説明

乾燥装置および印刷機

【課題】枚葉紙の紙端部の乾燥を好適に行うことが可能な乾燥装置等を提供する。
【解決手段】枚葉紙Sに塗布されたインキに、照射強度および照射時間を積算した所定の積算光量となるように照射光を照射することで、インキを硬化させて乾燥させる乾燥部14において、枚葉紙Sに塗布されたインキに照射光を照射する照射部31と、枚葉紙Sの紙端部Saに照射される照射光の積算光量を調整可能な照射制御部50と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷シートに塗布されたインキを乾燥させる乾燥装置およびこれを備えた印刷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような乾燥装置として、印刷された枚葉紙のインキを硬化させる乾燥ユニットが知られている(例えば、特許文献1参照)。この乾燥ユニットには、一直線上に配設された複数の発光ダイオードから成る紫外線照射部が設けられており、紫外線照射部は制御部によって制御されている。このとき、制御部は、枚葉紙における所定領域の位置と大きさに基づいて、発光ダイオードのON−OFF制御を行っており、これにより、所定領域以外の部分に紫外線が照射されず、所定領域となる部分に紫外線が照射される。なお、所定領域としては、枚葉紙の全領域や、枚葉紙に印刷された画像である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−208463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の乾燥ユニットの構成によれば、紫外線照射部は、導入された枚葉紙の位置や大きさに応じて紫外線の照射を行う一方で、枚葉紙以外の部分への紫外線の照射を行わない。ここで、枚葉紙の紙端部に注目してみると、紫外線照射部は、枚葉紙の紙端部に紫外線の照射を行う一方で、枚葉紙の紙端部外側に紫外線の照射を行わない。
【0005】
このとき、枚葉紙の紙端部へ向けて照射する紫外線の積算光量は、枚葉紙の紙端部以外へ向けて照射する紫外線の積算光量に比して少なくなる。なお、積算光量とは、紫外線の照射強度および照射時間を積算したものである。具体的に説明するに、発光ダイオードは、その直下における照射強度が最も強く、発光ダイオードから遠ざかるにつれて照射強度が弱くなる。また、一直線上に並んだ複数の発光ダイオードのうち、2つの発光ダイオードの間における照射強度は、2つの発光ダイオードの紫外線が重なり合うことで、所定の照射強度を得ることができる。しかしながら、枚葉紙の紙端部における発光ダイオードを挟んで、枚葉紙の紙端部内側には、点灯する発光ダイオードが存在するが、枚葉紙の紙端部外側には、点灯する発光ダイオードは存在しない。このため、枚葉紙の紙端部における発光ダイオードは、枚葉紙の紙端部外側に点灯する発光ダイオードが存在しないため、発光ダイオードの紫外線が重なり合うことができず、所定の照射強度を得ることが困難であった。
【0006】
なお、上記のような場合において、枚葉紙の紙端部外側に発光ダイオードを設けて点灯させることが考えられるが、乾燥装置の構成上の制限から枚葉紙の紙端部外側に発光ダイオードを設けることができない場合があり、この場合において、枚葉紙の紙端部における積算光量を増加させることは困難となる。これにより、従来の乾燥装置では、枚葉紙の紙端部の乾燥を好適に行うことが難しかった。
【0007】
そこで、本発明は、印刷シートの紙端部の乾燥を好適に行うことが可能な乾燥装置およびこれを備えた印刷機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の乾燥装置は、印刷シートに塗布されたインキに、照射強度および照射時間を積算した所定の積算光量となるように照射光を照射することで、インキを硬化させて乾燥させる乾燥装置において、印刷シートに塗布されたインキに照射光を照射する光照射手段と、印刷シートの紙端部に照射される照射光の積算光量を調整可能な紙端光量調整手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、紙端光量調整手段は、印刷シートの中央部に比して、印刷シートの紙端部に照射される照射光の積算光量を増大させることができるため、印刷シートの紙端部における乾燥を好適に行うことができる。なお、所定の積算光量とは、インキを乾燥させるために必要な積算光量である。
