説明

乾燥処理剤及び同乾燥処理剤を用いた畜糞の処理システム

【課題】乾燥処理に要する労力やコストを低減することができる乾燥処理剤を提供すること。
【解決手段】本発明では、硫酸第一鉄と酸化カルシウムとを飽和状態まで反応させた後に過マンガン酸カリウムを添加することで乾燥処理剤を生成した。また、本発明では、前記乾燥処理剤を畜糞に混入して畜糞を乾燥させることにした。さらに、本発明では、前記乾燥処理剤を畜糞に混入して畜糞を乾燥させることによって肥料を製造することにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥処理剤及び同乾燥処理剤を用いた畜糞の処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、鶏糞に代表される家畜の糞尿(畜糞)は、日々大量に排出され、悪臭を発生することから、直ちに焼却処理や肥料化処理を施す必要があった。
【0003】
そのため、従来においては、たとえば特許文献1に開示されているような大掛かりな処理装置を家畜舎に設置して、畜糞の処理を行っていた。
【0004】
【特許文献1】特開2003−171191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記従来のように畜糞処理のために大掛かりな処理装置を導入した場合には、多大な投資費用を要するとともに、その運用のために多大な労力や時間を要していた。
【0006】
そこで、本発明者は、安価な乾燥処理剤を開発するとともに、その乾燥処理剤を用いて畜糞の乾燥処理を行い、さらには、乾燥処理した畜糞によって肥料を製造する方法を開発し、これにより、畜糞処理に要する労力や時間やコストの削減を図れるようにした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、請求項1に係る本発明では、乾燥処理剤において、硫酸第一鉄と酸化カルシウムとを飽和状態まで反応させた後に過マンガン酸カリウムを添加することにした。
【0008】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、硫酸カルシウムの1/2水和物(焼石膏)を添加することにした。
【0009】
また、請求項3に係る本発明では、畜糞の処理システムにおいて、硫酸第一鉄と酸化カルシウムとを飽和状態まで反応させた後に過マンガン酸カリウムを添加して乾燥処理剤を生成し、乾燥処理剤を畜糞に混入して畜糞を乾燥させることにした。
【0010】
また、請求項4に係る本発明では、前記請求項3に係る本発明において、前記乾燥処理剤に硫酸カルシウムの1/2水和物(焼石膏)を添加することにした。
【0011】
また、請求項5に係る本発明では、畜糞の処理システムにおいて、硫酸第一鉄と酸化カルシウムとを飽和状態まで反応させた後に過マンガン酸カリウムを添加して乾燥処理剤を生成し、乾燥処理剤を畜糞に混入して畜糞を乾燥させることによって肥料を製造することにした。
【0012】
また、請求項6に係る本発明では、前記請求項5に係る本発明において、前記乾燥処理剤に硫酸カルシウムの1/2水和物(焼石膏)を添加することにした。
【発明の効果】
【0013】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0014】
すなわち、本発明では、硫酸第一鉄と酸化カルシウムとを飽和状態まで反応させた後に過マンガン酸カリウムを添加して乾燥処理剤を生成しているために、この乾燥処理剤を含水物に混入させることによって、硫酸第一鉄、酸化カルシウム、過マンガン酸カリウムの存在下においてセメント固化に類似する反応が共生して起こり錯塩として水分を大量に取り込み、含水物を短時間で良好に脱水し乾燥させることができる。
【0015】
そのため、含水物として畜糞を用いた場合には、畜糞の乾燥を容易かつ短時間で行うことができ、しかも、乾燥処理物を肥料として有効に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明に係る乾燥処理剤、及び乾燥処理剤を用いた畜糞の乾燥処理方法、並びに乾燥処理剤を用いて畜糞の乾燥処理を行うことによって肥料を製造する肥料の製造方法について具体的に説明する(図1参照。)。
【0017】
本発明に係る乾燥処理剤は、硫酸第一鉄(FeSO4)と酸化カルシウム(CaO:生石灰)とを飽和状態まで反応させ、その後、過マンガン酸カリウム(KMnO4)を添加して生成したものである。
【0018】
この乾燥処理剤では、硫酸第一鉄と酸化カルシウムとが既に飽和状態まで反応していることから、過マンガン酸カリウムを添加しても反応が進行しない状態となっている。
【0019】
