説明

予約管理装置、予約管理方法、予約管理プログラム、及びそのプログラムを記憶するコンピュータ読取可能な記録媒体

【課題】共用施設の在庫を複数のプランのそれぞれに適切に割り当てること。
【解決手段】予約管理装置40は、予約実績データベース33を参照して、販売優先度が互いに異なる複数のプランのうち、少なくとも、最高の販売優先度を有する最優先プランについて、予約ペースを算出する算出部42aと、予約ペースと利用日までの残り日数とに基づいて、少なくとも最優先プランの期待予約数を推定する推定部42bと、施設の在庫数と、期待予約数と、各プランの販売優先度とに基づいて、販売優先度の高い順に各プランについての割当数を決定する決定部42cと、在庫データベース32に記憶されている各プランの割当数を、決定部42cにより決定された各プランの割当数で更新する更新部42dとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一形態は、施設の予約を管理する予約管理装置、予約管理方法、予約管理プログラム、及びそのプログラムを記憶するコンピュータ読取可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、宿の部屋やゴルフ場などの共用施設について複数のプランを設定し、当該複数のプランをユーザに販売する予約システムが知られている。なお、下記特許文献1には、ホテルの宿泊料金を段階的に変更し、残室待ちをしている利用者へ料金情報をその都度配信するホテル宿泊予約システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−256703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
共用施設の在庫を複数のプランにどのように割り当てるかにより、施設の稼働率や売上、利益などが変わってくる。従来、この割当ては過去の実績や決定者の経験などに基づいて決められるので、その割当てが適切でないと、共用施設の提供者が所望の結果を得られない可能性がある。例えば、売上や利益を上げるために高価格帯のプランに多くの在庫を割り当てた結果、全体の稼働率が低下したり、稼働率を上げるために低価格帯のプランに多くの在庫を割り当てた結果、売上や利益が頭打ちになったりすることが起こり得る。
【0005】
そこで、本発明の一側面は、共用施設の在庫を複数のプランのそれぞれに適切に割り当てることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る予約管理装置は、同一の利用日に同一の施設に対して設定された複数のプランのそれぞれについての施設の割当数を記憶する割当記憶部と、各プランの予約日を記憶する予約記憶部とにアクセス可能な予約管理装置であって、予約記憶部を参照して、販売優先度が互いに異なる複数のプランのうち、少なくとも、最高の販売優先度を有する最優先プランについて、予約ペースを算出する算出部と、予約ペースと利用日までの残り日数とに基づいて、少なくとも最優先プランの期待予約数を推定する推定部と、施設の在庫数と、期待予約数と、各プランの販売優先度とに基づいて、販売優先度の高い順に各プランについての割当数を決定する決定部と、割当記憶部に記憶されている各プランの割当数を、決定部により決定された各プランの割当数で更新する更新部とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の一形態に係る予約管理方法は、同一の利用日に同一の施設に対して設定された複数のプランのそれぞれについての施設の割当数を記憶する割当記憶部と、各プランの予約日を記憶する予約記憶部とにアクセス可能な予約管理装置により実行される予約管理方法であって、予約記憶部を参照して、販売優先度が互いに異なる複数のプランのうち、少なくとも、最高の販売優先度を有する最優先プランについて、予約ペースを算出する算出ステップと、予約ペースと利用日までの残り日数とに基づいて、少なくとも最優先プランの期待予約数を推定する推定ステップと、施設の在庫数と、期待予約数と、各プランの販売優先度とに基づいて、販売優先度の高い順に各プランについての割当数を決定する決定ステップと、割当記憶部に記憶されている各プランの割当数を、決定ステップにおいて決定された各プランの割当数で更新する更新ステップとを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の一形態に係る予約管理プログラムは、同一の利用日に同一の施設に対して設定された複数のプランのそれぞれについての施設の割当数を記憶する割当記憶部と、各プランの予約日を記憶する予約記憶部とにアクセス可能な予約管理装置としてコンピュータを