説明

予測モデル選択装置及び予測モデル選択方法並びにプログラム

【課題】 在庫管理における納入リードタイム等を考慮して、単一又は複数サイクルの予測精度を適切に評価して、複数の予測モデルから一つの予測モデルを好適に選択することができる予測モデル選択装置及び予測モデル選択方法並びにプログラムを提供する。
【解決手段】 評価用パラメータ設定部110が、商品の予測量の累積対象開始サイクルと累積対象終了サイクルとを設定し、予測結果評価値算出部120が、両サイクルに挟まれた累積対象サイクル内の過去の予測累積量と実績累積量とを算出し、その差分から予測誤差を算出するとともに、当該予測誤差に基づいて所定評価期間におけるそれぞれの予測モデルの評価値を算出する。そして、予測モデル選択部130が、各評価値に基づいてデータベース100内に記憶された複数の予測モデルから一の予測モデルを選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の予測モデルから一つの予測モデルを選択する予測モデル選択装置及び予測モデル選択方法並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
商品の在庫管理方式の一つとして、商品の在庫量が発注点在庫を切ったときに一定の量を発注する発注点方式の在庫管理方式が知られている。「発注点在庫」とは、過去の需要実績値に基づいて予測された当該商品の調達期間内の需要予測値に安全在庫量を加えた在庫量のことである。
【0003】
一般に、適切な需要予測が可能な場合には、需要予測値と需要実績値との予測誤差のバラツキの方が需要実績値自体のバラツキよりも小さくなるため、より少ない安全在庫量で同様の欠品率が実現できることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。例えば、需要のぶれを吸収するための安全在庫量の計算方法として、式(1)に示すような予測誤差のバラツキ度合いを用いる。尚、式(1)において、iは需要予測等を行った過去の各時点を示している。
【0004】
【数1】

【0005】
ここで、「安全係数」とは、許容可能な欠品率によって決定されるものであり、安全係数が大きいほど欠品確率は小さくなる。また、「調達期間」とは、発注してから商品が届くまでの期間のことである。尚、調達期間の単位としては、需要予測の予測単位期間(需要予測周期)を用いる。例えば、需要予測を日次で行う場合は日、週次で行う場合は週、また月次で行う場合は月が単位となる。
【0006】
しかし、未来の予測誤差のバラツキ度合いは未知であるため、一般には、過去の予測誤差のバラツキ度合いと未来の予測誤差のバラツキ度合いとが同様であるという仮定に従って、過去の予測誤差のバラツキ度合いが用いられている。また、予測誤差のバラツキ度合いが小さいほど安全在庫量が小さくなり、在庫量も少なく抑えることができるため、できるだけ予測誤差のバラツキを小さくする必要がある。そこで、予測誤差のバラツキができるだけ小さい予測モデルを選択することが、在庫量削減のための大きな課題となっている。
【0007】
一方、予測精度を評価する際の指標(評価値)として、一般的には、過去の予測誤差の標準偏差や二乗誤差平均が用いられることが多い。そこで、複数の予測モデルから一つの予測モデルを選択する際の指標としても、過去の予測誤差の標準偏差や二乗誤差平均を用いることが妥当である。
【0008】
例えば、過去の実績値を参照して予測する際に得られる予測理論値と実績値との誤差に基づいて一定期間の評価値を算出し、評価値が最も良いモデルを採用する方法が考えられている(特許文献1参照)。当該方法では、評価値として、分散又は標準偏差が採用されている。
【0009】
また、予測理論値ではなく、データベースに格納されている過去の予測量と実績量から予測誤差を算出し、一定期間の予測誤差から評価値を算出して、当該評価値が最も良い予測モデルを選択する方法もある(例えば、特許文献2参照。)。当該方法では、二乗誤差平均が評価値として採用されている。
【特許文献1】特開2000−250888号公報
【特許文献2】特開2001−014295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法では、予測理論値と実績値との誤差の標準偏差を指標としており、過去の予測量を評価している訳ではない。すなわち、特許文献1に記載の方法は、過去の予測量を取得する作業の煩わしさを抑えるために、過去の予測量に近い予測理論値を代用するというものである。しかし、予測理論値はあくまでも予測量の代用であるため、予測理論値の誤差の標準偏差が最小であっても、必ずしも過去の予測誤差が最小になるとは限らない。従って、選択されていない他の予測モデルの方が過去の予測誤差のバラツキ度合いが小さい可能性があり、必ずしも最適な予測モデルが選択されないという問題があった。
【0011】
