説明

予熱系統交換器および加熱炉の有機的な汚れを低減するための改善された原油ブレンド

高い溶解力(HSP)原油が、熱交換設備を汚す可能性に対して積極的に対処するために非相溶性油のブレンドに加えられる。HSP成分は、コーキングが熱交換面に影響を及ぼす前にアスファルテン沈澱物を溶解させる。HSP油はまた、コーキングが熱交換面に影響を及ぼし得る前に、いかなる沈着物および/または沈殿物も定期的な保守計画で除去するために熱交換設備を通してフラッシュされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製油所および石油化学プラントにおける全原油、ブレンドおよび留分の処理に関する。特に、本発明は、予熱系統交換器、加熱炉、および他の製油所プロセス装置での熱処理と設備の汚れについての関連問題に関する。
【背景技術】
【0002】
汚れは一般に、処理設備の表面上への望ましくない物質の蓄積と定義される。石油処理では、汚れは、熱交換器表面上への望ましくない炭化水素−ベースの沈着物の蓄積である。それは、製油および石油化学処理システムの設計および運転におけるほぼ普遍的な問題と認識されてきており、二様に設備の運転に影響を及ぼす。第1に、汚れ層は低い熱伝導性を有する。これは、伝熱への抵抗を増大させ、熱交換器の有効性を低下させ−こうしてシステム中の温度を上昇させる。第2に、沈着が起こるにつれて、断面積は減少し、それは装置にわたる圧力降下の増加を引き起こし、熱交換器中で非効率的な圧力および流れを生み出す。
【0003】
石油タイプ・ストリームに関連した熱交換器での汚れは、化学反応、腐食、不溶性物質の沈着、および流体と熱交換壁との間の温度差によって不溶性にされた物質の沈着をはじめとする多数のメカニズムから生じる。
【0004】
具体的には、急速な汚れのより共通の根本的原因の1つは、原油アスファルテンが加熱管表面温度に過度に曝されるときに起こるコークスの形成である。交換器の他面上の液体は全体原油よりはるかに熱く、比較的高い表面またはスキン温度をもたらす。アスファルテンは、油から沈澱し、これらの熱面に粘着することができる。特に系統交換器後半での、かかる表面温度への長期暴露は、コークスへのアスファルテンの熱分解を可能にする。コークスは次に断熱材としての役割を果たし、表面が装置を通過する油を加熱できないようにすることによって熱交換器での伝熱効率損失に関与する。
【0005】
製油所での油のブレンドは日常的であるが、ある種のブレンドは非相溶性であり、プロセス設備を急速に汚し得るアスファルテンの沈澱を引き起こす。原油の不適切な混合は、伝熱効率を低下させることが知られているアスファルテン沈降物を生み出し得る。未処理原油のほとんどのブレンドが潜在的に非相溶性であるわけではないが、いったん非相溶性ブレンドか得られると、生じる急速な汚れおよびコーキングは通常、短時間で精製プロセスをシャットダウンすることを要求する。製油所をより利益をもたらすレベルに戻すために、汚れた熱交換器は清掃される必要があり、それは典型的には、下に議論されるように、使用休止を必要とする。
【0006】
熱交換器管内汚れは、失われた効率、処理量、および追加のエネルギー消費のために石油製油所に毎年数億ドルのコストをかける。エネルギーのコストの増大で、熱交換器汚れはプロセス収益性により大きな影響を及ぼす。石油製油所および石油化学プラントはまた、伝熱設備での全原油、ブレンドおよび留分の熱処理中に起こる汚れの結果として必要とされる清掃のために高い運転コストを被る。多くの種類の製油所設備が汚れによって影響を受けるが、コスト見積は、収益損失の大部分が予熱系統交換器での全原油、ブレンドおよび留分の汚れのために起こることを示してきた。
【0007】
熱交換器汚れは、製油所に清掃プロセスのためのコストのかかるシャットダウンを頻繁に用いることを強要する。現在、ほとんどの製油所は、化学的または機械的清掃を行うために熱交換器を運転休止にすることによって熱交換器管束のオフライン清掃を実施している。清掃は、計画された時若しくは用法に、または実際の監視される汚れ状態に基づくことができる。かかる状態は、熱交換効率の損失を評価することによって決定することができる。しかしながら、オフライン清掃は使用を中断する。これは、非生産の期間があるだろうから小さい製油所にとって特に厄介であり得る。
【0008】
熱交換器の汚れを軽減するかまたはできる限り排除すると、エネルギー削減だけで莫大なコスト削減をもたらすことができる。汚れの減少はエネルギー削減、より高いキャパシティ、保守の軽減、より低い清掃コスト、および設備の全体利用可能性の向上につながる。
【0009】
