる。
【0040】
また他の手段は、排水を再利用する際に排水中のゴミを除去する手段を設けたものである。
【0041】
この手段により、ゴミによるノズルの目詰まりを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば乾式電気集じん機の洗浄を行う際に発生する排水を効率的に再利用することができるため、洗浄効果を高め、使用する洗浄液の使用量を適正化し、洗浄工程にかかるコストを低く抑えるとともに、排水量を減少させ環境負荷を低減させる乾式電気集じん機の洗浄方法を提供できる。
【0043】
また、オイルに対しても十分な洗浄効果を発揮できる乾式電気集じん機の洗浄方法を提供できる。
【0044】
また、洗浄に使用するノズルの目詰まりを防ぐことができメンテナンス期間を延ばすことができるとともに、目詰まりが発生した場合でもすぐに知らせることができすぐに復旧作業に入ることが可能であり、メンテナンスによる電気集じん機を停止させる時間を短縮することができる乾式電気集じん機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明の請求項1記載の発明は、空気中のオイルミストおよび粉塵を捕集する乾式電気集じん機と、前記乾式電気集じん機へ空気を送る送風装置と、前記乾式電気集じん機に高電圧を供給する高電圧発生装置と、前記乾式電気集じん機内部に付着したオイルおよび粉塵を洗浄する洗浄手段と、洗浄液を排水する排水手段とそれらを制御する制御器とを備え、前記排水の汚れ具合を汚れ検知手段により検知し、前記排水の汚れが設定値より汚れていなければ再び洗浄液として再利用するようにしたものであり、使用する洗浄液の量を適正化し、洗浄工程にかかるコストを安価にするとともに、排水量を減少させ環境負荷を低減させることができるという作用を有する。
【0046】
本発明の請求項2記載の発明は、洗浄手段として洗浄液を複数個のノズルから噴射する噴射装置を備え、前記洗浄液として界面活性剤またはアルカリ性電解水を使用して洗浄する第1工程と、その第1工程の次に前記洗浄液として水を使用して洗浄する第2工程とを有したものであり、第1工程において電気集じん機内部に付着したオイルミストや粉塵を界面活性剤またはアルカリ性電解水の洗浄液で容易に除去することができ、その後第2工程にて水を使用して洗い流すことにより界面活性剤またはアルカリ性電解水の洗浄液が残ることによる火花放電の発生を防ぐことができ、洗浄の効果を高めながら、使用する洗浄液の量を適正化し、洗浄工程にかかるコストを安価にするとともに、排水量を減少させ環境負荷を低減させることができるという作用を有する。
【0047】
本発明の請求項3記載の発明は、洗浄手段として噴霧装置と複数個のノズルから噴射する噴射装置とを備え、前記噴霧装置により電気集じん機内部に第1洗浄液をミスト状に充満させ洗浄する第1工程と、その第1工程の次に前記噴射装置により第2洗浄液を噴射して洗浄する第2工程とを有し、前記第2工程時の排水を汚れ検知手段により検知するものであり、ミスト状の洗浄液を充満させることで少量で洗浄の効果が高まるため、洗浄液の使用量をさらに適正化することができ、また水などの第2洗浄液を噴射し第1洗浄液を洗い流すことにより第1洗浄液が残ることによる火花放電の発生を防ぐことができる。このような洗浄工程を行うことで、洗浄工程にかかるコストを安価にするとともに、排水量を減少させ環境負荷を低減させることができるという作用を有する。
【0048】
本発明の請求項4記載の発明は、第1洗浄液に界面活性剤を使用したものであり、オイルを捕集した場合に洗浄を確実に行うことができるという作用を有する。
【0049】
本発明の請求項5記載の発明は、第1洗浄液にアルカリ性電解水を使用したものであり、アルカリ性電解水は界面活性剤を含まないため環境負荷を低減させることが出来るという作用を有する。
【0050】
本発明の請求項6記載の発明は、第2洗浄液に水を使用したものであり、水で第1洗浄液を洗い流すことができ、第1洗浄液が残ることによる火花放電の発生を防止することが出来るという作用を有する。
【0051】
本発明の請求項7記載の発明は、噴霧装置として、二流体ノズルを用い高圧空気によって第1洗浄液をミスト状にするものであり、電気集じん機内に第1洗浄液を効率よく充満させることができるという作用を有する。
【0052】
本発明の請求項8記載の発明は、第1洗浄液をミスト状に噴霧する噴霧装置への配管経路中に熱源手段を設たものであり、ミスト状にした洗浄液の温度を高めることにより洗浄の効果を上げることができるという作用を有する。
【0053】
