説明

亀裂監視装置および亀裂監視方法

【課題】鋼構造物の亀裂維持管理費低減に資する低コスト、省力化を狙いとした亀裂監視装置および亀裂監視方法を提供することを目的とする。
【解決手段】構造物20において密閉空間22を有する亀裂監視材10を固着させ、疲労等による構造物の亀裂が亀裂監視材10に伝播し、亀裂監視材10にも一体的に亀裂21が入り、空気が密閉空間22に入る。この亀裂監視材10に流入する空気を感知機構26によって感知することで、構造物20の疲労等によって発生した亀裂を監視する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視対象物の亀裂の発生およびこの亀裂進展を監視する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼構造物は、繰り返し荷重を受けることで、引張荷重の作用する部位に疲労亀裂を発生させる。その疲労亀裂は初期段階では小さな亀裂であっても、繰り返し荷重を受けることによって成長し、最終的には鋼構造物の大きな変形や脆性的破壊につながる恐れがある。このような重大変状を未然に防止する目的で、鋼構造物の変状部位別に許容される変状程度を超える恐れがあった場合には、補修や補強のための工事が行われている。ただし、通常、鋼構造物の重大変状は、複数年かけて進展するため変状発生時に直ちに補修や補強を行う必要はない。また、変状の中には進展が途中で止まる場合もあるため、補修や補強を行う必要性を判定するためには変状発生後の進展を適宜監視する必要がある。
【0003】
従来、上記のような目的のために鋼構造物の亀裂をモニタリングする手法が種々開発されている。例えば、特許文献1には、疲労亀裂が生じやすい領域に連続した1本の線状センサを波形形状に折り曲げて貼り付け、亀裂による線状センサの破断を常時通電計測し、データロガーに測定データを蓄積するとともに、遠隔地に無線伝送する構造物の疲労亀裂モニタリングシステムが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、トンネル等の検出対象物の亀裂が生じやすい領域に貼り付けて亀裂検出を容易に行うことを目的としたテープとして、導電層を上下2層の絶縁層で挟み込み被覆して、最下層には対象物に接着させるための接着層を有する亀裂検出テープおよび亀裂検出システムが記載されている。
【特許文献1】特開2003−75301号公報
【特許文献2】特開2005−91167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実際の構造物の構造は複雑であり、実橋梁などでは疲労亀裂の発生が懸念される箇所は1橋に通常は数十箇所あり、さらにそれらは各々離れていることが多い。したがって、上記特許文献1に記載された構造物の疲労亀裂モニタリングシステムを用いた場合、1本の連続した線状センサを多くの箇所に配置しなければならなくなり、施工が極めて煩雑となり、無駄が多い。さらに、これら多くの箇所に設置されたセンサによって測定を行い、データを記録保存するためには100V電源等を必要とする計測機器を数多く配置しなくてはならず、またこれらの装置を常に維持管理していく必要がある。したがって、このような測定システムでは、初期投資、ランニング経費共にコスト高となり、広く採用されるには到っていない。
【0006】
また、上記特許文献2に記載された亀裂検出テープおよび亀裂検出システムを用いる場合、亀裂の発生については検出できるものの、上記特許文献1と同様に、電源や計測機器を多数配置し、維持管理する必要があり、初期投資、ランニング経費共にコスト高となってしまう。
【0007】
さらに、上記特許文献1および特許文献2において、特に亀裂をモニタリングすべき箇所が高所や狭隘な箇所である場合、亀裂のモニタリングは一層困難なものとなり、遠隔地では電源の準備も大きな費用負担となる。また、これら装置の長期にわたる維持管理にも多大な費用を要する。
【0008】
上記問題点に鑑み、本発明は、鋼構造物の亀裂維持管理費低減に資する低コスト、省力化を狙いとした亀裂監視装置および亀裂監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、構造物の亀裂監視装置であって、前記構造物に固着された密閉空間を有する亀裂監視材と、前記亀裂監視材に亀裂が入ることにより外部から前記密閉空間に空気が入ったことを感知する感知機構とを備えることを特徴とする、亀裂監視装置が提供される。
