予測式計算装置、そのプログラムおよびコンピュータ読取可能な記録媒体、ならびに反応時間予測方法
【課題】固気反応での反応時間に対する反応産物の反応進行率を、簡便かつ正確に予測することを可能にする。
【解決手段】反応時間(ti)、反応進行率(yi)、気体原料の濃度(ci)、流量(qi)および仕込量(mi)を含む操作条件情報を、i回(i≧2)の固気反応の試行ごとに得られるi回分格納するメモリ22と、メモリ22に格納されているi回分の上記操作条件情報をもとに、x=ci・qi・ti/mi、y=yi(i=1,2,…)として、回帰直線の式y=a・x+bを成り立たせる係数aおよびbの値を求める第1演算部23とを備えている。
【解決手段】反応時間(ti)、反応進行率(yi)、気体原料の濃度(ci)、流量(qi)および仕込量(mi)を含む操作条件情報を、i回(i≧2)の固気反応の試行ごとに得られるi回分格納するメモリ22と、メモリ22に格納されているi回分の上記操作条件情報をもとに、x=ci・qi・ti/mi、y=yi(i=1,2,…)として、回帰直線の式y=a・x+bを成り立たせる係数aおよびbの値を求める第1演算部23とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固気反応によって得られる反応産物の反応進行率と反応時間との関係を求めるのに用いる予測式計算装置、そのプログラムおよびコンピュータ読取可能な記録媒体、ならびに反応時間予測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成反応として、固体と気体との合成反応である固気反応がある。従来から、固気反応によって産業上有用な物質の製造が行われてきた。例えば、2ZnS+3O2→2ZnO+2SO2の固気反応によって得られるZnO(酸化亜鉛)は、ゴムの加硫化促進助剤、顔料、化粧品および薬品等に用いられている。
【0003】
また、非特許文献1で開示されているようにC+CO2→2COの固気反応(炭素−二酸化炭素反応)が進行中のC(炭素)では、一部が固気反応によってCOに変化しているので表面に孔が形成されている。よって、炭素−二酸化炭素反応の進行中に回収した炭素は、活性炭として用いることができる。炭素−二酸化炭素反応によって得られる活性炭は、固体触媒または担体として化学プロセスに応用される一方、電気二重層キャパシタ(EDLC)または燃料電池の電極材料等として用いられている。
【0004】
以上に述べたように、産業上有用な物質が固気反応によって製造されているが、上記製造に用いる固気反応の情報のうち、最も重要なものとして固気反応開始前の反応材料に対する反応経過後の上記反応材料の割合である反応進行率の情報がある。固気反応開始前の反応材料に対する固気反応後の上記反応材料の割合である反応進行率の情報が重要である理由を、上述の活性炭を得る場合を例にして以下で説明する。
【0005】
活性炭の性能である吸着性能を上げるためには、活性炭の孔を増やすことによって活性炭を高表面積にする必要がある。しかし、活性炭の孔を増やすために炭素−二酸化炭素反応を進行させ過ぎると、反応進行率である活性炭自体の量(収率)が減り過ぎてしまう。産業上、活性炭を製品として製造する場合には、一定量以上の収率も必要となってくる。よって、活性炭の表面積と収率とのバランスが最も良い反応時間で炭素−二酸化炭素反応を停止する必要がある。ここで、目的の収率と反応時間との関係が判っていれば、目的の収率に対する反応時間(目標反応時間)を目安に固気反応を停止させることによって、目的の収率の活性炭を得ることができる。
【0006】
固気反応では、液体と液体との反応とは異なって、着目する反応物の濃度を検出しにくく、固気反応によって生成された気体を閉鎖系から流出させながら反応を行うため、反応解析を行うことが困難であった。従って、従来までは、目的の収率と反応時間との関係を予測するために、実際に固気反応を所定時間行った後に反応を停止し、活性炭の収率を求めることを繰り返すことによって目的の収率と反応時間との関係を大まかに推測していた。そして、大まかに推測した目的の収率と反応時間との関係をもとに、目的の収率が得られると推測される反応時間だけ反応を行い、活性炭を回収していた。例を用いて説明すると、まず、炭素−二酸化炭素反応を20分間行ったところで反応を停止し、炭素の重量を測定して活性炭の収率を求める。次に、炭素−二酸化炭素反応をもう一度始めから行い、40分間経過したところで反応を停止する。そして、炭素の重量を測定して活性炭の収率を求める。上述のように反応時間を変化させながら複数回の炭素の重量測定を行うことによって、目標反応時間が実際に測定を行った反応時間のうちのどのあたりに該当するのかが大まかに推測できる。よって、大まかに推測した目標反応時間だけ炭素−二酸化炭素反応を行い、活性炭を回収していた。
【非特許文献1】立本英機、安部郁夫監修 「活性炭の応用技術 その維持管理と問題点」テクノシステム 2000年、p46-47
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の活性炭の収率予測方法にあっては、以下に示すような問題点がある。
【0008】
すなわち、目的の収率と反応時間との関係を予測する精度を上げるためには、反応時間を変化させて炭素の重量測定を行う過程を膨大な数繰り返す必要がある。しかし、上述のように反応時間を変化させて炭素−二酸化炭素反応を膨大な数だけ繰り返すことは現実的には困難である。よって、目的の収率と反応時間との関係を正確に予測することが困難であった。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、固気反応での反応時間に対する反応産物の反応進行率を、簡便かつ正確に予測することを可能にする予測式計算装置、そのプログラムおよびコンピュータ読取可能な記録媒体、ならびに反応時間予測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の予測式計算装置は、上記課題を解決するために、反応装置で、固体原料と気体原料との固気反応を、上記気体原料の流量を単位時間あたり所定の流量にして所定の一定温度で行うことによって得られる、反応時間(ti)の情報と、固気反応開始前に対する上記反応時間(ti)後の上記固体原料の割合である反応進行率(yi)の情報と、上記反応時間(ti)中での固気反応に用いた気体原料の濃度(ci)の情報と、上記気体原料の単位時間あたりの流量(qi)の情報と、上記固気反応前の上記固体原料の量である仕込量(mi)の情報とを含む操作条件情報を、i回(i≧2)の上記固気反応ごとに得られるi回分格納する操作条件情報格納部と、上記操作条件情報格納部に格納されているi回分の上記操作条件情報をもとに、x=ci・qi・ti/mi、y=yi(i=1,2,…)として、以下の回帰直線の式
y=a・x+b
を成り立たせる係数aおよびbの値を求める第1演算手段とを備えていることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の反応時間予測方法は、上記課題を解決するために、予測式計算装置による反応時間予測方法であって、上記予測式計算装置が備える第1演算手段が、反応装置で、固体原料と気体原料との固気反応を、上記気体原料の流量を単位時間あたり所定の流量にして所定の一定温度で行うことによって得られる、反応時間(ti)の情報と、固気反応開始前に対する上記反応時間(ti)後の上記固体原料の割合である反応進行率(yi)の情報と、上記反応時間(ti)中での固気反応に用いた気体原料の濃度(ci)の情報と、上記気体原料の単位時間あたりの流量(qi)の情報と、上記固気反応前の上記固体原料の量である仕込量(mi)の情報とを含む操作条件情報を、i回(i≧2)の上記固気反応ごとに得られるi回分格納している操作条件情報格納部のi回分の上記操作条件情報に基づいて、x=ci・qi・ti/mi、y=yi(i=1,2,…)として、以下の回帰直線の式
y=a・x+b
を成り立たせる係数aおよびbの値を求める第1演算工程とを含むことを特徴としている。
【0012】
なお、ci・qi・ti/miとyiとがほぼ比例関係になることは、本発明者が今回初めて見出したものである。
【0013】
上記の発明によれば、操作条件情報格納部に格納された2回以上の固気反応ごとに得られる2回以上の複数回分の反応時間(ti)、反応進行率(yi)、上記反応時間(ti)での固気反応に用いた気体原料の濃度(ci)、上記気体原料の単位時間あたりの流量(qi)、および仕込量(mi)の情報からなる操作条件情報をもとに、第1演算手段によって、x=ci・qi・ti/mi、y=yi(i=1,2,…)として、回帰直線の式y=a・x+bを成り立たせる係数aおよびbを求めることになる。上述したように、x=ci・qi・ti/miとy=yiとはほぼ比例関係になるので、第1演算手段で求めた係数aおよびbを代入したy=a・x+bの回帰直線の式によって、反応時間(ti)、反応進行率(yi)、気体原料の濃度(ci)、流量(qi)および仕込量(mi)の情報のうちの1つ以外の情報をもとに、残りの1つの値を正確に求めることが可能になる。
【0014】
例えば、反応装置A(上記反応装置で用いた固体原料の重量とは異なる重量の上記固体原料の固気反応を行う上記反応装置または上記反応装置とは別個の反応装置)での目的とする反応進行率(Y)、固気反応に用いる気体原料の濃度(C)、固気反応に用いる気体原料の単位時間あたりの流量(Q)および固気反応に用いる固体原料の量である仕込量(M)の情報と第1演算手段によって求めた係数aおよびbをもとに、以下の回帰直線の式Y=a・C・Q・E/M+bのEの解を求めることによって、反応装置Aでの固体原料と気体原料との固気反応を開始してから、上記固体原料の固気反応によって得られる反応産物が反応進行率(Y)に達する時点までの予測反応時間Eを求めることが可能になる。従って、本発明の予測式計算装置を用いることによって、反応装置Aでの固体原料の固気反応での反応産物の反応進行率に対する反応時間を簡便に予測することが可能になる。その結果、固気反応での反応時間に対する反応産物の反応進行率を、簡便かつ正確に予測することを可能にする。
【0015】
また、本発明の予測式計算装置では、目的とする反応進行率(Y)、固気反応に用いる気体原料の濃度(C)、固気反応に用いる気体原料の単位時間あたりの流量(Q)および固気反応に用いる固体原料の量である仕込量(M)の情報を取得する取得手段と、上記反応進行率(Y)、上記気体原料の濃度(C)、上記流量(Q)および上記仕込量(M)と第1演算部で求めた係数aおよびbとに基づいて、以下の計算式
Y=a・C・Q・E/M+b
の予測反応時間(E)を求める第2演算手段とをさらに備えていることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明の反応時間予測方法では、上記予測式計算装置が備える取得手段が、目的とする反応進行率(Y)、固気反応に用いる気体原料の濃度(C)、固気反応に用いる気体原料の単位時間あたりの流量(Q)および固気反応に用いる固体原料の量である仕込量(M)の情報を取得する第2取得工程と、上記予測式計算装置が備える第2演算手段が、上記反応進行率(Y)、上記気体原料の濃度(C)、上記流量(Q)および上記仕込量(M)と第1演算部で求めた係数aおよびbとに基づいて、以下の計算式
Y=a・C・Q・E/M+b
の予測反応時間Eを求める第2演算工程とをさらに含むことが好ましい。
【0017】
これにより、取得手段で取得される目的とする反応進行率(Y)、固気反応に用いる気体原料の濃度(C)、固気反応に用いる気体原料の単位時間あたりの流量(Q)および固気反応に用いる固体原料の量である仕込量(M)の情報をもとにして、第2演算手段によって予測反応時間Eを求めることになる。よって、上記反応装置以外での固体原料と気体原料との固気反応を開始してから、固体原料の固気反応によって得られる反応産物が反応進行率(Y)に達する時点までの反応時間である予測反応時間Eを、目的とする反応進行率(Y)、固気反応に用いる気体原料の濃度(C)、固気反応に用いる気体原料の単位時間あたりの流量(Q)および固気反応に用いる固体原料の量である仕込量(M)の情報から求めることが可能になる。
【0018】
従って、取得手段で取得させる反応進行率(Y)の値をユーザーが目的とする反応進行率の値にし、固気反応に用いる気体原料の濃度(C)、固気反応に用いる気体原料の単位時間あたりの流量(Q)および固気反応に用いる固体原料の量である仕込量(M)の値を実際に行う固気反応に応じた値にすれば、ユーザーが目的とする反応進行率だけの上記反応産物を得ることのできる反応時間を予測することが可能になる。