【0010】
この場合、紙端光量調整手段は、印刷シートの紙端部に照射される光照射手段からの照射光の照射強度を調整する照射強度調整手段を有していることが、好ましい。
【0011】
この構成によれば、照射強度調整手段により、印刷シートの紙端部における照射強度を増大させることで、積算光量を増大させることができる。
【0012】
この場合、紙端光量調整手段は、印刷シートの紙端へ照射光を照射する補助光照射手段を有していることが、好ましい。
【0013】
この構成によれば、補助光照射手段を設けることで、光照射手段による照射光の照射と、補助光照射手段による照射光の照射と、を行うことができ、これにより、照射時間を長くすることができるため、印刷シートの紙端部における積算光量を増大させることができる。
【0014】
この場合、光照射手段および補助光照射手段は、印刷シートの搬送方向に並列に配設されていることが、好ましい。
【0015】
この構成によれば、光照射手段および補助光照射手段を印刷シートの搬送方向に並列に配設することで、搬送される印刷シートに対し、光照射手段による照射光の照射と、補助光照射手段による照射光の照射と、を順に行うことができる。
【0016】
この場合、紙端光量調整手段は、補助光照射手段を、印刷シートの紙端へ向けて移動させる補助光照射移動手段を有していることが、好ましい。
【0017】
この構成によれば、補助光照射移動手段により、補助光照射手段を印刷シートの紙端部へ向けて移動させることができる。これにより、異なるサイズの印刷シートが導入され、印刷シートの紙端部の位置が変わったとしても、補助光照射移動手段により、補助光照射手段から照射される照射光を、印刷シートの紙端部へ向けて好適に照射することができる。なお、補助光照射手段が印刷シートの両紙端部を照射可能なように左右一対設けた場合、補助光照射移動手段は、左右一対の補助光照射手段をそれぞれ個別に移動させることができる。このため、例えば、印刷シートの紙端部に印刷された印刷絵柄の絵柄面積率が高い場合、補助光照射移動手段は、印刷絵柄の直上に、補助光照射手段を移動させることで、照射光の照射強度を増大することができるため、印刷絵柄の乾燥を好適に行うことが可能となる。
【0018】
この場合、紙端光量調整手段は、補助光照射手段から照射される照射光の照射方向を調整可能な照射方向調整手段を有していることが、好ましい。
【0019】
この構成によれば、異なるサイズの印刷シートが導入され、印刷シートの紙端部の位置が変わったとしても、照射方向調整手段により、補助光照射手段から照射される照射光を、印刷シートの紙端部へ向けて好適に照射することができる。
【0020】
この場合、紙端光量調整手段は、印刷シートの紙端部に照射される補助光照射手段からの照射光の照射強度を調整する補助照射強度調整手段を有していることが、好ましい。
【0021】
この構成によれば、補助照射強度調整手段により、印刷シートの紙端部に、補助光照射手段からの照射光を照射することができるため、積算光量を増大させることができる。
【0022】
この場合、印刷シートに対し、光照射手段を離接移動させる離接移動手段を更に備え、離接移動手段は、印刷シートの厚さに応じて、印刷シートとの間の照射距離を設定することが、好ましい。
【0023】
この構成によれば、印刷シートの厚さに応じて、光照射手段と印刷シートとの間の照射距離を適宜調整することができるため、印刷シートに塗布されたインキを乾燥させるのに好適な照射距離とすることができる。
【0024】
この場合、紙端光量調整手段は、印刷シートの紙端部外側に照射する光照射手段の外側部分を、消灯することが、好ましい。
【0025】
この構成によれば、光照射手段は、印刷シート以外の部分に照射光を照射せず、印刷シートにのみ照射光を照射することができる。これにより、光照射手段は、必要な部分にのみ照射光を照射することができるため、使用する照射エネルギを抑制することが可能となる。
【0026】
この場合、紙端光量調整手段は、印刷シートの紙端部に印刷された印刷絵柄の絵柄面積率に応じて、印刷シートの紙端部に照射される照射光の積算光量を調整可能に構成されていることが、好ましい。
【0027】
この構成によれば、紙端光量調整手段は、印刷シートの紙端部における印刷絵柄の絵柄面積率に応じて、照射光の積算光量を調整することができる。このため、紙端光量調整手段は、例えば、絵柄面積率が大きい場合、照射光の積算光量を増大させることで、印刷絵柄を好適に乾燥させることができ、一方、絵柄面積率が小さい場合、照射光の積算光量を減少させることで、照射光の照射エネルギを抑制することができる。