この乾燥処理剤には、硫酸第一鉄と酸化カルシウムとを飽和状態まで反応させた後に、過マンガン酸カリウムの他に、硫酸カルシウムの1/2水和物(CaSO4・1/2H2O:焼石膏)やセメントや珪酸ナトリウム(Na2SiO3)を添加してもよい。
【0020】
この乾燥処理剤は、含水物である被乾燥処理物に混入させると、硫酸第一鉄、酸化カルシウム、過マンガン酸カリウムの存在下においてセメント固化に類似する反応が共生して起こり、被乾燥処理物に含有される多量の水分が直ちに分子水として取り込まれて水の錯体を形成して固化し、被乾燥処理物(含水物)を短時間で良好に脱水し乾燥させることができる。
【0021】
特に、乾燥処理剤に硫酸カルシウムを添加した場合には、硫酸カルシウムが水分を取り込んで二水石膏となり、固化を促進させることができ、より一層短時間で乾燥処理することができる。
【0022】
また、乾燥処理剤に珪酸ナトリウムを添加した場合には、珪酸ナトリウムが加水分解されてアルカリ性となり、反応を促進させることができ、より一層短時間で乾燥処理することができる。
【0023】
また、本発明に係る畜糞の処理システムは、上記乾燥処理剤を鶏糞などの家畜の畜糞に混入することによって畜糞を乾燥させるものである。
【0024】
上記乾燥処理剤を畜糞に混入すると、畜糞の乾燥が行われるが、温度上昇はわずかであり、急激な温度上昇に伴う蒸散が生ずることがなく、したがって、畜糞に含まれるアンモニアによる悪臭が周囲に拡散してしまうことがない。しかも、畜糞に含まれるアンモニアによってアルカリ性となっており、反応が促進される。
【0025】
この畜糞の乾燥処理においても、乾燥処理剤に硫酸カルシウムを添加した場合には、硫酸カルシウムが水分を取り込んで二水石膏となり、固化を促進させることができ、より一層短時間で乾燥処理することができ、また、乾燥処理剤に珪酸ナトリウムを添加した場合には、珪酸ナトリウムが加水分解されてアルカリ性となり、反応を促進させることができ、より一層短時間で乾燥処理することができる。
【0026】
さらに、本発明に係る畜糞の処理システムは、上記した畜糞の乾燥処理方法によって畜糞を乾燥させることで生成された固形物をそのまま肥料とするものである。なお、この肥料には、必要に応じて栄養素を添加してもよい。
【0027】
すなわち、上記乾燥処理剤を鶏糞などの家畜の畜糞に混入すると、乾燥処理剤によって畜糞が乾燥して、固形状の肥料が得られるのである。
【0028】
このようにして製造された肥料は、乾燥処理により畜糞が軽量化及び減容化されているため、畜糞を運搬して別の場所で製造するよりも短時間かつ低コストで製造することができる。
【0029】
この飼料の製造方法においても、乾燥処理剤に硫酸カルシウムを添加した場合には、硫酸カルシウムが水分を取り込んで二水石膏となり、固化を促進させることができ、より一層短時間で肥料を製造することができ、また、乾燥処理剤に珪酸ナトリウムを添加した場合には、珪酸ナトリウムが加水分解されてアルカリ性となり、反応を促進させることができ、より一層短時間で肥料を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】乾燥処理剤及び畜糞の処理システムを示す説明図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸第一鉄と酸化カルシウムとを飽和状態まで反応させた後に過マンガン酸カリウムを添加したことを特徴とする乾燥処理剤。
【請求項2】
硫酸カルシウムの1/2水和物(焼石膏)を添加したことを特徴とする請求項1に記載の乾燥処理剤。
【請求項3】
硫酸第一鉄と酸化カルシウムとを飽和状態まで反応させた後に過マンガン酸カリウムを添加して乾燥処理剤を生成し、乾燥処理剤を畜糞に混入して畜糞を乾燥させることを特徴とする畜糞の処理システム。
【請求項4】
前記乾燥処理剤に硫酸カルシウムの1/2水和物(焼石膏)を添加したことを特徴とする請求項3に記載の畜糞の処理システム。
【請求項5】
硫酸第一鉄と酸化カルシウムとを飽和状態まで反応させた後に過マンガン酸カリウムを添加して乾燥処理剤を生成し、乾燥処理剤を畜糞に混入して畜糞を乾燥させることによって肥料を製造することを特徴とする畜糞の処理システム。
【請求項6】
前記乾燥処理剤に硫酸カルシウムの1/2水和物(焼石膏)を添加したことを特徴とする請求項5に記載の畜糞の処理システム。

【図1】
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【公開番号】特開2009−274013(P2009−274013A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127911(P2008−127911)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(508145436)Y.S.G.インキュベーション株式会社 (1)
【Fターム(参考)】