また、上記特許文献2に記載の方法は、過去の予測誤差に基づいて評価値を算出している。しかし、例えば、7月の予測量として、6月までの実績をもとに予測した予測量、5月までの実績をもとに予測した予測量、4月までの実績をもとに予測した予測量と、同じサイクル(例えば、同月)の予測量であってもいつの時点で予測したかによって複数種の予測量が考えられ得る。上記の場合であれば、通常は、直近である6月までの実績をもとに予測した7月の予測量を使用する。しかし、実績参照終了サイクルの2サイクル先の発注点在庫量における安全在庫量を求める際には、直近の1サイクル先ではなく、2サイクル先の予測量の精度が良い方が望ましい場合もある。
【0012】
つまり、必ずしも1サイクル先が対象ではなく、2サイクル以降の予測量の精度が良い予測モデルを選択したい場合等のニーズも多い。しかし、特許文献2に記載の方法では、2サイクル先の予測量の誤差は全く考慮していないという問題がある。
【0013】
一方、在庫管理において、予測誤差のバラツキ度合いは、サイクル単位に設定される。例えば、調達期間が1サイクルより大きいNサイクルの場合における累積予測誤差のバラツキ度合いは、√N×(1サイクルの予測誤差のバラツキ度合い)となる。この仮定は、予測誤差が正規分布に従うという前提から導出されているが、実際は様々な外因(ノイズ)が含まれる。そのため、予測誤差の分布は正規分布にはならず、Nサイクルの累積予測誤差のバラツキ度合いは√N×(1サイクルの予測誤差のバラツキ度合い)ではないことが多く、適切な安全在庫が設定できずに過剰在庫や欠品の可能性が高くなっていた。
【0014】
従って、調達期間が単サイクルでない場合、1サイクルの予測誤差の評価値を指標として用いて良いのかどうかという問題があった。特に、定期発注方式における発注量の算出の際には2サイクル以上の予測量が必要となるため、複数サイクルの予測誤差のバラツキ度合いが必須となる。
【0015】
これに対して、特許文献1に記載の方法では、予測理論値を用いることから単サイクルの予測誤差しか評価できず、累積予測誤差の評価は全く考慮されていない。また、特許文献2に記載の方法では、複数サイクルの累積予測誤差の評価に関しては全く触れられていない。
【0016】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、在庫管理における納入リードタイム等を考慮して、単一又は複数サイクルの予測精度を適切に評価して、複数の予測モデルから一つの予測モデルを好適に選択することができる予測モデル選択装置及び予測モデル選択方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明による予測モデル選択装置は以下の構成を備える。即ち、
複数の予測モデルから一の予測モデルを選択する予測モデル選択装置であって、
複数の予測モデルを用いて算出された過去の予測対象の予測量及び実績量の累積期間となるサイクルを設定するサイクル設定手段と、
前記累積期間となるサイクルにおける前記予測量及び前記実績量とから予測誤差を算出する予測誤差算出手段と、
予測モデルの評価を行う期間を設定する評価期間設定手段と、
前記評価期間における複数の予測モデル各々の評価値を、前記評価期間における前記予測誤差に基づいて算出する評価値算出手段と、
前記評価値に基づき一の予測モデルを選択する予測モデル選択手段と
を備えることを特徴とする。
【0018】
また、好ましくは、前記評価値算出手段は、前記累積期間となるサイクルにおける前記予測量の累積数と前記実績量の累積数とから累積誤差数を算出し、該累積誤差数の二乗誤差平均を評価値とし、前記予測モデル選択手段は、前記評価値が最小となる一の予測モデルを選択することを特徴とする。
【0019】
さらに、好ましくは、前記評価値算出手段は、前記累積期間となるサイクルにおける前記予測量の累積数と前記実績量の累積数とから累積誤差率を算出し、該累積誤差率の二乗誤差平均を評価値とし、前記予測モデル選択手段は、前記評価値が最小となる一の予測モデルを選択することを特徴とする。
【0020】
さらにまた、好ましくは、前記評価値算出手段は、前記累積期間となるサイクルにおける前記予測量の累積数と前記実績量の累積数とから累積誤差の標準偏差を評価値として算出し、前記予測モデル選択手段は、前記標準偏差が最小となる一の予測モデルを選択することを特徴とする。
【0021】
さらにまた、好ましくは、前記サイクル設定手段は、前記累積期間の開始サイクルとなる累積対象開始サイクル及び終了サイクルとなる累積対象終了サイクルを設定し、予測誤差算出手段は、前記累積対象開始サイクルを含むサイクルから前記累積対象終了サイクルを含むサイクルまでの間の累積期間における前記予測量の累積数と前記実績量の累積数とから累積誤差を算出することを特徴とする。
【0022】
さらにまた、好ましくは、前記サイクル設定手段は、前記累積対象開始サイクルと前記累積対象終了サイクルを同一サイクルとして設定することを許容することを特徴とする。