【0028】
本発明の印刷機は、印刷シートを供給可能な給紙装置と、供給された印刷シートにインキを塗布する印刷装置と、印刷シートに塗布されたインキを乾燥させる請求項1ないし9のいずれか1項に記載の乾燥装置と、乾燥させた印刷シートを排出する排紙装置と、を備えたことを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、印刷シートの紙端部に照射される照射光の積算光量を増大させることができるため、印刷シートの紙端部における乾燥を好適に行うことができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の乾燥装置およびこれを備えた印刷機によれば、印刷シートの紙端部に照射される照射光の積算光量を増大させることができるため、印刷シートの紙端部における乾燥を好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、実施例1に係る乾燥装置を適用した枚葉印刷機の概略構成図である。
【図2】図2は、実施例1に係る乾燥装置を模式的に表した説明図である。
【図3】図3は、実施例2に係る乾燥装置を模式的に表した説明図である。
【図4】図4は、変形例に係る乾燥装置を模式的に表した説明図である。
【図5】図5は、実施例3に係る乾燥装置を模式的に表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付した図面を参照して、本発明に係る乾燥装置およびこれを備えた印刷機について説明する。なお、以下の実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0033】
実施例1に係る乾燥装置は、印刷シートの一種である枚葉紙に塗布されたインキを乾燥させるものであり、この乾燥装置は、枚葉印刷機に組み込まれている。なお、実施例1では、乾燥装置を、枚葉印刷機に適用して説明するが、これに限らず、他の印刷機に適用しても良い。
【0034】
図1に示すように、枚葉印刷機1は、給紙部(給紙装置)11と印刷部(印刷装置)12と排紙部(排紙装置)13とが枚葉紙(印刷シート)Sの搬送方向に直列に配置されてなり、排紙部13に乾燥部(乾燥装置)14が配置され、制御部15により各部が制御されている。
【0035】
給紙部11は、積層した複数の枚葉紙Sを、印刷部12へ向けて一枚ずつ順次供給するものである。このとき、枚葉紙Sは、サイズや厚さが異なったものが複数種用意されており、使用する枚葉紙Sの種類に応じて、各部を適宜設定する。
【0036】
印刷部12は、5つの印刷ユニット12a,12b,12c,12d,12eにより構成され、5色のインキ(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ゴールド)が用いられている。各印刷ユニット12a,12b,12c,12d,12eは、版胴、ブランケット胴および圧胴を有しており、各インキが版胴を介してブランケット胴に転移し、ブランケット胴と圧胴との間を枚葉紙Sが通過することで、印刷面となる枚葉紙Sの表面に対してインキが転写される。このとき、インキは、紫外線が照射されることで硬化する紫外線硬化性インキ(UVインキ)である。
【0037】
排紙部13は、印刷部12で印刷された枚葉紙Sを搬送し、整列した状態で積み重ねるものである。排紙部13は、枚葉紙Sの先端を保持して搬送可能な第1排紙胴21及び第2排紙胴22を有しており、第2排紙胴22に対向するように乾燥部14が設けられている。
【0038】
従って、給紙部11から印刷部12へ向けて枚葉紙Sが順次供給されると、枚葉紙Sは、印刷部12の各印刷ユニット12a,12b,12c,12d,12eのブランケット胴と圧胴との間を通過することにより、その表面にUVインキが塗布される。続いて、表面にUVインキが塗布された枚葉紙Sは、排紙部13に導入され、排紙部13に設けられた乾燥部14により、枚葉紙Sに塗布されたUVインキが硬化する。そして、硬化後の枚葉紙Sは、排紙部13のスタッカに積層されてゆく。
【0039】
次に、図2を参照して、本発明の特徴部分である乾燥部14について説明する。乾燥部14は、第2排紙胴22の軸方向に延在するように配設されており、複数のLED素子30を有する照射部(光照射手段)31と、照射部31を離接方向に移動させる離接移動機構(離接移動手段)32と、を備え、照射部31および離接移動機構32は、上記の制御部15によって制御されている。