本発明の請求項9記載の発明は、複数個のノズルから洗浄液を噴射する噴射装置への配管経路中に熱源手段を設けたものであり、ノズルから噴射する洗浄液の温度を高めることにより洗浄の効果を上げることができるという作用を有する。
【0054】
本発明の請求項10記載の発明は、熱源手段の下流側に温度検知手段を設け、配管内部の洗浄液の温度が設定値に近づくように前記温度検知手段により得た温度を元に制御器により前記熱源手段の運転を制御するようにしたものであり、洗浄液の温度を一定に保つことができ安定的に洗浄効果を高めることができるという作用を有する。
【0055】
本発明の請求項11記載の発明は、ノズルから吹く洗浄液の配管経路中に配管内流量検出手段を設け、設定値以下の流量となると制御器から警報信号を出力するものであり、ノズルの目詰まりを発見することができ知らせることができるという作用を有する。
【0056】
本発明の請求項12記載の発明は、排水が再利用され始め、前記汚れ検知手段により検知した汚れが設定値より汚れてきた場合、すぐに前記排水の再利用を終わらずに一定時間は前記排水の再利用を行い続けるようにしたものであり、排水の再利用が一瞬で終わることを防ぐことができ、排水量を減少させ環境負荷を低減させることができるという作用を有する。
【0057】
本発明の請求項13記載の発明は、汚れ検知手段により検知し、排水が所定値以上に汚れてきた場合、排水の再利用中で一定時間再利用を行い続ける時間内であっても、再利用を中止するようにしたものであり、極端に排水が汚れた場合に再利用したことによるノズルの目詰まりを防ぐことができ、また新たに洗浄液の使用を開始することにより洗浄効果を高めることができるという作用を有する。
【0058】
本発明の請求項14記載の発明は、排水を再利用した後、排水手段からノズルへ戻す配管内に清浄水を流すようにしたものであり、洗浄液を再利用するために使用する配管内を洗浄することが出来るという作用を有する。
【0059】
本発明の請求項15記載の発明は、汚れ検知手段として光学式センサを用いたものであり、洗浄液の汚れ具合を定量的に検知することができるという作用を有する。
【0060】
本発明の請求項16記載の発明は、乾式電気集じん機の洗浄終了時に光学式センサ部分を洗浄するようにしたものであり、光学式センサが誤検知することなく、洗浄液の汚れ具合を検知することができるという作用を有する。
【0061】
本発明の請求項17記載の発明は、排水を再利用する際に排水中のゴミを除去する手段を設けたものであるり、ゴミによるノズルの目詰まりを防ぐことができるという作用を有する。
【0062】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0063】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における電気集じん機の縦断面構成図、図2は、本発明の実施の形態1における電気集じん機の詳細を示す斜視図である。
【0064】
図1において、電気集じん機1は、外装101a内に収納され、空気中のオイルミストおよび粉塵を捕集し、外装101aの上流側102aに帯電部103cが、下流側102bに集塵部104cが配置されている。高電圧発生装置2は、電気集じん機1へ高電圧を供給し、帯電部103c、集塵部104cがそれぞれ電気的に接続されている。送風装置3は、電気集じん機1へ空気を送るためのもので、集塵部104cよりさらに下流側102cに設けられている。洗浄手段4は、電気集じん機1上方に備えられ、電気集じん機1内部に付着したオイルおよび粉塵を洗浄するためのもので、本実施の形態1では、噴射装置5と噴霧装置6とから構成されている。
【0065】
噴射装置5の構成は、図1の縦断面図において奥行き方向に複数個配置されたノズル7と、これらのノズル7への経路の開閉を行う開閉弁121とを1つのユニットとした噴射ユニット122が、上流側102aから下流側102b方向に向かって複数個配置され、噴射ユニット122は第2洗浄液タンク8aに接続され洗浄ポンプ110が動作することにより第2洗浄液8がノズル7から噴射される。噴霧装置6は、外装101a内に先端を臨ませた二流体ノズル10と、二流体ノズル10に第1洗浄液9を供給するための第1洗浄液タンク9aと開閉弁9bとからなる第1洗浄液供給部115と、二流体ノズル10に高圧空気を供給するための空気供給経路12aと開閉弁12bとからなる高圧空気供給部12とから構成されている。
【0066】