【0019】
ところで、上記予測式計算装置は、ハードウェアで実現してもよいし、プログラムをコンピュータに実行させることによって実現してもよい。具体的には、本発明に係るプログラムは、予測式計算装置としてコンピュータを動作させるプログラムであり、本発明に係る記録媒体には、当該プログラムが記録されている。
【0020】
これらのプログラムがコンピュータによって実行されると、当該コンピュータは、予測式計算装置として動作する。従って、上記予測式計算装置と同様に、固気反応での反応時間に対する反応産物の反応進行率を、簡便かつ正確に予測することを可能にする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、2回以上の複数回分の反応時間(ti)、反応進行率(yi)、気体原料の濃度(ci)、流量(qi)の情報との操作条件情報をもとに、第1演算手段によって、x=ci・qi・ti/mi、y=yi(i=1,2,…)として、回帰直線の式y=a・x+bを成り立たせる係数aおよびbを求めることになる。x=ci・qi・ti/miとy=yiとはほぼ比例関係になるので、第1演算手段で求めた係数aおよびbを代入したy=a・x+bの回帰直線の式によって、反応時間(ti)、反応進行率(yi)、気体原料の濃度(ci)、流量(qi)および仕込量(mi)の情報のうちの1つ以外の情報をもとに、残りの1つの値を正確に求めることが可能になる。従って、反応進行率(yi)、気体原料の濃度(ci)、流量(qi)および仕込量(mi)の情報をもとに、反応産物の反応進行率に対する反応時間を簡便に予測することが可能になる。
【0022】
従って、固気反応での反応時間に対する反応産物の反応進行率を、簡便かつ正確に予測することを可能にするという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1ないし図8に基づいて説明すれば、以下の通りである。本実施の形態では、C(炭素)(固体原料)とCO2(気体)(気体原料)からC(活性炭)(反応産物)を製造する場合に予測式計算システム1を利用する場合の説明を行う。
【0024】
実際にC(炭素)からC(活性炭)を製造する方法の説明を行う。まず、以下の反応式(1)の固気反応が進行することによってC(炭素)の一部がCOに変化する。その結果、COに変化したC(炭素)のかわりにC(炭素)表面に細孔ができ、細孔のできたC(炭素)がC(活性炭)となる。
【0025】
C(炭素)+CO2→2CO …反応式(1)
最初に、図2を用いて予測式計算システム1の構成の概要について説明を行う。図2は、本実施の形態における予測式計算システム1の概略的構成を示す図である。本実施の形態における予測式計算システム1は、図2に示すように、反応装置2、入力装置3、予測式計算装置4、および実機5を備えている。
【0026】
反応装置2は、固気反応を行わせるための装置である。反応装置2としては、例えば静置式の管状炉、回転式の管状炉、静置式の卓上マッフル炉、および流動層型炉などを用いることが可能である。例えば、静置式の管状炉としては図3に示す静置式小型電気炉がある。静置式の管状炉では、内径は100mm以下であることが好ましく、固気反応前の固体原料(反応材料)の量である仕込量を10g以下にして固気反応を行うことが好ましい。また、例えば、回転式の管状炉としては図4に示すロータリーキルンがある。回転式の管状炉では、内径40mm〜1000mmであることが好ましく、固気反応前の反応材料(固体原料)の量である仕込量が10gを超える固気反応にも適している。なお、管状炉以外のものでは、静置式の卓上マッフル炉では仕込量を10g以下にして固気反応を行うことが好ましく、流動層型炉では固気反応前の反応材料の量である仕込量が10gを超える固気反応にも適している。このように、反応装置2の種類は固気反応に用いる試料の量に応じて使い分けることができる。なお、反応装置2の固気反応に用いる気体(気体原料)を送り込むガスボンベの図示は省略してある。
【0027】
入力装置3は、予測式計算装置4に対して反応装置2での固気反応に係る操作条件情報を入力するためのものである。操作条件情報としては、反応装置2での固気反応に費やした時間である反応時間(ti)の情報と、上記固気反応開始前に対する上記反応時間(ti)後のC(炭素)、つまり活性炭の割合である反応進行率(yi)の情報と、上記反応時間での固気反応に用いたCO2の濃度(ci)の情報と、上記CO2の標準状態(0℃)での単位時間あたりの流量(qi)の情報と、上記固気反応前のC(炭素)の量である仕込量(mi)の情報がある。ここで、反応時間(ti)の単位はh、反応進行率(yi)の単位はなし(無次元)、CO2の濃度(ci)の単位はvol%、流量(qi)の単位はL/h、仕込量(mi)の単位はgとする。
【0028】
なお、反応式(1)で表される固気反応の場合には、固気反応開始前のCの重量に対しての反応後のCの重量の占める割合が反応進行率(yi)となる。しかし、ここで言うところの反応進行率(yi)は、例えば、ZnOを得るための以下の反応式(2)で表される固気反応の場合には、固気反応開始前のZnS重量に対する固気反応後の同重量割合を表すことになる。
【0029】
2ZnS+3O2→2ZnO+2SO2 …反応式(2)
続いて、予測式計算装置4は、入力装置3から得られる反応時間(ti)の情報と、反応進行率(yi)の情報と、CO2の濃度(ci)の情報と、流量(qi)の情報と、仕込量(mi)の情報とをもとにy=a・x+bで表される回帰直線の式の係数aおよびbの値を求めるものである。なお、予測式計算装置4の構成については後に詳述する。
【0030】
そして、実機5は、実験機(シミュレーター)である反応装置2に対して、実際の製造ラインでC(炭素)からC(活性炭)を製造するための固気反応を行う装置である。また、実機5の固気反応に用いる気体を送り込むガスボンベの図示は省略してある。
【0031】
なお、本実施の形態では、予測式計算システム1は入力装置3を含む構成になっているが、必ずしもこれに限らない。例えば、入力装置3を含まず、予測式計算装置4に直接に操作条件情報を入力する構成であってもよい。
【0032】
次に、図1を用いて予測式計算装置4の構成の概要について説明を行う。図1は本実施の形態における予測式計算装置4の構成を示す機能ブロック図である。予測式計算装置4は、図1に示すように、第1取得部21、メモリ(操作条件情報格納部)22、および第1演算部(第1演算手段)23を備えている。
【0033】
まず、第1取得部21は、入力装置3から得られる反応時間(ti)の情報と、反応進行率(yi)の情報と、CO2の濃度(ci)の情報と、流量(qi)の情報と、仕込量(mi)の情報とを取得するものである。
【0034】
続いて、メモリ22は、反応装置2で少なくとも反応時間(ti)、反応進行率(yi)、CO2の濃度(ci)、流量(qi)または仕込量(mi)のうちの1つの条件を変更してi回試行される固気反応によって得られるi回分の反応時間(ti)、反応進行率(yi)、CO2の濃度(ci)、流量(qi)および仕込量(mi)の操作条件情報を第1取得部21から得て格納している。具体的には、1回目の試行によって得られる操作条件情報として反応時間(t1)、反応進行率(y1)、CO2の濃度(c1)、流量(q1)および仕込量(m1)の情報を得ている。そして、2回目の固気反応によって得られる操作条件情報として反応時間(t2)、反応進行率(y2)、CO2の濃度(c2)、流量(q2)および仕込量(m2)の情報を第1取得部21から得ている。メモリ22は、上述のようにしてi回分の操作条件情報を第1取得部21から得て格納している。
【0035】
そして、第1演算部23は、メモリ22に格納されているi回分の操作条件情報に基づいて、所定の手順に従って演算するものである。詳しくは、上記演算は、x=ci・qi・ti/mi、y=yi(i=1,2,…)として、y=a・x+bで表される回帰直線の式を成り立たせる係数aおよびbの値を求めるものである。そして、第1演算部23で求められた係数aおよびbは、図示しない表示部に表示される。
【0036】
上記演算としては、例えばGaussの最小二乗法を利用した演算を用いることができる。具体的には、第1演算部23では、i回分の操作条件情報からそれぞれi組のx=ci・qi・ti/miおよびy=yiの値を求め、以下の数式の解aおよびbを求める演算を行う。そして、得られた解aおよびbを係数aおよびbとする。
【0037】
【数1】
【0038】
また、本実施の形態では、第1演算部23での演算にGaussの最小二乗法を利用した例を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、回帰直線の式y=a・x+bを成り立たせる係数aおよびbを求めることができる方法であれば第1演算部23での演算に他の方法を用いてもよい。
【0039】
なお、上記第1取得部21、および第1演算部23は、CPUが記憶装置に格納されたプログラムを実行し、図示しない入出力回路などの周辺回路を制御することによって実現される機能ブロックである。
【0040】
次に、実際に反応装置2を用いて得られた反応時間(ti)、反応進行率(yi)、CO2の濃度(ci)、流量(qi)および仕込量(mi)の情報をもとに、x=ci・qi・ti/mi、y=yi(i=1,2,…)としてxy座標系にプロットした結果を、図5を用いて示す。図5は、反応進行率と仕込み質量あたりのCO2モル数との関係を示した図である。ここでは、図3の静置式小型電気炉および図4のロータリーキルンをそれぞれ用いて炭素原料とCO2ガスとの固気反応を行った結果を示す。なお、図3は内径が66mmの静置式小型電気炉によって、3gの炭素原料をCO2ガスと固気反応させる場合の例を図示したものである。また、図4は、内径が250mmのロータリーキルンによって、1kgの炭素原料をCO2ガスと固気反応させる場合の例を図示したものである。なお、固気反応の温度は1000℃一定で行っている。
【0041】
上述の静置式小型電気炉およびロータリーキルンでの固気反応によって実際に得られたデータならびに設定した条件について、表1を用いて詳しく説明を行う。まず、表中の記号の白丸は、ロータリーキルンを用いてCO2濃度(CO2の濃度(ci)に対応)10%で固気反応を行ったことを示している。また、黒丸はロータリーキルンを用いてCO2濃度100%で固気反応を行ったことを示している。さらに、白三角は静置式小型電気炉を用いてCO2濃度10%で固気反応を行ったことを示しており、黒三角は、静置式小型電気炉を用いてCO2濃度100%で固気反応を行ったことを示している。なお、CO2濃度10%の場合には、残りの90%にはN2を用いている。
【0042】
【表1】
【0043】
また、表中のガス流量(流量(qi)に対応)は、25℃を標準状態としたときのCO2ガスの流量を示している。なお、反応時間(反応時間(ti)に対応)は、固気反応に費やした時間を示している。さらに仕込量(仕込量(mi)に対応)は、固気反応を開始する前も炭素原料の量を示している。なお、仕込量は、静置式小型電気炉では3gに固定し、ロータリーキルンでは約1kg(993g〜1300g)に固定して行った。そして、縦軸が反応進行率(反応進行率(yi)に対応)の値を示している。なお、反応進行率は取出量(g)を仕込量で割算することによって求めることができる。ここで言うところの取出量とは、反応停止時または反応終了時の反応材料の量である。そして、横軸は、CO2濃度の値×ガス流量の値×反応時間の値÷仕込量の値によって求められる仕込み質量あたりのCO2モル数の値を示している。ただし、本実施の形態では、横軸の値が仕込み質量あたりのCO2モル数の単位になるように、CO2濃度を無次元に(例えば、100vol%なら1,10vol%なら0.1に)、ガス流量はL/minの値を22.4で割算してモル/minの単位に、反応時間はhではなくminに換算して、x=ci・qi・ti/miに代入し計算した。このような換算をしてもa,bの係数の値が異なるだけで、y=ax+bの直線関係には変化がない。
【0044】
なお、本発明では、計算に用いる反応進行率(yi)の値は、1〜0.3(100%以下かつ30%以上)の範囲であることが好ましく1〜0.5(100%以下かつ50%以上)の範囲であることがさらに好ましい。これは、反応進行率(yi)の値が1〜0.3の範囲にあるときにci・qi・ti/miとyiとが比例関係をより正確に満たすためであり、反応進行率(yi)の値が1〜0.5の範囲にあるときにci・qi・ti/miとyiとが比例関係をさらに正確に満たすためである。
【0045】