【0023】
さらにまた、上記課題を解決するために、本発明による予測モデル選択方法は以下の構成を備える。即ち、
複数の予測モデルから一の予測モデルを選択する予測モデル選択方法であって、
複数の予測モデルを用いて算出された過去の予測対象の予測量及び実績量の累積期間となるサイクルを設定するサイクル設定工程と、
前記累積期間となるサイクルにおける前記予測量及び前記実績量とから予測誤差を算出する予測誤差算出工程と、
予測モデルの評価を行う期間を設定する評価期間設定工程と、
前記評価期間における複数の予測モデル各々の評価値を、前記評価期間における前記予測誤差に基づいて算出する評価値算出工程と、
前記評価値に基づき一の予測モデルを選択する予測モデル選択工程と
を備えることを特徴とする。
【0024】
さらにまた、上記の目的を達成するための本発明によるプログラムは以下の構成を備える。即ち、
複数の予測モデルから一の予測モデルを選択する予測モデル選択装置の制御を実現するプログラムであって、
複数の予測モデルを用いて算出された過去の予測対象の予測量及び実績量の累積期間となるサイクルを設定するサイクル設定工程のプログラムコードと、
前記累積期間となるサイクルにおける前記予測量及び前記実績量とから予測誤差を算出する予測誤差算出工程のプログラムコードと、
予測モデルの評価を行う期間を設定する評価期間設定工程のプログラムコードと、
前記評価期間における複数の予測モデル各々の評価値を、前記評価期間における前記予測誤差に基づいて算出する評価値算出工程のプログラムコードと、
前記評価値に基づき一の予測モデルを選択する予測モデル選択工程のプログラムコードと
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、在庫管理における納入リードタイム等を考慮して、単一又は複数サイクルの予測精度を適切に評価して、複数の予測モデルから一つの予測モデルを好適に選択することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る予測モデル選択装置及びその選択動作の詳細について説明する。尚、以下の実施形態では、評価サイクルを「月」とする。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る予測モデル選択装置の構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る予測モデル選択装置は、データベース100と、評価用パラメータ設定部110と、予測結果評価値算出部120と、予測モデル選択部130とを備える。
【0028】
データベース(DB)100には、アイテムマスタ101、評価用パラメータDB102、予測モデル情報DB103、需要実績DB104、及び予測結果DB105が備わっている。アイテムマスタ101には、商品等ごとに許容欠品率や調達期間等が記憶されている。評価用パラメータDB102には、累積対象開始サイクル、累積対象終了サイクル、評価期間、評価方法などの評価用パラメータが格納されている。予測モデル情報DB103には、本予測モデル選択装置で予測可能な様々な予測モデル(例えば、変動あり移動平均、変動あり指数平滑、変動なしウィンターズ等)が記憶されている。需要実績DB104には、過去の商品別・期間別の需要実績値が蓄積されている。予測結果DB105には、各予測モデルの過去の需要予測結果データが蓄積されている。
【0029】
評価用パラメータ設定部110は、評価用パラメータDB102に格納されている累積対象開始サイクル、累積対象終了サイクル、評価期間、評価方法などを設定する。予測結果評価値算出部120は、評価用パラメータ設定部110で設定された累積対象サイクル、評価対象期間について複数の予測モデルに対してそれぞれ評価値を算出する。予測モデル選択部130は、予測結果評価値算出部120で算出した評価値に基づいて、最適な予測モデルを選択する。
【0030】
図15は、本発明の一実施形態に係る予測モデル選択装置を実現する情報処理装置(コンピュータ)の細部構成を示すブロック図である。図15において、CPU201は、システムバス212に接続された各デバイスを統括的に制御する。また、RAM202は、CPU201の主メモリ、ワークエリア、一時退避領域等として機能する。さらに、ROM203は、ブートプログラムが記憶されている。
【0031】
入力制御部204は、キーボードやマウス等のポインティングデバイスで実現される入力部205からの入力を制御する。また、表示制御部206は、CRTモニタや液晶モニタ等で実現される表示部207による表示を制御する。さらに、外部メモリ制御部208は、CPU201の制御プログラムであるオペレーションシステム(OS)や、本予測モデル選択装置の各種機能を実現するためのプログラムや上記各種データベース(DB)、各種ファイル等、各種アプリケーション、各種マスタファイル、ユーザファイル等の各種データを記憶する外部メモリ209へのアクセスを制御する。