幾つかの製油所および原油スケジューラは現在、アスファルテン沈殿および予熱系統設備の生じる汚れを最小限にするためにブレンド・ガイドラインに従っている。かかるガイドラインは、溶解ブレンド数(SBN)(Sbnの記号でも表される)と不溶性数(I)との間に一定の関係を達成するために原油をブレンドすることを提案している。SBNは、油とトルエン/n−ヘプタンなどの、異なる割合のモデル溶剤混合物との相溶性に関するパラメータである。SBNは、参照により本明細書に援用される、特許文献1に記載されているように、同様な方法で測定される、Iに関係している。幾つかのブレンド・ガイドラインは、アスファルテン沈殿および汚れを最小限にするために1.3より大きいSBN/Iブレンド比および10より大きいデルタ(SBN−I)を提案している。しかしながら、これらのブレンドは、アスファルテン沈殿を最小限にすることへの消極的なアプローチとしての使用のために設計される。
【0010】
製油所設備の汚れおよびコーキングを防ぐための相溶性を維持しながら潜在的に非相溶性である2つ以上の石油のブレンド方法を改善しようとする試みが行われてきた。特許文献1は、各原料油流れについて不溶性数(I)を測定する工程と、各ストリームについて溶解ブレンド数(SBN)を測定する工程と、混合物のSBNが混合物の任意の成分のIよりも大きいように原料油流れを組み合わせる工程とを含むブレンド方法を開示している。別の方法で、特許文献2は、混合物のSBNを混合物中の任意の油のIの1.4倍より高く保つために一定の割合で石油が組み合わせられるブレンド方法を用いている。
【0011】
影響を受けた設備を物理的に除去するおよび/または清掃する必要性を低下させるかかまたは排除するために原油ブレンドのガイドラインを改善することが望ましいであろう。それ故、予熱系統設備汚れの防止のための処理中に安定した溶液を確保するための改善されたブレンド・ガイドラインに対する必要性がある。アスファルテン沈殿に対処し、それによって関連汚染物沈着および/または堆積を最小限にすることへの積極的なアプローチの開発に対する必要性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,871,634号明細書
【特許文献2】米国特許第5,997,723号明細書
【特許文献3】米国特許出願第11/391,258号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の実施形態の態様は、アスファルテンを溶解させるのに有効である安定した溶液をもたらすために原油をブレンドすることに関する。
【0014】
本発明の実施形態の別の態様は、設備汚れを低減するための処理中に使用する原油をブレンドするためのガイドラインを提供することに関する。
【0015】
本発明の実施形態の追加の態様は、汚染物沈着を低減するかまたは排除する体制の維持方法を提供することに関する。
【0016】
これらのおよび他の態様は、熱交換設備の有機的な汚れを低減する石油原油のブレンド方法に関する、本発明によって実現することができる。本方法は、アスファルテンを沈澱させる油の一部を占める2つ以上の原油をブレンドする工程と、高い溶解力(HSP)原油を加える工程とを含む。HSP原油は、沈澱したアスファルテンを溶解させるために80より大きい溶解ブレンド数(SBN)を有する原油と定義される。好ましくは、HSP原油はブレンドの少なくとも5容量%を占める。本方法は、予熱系統交換器または加熱炉などの、熱交換器を通してHSP油を含むブレンド原油を供給する工程を更に含むことができる。
【0017】
本発明はまた、プロセス流体から沈澱したアスファルテン化合物を溶解させるために熱交換器を通して少なくとも80の溶解ブレンド数(SBN)を有する高い溶解力(HSP)原油のストリームを供給することによって熱交換器をフラッシュする工程を含む、アスファルテン化合物を含むプロセス流体で熱交換を達成するために使用される熱交換器の熱交換面の処理方法に関する。本方法によれば、フラッシュは、沈着したアスファルテンおよびワックスの加熱面への長期暴露を防ぐために定期的に繰り返される。HSP原油ストリームでの熱交換器のフラッシングは、1年当たり少なくとも4回、より好ましくは1年当たり少なくとも6回、最も好ましくは毎月行われる。本方法によれば、熱交換面は、清掃浸漬のために1〜5日の期間接触させられる。
【0018】
本発明は、HSP成分を有するブレンドをフラッシングプロセスに含むことができる。
【0019】
本発明のこれらのおよび他の態様は、詳細な説明および添付の図面と関連して理解されるときに明らかになるであろう。
【0020】
本発明は、以下の添付図面と関連して今説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に従って調合されたブレンドを用いて汚れの減少を示す試験結果を例示するグラフである。