排水手段13にはドレンパン123とそのドレンパンに開口がありそこに排水が集まるように開口は最も低い位置に設けられている。さらに本実施の形態1では排水中のゴミを除去する手段である金網14が設けられている。排水手段13とつながる排水経路124に汚れ検知手段である赤外線を用いた光学式センサ15が設置され排水の汚れを監視している。光学式センサ15は片側から赤外線を発し反対側で赤外線を受光するもので、受光した赤外線の量で液体や気体の透過率を0〜100%で表すものである。光学式センサ15を通過した排水は図示しない排水処理設備または下水道へ流れ込む経路124aと洗浄ポンプに戻る循環経路125とに分岐している。
【0067】
図2は、本実施の形態1の電気集じん機1の詳細を示す斜視図である。帯電部103c、集塵部104cは、それぞれ、放電極板103a、荷電極板104aと接地極板103b、104bとを、通風方向に平行に交互配置したものである。
【0068】
つぎに、本実施の形態1における動作を説明する。工場(図示せず)などの生産現場において、金属切削加工工程などで発生したオイルミストおよび粉塵を含んだ空気は、送風装置3の吸引によって、外装101aの上流側102aから電気集じん機1の帯電部103c、集塵部104cを通って下流側102bに流れる。電気集じん機1内部では、オイルミストおよび粉塵を含んだ空気は、図2に示すように、通風方向に平行に交互配置された、帯電部103cの放電極板103aと接地極板103bの間、および集塵部104cの荷電極板104aと接地極板104bの間を通過する。この時、帯電部103cでは、高電圧発生装置2から高電圧(本実施の形態1では+11kV)が放電極板103aに印加され、接地極板103bとの間でコロナ放電が発生する。コロナ放電の中を通過したオイルミストおよび粉塵の粒子は、正電位に帯電し、下流の集塵部104cに送られる。集塵部104cでは、高電圧発生装置2から高電圧(本実施の形態1では+6kV)が荷電極板104aに印加され、接地極板104bとの間に電界が発生し、通過する正電位に帯電したオイルミストおよび粉塵の粒子は、接地極板104b方向に引き付けられ、接地極板104b表面に付着し捕集される。なお、帯電粒子は、上流の帯電部103cにおいても、接地極板103bに一部付着し捕集される。
【0069】
つぎに、電気集じん機1内部の極板に付着、捕集されたオイルおよび粉塵を洗浄する工程について説明する。洗浄工程を開始する時は、送風装置3と高電圧発生装置2を停止させ、電気集じん機1付近から外部への洗浄液の飛散を防止する目的で、モータ112a、112bの動力により開閉装置111a、111bを閉とし、電気集じん機1周囲の空間を密閉する。つぎに、噴霧装置6において、第1洗浄液供給部115の開閉弁9bを開とし第1洗浄液タンク9aに貯留された第1洗浄液9(本実施の形態1では例えばアルキルエーテルなどを含む界面活性剤または例えば食塩水を電気分解し陰極から発生するアルカリ性電解水のいずれか)を二流体ノズル10に供給するとともに、高圧空気供給部12の開閉弁12bを開とし空気供給経路12aから高圧空気(本実施の形態1では0.1MPa)を二流体ノズル10に供給し、二流体ノズル10では高圧空気によって第1洗浄液9を微細ミスト状(本実施の形態1では10〜50μm)に噴霧する。
【0070】
噴霧したミスト状の洗浄液は、電気集じん機1内部の、接地極板103b、104b表面を覆い、付着したオイルおよび粉塵を表面から剥離させる。この第1洗浄液9を噴霧する第1工程を30分〜1時間程度実施したのちに、噴射装置5において、開閉弁121の一つを開とし、第2洗浄液タンク8aから第2洗浄液8(本実施の形態1では水)を洗浄ポンプ110により噴射ユニット122に供給し、複数個のノズル7から第2洗浄液8を噴射させる。この第2洗浄液8の噴射は、各開閉弁121を順次切り替え各噴射ユニット122に順次第2洗浄液8を供給することにより、電気集じん機1の接地極板103b、104b全体に万遍なく第2洗浄液8が噴射される。噴射された第2洗浄液8は、噴霧工程で剥離した接地極板103b、104b表面のオイルおよび粉塵を洗い流し除去する。この時発生する排水は排水手段13により外部へ排水する経路124aを通って排出されている。光学式センサ15により常に排水の汚れ具合が監視されており、予め制御器16に設定した設定値(例えば透過率50%)と比較して汚れていれば開閉弁124bを開とし外部へ排水する。噴射直後は極板に付着していた汚れが混ざっているため設定値より汚れているが噴射を続けていくうちに設定値より汚れていない排水になってくる。
【0071】