【0032】
外部メモリ209には、さらに本予測データ選択装置の各種機能を実現するための各種テーブル等が記憶されている。尚、外部メモリ209としては、ハードディスク(HD)やフレキシブルディスク(FD)、PCMCIAカードスロットにアダプタを介して接続可能なコンパクトフラッシュ(登録商標)やスマートメディア等が挙げられる。本実施形態における処理は、CPU201により外部メモリ209に記録されているプログラムが必要に応じてRAM202にロードされ、当該プログラムによる制御に基づき、CPU201によって実行される。
【0033】
また、通信I/F制御部210は、LANやインターネット等のネットワーク211を介して外部機器との通信制御処理を実行する。
【0034】
図2は、需要実績DB104に蓄積されている需要実績データ(時系列データ)の一例を示す図である。図2には、ある商品の2001年1月から2004年3月までの各月ごとの需要実績値が示されている。また、図3は、図2に示す需要実績データ(時系列データ)を折れ線グラフで表示した図である。図2及び図3に示すように、本実施形態では特定月に出庫量が大幅に落ち込むとともに、その他の月については特別な傾向がないような需要実績の商品を例に挙げる。
【0035】
また、図4は、予測結果DB105に蓄積されている過去の需要予測結果データの一例を示す図である。また、図5は、図4に示す過去の需要予測結果データの予測経緯を説明するためのイメージ図である。図4及び図5に示すように、実績参照終了月が2003年9月となっている予測結果は2003年9月までの実績データに基づいて、2003年10月〜2004年1月の4か月間の予測を実行した結果が示されている。図4及び図5に示すように、同じ商品コードで同じ出庫予定月であっても、実績参照終了サイクルが異なるデータがあることがわかる。
【0036】
図6は、実績参照期間と予測期間との関係の一例を説明するための図である。図6では、例えば、2003年10月〜2004年1月までの予測期間に対して、2001年10月〜2003年9月までの24ヶ月の実績参照期間を用いている。同様に、2003年11月〜2004年2月までの予測期間に対して、2001年11月〜2003年10月までの24ヶ月の実績参照期間を用いている。このように、図6に示す例では、予測するタイミングにより実績参照期間が異なり、1サイクルずつ右にずれていく様子が分かる。そのため、同じ出庫予定日であっても、実績参照終了サイクルが異なれば、予測量が異なる場合があると言える。
【0037】
図7は、本発明の一実施形態に係る予測モデル選択装置の動作手順の一例を説明するためのフローチャートである。まず、累積対象予測量のサイクル(本実施形態では、月)を指すパラメータα1、α2を設定する(ステップS701)。ここで、α1は累積対象開始サイクルを示し、α2は累積対象終了サイクルを示す。そして、設定されたα1及びα2に関して、実績参照終了サイクル+α1のサイクルから実績参照終了サイクル+α2のサイクルまでの累積予測誤差を評価対象の1つとすることを意味する。
【0038】
図8は、ステップS701において累積対象サイクル、評価期間、評価方法などを設定するための画面の一例を示す図である。すなわち、図8に示す画面では、商品コード毎に評価期間801、累積対象開始サイクル802、累積対象終了サイクル803、評価方法804、対象モデル(登録モデル)805を設定することが可能である。
【0039】
評価期間801は、実績のある直近サイクルからの評価実施対象サイクルである。また、累積対象開始サイクル802は、実績参照終了サイクルからのサイクル連番に当たり、実績参照終了サイクルの累積対象開始サイクル802先のサイクルから累積対象終了サイクル803先までの累積予測量を評価対象であるということを指す。評価方法804は各予測実施時における各累積予測誤差、又は、累積予測誤差の関数値を評価値に変換する評価方法を指す。評価方法としては、例えば、予測誤差や予測誤差率の標準偏差や二乗誤差平均等がある。対象モデル805は、複数の予測モデルを設定する部分であり、設定された複数の予測モデルから一つの予測モデルが選択される。
【0040】
次に、予測量を算出するための対象予測モデル群の1つ目の予測モデルを設定する(ステップS702)。尚、iは対象予測モデルの番号を指す。例えば、対象予測モデルが3つある場合は、その番号は順次1、2、3となる。次いで、累積予測量を算出する実績参照終了サイクルのカウンタ(i)を1に初期設定する(ステップS703)。
【0041】
その後、ステップS703で設定したiをもとに、累積予測量を算出する実績参照終了サイクルを確定する(ステップS704)。そして、指定した実績参照終了サイクルを持つ指定サイクルの予測量の累積予測量を求める(ステップS705)。
【0042】