実際に、静置式小型電気炉によって求めた上記縦軸の値と上記横軸の値とをもとにxy座標系にプロットを行うと、プロットされる座標点は、ほぼ比例関係を示す。また、ロータリーキルンによって求めた上記縦軸の値と上記横軸の値とをもとにxy座標系にプロットを行っても、プロットされる座標点は、ほぼ比例関係を示す。さらに、静置式小型電気炉によって求めた上記縦軸の値と上記横軸の値とをもとにxy座標系にプロットして得られる回帰直線上の近くに、静置式小型電気炉とは容積が異なるロータリーキルンによって求めた上記縦軸の値と上記横軸の値とをもとにした座標点は位置した。つまり、容積の異なる種類の反応装置2間であってもci・qi・ti/miとyiとは同様の比例関係を示していた。
【0046】
なお、固体材料を静置したままの反応装置2である場合、気体と接触しない内部の固体材料が増えて、容積の異なる種類の反応装置2間の比例関係が一致しなくなる可能性も考えられる。しかし、その場合には、固気接触がよい流動層型炉を少なくとも容積のより大きい側の反応装置2として使用すれば、この問題は回避できる。これは、流動層型炉では、固体材料である粒子が気体の中で浮遊した状態を保つことができるので、反応装置2の容積に依存せず固体材料である粒子を気体の中で浮遊した状態を保つことができるためである。
【0047】
また、ci・qi・ti/miとyiとがほぼ比例関係になることは、本発明者が今回初めて見出したものである。もともと、固体材料を構成している個々の粒子が固気反応によって消失し小さくなっていくとすれば、徐々に粒子の表面積は減少するので、反応進行率は時間経過とともに緩やかになる(遅くなる)と予想されていた。また、固気反応によって、固体材料を構成している個々の粒子の表面が別の物質に変わっていき、表面に生成された別の物質が反応を阻害(気体分子が内部に到達することを阻害)するとすれば、この場合にも反応進行率は時間経過とともに緩やかになる(遅くなる)と予想されていた。従って、ci・qi・ti/miとyiとが単純な比例関係になるとはこれまで予想されていなかった。しかしながら、図5に示すように、実測値をもとにx=ci・qi・ti/mi、y=yi(i=1,2,…)としてxy座標系にプロットすると、ci・qi・ti/miとyiとは、ほぼ比例関係を示す。よって、x=ci・qi・ti/mi、y=yi(i=1,2,…)として求めた回帰直線y=a・x+bは、実際のci・qi・ti/miとyiとの比例関係をより反映したものと言える。従って、x=ci・qi・ti/mi、y=yi(i=1,2,…)として求めた回帰直線y=a・x+bを用いることによって、実際のci・qi・ti/miとyiとの比例関係をより正確に予測できる。
【0048】
次に、予測式計算装置4を用いた予測式計算システム1の動作フローについて図6を用いて説明を行う。図6は、予測式計算装置4を含む予測式計算システム1での動作フローを示す図である。
【0049】
まず、ステップS1では、有機物を例えば1000℃のN2雰囲気で焼成して得られる炭素を炭素原料(反応材料)として、数g〜数kg(例えば3g)の炭素原料を反応装置2にセットする。続いて、ステップS2では、図7に示すように反応装置2の固気反応を行わせる空間の温度を室温から1000℃までN2雰囲気で昇温する。そして、ステップS3では、上記空間の温度が1000℃に到達したら(図7中のA点)1000℃の温度を維持したままでCO2ガスと炭素原料とを反応させる(固気反応開始)。また、反応式(1)の固気反応によって生じるCOガスを、反応装置2の図示しない出口から排出しながらCO2ガスの流量を単位時間あたり所定の流量にして固気反応は行う。ステップS4では、予め設定されていた時間に応じて、固気反応が完了していてもいなくても、反応装置2の固気反応を行わせる空間の温度をN2雰囲気で1000℃から室温にまで下げ始める(図7中のB点)。つまり、反応装置2での固気反応を停止させる。なお、炭素原料の粒径は、COガスの排出時に一緒に排出しにくくするために、1wt%以上が飛散しないような粒径であることが好ましい。また、炭素原料の粒径は、CO2ガスとの反応を炭素原料の中心まで進めやすくするために、5mm以下であることが好ましい。
【0050】
ステップS5では、反応装置での固気反応の操作条件情報である反応時間(ti)、反応進行率(yi)、CO2の濃度(ci)、流量(qi)および仕込量(mi)の情報を含む操作条件情報を得る。上記操作条件情報を得る方法としては、例えば、反応進行率(yi)であれば、固気反応前の仕込量(mi)に対しての固気反応後の反応産物の重量比を求めることによって得られる。また、反応時間(ti)、CO2の濃度(ci)、流量(qi)および仕込量(mi)の情報は、反応装置2に固気反応のために設定された操作条件情報を取得することによって得てもよい。
【0051】
続いてステップS6では、上記操作条件情報を予測式計算装置4に入力する。そして、ステップS7では、十分な回数分の固気反応の操作条件情報が予測式計算装置4に入力されたか否かの判定を行う。そして、十分な回数分の固気反応の操作条件情報が予測式計算装置4に入力されていた場合(ステップS7でYes)には、ステップS8に移る。また、十分な回数分の固気反応の操作条件情報が予測式計算装置4に入力されていなかった場合(ステップS7でNo)には、ステップS1に戻ってフローを繰り返す。ここで言うところの十分な回数分とは、任意に設定される回数であって、後のステップで述べる回帰直線y=a・x+bを用いて、実際のci・qi・ti/miとyiとの比例関係をどの程度正確に予測できるようにするのかに応じて設定される回数である。
【0052】
ステップS8では、2回以上の複数回分の操作条件情報をもとに、x=ci・qi・ti/mi、y=yi(i=1,2,…)として、回帰直線の式y=a・x+bを成り立たせる係数aおよびbの値を予測式計算装置4によって求める。そして、予測式計算装置4によって求められた係数aおよびbは図示しない表示部に表示される。なお、上記表示部には、係数aおよびbのみを表示してもよいし、係数aおよびbを代入した回帰直線の式y=a・x+bを表示してもよい。
【0053】
次に、図8を用いて、予測式計算装置4での動作フローについて説明を行う。図8は、予測式計算装置4での動作フローを示す図である。
【0054】
まず、ステップS21では、反応装置2での固気反応の操作条件情報である反応時間(ti)、反応進行率(yi)、CO2の濃度(ci)、流量(qi)および仕込量(mi)の情報を第1取得部21で取得する。続いて、ステップS22では、メモリ22に上記操作条件情報を、i回(i≧2)の上記固気反応ごとに得られるi回分格納する。そして、ステップS23では、2回以上の複数回分の操作条件情報をもとに、x=ci・qi・ti/mi、y=yi(i=1,2,…)として、回帰直線の式y=a・x+bを成り立たせる係数aおよびbの値を第1演算部23で求める。
【0055】
以上の構成によれば、メモリ22に格納された2回以上の固気反応ごとに得られる2回以上の複数回分の反応時間(ti)、反応進行率(yi)、上記反応時間(ti)での固気反応に用いた気体の濃度(ci)、上記気体の単位時間あたりの流量(qi)、および仕込量(mi)の情報からなる操作条件情報をもとに、第1演算部23によって、x=ci・qi・ti/mi、y=yi(i=1,2,…)として、回帰直線の式y=a・x+bを成り立たせる係数aおよびbを求めることになる。上述したように、x=ci・qi・ti/miとy=yiとはほぼ比例関係になるので、第1演算部23で求めた係数aおよびbを代入したy=a・x+bの回帰直線の式によって、反応時間(ti)、反応進行率(yi)、気体の濃度(ci)、流量(qi)および仕込量(mi)の情報のうちの1つ以外の情報をもとに、残りの1つの値を正確に求めることが可能になる。
【0056】
例えば、実機5での目的とする反応進行率(Y)、固気反応に用いる気体の濃度(C)、固気反応に用いる気体の単位時間あたりの流量(Q)および固気反応に用いる反応材料の量である仕込量(M)の情報と第1演算部23によって求めた係数aおよびbをもとに、以下の回帰直線の式Y=a・C・Q・E/M+bのEの解を求めることによって、実機5での反応材料の固気反応を開始してから、上記反応材料の固気反応によって得られる反応産物が反応進行率(Y)に達する時点までの予測反応時間Eを求めることが可能になる。従って、本発明の予測式計算装置を用いることによって、実機5での反応材料の固気反応での反応産物の反応進行率に対する反応時間を簡便に予測することが可能になる。その結果、固気反応での反応時間に対する反応産物の反応進行率を、簡便かつ正確に予測することを可能にする。
【0057】
C(活性炭)は反応式(1)で表される固気反応の途中にのみ得られる反応産物であって、固気反応が完了してしまうと反応式(1)の反応が完了した状態となって、COのみしか得られない。C(活性炭)は、反応式(1)で表される固気反応が進行するほど収率(反応進行率)が減る代わりに、表面に生じる孔が増えて高表面積になる。産業上、製品として製造する場合には、一定量以上の収率を保ちながら高い表面積をもつC(活性炭)が望まれる。よって、上記C(炭素)からC(活性炭)を反応産物として得る固気反応を行う場合に望む収率(反応進行率)の得られる反応時間を予測する方法の説明を、本実施の形態において行ってきた。
【0058】
これに対して、上述の反応式(2)で表されるような、固気反応を完了させて得られる反応産物を目的とする場合にも、固気反応の完了する反応時間を知るために本発明を用いることができる。詳しくは、実機5での反応完了時間での反応進行率は0になるので、本発明によって係数aおよびbを求め、固気反応に用いる気体の濃度(C)、固気反応に用いる気体の単位時間あたりの流量(Q)および固気反応に用いる反応材料の量である仕込量(M)の情報を決めて、任意の反応進行率(Y)を0としてY=a・C・Q・E/M+bの式に基づいて計算または第2演算部33によって予測反応時間Eを求めれば、固気反応の完了する反応時間を知ることができる。
【0059】
また、本実施の形態では、本発明によって反応時間を簡便に予測することができることについて説明したが、本発明によれば、反応進行率、気体の濃度、流量および仕込量を対象とした場合に、対象とした操作条件情報以外の操作条件情報を得ることによって、対象とした操作条件情報の値を求めることも可能である。
【0060】
なお、本実施の形態では、反応装置2と実機5とが同一のものであってもよい。
【0061】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について図9ないし図11に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0062】
本実施の形態の予測式計算装置14は、前記実施の形態1の予測式計算装置4の構成に加えて、第2取得部(取得手段)31、および第2演算部(第2演算手段)33をさらに備えている。
【0063】
最初に、図9を用いて予測式計算装置14の構成の概要について説明を行う。図9は本実施の形態における予測式計算装置14の構成を示す機能ブロック図である。図9に示すように、予測式計算装置14は、予測式計算装置4の構成に対して第2取得部31および第2演算部33をさらに備えている。
【0064】
第2取得部31は、実機5での目的とする反応進行率(Y)、実機5での固気反応に用いる気体の濃度(C)、実機5での固気反応に用いる気体の単位時間あたりの流量(Q)および実機5での固気反応に用いる反応材料の量である仕込量(M)の情報とを入力するものである。
【0065】
第2演算部33は、第2取得部31で取得される反応進行率(Y)、気体の濃度(C)、流量(Q)、および仕込量(M)の情報、ならびに第1演算部23から送られてくる係数aおよびbの情報に基づいて所定の手順に従って演算するものである。詳しくは、上記演算は、反応進行率(Y)、気体の濃度(C)、流量(Q)、仕込量(M)の情報、ならびに係数aおよびbの情報をもとに、Y=a・C・Q・E/M+bで表される式のEの値を求めるものである。そして、第2演算部33で求められた解Eを予測反応時間Eとする。ここで、解Eはユーザーが入力する任意の反応進行率(Y)に達する反応時間であるといえる。
【0066】
上記第1取得部21、第2取得部31、第1演算部23、および第2演算部33は、CPUが記憶装置に格納されたプログラムを実行し、図示しない入出力回路などの周辺回路を制御することによって実現される機能ブロックである。
【0067】
次に、予測式計算装置14を用いた予測式計算システム1での動作フローについて図10を用いて説明を行う。図10は、予測式計算装置14を含む予測式計算システム1での動作フローを示す図である。なお、ステップS41〜ステップS48は、前記実施の形態1のステップS1〜ステップS8とそれぞれ同様のフローであるので、説明を省略する。
