説明

予測データの生成方法

【課題】監視装置を構成するニューラルネットワークによる予測データ生成方式により、各種条件により選択した学習データを使用したニューラルネットワークの学習結果から予測期間中のデータを予測直前のデータから推量し生成し予測データを生成することにある。
【解決手段】監視装置を構成するニューラルネットワークによる予測データ生成方式により、予測期間に似た条件の収集データを学習データに使用したニューラルネットワークの学習結果から予測期間中のデータを予測直前のデータから推量し生成する予測データ生成方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下水道施設等の監視データ収集において、現在のデータに継続する近未来のデータを予測して生成するデ−タの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上下水道施設内の浄水場、下水施設における管理の高度化、多様化が進み、またオペレータの負担を軽減するための自動化が進むにつれ、浄水場、下水施設の監視装置も単に設備の状態を監視する機能から進展された浄水場、下水施設の監視データのグラフ化の情報を提供するトレンドグラフ、データベースが大きな位置づけを占めてきている。
【0003】
監視装置では収集した監視データをデータベースに保存すると同時に指定したデータのトレンドグラフを表示し、熟練運転員の長年の経験やノウハウに基づいて視覚的に監視を行っている。あるいは、データベースに逐次保存されるデータをあらかじめ設定した値を超えた、あるいは下回った等の判定条件により条件が真になった場合、自動的に警報、電話等を監視者に発し、適切な処置をこうじることが行われている。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開2004−187260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の技術は次のような問題がある。
(1)監視装置で表示するトレンドグラフは収集したデータを表示し視覚的に監視を行っているが過去の同様な条件の同様なデータを利用し監視に有用に利用していない。
(2)過去のトレンドグラフを単に年月日時刻を指定し表示する方法もあるが、この方法では、現在進行中のデータと比較し近未来のデータを予測し警報発報や各種運転制御等の
的確な行動を迅速にとることができない。
【0005】
本発明は上記した従来の技術の問題点を考慮してなされたものであり、本発明の目的は、収集した実績データから学習データを各種条件により選別し、ニューラルネットワークの結合係数を学習し、汎化能力の優れたニューラルネットワークを作成し、このニューラルネットワークに基づく、予測データの生成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
つまり、その目的を達成するための手段は、
(1)請求項1において、
監視データ収集において、現在のデータに継続する近未来のデータを予測して生成する場合、その予測期間中のデータを既存のデータを利用し、ニューラルネットワークの学習データに使用し、学習済みのニューラルネットワークにより、予測期間中のデータを推量して作成する予測データの生成方法である。
【0007】
(2)請求項2において、
ニューラルネットワークの学習データには既に取得済みの監視データより期間、時刻、曜日、天候、気温等の条件を指定選択して、その条件によりいくつかの学習データを設定し、ニューラルネットワークの出力ユニットは、予測期間を一定間隔で区切った時刻に対応した監視データ値(区分点)とし、ニューラルネットワークの入力ユニットは、予測期間の直前の監視データに相当するデータを一定間隔で区切った時刻に対応した値として学習、推量する、ニューラルネットワークを利用した予測データの生成方法である。
【0008】
(3)請求項3において、
ニューラルネットワークの学習結果に予測期間の直前のデータを与えて、予測期間中の推量データ値を求め、各推量データ値を区分点に変換し、その区分点を線形に補間し、さらに乱数により、元のデータの波形に近似させたニューラルネットワークを利用した予測データの生成方法である。
【0009】
次にその作用について説明する。