機能させる予約管理プログラムであって、予約記憶部を参照して、販売優先度が互いに異なる複数のプランのうち、少なくとも、最高の販売優先度を有する最優先プランについて、予約ペースを算出する算出部と、予約ペースと利用日までの残り日数とに基づいて、少なくとも最優先プランの期待予約数を推定する推定部と、施設の在庫数と、期待予約数と、各プランの販売優先度とに基づいて、販売優先度の高い順に各プランについての割当数を決定する決定部と、割当記憶部に記憶されている各プランの割当数を、決定部により決定された各プランの割当数で更新する更新部とをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0009】
本発明の一形態に係るコンピュータ読取可能な記録媒体は、同一の利用日に同一の施設に対して設定された複数のプランのそれぞれについての施設の割当数を記憶する割当記憶部と、各プランの予約日を記憶する予約記憶部とにアクセス可能な予約管理装置としてコンピュータを機能させる予約管理プログラムを記憶するコンピュータ読取可能な記録媒体であって、予約管理プログラムがコンピュータに、予約記憶部を参照して、販売優先度が互いに異なる複数のプランのうち、少なくとも、最高の販売優先度を有する最優先プランについて、予約ペースを算出する算出部と、予約ペースと利用日までの残り日数とに基づいて、少なくとも最優先プランの期待予約数を推定する推定部と、施設の在庫数と、期待予約数と、各プランの販売優先度とに基づいて、販売優先度の高い順に各プランについての割当数を決定する決定部と、割当記憶部に記憶されている各プランの割当数を、決定部により決定された各プランの割当数で更新する更新部とを実行させる、ことを特徴とする。
【0010】
このような形態によれば、少なくとも最優先プランの予約ペースが算出され、その予約ペースと利用日までの残り日数とに基づいて、少なくとも最優先プランの期待予約数が推定される。そして、施設の在庫数と、期待予約数と、各プランの販売優先度とに基づいて、販売優先度の高い順に各プランの割当数が更新される。これにより、最も多く販売したいプランに対して必要な量の在庫が確保され、その結果、施設の在庫を複数のプランのそれぞれに適切に割り当てることができる。
【0011】
別の形態に係る予約管理装置では、決定部が、最優先プランについては施設の在庫のすべてを配分可能なように割当数を設定し、該最優先プラン以外の処理対象プランについては、該処理対象プランの期待予約数と、該処理対象プランよりも販売優先度が高いプランの期待予約数及び成立予約数とに基づいて割当数を設定してもよい。
【0012】
さらに別の形態に係る予約管理装置では、算出部が、各プランの予約ペースを、該プランの受付可能期間を該プランの成立予約数で割ることで求めてもよい。このように、受付可能期間を考慮して予約ペースを求めることで、施設の割当に関してプラン間の衡平を図ることができる。
【0013】
さらに別の形態に係る予約管理装置では、算出部が、プランの予約が成立する度に予約ペースを算出してもよい。予約が成立する度に、予約ペースの算出から始まる割当数更新の処理を実行することで、割当数をきめ細かく調整することができる。
【0014】
さらに別の形態に係る予約管理装置では、算出部が、算出した予約ペースの最小値に応じた時間が経過した後に、予約ペースを再び算出してもよい。次の予約が成立すると予測される時期に応じたタイミングで割当数更新の処理を実行することで、更新処理の回数を抑えつつ割当数をきめ細かく調整することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一側面によれば、共用施設の在庫を複数のプランのそれぞれに適切に割り当てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係る宿泊予約システムの全体構成を示す図である。
【図2】プラン情報の例を示す図である。
【図3】在庫情報の例を示す図である。
【図4】予約情報の例を示す図である。
【図5】図1に示す予約管理装置のハードウェア構成を示す図である。
【図6】図1に示す予約管理装置の機能構成を示すブロック図である。
【図7】割当数を更新するまでの手順の一例を示す図である。
【図8】図1に示す予約管理装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】図8に示す割当数決定処理の詳細を示すフローチャートである。
【図10】図9に示す割当数設定処理の詳細を示すフローチャートである。
【図11】実施形態に係る宿泊予約プログラムの構成を示す図である。
【図12】図1に示す予約管理装置による調整の一例(実施例1)を示す図である。