【0068】
ステップS49では、実機5での目的とする反応進行率(Y)、実機5での固気反応に用いる気体の濃度(C)、実機5での固気反応に用いる気体の単位時間あたりの流量(Q)および実機5での固気反応に用いる反応材料の量である仕込量(M)の情報を予測式計算装置14に入力する。
【0069】
続いて、ステップS50では、反応進行率(Y)、気体の濃度(C)、流量(Q)、および仕込量(M)の情報、ならびにステップS48で求めた係数aおよびbの情報に基づいて、Y=a・C・Q・E/M+bで表される回帰直線の式のE(予測反応時間)の値を予測式計算装置14によって求める。そして、予測式計算装置14によって求められた予測反応時間Eは図示しない表示部に表示される。
【0070】
次に、図11を用いて、予測式計算装置14での動作フローについて説明を行う。図11は、予測式計算装置14での動作フローを示す図である。なお、ステップS61〜ステップS63は、前記実施の形態1のステップS21〜ステップS23とそれぞれ同様のフローであるので、説明を省略する。
【0071】
ステップS64では、ステップS63で求めた係数aおよびbの値を第1演算部23が第2演算部33に送る。続いて、ステップS65では、実機5での目的とする反応進行率(Y)、実機5での固気反応に用いる気体の濃度(C)、実機5での固気反応に用いる気体の単位時間あたりの流量(Q)および実機5での固気反応に用いる反応材料の量である仕込量(M)の情報を第2取得部31で取得する。そして、ステップS66では、反応進行率(Y)、気体の濃度(C)、流量(Q)、および仕込量(M)の情報、ならびに係数aおよびbの情報に基づいて、Y=a・C・Q・E/M+bで表される回帰直線の式のE(予測反応時間)の値を第2演算部33によって求める。
【0072】
以上の構成によれば、第2取得部31で取得される実機5での目的とする反応進行率(Y)、実機5での固気反応に用いる気体の濃度(C)、実機5での固気反応に用いる気体の単位時間あたりの流量(Q)および実機5での固気反応に用いる反応材料の量である仕込量(M)の情報をもとにして、第2演算部33によって予測反応時間Eを求めることになる。よって、実機5での反応材料の固気反応を開始してから、反応材料の固気反応によって得られる反応産物が反応進行率(Y)に達する時点までの反応時間である予測反応時間Eを、目的とする反応進行率(Y)、固気反応に用いる気体の濃度(C)、固気反応に用いる気体の単位時間あたりの流量(Q)および固気反応に用いる反応材料の量である仕込量(M)の情報から求めることが可能になる。従って、第2取得部31で取得させる反応進行率(Y)の値をユーザーが目的とする反応進行率の値にし、固気反応に用いる気体の濃度(C)、固気反応に用いる気体の単位時間あたりの流量(Q)および固気反応に用いる反応材料の量である仕込量(M)の値を実際に行う固気反応に応じた値にすれば、ユーザーが目的とする反応進行率だけの上記反応産物を得ることのできる反応時間を予測することが可能になる。
【0073】
なお、本実施の形態の予測式計算装置14に、第2演算部33で求めた解E(予測反応時間E)の値だけ実機5での固気反応の反応時間が経過した時に実機5での固気反応が停止するようにする制御信号を実機5に送信する命令送信部を備えていてもよい。この場合、第2演算部33で得られた解Eは、命令送信部に送られる構成になる。
【0074】
以上の構成によれば、ユーザーが目的とする反応進行率(Y)の得られる予測反応時間Eに達した時点で実機5での固気反応を停止させ、ユーザーが目的とする反応進行率(Y)の活性炭を得ることも可能になる。
【0075】
また、本実施の形態においては第1演算部23で求められた係数aおよびbは第2演算部33に送られるが、必ずしもこれに限定されない。例えば、第1演算部23で求められた係数aおよびbを第2演算部33に送るとともに、図示しない表示部に係数aおよびbを表示してもよい。他にも、第1演算部23で求められた係数aおよびbを第2取得部31に送る構成であってもよい。この場合、第2演算部33は、係数aおよびbの情報を第2取得部31から得る構成になる。
【0076】
なお、本実施の形態においては第2演算部33で求められた解Eは図示しない表示部に表示される構成になっているが、必ずしもこれに限らない。命令送信部に送られるが、必ずしもこれに限定されない。例えば、第2演算部33で求めた解Eを図示しない表示部に表示せずに命令送信部に送る構成であってもよい。
【0077】
また、本実施の形態においては第1取得部21と第2取得部31との2つを備える構成を示しているが、これは機能ブロックとして2つに分割して示しているのであって、必ずしもこれに限定されない。例えば、第1取得部21と第2取得部31とがそれぞれ独立の部材として備えられていてもよいし、第1取得部21と第2取得部31とが1つの部材として備えられていてもよい。
【0078】
なお、本実施の形態においては第1演算部23と第2演算部33との2つを備える構成を示しているが、これは機能ブロックとして2つに分割して示しているのであって、必ずしもこれに限定されない。例えば、第1演算部23と第2演算部33とがそれぞれ独立の部材として備えられていてもよいし、第1演算部23と第2演算部33とが1つの部材として備えられていてもよい。
【0079】
なお、本実施の形態においては、係数aおよびbは第1演算部23から第2演算部33に送られる構成になっているが、必ずしもこれに限定されない。例えば、メモリ22またはメモリ22以外の記憶装置に一旦格納され、第2演算部33で演算を行う場合に参照される構成であってもよい。
【0080】
また、本実施の形態においては、ユーザーから入力される任意の反応進行率(Y)の情報が第2取得部31で取得された後、第2演算部33に送られる構成になっているが、必ずしもこれに限定されない。例えば、メモリ22またはメモリ22以外の記憶装置に一旦格納され、第2演算部33で演算を行う場合に参照される構成であってもよい。
【0081】
なお、本実施の形態でも、反応装置2と実機5とが同一のものであってもよい。
【0082】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0083】
最後に、予測式計算装置4・14の各ブロック、特に第1取得部21、第1演算部23、第2取得部31、および第2演算部33は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0084】
すなわち、予測式計算装置4・14は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである予測式計算装置4・14の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、予測式計算装置4・14に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0085】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0086】
また、予測式計算装置4・14を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上のように、本発明の予測式計算装置、そのプログラムおよびコンピュータ読取可能な記録媒体、ならびに反応時間予測方法は、固気反応での反応時間に対する反応産物の反応進行率を、簡便かつ正確に予測することを可能にする。従って、本発明は、固気反応によって製品の製造を行う産業分野および固気反応によって得られる反応産物を利用する産業分野に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明における予測式計算装置の実施の一形態を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明における予測式計算システムの概略的構成を示す図である。
【図3】静置式小型電気炉によって、3gの炭素原料をCO2ガスと固気反応させる場合の例を図示したものである。
【図4】ロータリーキルンによって、1kgの炭素原料をCO2ガスと固気反応させる場合の例を図示したものである。
【図5】反応進行率と仕込み質量あたりのCO2モル数との関係を示した図である。
【図6】上記予測式計算装置を含む予測式計算システムでの動作フローを示す図である。
【図7】本発明における反応装置内での固気反応の進行に伴って用いる気体の種類と内部温度との関係を示す図である。
【図8】上記予測式計算装置での動作フローを示す図である。
【図9】本発明における予測式計算装置の他の実施の形態を示す機能ブロック図である。
【図10】上記予測式計算装置を含む予測式計算システムでの動作フローを示す図である。
【図11】上記予測式計算装置での動作フローを示す図である。
【符号の説明】
【0089】
1 予測式計算システム
2 反応装置
3 入力装置
4 予測式計算装置
5 実機
14 予測式計算装置
21 第1取得部
22 メモリ(操作条件情報格納部)
23 第1演算部(第1演算手段)
31 第2取得部(取得手段)
33 第2演算部(第2演算手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、固気反応によって得られる反応産物の反応進行率と反応時間との関係を求めるのに用いる予測式計算装置、そのプログラムおよびコンピュータ読取可能な記録媒体、ならびに反応時間予測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成反応として、固体と気体との合成反応である固気反応がある。従来から、固気反応によって産業上有用な物質の製造が行われてきた。例えば、2ZnS+3O2→2ZnO+2SO2の固気反応によって得られるZnO(酸化亜鉛)は、ゴムの加硫化促進助剤、顔料、化粧品および薬品等に用いられている。
【0003】
また、非特許文献1で開示されているようにC+CO2→2COの固気反応(炭素−二酸化炭素反応)が進行中のC(炭素)では、一部が固気反応によってCOに変化しているので表面に孔が形成されている。よって、炭素−二酸化炭素反応の進行中に回収した炭素は、活性炭として用いることができる。炭素−二酸化炭素反応によって得られる活性炭は、固体触媒または担体として化学プロセスに応用される一方、電気二重層キャパシタ(EDLC)または燃料電池の電極材料等として用いられている。
【0004】
以上に述べたように、産業上有用な物質が固気反応によって製造されているが、上記製造に用いる固気反応の情報のうち、最も重要なものとして固気反応開始前の反応材料に対する反応経過後の上記反応材料の割合である反応進行率の情報がある。固気反応開始前の反応材料に対する固気反応後の上記反応材料の割合である反応進行率の情報が重要である理由を、上述の活性炭を得る場合を例にして以下で説明する。
【0005】
活性炭の性能である吸着性能を上げるためには、活性炭の孔を増やすことによって活性炭を高表面積にする必要がある。しかし、活性炭の孔を増やすために炭素−二酸化炭素反応を進行させ過ぎると、反応進行率である活性炭自体の量(収率)が減り過ぎてしまう。産業上、活性炭を製品として製造する場合には、一定量以上の収率も必要となってくる。よって、活性炭の表面積と収率とのバランスが最も良い反応時間で炭素−二酸化炭素反応を停止する必要がある。ここで、目的の収率と反応時間との関係が判っていれば、目的の収率に対する反応時間(目標反応時間)を目安に固気反応を停止させることによって、目的の収率の活性炭を得ることができる。
【0006】
固気反応では、液体と液体との反応とは異なって、着目する反応物の濃度を検出しにくく、固気反応によって生成された気体を閉鎖系から流出させながら反応を行うため、反応解析を行うことが困難であった。従って、従来までは、目的の収率と反応時間との関係を予測するために、実際に固気反応を所定時間行った後に反応を停止し、活性炭の収率を求めることを繰り返すことによって目的の収率と反応時間との関係を大まかに推測していた。そして、大まかに推測した目的の収率と反応時間との関係をもとに、目的の収率が得られると推測される反応時間だけ反応を行い、活性炭を回収していた。例を用いて説明すると、まず、炭素−二酸化炭素反応を20分間行ったところで反応を停止し、炭素の重量を測定して活性炭の収率を求める。次に、炭素−二酸化炭素反応をもう一度始めから行い、40分間経過したところで反応を停止する。そして、炭素の重量を測定して活性炭の収率を求める。上述のように反応時間を変化させながら複数回の炭素の重量測定を行うことによって、目標反応時間が実際に測定を行った反応時間のうちのどのあたりに該当するのかが大まかに推測できる。よって、大まかに推測した目標反応時間だけ炭素−二酸化炭素反応を行い、活性炭を回収していた。