本発明の請求項1〜3の発明においては、上記(1)(2)(3)のように、監視装置を構成するニューラルネットワークによる予測データ生成方式により、各種条件により選択した学習データを使用したニューラルネットワークの学習結果から予測期間中のデータを予測直前のデータから推量し生成しているので高精度な予測データ生成方法を得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本発明の監視装置を構成するニューラルネットワークによる予測データ生成方式により、各種条件により選択した学習データを使用したニューラルネットワークの学習結果から予測期間中のデータを予測直前のデータから推量し生成しているので高精度な予測データ生成方法を実現し、実用上、極めて有効性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明の実施例の予測データの生成方法を含む監視装置の一実施例の全体の構成図で、12は監視装置、1は学習データ制御部、2はニューラルネットワーク学習制御部、3はニューラルネットワーク(結合係数)、4はニューラルネットワーク推量制御部、5はワーキングメモリ(学習データ制御部1、ニューラルネットワーク学習制御部2、ニューラルネットワーク推量制御部4、入力制御部6、出力制御部7で使用する一時的に入力あるいは演算したものを記憶しておく場所、および各種条件を設定しておく学習データ選択条件を含む)、6は入力制御部、7は出力制御部、8は実績データ、9は学習データ、10は入力装置、11は出力・表示を行う装置(または他の装置への出力)、13は監視装置各機能処理部である。
【0012】
監視装置12において、収集した実績データ、各種設定値を入力装置10に入力すると、入力された値は、入力制御部6を介してワーキングメモリ5にそれぞれの実績データが記憶される。
それぞれの入力値は学習データ制御部1に入力され、ここで、ワーキングメモリ5上の実績データ、学習データ選択条件内の各種設定値すなわち予測期間、時刻、曜日、天候、気温等の条件により学習データの範囲を選択し、該当する実績データを学習データ9に出力する。
【0013】
学習データ作成結果を、出力制御部7を介して、出力・表示を行う装置11に出力・表示することもできる。
【0014】
監視装置12において、各種設定値を入力装置10に入力すると、入力された値は、入力制御部6を介してワーキングメモリ5に記憶される。また学習データ9はニューラルネットワーク学習制御部2によりをワーキングメモリ5上に記憶する。
それぞれの入力値はニューラルネットワーク学習制御部2に入力され、ここで、ワーキングメモリ5上の学習データ、学習データ選択条件内の各種設定値をもとにニューラルネットワーク学習制御部2で学習を行い、入力層と中間層間の結合係数、中間層と出力層間の結合係数を更新する。
結合係数はニューラルネットワーク(結合係数)3の内部に蓄えられる。学習結果を、出力制御部7を介して、出力・表示を行う装置11に出力・表示することもできる。
【0015】
また監視装置12において、予測期間直前の監視データを入力装置10より入力すると、入力された値は入力制御部6を介してワーキングメモリ5に記憶される。ニューラルネットワーク推量制御部4は、ニューラルネットワーク(結合係数)3の結合係数と入力値を正規化した値をもとに出力値を算出し、さらにその値を逆計算し、その値を推量値とし、結果は出力制御部7を介して、出力・表示を行う装置11に出力・表示される。
【0016】
図2は予測期間を示す一例の図である。監視装置のデータ収集間隔(サンプリング間隔)をt秒とする。予測期間をn分とする。予測期間を一定間隔で区切る間隔を本例では1分とする。
【0017】
図3は学習データ選択条件の一例を示す図である。図3の選択条件と指定例では、期間は、予測期間に相当する期間および予測直前で予測期間の2倍に相当する期間、時刻は、予測期間の開始時刻と同一の時刻を基準とするデータ、曜日は、指定無し、(指定する場合、同一曜日、平日、休日等の指定をする。)天候は、指定無し、(指定する場合、予測生成する日と同一の天候区分、天候区分は例えば1)晴れ、2)曇り、3)雨の3区分とする。)気温は、予測生成する日と気温差10度以内の日のデータを使用する。学習データ数は、100データ、選択順は、時間の新しいデータより選択する。区分方法は、期間内のデータを1分間隔の点に区分し区分した点を学習に使用する。
【0018】
図4は学習データの一例を示す図である。図3の学習データ選択条件により選択された学習データであり、この例では、予測期間の3倍の期間を学習データとしている。
【0019】