【図13】図1に示す予約管理装置による調整の別の例(実施例2)を示す図である。
【図14】従来の予約受付の例(従来例1−1)を示す図である。
【図15】従来の予約受付の例(従来例1−2)を示す図である。
【図16】従来の予約受付の例(従来例2−1)を示す図である。
【図17】従来の予約受付の例(従来例2−2)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
まず、図1〜7を用いて、実施形態に係る宿泊予約システム1の機能及び構成を説明する。宿泊予約システム1は、宿泊施設の予約を受け付けるウェブサイト(宿泊予約サイト)をユーザに提供するコンピュータシステムである。宿泊予約システム1は、ユーザ端末10と、ホテルや旅館などの宿泊施設に設置された提供者端末20と、データベース群30と、予約管理装置40とを備えている。ユーザ端末10、提供者端末20、データベース群30、及び予約管理装置40は、インターネットや無線LAN、移動体通信網などで構成されている通信ネットワークNを介して互いに通信することが可能である。図1ではユーザ端末10及び提供者端末20をそれぞれ3台示しているが、宿泊予約システム1内におけるこれらの装置の台数は任意である。
【0019】
ユーザ端末10は、宿泊施設の部屋を予約するユーザが所有する端末である。ユーザ端末10の例として高機能携帯電話機(スマートフォン)や携帯情報端末(PDA)、パーソナルコンピュータ(PC)などが挙げられるが、携帯端末の種類はこれらに限定されない。ユーザはユーザ端末10を操作して宿泊予約サイトにアクセスし、部屋(宿泊プラン)を予約することができる。
【0020】
提供者端末20は、宿泊予約システム1での予約対象である部屋(宿泊プラン)を提供する宿泊施設の端末である。提供者端末20の例としてはPCが挙げられるが、各種携帯端末も提供者端末20として利用可能である。宿泊施設の管理者は提供者端末20を操作して、予約を受け付ける部屋の在庫及び宿泊プランの情報を在庫情報として在庫データベース32に登録する。
【0021】
データベース群30は、宿泊予約システム1内で用いられる各種の情報を記憶する手段である。データベース群30は、プランデータベース31、在庫データベース(割当記憶部)32、及び予約実績データベース(予約記憶部)33を備えている。
【0022】
プランデータベース31は、宿泊施設が提供する宿泊プランの情報(プラン情報)を記憶する手段である。図2に示すように、プラン情報は、宿泊施設を特定する施設IDと、部屋のタイプと、その部屋の最大在庫数と、宿泊プランを特定するプランIDと、そのプランの単価とを含む。部屋タイプとは、部屋のスタイル(洋室、和室など)や収容人数などで示される、部屋の種類のことである。なお、以下では宿泊プランのことを単に「プラン」ともいう。一つの部屋タイプには1以上のプランが対応する。なお、プランとは、施設利用に関するパッケージ商品のことである。
【0023】
在庫データベース32は、各プランに割り当てられる部屋の数(割当数)を管理するための在庫情報を記憶する手段である。図3に示すように、在庫情報は、施設ID、部屋タイプ、利用日(宿泊開始日)、プランID、受け付けた予約の数(成立予約数)、及び割当数を含む。割当数は、各プランに割り当てられる部屋の総数であり、この値には成立予約数が含まれる。各プランの割当数の初期値は、対応するプラン情報で示される部屋の最大在庫数である。
【0024】
予約実績データベース33は、ユーザによる宿泊施設の予約を示す予約情報を記憶する手段である。図4に示すように、予約情報は、施設ID、部屋タイプ、プランID、予約日(利用予定日)、及び単価を含んでいる。予約情報は、宿泊予約サイトにおいて宿泊プランの予約が確定した時に予約実績データベース33に登録される。
【0025】
なお、各データベースの構成は上記の例に限定されず、任意の方針で各データベースを正規化または冗長化してもよい。
【0026】
以上を前提として予約管理装置40について説明する。予約管理装置40は、宿泊予約サイトを介して宿泊施設の検索や宿泊予約の受付などのような、宿泊予約に関する様々なサービスをユーザに提供するコンピュータである。
【0027】
図5に示すように、予約管理装置40は、オペレーティングシステムやアプリケーション・プログラムなどを実行するCPU401と、ROM及びRAMで構成される主記憶部402と、ハードディスクなどで構成される補助記憶部403と、ネットワークカードなどで構成される通信制御部404と、キーボードやマウスなどの入力部405と、ディスプレイなどの出力部406とで構成される。
【0028】