設定値と比較して汚れていなければ開閉弁124bを閉、開閉弁125aを開とし排水が循環経路125を通って洗浄ポンプ110に戻り再びノズルから噴射する。この動作により第2洗浄液8の使用量を抑えることができ、洗浄工程にかかるコストを低減させるとともに、排水量を減少させ環境負荷を低減することができる。またオイルに対する洗浄効果を高めることができる。この噴射工程を30分〜1時間程度実施したのちに、配管洗浄液供給装置126から水を噴射しその水を使用して循環経路125中の配管内や光学式センサ15を洗浄し、モータ112a、112bの動力により開閉装置111a、111bを再び開とし、送風装置3を運転し電気集じん機1に通風することにより、電気集じん機1内部に残留付着した水滴を乾燥させる。この乾燥工程を30分程度実施して、一連の洗浄工程を終了する。
【0072】
さらに本実施の形態1では第1洗浄液タンク9aから噴霧装置6への配管経路中と第2洗浄液タンク8aから噴射装置5への配管経路中に熱源手段であるヒータ17とその下流側に温度検知手段である温度センサ18を設け、それぞれの洗浄液の温度を本実施の形態1では70℃付近で保つようにしている。このことで、固着したオイルミストや粉塵を容易に除去することができる。さらに噴射装置5のノズル7へつながる配管経路中に流量検出手段である差圧検知器19を設けている。差圧検知器19は例えばオリフィス前後の圧力差を測定することにより、予め設定された数値テーブルと対比して配管内の流量を算出できるものである。万が一ノズルが目詰まりした場合、差圧検知器19により流量が出ていないことが分かりノズル7が目詰まりしたことをすぐに把握することができる。制御器16により警報信号を出し、速やかにメンテナンスを行うことができノズル目詰まりによる洗浄能力の低下を防ぐことができる。
【0073】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2における電気集じん機の縦断面構成図である。実施の形態1と同一部分は同一符号を附し詳細な説明は省略する。
【0074】
図3において、第1タンク20は界面活性剤またはアルカリ性電解水を貯めておくものであり、第2タンク21は水を貯めておくもので、それぞれ洗浄ポンプにより噴射装置のノズルから噴射される。
【0075】
本実施の形態2における洗浄工程について説明する。洗浄工程を開始する時は、送風装置3と高電圧発生装置2を停止させ、電気集じん機1付近から外部への洗浄液の飛散を防止する目的で、モータ112a、112bの動力により開閉装置111a、111bを閉とし、電気集じん機1周囲の空間を密閉する。つぎに、噴射装置5において、開閉弁121の一つを開とし、洗浄ポンプ110により第1タンク20から界面活性剤またはアルカリ性電解水を噴射装置5に供給し、複数個のノズル7から噴射させる。界面活性剤またはアルカリ性電解水を本実施の形態2では単に洗浄液と呼ぶことにする。
【0076】
この洗浄液の噴射は、各開閉弁121を順次切り替え各噴射ユニット122に順次洗浄液を供給することにより、電気集じん機1の接地極板103b、104b全体に万遍なく洗浄液が噴射される。噴射された洗浄液は、接地極板103b、104b表面のオイルおよび粉塵を洗い流し除去する。この工程を第1工程とする。第1工程の洗浄を終えた後、次に第2工程の洗浄を行う。
【0077】
第2工程では第2タンクから洗浄ポンプ110により噴射装置5に水を供給し、複数個のノズル7から水を噴射させる。第1工程と第2工程において発生する排水においても実施の形態1と同様に光学式センサ15により監視を行い、排水経路124aを通って外部へ排水するか循環経路125を通って再び洗浄に使用する。この動作により第1工程・第2工程にて使用する洗浄液や水の使用量を抑えることができ、洗浄工程にかかるコストを低減させるとともに、排水量を減少させ環境負荷を低減することができる。またオイルに対する洗浄効果を高めることができる。
【0078】
第2工程終了後は実施の形態1と同様に、循環経路125中の配管内や光学式センサ15を洗浄し、モータ112a、112bの動力により開閉装置111a、111bを再び開とし、送風装置3を運転し電気集塵装置1に通風することにより、電気集塵装置1内部に残留付着した水滴を乾燥させる。この乾燥工程を30分程度実施して、一連の洗浄工程を終了する。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の洗浄方法は、工場などの生産現場において、空気中に浮遊するオイルミストおよび粉塵を捕集、除去し、空気を浄化するために用いられる乾式電気集じん機の洗浄方法として有用である。また、トンネル内で車両から発生する煤煙の捕集・除去で使用する乾式電気集じん機の洗浄方法などにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施の形態1の乾式電気集じん機の縦断面構成図