【非特許文献1】立本英機、安部郁夫監修 「活性炭の応用技術 その維持管理と問題点」テクノシステム 2000年、p46-47
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の活性炭の収率予測方法にあっては、以下に示すような問題点がある。
【0008】
すなわち、目的の収率と反応時間との関係を予測する精度を上げるためには、反応時間を変化させて炭素の重量測定を行う過程を膨大な数繰り返す必要がある。しかし、上述のように反応時間を変化させて炭素−二酸化炭素反応を膨大な数だけ繰り返すことは現実的には困難である。よって、目的の収率と反応時間との関係を正確に予測することが困難であった。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、固気反応での反応時間に対する反応産物の反応進行率を、簡便かつ正確に予測することを可能にする予測式計算装置、そのプログラムおよびコンピュータ読取可能な記録媒体、ならびに反応時間予測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の予測式計算装置は、上記課題を解決するために、反応装置で、固体原料と気体原料との固気反応を、上記気体原料の流量を単位時間あたり所定の流量にして所定の一定温度で行うことによって得られる、反応時間(ti)の情報と、固気反応開始前に対する上記反応時間(ti)後の上記固体原料の割合である反応進行率(yi)の情報と、上記反応時間(ti)中での固気反応に用いた気体原料の濃度(ci)の情報と、上記気体原料の単位時間あたりの流量(qi)の情報と、上記固気反応前の上記固体原料の量である仕込量(mi)の情報とを含む操作条件情報を、i回(i≧2)の上記固気反応ごとに得られるi回分格納する操作条件情報格納部と、上記操作条件情報格納部に格納されているi回分の上記操作条件情報をもとに、x=ci・qi・ti/mi、y=yi(i=1,2,…)として、以下の回帰直線の式
y=a・x+b
を成り立たせる係数aおよびbの値を求める第1演算手段とを備えていることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の反応時間予測方法は、上記課題を解決するために、予測式計算装置による反応時間予測方法であって、上記予測式計算装置が備える第1演算手段が、反応装置で、固体原料と気体原料との固気反応を、上記気体原料の流量を単位時間あたり所定の流量にして所定の一定温度で行うことによって得られる、反応時間(ti)の情報と、固気反応開始前に対する上記反応時間(ti)後の上記固体原料の割合である反応進行率(yi)の情報と、上記反応時間(ti)中での固気反応に用いた気体原料の濃度(ci)の情報と、上記気体原料の単位時間あたりの流量(qi)の情報と、上記固気反応前の上記固体原料の量である仕込量(mi)の情報とを含む操作条件情報を、i回(i≧2)の上記固気反応ごとに得られるi回分格納している操作条件情報格納部のi回分の上記操作条件情報に基づいて、x=ci・qi・ti/mi、y=yi(i=1,2,…)として、以下の回帰直線の式
y=a・x+b
を成り立たせる係数aおよびbの値を求める第1演算工程とを含むことを特徴としている。
【0012】
なお、ci・qi・ti/miとyiとがほぼ比例関係になることは、本発明者が今回初めて見出したものである。
【0013】
上記の発明によれば、操作条件情報格納部に格納された2回以上の固気反応ごとに得られる2回以上の複数回分の反応時間(ti)、反応進行率(yi)、上記反応時間(ti)での固気反応に用いた気体原料の濃度(ci)、上記気体原料の単位時間あたりの流量(qi)、および仕込量(mi)の情報からなる操作条件情報をもとに、第1演算手段によって、x=ci・qi・ti/mi、y=yi(i=1,2,…)として、回帰直線の式y=a・x+bを成り立たせる係数aおよびbを求めることになる。上述したように、x=ci・qi・ti/miとy=yiとはほぼ比例関係になるので、第1演算手段で求めた係数aおよびbを代入したy=a・x+bの回帰直線の式によって、反応時間(ti)、反応進行率(yi)、気体原料の濃度(ci)、流量(qi)および仕込量(mi)の情報のうちの1つ以外の情報をもとに、残りの1つの値を正確に求めることが可能になる。
【0014】
例えば、反応装置A(上記反応装置で用いた固体原料の重量とは異なる重量の上記固体原料の固気反応を行う上記反応装置または上記反応装置とは別個の反応装置)での目的とする反応進行率(Y)、固気反応に用いる気体原料の濃度(C)、固気反応に用いる気体原料の単位時間あたりの流量(Q)および固気反応に用いる固体原料の量である仕込量(M)の情報と第1演算手段によって求めた係数aおよびbをもとに、以下の回帰直線の式Y=a・C・Q・E/M+bのEの解を求めることによって、反応装置Aでの固体原料と気体原料との固気反応を開始してから、上記固体原料の固気反応によって得られる反応産物が反応進行率(Y)に達する時点までの予測反応時間Eを求めることが可能になる。従って、本発明の予測式計算装置を用いることによって、反応装置Aでの固体原料の固気反応での反応産物の反応進行率に対する反応時間を簡便に予測することが可能になる。その結果、固気反応での反応時間に対する反応産物の反応進行率を、簡便かつ正確に予測することを可能にする。
【0015】
また、本発明の予測式計算装置では、目的とする反応進行率(Y)、固気反応に用いる気体原料の濃度(C)、固気反応に用いる気体原料の単位時間あたりの流量(Q)および固気反応に用いる固体原料の量である仕込量(M)の情報を取得する取得手段と、上記反応進行率(Y)、上記気体原料の濃度(C)、上記流量(Q)および上記仕込量(M)と第1演算部で求めた係数aおよびbとに基づいて、以下の計算式
Y=a・C・Q・E/M+b
の予測反応時間(E)を求める第2演算手段とをさらに備えていることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明の反応時間予測方法では、上記予測式計算装置が備える取得手段が、目的とする反応進行率(Y)、固気反応に用いる気体原料の濃度(C)、固気反応に用いる気体原料の単位時間あたりの流量(Q)および固気反応に用いる固体原料の量である仕込量(M)の情報を取得する第2取得工程と、上記予測式計算装置が備える第2演算手段が、上記反応進行率(Y)、上記気体原料の濃度(C)、上記流量(Q)および上記仕込量(M)と第1演算部で求めた係数aおよびbとに基づいて、以下の計算式
Y=a・C・Q・E/M+b
の予測反応時間Eを求める第2演算工程とをさらに含むことが好ましい。
【0017】
これにより、取得手段で取得される目的とする反応進行率(Y)、固気反応に用いる気体原料の濃度(C)、固気反応に用いる気体原料の単位時間あたりの流量(Q)および固気反応に用いる固体原料の量である仕込量(M)の情報をもとにして、第2演算手段によって予測反応時間Eを求めることになる。よって、上記反応装置以外での固体原料と気体原料との固気反応を開始してから、固体原料の固気反応によって得られる反応産物が反応進行率(Y)に達する時点までの反応時間である予測反応時間Eを、目的とする反応進行率(Y)、固気反応に用いる気体原料の濃度(C)、固気反応に用いる気体原料の単位時間あたりの流量(Q)および固気反応に用いる固体原料の量である仕込量(M)の情報から求めることが可能になる。
【0018】
従って、取得手段で取得させる反応進行率(Y)の値をユーザーが目的とする反応進行率の値にし、固気反応に用いる気体原料の濃度(C)、固気反応に用いる気体原料の単位時間あたりの流量(Q)および固気反応に用いる固体原料の量である仕込量(M)の値を実際に行う固気反応に応じた値にすれば、ユーザーが目的とする反応進行率だけの上記反応産物を得ることのできる反応時間を予測することが可能になる。
【0019】
ところで、上記予測式計算装置は、ハードウェアで実現してもよいし、プログラムをコンピュータに実行させることによって実現してもよい。具体的には、本発明に係るプログラムは、予測式計算装置としてコンピュータを動作させるプログラムであり、本発明に係る記録媒体には、当該プログラムが記録されている。
【0020】
これらのプログラムがコンピュータによって実行されると、当該コンピュータは、予測式計算装置として動作する。従って、上記予測式計算装置と同様に、固気反応での反応時間に対する反応産物の反応進行率を、簡便かつ正確に予測することを可能にする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、2回以上の複数回分の反応時間(ti)、反応進行率(yi)、気体原料の濃度(ci)、流量(qi)の情報との操作条件情報をもとに、第1演算手段によって、x=ci・qi・ti/mi、y=yi(i=1,2,…)として、回帰直線の式y=a・x+bを成り立たせる係数aおよびbを求めることになる。x=ci・qi・ti/miとy=yiとはほぼ比例関係になるので、第1演算手段で求めた係数aおよびbを代入したy=a・x+bの回帰直線の式によって、反応時間(ti)、反応進行率(yi)、気体原料の濃度(ci)、流量(qi)および仕込量(mi)の情報のうちの1つ以外の情報をもとに、残りの1つの値を正確に求めることが可能になる。従って、反応進行率(yi)、気体原料の濃度(ci)、流量(qi)および仕込量(mi)の情報をもとに、反応産物の反応進行率に対する反応時間を簡便に予測することが可能になる。
【0022】
従って、固気反応での反応時間に対する反応産物の反応進行率を、簡便かつ正確に予測することを可能にするという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1ないし図8に基づいて説明すれば、以下の通りである。本実施の形態では、C(炭素)(固体原料)とCO2(気体)(気体原料)からC(活性炭)(反応産物)を製造する場合に予測式計算システム1を利用する場合の説明を行う。
【0024】
実際にC(炭素)からC(活性炭)を製造する方法の説明を行う。まず、以下の反応式(1)の固気反応が進行することによってC(炭素)の一部がCOに変化する。その結果、COに変化したC(炭素)のかわりにC(炭素)表面に細孔ができ、細孔のできたC(炭素)がC(活性炭)となる。
【0025】
C(炭素)+CO2→2CO …反応式(1)
最初に、図2を用いて予測式計算システム1の構成の概要について説明を行う。図2は、本実施の形態における予測式計算システム1の概略的構成を示す図である。本実施の形態における予測式計算システム1は、図2に示すように、反応装置2、入力装置3、予測式計算装置4、および実機5を備えている。
【0026】
反応装置2は、固気反応を行わせるための装置である。反応装置2としては、例えば静置式の管状炉、回転式の管状炉、静置式の卓上マッフル炉、および流動層型炉などを用いることが可能である。例えば、静置式の管状炉としては図3に示す静置式小型電気炉がある。静置式の管状炉では、内径は100mm以下であることが好ましく、固気反応前の固体原料(反応材料)の量である仕込量を10g以下にして固気反応を行うことが好ましい。また、例えば、回転式の管状炉としては図4に示すロータリーキルンがある。回転式の管状炉では、内径40mm〜1000mmであることが好ましく、固気反応前の反応材料(固体原料)の量である仕込量が10gを超える固気反応にも適している。なお、管状炉以外のものでは、静置式の卓上マッフル炉では仕込量を10g以下にして固気反応を行うことが好ましく、流動層型炉では固気反応前の反応材料の量である仕込量が10gを超える固気反応にも適している。このように、反応装置2の種類は固気反応に用いる試料の量に応じて使い分けることができる。なお、反応装置2の固気反応に用いる気体(気体原料)を送り込むガスボンベの図示は省略してある。
【0027】
入力装置3は、予測式計算装置4に対して反応装置2での固気反応に係る操作条件情報を入力するためのものである。操作条件情報としては、反応装置2での固気反応に費やした時間である反応時間(ti)の情報と、上記固気反応開始前に対する上記反応時間(ti)後のC(炭素)、つまり活性炭の割合である反応進行率(yi)の情報と、上記反応時間での固気反応に用いたCO2の濃度(ci)の情報と、上記CO2の標準状態(0℃)での単位時間あたりの流量(qi)の情報と、上記固気反応前のC(炭素)の量である仕込量(mi)の情報がある。ここで、反応時間(ti)の単位はh、反応進行率(yi)の単位はなし(無次元)、CO2の濃度(ci)の単位はvol%、流量(qi)の単位はL/h、仕込量(mi)の単位はgとする。