図9は、ステップS705における累積予測量を算出する過程を説明するための図である。ここで、累積対象開始サイクルが1、累積対象終了サイクルが2として設定されているものとする。例えば、実績のある最新のサイクルである3月の2サイクル(Cサイクル)前に当たる1月が実績参照終了月となっている予測量のうち、累積対象開始サイクルα1である1サイクル目に当たる2月の予測量(3010)と累積対象終了サイクルα2である2サイクル目に当たる3月の予測量(3050)を取得し、2月と3月の2か月の合計を算出して6060とする。
【0043】
次に、ステップS705において求めた累積予測量と同じサイクル期間の実績累積量を求める(ステップS706)。図10は、ステップS706において過去の実績量から累積実績量を算出する過程を説明するための図である。図9に示すように、ステップS706では、過去の累積期間を1つずつずらして、実績量の累積量(累積実績量)を算出する。図9を用いて説明した同じ2か月間の実績量の合計を算出すると、6112となる。
【0044】
そして、ステップS705において求めた累積予測量とステップS706において求めた累積実績量とから累積予測誤差を求める(ステップS707)。すなわち、上述した2月と3月で比較した同じ期間の累積予測量と累積実績量との差は52となり、これを実績参照終了月が2003年1月の累積予測誤差とする。その後、次の実績参照終了サイクルのカウンタ(j+1)に基づいて算出される実績参照終了サイクルにおける予測誤差算出に移る(ステップS708)。すなわち、上記例の場合は、実績参照終了月をさらに1か月前とした2003年12月とし、同様に1月と2月の累積予測誤差を算出する。
【0045】
ここで、評価期間分のすべての予測誤差を算出していないか否かを判断する(ステップS709)。その結果、評価期間分のすべての予測誤差が算出されていない場合、すなわちjが評価期間以下の場合(Yes)はステップS704に戻って、上記処理を繰り返す。このように、上述した作業を評価期間値の回数分だけ繰り返すと、各実績参照終了月の累積予測誤差を算出することができる。図11は、図9と図10を用いて説明して算出された累積予測量と累積実績量との誤差である累積予測誤差を示す図である。
【0046】
一方、ステップS112において、評価期間分のすべての予測誤差が算出された場合、すなわちjが評価期間より大きい場合(No)はステップS710に移る。
【0047】
ステップS710では、評価期間分の各累積予測誤差から評価値を算出する。例えば、図11に示すような累積予測誤差が得られた場合は、その各実績参照終了月の累積予測誤差から次式のようにして二乗誤差平均が得られる。
【0048】
【数2】

【0049】
そして、次の予測モデル(i+1)に移る(ステップS711)。ここで、次の予測モデルがあるか否か、すなわちすべての予測モデルの評価値を算出したか否かを判断する(ステップS712)。
【0050】
その結果、すべての予測モデルについて算出してない場合は次の予測モデルがあると判断され(Yes)、ステップS703に戻って、次の予測モデルに対して上述した処理を行って評価値を算出する。一方、すべての予測モデルについて算出した場合は次の予測モデルがないと判断され(No)、算出された各予測モデルの評価値に基づいて、最も評価値が良い予測モデルを選択する(ステップS113)。
【0051】
図12は、図8に示した各対象予測モデルに対して算出された評価値の一覧を示す図である。図12に示された評価値のうち最も小さい「変動あり指数平滑」の予測モデルが本実施形態では選択されることとなる。
【0052】
図13は、ステップS705における累積予測量を算出する過程において、累積対象開始サイクルと累積対象終了サイクルとが同じ2サイクル目である場合の例を示す図である。累積対象開始サイクルと累積対象終了サイクルが同じ場合、対象となる1サイクルの予測量が評価対象となる。
【0053】
図14は、図13に示す図において予測誤差の関数を「予測誤差÷予測量」として算出した場合の予測誤差の関数値を示す図である。この関数は予測量に対する予測誤差の割合であり、予測量に対してどのくらいの割合で予測が外れているかを示している。当該関数は、例えば、出庫量の変動の幅が大きく、予測のぶれ幅が出庫量の大きさに比例すると仮定できる場合に有効である。予測誤差の関数値の評価値は、次式のようにして算出することができる。
【0054】
【数3】

【0055】
以上、評価方法として、予測誤差及び予測誤差率の二乗誤差平均を評価値とする場合について説明したが、前述の通り、予測誤差の評価方法として、例えば、予測誤差や予測誤差率の標準偏差等を用いることも勿論可能である。
【0056】
以上、実施形態例を詳述したが、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラム若しくは記憶媒体(記録媒体)等としての実施態様をとることが可能であり、具体的には、複数の機器から構成されるシステムに適用しても良いし、また、一つの機器からなる装置に適用しても良い。