図5は監視装置内のニューラルネットワークを示す一例の概念図である。 ニューラルネットワークの構造および学習手段としては、代表的な誤差逆伝播法(バックプロパゲーション法)がある。(例えば「神経回路網モデルとコネクショニズム」、甘利俊一著、東京大学出版会に掲載されている。)
入力層以外、すなわち中間層、出力層のユニットiの入出力関係は(1)、(2)、(3)式に示される。ユニットiに対する入力をOj(j=1からN)、出力をYi、各Ojに対する結合係数をWijで表す。
入力の積和 Xi=Σ WijOj (1)
(1)式を関数f(Xi )に適用し変換する。関数としては一般に微分可能な次の(2)式のようなシグモイド関数を使うことが多い。
f(Xi)=1/{1+exp(−Xi)} (2)
出力 Yi=f(Xi) (3)
ここで Yiの値は0から1の間の数となる。
他方、入力層のユニットは入力値をそのまま出力値とする。 入力層は図4に示す学習データの内の予測期間の直前に相当する期間の区分点を正規化して入力ユニットに対応させる。中間層のユニット数は本例では出力ユニット数の半分の数とする。出力層は図4に示す学習データの内の予測期間中に相当する期間の区分点を正規化して出力ユニットに対応させる。
また、入力数値、出力数値は0から1の間の範囲に入るよう各学習データ毎に最大値、最小値を求め、その最大値と最小値の幅の逆数をスケールとし、各値を最小値で引きスケールを掛けることにより正規化する。出力数値を実際に使用するときには逆計算して各区分点として使用する。
【0020】
図6は乱数による生成方法を示す一例の図である。各区分点間を線形補間した後、区分点間の各サンプリング点に対し、指定範囲内の乱数値を求めサンプリング点に加える。指定範囲は学習データの元の収集データの各区分間の最大値、最小値の範囲とする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例のシステムの構成図である。
【図2】本発明の一実施例である予測期間を示す図である。
【図3】本発明の一実施例である学習データ選択条件を示す図である。
【図4】本発明の一実施例である学習データを示す図である。
【図5】本発明の一実施例であるニューラルネットワークを示す概念図である。
【図6】本発明の一実施例である乱数による生成方法を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
1 学習データ制御部
2 ニューラルネットワーク学習制御部
3 ニューラルネットワーク(結合係数)
4 ニューラルネットワーク推量制御部
5 ワーキングメモリ(学習データ選択条件)
6 入力制御部
7 出力制御部
8 実績データ
9 学習データ
10 入力装置
11 出力・表示を行う装置
12 監視装置
13 監視装置各機能処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視データ収集において、現在のデータに継続する近未来のデータを予測して生成する場合、その予測期間中のデータを既存のデータを利用し、ニューラルネットワークの学習データに使用し、学習済みのニューラルネットワークにより、予測期間中のデータを推量して作成する予測データの生成方法。
【請求項2】
ニューラルネットワークの学習データには既に取得済みの監視データより期間、時刻、曜日、天候、気温等の条件を指定選択して、その条件によりいくつかの学習データを設定し、ニューラルネットワークの出力ユニットは、予測期間を一定間隔で区切った時刻に対応した監視データ値(区分点)とし、ニューラルネットワークの入力ユニットは、予測期間の直前の監視データに相当するデータを一定間隔で区切った時刻に対応した値として学習、推量する、ニューラルネットワークを利用した予測データの生成方法。
【請求項3】
ニューラルネットワークの学習結果に予測期間の直前のデータを与えて、予測期間中の推量データ値を求め、各推量データ値を区分点に変換し、その区分点を線形に補間し、さらに乱数により、元のデータの波形に近似させたニューラルネットワークを利用した予測データの生成方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−268221(P2006−268221A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−83118(P2005−83118)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000003115)東洋電機製造株式会社 (380)