【0028】
なお、反応式(1)で表される固気反応の場合には、固気反応開始前のCの重量に対しての反応後のCの重量の占める割合が反応進行率(yi)となる。しかし、ここで言うところの反応進行率(yi)は、例えば、ZnOを得るための以下の反応式(2)で表される固気反応の場合には、固気反応開始前のZnS重量に対する固気反応後の同重量割合を表すことになる。
【0029】
2ZnS+3O2→2ZnO+2SO2 …反応式(2)
続いて、予測式計算装置4は、入力装置3から得られる反応時間(ti)の情報と、反応進行率(yi)の情報と、CO2の濃度(ci)の情報と、流量(qi)の情報と、仕込量(mi)の情報とをもとにy=a・x+bで表される回帰直線の式の係数aおよびbの値を求めるものである。なお、予測式計算装置4の構成については後に詳述する。
【0030】
そして、実機5は、実験機(シミュレーター)である反応装置2に対して、実際の製造ラインでC(炭素)からC(活性炭)を製造するための固気反応を行う装置である。また、実機5の固気反応に用いる気体を送り込むガスボンベの図示は省略してある。
【0031】
なお、本実施の形態では、予測式計算システム1は入力装置3を含む構成になっているが、必ずしもこれに限らない。例えば、入力装置3を含まず、予測式計算装置4に直接に操作条件情報を入力する構成であってもよい。
【0032】
次に、図1を用いて予測式計算装置4の構成の概要について説明を行う。図1は本実施の形態における予測式計算装置4の構成を示す機能ブロック図である。予測式計算装置4は、図1に示すように、第1取得部21、メモリ(操作条件情報格納部)22、および第1演算部(第1演算手段)23を備えている。
【0033】
まず、第1取得部21は、入力装置3から得られる反応時間(ti)の情報と、反応進行率(yi)の情報と、CO2の濃度(ci)の情報と、流量(qi)の情報と、仕込量(mi)の情報とを取得するものである。
【0034】
続いて、メモリ22は、反応装置2で少なくとも反応時間(ti)、反応進行率(yi)、CO2の濃度(ci)、流量(qi)または仕込量(mi)のうちの1つの条件を変更してi回試行される固気反応によって得られるi回分の反応時間(ti)、反応進行率(yi)、CO2の濃度(ci)、流量(qi)および仕込量(mi)の操作条件情報を第1取得部21から得て格納している。具体的には、1回目の試行によって得られる操作条件情報として反応時間(t1)、反応進行率(y1)、CO2の濃度(c1)、流量(q1)および仕込量(m1)の情報を得ている。そして、2回目の固気反応によって得られる操作条件情報として反応時間(t2)、反応進行率(y2)、CO2の濃度(c2)、流量(q2)および仕込量(m2)の情報を第1取得部21から得ている。メモリ22は、上述のようにしてi回分の操作条件情報を第1取得部21から得て格納している。
【0035】
そして、第1演算部23は、メモリ22に格納されているi回分の操作条件情報に基づいて、所定の手順に従って演算するものである。詳しくは、上記演算は、x=ci・qi・ti/mi、y=yi(i=1,2,…)として、y=a・x+bで表される回帰直線の式を成り立たせる係数aおよびbの値を求めるものである。そして、第1演算部23で求められた係数aおよびbは、図示しない表示部に表示される。
【0036】
上記演算としては、例えばGaussの最小二乗法を利用した演算を用いることができる。具体的には、第1演算部23では、i回分の操作条件情報からそれぞれi組のx=ci・qi・ti/miおよびy=yiの値を求め、以下の数式の解aおよびbを求める演算を行う。そして、得られた解aおよびbを係数aおよびbとする。
【0037】
【数1】
【0038】
また、本実施の形態では、第1演算部23での演算にGaussの最小二乗法を利用した例を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、回帰直線の式y=a・x+bを成り立たせる係数aおよびbを求めることができる方法であれば第1演算部23での演算に他の方法を用いてもよい。
【0039】
なお、上記第1取得部21、および第1演算部23は、CPUが記憶装置に格納されたプログラムを実行し、図示しない入出力回路などの周辺回路を制御することによって実現される機能ブロックである。
【0040】
次に、実際に反応装置2を用いて得られた反応時間(ti)、反応進行率(yi)、CO2の濃度(ci)、流量(qi)および仕込量(mi)の情報をもとに、x=ci・qi・ti/mi、y=yi(i=1,2,…)としてxy座標系にプロットした結果を、図5を用いて示す。図5は、反応進行率と仕込み質量あたりのCO2モル数との関係を示した図である。ここでは、図3の静置式小型電気炉および図4のロータリーキルンをそれぞれ用いて炭素原料とCO2ガスとの固気反応を行った結果を示す。なお、図3は内径が66mmの静置式小型電気炉によって、3gの炭素原料をCO2ガスと固気反応させる場合の例を図示したものである。また、図4は、内径が250mmのロータリーキルンによって、1kgの炭素原料をCO2ガスと固気反応させる場合の例を図示したものである。なお、固気反応の温度は1000℃一定で行っている。
【0041】
上述の静置式小型電気炉およびロータリーキルンでの固気反応によって実際に得られたデータならびに設定した条件について、表1を用いて詳しく説明を行う。まず、表中の記号の白丸は、ロータリーキルンを用いてCO2濃度(CO2の濃度(ci)に対応)10%で固気反応を行ったことを示している。また、黒丸はロータリーキルンを用いてCO2濃度100%で固気反応を行ったことを示している。さらに、白三角は静置式小型電気炉を用いてCO2濃度10%で固気反応を行ったことを示しており、黒三角は、静置式小型電気炉を用いてCO2濃度100%で固気反応を行ったことを示している。なお、CO2濃度10%の場合には、残りの90%にはN2を用いている。
【0042】
【表1】
【0043】
また、表中のガス流量(流量(qi)に対応)は、25℃を標準状態としたときのCO2ガスの流量を示している。なお、反応時間(反応時間(ti)に対応)は、固気反応に費やした時間を示している。さらに仕込量(仕込量(mi)に対応)は、固気反応を開始する前も炭素原料の量を示している。なお、仕込量は、静置式小型電気炉では3gに固定し、ロータリーキルンでは約1kg(993g〜1300g)に固定して行った。そして、縦軸が反応進行率(反応進行率(yi)に対応)の値を示している。なお、反応進行率は取出量(g)を仕込量で割算することによって求めることができる。ここで言うところの取出量とは、反応停止時または反応終了時の反応材料の量である。そして、横軸は、CO2濃度の値×ガス流量の値×反応時間の値÷仕込量の値によって求められる仕込み質量あたりのCO2モル数の値を示している。ただし、本実施の形態では、横軸の値が仕込み質量あたりのCO2モル数の単位になるように、CO2濃度を無次元に(例えば、100vol%なら1,10vol%なら0.1に)、ガス流量はL/minの値を22.4で割算してモル/minの単位に、反応時間はhではなくminに換算して、x=ci・qi・ti/miに代入し計算した。このような換算をしてもa,bの係数の値が異なるだけで、y=ax+bの直線関係には変化がない。
【0044】
なお、本発明では、計算に用いる反応進行率(yi)の値は、1〜0.3(100%以下かつ30%以上)の範囲であることが好ましく1〜0.5(100%以下かつ50%以上)の範囲であることがさらに好ましい。これは、反応進行率(yi)の値が1〜0.3の範囲にあるときにci・qi・ti/miとyiとが比例関係をより正確に満たすためであり、反応進行率(yi)の値が1〜0.5の範囲にあるときにci・qi・ti/miとyiとが比例関係をさらに正確に満たすためである。
【0045】
実際に、静置式小型電気炉によって求めた上記縦軸の値と上記横軸の値とをもとにxy座標系にプロットを行うと、プロットされる座標点は、ほぼ比例関係を示す。また、ロータリーキルンによって求めた上記縦軸の値と上記横軸の値とをもとにxy座標系にプロットを行っても、プロットされる座標点は、ほぼ比例関係を示す。さらに、静置式小型電気炉によって求めた上記縦軸の値と上記横軸の値とをもとにxy座標系にプロットして得られる回帰直線上の近くに、静置式小型電気炉とは容積が異なるロータリーキルンによって求めた上記縦軸の値と上記横軸の値とをもとにした座標点は位置した。つまり、容積の異なる種類の反応装置2間であってもci・qi・ti/miとyiとは同様の比例関係を示していた。
【0046】
なお、固体材料を静置したままの反応装置2である場合、気体と接触しない内部の固体材料が増えて、容積の異なる種類の反応装置2間の比例関係が一致しなくなる可能性も考えられる。しかし、その場合には、固気接触がよい流動層型炉を少なくとも容積のより大きい側の反応装置2として使用すれば、この問題は回避できる。これは、流動層型炉では、固体材料である粒子が気体の中で浮遊した状態を保つことができるので、反応装置2の容積に依存せず固体材料である粒子を気体の中で浮遊した状態を保つことができるためである。
【0047】
また、ci・qi・ti/miとyiとがほぼ比例関係になることは、本発明者が今回初めて見出したものである。もともと、固体材料を構成している個々の粒子が固気反応によって消失し小さくなっていくとすれば、徐々に粒子の表面積は減少するので、反応進行率は時間経過とともに緩やかになる(遅くなる)と予想されていた。また、固気反応によって、固体材料を構成している個々の粒子の表面が別の物質に変わっていき、表面に生成された別の物質が反応を阻害(気体分子が内部に到達することを阻害)するとすれば、この場合にも反応進行率は時間経過とともに緩やかになる(遅くなる)と予想されていた。従って、ci・qi・ti/miとyiとが単純な比例関係になるとはこれまで予想されていなかった。しかしながら、図5に示すように、実測値をもとにx=ci・qi・ti/mi、y=yi(i=1,2,…)としてxy座標系にプロットすると、ci・qi・ti/miとyiとは、ほぼ比例関係を示す。よって、x=ci・qi・ti/mi、y=yi(i=1,2,…)として求めた回帰直線y=a・x+bは、実際のci・qi・ti/miとyiとの比例関係をより反映したものと言える。従って、x=ci・qi・ti/mi、y=yi(i=1,2,…)として求めた回帰直線y=a・x+bを用いることによって、実際のci・qi・ti/miとyiとの比例関係をより正確に予測できる。
【0048】
次に、予測式計算装置4を用いた予測式計算システム1の動作フローについて図6を用いて説明を行う。図6は、予測式計算装置4を含む予測式計算システム1での動作フローを示す図である。
【0049】
まず、ステップS1では、有機物を例えば1000℃のN2雰囲気で焼成して得られる炭素を炭素原料(反応材料)として、数g〜数kg(例えば3g)の炭素原料を反応装置2にセットする。続いて、ステップS2では、図7に示すように反応装置2の固気反応を行わせる空間の温度を室温から1000℃までN2雰囲気で昇温する。そして、ステップS3では、上記空間の温度が1000℃に到達したら(図7中のA点)1000℃の温度を維持したままでCO2ガスと炭素原料とを反応させる(固気反応開始)。また、反応式(1)の固気反応によって生じるCOガスを、反応装置2の図示しない出口から排出しながらCO2ガスの流量を単位時間あたり所定の流量にして固気反応は行う。ステップS4では、予め設定されていた時間に応じて、固気反応が完了していてもいなくても、反応装置2の固気反応を行わせる空間の温度をN2雰囲気で1000℃から室温にまで下げ始める(図7中のB点)。つまり、反応装置2での固気反応を停止させる。なお、炭素原料の粒径は、COガスの排出時に一緒に排出しにくくするために、1wt%以上が飛散しないような粒径であることが好ましい。また、炭素原料の粒径は、CO2ガスとの反応を炭素原料の中心まで進めやすくするために、5mm以下であることが好ましい。
【0050】
ステップS5では、反応装置での固気反応の操作条件情報である反応時間(ti)、反応進行率(yi)、CO2の濃度(ci)、流量(qi)および仕込量(mi)の情報を含む操作条件情報を得る。上記操作条件情報を得る方法としては、例えば、反応進行率(yi)であれば、固気反応前の仕込量(mi)に対しての固気反応後の反応産物の重量比を求めることによって得られる。また、反応時間(ti)、CO2の濃度(ci)、流量(qi)および仕込量(mi)の情報は、反応装置2に固気反応のために設定された操作条件情報を取得することによって得てもよい。