【0010】
前記感知機構は、前記亀裂監視材の前記密閉空間と空気管を介して連通する供給液タンクと、前記供給液タンクよりも下方に位置し、前記供給液タンクから落下した液体の作用により指示を出す信号指示部を備えることとしてもよい。
【0011】
前記信号指示部は、前記供給液タンクから供給された液体の重量負荷によって作動することとしてもよい。
【0012】
前記信号指示部は、前記供給液タンクから供給された液体により膨張する膨張材と、前記膨張材の膨張による負荷によって作動するスイッチと、前記スイッチの作動により信号を発する信号指示部分を備えることとしてもよい。
【0013】
前記信号指示部は、前記供給液タンクから供給された液体により発熱する発熱材と、前記発熱材の発熱によって作動するバイメタルスイッチと、前記バイメタルスイッチの作動により信号を発する信号指示部分を備えることとしてもよい。
【0014】
前記信号指示部は、前記供給液タンクから供給された液体に浸漬されることにより電圧を生じさせる陰極材および陽極材と、前記陰極材および前記陽極材の間に生じた電圧により信号を発する信号指示部分を備えることとしてもよい。
【0015】
前記信号指示部分は、正常・異常信号を発信するLEDであってもよい。
【0016】
前記信号指示部分は、正常・異常信号を発信する送信機と前記正常・異常信号を受信する受信機から構成されることとしてもよい。
【0017】
また、別の観点からの本発明によれば、構造物の亀裂監視方法であって、密閉空間を有する亀裂監視材を構造物に固着し、前記亀裂監視材に亀裂が入った場合に、前記密閉空間の内部に入る空気を感知することによって構造物の亀裂を監視することを特徴とする、亀裂監視方法が提供される。
【0018】
前記亀裂監視材に亀裂が入った場合に、前記密閉空間と連通する供給液タンクに貯留されている液体を、前記供給液タンクよりも下方に落下させることによって、構造物の亀裂を監視することとしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高所や狭隘な箇所での鋼構造物の亀裂進展を非接触で容易に測定でき、また、電源あるいは電池のない条件化でも長期にわたる測定が可能となることから、鋼構造物の補修や保全等の管理を簡便に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照にして説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態にかかる亀裂監視装置1の説明図である。亀裂監視材10は例えば有機接着剤や溶接等により構造物20に固着されており、構造物20に発生した亀裂21が伝播することにより亀裂監視材10にも亀裂21が一体的に発生することとなる。
また、亀裂監視材10の内部には密閉空間22が存在しており、亀裂監視材10の形状は例えば両端が閉塞された管状である。密閉空間22は空気管25を介して感知機構26に連通しており、密閉空間22に空気が入ったことが感知機構26によって感知されるようになっている。
【0022】
図2は、感知機構26の構成図である。この感知機構26は、密閉空間22と空気管25を介して連通する供給液タンク30および供給液タンク30と給液管31を介して連通する信号指示部35を有している。供給液タンク30の上部には給液孔栓52が備えられ、給液孔栓52より例えば水等の液体Aが供給液タンク30に流入させられ、貯留されている。また、空気管25の端部は、供給液タンク30の内部において上方に開口しており、給液管31の端部は、供給液タンク30の内部において、空気管25の端部よりも下方の位置に開口している。そして、信号指示部35は、供給液タンク30よりも下方に配置されている。
【0023】
以上のように構成された亀裂監視装置1において、構造物20に疲労等によって亀裂21が発生した場合に、その亀裂21は構造物20に固着された亀裂監視材10に伝播し、亀裂監視材10にも亀裂21が一体的に発生することとなる。
