説明

二元冷凍サイクル装置

【課題】COPを高め、より少ない電力でより高い加熱能力が得られる二元冷凍サイクル装置を提供する。
【解決手段】当該装置のCOPが最大となるときの低温側冷凍サイクルにおける冷媒の飽和凝縮温度または高温側冷凍サイクルにおける冷媒の飽和蒸発温度を最適値として予め保持し、実際の飽和凝縮温度または飽和蒸発温度が上記最適値となるよう、低温側圧縮機および高温側圧縮機の運転周波数を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、2つの冷凍サイクルをカスケード接続した二元冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カスケード接続した2つの冷凍サイクルを備え、一方の冷凍サイクルの運転により例えば外気から熱を汲み上げ、その汲み上げ熱を他方の冷凍サイクルの運転によりさらに加熱した状態で利用側へ供給する二元冷凍サイクル装置が開発され、製品化されつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−71129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2つの冷凍サイクルが連係運転する二元冷凍サイクル装置では、エネルギー消費効率いわゆるCOP(Coefficient Of Performance)を高め、より少ない電力でより高い加熱能力が得られることが望まれる。
【0005】
本発明の実施形態の目的は、COPを高め、より少ない電力でより高い加熱能力が得られる二元冷凍サイクル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の二元冷凍サイクル装置は、低温側圧縮機、カスケード熱交換器の低温側流路、減圧器、空気熱交換器を冷媒配管を介して連通する低温側冷凍サイクルと、高温側圧縮機、水・冷媒熱交換器の冷媒側流路、減圧器、前記カスケード熱交換器の高温側流路を冷媒配管を介して連通する高温側冷凍サイクルと、負荷側の水を前記水・冷媒熱交換器の水側流路に通す水回路と、当該装置のCOPが最大となるときの前記低温側冷凍サイクルにおける冷媒の飽和凝縮温度または前記高温側冷凍サイクルにおける冷媒の飽和蒸発温度を前記水・冷媒熱交換器への入水温度および外気温度をパラメータとして求めるためのデータテーブルを予め保持し、実際の入水温度および外気温度に基づく前記データテーブルの参照により前記飽和凝縮温度または前記飽和蒸発温度の最適値を求め、実際の前記飽和凝縮温度または前記飽和蒸発温度が前記最適値となるよう、前記低温側圧縮機および前記高温側圧縮機の運転能力を調整する制御手段と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】各実施形態の構成を示す図。
【図2】各実施形態における各冷凍サイクルのモリエル線図。
【図3】各実施形態におけるカスケード温度とCOPの対応を示す図。
【図4】第2の実施形態の制御を示すフローチャート。
【図5】第2の実施形態における最大加熱能力時の外気温度と各運転周波数の関係を示す図。
【図6】第2の実施形態における最大加熱能力時の外気温度と運転周波数比率の関係を示す図。
【図7】第2の実施形態においてカスケード温度を最適値に維持したまま運転周波数を最低値まで下げた場合の外気温度と運転周波数の関係を示す図。
【図8】第2の実施形態においてカスケード温度を最適値に維持したまま運転周波数を最低値まで下げた場合の外気温度と運転周波数比率の関係を示す図。
【図9】第3の実施形態の制御を示すフローチャート。
【図10】第4の実施形態の制御を示すフローチャート。
【図11】第5の実施形態の制御を示すフローチャート。
【図12】第5の実施形態におけるカスケード温度の調節とそれに伴うCOPの変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[1]第1の実施形態について説明する。
図1において、1は二元冷凍サイクル装置で、低温側冷凍サイクル10、高温側冷凍サイクル20、および水回路30を有する。
【0009】
低温側冷凍サイクル10は、低温側圧縮機11、四方弁12、カスケード熱交換器13の低温側流路13a、レシーバ14、減圧器例えば電動膨張弁15、空気熱交換器16、上記四方弁12、およびアキュームレータ17を冷媒配管により連通したヒートポンプ式冷凍サイクルであり、空気熱交換器16と対向する位置にファン18を配置している。低温側圧縮機11の吐出口から吐出される冷媒は、矢印で示すように、四方弁12を通ってカスケード熱交換器13の低温側流路13aに流れ、そこで凝縮する。このカスケード熱交換器13の低温側流路13aを経た冷媒は、レシーバ14および電動膨張弁15を通って空気熱交換器16に流れ、そこで蒸発する。そして、空気熱交換器16を経た冷媒は、四方弁12およびアキュームレータ17を通って低温側圧縮機11の吸込口に吸込まれる。すなわち、カスケード熱交換器13の低温側流路13aが凝縮器、空気熱交換器16が蒸発器として機能することにより、外気から熱を汲み上げてそれを高温側冷凍サイクル20に供給する。
【0010】
この低温側冷凍サイクル10において、低温側圧縮機11の吐出口と四方弁12との間の冷媒配管に、吐出冷媒の圧力Pd-Lを検知する冷媒圧力センサ51を取付ける。カスケード熱交換器13の低温側流路13aとレシーバ14との間の冷媒配管に、カスケード熱交換器13の低温側流路13aから流出する冷媒の温度Tf-Lを検知する冷媒温度センサ52を取付ける。ファン18の吸込み風路に、外気温度Toを検知する外気温度センサ53を取付ける。四方弁12とアキュームレータ17との間の冷媒配管に、低温側圧縮機11への吸込み冷媒の温度Ts-Lを検知する冷媒温度センサ54を取付ける。アキュームレータ17と低温側圧縮機11の吸込口との間の冷媒配管に、吸込み冷媒の圧力Ps-Lを検知する冷媒圧力センサ55を取付ける。