後述する予約管理装置40の各機能的構成要素は、CPU401や主記憶部402の上に所定のソフトウェアを読み込ませ、CPU401の制御の下で通信制御部404や入力部405、出力部406などを動作させ、主記憶部402や補助記憶部403におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。処理に必要なデータやデータベースは主記憶部402や補助記憶部403内に格納される。なお、図5では予約管理装置40が1台のコンピュータで構成されているように示しているが、予約管理装置40の機能を複数台のコンピュータに分散させてもよい。
【0029】
図6に示すように、予約管理装置40は機能的構成要素として予約受付部41及び割当更新部42を備えている。
【0030】
予約受付部41は、ユーザにより申し込まれた宿泊予約を受け付ける手段である。予約受付部41は、宿泊予約サイトを介して申し込まれた予約を示す予約情報をユーザ端末10から受信して予約実績データベース33に格納する。
【0031】
割当更新部42は、各プランへの部屋の割当数を販売優先度に基づいて更新する手段である。本実施形態では、割当更新部42は販売優先度を示す指標としてプランの単価を用い、単価が高いプランほどより優先的に部屋を割り当てる。割当更新部42は算出部42a、推定部42b、決定部42c、及び更新部42dを備えている。
【0032】
以下では、図7の更新例を参照しながらこれらの機能的構成要素を説明する。図7は、ホテルPの部屋タイプαの7月31日分の総在庫が20部屋であることを前提に(図2参照)、単価が互いに異なる三つのプランA〜Cにこの20部屋を割り当てる例を説明する図である。プランA〜Cは7月1日に申込が開始されたものとする。プランA〜Cの割当数の初期値はすべて20である。本実施形態では、割当更新部42は10日毎に(7月11,21,31日の未明のバッチ処理で)割当数の更新を実行するものとする。図7は7月11日未明のバッチ処理を示している。
【0033】
算出部42aは、予約実績データベース33を参照して宿泊プランの予約ペースを算出する手段である。予約ペースは、一件の予約が成立するのに平均で何日掛かっているかを示す値であり、この値が低いプランほど人気があるといえる。算出部42aは各プラン共通の基準日(各プランが予約可能な対象として宿泊予約サイト上に公開された日)から現時点までの経過日数を、当該基準日から現時点までに申し込まれた予約数で割ることで予約ペースを算出する。
【0034】
7月11日未明の処理について説明する。図7の例では基準日は7月1日であるので、算出部42aは7月1〜10日までに登録された予約情報を予約実績データベース33から読み出す。7月10日までのプランA,B,Cの予約数(すなわち募集開始から10日間経った時点でのプランA,B,Cの予約数)はそれぞれ1、2、6である。したがって、プランAの予約ペースは10(=10/1)、プランBの予約ペースは5(=10/2)、プランCの予約ペースは1.66(≒10/6)である。算出部42aはこのように求めた予約ペースを推定部42bに出力する。
【0035】
続いて、推定部42bによる処理が実行される。推定部42bは、各プランの予約ペースと利用日までの残り日数とに基づいて期待予約数を推定する手段である。期待予約数とは、利用日までに期待できる追加の予約数のことである。推定部42bは、利用日までの残り日数を入力された予約ペースで割ることで、各プランの期待予約数を求める。
【0036】
7月11日未明の処理について説明すると、利用日までの残り日数が20日であるので、プランAの期待予約数は2(=20/10)、プランBの期待予約数は4(=20/5)、プランCの期待予約数は12(≒20/1.66)である。推定部42bはこのように求めた期待予約数を決定部42cに出力する。
【0037】
続いて、決定部42cによる処理が実行される。決定部42cは、単価が最も高いプラン(最優先プラン)について推定される更なる予約を残りの部屋数(在庫数)の範囲で受付可能なように、各プランについての割当数を決定する手段である。これは、単価が最も高いプランへの在庫の割当を最優先にすることを意味する。決定部42cは決定した割当数を更新部42dに出力する。
【0038】
まず、決定部42cはプランデータベース31を参照して各プランの販売優先度を取得する。図2より、単価の降順にプランを並べるとプランA、プランB、プランCとなるので、部屋を割り当てる優先度はプランAが最も高く、次いで、プランB、プランCの順となる。これを前提として7月11日未明の処理について説明すると、既に合計9部屋が予約されているので、決定部42cは部屋の在庫数が11(=20−9)であると特定する。続いて、決定部42cは、最高の販売優先度を有するプランについて、成立予約数と期待予約数との和を推定予約数として求める。図7の例では、プランAの推定予約数は3(1+2)である。