【0057】
尚、本発明は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラム(実施形態では図に示すフローチャートに対応したプログラム)を、システムあるいは装置に直接あるいは遠隔から供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータが該供給されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される場合を含む。
【0058】
従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、該コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明は、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も含まれる。
【0059】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等の形態であっても良い。
【0060】
プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、MO、CD−ROM、CD−R、CD−RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD−ROM,DVD−R)などがある。
【0061】
その他、プログラムの供給方法としては、クライアントコンピュータのブラウザを用いてインターネットのホームページに接続し、該ホームページから本発明のコンピュータプログラムそのもの、もしくは圧縮され自動インストール機能を含むファイルをハードディスク等の記録媒体にダウンロードすることによっても供給できる。また、本発明のプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムファイルを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明に含まれるものである。
【0062】
また、本発明のプログラムを暗号化してCD−ROM等の記憶媒体に格納してユーザに配布し、所定の条件をクリアしたユーザに対し、インターネットを介してホームページから暗号化を解く鍵情報をダウンロードさせ、その鍵情報を使用することにより暗号化されたプログラムを実行してコンピュータにインストールさせて実現することも可能である。
【0063】
また、コンピュータが、読み出したプログラムを実行することによって、前述した実施形態の機能が実現される他、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現され得る。
【0064】
さらに、記録媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態に係る予測モデル選択装置の構成図である。
【図2】需要実績DB104に蓄積されている需要実績データ(時系列データ)の一例を示す図である。
【図3】図2に示す需要実績データ(時系列データ)を折れ線グラフで表示した図である。
【図4】予測結果DB105に蓄積されている過去の需要予測結果データの一例を示す図である。
【図5】図4に示す過去の需要予測結果データの予測経緯を説明するためのイメージ図である。
【図6】実績参照期間と予測期間との関係の一例を説明するための図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る予測モデル選択装置の動作手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【図8】ステップS701において累積対象サイクルなどの評価用パラメータを設定するための画面の一例を示す図である。
【図9】ステップS705における累積予測量を算出する過程を説明するための図である。
【図10】ステップS706において過去の実績量から累積実績量を算出する過程を説明するための図である。
【図11】図9と図10を用いて説明して算出された累積予測量と累積実績量との誤差である累積予測誤差を示す図である。
【図12】図8に示した各対象予測モデルに対して算出された評価値の一覧を示す図である。
【図13】ステップS705における累積予測量を算出する過程において、累積対象開始サイクルと累積対象終了サイクルとが同じ2サイクル目である場合の例を示す図である。
【図14】図13に示す図において予測誤差の関数を「予測誤差÷予測量」として算出した場合の予測誤差の関数値を示す図である。
【図15】本発明の一実施形態に係る予測モデル選択装置を実現する情報処理装置(コンピュータ)の細部構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0066】