【図2】本発明に従って調合された幾つかの異なるブレンドでの汚れの減少を示す試験結果を例示するグラフである。
【図3】オンライン清掃シミュレーションからの試験結果を例示するグラフである。
【図4】全原油汚染ランのプロフィロメトリー分析である。
【図5】ブレンド原油清掃ランのプロフィロメトリー分析である。
【図6】別のブレンド原油清掃ランのプロフィロメトリー分析である。
【0022】
図面において、類似の参照番号は、異なる図での相当する部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、一般に、熱交換器での汚れの軽減方法に関する。好ましい使用では、本方法およびデバイスは、製油所または石油化学処理プラントでなどの、精製プロセスで使用される熱交換器に適用される。本発明は、予熱系統設備での使用に特に好適であるが、他の熱交換器にとってもまた有用である。更に、本発明は、パイプスチル(原油装置)、コーカー、ビスブレーカーなどに用いることができる。勿論、本発明を他の処理施設および熱交換器、特に、精製プロセスの間に体験されるものと類似のやり方で汚れを受けやすい、かつ、修理および清掃のためにオフラインを取るのに不便であるものに適用することは可能である。
【0024】
本発明は、沈澱したおよび/または粘着したアスファルテンが熱分解し、コークスに変換した状態になる前に熱交換設備の加熱面を清掃することが望ましいという認識に基づいている。コーキングは温度および時間の両方を必要とするので、アスファルテンが完全にコークスに変換される前にそれらを再溶解させることは、清掃の有効な非機械的方法である。選択される原油がアスファルテンに対してより高い溶解力を有すること、およびこれらの選択される原油のストリームが、固体の粘着性コークス沈着物が形成され得る前に沈澱したアスファルテンを熱交換器表面から除去するために使用されてもよいことが分かってきた。交換器をプロセス装置に接続したままでアスファルテンの再溶解を達成することは可能である。これは、交換器を物理的に取り外し、そして清掃する必要性を排除する。実際には、熱交換器は、交換器に受け入れられる、かつ、アスファルテンを溶解させるのに十分な期間表面を浸けることを可能にする高い溶解力(HSP)油を用いてオンラインで清掃される。その期間後に、油は溶解したアスファルテンおよび任意の緩んだ沈着物と共に取り出され、回収され、そして従来の精製操作によって、例えば、コーカーへ送ることによって処理される。このコンセプトは、2006年3月29日に出願された、今係属中である、「オンライン熱交換器清掃方法(On−Line Heat Exchanger Cleaning Method)」という表題の関連出願(特許文献3)に開示されている。この関連出願の内容は参照により本明細書に援用される。
【0025】
本明細書に開示される本発明は、この基本概念を用い、それをブレンドおよび保守ガイドラインに適用する。本発明によれば、追加の工程は、高い溶解力(HSP)油を油の潜在的に非相溶性のブレンドに加えることによってブレンド中に実施される。これによって、アスファルテン沈殿をもたらすであろう混合物を回避する代わりに、混合物は、非相溶性混合物から生じたアスファルテンの溶解を促進する選択成分を含み、それによってアスファルテン沈降物の形成を回避する。選択成分には、本明細書では高い溶解力(HSP)原油と言われる、優れたアスファルテン溶解力のある原油と定義される原油が含まれる。HSP原油は、80より大きい溶解ブレンド数(SBN)(SBN>80)、好ましくはSBN>100、最も好ましくはSBN>120のものと定義される。
【0026】
原油ブレンドでの十分な容量のHSP原油の包含は、溶液から出るかもしれないアスファルテンを溶解させ、溶解の状態を維持する。供給のアスファルテン部分が沈澱し、沈降するおよび/または油中に懸濁することができる固形物をもたらすとき、HSP原油添加物は、アスファルテン沈殿物がその中に溶解するブレンドを形成する。かかるブレンドは、全体的な汚れの減少と設備清掃、シャットダウン、効率の損失などのための関連コストの削減とをもたらす。下に実証されるように、50容量%以上のHSPレベルが溶解性の状態を維持するのに非常に有効である。勿論、より高いHSPレベルはより有効な清掃結果を実現するであろう。だから、100%までのHSP油を必要ならば使用することができる。浸漬適用については、50〜100容量%HSPの濃度が好適であろう。しかしながら、低レベルのHSP油でさえ便益を与えるであろうことが示された。例えば、5容量%ほどに少ないHSP原油ブレンドが製油所での汚れ防止およびオンライン清掃の両方でオンライン・ランでの実地試験で有効であることが示された。別の例では、5〜20%の濃度もまたこれらの有益な結果を生み出した。このように、オンライン・フラッシングについては、5%以上の低濃度が有効である。