【0039】
続いて、決定部42cは、最高の販売優先度を有するプランについては推定予約数分の割り当てを確保しつつ、販売優先度が2番目以下の各プランの割当数を決定する。まず、決定部42cは該プランの割当数を初期値のまま維持する。これは、最高の販売優先度を有するプランについては推定予約数以上の予約が成立しても何ら問題ないからである。続いて、決定部42cは販売優先度が2番目以下の各プランの割当数を決定する。図7の例では在庫は11であるがプランAの期待予約数分の部屋(すなわち2部屋)はそのまま確保されるので、分配可能な残り9部屋をプランB,Cに分けることになる。決定部42cは、販売優先度が2番目以下の各プランについて、その販売優先度順に部屋を割り当てる。この際に、期待予約数が未割当ての在庫数より大きいプランについては、決定部42cは当該未割当在庫数の分しかそのプランに追加しない。
【0040】
図7の例では、プランA(最優先プラン)の割当数は20で変わらない。次の処理対象プランであるプランBの期待予約数(4)は未割当在庫数(9)以下なので、割当数は6(=2+4)となる。その次の処理対象プランであるプランCの期待予約数(12)は未割当在庫数(9−4=5)を超えているので、割当数は18(=6+12)ではなく11(=6+5)となる。
【0041】
このように決定部42cは、最優先プランについては共用施設の在庫のすべてを配分可能なように割当数を設定し、他のプランについては、期待予約数及び未割当ての在庫数の範囲内で割当数を設定する。ここで、未割当ての在庫数は、処理対象プランの期待予約数と、該処理対象プランよりも販売優先度が高いプランの期待予約数及び成立予約数とに基づいて求まる。
【0042】
更新部42dは決定された割当数を上書きにより在庫データベース32に格納する手段である。これにより、各プランの割当数が更新される。7月11日未明の処理では、プランAの割当数は20のままであるのに対して、プランB,Cの割当数それぞれ6、11に更新される。
【0043】
次に、図8〜10を用いて、予約管理装置40の動作を説明するとともに本実施形態に係る予約管理方法について説明する。
【0044】
割当更新部42による処理が開始されると、まず算出部42aが各プランの予約ペースを算出する(ステップS11、算出ステップ)。続いて、推定部42bがその予約ペースと利用日までの残り日数とに基づいて各プランの期待予約数を推定する(ステップS12、推定ステップ)。続いて、決定部42cが各プランの割当数を決定する(ステップS13、決定ステップ)。
【0045】
具体的には図9に示すように、決定部42cはまず、最高の販売優先度を有するプラン(単価が最も高いプラン)の割当数をそのまま維持する(ステップS131)。その一方で、決定部42cは販売優先度が2番目以下の各プランについては、期待予約数及び未割当在庫数の範囲内で割当数を設定する(ステップS132)。
【0046】
具体的には図10に示すように、販売優先度がn番目(nの初期値は2)のプランの期待予約数が未割当在庫数以下であれば(ステップS1321;YES)、決定部42cはそのプランの割当数を成立予約数と期待予約数の和とする(ステップS1322)。一方、その期待予約数が未割当在庫数より大きければ(ステップS1321;NO)、決定部42cは割当数を成立予約数と未割当在庫数との和とする(ステップS1323)。このとき未割当在庫数が0であれば、割当数は成立予約数と等しくなる。処理対象プランが残っていれば(ステップS1324;NO)、決定部42cは販売優先度が(n+1)番目のプラン(ステップS1325)についてステップS1321〜S1323の処理を行う。すべてのプランについて割当数が設定されると(ステップS1324;YES)、処理が終了する。
【0047】
最後に、更新部42dが各プランの割当数を決定された新たな割当数で更新する(ステップS14、更新ステップ)。
【0048】
次に、図11を用いて、コンピュータを予約管理装置40として機能させるための予約管理プログラムを説明する。
【0049】
予約管理プログラムP1は、メインモジュールP10、予約受付モジュールP11及び割当更新モジュールP12を備えている。割当更新モジュールP12は、算出モジュールP12a、推定モジュールP12b、決定モジュールP12c、及び更新モジュールP12dを備えている。
【0050】
メインモジュールP10は、予約管理機能を統括的に制御する部分である。予約受付モジュールP11及び割当更新モジュールP12を実行することにより実現される機能はそれぞれ、上記の予約受付部41及び割当更新部42の機能と同様である。算出モジュールP12a、推定モジュールP12b、決定モジュールP12c、及び更新モジュールP12dを実行することにより実現される機能はそれぞれ、上記の算出部42a、推定部42b、決定部42c、及び更新部42dの機能と同様である。