亀裂監視材10には密閉空間22が設けられており、通常は密閉された状態となっている。しかし、上述のように、亀裂監視材10に亀裂21が発生した場合、その亀裂により、外部から密閉空間22に空気が入ることとなる。すると、供給液タンク30に空気が入ることにより、密閉空間22と連通している供給液タンク30に貯留されていた液体Aが供給液タンク30から導出されることとなり、液体Aは給液管31を介して供給液タンク30より下方に設けられた信号指示部35へ自重によって落下し、信号指示部35へ流入することとなる。その結果、液体Aの信号指示部35への流入によって構造物20に発生した亀裂21が検出できることとなる。
【0024】
上述した本発明にかかる上記亀裂監視装置1における信号指示部35には様々な様式および構造が考えられる。そこで、以下に第1〜第4の実施の形態として上記亀裂監視装置1について図面を参照にして説明する。
【0025】
(第1の実施の形態)
図3(a)は、本発明の第1の実施の形態にかかる上記亀裂監視装置1の説明図であり、図3(b)は、この上記亀裂監視装置1が備える信号指示部40の拡大図である。この信号指示部40は、液体重量負荷により作動するようになっている。
【0026】
構造物20に取り付けられた取り付け治具41の下面には、蝶つがい42を介して垂れ板43が取り付けられている。垂れ板43は鉄板で構成されており、蝶つがい42を中心にして自重で下方に垂れ下がることが可能になっている。但し、取り付け治具41にはマグネット44が取り付けられており、常時は、マグネット44の磁力によって垂れ板43の先端が吸着され、図3(a)に示すように、垂れ板43は水平な姿勢に保たれている。
【0027】
垂れ板43の下面には、貯留タンク46が取り付けられてあり、この貯留タンク46に、給液管31が接続され、供給液タンク30から導出された液体Aが、この貯留タンク46に流入するようになっている。貯留タンク46には、空気抜き管45が接続されており、貯留タンク46の内部において、空気抜き管45の先端は、給液管31の先端よりも上方の位置に開口している。
【0028】
垂れ板43の上面には、蛍光板、蓄光板等からなる標識板47が貼り付けられている。マグネット44の磁力によって垂れ板43が水平な姿勢に保たれている間は、標識板47が外から見えない状態になっている。
【0029】
以上のように構成された本発明の第1の実施の形態にかかる上記亀裂監視材1にあっては、構造物20に亀裂が生じた場合、外部から密閉空間22に空気が入ることにより、液体Aが供給液タンク30から導出されて貯留タンク46に自重で流入することとなる。その結果、図4に示すように、貯留タンク46に液体Aが溜まり、その重みによって垂れ板43が蝶つがい42を中心にして下方に垂れ下がることとなる。こうして、垂れ板43が垂れ下がると、標識板47が横から見える状態となり、垂れ板43が垂れ下がったことが確認できる。
【0030】
このように、本発明の第1の実施の形態にかかる上記亀裂監視装置1を用いることで、構造物20の亀裂発生を極めて迅速に発見することが可能となる。さらに、この実施の形態においては電源や計測装置等を一切必要としないため、その維持管理は極めて簡便であり、かつ長期間にわたって使用することができる。
【0031】
(第2の実施の形態)
図5は本発明の第2の実施の形態にかかる上記亀裂監視装置1が備える膨潤材スイッチ式信号指示部50の説明図である。
この亀裂監視装置1が備える膨潤材スイッチ式信号指示部50は、供給液タンク30の下部に直接取り付けられた貯留タンク51を有している。なお、この実施の形態では、供給液タンク30には上面に給液孔栓52が設けられており、この給液孔栓52を外して供給液タンク30内に液体Aを充填できる構成になっている。また、給液管31は供給液タンク30の下面に接続されており、給液管31の下端は貯留タンク51内において開口している。但し、亀裂監視材10の密閉空間22が密閉されている間は、供給液タンク30内の液体Aは、貯留タンク51内に落下しない状態を保っている。また、貯留タンク51の側面には、空気抜き53が備えられている。
【0032】
貯留タンク51の底部には液体Aによって膨張する水膨潤滑ゴム55が設置されている。この水膨潤滑ゴム55の上方には、下端子56および上端子57で構成されるスイッチ58が設けられている。これら下端子56および上端子57の間には、バッテリー60および信号指示部分61を備える回路62が接続されている。信号指示部分61は、貯留タンク51の外部に配置されている。信号指示部分61は、例えば下端子56と上端子57が接続されると、バッテリー60の電力で点灯するLED等である。