【0051】
続いてステップS6では、上記操作条件情報を予測式計算装置4に入力する。そして、ステップS7では、十分な回数分の固気反応の操作条件情報が予測式計算装置4に入力されたか否かの判定を行う。そして、十分な回数分の固気反応の操作条件情報が予測式計算装置4に入力されていた場合(ステップS7でYes)には、ステップS8に移る。また、十分な回数分の固気反応の操作条件情報が予測式計算装置4に入力されていなかった場合(ステップS7でNo)には、ステップS1に戻ってフローを繰り返す。ここで言うところの十分な回数分とは、任意に設定される回数であって、後のステップで述べる回帰直線y=a・x+bを用いて、実際のci・qi・ti/miとyiとの比例関係をどの程度正確に予測できるようにするのかに応じて設定される回数である。
【0052】
ステップS8では、2回以上の複数回分の操作条件情報をもとに、x=ci・qi・ti/mi、y=yi(i=1,2,…)として、回帰直線の式y=a・x+bを成り立たせる係数aおよびbの値を予測式計算装置4によって求める。そして、予測式計算装置4によって求められた係数aおよびbは図示しない表示部に表示される。なお、上記表示部には、係数aおよびbのみを表示してもよいし、係数aおよびbを代入した回帰直線の式y=a・x+bを表示してもよい。
【0053】
次に、図8を用いて、予測式計算装置4での動作フローについて説明を行う。図8は、予測式計算装置4での動作フローを示す図である。
【0054】
まず、ステップS21では、反応装置2での固気反応の操作条件情報である反応時間(ti)、反応進行率(yi)、CO2の濃度(ci)、流量(qi)および仕込量(mi)の情報を第1取得部21で取得する。続いて、ステップS22では、メモリ22に上記操作条件情報を、i回(i≧2)の上記固気反応ごとに得られるi回分格納する。そして、ステップS23では、2回以上の複数回分の操作条件情報をもとに、x=ci・qi・ti/mi、y=yi(i=1,2,…)として、回帰直線の式y=a・x+bを成り立たせる係数aおよびbの値を第1演算部23で求める。
【0055】
以上の構成によれば、メモリ22に格納された2回以上の固気反応ごとに得られる2回以上の複数回分の反応時間(ti)、反応進行率(yi)、上記反応時間(ti)での固気反応に用いた気体の濃度(ci)、上記気体の単位時間あたりの流量(qi)、および仕込量(mi)の情報からなる操作条件情報をもとに、第1演算部23によって、x=ci・qi・ti/mi、y=yi(i=1,2,…)として、回帰直線の式y=a・x+bを成り立たせる係数aおよびbを求めることになる。上述したように、x=ci・qi・ti/miとy=yiとはほぼ比例関係になるので、第1演算部23で求めた係数aおよびbを代入したy=a・x+bの回帰直線の式によって、反応時間(ti)、反応進行率(yi)、気体の濃度(ci)、流量(qi)および仕込量(mi)の情報のうちの1つ以外の情報をもとに、残りの1つの値を正確に求めることが可能になる。
【0056】
例えば、実機5での目的とする反応進行率(Y)、固気反応に用いる気体の濃度(C)、固気反応に用いる気体の単位時間あたりの流量(Q)および固気反応に用いる反応材料の量である仕込量(M)の情報と第1演算部23によって求めた係数aおよびbをもとに、以下の回帰直線の式Y=a・C・Q・E/M+bのEの解を求めることによって、実機5での反応材料の固気反応を開始してから、上記反応材料の固気反応によって得られる反応産物が反応進行率(Y)に達する時点までの予測反応時間Eを求めることが可能になる。従って、本発明の予測式計算装置を用いることによって、実機5での反応材料の固気反応での反応産物の反応進行率に対する反応時間を簡便に予測することが可能になる。その結果、固気反応での反応時間に対する反応産物の反応進行率を、簡便かつ正確に予測することを可能にする。
【0057】
C(活性炭)は反応式(1)で表される固気反応の途中にのみ得られる反応産物であって、固気反応が完了してしまうと反応式(1)の反応が完了した状態となって、COのみしか得られない。C(活性炭)は、反応式(1)で表される固気反応が進行するほど収率(反応進行率)が減る代わりに、表面に生じる孔が増えて高表面積になる。産業上、製品として製造する場合には、一定量以上の収率を保ちながら高い表面積をもつC(活性炭)が望まれる。よって、上記C(炭素)からC(活性炭)を反応産物として得る固気反応を行う場合に望む収率(反応進行率)の得られる反応時間を予測する方法の説明を、本実施の形態において行ってきた。
【0058】
これに対して、上述の反応式(2)で表されるような、固気反応を完了させて得られる反応産物を目的とする場合にも、固気反応の完了する反応時間を知るために本発明を用いることができる。詳しくは、実機5での反応完了時間での反応進行率は0になるので、本発明によって係数aおよびbを求め、固気反応に用いる気体の濃度(C)、固気反応に用いる気体の単位時間あたりの流量(Q)および固気反応に用いる反応材料の量である仕込量(M)の情報を決めて、任意の反応進行率(Y)を0としてY=a・C・Q・E/M+bの式に基づいて計算または第2演算部33によって予測反応時間Eを求めれば、固気反応の完了する反応時間を知ることができる。
【0059】
また、本実施の形態では、本発明によって反応時間を簡便に予測することができることについて説明したが、本発明によれば、反応進行率、気体の濃度、流量および仕込量を対象とした場合に、対象とした操作条件情報以外の操作条件情報を得ることによって、対象とした操作条件情報の値を求めることも可能である。
【0060】
なお、本実施の形態では、反応装置2と実機5とが同一のものであってもよい。
【0061】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について図9ないし図11に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0062】
本実施の形態の予測式計算装置14は、前記実施の形態1の予測式計算装置4の構成に加えて、第2取得部(取得手段)31、および第2演算部(第2演算手段)33をさらに備えている。
【0063】
最初に、図9を用いて予測式計算装置14の構成の概要について説明を行う。図9は本実施の形態における予測式計算装置14の構成を示す機能ブロック図である。図9に示すように、予測式計算装置14は、予測式計算装置4の構成に対して第2取得部31および第2演算部33をさらに備えている。
【0064】
第2取得部31は、実機5での目的とする反応進行率(Y)、実機5での固気反応に用いる気体の濃度(C)、実機5での固気反応に用いる気体の単位時間あたりの流量(Q)および実機5での固気反応に用いる反応材料の量である仕込量(M)の情報とを入力するものである。
【0065】
第2演算部33は、第2取得部31で取得される反応進行率(Y)、気体の濃度(C)、流量(Q)、および仕込量(M)の情報、ならびに第1演算部23から送られてくる係数aおよびbの情報に基づいて所定の手順に従って演算するものである。詳しくは、上記演算は、反応進行率(Y)、気体の濃度(C)、流量(Q)、仕込量(M)の情報、ならびに係数aおよびbの情報をもとに、Y=a・C・Q・E/M+bで表される式のEの値を求めるものである。そして、第2演算部33で求められた解Eを予測反応時間Eとする。ここで、解Eはユーザーが入力する任意の反応進行率(Y)に達する反応時間であるといえる。
【0066】
上記第1取得部21、第2取得部31、第1演算部23、および第2演算部33は、CPUが記憶装置に格納されたプログラムを実行し、図示しない入出力回路などの周辺回路を制御することによって実現される機能ブロックである。
【0067】
次に、予測式計算装置14を用いた予測式計算システム1での動作フローについて図10を用いて説明を行う。図10は、予測式計算装置14を含む予測式計算システム1での動作フローを示す図である。なお、ステップS41〜ステップS48は、前記実施の形態1のステップS1〜ステップS8とそれぞれ同様のフローであるので、説明を省略する。
【0068】
ステップS49では、実機5での目的とする反応進行率(Y)、実機5での固気反応に用いる気体の濃度(C)、実機5での固気反応に用いる気体の単位時間あたりの流量(Q)および実機5での固気反応に用いる反応材料の量である仕込量(M)の情報を予測式計算装置14に入力する。
【0069】
続いて、ステップS50では、反応進行率(Y)、気体の濃度(C)、流量(Q)、および仕込量(M)の情報、ならびにステップS48で求めた係数aおよびbの情報に基づいて、Y=a・C・Q・E/M+bで表される回帰直線の式のE(予測反応時間)の値を予測式計算装置14によって求める。そして、予測式計算装置14によって求められた予測反応時間Eは図示しない表示部に表示される。
【0070】
次に、図11を用いて、予測式計算装置14での動作フローについて説明を行う。図11は、予測式計算装置14での動作フローを示す図である。なお、ステップS61〜ステップS63は、前記実施の形態1のステップS21〜ステップS23とそれぞれ同様のフローであるので、説明を省略する。
【0071】
ステップS64では、ステップS63で求めた係数aおよびbの値を第1演算部23が第2演算部33に送る。続いて、ステップS65では、実機5での目的とする反応進行率(Y)、実機5での固気反応に用いる気体の濃度(C)、実機5での固気反応に用いる気体の単位時間あたりの流量(Q)および実機5での固気反応に用いる反応材料の量である仕込量(M)の情報を第2取得部31で取得する。そして、ステップS66では、反応進行率(Y)、気体の濃度(C)、流量(Q)、および仕込量(M)の情報、ならびに係数aおよびbの情報に基づいて、Y=a・C・Q・E/M+bで表される回帰直線の式のE(予測反応時間)の値を第2演算部33によって求める。
【0072】
以上の構成によれば、第2取得部31で取得される実機5での目的とする反応進行率(Y)、実機5での固気反応に用いる気体の濃度(C)、実機5での固気反応に用いる気体の単位時間あたりの流量(Q)および実機5での固気反応に用いる反応材料の量である仕込量(M)の情報をもとにして、第2演算部33によって予測反応時間Eを求めることになる。よって、実機5での反応材料の固気反応を開始してから、反応材料の固気反応によって得られる反応産物が反応進行率(Y)に達する時点までの反応時間である予測反応時間Eを、目的とする反応進行率(Y)、固気反応に用いる気体の濃度(C)、固気反応に用いる気体の単位時間あたりの流量(Q)および固気反応に用いる反応材料の量である仕込量(M)の情報から求めることが可能になる。従って、第2取得部31で取得させる反応進行率(Y)の値をユーザーが目的とする反応進行率の値にし、固気反応に用いる気体の濃度(C)、固気反応に用いる気体の単位時間あたりの流量(Q)および固気反応に用いる反応材料の量である仕込量(M)の値を実際に行う固気反応に応じた値にすれば、ユーザーが目的とする反応進行率だけの上記反応産物を得ることのできる反応時間を予測することが可能になる。
【0073】
なお、本実施の形態の予測式計算装置14に、第2演算部33で求めた解E(予測反応時間E)の値だけ実機5での固気反応の反応時間が経過した時に実機5での固気反応が停止するようにする制御信号を実機5に送信する命令送信部を備えていてもよい。この場合、第2演算部33で得られた解Eは、命令送信部に送られる構成になる。
【0074】
以上の構成によれば、ユーザーが目的とする反応進行率(Y)の得られる予測反応時間Eに達した時点で実機5での固気反応を停止させ、ユーザーが目的とする反応進行率(Y)の活性炭を得ることも可能になる。
【0075】
また、本実施の形態においては第1演算部23で求められた係数aおよびbは第2演算部33に送られるが、必ずしもこれに限定されない。例えば、第1演算部23で求められた係数aおよびbを第2演算部33に送るとともに、図示しない表示部に係数aおよびbを表示してもよい。他にも、第1演算部23で求められた係数aおよびbを第2取得部31に送る構成であってもよい。この場合、第2演算部33は、係数aおよびbの情報を第2取得部31から得る構成になる。
【0076】
なお、本実施の形態においては第2演算部33で求められた解Eは図示しない表示部に表示される構成になっているが、必ずしもこれに限らない。命令送信部に送られるが、必ずしもこれに限定されない。例えば、第2演算部33で求めた解Eを図示しない表示部に表示せずに命令送信部に送る構成であってもよい。
【0077】