100 データベース(DB)
101 アイテムマスタ
102 評価用パラメータDB
103 予測モデル情報DB
104 需要実績DB
105 予測結果DB
110 評価用パラメータ設定部
120 予測結果評価値算出部
130 予測モデル選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の予測モデルから一の予測モデルを選択する予測モデル選択装置であって、
複数の予測モデルを用いて算出された過去の予測対象の予測量及び実績量の累積期間となるサイクルを設定するサイクル設定手段と、
前記累積期間となるサイクルにおける前記予測量及び前記実績量とから予測誤差を算出する予測誤差算出手段と、
予測モデルの評価を行う期間を設定する評価期間設定手段と、
前記評価期間における複数の予測モデル各々の評価値を、前記評価期間における前記予測誤差に基づいて算出する評価値算出手段と、
前記評価値に基づき一の予測モデルを選択する予測モデル選択手段と
を備えることを特徴とする予測モデル選択装置。
【請求項2】
前記評価値算出手段は、
前記累積期間となるサイクルにおける前記予測量の累積数と前記実績量の累積数とから累積誤差数を算出し、該累積誤差数の二乗誤差平均を評価値とし、
前記予測モデル選択手段は、前記評価値が最小となる一の予測モデルを選択する
ことを特徴とする請求項1に記載の予測モデル選択装置。
【請求項3】
前記評価値算出手段は、
前記累積期間となるサイクルにおける前記予測量の累積数と前記実績量の累積数とから累積誤差率を算出し、該累積誤差率の二乗誤差平均を評価値とし、
前記予測モデル選択手段は、前記評価値が最小となる一の予測モデルを選択する
ことを特徴とする請求項1に記載の予測モデル選択装置。
【請求項4】
前記評価値算出手段は、
前記累積期間となるサイクルにおける前記予測量の累積数と前記実績量の累積数とから累積誤差の標準偏差を評価値として算出し、
前記予測モデル選択手段は、前記標準偏差が最小となる一の予測モデルを選択する
ことを特徴とする請求項1に記載の予測モデル選択装置。
【請求項5】
前記サイクル設定手段は、
前記累積期間の開始サイクルとなる累積対象開始サイクル及び終了サイクルとなる累積対象終了サイクルを設定し、
予測誤差算出手段は、
前記累積対象開始サイクルを含むサイクルから前記累積対象終了サイクルを含むサイクルまでの間の累積期間における前記予測量の累積数と前記実績量の累積数とから累積誤差を算出する
ことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の予測モデル選択装置。
【請求項6】
前記サイクル設定手段は、
前記累積対象開始サイクルと前記累積対象終了サイクルを同一サイクルとして設定することを許容することを特徴とする請求項5に記載の予測モデル選択装置。
【請求項7】
複数の予測モデルから一の予測モデルを選択する予測モデル選択方法であって、
複数の予測モデルを用いて算出された過去の予測対象の予測量及び実績量の累積期間となるサイクルを設定するサイクル設定工程と、
前記累積期間となるサイクルにおける前記予測量及び前記実績量とから予測誤差を算出する予測誤差算出工程と、
予測モデルの評価を行う期間を設定する評価期間設定工程と、
前記評価期間における複数の予測モデル各々の評価値を、前記評価期間における前記予測誤差に基づいて算出する評価値算出工程と、
前記評価値に基づき一の予測モデルを選択する予測モデル選択工程と
を備えることを特徴とする予測モデル選択方法。
【請求項8】
複数の予測モデルから一の予測モデルを選択する予測モデル選択装置の制御を実現するプログラムであって、
複数の予測モデルを用いて算出された過去の予測対象の予測量及び実績量の累積期間となるサイクルを設定するサイクル設定工程のプログラムコードと、
前記累積期間となるサイクルにおける前記予測量及び前記実績量とから予測誤差を算出する予測誤差算出工程のプログラムコードと、
予測モデルの評価を行う期間を設定する評価期間設定工程のプログラムコードと、
前記評価期間における複数の予測モデル各々の評価値を、前記評価期間における前記予測誤差に基づいて算出する評価値算出工程のプログラムコードと、
前記評価値に基づき一の予測モデルを選択する予測モデル選択工程のプログラムコードと
を備えることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−85646(P2006−85646A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−272521(P2004−272521)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(592135203)キヤノンシステムソリューションズ株式会社 (528)