【0027】
HSP油、特にブレンドHSP油が念入りな清掃を達成するためにタンク表面に長期間暴露される浸漬適用については、24時間が効果的な浸漬時間であることが実地試験で分かった。好ましい浸漬時間は1〜5日、最も好ましくは3日である。しかしながら、有益な清掃結果および汚れ防止傾向は、暴露の30分以内に効果が出ることが示された。このように、フラッシング時間は、システムを通してのHSP油またはHSPブレンドのランニングについてより少ないものであり得るし、それでもHSP油の便益を体験する。
【0028】
原油およびブレンドの相対的な汚染ポテンシャルを評価するために、商業的に入手可能なアルコル熱液体プロセスシミュレーター(Alcor Hot Liquid Process Simulator)(HPLS)が本発明者らによって用いられる。アルコル・ランは、1リットル溜めに原油またはブレンドを装入し、液体を150℃(302°F)まで加熱し、それを3.0mL/分の流量で垂直に配置された炭素鋼棒を横切ってポンプ送液することによって実施される。使用済み油はアルコル溜めのトップセクションに集められ、それは封止されたピストンによって未処理油から分離され、それによってワンススルー運転を可能にする。システムは、ガスが試験の間ずっと油に溶解したままであることを確実にするために各試験ラン前に窒素で400〜500psigに加圧される。棒は、プリセット温度に電気加熱され、ランの初めから終わりまで一定に保持される。試験のための棒表面温度は370℃(698°F)である。熱電対読みがバルク流体入口および出口温度について並びに棒の表面について記録される。加熱面熱電対は棒の内部に配置される。
【0029】
汚れ試験中に、アスファルテンが加熱面上に沈着し、試験棒の表面上に堆積する、コークスに熱分解される。コークス沈着は、それを通り過ぎる油を加熱する加熱面の効率および/または能力を低下させる断熱効果をもたらす。温度の生じた低下は、出口液体デルタ(Delta)Tと言われ、原油/ブレンドの種類、試験条件および他の影響に依存する。これらのランのための試験時間は180分である。試験は、ランの開始前に溜め内での30分の撹拌および予熱を許す。出口液体温度の全低下によって測定されるような、全汚れは「デルタT180」と言われる。アルコル・システムについての流動様式が層流であり、それ故実地体験との正相間は困難であることが指摘されるべきである。しかしながら、装置は、原油とブレンドとの間の相対的な汚染ポテンシャルの差を評価するのに有効であることが分かった。
【0030】
アルコル装置標準汚れ試験パラメータは次の通りである:
流量/種類: 3.0mL/分/ワンススルー運転
冶金: 炭素鋼(1018)ヒーター棒
システム圧力: 400〜500psi
棒表面温度: 370℃(698°F)または400℃(752°F)
システム温度設定(溜め、ポンプ、ライン):150℃(302°F)
実際のバルク流体入口温度:105〜120℃(221〜248°F)
【実施例】
【0031】
実施例1
2つの原油の非相溶性ブレンド(ブレンドA)を調製した。ブレンドAについてのSBNおよびI値は、それぞれ、30および38であった。これは、0.81のSBN/I比を表し、加熱面上へ沈着し、そして熱分解して汚染物を形成し得る沈澱したアスファルテンを有する「高汚染」原油ブレンドであると考えられる。上の手順に従ったアルコル装置でのブレンドAの試験は、−92℃のデルタT180をもたらした。言い換えれば、液体出口温度は、棒表面上へのコークスの堆積の結果として92℃だけ低下した。
【0032】
次に、158のSBNのHSP原油を増加する容量比でブレンドAと混合した。HSP原油はゼロのデルタT180を有したか、またはアルコル条件下で実質的に非汚染原油である。ブレンドA/HSP原油ブレンドのそれぞれを、デルタT180の変化を測定するためにアルコル装置で試験した。ランのそれぞれからの最終デルタT180データを、加えられたHSP原油の量の関数として図1にプロットする。プロットは、HSP原油の濃度が増加するにつれて、相対的な汚れが著しくより低いデルタT180値に低下することを示す。50容量%より多いHSPが存在すると、汚染ポテンシャルは実質的に非汚染レベルに低下した。これらの結果は、HSP原油の添加がアスファルテン含有原油およびブレンドの汚染ポテンシャルの低下に著しい影響を及ぼすことを実証する。
【0033】
実施例2
実施例1に記載された同じ高い汚染原油ブレンドAをまた、異なるSBNレベルの他のHSP原油と50容量%で混合し、アルコル装置で試験した。結果を図2にまとめる。この曲線は、等容量の増加するSBN原油が存在するときに基本ケースからの汚れの減少を示す。棒は、各試験のために使用された個々のHSP原油のそれぞれについての実際のSBN値を示す。これらの結果は、より高いSBNのHSPストリームが汚れの相対的な程度に有益な影響を及ぼすことを示す。