【0051】
予約管理プログラムP1は、例えば、CD−ROMやDVD−ROM等の記録媒体または半導体メモリに固定的に記録された態様で提供される。また、予約管理プログラムP1は、搬送波に重畳されたコンピュータデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によれば、各プランの予約ペースが算出され、その予約ペースと利用日までの残り日数とに基づいて、各プランの期待予約数が推定される。そして、宿泊施設の在庫数と、推定された期待予約数と、各宿泊プランの販売優先度とに基づいて、販売優先度の高い順に各宿泊プランの割当数が更新される。これにより、最も多く販売したい宿泊プランに対して必要な量の在庫が確保され、その結果、宿泊施設の在庫を複数の宿泊プランのそれぞれに適切に割り当てることができる。
【0053】
このような割当の優位性を図12〜17の具体例を用いてさらに説明する。図12〜17が示す内容は以下の通りである。なお、図12〜17では説明の便宜のために予約順を示す予約番号を示している。図12における7月11日の結果は、図7に示すものと同じである。
【0054】
図12…本実施形態を適用して割当数を調整する場合において、単価が安いプランの予約ペースが速い例(実施例1)
図13…本実施形態を適用して割当数を調整する場合において、単価が高いプランの予約ペースが速い例(実施例2)
図14…本実施形態を適用せず申込順に部屋を割り当てる場合において、単価が安いプランの予約ペースが速い例(従来例1−1)
図15…本実施形態を適用せず人手により各プランの部屋数を割り当てた場合において、単価が安いプランの予約ペースが速い例(従来例1−2)
図16…本実施形態を適用せず申込順に部屋を割り当てる場合において、単価が高いプランの予約ペースが速い例(従来例2−1)
図17…本実施形態を適用せず人手により各プランの部屋数を割り当てた場合において、単価が高いプランの予約ペースが速い例(従来例2−2)
【0055】
まず、単価が安いプランの予約ペースが速い実施例1と従来例1−1とを比較すると、予約番号1〜17までの予約の入り方は同じである。しかし、実施例1では、11番目のプランCの予約(予約番号17)が入った時点で当該プランCの申込みが受付不可能になる。したがって、図12に示すように、プランCよりも高額なプランA,Bの予約が申し込まれる余地がある。一方、従来例1−1の場合には割当数は何ら調整されないので、11番目のプランCの予約(予約番号17)が入った以降もプランCの予約が入る余地があり、その結果、図14に示すように残り3枠もプランCで埋まる可能性がある。また、従来例1−2のようにプランCよりもプランA,Bに多くの部屋を割り当てた場合には、図15に示すように、プランCの予約申込が早い時点で打ち切られる一方で、高額のプランA,B用に確保した部屋が埋まらない可能性がある。
【0056】
次に、単価が高いプランの予約ペースが速い実施例2と従来例2−1とを比較すると、予約番号1〜9までの予約の入り方は同じである。しかし、実施例2では、7月11日未明のバッチ処理でプランB,Cの割当数がそれぞれ2、1に設定されるので、7月11日以降はプランB,Cの申込みが受付不可能になる。したがって、図13に示すように、予約ペースが速いプランAを最大限に受け付けることが可能になる。一方、従来例2−1の場合には割当数は何ら調整されないので、7月11日以降もプランB,Cの予約が入る余地がある。また、従来例2−2では各プランA,Bの割当数が固定されているので、図17に示すように、10番目のプランAの予約(予約番号14)が入った時点で、人気のあるプランAの予約受付を止めざるを得なくなる。
【0057】
実施例1と従来例1−1,1−2との比較、及び実施例2と従来例2−1,2−2との比較からわかるように、本実施形態では従来よりも在庫の消化と売上の確保とのバランスを取ることが可能になる。
【0058】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0059】
割当更新部42の処理結果によっては、「割当数=成立予約数」となるプランが発生し、次回以降の割当更新部42の処理において割当数が成立予約数より大きい値に更新されるまで、当該プランの予約受付が停止される場合がある。この場合に算出部42aは、そのようなプランについては基準日から現時点までの期間を予約数で割るのではなく、予約受付可能期間(プラン募集の期間)を予約数で割ることで予約ペースを求めてもよい。
【0060】