【図2】同乾式電気集じん機の詳細を示す斜視図
【図3】本発明の実施の形態2の乾式電気集じん機の縦断面構成図
【図4】従来の乾式電気集じん機の洗浄方法を示す縦断面構成図
【図5】従来の乾式電気集じん機の洗浄方法を示す縦断面構成図
【符号の説明】
【0081】
1 電気集じん機
2 高電圧発生装置
3 送風装置
4 洗浄手段
5 噴射装置
6 噴霧装置
7 ノズル
8 第2洗浄液
9 第1洗浄液
10 二流体ノズル
12 高圧空気供給部
13 排水手段
14 金網
15 光学式センサ
16 制御器
17 ヒータ
18 温度センサ
19 差圧検知器
20 第1タンク
21 第2タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中のオイルミストおよび粉塵を捕集する乾式電気集じん機と、前記乾式電気集じん機へ空気を送る送風装置と、前記乾式電気集じん機に高電圧を供給する高電圧発生装置と、前記乾式電気集じん機内部に付着したオイルおよび粉塵を洗浄液で洗浄する洗浄手段と、洗浄液を排水する排水手段とそれらを制御する制御器とを備え、前記排水の汚れ具合を汚れ検知手段により検知し、前記排水の汚れが設定値より汚れていなければ再び洗浄液として再利用するようにした乾式電気集じん機の洗浄方法。
【請求項2】
洗浄手段として洗浄液を複数個のノズルから噴射する噴射装置を備え、前記洗浄液として界面活性剤またはアルカリ性電解水を使用して洗浄する第1工程と、次に前記洗浄液として水を使用して洗浄する第2工程とを有した請求項1記載の乾式電気集じん機の洗浄方法。
【請求項3】
洗浄手段として噴霧装置と複数個のノズルから噴射する噴射装置とを備え、前記噴霧装置により電気集じん機内部に第1洗浄液をミスト状に充満させて洗浄する第1工程と、次に前記噴射装置により第2洗浄液を噴射して洗浄する第2工程とを有し、前記第2工程時の排水を汚れ検知手段により検知する請求項1記載の乾式電気集じん機の洗浄方法。
【請求項4】
第1洗浄液に界面活性剤を使用した請求項3記載の乾式電気集じん機の洗浄方法。
【請求項5】
第1洗浄液にアルカリ性電解水を使用した請求項3記載の乾式電気集じん機の洗浄方法。
【請求項6】
第2洗浄液に水を使用した請求項3〜5のいずれかに記載の乾式電気集じん機の洗浄方法。
【請求項7】
噴霧装置として、二流体ノズルを用い高圧空気によって第1洗浄液をミスト状にする請求項3〜6のいずれかに記載の乾式電気集じん機の洗浄方法。
【請求項8】
第1洗浄液をミスト状に噴霧する噴霧装置への配管経路中に熱源手段を設けた請求項3〜7のいずれかに記載の乾式電気集じん機の洗浄方法。
【請求項9】
複数個のノズルから洗浄液を噴射する噴射装置への配管経路中に熱源手段を設けた請求項2〜8のいずれかに記載の乾式電気集じん機の洗浄方法。
【請求項10】
熱源手段の下流側に温度検知手段を設け、配管内部の洗浄液の温度が設定値に近づくように前記温度検知手段により得た温度を元に制御器により前記熱源手段の運転を制御するようにした請求項8または9に記載の乾式電気集じん機の洗浄方法。
【請求項11】
ノズルから吹く洗浄液の配管経路中に配管内流量検出手段を設け、設定値以下の流量となると制御器から警報信号を出力する請求項2〜10のいずれかに記載の乾式電気集じん機の洗浄方法。
【請求項12】
排水が再利用され始め、前記汚れ検知手段により検知した汚れが設定値より汚れてきた場合、すぐに前記排水の再利用を終わらずに一定時間は前記排水の再利用を行い続けるようにした請求項1〜11のいずれかに記載の乾式電気集じん機の洗浄方法。
【請求項13】
汚れ検知手段により検知し、排水が所定値以上汚れてきた場合、排水の再利用中で一定時間再利用を行い続ける時間内であっても、再利用を中止するようにした請求項12記載の乾式電気集じん機の洗浄方法。
【請求項14】
排水を再利用した後、排水手段からノズルへ戻す配管内に清浄水を流すようにした請求項1〜13のいずれかに記載の乾式電気集じん機の洗浄方法。
【請求項15】
汚れ検知手段として光学式センサを用いた請求項1〜14のいずれかに記載の乾式電気集じん機の洗浄方法。
【請求項16】
乾式電気集じん機の洗浄終了時に光学式センサ部分を洗浄するようにした請求項15記載の乾式電気集じん機の洗浄方法。
【請求項17】
排水を再利用する際に排水中のゴミを除去する手段を設けた請求項1〜16のいずれかに記載の乾式電気集じん機の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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