【0034】
従って、本明細書に開示されるブレンドはアスファルテン沈殿物除去を積極的に促進し、そして処理中に発生するインライン清掃力としての役割を果たすと理解することができる。かかるブレンドは、熱交換エレメントを汚す機会がある前にアスファルテン沈殿物を溶解させることによって汚れの発生を軽減することができる。これは、清掃の必要性を排除し、熱交換プロセスの効率を増進する。
【0035】
本発明の別の態様は、熱交換設備での沈澱物の堆積および起こり得るコーキングを回避するために積極的な保守計画でHSP油を使用する。上記のように、汚れた熱交換設備は一般に、機械的手段によってオフラインで清掃されるかまたは、関連適用でのように、HSP原油に浸すことによって清掃することができる。清掃は一般に、いったん交換器の効率がコークス堆積の結果として非収益性レベルに下がったら行われる。機械的手段によるオフライン清掃は典型的には、重質沈着物を除去するために必要とされる。構成要素は使用休止にされ、清掃のために分離されなければならない。これはまた、HSP油に浸けることによる清掃のためにも必要とされる。清掃の間ずっと、処理中の原油ブレンドは、汚れた交換器を清掃のために分離できるように他の交換器にルート変更される。清掃関連のコストには、交換器が使用に戻り得る前の特定装置の停止時間、および必要ならば機械的清掃、並びに水および他の溶剤でのジェット洗浄フラッシングが含まれる。
【0036】
本発明では、HSP原油が、汚れを防ぐために、熱交換器、好ましくは予熱系統交換器を通して定期的にフラッシュされる。運転では、HSP原油のストリームが、プロセス流体から沈澱したアスファルテン化合物を溶解させるべく熱交換器の加熱面と接触させるために熱交換器を通して供給される。HSP原油のストリームは、少なくとも80のSBNを有する全原油であることができるか、または上記のような、HSP成分を有するブレンドであることができる。HSPのSBNおよび濃度は、意図されるフラッシュ時間と組み合わせて所望の効果および清掃の程度に依存するであろう。オンライン清掃および汚れ防止傾向については、5容量%以上のHSP油のブレンドがフラッシュのために有効であろうが、少なくとも24時間の浸漬での長時間の清掃については、少なくとも50容量%HSPのブレンドが有効であろう。
【0037】
フラッシュは、全体予熱系統(entire pre−heat train)で、一連の選択交換器で、または個々の交換器で行うことができる。影響を受けた熱交換器を物理的に除去し、清掃する必要性を低下させるかまたは排除する、フラッシュはオンラインで達成される。フラッシングはまた、例えば、パイプスチル、コーカー、およびビスブレーカーで成し遂げることができる。
【0038】
フラッシュは、交換器の効率が例えばコークスによって損なわれるときよりもむしろ、定期的に計画ベースで行われる。かかるアプローチは、溶剤だけでは除去することが困難であるコークスへの有機物の熱分解をさもなければ可能にする、沈着アスファルテンおよびワックスの加熱面への長期暴露を防ぐであろう。計画的なフラッシングは、1年当たり少なくとも4回、このましくは1年当たり6回、最も好ましくは毎月行われるべきである。フラッシュは、結果が30分以内にわかり短期間で有効であるか、または例えば、3日間の浸漬として設計されてもよい。
【0039】
実施例3
フラッシュの便益を実証するために、追加の試験を、アルコル汚れシミュレーション装置を用いて実施した。標準汚染ランは、基本ケースデータを得るために370℃(698°F)棒表面温度を用いて行った。棒をこの温度に加熱するのに15分を要した。同じ汚染ランを繰り返し、汚れた棒をフォローアップ清掃試験のために適所に保った。第1に、112のSBNのHSP全原油をあらかじめ汚した棒の一面にランさせた。第2に、貧溶媒全原油(SBN=40)を比較のためにランさせた。原油の両方とも、用いた条件下では非汚染原油である。図3は両試験ランの結果を示す。液体を加熱するアルコル棒の結果として得られた出口温度をプロットする。両方の基本ケース試験とも、原油が最高270〜277℃(518〜531°F)まで線形速度で加熱されることを示す。HSP清掃試験は、汚染物が最初は棒上に存在したけれども、原油が261℃(502°F)、または基本ケース270℃の97%まで加熱されたことを示す。かかる汚染物は普通は加熱効果を排除し、それによって液体を加熱する表面の効率を低下させる。HSP清掃ランからのデータを検討すると、出口温度の勾配が5分後に、または100℃に達した後に有意に増大することを示す。これは、汚染物沈着の物理的除去、それによって棒表面のより多くを露出させ、そして熱が液体に移動することを可能にすることに起因する。