例えば、上記実施例2(図13)では、7月11日時点でプランB,Cの予約受付が停止する。この場合、次のバッチ処理(すなわち7月21日未明のバッチ処理)では、算出部42aはプランAの予約ペースを「20/(成立予約数)」により求める一方で、プランBの予約ペースを5(=10/2)とし、プランCの予約ペースを10(=10/1)としてもよい。なぜなら、プランAの募集期間は7月1〜20日であるのに対して、プランB,Cの募集期間はともに7月1〜10日の間のみであったからである。このように予約ペース算出の基準となる期間を調整することで、共用施設の割当に関してプラン間の衡平を図ることができる。
【0061】
上記実施形態において、割当更新部42は10日毎に処理を実行したが、割当更新部42による処理の実行時期はこれに限定されない。例えば、割当更新部42は一つの宿泊予約が成立する度に上記の一連の処理を実行してもよい。この場合には、割当更新部42は予約情報が予約実績データベース33に登録されたタイミングで一連の処理を開始すればよい。このように、約が成立する度に、予約ペースの算出から始まる割当数更新の処理を実行することで、割当数をきめ細かく調整することができる。
【0062】
あるいは、割当更新部42は、n回目のバッチ処理で得られた各プランの予約ペースの最小値に応じた日数が経過した時に、(n+1)回目のバッチ処理を実行してもよい。図7の例では、予約ペースの最小値である「1.66」に応じて、2日後に次のバッチ処理が実行される。このように、次の予約が成立すると予測される時期に応じたタイミングで、予約ペースの算出から始まる割当数更新の処理を実行することで、更新処理の回数を抑えつつ割当数をきめ細かく調整することができる。
【0063】
上記実施形態では、割当更新部42は全プランの予約ペース及び期待割当数を求めた上で各プランの割当数を決定したが、割当更新部42の処理手順はこれに限定されない。具体的には、割当更新部42は、販売優先度がn番目のプランについて予約ペース及び期待割当数の算出と割当数の決定とを行った後に、販売優先度が(n+1)番目のプランについて予約ペース及び期待割当数の算出と割当数の決定とを行ってもよい。この場合には、途中で未割在庫数が0になると、割当更新部42は以降の処理対象プランについて、予約ペース及び期待割当数を算出することなく、割当数を成立予約数に合わせる処理を行えばよい。したがって、予約ペース及び期待割当数の算出が最優先プランについてのみ行われる場合が有り得る。
【0064】
上記実施形態では共用施設として宿泊施設の部屋を示し、プランとして宿泊プランを示したが、本発明は宿泊予約以外の任意の予約受付システムに適用できる。例えば、ゴルフ場の予約(ゴルフコンペのプラン)に本発明を適用してもよい。
【0065】
上記実施形態では単価を販売優先度の尺度としたが、プランの販売優先度を設定する基準は何ら限定されない。例えば、利益率に基づいて各プランの販売優先度を設定してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…宿泊予約システム、10…ユーザ端末、20…提供者端末、30…データベース群、31…プランデータベース、32…在庫データベース、33…予約実績データベース、40…予約管理装置、41…予約受付部、42…割当更新部、42a…算出部、42b…推定部、42c…決定部、42d…更新部、P1…予約管理プログラム、P10…メインモジュール、P11…予約受付モジュール、P12…割当更新モジュール、P12a…算出モジュール、P12b…推定モジュール、P12c…決定モジュール、P12d…更新モジュール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の利用日に同一の施設に対して設定された複数のプランのそれぞれについての施設の割当数を記憶する割当記憶部と、各プランの予約日を記憶する予約記憶部とにアクセス可能な予約管理装置であって、
前記予約記憶部を参照して、販売優先度が互いに異なる前記複数のプランのうち、少なくとも、最高の前記販売優先度を有する最優先プランについて、予約ペースを算出する算出部と、
前記予約ペースと前記利用日までの残り日数とに基づいて、少なくとも前記最優先プランの期待予約数を推定する推定部と、
前記施設の在庫数と、前記期待予約数と、各プランの前記販売優先度とに基づいて、前記販売優先度の高い順に各プランについての前記割当数を決定する決定部と、
前記割当記憶部に記憶されている各プランの割当数を、前記決定部により決定された各プランの割当数で更新する更新部と
を備えることを特徴とする予約管理装置。
【請求項2】