【0011】
高温側冷凍サイクル20は、高温側圧縮機21、四方弁22、水・冷媒熱交換器23の冷媒側流路23a、レシーバ24、減圧器例えば電動膨張弁25、上記カスケード熱交換器13の高温側流路13b、上記四方弁22、およびアキュームレータ27を冷媒配管により連通したヒートポンプ式冷凍サイクルである。高温側圧縮機21の吐出口から吐出される冷媒は、矢印で示すように、四方弁22を通って水・冷媒熱交換器23の冷媒側流路23aに流れ、そこで凝縮する。この水・冷媒熱交換器23の冷媒側流路23aを経た冷媒は、レシーバ24および電動膨張弁25を通ってカスケード熱交換器13の高温側流路13bに流れ、そこで蒸発する。そして、カスケード熱交換器13の高温側流路13bを経た冷媒は、四方弁22およびアキュームレータ27を通って高温側圧縮機21の吸込口に吸込まれる。すなわち、水・冷媒熱交換器23の冷媒側流路23aが凝縮器、カスケード熱交換器13の高温側流路13bが蒸発器として機能することにより、低温側冷凍サイクル10の汲み上げ熱を吸収してそれを水回路30に供給する。
【0012】
この高温側冷凍サイクル20において、高温側圧縮機21の吐出口と四方弁22との間の冷媒配管に、吐出冷媒の圧力Pd-Hを検知する冷媒圧力センサ61を取付ける。水・冷媒熱交換器23の冷媒側流路23aとレシーバ24との間の冷媒配管に、水・冷媒熱交換器23の冷媒側流路23aから流出する冷媒の温度Tf-Hを検知する冷媒温度センサ62を取付ける。四方弁22とアキュームレータ27との間の冷媒配管に、高温側圧縮機21への吸込み冷媒の温度Ts-Hを検知する冷媒温度センサ64を取付ける。アキュームレータ27と高温側圧縮機21の吸込口との間の冷媒配管に、吸込み冷媒の圧力Ps-Hを検知する冷媒圧力センサ65を取付ける。
【0013】
上記カスケード熱交換器13により、低温側冷凍サイクル10と高温側冷凍サイクル20が互いにカスケード接続されて連係状態となる。
【0014】
水回路30は、ポンプ31および上記水・冷媒熱交換器23の水側流路23bを水配管により連通したもので、負荷側の水をポンプ31の運転により水・冷媒熱交換器23の水側流路23bに通す。この水側流路23bを経た水が水熱交換器41の熱源側流路41aを通ってタンク42に流れ、そのタンク42内の水がポンプ31の運転により水・冷媒熱交換器23の水側流路23bに流れる。水熱交換器41の利用側流路41bには、利用側の水配管が接続される。
【0015】
この水回路30において、ポンプ31より上流側の水配管に、水・冷媒熱交換器23の水側流路23bへの入水温度Twiを検知する水温度センサ71を取付ける。水・冷媒熱交換器23の水側流路23bより下流側の水配管に、水・冷媒熱交換器23の水側流路23bからの出水温度Twoを検知する水温度センサ72を取付ける。
【0016】
また、二元冷凍サイクル装置1は、制御部2、操作部3、表示部4、およびインバータ5,6,7を有する。制御部2には冷媒圧力センサ51、冷媒温度センサ52等の各センサが接続され、制御部2は、当該装置全体を制御する。操作部3は、運転・停止釦や温度設定釦等を含む。表示部4は、当該装置の運転状態を文字や画像で表示する。インバータ5,6,7は、商用交流電源8の交流電圧を整流し、整流後の直流電圧を制御部2からの指令に応じた周波数およびレベルの直流電圧に変換し、それを上記低温側圧縮機11、上記高温側圧縮機21、上記ポンプ31に対する駆動電圧として出力する。以下、インバータ5の出力周波数のことを低温側圧縮機11の運転周波数F1という。インバータ6の出力周波数のことを高温側圧縮機21の運転周波数F2という。
【0017】
とくに、制御部2は、主要な機能として、次の(1)(2)の制御手段を有する。
(1)水温度センサ72で検知される流出水温度Twoが操作部3で予め設定された設定値一定となるよう、低温側圧縮機11の運転能力(運転周波数F1に相当する)および高温側圧縮機21の運転能力(運転周波数F2に相当する)を制御する第1制御手段。
【0018】
(2)当該二元冷凍サイクル装置1のCOPが最大となるときの高温側冷凍サイクル20における冷媒の飽和蒸発温度(=高温側流路13bにおける冷媒の飽和蒸発温度)Te-Hを水・冷媒熱交換器23への入水温度Twiおよび外気温度Toをパラメータとして求めるためのデータテーブルを内部メモリに予め保持し、実際に水温度センサ71により検知される入水温度Twiおよび外気温度センサ53により検知される外気温度Toに基づく上記データテーブルの参照により上記飽和蒸発温度の最適値を求め、実際の飽和蒸発温度Te-Hがその最適値となるよう、低温側圧縮機11の運転周波数F1および高温側圧縮機21の運転周波数F2を調整する第2制御手段。飽和蒸発温度Te-Hは、冷媒圧力センサ65で検知される吸込み冷媒圧力Ps-Hから算出する。
【0019】
低温側冷凍サイクル10および高温側冷凍サイクル20のモリエル線図を図2に示す。低温側冷凍サイクル10における冷媒の飽和凝縮温度(=カスケード熱交換器13の低温側流路13aにおける冷媒の飽和凝縮温度)Tc-Lおよび高温側冷凍サイクル20における冷媒の飽和蒸発温度Te-Hは、互いに交差した形で近似し、低温側圧縮機11の運転周波数F1および高温側圧縮機21の運転周波数F2の変化に伴い上下動する。Sc-Lは、飽和凝縮温度Tc-Lとカスケード熱交換器13の低温側流路13aから流出する冷媒の温度Tf-Lとの差に相当する過冷却度(サブクール)である。Sh-Hは、高温側冷凍サイクル20における冷媒の飽和蒸発温度(=カスケード熱交換器13の高温側流路13bにおける冷媒の飽和蒸発温度)Te-Hと高温側圧縮機21に吸込まれる冷媒の温度Ts-Hとの差に相当する過熱度(スーパーヒート)である。Sc-Hは、高温側冷凍サイクル20における冷媒の飽和凝縮温度(=水・冷媒熱交換器23の冷媒側流路23aにおける冷媒の飽和凝縮温度)Tc-Hと冷媒側流路23aから流出する冷媒の温度Tf-Hと差に相当する過冷却度(サブクール)である。
【0020】
二元冷凍サイクル装置1のエネルギー消費効率いわゆるCOP(Coefficient Of Performance)は、高温側冷凍サイクル20における冷媒の飽和凝縮温度Tc−Hと低温側冷凍サイクル10における冷媒の飽和蒸発温度Te−Lを所定値に固定したとき、図3に示すように、高温側冷凍サイクル20における冷媒の飽和蒸発温度(以下、カスケード温度という)Te-Hに応じて変動する。また、このCOPが最大となるときのカスケード温度Te-Hは、前記飽和凝縮温度Tc−Hと飽和蒸発温度Te−Lに応じて変動する。したがって、飽和凝縮温度Tc−Hと飽和蒸発温度Te−Lに応じて、COPが最大となるカスケード温度Te-Hの最適値を求め、実際のカスケード温度Te-Hがその最適値となるよう、低温側圧縮機11の運転周波数F1および高温側圧縮機21の運転周波数F2を調整すればよい。しかしながら、飽和凝縮温度Tc−Hおよび飽和蒸発温度Te−Lは、低温側圧縮機11の運転周波数F1および高温側圧縮機21の運転周波数F2等が変動すると大きく変動する。そのため、飽和凝縮温度Tc−Hおよび飽和蒸発温度Te−Lの温度変動の大きいときに、この飽和凝縮温度Tc−Hおよび飽和蒸発温度Te−Lに応じてカスケード温度Te-Hの制御を行なうと、制御がいつまでも安定しないという不具合が生じる。そこで、飽和凝縮温度Tc−Hに代えて飽和凝縮温度Tc−Hに関係する入水温度Twiを用い、飽和蒸発温度Te−Lに代えて飽和蒸発温度Te−Lに関係する外気温度Toを用いる。これらの入水温度Twiおよび外気温度Toは、変動が少ないため、早期にカスケード温度Te-Hを安定させることができる。
【0021】
入水温度Twiおよび外気温度Toに応じてCOPが最大となるカスケード温度Te-Hを実験により求め、求めた値を最適値として制御部2の内部メモリに予め保持している。
【0022】
カスケード温度Te-Hは、高温側圧縮機21の運転周波数F2と一定とした場合、低温側圧縮機11の運転周波数F1が増加することにより上昇し、低温側圧縮機11の運転周波数F1が減少することにより低下する。また、カスケード温度Te-Hは、低温側圧縮機11の運転周波数F1を一定とした場合、高温側圧縮機21の運転周波数F1が減少することにより上昇し、高温側圧縮機11の運転周波数F1が増加することにより低下する。
【0023】
以上のように、変化の少ない入水温度Twiおよび外気温度Toに基づいて実際のカスケード温度Te-Hがその最適値となるよう、低温側圧縮機11の運転周波数F1および高温側圧縮機21の運転周波数F2を調整することにより、早期にカスケード温度Te-Hを安定させることができ、二元冷凍サイクル装置1のCOPを最大点まで高めることができる。これにより、より少ない電力でより高い加熱能力を高温側冷凍サイクル20から得ることができる。
【0024】
[2]第2の実施形態について説明する。
制御部2は、主要な機能として、次の(11)(12)の制御手段を有する。
(11)水温度センサ72で検知される出水温度Twoが操作部3で予め定められた設定値一定となるよう、低温側圧縮機11の運転周波数F1を制御する第1制御手段。
【0025】
(12)当該二元冷凍サイクル装置1のCOPが最大となるときの低温側圧縮機11の運転周波数F1と高温側圧縮機21の運転周波数F2との比率を水・冷媒熱交換器23への入水温度Twiおよび外気温度Toをパラメータとして求めるためのデータテーブルを内部メモリに予め保持し、実際に水温度センサ71により検知される入水温度Twiおよび外気温度センサ53により検知される外気温度Toに基づく上記データテーブルの参照により上記比率の最適値(以下、最適比率という)を求め、高温側圧縮機21の運転周波数F2を上記第1制御手段により制御される低温側圧縮機11の運転周波数F1と上記最適比率とに応じた値に設定する第2制御手段。
他の構成は第1の実施形態と同じである。よって、その説明は省略する。
【0026】
制御部2の制御を図4のフローチャートを参照しながら説明する。
水温度センサ71により検知される入水温度Twiおよび外気温度センサ53により検知される外気温度Toに基づく上記データテーブルの参照により、低温側圧縮機11の運転周波数F1と高温側圧縮機21の運転周波数F2との最適比率を求める(ステップ101)。
【0027】
水温度センサ71により検知される流出水温度Twoが操作部3で予め設定された設定値一定となるよう、低温側圧縮機11の運転周波数F1を制御する(ステップ102)。このとき、高温側圧縮機21の運転周波数F2は暫定的に所定値一定とする。
【0028】
そして、上記制御した運転周波数F1と上記求めた最適比率とに基づく演算により、高温側圧縮機21の運転周波数F2の最適値を求める(ステップ103)。そして、高温側圧縮機21の運転周波数F2を上記所定値から上記求めた最適値へと設定する(ステップ104)。
【0029】
当該二元冷凍サイクル装置1の最大加熱能力時の外気温度Toと運転周波数F1,F2の関係を図5に示し、同最大加熱能力時の外気温度Toと運転周波数F1,F2の比率との関係を図6に示す。カスケード温度Te-Hを最適値に維持したまま運転周波数F1,F2をそれぞれ最低値まで下げた場合の最低加熱能力時の外気温度Toと運転周波数F1,F2の関係を図7に示し、同最低加熱能力時の外気温度Toと運転周波数F1,F2の比率との関係を図8に示す。
【0030】
これらのデータから、最大加熱能力時の運転周波数F1,F2の比率と最低加熱能力時の運転周波数F1,F2の比率との間にほとんど差がないことが分かる。
【0031】
最適なカスケード温度Te-Hを求める要素としては、利用側の負荷変動に伴う当該二元冷凍サイクル装置1の加熱能力変動の影響を受け難い入水温度Twiおよび外気温度Toが最適である。すなわち、水・冷媒熱交換器23に流入する水は、利用側のタンク42から導かれる水であるため、利用側の水の使用量にかかわらず、温度変化が小さい。外気温度Toも、利用側の水の使用量とは関係なく、変化が小さい。
【0032】
以上のように、変化の少ない入水温度Twiおよび外気温度Toから運転周波数F1,F2の最適比率を求め、その最適比率に基づいて運転周波数F2を調整することにより、前記第1の実施形態と同様の効果を有し、二元冷凍サイクル装置1のCOPを最大点まで高めることができる。これにより、より少ない電力でより高い加熱能力を高温側冷凍サイクル20から得ることができ。特に、本第2の実施形態は、運転周波数F1,F2の最適比率を求め、その最適比率に基づいて運転周波数を調整するものであることから、二元冷凍サイクルでありながら、シンプルな制御を実現できる。
【0033】
[3]第3の実施形態について説明する。
制御部2は、主要な機能として、次の(21)〜(23)の制御手段を有する。
(21)当該二元冷凍サイクル装置1のCOPが最大となるときのカスケード温度Te-Hを入水温度Twiおよび外気温度Toをパラメータとして求めるためのデータテーブルを内部メモリに予め保持し、実際に水温度センサ71により検知される入水温度Twiおよび外気温度センサ53により検知される外気温度Toに基づく上記データテーブルの参照により、カスケード温度Te-Hの第1目標値を求める第1制御手段。
【0034】
(22)水温度センサ72により検知される出水温度Twoが操作部3で予め定められた設定値との差ΔTwoがなくなる方向に、低温側圧縮機11の運転周波数F1を制御する第2制御手段。
【0035】
(23)一定時間経過後に高温側圧縮機21の吸込み冷媒の圧力Ps-Hから算出した現在のカスケード温度Te-H を前記第1制御手段で算出した第1目標値と比較し、一致していなかった場合に、高温側冷凍サイクル20の加熱能力Heat-Hを求め、その加熱能力Heat-Hのままカスケード温度Te-Hが上記第1目標値に至るのに必要な高温側圧縮機21の運転周波数F2の調整量ΔF2と、低温側圧縮機11の運転周波数F1の調整量ΔF1とを求め、この調整量ΔF2とΔF1だけ高温側圧縮機21と低温側圧縮機11の運転周波数F2、F1を調整する第3制御手段。
他の構成は第1の実施形態と同じである。よって、その説明は省略する。
【0036】
制御部2の制御を図9のフローチャートを参照しながら説明する。
水温度センサ71により検知される入水温度Twiおよび外気温度センサ53により検知される外気温度Toに基づく上記データテーブルの参照により、カスケード温度Te-Hの第1目標値を求める(ステップ201)。そして、水温度センサ72により検知される流出水温度Twoと設定値との差ΔTwoがなくなる方向に、低温側圧縮機11の運転周波数F1を制御する(ステップ202)。このとき、高温側圧縮機21の運転周波数F2は暫定的に所定値一定とする。
【0037】
この運転周波数F1の制御と同時にタイムカウントtを開始し(ステップ203)、そのタイムカウントtが一定時間t1に達すると(ステップ204のYES)、現在の高温側圧縮機21の吸込み冷媒の圧力Ps-Hから算出したカスケード温度Te-H が第1目標値と一致しているかを判定する(ステップ205)。一定時間t1は、運転周波数F1の増減が実際の加熱能力の変化として波及するまでに要する一般的な時間である。
【0038】
一致している場合は(ステップ205のYES)、ステップ206〜208の処理をスキップする。
【0039】
不一致の場合は(ステップ205のNO)、高温側冷凍サイクル20の加熱能力Heat-Hを求める(ステップ206)。高温側冷凍サイクル20の加熱能力Heat-Hを飽和蒸発温度Te-H、過熱度Se-H、飽和凝縮温度Tc-H、過冷却度Sc-H、および運転周波数F2をパラメータとして求めるためのデータテーブルまたは演算式が制御部2の内部メモリに予め保持されており、各パラメータの実際値に基づく同データテーブルの参照または演算式の実行により、高温側冷凍サイクル20の加熱能力Heat-Hを求めることができる。
【0040】
続いて、上記求めた加熱能力Heat-Hのままカスケード温度Te-Hが上記第1目標値に至るのに必要な高温側圧縮機21の運転周波数F2の調整量ΔF2と、低温側圧縮機11の運転周波数F1の調整量ΔF1とを求め(ステップ207)、この調整量ΔF2とΔF1だけ、高温側圧縮機21と低温側圧縮機11の運転周波数F2とF1とを調整する(ステップ208)。
【0041】
続いて、水温度センサ72により検知される出水温度Twoと上記設定値との差ΔTwoが一定範囲内に収まっているかどうかを判定する(ステップ209)。差ΔTwoが一定範囲内に収まらないうちは(ステップの209のNO)、ステップ201〜208の処理を繰り返す。
【0042】
差ΔTwoが一定範囲内に収まると(ステップ209のYES)、高温側冷凍サイクル20の加熱能力Heat-Hが安定域に入ったと判断する(ステップ210)。
【0043】
以上の制御により、前記第1の実施形態と同様の効果を有し、二元冷凍サイクル装置1のCOPを最大点まで高めることができる。これにより、より少ない電力でより高い加熱能力を高温側冷凍サイクル20から得ることができ。特に、本第3の実施形態は、カスケード温度Te-Hをより正確に制御することができる。
【0044】
なお、高温側冷凍サイクル20における冷媒の飽和蒸発温度(=カスケード熱交換器13の高温側流路13bにおける冷媒の飽和蒸発温度)Te-Hをカスケード温度として用いたが、低温側冷凍サイクル10における冷媒の飽和凝縮温度Tc-Lをカスケード温度として用いてもよい。飽和蒸発温度Te-Hは、冷媒圧力センサ65で検知される吸込み冷媒圧力Ps-Hから算出できる。
【0045】
[4]第4の実施形態について説明する。
制御部2は、主要な機能として、次の(31)〜(35)の制御手段を有する。
(31)当該二元冷凍サイクル装置1のCOPが最大となるときのカスケード温度Te-Hを入水温度Twiおよび外気温度Toをパラメータとして求めるためのデータテーブルを内部メモリに予め保持し、実際に水温度センサ71により検知される入水温度Twiおよび外気温度センサ53により検知される外気温度Toに基づく上記データテーブルの参照により、カスケード温度Te-Hの第1目標値を求める第1制御手段。
【0046】
(32)水温度センサ72により検知される出水温度Twoが操作部3で予め定められた設定値との差ΔTwoがなくなる方向に、低温側圧縮機11の運転周波数F1を制御する第2制御手段。
【0047】
(33)前記低温側圧縮機11の運転周波数F1の制御開始から一定時間経過後に高温側圧縮機21の吸込み冷媒の圧力Ps-Hから算出したカスケード温度Te-H を前記第1制御手段で算出した目標値と比較し、一致していなかった場合に高温側冷凍サイクル20の加熱能力Heat-Hを求め、その加熱能力Heat-Hのままカスケード温度Te-Hが上記目標値に至るのに必要な高温側圧縮機21の運転周波数F2の調整量ΔF2と、低温側圧縮機11の運転周波数F1の調整量ΔF1とを求め、この調整量ΔF2とΔF1だけ、高温側圧縮機21と低温側圧縮機11の運転周波数F2、F1とを調整する第3制御手段。
【0048】
(34)当該二元冷凍サイクル装置1のCOPが最大となるときのカスケード温度Te-Hを高温側圧縮機21の吐出冷媒の圧力Pd-Hから算出される高温側冷凍サイクル20の飽和凝縮温度Tc-Hおよび低温側圧縮機11の吸込み冷媒の圧力Ps-Lから算出される低温側冷凍サイクル10の飽和蒸発温度Te−Lをパラメータとして求めるためのデータテーブルを内部メモリに予め保持し、水温度センサ71により検知される流出水温度Twoと設定値との差ΔTwoが一定範囲内に収まったとき、実際に算出される前記飽和凝縮温度Tc-Hおよび飽和蒸発温度Te−Lに基づく上記データテーブルの参照により、カスケード温度Te-Hの第2目標値を求める第4制御手段と、
(35)前記ΔTwoが一定範囲内に収まったとき、高温側冷凍サイクル20の加熱能力Heat-Hを求め、この加熱能力Heat-Hのままカスケード温度Te-Hが上記第2目標値に至るのに必要な高温側圧縮機21の運転周波数F2の調整量ΔF2と、低温側圧縮機11の運転周波数F1の調整量ΔF1とを求め、この調整量ΔF2とΔF1だけ、高温側圧縮機21と低温側圧縮機11の運転周波数F2とF1とを調整する第5制御手段。
他の構成は第1の実施形態と同じである。よって、その説明は省略する。
【0049】
制御部2の制御を図10のフローチャートを参照しながら説明する。
水温度センサ71により検知される入水温度Twiおよび外気温度センサ53により検知される外気温度Toに基づく上記データテーブルの参照により、カスケード温度Te-Hの第1目標値を求める(ステップ301)。そして、水温度センサ72により検知される流出水温度Twoと設定値との差ΔTwoがなくなる方向に、低温側圧縮機11の運転周波数F1を制御する(ステップ302)。このとき、高温側圧縮機21の運転周波数F2は暫定的に所定値一定とする。
【0050】
この運転周波数F1の制御と同時にタイムカウントtを開始し(ステップ303)、そのタイムカウントtが一定時間t1に達すると(ステップ304のYES)、現在の高温側圧縮機21の吸込み冷媒の圧力Ps-H から算出したカスケード温度Te-H が目標値と一致しているかを判定する(ステップ305)。一定時間t1は、運転周波数F1の増減が実際の加熱能力の変化として波及するまでに要する一般的な時間である。
【0051】
一致している場合は(ステップ305のYES)、ステップ306〜308の処理をスキップする。
【0052】
不一致の場合は(ステップ305のNO)、高温側冷凍サイクル20の加熱能力Heat-Hを求める(ステップ306)。高温側冷凍サイクル20の加熱能力Heat-Hを飽和蒸発温度Te-H、過熱度Se-H、飽和凝縮温度Tc-H、過冷却度Sc-H、および運転周波数F2をパラメータとして求めるためのデータテーブルまたは演算式が制御部2の内部メモリに予め保持されており、各パラメータの実際値に基づく同データテーブルの参照または演算式の実行により、高温側冷凍サイクル20の加熱能力Heat-Hを求めることができる。
【0053】
続いて、上記求めた加熱能力Heat-Hのままカスケード温度Te-Hが上記第1目標値に至るのに必要な高温側圧縮機21の運転周波数F2の調整量ΔF2と、低温側圧縮機11の運転周波数F1の調整量ΔF1とを求め(ステップ307)、この調整量ΔF2とΔF1だけ、高温側圧縮機21と低温側圧縮機11の運転周波数F2とF1とを調整する(ステップ308)。
【0054】
続いて、水温度センサ72により検知される出水温度Twoと上記設定値との差ΔTwoが一定範囲内に収まっているかどうかを判定する(ステップ309)。差ΔTwoが一定範囲内に収まらないうちは(ステップ309のNO)、ステップ301〜308の処理を繰り返す。
【0055】
差ΔTwoが一定範囲内に収まると(ステップ309のYES)、高温側冷凍サイクル20の加熱能力Heat-Hが安定域に入ったとの判断し、高温側圧縮機21の吐出冷媒の圧力Pd-Hから算出される高温側冷凍サイクル20の飽和凝縮温度Tc-Hと、低温側圧縮機11の吸込み冷媒の圧力Ps-Lから算出される低温側冷凍サイクル10の飽和蒸発温度Te−L に基づく上記データテーブルの参照により、カスケード温度Te-Hの第2目標値を求める。(ステップ310)。続いて、高温側冷凍サイクル20の加熱能力Heat-Hをステップ306と同様に求める(ステップ311)。そして、求めた加熱能力Heat-Hのままカスケード温度Te-Hが第2目標値に至るのに必要な高温側圧縮機21の運転周波数F2の調整量ΔF2と、低温側圧縮機11の運転周波数F1の調整量ΔF1とを求め(ステップ312)、この調整量ΔF2とΔF1だけ、高温側圧縮機21と低温側圧縮機11の運転周波数F2とF1とを調整する(ステップ313)。
【0056】
以上の制御により、前記第1の実施の形態と同様の効果を得られ、二元冷凍サイクル装置1のCOPを最大点まで高めることができる。これにより、より少ない電力でより高い加熱能力を高温側冷凍サイクル20から得ることができる。特に本第4実施の形態は、出水温度Twoと上記設定値との差ΔTwoが一定範囲内に収まり、加熱能力の変化やファン18の回転数の変化が少ない安定期に移行した後に、本来の飽和凝縮温度Tc−Hと飽和蒸発温度Te−Lに応じてカスケード温度Te-Hを制御するようにしたので、より精度の高い制御を行うことができる。
【0057】
なお、高温側冷凍サイクル20における冷媒の飽和蒸発温度(=カスケード熱交換器13の高温側流路13bにおける冷媒の飽和蒸発温度)Te-Hをカスケード温度として用いたが、低温側冷凍サイクル10における冷媒の飽和凝縮温度Tc-Lをカスケード温度として用いてもよい。飽和蒸発温度Te-Hは、冷媒圧力センサ65で検知される吸込み冷媒圧力Ps−Hから算出できる。
【0058】
[5]第5の実施形態について説明する。
制御部2は、主要な機能として、次の(41)〜(46)の制御手段を有する。
(41)当該二元冷凍サイクル装置1のCOPが最大となるときのカスケード温度Te-Hを入水温度Twiおよび外気温度Toをパラメータとして求めるためのデータテーブルを内部メモリに予め保持し、実際に水温度センサ71により検知される入水温度Twiおよび外気温度センサ53により検知される外気温度Toに基づく上記データテーブルの参照により、カスケード温度Te-Hの目標値を求める第1制御手段。
【0059】
(42)当該二元冷凍サイクル装置1のCOPを演算により求め、カスケード温度Te-Hと共に内部メモリに記憶する第2制御手段。
【0060】
(43)水温度センサ72により検知される出水温度Twoが操作部3で予め定められた設定値との差ΔTwoがなくなる方向に、低温側圧縮機11の運転周波数F1を制御する第3制御手段。
【0061】
(44)前記低温側圧縮機11の運転周波数F1の制御開始から一定時間経過後に算出したカスケード温度Te-Hを前記第1制御手段で算出した目標値と比較して一致していなかった場合に、高温側冷凍サイクル20の加熱能力Heat-Hを求め、その加熱能力Heat-Hのままカスケード温度Te-Hが上記目標値に至るのに必要な高温側圧縮機21の運転周波数F2の調整量ΔF2と、低温側圧縮機11の運転周波数F1の調整量ΔF1とを求め、この調整量ΔF2とΔF1だけ、高温側圧縮機21と低温側圧縮機11の運転周波数F2とF1とを調整する第4制御手段。
【0062】
(45)水温度センサ71により検知される出水温度Twoと設定値との差ΔTwoが一定範囲内に収まったとき、記憶しているカスケード温度Te-Hの変化量 に対するCOPの変化量の割合が許容範囲内に収まっているか判定する第5制御手段。
(46)カスケード温度Te-H の変化量に対するCOPの変化量の割合が許容範囲内に収まっていない時、高温側冷凍サイクル20の加熱能力Heat-Hを求め、カスケード温度Te-H の変化量に対するCOPの変化量の割合がCOP最大値を含む許容範囲内に収まるまで、低温側圧縮機11と高温側圧縮機21の運転周波数F1とF2を微調整する第6制御手段。
【0063】
他の構成は第1の実施形態と同じである。よって、その説明は省略する。
【0064】
制御部2の制御を図11のフローチャートを参照しながら説明する。
水温度センサ71により検知される入水温度Twiおよび外気温度センサ53により検知される外気温度Toに基づく上記データテーブルの参照により、カスケード温度Te-Hの目標値を求める(ステップ401)。
【0065】
また、下式の演算により、当該二元冷凍サイクル装置1のCOPを求める(ステップ402)。下式において、W1は低温側圧縮機11への入力電力(=インバータ5の出力電力)、W2は高温側圧縮機21への入力電力(=インバータ6の出力電力)、W3は室外ファン18への入力電力(=インバータ7の出力電力)である。求めたCOPは、現時点のカスケード温度Te-Hと共に内部メモリに更新記憶する(ステップ403)。
COP=Heat-H/(W1+W2+W3)
そして、水温度センサ72により検知される流出水温度Twoと設定値との差ΔTwoがなくなる方向に、低温側圧縮機11の運転周波数F1を制御する(ステップ404)。このとき、高温側圧縮機21の運転周波数F2は暫定的に所定値一定とする。
【0066】
この運転周波数F1の制御と同時にタイムカウントtを開始し(ステップ405)、そのタイムカウントtが一定時間t1に達すると(ステップ406のYES)、現在のカスケード温度Te-H が目標値と一致しているかを判定する(ステップ407)。一定時間t1は、運転周波数F1の増減が実際の加熱能力の変化として波及するまでに要する一般的な時間である。
【0067】
一致している場合は(ステップ407のYES)、ステップ408〜410の処理をスキップする。
【0068】
不一致の場合は(ステップ407のNO)、高温側冷凍サイクル20の加熱能力Heat-Hを求める(ステップ408)。
【0069】
高温側冷凍サイクル20の加熱能力Heat-Hを飽和蒸発温度Te-H、過熱度Sh-H、飽和凝縮温度Tc-H、過冷却度Sc-H、および運転周波数F2をパラメータとして求めるためのデータテーブルまたは演算式が制御部2の内部メモリに予め保持されており、各パラメータの実際値に基づく同データテーブルの参照または演算式の実行により、高温側冷凍サイクル20の加熱能力Heat-Hを求めることができる。
【0070】
続いて、上記求めた加熱能力Heat-Hのままカスケード温度Te-Hが上記目標値に至るのに必要な高温側圧縮機21の運転周波数F2の調整量ΔF2と、低温側圧縮機11の運転周波数F1の調整量ΔF1とを求め(ステップ409)、この調整量ΔF2とΔF1だけ、高温側圧縮機21と低温側圧縮機11の運転周波数F2とF1とを調整する(ステップ410)。
【0071】
続いて、水温度センサ72により検知される出水温度Twoと上記設定値との差ΔTwoが一定範囲内に収まっているかどうかを判定する(ステップ411)。差ΔTwoが一定範囲内に収まらないうちは(ステップ411のNO)、ステップ401〜410の処理を繰り返す。
【0072】
差ΔTwoが一定範囲内に収まると(ステップ411のYES)、高温側冷凍サイクル20の加熱能力Heat-Hが安定域に入ったとの判断し、記憶している前回のCOPおよびカスケード温度Te-Hと現時点のCOPおよびカスケード温度Te-Hとの比較によりカスケード温度Te-Hの変化に対するCOPの変化傾向を算出する(ステップ412)。
【0073】
この変化傾向に応じて、最大COPがカスケード温度Te-Hの上昇/下降のいずれの方向にあるのかを判断して、運転周波数F1,F2を微調整する(ステップ413〜416)。
【0074】
より具体的には、記憶している前回のCOPと現時点のCOPとの差ΔCOPを求めるとともに、記憶している前回のカスケード温度Te-Hと現時点のカスケード温度Te-Hとの差ΔTe-Hを求め、これらΔCOPとΔTe-Hの比X(=ΔCOP/ΔTe-H)をCOPの変化傾向として算出する(ステップ412)。続いて、この比Xが許容範囲(−λ≦X<λ)に収まっているかを判定する(ステップ413)。許容範囲内に収まっていれば、最初のステップ401の処理に戻る。
【0075】
許容範囲内に収まっていなければ、高温側冷凍サイクル20の加熱能力Heat-Hをステップ408と同様に求める(ステップ414)。
【0076】
上記比Xが許容範囲より大きい場合(λ<X)、カスケード温度Te-Hの低下に伴いCOPが低下したケースと、カスケード温度Te-Hの上昇に伴いCOPが上昇したケースとが考えられ、かつ現時点のCOPが図12に示す最大COPより手前のA領域にあるとの判断の下に、加熱能力Heat-Hのままでカスケード温度Te-Hを微増するため、運転周波数F1の微増値ΔF1と、運転周波数F2の微減値ΔF2を算出する(ステップ415)。
【0077】
上記比Xが許容範囲より小さい場合(X<−λ)、カスケード温度Te-Hの低下に伴いCOPが上昇したケースと、カスケード温度Te-Hの上昇に伴いCOPが低下したケースとが考えられ、かつ現時点のCOPが図12に示す最大COPを通り過ぎたB領域にあるとの判断の下に、加熱能力Heat-Hのままでカスケード温度Te-Hを微減するため、運転周波数F1の微減値ΔF1と、運転周波数F2の微増値ΔF2を算出する(ステップ415)。
【0078】
続いて、この調整量ΔF1とΔF2だけ、高温側圧縮機21と低温側圧縮機11の運転周波数F2とF1とを微調整する。(ステップ416)。次に、ステップ402と同一の式の演算により、当該二元冷凍サイクル装置1のCOPを求める(ステップ417)。求めたCOPは、現時点のカスケード温度Te-Hと共に内部メモリに更新記憶する(ステップ418)。
【0079】
比Xが許容範囲に収まるまで、この微調整を繰り返す。
【0080】
以上の制御により、前記第1の実施形態と同様の効果を有し、二元冷凍サイクル装置1のCOPを最大点まで高めることができる。これにより、より少ない電力でより高い加熱能力を高温側冷凍サイクル20から得ることができる。特に本第5の実施形態は、加熱能力の調整操作を減少させながら、カスケード温度を精度よく制御することができる。
【0081】
[6]変形例
上記各実施形態では、高温側冷凍サイクル20における冷媒の飽和蒸発温度Te-Hをカスケード温度として用いたが、低温側冷凍サイクル10における冷媒の飽和凝縮温度(=カスケード熱交換器の低温側流路13aにおける冷媒の飽和凝縮温度)Tc-Lをカスケード温度として用いてもよい。飽和凝縮温度Tc-Lは、冷媒圧力センサ55で検知される吸込み冷媒圧力Psから算出できる。
【0082】
その他、各実施形態および変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態や変形は、発明の範囲は要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0083】
1…二元冷凍サイクル装置、2…制御部、3…操作部、4…表示部、5,6,7…インバータ、10…低温側冷凍サイクル、11…低温側圧縮機、12…四方弁、13…カスケード熱交換器、13a…低温側流路、13b…高温側流路、16…室外空気熱交換器、18…室外ファン、20…高温側冷凍サイクル、21…高温側圧縮機、22…四方弁、23…水・冷媒熱交換器、23a…冷媒側流路、23b…水側流路、30…水回路、41…水熱交換器、42…タンク、53…外気温度センサ、71…水温度センサ、72…水温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温側圧縮機、カスケード熱交換器の低温側流路、減圧器、空気熱交換器を冷媒配管を介して連通する低温側冷凍サイクルと、
高温側圧縮機、水・冷媒熱交換器の冷媒側流路、減圧器、前記カスケード熱交換器の高温側流路を冷媒配管を介して連通する高温側冷凍サイクルと、
負荷側の水を前記水・冷媒熱交換器の水側流路に通す水回路と、
当該装置のCOPが最大となるときの前記低温側冷凍サイクルにおける冷媒の飽和凝縮温度または前記高温側冷凍サイクルの冷媒における飽和蒸発温度を前記水・冷媒熱交換器への入水温度および外気温度をパラメータとして求めるためのデータテーブルを予め保持し、実際の入水温度および外気温度に基づく前記データテーブルの参照により前記飽和凝縮温度または前記飽和蒸発温度の最適値を求め、実際の前記飽和凝縮温度または前記飽和蒸発温度が前記最適値となるよう、前記低温側圧縮機および前記高温側圧縮機の運転周波数を調整する制御手段と、
を備えることを特徴とする二元冷凍サイクル装置。
【請求項2】
低温側圧縮機、カスケード交換器の低温側流路、減圧器、空気熱交換器を冷媒配管を介して連通する低温側冷凍サイクルと、
高温側圧縮機、水・冷媒熱交換器の冷媒側流路、減圧器、前記カスケード熱交換器の高温側流路を冷媒配管を介して連通する高温側冷凍サイクルと、
負荷側の水を前記水・冷媒熱交換器の水側流路に通す水回路と、
前記水・冷媒熱交換器から流出する水の温度が予め定められた設定値一定となるよう、前記低温側圧縮機の運転能力を制御する第1制御手段と、
当該装置のCOPが最大となるときの前記低温側圧縮機の運転周波数と前記高温側圧縮機の運転周波数との比率を前記水・冷媒熱交換器への入水温度および外気温度をパラメータとして求めるためのデータテーブルを予め保持し、実際の入水温度および外気温度に基づく前記データテーブルの参照により前記比率の最適値を求め、前記高温側圧縮機の運転周波数を前記第1制御手段により制御される前記低温側圧縮機の運転周波数と前記最適比率とに応じた値に設定する第2制御手段と、
を備えることを特徴とする二元冷凍サイクル装置。
【請求項3】
低温側圧縮機、カスケード熱交換器の低温側流路、減圧器、空気熱交換器を冷媒配管を介して連通する低温側冷凍サイクルと、
高温側圧縮機、水・冷媒熱交換器の冷媒側流路、減圧器、前記カスケード熱交換器の高温側流路を冷媒配管を介して連通する高温側冷凍サイクルと、
負荷側の水を前記水・冷媒熱交換器の水側流路に通す水回路と、
当該装置のCOPが最大となるときの前記低温側冷凍サイクルにおける冷媒の飽和凝縮温度または前記高温側冷凍サイクルにおける冷媒の飽和蒸発温度を前記水・冷媒熱交換器への入水温度および外気温度をパラメータとして求めるためのデータテーブルを予め保持し、実際の入水温度および外気温度に基づく前記データテーブルの参照により、前記飽和凝縮温度または前記飽和蒸発温度の第1目標値を求める第1制御手段と、
前記水・冷媒熱交換器からの出水温度と予め定められた設定値との差がなくなる方向に前記低温側圧縮機の運転能力を制御する第2制御手段と、
前記高温側冷凍サイクルの加熱能力を求め、この加熱能力のまま前記飽和凝縮温度または前記飽和蒸発温度が前記第1目標値に至るのに必要な前記高温側圧縮機および前記低温側圧縮機の運転周波数の調整量を求め、この調整量だけ前記高温側圧縮機および前記低温側圧縮機の運転周波数を調整する第3制御手段と、
を備えることを特徴とする二元冷凍サイクル装置。
【請求項4】
当該装置のCOPが最大となるときの前記低温側冷凍サイクルにおける冷媒の飽和凝縮温度または前記高温側冷凍サイクルにおける冷媒の飽和蒸発温度を前記高温側冷凍サイクルの飽和凝縮温度および前記低温側冷凍サイクルの飽和蒸発温度をパラメータとして求めるためのデータテーブルを内部メモリに予め保持し、前記出水温度と設定値との差が一定範囲内に収まったとき、実際の前記飽和凝縮温度および飽和蒸発温度に基づく前記データテーブルの参照により、前記飽和凝縮温度または前記飽和蒸発温度の第2目標値を求める第4制御手段と、
前記出水温度と前記設定値との差が一定範囲内に収まったとき、前記高温側冷凍サイクルの加熱能力を求め、この加熱能力のまま前記飽和凝縮温度または前記飽和蒸発温度が前記第2目標値に至るのに必要な前記高温側圧縮機と前記低温側圧縮機の運転周波数の調整量を求め、この調整量だけ前記高温側圧縮機と前記低温側圧縮機の運転周波数を調整する第5制御手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項3記載の二元冷凍サイクル装置。
【請求項5】
低温側圧縮機、カスケード熱交換器の低温側流路、減圧器、空気熱交換器を冷媒配管を介して連通する低温側冷凍サイクルと、
高温側圧縮機、水・冷媒熱交換器の冷媒側流路、減圧器、前記カスケード熱交換器の高温側流路を冷媒配管を介して連通する高温側冷凍サイクルと、
負荷側の水を前記水・冷媒熱交換器の水側流路に通す水回路と、
当該装置のCOPが最大となるときの前記低温側冷凍サイクルにおける冷媒の飽和凝縮温度または前記高温側冷凍サイクルにおける冷媒の飽和蒸発温度を前記水・冷媒熱交換器への入水温度および外気温度をパラメータとして求めるためのデータテーブルを予め保持し、実際の入水温度および外気温度に基づく前記データテーブルの参照により、前記飽和凝縮温度または前記飽和蒸発温度の目標値を求める第1制御手段と、
当該装置のCOPを演算により求め、前記飽和凝縮温度または飽和蒸発温度と共に記憶する第2制御手段と、
前記水・冷媒熱交換器からの出水温度と予め定められた設定値との差がなくなる方向に前記低温側圧縮機の運転能力を制御する第3制御手段と、
前記高温側冷凍サイクルの加熱能力を求め、この加熱能力のまま前記飽和凝縮温度または前記飽和蒸発温度が前記目標値に至るのに必要な前記低温側圧縮機および前記高温側圧縮機の運転周波数の調整量を求め、この調整量だけ前記低温側圧縮機および前記高温側圧縮機の運転周波数を調整する第4制御手段と、
前記出水温度と前記設定値との差が一定範囲内に収まったとき、記憶している前記飽和凝縮温度または飽和蒸発温度の変化量に対するCOPの変化量の割合が許容範囲内に収まっているかを判定する第5制御手段と、
前記飽和凝縮温度または飽和蒸発温度の変化量に対するCOPの変化量の割合許容範囲内に収まっていない時、許容範囲内に収まるまで、前記低温側圧縮機および前記高温側圧縮機の運転周波数を微調整する第6制御手段と、
を備えることを特徴とする二元冷凍サイクル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−104633(P2013−104633A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249951(P2011−249951)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(505461072)東芝キヤリア株式会社 (477)