【0040】
低いSBN原油での第2清掃試験は、勾配が増大せず、そして232℃(450°F)の最高温度が達成されたにすぎなかったことを示す。これは、前に形成した汚染物沈着の非除去か、または汚染物沈着の存在による伝熱の非能率性に起因する。図3の差し込み図棒グラフは、高いおよび低いSBN全原油間の出口温度の差を示す。5分後に、これらの間の差は8℃にすぎないが、ヒートアップ時間の10および15分後に出口温度の差は、それぞれ、26および29℃ある。これは、ヒーター棒上に残っている沈着物の量の差を反映している。この場合、実験室環境では、最適清掃時間またはフラッシュ時間は約5〜20分、好ましくは5〜15分である。
【0041】
図4〜6は、選択的な溶剤汚染物除去の追加の証拠を例示する。これらの図に示される結果は、棒上の汚染物沈着の物理的形状の検討を可能にする分析技法である、プロフィロメトリーを用いる試験によって得られた、図4は、全原油汚染ラン後の基本ケース棒についてのプロフィールを示す。図5は、高いSBN(SBN=112)原油清掃ラン後の基本ケース棒についてのプロフィールを示す。より低いプロフィールを有する丸く囲んだ部分は、アルコル棒沈着の清浄化部分を示す。図6は、低いSBN(SBN=40)原油清掃ラン後の基本ケース棒についてのプロフィールを示す。図6は、図4に示されるプロフィールと比較して効果が全くないことを示す。これらの結果は、HSP全原油のみが汚染物沈着を除去し、そしてシステムの伝熱効率を向上させることができたアルコル試験から得られた結果を裏付ける。
【0042】
このように、アスファルテン沈殿物で汚された熱交換面を比較的短期間HSP原油またはHSPブレンドを使用してフラッシュすると、かなりの量の沈着物を除去し、そして沈着が起こる前にそれらの沈殿物を溶液に溶解させるであろう。かかるフラッシングは、定期的に行われるときに表面がオフライン清掃を必要とする程度まで汚れた状態になるのを防ぐであろう。保守計画を実施すると、熱交換器の効率が損なわれないことを確実にし、オフライン清掃の必要性を低下させるかまたは排除するであろう。かなりの労働および時間の節約が実現されるであろうと理解することができる。
【0043】
本発明が様々な種類の公知の熱交換器デバイスにおけるいかなる熱交換器表面にも適用できることは熱交換器技術の当業者によって理解されるであろう。
【0044】
様々な修正が本明細書に記載されたような本発明において行われ得、デバイスおよび方法の多くの異なる実施形態は、特許請求の範囲に規定されるような本発明の趣旨および範囲内にとどまりながら、かかる趣旨および範囲から逸脱することなく作られ得る。添付の明細書に含まれる全ての事柄はあくまでも例示的なものであり、限定することを意味するものではないと解釈されるものとすることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルテンを沈澱させる油の割合を有する2つ以上の原油をブレンドする工程;および
80より大きい溶解ブレンド数(SBN)を有する原油と定義される高い溶解力(HSP)原油を、沈澱したアスファルテンを溶解させるために加える工程
を含むことを特徴とする熱交換設備の有機的な汚れを低減する石油原油のブレンド方法。
【請求項2】
前記2つ以上の原油をブレンドする工程が、
不溶性数(I)を前記2つ以上の原油について測定する工程;
溶解ブレンド数(SBN)を前記2つ以上の原油について測定する工程;および
ブレンドが高い汚れ傾向を有するようにSBN/I比が1.3未満であり、SBN−Iの差が10未満であるように前記2つ以上の原油を混ぜ合わせてブレンドにする工程
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記2つ以上の石油の成分がいずれも、未処理原油または石油から誘導された処理油であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記HSP油を含む前記ブレンド原油を精製プロセスに供給する工程を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