また、本実施の形態においては第1取得部21と第2取得部31との2つを備える構成を示しているが、これは機能ブロックとして2つに分割して示しているのであって、必ずしもこれに限定されない。例えば、第1取得部21と第2取得部31とがそれぞれ独立の部材として備えられていてもよいし、第1取得部21と第2取得部31とが1つの部材として備えられていてもよい。
【0078】
なお、本実施の形態においては第1演算部23と第2演算部33との2つを備える構成を示しているが、これは機能ブロックとして2つに分割して示しているのであって、必ずしもこれに限定されない。例えば、第1演算部23と第2演算部33とがそれぞれ独立の部材として備えられていてもよいし、第1演算部23と第2演算部33とが1つの部材として備えられていてもよい。
【0079】
なお、本実施の形態においては、係数aおよびbは第1演算部23から第2演算部33に送られる構成になっているが、必ずしもこれに限定されない。例えば、メモリ22またはメモリ22以外の記憶装置に一旦格納され、第2演算部33で演算を行う場合に参照される構成であってもよい。
【0080】
また、本実施の形態においては、ユーザーから入力される任意の反応進行率(Y)の情報が第2取得部31で取得された後、第2演算部33に送られる構成になっているが、必ずしもこれに限定されない。例えば、メモリ22またはメモリ22以外の記憶装置に一旦格納され、第2演算部33で演算を行う場合に参照される構成であってもよい。
【0081】
なお、本実施の形態でも、反応装置2と実機5とが同一のものであってもよい。
【0082】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0083】
最後に、予測式計算装置4・14の各ブロック、特に第1取得部21、第1演算部23、第2取得部31、および第2演算部33は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0084】
すなわち、予測式計算装置4・14は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである予測式計算装置4・14の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、予測式計算装置4・14に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0085】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0086】
また、予測式計算装置4・14を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上のように、本発明の予測式計算装置、そのプログラムおよびコンピュータ読取可能な記録媒体、ならびに反応時間予測方法は、固気反応での反応時間に対する反応産物の反応進行率を、簡便かつ正確に予測することを可能にする。従って、本発明は、固気反応によって製品の製造を行う産業分野および固気反応によって得られる反応産物を利用する産業分野に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明における予測式計算装置の実施の一形態を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明における予測式計算システムの概略的構成を示す図である。
【図3】静置式小型電気炉によって、3gの炭素原料をCO2ガスと固気反応させる場合の例を図示したものである。
【図4】ロータリーキルンによって、1kgの炭素原料をCO2ガスと固気反応させる場合の例を図示したものである。
【図5】反応進行率と仕込み質量あたりのCO2モル数との関係を示した図である。
【図6】上記予測式計算装置を含む予測式計算システムでの動作フローを示す図である。
【図7】本発明における反応装置内での固気反応の進行に伴って用いる気体の種類と内部温度との関係を示す図である。
【図8】上記予測式計算装置での動作フローを示す図である。
【図9】本発明における予測式計算装置の他の実施の形態を示す機能ブロック図である。
【図10】上記予測式計算装置を含む予測式計算システムでの動作フローを示す図である。
【図11】上記予測式計算装置での動作フローを示す図である。
【符号の説明】
【0089】
1 予測式計算システム
2 反応装置
3 入力装置
4 予測式計算装置
5 実機
14 予測式計算装置
21 第1取得部
22 メモリ(操作条件情報格納部)
23 第1演算部(第1演算手段)
31 第2取得部(取得手段)
33 第2演算部(第2演算手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応装置で、固体原料と気体原料との固気反応を、上記気体原料の流量を単位時間あたり所定の流量にして所定の一定温度で行うことによって得られる、反応時間(ti)の情報と、固気反応開始前に対する上記反応時間(ti)後の上記固体原料の割合である反応進行率(yi)の情報と、上記反応時間(ti)中での固気反応に用いた気体原料の濃度(ci)の情報と、上記気体原料の単位時間あたりの流量(qi)の情報と、上記固気反応前の上記固体原料の量である仕込量(mi)の情報とを含む操作条件情報を、i回(i≧2)の上記固気反応ごとに得られるi回分格納する操作条件情報格納部と、
上記操作条件情報格納部に格納されているi回分の上記操作条件情報をもとに、x=ci・qi・ti/mi、y=yi(i=1,2,…)として、以下の回帰直線の式
y=a・x+b
を成り立たせる係数aおよびbの値を求める第1演算手段とを備えていることを特徴とする予測式計算装置。
【請求項2】
目的とする反応進行率(Y)、固気反応に用いる気体原料の濃度(C)、固気反応に用いる気体原料の単位時間あたりの流量(Q)および固気反応に用いる固体原料の量である仕込量(M)の情報を取得する取得手段と、
上記反応進行率(Y)、上記気体原料の濃度(C)、上記流量(Q)および上記仕込量(M)と第1演算部で求めた係数aおよびbとに基づいて、以下の計算式
Y=a・C・Q・E/M+b
の予測反応時間(E)を求める第2演算手段とをさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の予測式計算装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の予測式計算装置の備える上記各手段としてコンピュータを動作させるプログラム。
【請求項4】
請求項3に記載のプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。
【請求項5】
予測式計算装置による反応時間予測方法であって、
上記予測式計算装置が備える第1演算手段が、反応装置で、固体原料と気体原料との固気反応を、上記気体原料の流量を単位時間あたり所定の流量にして所定の一定温度で行うことによって得られる、反応時間(ti)の情報と、固気反応開始前に対する上記反応時間(ti)後の上記固体原料の割合である反応進行率(yi)の情報と、上記反応時間(ti)中での固気反応に用いた気体原料の濃度(ci)の情報と、上記気体原料の単位時間あたりの流量(qi)の情報と、上記固気反応前の上記固体原料の量である仕込量(mi)の情報とを含む操作条件情報を、i回(i≧2)の上記固気反応ごとに得られるi回分格納している操作条件情報格納部のi回分の上記操作条件情報に基づいて、x=ci・qi・ti/mi、y=yi(i=1,2,…)として、以下の回帰直線の式
y=a・x+b
を成り立たせる係数aおよびbの値を求める第1演算工程とを含むことを特徴とする反応時間予測方法。
【請求項6】
上記予測式計算装置が備える取得手段が、目的とする反応進行率(Y)、固気反応に用いる気体原料の濃度(C)、固気反応に用いる気体原料の単位時間あたりの流量(Q)および固気反応に用いる固体原料の量である仕込量(M)の情報を取得する第2取得工程と、
上記予測式計算装置が備える第2演算手段が、上記反応進行率(Y)、上記気体原料の濃度(C)、上記流量(Q)および上記仕込量(M)と第1演算部で求めた係数aおよびbとに基づいて、以下の計算式
Y=a・C・Q・E/M+b
の予測反応時間Eを求める第2演算工程とをさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の反応時間予測方法。
【請求項1】
反応装置で、固体原料と気体原料との固気反応を、上記気体原料の流量を単位時間あたり所定の流量にして所定の一定温度で行うことによって得られる、反応時間(ti)の情報と、固気反応開始前に対する上記反応時間(ti)後の上記固体原料の割合である反応進行率(yi)の情報と、上記反応時間(ti)中での固気反応に用いた気体原料の濃度(ci)の情報と、上記気体原料の単位時間あたりの流量(qi)の情報と、上記固気反応前の上記固体原料の量である仕込量(mi)の情報とを含む操作条件情報を、i回(i≧2)の上記固気反応ごとに得られるi回分格納する操作条件情報格納部と、
上記操作条件情報格納部に格納されているi回分の上記操作条件情報をもとに、x=ci・qi・ti/mi、y=yi(i=1,2,…)として、以下の回帰直線の式
y=a・x+b
を成り立たせる係数aおよびbの値を求める第1演算手段とを備えていることを特徴とする予測式計算装置。
【請求項2】
目的とする反応進行率(Y)、固気反応に用いる気体原料の濃度(C)、固気反応に用いる気体原料の単位時間あたりの流量(Q)および固気反応に用いる固体原料の量である仕込量(M)の情報を取得する取得手段と、
上記反応進行率(Y)、上記気体原料の濃度(C)、上記流量(Q)および上記仕込量(M)と第1演算部で求めた係数aおよびbとに基づいて、以下の計算式
Y=a・C・Q・E/M+b
の予測反応時間(E)を求める第2演算手段とをさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の予測式計算装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の予測式計算装置の備える上記各手段としてコンピュータを動作させるプログラム。
【請求項4】
請求項3に記載のプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。
【請求項5】
予測式計算装置による反応時間予測方法であって、
上記予測式計算装置が備える第1演算手段が、反応装置で、固体原料と気体原料との固気反応を、上記気体原料の流量を単位時間あたり所定の流量にして所定の一定温度で行うことによって得られる、反応時間(ti)の情報と、固気反応開始前に対する上記反応時間(ti)後の上記固体原料の割合である反応進行率(yi)の情報と、上記反応時間(ti)中での固気反応に用いた気体原料の濃度(ci)の情報と、上記気体原料の単位時間あたりの流量(qi)の情報と、上記固気反応前の上記固体原料の量である仕込量(mi)の情報とを含む操作条件情報を、i回(i≧2)の上記固気反応ごとに得られるi回分格納している操作条件情報格納部のi回分の上記操作条件情報に基づいて、x=ci・qi・ti/mi、y=yi(i=1,2,…)として、以下の回帰直線の式
y=a・x+b
を成り立たせる係数aおよびbの値を求める第1演算工程とを含むことを特徴とする反応時間予測方法。
【請求項6】
上記予測式計算装置が備える取得手段が、目的とする反応進行率(Y)、固気反応に用いる気体原料の濃度(C)、固気反応に用いる気体原料の単位時間あたりの流量(Q)および固気反応に用いる固体原料の量である仕込量(M)の情報を取得する第2取得工程と、
上記予測式計算装置が備える第2演算手段が、上記反応進行率(Y)、上記気体原料の濃度(C)、上記流量(Q)および上記仕込量(M)と第1演算部で求めた係数aおよびbとに基づいて、以下の計算式
Y=a・C・Q・E/M+b
の予測反応時間Eを求める第2演算工程とをさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の反応時間予測方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−23419(P2008−23419A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196219(P2006−196219)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
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