【0033】
以上のように構成された本発明の第2の実施の形態にかかる上記亀裂監視装置1にあっては、構造物20に亀裂が生じた場合、亀裂監視材10に亀裂が伝播し、亀裂監視材10の密閉空間22に外部から空気が入ることにより、液体Aが、供給水タンク30から貯留タンク51内に自重によって、落下および流入する。そして、貯留タンク51内に流入した液体Aが水膨潤滑ゴム55と接触することにより、水膨潤滑ゴム55が膨張し、スイッチ58の下端子56を押し上げることにより、下端子56と上端子57が接続された状態となる。その結果、外部の信号指示部分61にバッテリー60からの電流が流れ、信号指示部分61は信号を表示することになる。こうして、信号指示部分61に信号が表示されたことを確認することで、構造物20に亀裂が発生したことが確認できる。
【0034】
このように、本発明の第2の実施の形態にかかる上記亀裂監視装置1を用いることで、構造物20に亀裂が発生した場合、信号指示部分61による表示を目視することで、構造物20における亀裂の発生が迅速に発見できるとともに、構造物20の維持管理にも本実施の形態は有用である。また、第2の実施の形態では、バッテリー60を用いているが、スイッチ58は常時はオフ状態であり、電力を消費していないため、長期間にわたり利用可能であり、さらに他の電源および計測装置等を必要としないためその維持管理は極めて簡便であり、かつ長期間にわたって使用することができる。
【0035】
(第3の実施の形態)
図6は本発明の第3の実施の形態にかかる上記亀裂監視装置1が備えるバイメタルスイッチ式信号指示部70の説明図である。
この亀裂監視装置1が備えるバイメタルスイッチ式信号指示部70においても、供給液タンク30の下部に貯留タンク51が直接取り付けられており、給液管31は供給液タンク30の下面に接続されている。
【0036】
貯留タンク51の底部には液体Aによって発熱する発熱材71が設置されている。この発熱材71の上方には、下端子73および上端子74で構成されるバイメタルスイッチ72が設けられている。これら下端子73および上端子74の間には、バッテリー60および信号指示部分61を備える回路62が接続されている。信号指示部分61は、例えば下端子73と上端子74が接続されると、バッテリー60の電力で点灯するLED等である。
【0037】
以上のように構成された本発明の第3の実施の形態にかかる上記亀裂監視装置1にあっては、構造物20に亀裂が生じた場合、亀裂監視材10に亀裂が伝播し、亀裂監視材10の密閉空間22に外部から空気が入ることにより、液体Aが、供給水タンク30から貯留タンク内51内に自重によって、落下および流入する。そして、貯留タンク51内に流入した液体Aが発熱材71に接触し、発熱材71が発熱する。発熱材71の発する熱によりバイメタルスイッチ72のバイメタル部分が変形し、下端子73と上端子74が接続された状態となる。その結果、外部の信号指示部分61にバッテリー60からの電流が流れ、信号指示部分61は信号を表示することになる。こうして、信号指示部分61に信号が表示されたことを確認することで、構造物20に亀裂が発生したことが確認できる。
【0038】
このように、本発明の第3の実施の形態にかかる上記亀裂監視装置1を用いることで、構造物20に亀裂が発生した場合、信号指示部分61による表示を目視することで、上記第1および第2の実施の形態と同様、構造物20における亀裂の発生が迅速に発見できるとともに、構造物20の長期の維持管理にも本実施の形態は有用である。なお、第3の実施の形態においても、上記第2の実施の形態同様、バッテリー60を用いているが、バイメタルスイッチ72は常時はオフ状態であり、電力を消費していないため、長期間にわたり利用可能であり、さらに他の電源および計測装置等を必要としないためその維持管理は極めて簡便であり、かつ長期間にわたって使用することができる。
【0039】
(第4の実施の形態)
図7は本発明の第4の実施の形態にかかる上記亀裂監視装置1が備える電解液電池式信号指示部80の説明図である。
この亀裂監視装置1が備える電解液電池式信号指示部80においても、供給液タンク30の下部に貯留タンク51が直接取り付けられており、給液管31は供給液タンク30の下面に接続されている。