熱交換器を通して前記HSP油を含む前記ブレンド原油を供給する工程を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記熱交換器が、予熱系統交換器または加熱炉であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記熱交換器を通して前記ブレンド原油を供給する工程が、定期的な計画に従って前記ブレンドを供給することを含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記熱交換器を通して前記ブレンド原油を供給する工程が、前記熱交換器の表面を前記ブレンド原油と少なくとも30分間接触させることを含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記熱交換器を通して前記ブレンド原油を供給する工程が、前記熱交換器の表面を前記ブレンド原油と少なくとも24時間接触させることを含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記熱交換器を通して前記ブレンド原油を供給する工程が、前記熱交換器の表面を前記ブレンド原油と1〜5日間接触させることを含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項11】
プロセス流体から沈澱したアスファルテン化合物を溶解させるために、少なくとも80の溶解ブレンド数(SBN)を有する高い溶解力(HSP)原油のストリームを、熱交換器を通して供給することによって、前記熱交換器をフラッシュする工程;および
沈着したアスファルテンおよびワックスの前記熱交換器の加熱面への長期暴露を防ぐために、フラッシュを定期的に繰り返す工程
を含むことを特徴とする、アスファルテンを含むプロセス流体への熱交換を達成するために用いられる熱交換器における熱交換面の処理方法。
【請求項12】
前記熱交換器を前記HSP原油ストリームでフラッシュする工程が、1年当たり少なくとも4回行われることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記熱交換器を前記HSP原油でフラッシュする工程が、1年当たり少なくとも6回行われることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記熱交換器を前記HSP原油でフラッシュする工程が、毎月行われることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記ストリームを供給する工程が、前記熱交換器表面の加熱面を少なくとも30分の期間接触させることを含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記ストリームを供給する工程が、前記熱交換器表面の加熱面を少なくとも24時間接触させることを含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記ストリームを供給する工程が、熱交換器表面の加熱面を1〜5日間接触させることを含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記プロセス流体が、2つ以上の非相溶性原油のブレンドを含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項19】
HSP原油の前記ストリームが、5容量%のHSP原油および少なくとも2つの非相溶性原油のブレンドであることを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
HSP原油の前記ストリームが、50容量%のHSP原油および少なくとも2つの非相溶性原油のブレンドであることを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記フラッシングが、製油所においてオンラインで行われることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記熱交換器が、全体予熱系統を含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記熱交換器が、予熱系統の構成要素であることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記HSP原油が、少なくとも100のSBNを有することを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記HSP原油が、少なくとも120のSBNを有することを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−501667(P2010−501667A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525601(P2009−525601)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/018443
【国際公開番号】WO2008/024323
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】