【0040】
照射部31は、第2排紙胴22の幅、つまり、搬送される枚葉紙Sの幅の全域に対応して設けられ、第2排紙胴22に対向する面が照射面となっている。そして、照射部31の照射面に、複数のLED素子30が、第2排紙胴22の軸方向に沿って一直線上に並設されている。
【0041】
離接移動機構32は、第2排紙胴22に対し、照射部31を離接方向に移動させるものである。ここで、離接移動機構32により、照射部31を第2排紙胴22に近接させると、照射部31は、第2排紙胴22を周回する枚葉紙Sに近接し、照射部31から枚葉紙Sまでの照射距離は短くなる。このとき、照射部31と枚葉紙Sとの間の照射距離が短ければ短いほど、枚葉紙Sに対する照射部31の照射強度は強くなる。一方で、照射距離が長ければ長いほど、枚葉紙Sに対する照射部31の照射強度は弱くなる。
【0042】
制御部15は、照射部31を制御可能な照射制御部(照射強度調整手段)50と、離接移動機構32を制御可能な離接移動制御部51と、を有している。照射制御部50は、各LED素子30の消灯および点灯を制御(点滅制御)すると共に、点灯時における各LED素子30の照射光の照射強度をそれぞれ調整可能に制御している。これにより、詳細は後述するが、照射制御部50は、枚葉紙Sの紙端部Saへ向けて照射されるLED素子30の照射強度を増大させたり、また、幅方向において枚葉紙Sの紙端部Sa外に位置するLED素子30を消灯させたり、さらに、枚葉紙Sに印刷された印刷絵柄の絵柄面積率に応じて照射強度を可変する。
【0043】
離接移動制御部51は、離接移動機構32を制御することにより、照射部31と枚葉紙Sとの間の照射距離を調整可能に制御している。ここで、照射部31と枚葉紙Sとの間の照射距離は、印刷される枚葉紙Sの厚さに応じて、印刷前に予め設定(プリセット)される。つまり、枚葉紙Sの厚さに応じて照射距離を適切な距離とすることで、照射部31は、枚葉紙Sに対し好適に紫外線照射を行うことが可能となる。
【0044】
ところで、照射部31は、枚葉紙Sに照射光を照射することで枚葉紙Sを乾燥させるが、枚葉紙Sを乾燥させるには、照射部31は、所定の積算光量以上の照射光を枚葉紙Sに照射しなければならない。ここで、積算光量とは、照射強度と照射時間とを積算したものであり、所定の積算光量とは、インキを乾燥させるために必要な積算光量である。
【0045】
図2に示すように、枚葉紙Sが乾燥部14の全幅に亘って搬送される場合、枚葉紙Sの幅方向両側における両紙端部Saは、照射部31から照射される照射強度が弱いため、所定の積算光量を得ることができず、枚葉紙Sの両紙端部Saは乾燥しにくい。具体的に説明するに、一列に並んだ複数のLED素子30は、各LED素子30の直下における照射強度が、各LED素子30間における照射強度に比して強い。このとき、各LED素子30間における照射強度は、一方のLED素子30の照射強度と他方のLED素子30の照射強度とが重なり合っているため、所定の照射強度Lを得ることができ、枚葉紙Sの紙端部Sa以外の部分は、所定の照射強度Lを得ることができる。一方で、幅方向の両端部におけるLED素子30は、その外側にLED素子30が存在しないため、照射強度を重ね合わせることができず、所定の照射強度Lを得ることは難しい。
【0046】
そこで、実施例1では、上記した照射制御部50により、複数のLED素子30の照射強度を個別に調整することで、枚葉紙Sの両紙端部Saに向けて照射するLED素子30の照射強度を増大させている。なお、照射制御部50は、枚葉印刷機1へ導入される枚葉紙Sの幅に基づいて、枚葉紙Sの両紙端部Saの位置を判別すると共に、判別した枚葉紙Sの両紙端部Saの位置に基づいて、複数のLED素子30の照射強度を個別に制御する。
【0047】
具体的に、図2のL1に示すように、枚葉紙Sが乾燥部14の全幅に亘って搬送される場合、枚葉紙Sの幅方向両側における両紙端部Saは、照射部31から照射される照射強度が弱いため、所定の照射強度Lを得ることができない。この場合、照射制御部50は、図2のL2に示すように、照射部31の両端部に位置するLED素子30の照射強度を増大させる。これにより、枚葉紙Sの両紙端部Saにおいて所定の照射強度Lを得ることができる。
【0048】