【0040】
貯留タンク51の底部には電極81(a)、81(b)により構成される電池81が設けられている。電池81は、液体Aを電解液として電極81(a)、81(b)間に電圧を生じさせる構成になっている。これら電極81(a)、81(b)の間には、信号指示部分61を備える回路64が接続されている。信号指示部分61は、例えば電極81(a)と81(b)との間に電圧が生じると、その電力で点灯するLED等である。
【0041】
以上のように構成された本発明の第4の実施の形態にかかる上記亀裂監視装置1にあっては、構造物20に亀裂が生じた場合、亀裂監視材10に亀裂が伝播し、亀裂監視材10の密閉空間22に外部から空気が入ることにより、液体Aが、供給液タンク30から貯留タンク51内に自重によって、落下および流入する。そして、貯留タンク51内に液体Aが電極81(a)、81(b)双方が浸漬する程度まで流入すると、電極81(a)、81(b)間に電圧が生じ、電池81に接続している信号指示部分61に電流が流れ、信号を表示することになる。こうして、信号指示部分61に信号が表示されたことを確認することで、構造物20に亀裂が発生したことが確認できる。なお、この第4の実施の形態で上記のように海水電池を用いた場合、液体Aとして例えば海水を利用し、電池81の各電極81(a)、81(b)として、陽極としてはMg、陰極としてはAgClを用いることが考えられるが、これに限定されるものではなく、液体Aを電解液として電圧を生じさせる構成をもつものであれば足りる。
【0042】
このように、本発明の第4の実施の形態にかかる上記亀裂監視装置1を用いることで、構造物20に亀裂が発生した場合、信号表示部分61による表示を目視することで、構造物20に亀裂が発生したことが確認できる。そのため、上記第1〜第3の実施の形態と同様、構造物20における亀裂の発生が迅速に発見できるとともに、構造物20の長期の維持管理にも本実施の形態は有用である。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施の形態を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に相到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0044】
例えば、以上に説明した本発明の第1〜第4の実施の形態では、信号指示部分61の一例として、LED等の点灯によって亀裂の発生を知らせる例を説明したが、信号指示部分61は、正常・異常信号を発信する送信機と前記正常・異常信号を受信する受信機から構成することもできる。その場合、送信機と受信機として、無線送受信機等が考えられる。
【実施例】
【0045】
図8は、以下に説明する実施例を行った鉄鋼板亀裂監視装置90の説明図である。構造物として鉄鋼板100を用意し、内部密閉空間を有するアルミ製の管状亀裂監視材101を金属系の有機接着剤102によって鉄鋼板100に固着させた。また、管状亀裂監視材101の内部密閉空間に水で満たされた供給水タンク103を空気管105を介して連通させた。供給水タンク103から給水管106を介して、信号指示部として内部にLED装置110と接続した海水電池111の設けられた空タンク115を供給水タンク103より下方に連通させた。なお、海水電池111は、通常の水を用いた場合でも、電極間に電圧を生じさせることができる。
【0046】
鉄鋼板100を両端から引っ張ることで疲労させ、亀裂120を生じさせたところ、亀裂120は有機接着剤102に伝播すると共に、管状亀裂監視材101にも伝播し、管状亀裂監視材101にも亀裂120が生じた。そして、管状亀裂監視材101の内部密閉空間に空気が流入したことにより、供給水タンク103から水が流出した。その結果、海水電池111の設けられた空タンク115に水が流入し、電圧が発生し、海水電池111に接続されたLED装置110が発光した。以上の実施例から、亀裂監視材への構造物からの亀裂伝播による空気の流入を感知することによって、構造物の亀裂発生が迅速に発見できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、亀裂の発生が予測される監視対象物の表面に形成され、この監視対象物の亀裂の発生およびこの亀裂進展を監視する亀裂検出技術に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】亀裂監視材10の説明図である。