前記決定部が、前記最優先プランについては前記施設の在庫のすべてを配分可能なように前記割当数を設定し、該最優先プラン以外の処理対象プランについては、該処理対象プランの前記期待予約数と、該処理対象プランよりも前記販売優先度が高いプランの前記期待予約数及び成立予約数とに基づいて前記割当数を設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の予約管理装置。
【請求項3】
前記算出部が、各プランの前記予約ペースを、該プランの受付可能期間を該プランの成立予約数で割ることで求める、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の予約管理装置。
【請求項4】
前記算出部が、プランの予約が成立する度に前記予約ペースを算出する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の予約管理装置。
【請求項5】
前記算出部が、算出した前記予約ペースの最小値に応じた時間が経過した後に、前記予約ペースを再び算出する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の予約管理装置。
【請求項6】
同一の利用日に同一の施設に対して設定された複数のプランのそれぞれについての施設の割当数を記憶する割当記憶部と、各プランの予約日を記憶する予約記憶部とにアクセス可能な予約管理装置により実行される予約管理方法であって、
前記予約記憶部を参照して、販売優先度が互いに異なる前記複数のプランのうち、少なくとも、最高の前記販売優先度を有する最優先プランについて、予約ペースを算出する算出ステップと、
前記予約ペースと前記利用日までの残り日数とに基づいて、少なくとも前記最優先プランの期待予約数を推定する推定ステップと、
前記施設の在庫数と、前記期待予約数と、各プランの前記販売優先度とに基づいて、前記販売優先度の高い順に各プランについての前記割当数を決定する決定ステップと、
前記割当記憶部に記憶されている各プランの割当数を、前記決定ステップにおいて決定された各プランの割当数で更新する更新ステップと
を含むことを特徴とする予約管理方法。
【請求項7】
同一の利用日に同一の施設に対して設定された複数のプランのそれぞれについての施設の割当数を記憶する割当記憶部と、各プランの予約日を記憶する予約記憶部とにアクセス可能な予約管理装置としてコンピュータを機能させる予約管理プログラムであって、
前記予約記憶部を参照して、販売優先度が互いに異なる前記複数のプランのうち、少なくとも、最高の前記販売優先度を有する最優先プランについて、予約ペースを算出する算出部と、
前記予約ペースと前記利用日までの残り日数とに基づいて、少なくとも前記最優先プランの期待予約数を推定する推定部と、
前記施設の在庫数と、前記期待予約数と、各プランの前記販売優先度とに基づいて、前記販売優先度の高い順に各プランについての前記割当数を決定する決定部と、
前記割当記憶部に記憶されている各プランの割当数を、前記決定部により決定された各プランの割当数で更新する更新部と
を前記コンピュータに実行させることを特徴とする予約管理プログラム。
【請求項8】
同一の利用日に同一の施設に対して設定された複数のプランのそれぞれについての施設の割当数を記憶する割当記憶部と、各プランの予約日を記憶する予約記憶部とにアクセス可能な予約管理装置としてコンピュータを機能させる予約管理プログラムを記憶するコンピュータ読取可能な記録媒体であって、
前記予約管理プログラムが前記コンピュータに、
前記予約記憶部を参照して、販売優先度が互いに異なる前記複数のプランのうち、少なくとも、最高の前記販売優先度を有する最優先プランについて、予約ペースを算出する算出部と、
前記予約ペースと前記利用日までの残り日数とに基づいて、少なくとも前記最優先プランの期待予約数を推定する推定部と、
前記施設の在庫数と、前記期待予約数と、各プランの前記販売優先度とに基づいて、前記販売優先度の高い順に各プランについての前記割当数を決定する決定部と、
前記割当記憶部に記憶されている各プランの割当数を、前記決定部により決定された各プランの割当数で更新する更新部と
を実行させる、
ことを特徴とするコンピュータ読取可能な記録媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−30107(P2013−30107A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167299(P2011−167299)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【特許番号】特許第5032692号(P5032692)
【特許公報発行日】平成24年9月26日(2012.9.26)
【出願人】(399037405)楽天株式会社 (416)