また、図2のL3に示すように、照射制御部50は、枚葉紙Sが乾燥部14よりも幅狭である場合、幅方向において、枚葉紙Sの両紙端部Saの外側に位置するLED素子30を消灯させている。これにより、照射制御部50は、不要なLED素子30の照射を行うことがないため、照射部31の照射エネルギを抑制することができる。なお、この場合において、照射制御部50は、枚葉紙Sの紙端部Saへ向けて照射するLED素子30、すなわち、消灯したLED素子30の幅方向内側のLED素子30の照射強度を増大させる。
【0049】
さらに、照射制御部50は、枚葉紙Sに印刷される印刷絵柄の絵柄面積率に応じて、照射光の照射強度をそれぞれ照射可能に制御している。つまり、照射制御部50は、枚葉紙Sに印刷される印刷絵柄の絵柄面積率が高い場合、照射光の照射強度を増大させる。一方で、照射制御部50は、枚葉紙Sに印刷される印刷絵柄の絵柄面積率が低い場合、照射光の照射強度を減少させる。なお、絵柄面積率は、印刷絵柄の単位面積当たりにおけるインキの使用量を決定するために用いられる値となっている。このため、印刷絵柄の絵柄面積率が低いほど白紙に近く、印刷絵柄の絵柄面積率が高いほど濃くなる。
【0050】
以上の構成によれば、照射制御部50は、枚葉紙Sの中央部に比して、枚葉紙Sの紙端部Saに照射される照射光の照射強度を増大させることができるため、枚葉紙Sの紙端部Saにおける積算光量を増大させることができる。このため、枚葉紙Sの紙端部Saにおける乾燥を好適に行うことができる。なお、照射制御部50により照射強度を増大させるLED素子30は、1つに限らず、複数であってもよい。このとき、照射制御部50は、枚葉紙Sの紙端部Saに照射される照射光の照射強度を増大させるが、照射制御部50は、枚葉紙Sの紙端部Saへの制御と合わせて、印刷絵柄の絵柄面積率に応じて、照射光の照射強度を調整することができる。これにより、照射制御部50は、印刷絵柄の絵柄面積率が高い場合、照射光の照射強度を増大させることにより、枚葉紙Sの紙端部Saにおける乾燥を更に好適に行うことができる。一方、照射制御部50は、印刷絵柄の絵柄面積率が低い場合、照射光の照射強度を減少させることにより、枚葉紙Sの紙端部Saに照射される照射光の照射エネルギを抑制することができる。
【0051】
また、離接移動機構32により、枚葉紙Sの厚さに応じて、照射部31と枚葉紙Sとの間の照射距離を調整することができるため、枚葉紙Sに塗布されたインキを乾燥させるのに好適な照射距離とすることができる。
【0052】
さらに、照射制御部50は、枚葉紙S以外の部分に照射光を照射せず、枚葉紙Sにのみ照射光を照射することができる。これにより、照射部31は、必要な部分にのみ照射光を照射することができるため、使用する照射エネルギを抑制することが可能となる。
【実施例2】
【0053】
次に、図3を参照して、実施例2に係る乾燥部60およびこれを備えた枚葉印刷機1について説明する。なお、重複した記載を避けるべく、異なる部分についてのみ説明する。実施例1に係る乾燥部14では、枚葉紙Sの紙端部Saへ向けて照射するLED素子30の照射強度を増大させていたが、実施例2に係る乾燥部60では、実施例1とほぼ同様に構成された照射部61に加え、補助照射部(補助光照射手段)62が設けられている。
【0054】
以下、具体的に説明するに、乾燥部60は、照射部61と、補助照射部62と、補助照射部移動機構(補助光照射移動手段)63とを備え、照射部61と補助照射部62とは、枚葉紙Sの搬送方向に並設されている。照射部61は、実施例1と同様に、第2排紙胴22の幅、つまり、搬送される枚葉紙Sの幅の全域に対応して設けられ、第2排紙胴22に対向する面が照射面となっている。そして、照射部61の照射面に、複数のLED素子64が、第2排紙胴22の軸方向に沿って一直線上に並設されている。
【0055】
補助照射部62は、枚葉紙Sの幅方向中央を中心にして左右に一対設けられており、各補助照射部62は、照射部61と同様に、第2排紙胴22に対向する面が照射面となっている。そして、補助照射部62の照射面に、複数のLED素子64が、第2排紙胴22の軸方向に沿って一直線上に並設されている。
【0056】
補助照射部移動機構63は、左右一対の補助照射部62を枚葉紙Sの幅方向にそれぞれ個別に移動させるものである。そして、この補助照射部移動機構63は、制御部15に設けられた補助移動制御部65に接続されており、補助移動制御部65は、補助照射部移動機構63を制御して、各補助照射部62の移動制御を行っている。具体的に、補助移動制御部65は、一対の補助照射部62を、枚葉紙Sの紙端部Saに向けて照射光が照射されるように移動させる。
【0057】
また、補助移動制御部65は、枚葉紙Sの両紙端部Saに印刷される印刷絵柄の絵柄面積率に応じて、左右一対の補助照射部62の移動制御を行っている。つまり、補助移動制御部65は、紙端部Saに絵柄面積率が高い印刷絵柄が印刷された場合、印刷絵柄の直上となるように各補助照射部62を移動させる。
【0058】
以上の構成によれば、補助照射部移動機構63により、一対の補助照射部62を枚葉紙Sの両紙端部Saへ向けて移動させることができる。これにより、搬送される枚葉紙Sの両紙端部Saには、照射部61による照射光の照射と、補助照射部62による照射光の照射と、を行うことができ、照射時間を長くすることができるため、枚葉紙Sの紙端部Saにおける積算光量を増大させることができる。このため、枚葉紙Sの紙端部Saにおける乾燥を好適に行うことができる。また、異なるサイズの枚葉紙Sが導入され、枚葉紙Sの紙端部Saの位置が変わったとしても、補助照射部移動機構63により、各補助照射部62を適宜移動させることにより、枚葉紙Sの紙端部Saへ向けて照射光を好適に照射することができる。さらに、補助移動制御部65は、紙端部Saに絵柄面積率が高い印刷絵柄が印刷された場合、印刷絵柄の直上となるように、補助照射部移動機構63を介して各補助照射部62を移動させることにより、照射光の照射強度を増大させることができるため、印刷絵柄を好適に乾燥させることができる。
【0059】
なお、実施例2では、補助照射部移動機構63は、一対の補助照射部62を枚葉紙Sの幅方向に移動させるように構成したが、図4に示すように、変形例として、一対の補助照射部62から照射された照射光の照射方向を調整可能な照射方向調整手段として機能させても良い。この構成によれば、補助照射部移動機構63により、一対の補助照射部62からの照射光を、枚葉紙Sの両紙端部Saへ向けて照射することができる。これにより、搬送される枚葉紙Sの両紙端部Saには、照射部61による照射光の照射と、補助照射部62による照射光の照射と、を行うことができ、照射時間を長くすることができるため、枚葉紙Sの紙端部Saにおける積算光量を増大させることができる。よって、この場合においても、枚葉紙Sの紙端部Saにおける乾燥を好適に行うことができる。
【実施例3】
【0060】
次に、図5を参照して、実施例3に係る乾燥部70およびこれを備えた枚葉印刷機1について説明する。なお、重複した記載を避けるべく、異なる部分についてのみ説明する。実施例1に係る乾燥部14では、枚葉紙Sの紙端部Saへ向けて照射するLED素子30の照射強度を増大させていたが、実施例3に係る乾燥部70では、照射部71にLED素子72と補助LED素子73とが設けられている。
【0061】
以下、具体的に説明するに、照射部71は、第2排紙胴22の幅、つまり、搬送される枚葉紙Sの幅の全域に対応して設けられ、第2排紙胴22に対向する面が照射面となっている。そして、照射部71の照射面に、複数のLED素子72が、第2排紙胴22の軸方向に沿って一直線上に並設されており、また、複数の補助LED素子73が、第2排紙胴22の軸方向に沿って一直線上に並設されている。そして、複数のLED素子72と、複数の補助LED素子73とは、枚葉紙Sの搬送方向に並設されることで、2列に構成されている。
【0062】
そして、この照射部71は、制御部15に設けられた照射制御部75に接続されており、照射制御部75は、LED素子72および補助LED素子73の点滅制御を実行可能な照射強度調整手段および補助照射強度調整手段として機能する。具体的に、照射制御部75は、枚葉紙Sの紙端部Sa内に存在するLED素子72を点灯させると共に、枚葉紙Sの紙端部Sa外に存在するLED素子72を消灯させる。また、照射制御部75は、枚葉紙Sの紙端部Saに位置する補助LED素子73を点灯させる。
【0063】
以上の構成によれば、照射制御部75は、枚葉紙Sの紙端部Saに対し、LED素子72による照射光の照射と、補助LED73による照射光の照射と、を行うことができ、照射時間を長くすることができるため、枚葉紙Sの紙端部Saにおける積算光量を増大させることができる。このため、枚葉紙Sの紙端部Saにおける乾燥を好適に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のように、本発明に係る乾燥装置および印刷機は、枚葉印刷機において有用であり、特に、UVインキを塗布した枚葉紙の紙端部を乾燥させる場合に適している。
【符号の説明】
【0065】
1 枚葉印刷機
11 給紙部
12 印刷部
13 排紙部
14 乾燥部
15 制御部
21 第1排紙胴
22 第2排紙胴
30 LED素子
31 照射部
32 離接移動機構
50 照射制御部
51 離接移動制御部
60 乾燥部(実施例2)
61 照射部(実施例2)
62 補助照射部
63 補助照射部移動機構
64 LED素子(実施例2)
65 補助移動制御部
70 乾燥部(実施例3)
71 照射部
72 LED素子(実施例3)
73 補助LED素子
75 照射制御部(実施例3)
S 枚葉紙
Sa 紙端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷シートに塗布されたインキに、照射強度および照射時間を積算した所定の積算光量となるように照射光を照射することで、前記インキを硬化させて乾燥させる乾燥装置において、
前記印刷シートに塗布されたインキに照射光を照射する光照射手段と、
前記印刷シートの紙端部に照射される照射光の前記積算光量を調整可能な紙端光量調整手段と、を備えたことを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
前記紙端光量調整手段は、前記印刷シートの紙端部に照射される前記光照射手段からの照射光の照射強度を調整する照射強度調整手段を有していることを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記紙端光量調整手段は、前記印刷シートの紙端へ照射光を照射する補助光照射手段を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記光照射手段および前記補助光照射手段は、前記印刷シートの搬送方向に並列に配設されていることを特徴とする請求項3に記載の乾燥装置。
【請求項5】
前記紙端光量調整手段は、前記補助光照射手段を、前記印刷シートの紙端へ向けて移動させる補助光照射移動手段を有していることを特徴とする請求項3または4に記載の乾燥装置。
【請求項6】
前記紙端光量調整手段は、前記補助光照射手段から照射される照射光の照射方向を調整可能な照射方向調整手段を有していることを特徴とする請求項3または4に記載の乾燥装置。
【請求項7】
前記紙端光量調整手段は、前記印刷シートの紙端部に照射される前記補助光照射手段からの照射光の照射強度を調整する補助照射強度調整手段を有していることを特徴とする請求項3または4に記載の乾燥装置。
【請求項8】
前記印刷シートに対し、前記光照射手段を離接移動させる離接移動手段を更に備え、
前記離接移動手段は、前記印刷シートの厚さに応じて、前記印刷シートとの間の照射距離を設定することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の乾燥装置。
【請求項9】
前記紙端光量調整手段は、前記印刷シートの紙端部外側に照射する前記光照射手段の外側部分を、消灯することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の乾燥装置。
【請求項10】
前記紙端光量調整手段は、前記印刷シートの紙端部に印刷された印刷絵柄の絵柄面積率に応じて、前記印刷シートの紙端部に照射される照射光の前記積算光量を調整可能に構成されていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の乾燥装置。
【請求項11】
印刷シートを供給可能な給紙装置と、
供給された前記印刷シートにインキを塗布する印刷装置と、
前記印刷シートに塗布されたインキを乾燥させる請求項1ないし10のいずれか1項に記載の乾燥装置と、
乾燥させた前記印刷シートを排出する排紙装置と、を備えたことを特徴とする印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−126042(P2011−126042A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284594(P2009−284594)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(310016522)三菱重工印刷紙工機械株式会社 (75)
【Fターム(参考)】