【図2】感知機構26の構成図である。
【図3】(a)本発明にかかる第1の実施の形態を示す説明図である。 (b)液体重量負荷による信号指示装置40の拡大図である。
【図4】本発明にかかる第1の実施の形態の構造物20に亀裂が発生した後の亀裂監視装置1の状態を示す説明図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態にかかる亀裂監視装置1における膨潤材スイッチ式信号指示部50の説明図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態にかかる亀裂監視装置1におけるバイメタルスイッチ式信号指示部70の説明図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態にかかる亀裂監視装置1における電解液電池式信号指示部80の説明図である。
【図8】本発明にかかる実施例を示した図である。
【符号の説明】
【0049】
1…亀裂監視装置
10…亀裂監視材
20…構造物
26…感知機構
30…供給液タンク
35…信号指示部
40…液体重量負荷による信号指示部
50…膨潤材スイッチ式信号指示部
52…給液孔栓
61…信号指示部分
70…バイメタルスイッチ式信号指示部
80…電解液電池式信号指示部
90…鉄鋼板亀裂監視装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の亀裂監視装置であって、前記構造物に固着された密閉空間を有する亀裂監視材と、前記亀裂監視材に亀裂が入ることにより外部から前記密閉空間に空気が入ったことを感知する感知機構とを備えることを特徴とする、亀裂監視装置。
【請求項2】
前記感知機構は、前記亀裂監視材の前記密閉空間と空気管を介して連通する供給液タンクと、前記供給液タンクよりも下方に位置し、前記供給液タンクから落下した液体の作用により指示を出す信号指示部を備えることを特徴とする、請求項1に記載の亀裂監視装置。
【請求項3】
前記信号指示部は、前記供給液タンクから供給された液体の重量負荷によって作動することを特徴とする、請求項2に記載の亀裂監視装置。
【請求項4】
前記信号指示部は、前記供給液タンクから供給された液体により膨張する膨張材と、前記膨張材の膨張による負荷によって作動するスイッチと、前記スイッチの作動により信号を発する信号指示部分を備えることを特徴とする、請求項2に記載の亀裂監視装置。
【請求項5】
前記信号指示部は、前記供給液タンクから供給された液体により発熱する発熱材と、前記発熱材の発熱によって作動するバイメタルスイッチと、前記バイメタルスイッチの作動により信号を発する信号指示部分を備えることを特徴とする、請求項2に記載の亀裂監視装置。
【請求項6】
前記信号指示部は、前記供給液タンクから供給された液体に浸漬されることにより電圧を生じさせる陰極材および陽極材と、前記陰極材および前記陽極材の間に生じた電圧により信号を発する信号指示部分を備えることを特徴とする、請求項2に記載の亀裂監視装置。
【請求項7】
前記信号指示部分は、正常・異常信号を発信するLEDであることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の亀裂監視装置。
【請求項8】
前記信号指示部分は、正常・異常信号を発信する送信機と前記正常・異常信号を受信する受信機から構成されることを特徴とする、請求項4〜6のいずれかに記載の亀裂監視装置。
【請求項9】
構造物の亀裂監視方法であって、密閉空間を有する亀裂監視材を構造物に固着し、前記亀裂監視材に亀裂が入った場合に、前記密閉空間の内部に入る空気を感知することによって構造物の亀裂を監視することを特徴とする、亀裂監視方法。
【請求項10】
前記亀裂監視材に亀裂が入った場合に、前記密閉空間と連通する供給液タンクに貯留されている液体を、前記供給液タンクよりも下方に落下させることによって、構造物の亀裂を監視することを特徴とする、請求項9に記載の亀裂監視方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate